説明

水溶性高分子乾燥組成物

【課題】水溶性高分子に、微細繊維状セルロースを添加することで、分散性が良く、さらに安定性も改善された乾燥組成物、それを用いた増粘ゲル化剤、液状組成物及びゲル状組成物を提供する。
【解決手段】植物細胞壁を原料とする結晶性の、微細繊維状セルロース1〜49質量%と水溶性高分子51〜99質量%からなる乾燥組成物であり、水溶性高分子としてはカルボキシメチルセルロース・ナトリウム及びデキストリン又はカルボキシメチルセルロース・ナトリウムとデキストリンとを用いることが好ましい。更にはこれに多糖類を加えて増粘かゲル化剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶性高分子に、微細繊維状セルロースが添加され、分散性と安定性の改善された乾燥組成物、それを用いた増粘ゲル化剤、液状組成物及びゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、カルボキシセルロース、天然多糖類及びポリオールから選択される添加剤と、結晶度50%以下のセルロースナノフィブリルと、任意の補助添加剤からなる組成物の記載がある。これに示されるセルロースナノフィブリルは、結晶度50%以下であり、本発明の結晶性の微細繊維状セルロースとは異なる。その結果、乾燥組成物としての物性も違ったものとなる。
【0003】
特許文献3及び4には、微細繊維状セルロース50〜95質量%と、水溶性高分子および/または親水性物質5〜50質量%からなる乾燥組成物が開示されている。また特許文献5には、微細繊維状セルロース57〜78質量%と、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム5〜20質量%と、親水性物質12〜28質量%を構成成分とする、高分散性セルロース組成物の記載がある。しかしながら、これら乾燥組成物の主体は、あくまでセルロースであり、水溶性高分子や親水性物質は、セルロースのコーティング剤として使用されるに過ぎない。つまり水溶性高分子を主体とする増粘安定剤に、微細繊維状セルロースを加えて安定性を改善するという、本発明とは内容を異にするものである。
また特許文献5には、その組成物が著しく分散性に優れ、水道水や食品原料と共に混合してもよく粒子が分散するとあるが、実際にはその分散性は実用レベルには達しておらず、組成物の機能発現としても不十分である。
【0004】
【特許文献1】特表2000−503703号公報
【特許文献2】特表2000−503704号公報
【特許文献3】特開2004−41119号公報
【特許文献4】WO2004/007558
【特許文献5】特開2006−8857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は水溶性高分子に、微細繊維状セルロースを添加することで、分散性が良く、さらに安定性も改善された乾燥組成物、それを用いた増粘ゲル化剤、液状組成物及びゲル状組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、水溶性高分子に、微細繊維状セルロースを添加することで、分散性が良く、さらに安定性も改善された乾燥組成物を製造できることを発見し、本発明をなすに至った。すなわち本発明は以下の通りである。
(1)植物細胞壁を原料とする結晶性の、微細繊維状セルロース1〜49質量%と水溶性高分子51〜99質量%からなる乾燥組成物。
(2)前記水溶性高分子が、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムとデキストリンであることを特徴とする(1)記載の乾燥組成物。
(3)前記水溶性高分子が、キサンタンガムとデキストリンであることを特徴とする(1)記載の乾燥組成物。
(4)(1)〜(3)の乾燥組成物と、グルコマンナン、ガラクトマンナン、アルギン酸類、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、寒天、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、大豆水溶性多糖類、カラヤガム、サイリウムシードガム、プルラン、アラビアガム、トラガントガム、ガッディーガム、アラビノガラクタン、カードランから選択される少なくとも1種の多糖類を含有する組成物であって、乾燥組成物:多糖類=1:99〜99:1の質量比で含有することを特徴とする、増粘ゲル化剤。
(5)前記記載の多糖類が、グルコマンナン、ガラクトマンナン、アルギン酸類からなる群より選択されることを特徴とする、(4)記載の増粘ゲル化剤。
(6)前記多糖類としてキサンタンガムとグルコマンナン、ガラクトマンナン及びアルギン酸類からなる群より選択される少なくとも一種とを含むことを特徴とする請求項4記載の増粘ゲル化剤。
(7)(1)〜(3)のいずれかに記載の乾燥組成物を含有することを特徴とする、液状組成物。
(8)(1)〜(3)のいずれかに記載の乾燥組成物を含有することを特徴とする、ゲル状組成物。
(9)(4)〜(6)のいずれかに記載の増粘ゲル化剤を含有することを特徴とする、液状組成物。
(10)(4)〜(6)のいずれかに記載の増粘ゲル化剤を含有することを特徴とする、ゲル状組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の乾燥組成物は、従来技術に比べて安定性に優れ、かつ分散性も良好である。そのため、粘ちょう性を抑えつつも、安定性を付与することができる。また分散性に優れるので、水道水や食品原料と共に混合しても、製品の製造における実用性が高い。
さらに特定の多糖類との組み合わせにより、新規な増粘ゲル化剤と、それを配合した、液状あるいはゲル状組成物を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本願発明について、特にその好ましい形態を中心に、具体的に説明する。
本発明の水溶性高分子とは、常温で水に溶解する高分子を指す。具体的な水溶性高分子の例としては、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、難消化性デキストリン、ペクチン、水溶性大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、デキストリン類などから選ばれた1種または2種以上の物質が使用される。中でもカルボキシメチルセルロース・ナトリウムまたはキサンタンガムと、デキストリンを併用して用いるのが好ましい。カルボキシメチルセルロース・ナトリウムまたはキサンタンガムと、デキストリンの質量比は、(カルボキシメチルセルロース・ナトリウムまたはキサンタンガム):デキストリン=5:95〜100:0、好ましくは10:90〜30:70、さらに好ましくは15:85〜40:60である(ただし合計で、100)。
【0009】
本発明のカルボキシメチルセルロース・ナトリウムとは、セルロースの水酸基が、モノクロロ酢酸と置換されたもので、D−グルコースがβ−1,4結合した直鎖状の構造を持つ。カルボキシメチルセルロース・ナトリウムとしては、カルボキシメチル基の置換度が0.5〜1.5であるのが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0であり、さらに好ましくは0.6〜0.8である。また、1質量%水溶液の粘度は、5〜9000mPa・s程度で用いるのが好ましく、より好ましくは1000〜8000mPa・s程度で用いることであり、さらに好ましくは2000〜6000mPa・s程度で用いることである。この範囲で、取り扱い性に問題なく、増粘ゲル化剤の性能も良好な範囲となる。
【0010】
本発明のキサンタンガムは、主鎖はD−グルコースがβ−1,4結合した構造を有し、この主鎖のアンヒドログルコースにD−マンノース、D−グルクロン酸、D−マンノースからなる側鎖が結合したものである。主鎖に付くD−マンノースの6位はアセチル化され、末端のD−マンノースがピルビン酸とアセタール結合している枝分かれの多い構造である。
本発明のデキストリンとは、数個のα−グルコースがグリコシド結合によって重合した物質の総称で、通常はデンプンを化学分解あるいは酵素分解して得られる、直鎖状の化合物である。乾燥組成物において、機能と分散性のバランスが最も良い物質は、DE(dextrose equivalent)が20以上のデキストリンである。また酵素を作用させることで得られるシクロデキストリン等を使用しても構わない。
【0011】
本発明の微細繊維状セルロースとは、植物細胞壁を原料とし、結晶性であり、微細な繊維状である。例えば特開2004−41119号公報や、WO2004/007558に開示される「水分散性セルロース」などが使用できる。
原料となる植物細胞壁とは、工業的に使用が可能なセルロース性物質、例えば木材(針葉樹、広葉樹)、コットンリンター、ケナフ、マニラ麻(アバカ)、サイザル麻、ジュート、サバイグラス、エスパルト草、バガス、稲わら、麦わら、葦、竹などの天然セルロースを主成分とするパルプが使用される。中でも好ましいのは、イネ科植物の細胞壁を起源とした、バガスパルプ、稲わらパルプ、麦わらパルプ、竹パルプである。これらのパルプは木材パルプや麻パルプと異なり、極めて容易に微細化されるので、効率よく高性能の製品を作ることができる。ただし微生物セルロースや、ビートパルプや果実繊維パルプなどの柔細胞由来の原料は、これに含まれない。
【0012】
原料の植物細胞壁として、平均重合度が400以上で、かつ、α−セルロース含有量が60〜100質量%であるセルロース性物質を用いることが好ましい。但し、その範囲内でも平均重合度が1300未満で、かつ、α−セルロース含有量が90質量%を越えるものは含まれない。より好ましくはα−セルロース含有量が85質量%以下、最も好ましくは75質量%以下である。
【0013】
本発明で使用される微細繊維状セルロースは、結晶性である。具体的には、X線回折法(Segal法)で測定されるところの結晶化度が50%を越える。好ましくは55%以上である。本発明物質はセルロース以外の成分を含有するが、それらの成分は非晶性であり、非晶性としてカウントされる。よって測定の結果、結晶化度が50%であれば、セルロースの結晶化度としては50%以上であるといえる。例えば49%などの場合は、微細な繊維状のセルロースを他の成分から分離し、測定しなければならない。
【0014】
本明細書中で「微細な繊維状」とは、光学顕微鏡および電子顕微鏡にて観察および測定されるところの、長さ(長径)が0.5μm〜1mm、幅(短径)が2nm〜60μm、長さと幅の比(長径/短径)が5〜400であることを意味する。
本発明の微細繊維状セルロースは、水中で安定に懸濁する成分を、全セルロース中に30質量%以上含有することが好ましい。この成分の含有量が30質量%未満であると、前述の増粘性等の機能が十分に発揮されない。含有量は多いほど好ましいが、50質量%以上であればより好ましい。本明細書中で、「水中で安定に懸濁する成分」とは、具体的には、0.1質量%濃度の水分散液として、これを9800m/sで5分間遠心分離した時においても、沈降することなく水中に安定に懸濁しているという性質を有する成分であり、全セルロース量に対する割合で示される。(「水中で安定に懸濁する成分」の測定方法は後述する。)
【0015】
該成分は高分解能走査型電子顕微鏡(高分解能SEM)にて観察および測定される長さ(長径)が0.5〜30μmであり、幅(短径)が2〜600nmであり、長さと幅の比(長径/短径比)が20〜400である繊維状のセルロースからなる。好ましくは、幅が100nm以下であり、より好ましくは50nm以下である。
【0016】
本発明の微細繊維状セルロースは、0.5質量%濃度の水分散液とした時に、歪み10%、周波数10rad/sの条件で測定される損失正接(tanδ)が1未満であることが好ましい。より好ましくは0.6未満である。損失正接が1以上であると、安定性や、後述する他の多糖類との増粘相互作用や、ゲル形成能が劣る。0.6未満であるとそれらの性能はさらに秀でたものとなる。
【0017】
本発明の乾燥組成物における質量比は、微細繊維状セルロース:水溶性高分子=1〜49:51〜99である(ただし合計で、100)。
微細繊維状セルロース:水溶性高分子の質量比は、前記の範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくは15〜49:51〜85、さらに好ましくは35〜45:55〜65の時に、分散性と安定性のバランスに優れる乾燥組成物となり、結果、それを構成成分とする増粘ゲル化剤も優れた機能を示す。
この乾燥組成物の形態は、顆粒状、粒状、粉末状、鱗片状、小片状、シート状等の様々な形態を呈する。
【0018】
乾燥組成物を得るための乾燥方法は、何ら限定するものではないが、例えば凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、ガラス板等に薄く伸展し乾燥する方法、流動床乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、起熱ファン式減圧乾燥法などが使用できる。高温で長時間乾燥すると、分散性が悪化する。これは、セルロース粒子(繊維)間の角質化が強く進行するためと思われる。温度は120℃以下、特に110℃以下が水分散性の観点から好ましい。乾燥時間は短時間であることが望ましく、水分が所定の値に達したら、直ちに乾燥を終了することが望ましい。乾燥後の水分は、取り扱い性、経時安定性を考慮すれば、15質量%以下が好ましい。より好ましくは10質量%以下である。最も好ましくは6質量%以下である。2質量%未満になると静電気が帯電し、粉末の取り扱いが困難になる場合がある。
乾燥後は必要に応じて、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等で粉砕して使用しても良い。
【0019】
本発明の乾燥組成物に、水溶性高分子と微細繊維状セルロースのほかに、親水性物質を加えると、さらに機能が向上する。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く、粘性を殆どもたらさず、常温で固体の物質であり、水溶性糖類(ブドウ糖、果糖、庶糖、乳糖、異性化糖、キシロース、トレハロース、カップリングシュガー、パラチノース、ソルボース、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、オリゴ糖類(フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)、糖アルコール類(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール等)、より選ばれる1種または2種以上の物質をいう。低分子量物質の方が、分散性改良効果が高い傾向にあり、ブドウ糖、蔗糖、トレハロースなどは良好な性質を示すが、製造時の乾燥性や、製品の吸湿性、経時安定性に劣る傾向がある。
【0020】
また乾燥組成物には、水溶性高分子と、微細繊維状セルロース、親水性物質以外に、デンプン類、油脂類、蛋白質類、食塩、各種リン酸塩等の塩類、乳化剤、酸味料、甘味料、香料、色素等の成分を適宜配合しても良い。特に油脂類や界面活性剤は、それらの配合により、さらに分散性が改善される場合もある。
【0021】
ここで言う油脂類とは、大豆油、ヤシ油、とうもろこし油、つばき油、パーム油、パーム核油、アマニ油、サラダ油、ゴマ油、綿実油、菜種油、オリーブ油、ひまわり油、ババスウ油、カカオ脂、コメ油、サフラワー油、からし油、ジンジャー油、落花生油、キリ油、ヒマシ油、鯨油、牛脂、ラード、硬化油、乳脂肪、バター、等の動植物油類、グリセリン脂肪酸エステル及びその誘導体である酢酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド等のモノグリセリド誘導体、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤類、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類及びそれらのエステル類、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セリルアルコール等の高級アルコール類、カルナウバロウ、カンデリラロウ、コメヌカロウ、シェラック、ミツロウ、ラノリン等のワックス類、パラフィンワックス、流動パラフィン、スクワレン等の炭化水素類、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンオイル類から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが使用され、その配合量は0.05〜1質量%が好ましい。
【0022】
界面活性剤の場合、HLB値として13以下が好ましい。油脂類はそのまま加えることができるが、動植物油等に界面活性剤、水等を加えて均質化することによって得られる乳化物の形態にした後に添加してもかまわない。また、油脂類を含有しているマーガリン、生クリーム等の形態で配合してもかまわない。
【0023】
この組成物は水性媒体中に投入し、機械的な剪断力を与えた時、粒子が崩壊し、粘性が発現することを特徴とする。上記の組成範囲をはずれると、著しく水性媒体中での粒子の崩壊・分散性が低下し、イオン濃度を下げるか、高温で撹拌するか、あるいは、強力に長時間撹拌する等の対処なしには各種産業、特に食品工業においては特定の用途以外には使用に耐えなくなる。
【0024】
本発明の乾燥組成物は、0.01%塩化カルシウム水溶液中にて撹拌すると、容易に粒子が崩壊・分散し、機能を発現する。その程度は、次式で算出される分散性指標(%)で表され、分散性指標が50%以上のサンプルを「分散性」であると判定する。これは0.25質量%における、「0.01%塩化カルシウム水粘度」の「イオン交換水粘度」に対する比率から求められる。
分散性指標(%)=(0.01%塩化カルシウム水粘度/イオン交換水粘度)×100
0.01%塩化カルシウム水溶液は、水道水の「硬度」として表現される数値は「90」であり、日本の水道水における最高レベルのイオン濃度である。このようなイオン存在下においては、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムをはじめとした水溶性高分子の膨潤・溶解性に影響を及ぼすことが知られているが、これに起因して粒子の崩壊・分散を促進する性質が著しく低下してしまう。つまり、このような条件下でも、機能を発揮する乾燥組成物であることが、要求されている。
【0025】
本発明の多糖類はグルコマンナン、ガラクトマンナン、アルギン酸類、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、寒天、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、大豆水溶性多糖類、カラヤガム、サイリウムシードガム、プルラン、アラビアガム、トラガントガム、ガッディーガム、アラビノガラクタン、カードランからなる群、好ましくはグルコマンナン、ガラクトマンナン、アルギン酸類、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ペクチンからなる群から少なくとも1種が選択される。また、ガラクトマンナンの種類はグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムであることが好ましい。
【0026】
グルコマンナンとは、D−グルコースとD−マンノースがβ−1,4結合した構造を有し、グルコースとマンノースの比率が約2:3の多糖類である。精製度が低いと独特の刺激臭があるので、精製度の高いものを使用することが望ましいが、用途に応じてコンニャク粉やコンニャクマンナンを使用することも可能である。
ガラクトマンナンとは、β−D−マンノースがβ−1,4結合した主鎖と、α−D−ガラクトースがα−1,6結合した側鎖からなる構造を有する多糖類である。ガラクトマンナンの例としては、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム等があり、マンノースとグルコースの比率は、グアーガムで約2:1、ローカストビーンガムで約4:1、タラガムで約3:1である。
【0027】
アルギン酸類とは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩、またはアルギン酸プロピレングリコールエステルを意味する。アルギン酸類の中でも、アルギン酸がナトリウムで中和された水溶性の多糖類であるアルギン酸ナトリウムを使用するのが好ましい。アルギン酸はβ−D−マンヌロン酸(Mと略する)とα−L−グルロン酸(Gと略する)からなる1,4結合のブロック共重合体である。Mからなるブロック(M−M−M−M)と、Gからなるブロック(G−G−G−G)と、両残基が交互に入り交じっているブロック(M−G−M−G)、という3つのセグメントから成り立っている。これらのアルギン酸類は、pHや塩濃度を制御して使用される場合もある。
【0028】
キサンタンガムとは、主鎖はD−グルコースがβ−1,4結合した構造を有し、この主鎖のアンヒドログルコースにD−マンノース、D−グルクロン酸、D−マンノースからなる側鎖が結合したものである。主鎖に付くD−マンノースの6位はアセチル化され、末端のD−マンノースがピルビン酸とアセタール結合している枝分かれの多い構造である。
タマリンドシードガムとは、主鎖がグルコースで、キシロースを側鎖に持つキシログルカンである。
【0029】
ペクチンとは、主鎖はα−D−ガラクツロン酸がα−1,4結合しており、部分的にメタノールでエステル化されている。ガラクツロン酸の主鎖にβ−L−ラムノースが入ることによって、分子にねじれが生じている。また中性のアラバン、ガラクタン、キシラン等が側鎖として結合している場合と、混在しているものがある。ペクチンを構成するガラクツロン酸は、メチルエステルの形と酸の2つの形で存在している。そのエステルの形で存在するガラクツロン酸の割合をエステル化度と呼び、エステル化度が50%以上のものがHMペクチン、50%未満のものがLMペクチンと言われている。
【0030】
カラギーナンとは、β−D−ガラクトースとα−D−ガラクトースのβ−1,4結合と、α−1,3結合が交互に繰り返され、ガラクトースユニットが結合した構造をとっている。
ジェランガムとは、グルコース、グルクロン酸、グルコースとL−ラムノースの4つの糖が、反復ユニットで直鎖状に結合したものである。ネイティブ型ジェランガムは、このグルコースのC−6位に3〜5%アセチル基が、C−2位にグリセリル基が結合している。脱アセチル化ジェランガムは、ネイティブ型ジェランガムを脱アセチル化処理して、精製したものである。
【0031】
寒天とは、β−D−ガラクトースとα−L−ガラクトースのβ−1,4結合と、α−1,3結合が交互に繰り返し構造を持つアガロースと、アガロース以外のイオン性多糖類であるアガロペクチンからなる多糖類である。
カルボキシメチルセルロース・ナトリウムとは、セルロースの水酸基をモノクロロ酢酸またはモノクロロ酢酸ナトリウム塩でエーテル化したもので、D−グルコースがβ−1,4結合した直鎖状の構造をしている。
【0032】
大豆水溶性多糖類は、ガラクトース、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロース、グルコース等の糖から構成され、ラムノガラクツロン酸鎖にガラクタンとアラビナンが結合したものであると推定されている。
カラヤガムとは、部分的にアセチル化した分岐のある多糖類で、約40%のウロン酸と8%以下のアセチル基を含んでいる。その主鎖にラムノースとガラクツロン酸があり、グルクロン酸が側鎖にあると推定されている。
【0033】
サイリウムシードガムとは、キシランを主鎖として高度に枝分かれした構造をしており、側鎖はアラビノース、キシロース、ガラクツロン酸、ラムノースからなる。この糖構成は、D−キシロース約64%、L−アラビノース約20%、L−ラムノース約6.4%、D−ガラクツロン酸約9.4%と推定されている。
プルランとは、マルトトリオースが、α−1,6−グリコシド結合を繰り返した直鎖状の構造をしている。
【0034】
アラビアガムの分子構造は明らかにされていないが、その構成糖はD−ガラクトース36%、L−アラビノース31%、L−ラムノース13%、D−グルクロン酸18%の他、タンパク質2%と報告されている。
トラガントガムとは、マメ科トラガントの樹液から得られ、トラガント酸70%とアラビノガラクタン10%を含むと言われている。
ガッディガムとは、D−グルクロン酸、L−アラビノース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−キシロースからなり、D−ガラクトース残基が主鎖を構成している。
アラビノガラクタンとは、D−ガラクトースが主鎖で、側鎖のL−アラビノースとの比率は、5〜6:1程度である。β1→3結合のガラクタン主鎖から、β1→6結合のガラクトースおよびβ1→3結合のアラビノースの短い側鎖が出ている。
カードランとは、グルコースがβ−1,3−グルコシド結合した直鎖状のグルカンである。
【0035】
本発明の乾燥組成物と、ガラクトマンナン、グルコマンナン、アルギン酸類、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、寒天、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、大豆水溶性多糖類、カラヤガム、サイリウムシードガム、プルラン、アラビアガム、トラガントガム、ガッディーガム、アラビノガラクタン、カードランから選択される少なくとも1種の多糖類を含有させることで、後述の粒子固定化作用を持つ、増粘ゲル化剤を調製することができる。本発明の増粘ゲル化剤における質量比は、乾燥組成物:多糖類=1:99〜99:1である(ただし合計で、100)。乾燥組成物:多糖類の質量比は、前記範囲内であれば何ら限定されるものではないが、好ましくは20:80〜90:10、さらに好ましくは50:50〜70:30の質量比の時に、増粘ゲル化剤として優れた機能を発揮する。つまり後述の安定性に優れる増粘剤用途や、耐熱性に優れるゲル化剤等として、優れた機能を発揮する。
【0036】
本発明における安定性とは、固定化指標をもとに表される。本発明の乾燥組成物や増粘ゲル化剤を使用した液体の固定化指標が、多糖類だけを使用した液体の固定化指標より大きい場合に、粒子固定化作用を有すると判定する。ここで言う固定化指標とは、全粒子における固定化粒子の割合(%)であり、下記式で表される。
固定化指標(%)=〔{α−(β+γ)}/α〕×100 ・・・(式1)
(α:全粒子数、β:表面に浮いている粒子数、γ:底面に沈殿している粒子数)
【0037】
本発明の乾燥組成物は、グルコマンナン、ガラクトマンナン、アルギン酸類からなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類を水中で混合・撹拌すると、後述の増粘相乗効果を発現する。また水中で混合・撹拌後、静置(加熱処理)することにより、耐熱性ゲルを形成し、中でもグルコマンナンとのゲルは、凍結・解凍することにより、「スポンジ状の構造を有するゲル状組成物」を形成する。
【0038】
ガラクトマンナンとしては、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガムのいずれかを選択するのが好ましく、中でもゲル化剤として使用する場合は、ローカストビーンガムまたはタラガムが好ましい。
さらに第1成分である乾燥組成物と、第2成分であるキサンタンガムと、第3成分であるグルコマンナン、ガラクトマンナン、アルギン酸類からなる群から選ばれる多糖類の、少なくとも3成分からなる増粘ゲル化剤を水中で混合・撹拌すると、前出の増粘相乗効果や耐熱性ゲルのゲル破断強度は、さらに秀でたものとなる。
【0039】
上述の第1成分と第3成分に対する、第2成分のキサンタンガムの質量比は、「第1成分(乾燥組成物)+第3成分(多糖類)」:「第2成分(キサンタンガム)」=70:30〜98:2であり、好ましくは80:20〜95:5、さらに好ましくは85:15〜90:10である(ただし合計で、100)。この範囲で、耐熱性ゲルが得られる。
本発明の耐熱性ゲルとは、加熱処理(殺菌処理)を施しても、ゲルが溶解せず均一な組織を保ち、投入した粒子の沈降・浮上を抑制された、ゲル状組成物である。この機能ゆえに、強い加熱処理(殺菌処理)が必要な常温流通ゲル食品、熱に安定な多層ゲル、熱に安定な固形物含有ゲルなどの供給が可能となる。
【0040】
ゲル状組成物の耐熱性は、以下に示す固定化指標により判定できる。まず、ゲル化剤を1質量%とした均一な水分散液を用意し、これに、以下で説明するごとき「粒子」を所定量混合して十分攪拌する。次に、これを容器に充填した後、加熱殺菌を行い、加熱殺菌後の固定化指標を測定し、それが40%以上である場合に、耐熱性を有すると判定する。なお、固定化指標とは、全粒子における固定化粒子の割合(%)であり、以下の式で表される。
固定化指標(%)=〔α−(β+γ)〕/α×100 ・・・(式2)
(ここで、α:全粒子数、β:表面に浮いている粒子数、γ:底面に沈降している粒子数をそれぞれ意味する。)
【0041】
ここにいう「粒子」とは、比重が0.1〜3.5で、かつ、1つ1つの粒子が、目視で判別できる大きさの固形物の粒子である。目視で判別できる大きさの粒子とは、具体的には、後述する粒子の長径および短径が50μm以上の粒子を指す。50μm未満の場合、人間の視力では目視で粒子を確認することは困難である。長径および短径が50μm以上であれば、粒子の形状は、特に制限されるものではない。具体的には、一定の大きさを持つ、多数の紙片や食品具材等を粒子として用いることができる。このような粒子が、加熱殺菌処理後に、どの程度の割合で、沈降したり表面に浮き上がったりせずにゲル状組成物中の固定位置を安定に維持できるかで、ゲル状組成物の耐熱性を判定する。
【0042】
本発明のゲル化剤を使用したゲル状組成物は、十分な耐熱性を有し、食品などに応用する場合に必要な加熱殺菌を、食品の状態を変化させない安定な状態で行うことができる。ゲル状組成物を食品等に使用する場合に適する加熱殺菌の温度としては、好ましくは80℃以上、より好ましくは105〜150℃、さらに好ましくは105〜121℃で加熱処理を行うのが望ましい。加熱時間の目安としては、80℃で1〜3時間程度、105℃以上であれば30分程度である。
【0043】
本発明の増粘ゲル化剤を使用する際には、その構成成分である多糖類に応じて、適宜、増粘やゲル化に必要な助剤(無機塩類、糖類、酸など)を併用する。例えばジェランガムにはカルシウム塩(乳酸カルシウム、塩化カルシウムなど)、ペクチンにはカルシウム類、糖類、酸など、カラギーナンには乳成分などを併用すると良い。
【0044】
本発明の液状組成物とは、室温で液状あるいはペースト状の形態をとるものであり、液状組成物を加工したもの、例えば液状組成物を冷却して製造したアイスクリームなども、これに含まれる。液状組成物には、液状食品組成物、液状化粧品組成物、液状医薬医療品組成物、液状工業用組成物等が含まれる。これら液状組成物に配合する、乾燥組成物または増粘ゲル化剤の添加量は、特に制限されるものではないが、通常は0.001〜2質量%程度、好ましくは0.1〜1質量%程度であり、目的に応じて添加量を調整すると良い。例えば、飲料の安定化であれば0.001〜0.6質量%程度、マヨネーズへの粘性付与であれば0.1〜2質量%程度が一般的である。
【0045】
本発明の液状食品組成物の例としては、「コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、麦茶等の茶類、抹茶、ココア、汁粉、ジュース、豆乳、大豆飲料などの嗜好飲料」、「生乳、加工乳、はっ酵乳飲料、乳酸菌飲料、乳飲料などの乳成分含有飲料」、「はっ酵乳」、「ぜんざい」、「カルシウム強化飲料等の栄養強化飲料並びに食物繊維含有飲料等を含む各種の飲料類」、「アイスクリーム、ソフトクリーム、ラクトアイス、アイスミルク、シャーベット、フローズンヨーグルトなどの冷菓」、「コーヒーホワイトナー、ホイップクリーム、カスタードクリーム、チーズなどの乳製品類」、「ソフトキャンディー、チョコレートなどを含む和・洋菓子類」、「スプレッド、ショートニングなどの油脂加工食品類」、「スープ類」、「シチュー類」、「フィリング類」、「バッターミックス類」、「ソース、タレ、ドレッシング等の調味料類」、「練りがらしに代表される各種練り調味料」、「フルーツソース、フルーツプレパレーション、ジャム、餡に代表される果実加工品や野菜加工品」、「塩辛などの珍味類」、「漬物類」、「経管流動食等の流動食類」、「液状あるいはペースト状の健康食品類」および「液状あるいはペースト状のペットフード類」等があげられ、レトルト食品、冷凍食品、電子レンジ用食品等のように、形態または用時調製の加工手法が異なっていても本発明に含まれる。
【0046】
液状医薬医療品組成物の例としては、「シロップ薬、ビタミン薬、滋養強壮薬などの経口医薬品」、「ホルモン剤などの経鼻医薬品」、「輸液、抗腫瘍薬、化学療法剤などの点滴・経管医薬品」、経腸医薬品、外皮用薬、薬物およびDNA担体、「人工軟骨、生体用接着剤等の生体材料」、「医薬品に区分される経管流動食などの流動食類」、「薬用化粧品、ビタミン含有保健剤、毛髪用剤、薬用歯磨き剤、浴用剤、殺虫剤・防虫剤、腋臭防止剤、口内清涼剤などの医薬部外品」、貼布剤、コーティング剤などがあげられる。
【0047】
液状化粧品組成物の例としては、「化粧水、乳液、美容液、パック、モイスチャークリーム、マッサージクリーム、コールドクリーム、クレンジングクリーム、洗顔料、バニシングクリーム、エモリエントクリーム、ハンドクリーム、日焼け止め用化粧料などの皮膚用化粧品」、「ファンデーション、口紅、リップクリーム、ほほ紅、サンスクリーン化粧料、まゆ墨、マスカラ等まつげ用化粧料、マニキュアや除光液等のつめ化粧料などの仕上用化粧品」、「シャンプー、ヘアリンス、ヘアトニック、ヘアトリートメント、ポマード、チック、ヘアクリーム、香油、整髪料、ヘアスタイリング剤、ヘアスプレー、染毛料、育毛剤や養毛剤などの頭髪用化粧品」、さらにはハンドクリーナーのような洗浄剤、浴用化粧品、ひげそり用化粧品、芳香剤、歯磨き剤、軟膏、貼布剤等があげられる。
【0048】
液状工業用組成物の例としては、顔料、塗料、インク類、「消臭・芳香剤、抗菌・防カビ剤、衛生材料、歯磨き剤等のトイレタリー製品」、接着剤、コーティング剤、界面活性剤、培養材料、洗剤・液体石けん、触媒、重合助剤、火薬・爆薬類、燃料などがあげられる。
【0049】
本発明のゲル状組成物は、増粘ゲル化剤を水性媒体に分散することで得られる。ゲル状組成物は、室温でゲル状の形態をとるものであり、ゲル状食品組成物、ゲル状化粧品組成物、ゲル状医薬医療品組成物、ゲル状工業用組成物等が含まれる。これらゲル状組成物に配合する、乾燥組成物または増粘ゲル化剤の添加量は、特に制限されるものではないが、通常は0.1〜2質量%程度、好ましくは0.3〜1質量%程度である。
【0050】
ゲル状組成物は、食品具材などのその他材料を混合したものでもよい。そのようなゲル状組成物を調製するときの、ゲル化剤やその他材料を加える順番は特に限定しないが、その他材料の中にはゲル形成を阻害するものがあるので、まずゲル化剤分散液を調製してから、その他材料を添加して混合し、ゲル化剤を含む液状組成物を調製するのが望ましい。また、ゲル状組成物に冷凍、冷解凍、乾燥等の処理を施して使用しても構わない。
【0051】
応用できるゲル状食品組成物の例としては、「プリン、ゼリーなどのデザート類」、「ハードヨーグルト、ソフトヨーグルト、フルーツヨーグルト、カルシウム等が添加された栄養強化ヨーグルトなどのヨーグルト類」、「アイスクリーム、ソフトクリーム、ラクトアイス、アイスミルク、シャーベット、フローズンヨーグルトなどの冷菓」、「キャンディー、グミキャンディー、クッキー、ビスケット、コーンフレーク、煎餅、ホットケーキ、チョコレート、ガム、餅などを含む和・洋菓子類」、「飲料、みつまめ、ヨーグルトなどにアクセント付けとして添加される具材」、「嚥下障害者用食品、介護食、きざみ食、とろみ食などのユニバーサルデザインフード」、「ゼリー状飲料」、「ソース、タレ、ドレッシング、マヨネーズなどの調味料」、「練りがらしに代表される各種練り調味料」、「麺類」、「フルーツソース、フルーツプレパレーション、ジャム、餡に代表される果実加工品や野菜加工品」、「フィリング類」、「バッターミックス類」、「塩辛などの珍味類」、「漬物類」、「食品に区分される流動食類」、「健康食品や栄養強化食品」、「茶碗蒸しや豆腐などのゲル状食品」、「かまぼこなどの練り製品」、「ソーセージ、ハムなどの畜肉食品」、「ホイップクリーム、バター、チーズなどの乳製品」、「スプレッド、ショートニングなどの油脂加工食品類」、「惣菜・弁当類」、「通常飲料(コーヒー、茶類、アイソトニック飲料、牛乳、乳飲料、豆乳類、抹茶、ココア、しるこ、ジュースなど)として摂取されるもののゲル化物」、「ペットフード類」などがあげられる。
【0052】
上述の例以外にも、本発明のゲル化剤を使用することによって、現在一般的に市場に流通していない新規な食品形態をも提供することが可能となる。新規な食品形態の例としては、卵の代わりにゲル化剤を使用した茶碗蒸し、プリン、マヨネーズなどの「新規なアレルゲン除去食品」、米の代わりに本ゲル化剤を使用したかゆ状食品などの「新規な低カロリー食品」、スープやみそしるなどをゲル化させ温めて摂取できる「食事代替チュアパック飲料」などがある。
【0053】
ゲル状医薬医療品組成物の例としては、「経口医薬品、ホルモン剤などの経鼻医薬品、経腸医薬品、外皮用薬、経皮医薬品などの医薬品類」、造影剤、「医薬品に区分される流動食類」、「薬用化粧品、ビタミン含有保健剤、毛髪用剤、薬用歯磨き剤、浴用剤、殺虫剤・防虫剤、腋臭防止剤、口内清涼剤などの医薬部外品」、「人工軟骨、薬物担体、DNA担体、生体用接着剤、創傷被覆材、人工臓器、医療用界面活性剤などの生体材料」、貼布剤、コーティング剤などがあげられる。
【0054】
ゲル状化粧品組成物の例としては、「美容成分含有ゲル状化粧料、パック、モイスチャークリーム、マッサージクリーム、コールドクリーム、クレンジングクリーム、洗顔料、バニシングクリーム、エモリエントクリーム、ハンドクリーム、日焼け止め用化粧料などの皮膚用化粧品」、「ファンデーション、口紅、リップクリーム、ほほ紅、サンスクリーン化粧料、まゆ墨、マスカラ等まつげ用化粧料、マニキュアや除光液等のつめ化粧料などの仕上用化粧品」、「シャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ポマード、チック、ヘアクリーム、香油、整髪料、ヘアスタイリング剤、ヘアスプレー、染毛料、育毛剤や養毛剤などの頭髪用化粧品」、さらにはハンドクリーナーのような洗浄剤、浴用化粧品、ひげそり用化粧品、芳香剤、歯磨き剤、軟膏、貼布剤などがあげられる。
【0055】
ゲル状工業用組成物の例としては、顔料、塗料、インク類、消臭・芳香剤、抗菌・防カビ剤、接着剤、コーティング剤、界面活性剤、「紙おむつなどの衛生材料」、「細胞、細菌、ウイルスなどの培養材料」、「電気泳動用ゲル、クロマトカラムあるいはその充填剤などの実験材料」、「土壌改良剤、植物栽培用保水材などの農業・園芸用品」、人工雪、ろ過材、吸着剤、洗剤・石けん、触媒、重合助剤、火薬・爆薬類、燃料などがあげられる。
【0056】
液状組成物やゲル状組成物には、増粘剤・ゲル化剤と水に加えて、その他の成分が配合されていても良い。例えば、食品素材(畜肉、魚肉、豆・穀類およびその粉砕物、牛乳・乳製品、はっ酵乳、野菜、果物、果汁、食用油脂等)、嗜好飲料(コーヒー、茶類、ジュース、乳飲料、豆乳等)、調味料(みそ、しょうゆ、砂糖、塩、グルタミン酸ナトリウム等)、甘味料、糖類、糖アルコール類、香料、色素、香辛料、酸味料、乳化剤、界面活性剤、保存料、日持向上剤、抗菌剤、崩壊剤、消泡剤、発泡剤、pH調整剤、増粘安定剤、食物繊維、栄養強化剤(ビタミン、ミネラル、アミノ酸類等)、エキス類、タンパク質、でんぷん類、ペプチド、アルコール類、有機溶剤、可塑剤、油脂、緩衝液、燃料、火薬・爆薬類、酸、アルカリ、イオン性物質、マイクロカプセル、美容成分(美白成分、保湿成分等)、生理活性物質、薬効成分、医薬品添加物、農薬、肥料、消臭剤、殺虫剤、金属類、触媒、セラミック、塗料、インク、顔料、研磨剤、合成高分子(プラスチック、ゴム、合成繊維等)、天然由来高分子(コラーゲン、ヒアルロン酸、天然繊維等)、紙などが配合されていても良い。なお、レトルト食品、冷凍食品、電子レンジ用食品等のように、形態または使用時調製の加工手法が異なっていてもよい。また液状組成物やゲル状組成物を、冷やし固めたり、冷解凍や乾燥処理などの処理を加えてから使用しても構わない。
液状食品組成物やゲル状食品組成物は、通常、pH3〜8、食塩濃度0.001〜20%で供給されるため、このような条件下で効果を発現することが求められる。
【0057】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお本願発明にかかる物質の諸物性の評価は以下の手法に拠った。
<セルロース性物質の平均重合度>
ASTM Designation: D 1795−90「Standerd Test Method for Intrinsic Viscosity of Cellulose」に準じて行う。
<セルロース性物質のα−セルロース含有量>
JIS P8101−1976(「溶解パルプ試験方法」5.5 αセルロース)に準じて行う。
【0058】
<セルロース繊維(粒子)の形状(長径、短径、長径/短径比)>
セルロース繊維(粒子)のサイズの範囲が広いので、一種類の顕微鏡で全てを観察することは不可能である。そこで、繊維(粒子)の大きさに応じて光学顕微鏡、走査型顕微鏡(中分解能SEM、高分解能SEM)を適宜選択し、観察・測定する。
光学顕微鏡を使用する場合は、後述の「0.25%粘度」測定の際に調製されるセルロース繊維(粒子)の水分散液を適当な濃度に調整し、それをスライドガラスにのせ、さらにカバーグラスをのせて観察する。
また、中分解能SEM(JSM−5510LV、日本電子株式会社製)を使用する場合は、サンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約3nm蒸着して観察する。
高分解能SEM(S−5000、株式会社日立サイエンスシステムズ製)を使用する場合は、サンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約1.5nm蒸着して観察する。
セルロース繊維(粒子)の長径、短径、長径/短径比は撮影した写真から15本(個)以上を選択し、測定した。繊維はほぼまっすぐから、髪の毛のようにカーブしているものがあったが、糸くずのように丸まっていることはなかった。短径(太さ)は、繊維1本の中でもバラツキがあったが、平均的な値を採用した。高分解能SEMは、短径が数nm〜200nmの繊維の観察時に使用したのだが、一本の繊維が長すぎて、一つの視野に収まらなかった。そのため、視野を移動しつつ写真撮影を繰り返し、その後写真を合成して解析した。
【0059】
<損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)>
(1)固形分濃度が0.5質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、エースホモジナイザー(商標、日本精機株式会社製、AM−T型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)25℃の雰囲気中に3時間静置する。
(3)動的粘弾性測定装置にサンプル液を入れてから5分間静置後、下記の条件で測定し、周波数10rad/sにおける損失正接(tanδ)を求める。
装置 :ARES(100FRTN1型)
(商標、Rheometric Scientific,Inc.製)
ジオメトリー:Double Wall Couette
温度 :25℃
歪み :10%(固定)
周波数 :1→100rad/s(約170秒かけて上昇させる)
【0060】
<「水中で安定に懸濁する成分」の含有量>
(1)セルロース濃度が0.1質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、エースホモジナイザー(商標、日本精機株式会社製、AM−T型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)サンプル液20gを遠沈管に入れ、遠心分離機にて9800m/sで5分間遠心分離する。
(3)上層の液体部分を取り除き、沈降成分の質量(a)を測定する。
(4)次いで、沈降成分を絶乾し、固形分の質量(b)を測定する。
(5)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [質量%]
但し、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。
k1=0.02−b+s2
k2=k1×w2/w1
(カルボキシメチルセルロース・ナトリウム+親水性物質)/セルロース
=d/f [配合比率]
w1=19.98−a+b−0.02×d/f
w2=a−b
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
【0061】
「水中で安定に懸濁する成分」の含有量が非常に多い場合は、沈降成分の重量が小さな値となるので、上記の方法では測定精度が低くなってしまう。その場合は(3)以降の手順を以下のようにして行う。
(3’)上層の液体部分を取得し、重量(a’)を測定する。
(4’)次いで、上層成分を絶乾し、固形分の重量(b’)を測定する。
(5’)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k+k) [質量%]
但し、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。
k1=b’−s2×w1/w2
k2=k1×w2/w1
(カルボキシメチルセルロース・ナトリウム+親水性物質)/セルロース
=d/f [配合比率]
w1=a’−b’
w2=19.98−a’+b’−0.02×d/f
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
もし、(3)の操作で上層の液体部分と沈降成分の境界が明瞭ではなく分離が難しい場合は適宜セルロース濃度を下げて操作を行う。
【0062】
<乾燥組成物の0.25質量%粘度>
(1)固形分濃度が0.25質量%の水分散液となるように、サンプルと分散媒を量り取り、「イオン交換水粘度溶液」と「0.01%塩化カルシウム水粘度溶液」を調製する。
(1a)イオン交換水粘度溶液:サンプルとイオン交換水を量り取り、エースホモジナイザー(商標、日本精機株式会社製、AM−T型)を用いて、25℃で、15000rpm、5分間分散する。
(1b)0.01%塩化カルシウム水粘度溶液:サンプルと0.01質量%塩化カルシウム水を量り取り、T.K.ホモミクサー(商標、特殊機化工業株式会社製 MARK−2型)を用いて、60℃で、8000rpm、10分間分散する。
(2)上記2種類の粘度溶液を、25℃の雰囲気中に3時間静置する。
(3)静置状態のまま、回転粘度計(株式会社トキメック製、B形粘度計、BL形)にセットし、撹拌終了30秒後にローターの回転を開始し、それから30秒後の指示値より粘度を算出する。なお、ローター回転数は60rpmとし、ローターは粘度によって適宜変更する。
【0063】
<乾燥組成物の分散性の判定>
(1)上記で求めた、0.25質量%における、「0.01%塩化カルシウム水粘度」と、「イオン交換水粘度」から、次式に従って、分散性指標(%)を算出する。
分散性指標(%)=(0.01%塩化カルシウム水粘度/イオン交換水粘度)×100
(2)分散性指標が50%以上のサンプルを、「分散性」であると判定する。
<粒子の寸法測定>
粒子をマイクロスコープで観察するか、またはマイクロメーターで測定し、長径と短径
を求めた。この時の繰り返し回数は30回とした。
<粒子の比重>
JIS Z 8807−1976(固体比重測定方法)に準じて比重を算出した。
<pH>
pH計(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM−50G形」)で測定する。ただしゲル状組成物のpHは、ゲル化する前の液状組成物を試験サンプルとして使用して測定する。
【0064】
<0.35質量%水分散液の調製と粒子数測定>
まず固形分が1質量%の水分散液となるように、サンプルと水を量り取り、「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)を使用して、8000rpmで10分間分散する。この1質量%のサンプル水分散液:水を3.5:6.5の比率で混合し、さらに5分間分散して、0.35質量%サンプル水溶液を調製する。この時の温度は特に規定するものではないが、サンプルの分散に適した温度を選択する。また使用する多糖類の性質に合わせて、機能の発現に不可欠な添加剤(カルシウム等)を加えても良い。
0.35質量%水分散液の粒子固定化作用とは、紙製粒子(長径5mm、短径3mmの長方形、厚さ0.3mm、比重0.9)を、保持する性質のことである。
0.35質量%サンプル水分散液を、それぞれ100mLサンプル瓶に充填する。次に紙製粒子を、それぞれに20個ずつ添加する。25℃で1時間温調後、サンプル瓶を上下に激しく振盪し混合する。さらに25℃で3時間静置した後、目視により、液面に浮いている粒子数、または底面に沈殿している粒子数を数え、後述の固定化指標(%)の式に代入して、固定化指標(%)を求める。
【0065】
<液体中の固定化指標の算出、安定性の判定>
固定化指標(%)は、次式で求められる。
固定化指標(%)=〔{α−(β+γ)}/α〕×100
α:全粒子数
β:液面に浮いている粒子数
γ:底面に沈殿している粒子数
固定化指標が、同じ濃度に調製した、水溶性高分子や多糖類だけを使用した液体の固定化指標より大きい場合に、粒子固定化作用を有すると判定する。つまり、以下に示す固定化指標X、Yが、「固定化指標X>固定化指標Y」の関係にある場合、安定性を有すると判定する。
固定化指標X:乾燥組成物(あるいは増粘ゲル化剤)を、液体にしたときの固定化指標
固定化指標Y:固定化指標Xを求める際に使用した、乾燥組成物(あるいは増粘ゲル化剤)に含まれる水溶性高分子(あるいは多糖類)を、液体にしたときの固定化指標
【0066】
<粒子の寸法測定>
粒子をマイクロスコープで観察するか、またはマイクロメーターで測定し、長径と短径を求めた。この時の繰り返し回数は30回とした。
<球状粒子の平均粒径>
上記で使用した粒子の長径と短径から、「(長径+短径)/2」で算出する。この時の繰り返し回数は30回とした。
<粒子の比重>
JIS Z 8807−1976(固体比重測定方法)に準じて比重を算出した。
【0067】
<pH>
pH計(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM−50G形」)で測定した。
<ゲルの耐熱性の判定>
(1)1質量%増粘ゲル化剤分散液を試験サンプルとして用い、紙製粒子(長径5mm、短径5mmの正方形、厚さ0.3mm)を、それぞれ20個ずつ添加して均一に混合し、内径約45mmの円筒状ガラス容器に高さ約45mmになるまで注入・充填する。1%増粘ゲル化剤の分散方法は、増粘ゲル化剤の性質に応じ、適した方法を選択する。
(2)粒子として紙製粒子(長径5mm、短径5mmの正方形、厚さ0.3mm)を用い、これを充填容器あたり20個添加する。
(3)120℃で30分加熱し、加熱処理終了後、80℃でゲルの出来上がりを目視で確認し、液面に浮いている粒子数、底面に沈降している粒子数を数える。
(4)耐熱性の判定:(3)で数えた各粒子数をもとに、以下の式を用いて、固定化指標を求める。この固定化指標が40%以上であるときに、「耐熱性がある」と判断する。
固定化指標(%)=〔α−(β+γ)〕/α×100(α:全粒子数、β:液面に浮いている粒子数、γ:底面に沈降している粒子数)
【0068】
<ゲルの破断強度>
(1)上記の1質量%ゲル化剤分散液を試験サンプルとして用い、内径約45mmの円筒状ガラス容器に、高さ約45mmになるまで注入・充填する。
(2)80℃で1時間加熱後、25℃で3時間、冷却する。
(3)ゲルを容器から取り出すことなくそのまま、以下の条件で測定する。
装置:RHEO METER(NRM−2002J型)(不動工業株式会社製)
押し込み治具:10mmφ球状治具
押し込み速度:20mm/min
測定温度:25℃
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例と比較例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。実施例で使用する乾燥組成物、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、キサンタンガム、デキストリン、グルコマンナン、グアーガムについて、次の(1)〜(8)に示す。
【0070】
(1)乾燥組成物Aの調製:市販バガスパルプ(平均重合度=1320、α−セルロース含有量=77%)を、6×16mm角の矩形に裁断し、固形分濃度が77質量%になるように水を加えた。これを、水とパルプチップができるだけ分離しないよう注意して、カッターミル(カッティングヘッド/水平刃間隙:2.03mm、インペラー回転数:3600rpm)に1回通したところ、繊維長が0.5〜2.5mmになった。この水分散液を水で希釈して4質量%にし、砥石回転型粉砕機(グラインダー回転数:1800rpm)で処理した。処理回数は2回で、グラインダークリアランスを60→40μmと変えて処理した。
次いで得られた水分散液を水で希釈して2質量%にし、高圧ホモジナイザー(処理圧力100MPa)で8パスし、微細繊維状セルローススラリーAを得た。この微細繊維状セルローススラリーAの結晶化度は74%だった。光学顕微鏡および中分解能SEMで観察したところ、長径が10〜500μm、短径が1〜25μm、長径/短径比が5〜190の微細な繊維状のセルロースが観察された。損失正接は0.38だった。「水中で安定に懸濁する成分」は98質量%だった。
カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:デキストリン:微細繊維状セルロース:ナタネ油=12.5:39:48:0.5(質量部)となるように、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム(1質量%水溶液粘度:3400mPa・s)、デキストリン(DE:28)、微細繊維状セルローススラリーAを、T.K.ホモミクサー(商標、特殊機化工業株式会社製 MARK−2型)で9000rpm、10分間撹拌・混合した。
この分散液を平滑なアルミニウム板上に約3mmの厚さで伸展し、熱風乾燥機で120℃40分間乾燥し、得られたフィルム状物をカッターミル(不二パウダル株式会社製)で、目開き2mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕し、鱗片状の乾燥組成物Aを得た。
【0071】
(2)乾燥組成物Bの調製: 乾燥組成物Aと同様の方法で、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:デキストリン:微細繊維状セルロース:ナタネ油=7.5:60:32:0.5(質量部)となるように調製し、乾燥組成物Bを得た。なお、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、デキストリン、微細繊維状セルローススラリーA、ナタネ油は、乾燥組成物Aと同じものを用いた。
【0072】
(3)乾燥組成物Cの調製: 乾燥組成物Aと同様の方法で、キサンタンガム:デキストリン:微細繊維状セルロース:ナタネ油=24:27.5:48:0.5(質量部)となるように調製し、乾燥組成物Cを得た。なお、キサンタンガム(大日本製薬株式会社製)と、乾燥組成物Aに使用したデキストリン、微細繊維状セルローススラリーA、ナタネ油を用いた。
【0073】
(4)乾燥組成物Dの調製:市販木材パルプ(平均重合度=1820、α−セルロース含有量=77質量%)を、6×16mm角の矩形に裁断し、固形分濃度が80質量%になるように水を加えた。これを、水とパルプチップができるだけ分離しないよう注意して、カッターミル(カッティングヘッド/水平刃間隙:2.03mm、インペラー回転数:3600rpm)に1回通した。
次にセルロース濃度が2質量%となるように、カッターミル処理品と水を量り取り、繊維の絡みがなくなるまで撹拌した。この水分散液を砥石回転型粉砕機(グラインダー回転数:1800rpm)で、グラインダークリアランスを110→80μmと変えて2回処理した。次いで、高圧ホモジナイザー(処理圧力:95MPa)で6パスし、微細繊維状セルローススラリーDを得た。
光学顕微鏡で観察したところ、長径が10〜400μm、短径が1〜5μm、長径/短径比が10〜300の微細な繊維状セルロースが観察された。損失正接は0.64、「水中で安定に懸濁する成分」の含有量は43質量%だった。それを高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜20μm、短径が10〜150nm、長径/短径比が30〜300のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
上記の微細繊維状セルローススラリーDを用いて、乾燥組成物Aと同様の方法で、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:デキストリン:微細繊維状セルロース:ナタネ油=12.5:39:48:0.5(質量部)となるように調製し、乾燥組成物Dを得た。なお、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、デキストリン、ナタネ油は、乾燥組成物Aと同じものを用いた。
【0074】
(5)乾燥組成物Xの調製:乾燥組成物Aと同様の方法で、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:デキストリン:微細繊維状セルロース:ナタネ油=13:19.5:67:0.5(質量部)となるように調製し、乾燥組成物Xを得た。なお、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、デキストリン、微細繊維状セルローススラリーA、ナタネ油は、乾燥組成物Aと同じものを用いた。
【0075】
(6)乾燥組成物Yの調製:乾燥組成物Dと同様の方法で、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:デキストリン:微細繊維状セルロース:ナタネ油=13:19.5:67:0.5(質量部)となるように調製し、乾燥組成物Yを得た。なお、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、デキストリン、微細繊維状セルローススラリーD、ナタネ油は、乾燥組成物Dと同じものを用いた。
(7)キサンタンガム(大日本製薬株式会社製)
(8)グルコマンナン(清水化学株式会社製、易溶性タイプ)
(9)カルボキシメチルセルロース・ナトリウム(第一工業製薬株式会社製)
(10)グアーガム(ユニテックフーズ株式会社製)
乾燥組成物A〜D、X、Yの組成を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
[実施例1]
まず上記の乾燥組成物Aをサンプルとして、分散性の判定を行った。
(1)固形分濃度が0.25質量%の水分散液となるように、サンプルと分散媒を量り取り、「イオン交換水粘度溶液」と「0.01%塩化カルシウム水粘度溶液」を調製した。
(1a)イオン交換水粘度溶液:サンプルとイオン交換水を量り取り、エースホモジナイザー(商標、日本精機株式会社製、AM−T型)を用いて、25℃で、15000rpm、5分間分散した。
(1b)0.01%塩化カルシウム水粘度溶液:サンプルと0.01質量%塩化カルシウム水を量り取り、T.K.ホモミクサー(商標、特殊機化工業株式会社製 MARK−2型)を用いて、60℃で、8000rpm、10分間分散した。
(2)上記2種類の粘度溶液を、25℃の雰囲気中に3時間静置した。
(3)静置状態のまま、回転粘度計(株式会社トキメック製、B形粘度計、BL形)にセットし、撹拌終了30秒後にローターの回転を開始し、それから30秒後の指示値より粘度を算出した。なお、ローター回転数は60rpmとした。
(4)上記で求めた、0.25質量%における、「0.01%塩化カルシウム水粘度」は29mPa・sであった。
(5)また0.25質量%における、「イオン交換水粘度」は41mPa・sであった。
(6)次式に従って、分散性指標(%)を算出したところ、分散性指標は71%であり、乾燥組成物Aは、「分散性である」と判定した。
分散性指標(%)=(0.01%塩化カルシウム水粘度/イオン交換水粘度)×100
さらに乾燥組成物Aを用い、粒子固定化作用の判定を行った。
(7)固形分が1質量%の水分散液となるように、サンプルと水を量り取り、「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)を使用して、8000rpmで10分間分散した。この1質量%のサンプル水分散液:水を3.5:6.5の比率で混合し、さらに5分間分散して、0.35質量%サンプル水溶液を調製した。
(8)0.35質量%サンプル水分散液を、100mLサンプル瓶に充填し、紙製粒子(長径5mm、短径3mmの長方形、厚さ0.3mm、比重0.9)を20個添加した。
(9)25℃で1時間温調後、サンプル瓶を上下に激しく振盪し混合する。さらに25℃で3時間静置した後、目視により、液面に浮いている粒子数、または底面に沈殿している粒子数を数え、以下の固定化指標(%)の式に代入して、固定化指標を求めたところ、固定化指標は60%であり、比較例3と比較して、「安定性を有する」と判定した。
固定化指標(%)=〔{α−(β+γ)}/α〕×100
α:全粒子数
β:液面に浮いている粒子数
γ:底面に沈殿している粒子数
【0078】
[実施例2]
上記の乾燥組成物Bを用いて、実施例1と同様の方法で粘度を測定し、分散性の判定を行った。
0.25質量%における、「0.01%塩化カルシウム水粘度」は14mPa・sであった。また0.25質量%における、「イオン交換水粘度」は15mPa・sであった。
分散性指標(%)を算出したところ、分散性指標は93%であり、乾燥組成物Bは、「分散性である」と判定した。
さらに乾燥組成物Bを用いて、実施例1と同様の方法で測定した、固定化指標は40%であり、比較例4と比較して、「安定性を有する」と判定した。
【0079】
[実施例3]
上記の乾燥組成物Cを用いて、実施例1と同様の方法で粘度を測定し、分散性の判定を行った。
0.25質量%における、「0.01%塩化カルシウム水粘度」は54mPa・sであった。また0.25質量%における、「イオン交換水粘度」は102mPa・sであった。
分散性指標(%)を算出したところ、分散性指標は53%であり、乾燥組成物Cは、「分散性である」と判定した。
さらに乾燥組成物Cを用いて、実施例1と同様の方法で測定した、固定化指標は70%であり、比較例5と比較して、「安定性を有する」と判定した。
【0080】
[実施例4]
上記の乾燥組成物Dを用いて、実施例1と同様の方法で粘度を測定し、分散性の判定を行った。
0.25質量%における、「0.01%塩化カルシウム水粘度」は39mPa・sであった。また0.25質量%における、「イオン交換水粘度」は69mPa・sであった。
分散性指標(%)を算出したところ、分散性指標は57%であり、乾燥組成物Dは、「分散性である」と判定した。
さらに乾燥組成物Dを用いて、実施例1と同様の方法で測定した、固定化指標は70%であり、比較例3と比較して、「安定性を有する」と判定した。
【0081】
[実施例5]
乾燥組成物Aとキサンタンガムを、70:30の質量比で混合し、増粘ゲル化剤aを調製した。実施例1と同様の方法で求めた、増粘ゲル化剤aの固定化指標は80%であり、比較例6と比較して、「安定性を有する」と判定した。
【0082】
[実施例6]
乾燥組成物Aとグルコマンナンを、75:25の質量比で混合し、増粘ゲル化剤bを調製した。増粘ゲル化剤bを用いたゲルを以下の方法で作製し、耐熱性の判定を行った。
(1)1質量%の増粘ゲル化剤bと、水を混合し、エースホモジナイザー(商標、日本精機株式会社製、AM−T型)を用いて、25℃で、10000rpm、5分間、分散させた。
(2)この1質量%増粘ゲル化剤水分散液に、紙製粒子(長径5mm、短径5mmの正方形、厚さ0.3mm)を、添加して均一に混合し、それぞれ20個ずつ、内径約45mmの円筒状ガラス容器に高さ約45mmになるまで注入・充填した。
(3)120℃で30分加熱し、加熱処理終了後、80℃でゲルの出来上がりを目視で確認し、表面に浮いている粒子数、底面に沈降している粒子数を数えた。
(4)耐熱性の判定:(3)で数えた各粒子数をもとに、以下の式を用いて、固定化指標を求めたところ、80%であった。固定化指標が40%以上であり、「耐熱性がある」と判定した。
固定化指標(%)=〔α−(β+γ)〕/α×100(α:全粒子数、β:表面に浮いている粒子数、γ:底面に沈降している粒子数)
さらに以下の手順で、ゲル破断強度を測定したところ、0.12Nであった。
(5)上記の1質量%増粘ゲル化剤分散液を試験サンプルとして用い、内径約45mmの円筒状ガラス容器に、高さ約45mmになるまで注入・充填した。
(6)80℃で1時間加熱後、25℃で3時間、冷却した。
(7)ゲルを容器から取り出すことなくそのまま、以下の条件で測定した。
装置:RHEO METER(NRM−2002J型)(不動工業株式会社製)
押し込み治具:10mmφ球状治具
押し込み速度:20mm/min
測定温度:25℃
【0083】
[実施例7]
乾燥組成物A:グルコマンナン:キサンタンガム=50:40:10の質量比で混合し、増粘ゲル化剤cを調製した。増粘ゲル化剤cを用いて、実施例6と同様の方法でゲルを作製した。固定化指標を求めたところ、60%であり、「耐熱性がある」と判断した。ゲル破断強度を測定したところ、0.75Nであり、乾燥組成物Aとグルコマンナンだけから形成したゲルよりも、著しく高い値を示した。
【0084】
[実施例8]
乾燥組成物Aを用いてミルクコーヒーを試作し、沈澱抑制効果を確認した。0.01質量%乾燥組成物A、0.03質量%静菌剤(三菱化学フーズ株式会社、ショ糖パルミチン酸エステル)、6質量%グラニュー糖(第一糖業株式会社製)と混合して、粉体混合物とした。「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)を使用し、48質量%コーヒー抽出液(生豆換算8倍抽出液)、13質量%の牛乳、水を、80℃、6500rpmで混合しながら、上記粉体混合物を添加し、合計で100質量%とした。さらに10分間分散させ、外割で重曹を加え、pH6.8に調製した。
次にマントンゴーリン型ホモジナイザー(APV社製)で、15MPaで均質化処理し、200mL耐熱瓶に充填した。さらにレトルト殺菌器(株式会社平山製作所製)で、120℃で40分間、殺菌処理した。
5℃、25℃、60℃で、1ヶ月間の保存試験を行い、試験終了後、耐熱瓶を反転させて、沈澱の状況を確認したところ、全ての保存温度で、沈澱が抑制されており、安定性が良好であった。この時のpHは6.5であった。
【0085】
[実施例9]
乾燥組成物B:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム=20:80の質量比で混合した増粘ゲル化剤dを用いて、はっ酵乳飲料を試作、評価した。
全量が100質量%となるように、水に0.2質量%増粘ゲル化剤dを分散させたものと、75質量%の牛乳(南日本酪農協同株式会社製、乳脂肪分3.5%以上、無脂乳固形分8.3%)をステンレスビーカーに注ぎ、プロペラ攪拌翼を使用して、25℃で200rpmで攪拌しながら、3.3質量%の脱脂粉乳(雪印乳業株式会社製)を添加し、10分間攪拌を続けた。
その溶液を、実施例8のマントンゴーリン型ホモジナイザーを使用し、15MPaの処理圧力で均質化し、プロペラ攪拌翼を用いて、80℃、200rpmで更に30分間攪拌し、殺菌処理した。さらにクリーンベンチ内で、200rpmで攪拌しながら、20分で30℃まで冷却した。この溶液に0.01%質量%水溶液としたスターター(ダニスコ カルター社製)を、外割で0.32質量%加え、スパチュラで攪拌し、発酵用容器に充填した。これをインキュベーターに移し、42℃で8時間発酵させた。発酵後5℃の冷蔵庫に移し、3日間経過したものを攪拌用ヨーグルト(無脂乳固形分9.4%以上)とした。
この攪拌用ヨーグルトを、マントンゴーリン型ホモジナイザーを使用して15MPaで処理したものを90質量%と、イチゴ果肉とグラニュー糖をそれぞれ5質量%ずつ混合し、5℃で24時間冷却したものを、はっ酵乳飲料とした。はっ酵乳飲料における、増粘ゲル化剤dの配合量は0.2質量%であり、pHは4.5であった。また、沈澱や分離等の異常は見られず、安定性は良好であった。
このはっ酵乳飲料を、20人のパネラーに試飲してもらったところ、糊状感を訴えたパネラーは無く、安定性および食感ともに良好であった。
【0086】
[実施例10]
乾燥組成物A:グアーガム=70:30の質量比で混合した増粘ゲル化剤eを用いて、おろしだれを試作、評価した。
60℃の水に、「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)で攪拌しながら、60℃の果糖ブドウ糖液糖(王子コーンスターチ株式会社製、「F−55」)を20質量%と、0.4質量%の上記増粘ゲル化剤eと、グラニュー糖(第一糖業株式会社製)5質量%を添加し、8000rpmで10分間分散させ、さらに分散装置をプロペラ攪拌翼に交換し、しょうゆ30質量%(キッコーマン株式会社製、食塩濃度16%)、食塩5質量%(財団法人塩事業センター製)、旭味1質量%(日本たばこ産業株式会社製)、りんご酢5質量%(株式会社ミツカン製、酸度5.0%)、おろしたまねぎ1質量%、おろしにんにく1質量%、りんご果汁2質量%(アイク株式会社製、果汁100%)を加えて、合計100質量%となるように調合した。さらに外割で、10質量%の大根おろしを加えて攪拌し、液温が80℃に達してから3分間経過するまで攪拌を続け、殺菌処理した。おろしだれの食塩濃度は10%、pH4.3であった。
これを100mLサンプルビンに充填し、5℃で1ヶ月保存し、大根おろしの状態を確認したところ、大根おろしがほぼ均一に懸濁した状態であり、安定性が良好であった。
【0087】
[実施例11]
実施例5の増粘ゲル化剤aを用いて、みそしるゲルを試作、評価した。全量で100質量%となるように、10℃の水を家庭用ミキサー(サンヨー株式会社製、11000rpm)に入れ、1質量%の増粘ゲル化剤aを添加して、4分間分散させる。ここにあらかじめ水に溶解させておいた、8質量%の白みそ(新庄みそ株式会社製)と、1質量%粉末調味料(味の素株式会社製)を加え、さらに1分間分散させた。
これを100mL耐熱ビンに充填し、8mm角にカットした豆腐と、容器あたり5個ずつ添加した。これを実施例7のレトルト殺菌器で、120℃で30分間、殺菌処理した。殺菌後、80℃になった時点で、豆腐の位置を確認したところ、豆腐は均一であり、このみそしるゲルは、耐熱性であった。
【0088】
[比較例1]
上記の乾燥組成物Xを用いて、実施例1と同様の方法で粘度を測定し、分散性の判定を行った。
0.25質量%における、「0.01%塩化カルシウム水粘度」は18mPa・sであった。また0.25質量%における、「イオン交換水粘度」は101mPa・sであった。
分散性指標を算出したところ、分散性指標は18%であり、乾燥組成物Xは、「分散性ではない」と判定した。
【0089】
[比較例2]
上記の乾燥組成物Yを用いて、実施例1と同様の方法で粘度を測定し、分散性の判定を行った。
0.25質量%における、「0.01%塩化カルシウム水粘度」は15mPa・sであった。また0.25質量%における、「イオン交換水粘度」は98mPa・sであった。
分散性指標を算出したところ、分散性指標は15%であり、乾燥組成物Yは、「分散性ではない」と判定した。
【0090】
[比較例3]
実施例1の乾燥組成物Aの代わりに、構成成分である水溶性高分子のみを、同じ質量比で混合したもの(カルボキシエチルセルロース・ナトリウム:デキストリン=12.5:39)を用いて、実施例1と同様の方法で固定化指標を測定した。固定化指標は0%であった。
【0091】
[比較例4]
実施例2の乾燥組成物Bの代わりに、構成成分である水溶性高分子のみを、同じ質量比で混合したもの(カルボキシエチルセルロース・ナトリウム:デキストリン=7.5:60)を用いて、実施例1と同様の方法で固定化指標を測定した。固定化指標は0%であった。
【0092】
[比較例5]
実施例3の乾燥組成物Cの代わりに、構成成分である水溶性高分子のみを、同じ質量比で混合したもの(キサンタンガム:デキストリン=24:27.5)を用いて、実施例1と同様の方法で固定化指標を測定した。固定化指標は10%であった。
【0093】
[比較例6]
実施例5の増粘ゲル化剤aの代わりに、構成成分である多糖類(キサンタンガム)のみを用いて、実施例5と同様の方法で固定化指標を測定した。固定化指標は0%であった。
[比較例7]
実施例6の増粘ゲル化剤bの代わりに、多糖類(グルコマンナン)のみを用いて、実施例5と同様の方法で固定化指標を測定した。固定化指標は0%であった。またグルコマンナンのみでは、ゲルを形成しなかった。
[比較例8]
実施例7の増粘ゲル化剤cの代わりに、多糖類(グルコマンナン:キサンタンガム=40:10)のみを用いて、実施例5と同様の方法で固定化指標を測定した。固定化指標は0%であった。また前記多糖類のみを使用した場合、ゲルは形成したものの、ゴム様の食感であり、食品としては不適当なものであった。
【0094】
[比較例9]
実施例8の乾燥組成物Aの代わりに、構成成分である水溶性高分子のみを、同じ質量比で混合したもの(カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:デキストリン=12.5:39)を用いて、実施例8と同様の方法でミルクコーヒーを試作、評価した。
いずれの保存温度でも沈澱が発生しており、沈澱抑制効果が見られなかった。特に60℃保存品では底面への付着が激しく、20回以上、耐熱瓶を反転させても解消せず、安定性が悪かった。
[比較例10]
実施例9の増粘ゲル化剤dの代わりに、構成成分である多糖類(カルボキシメチルセルロース・ナトリウム)のみを用いて、実施例9と同様の方法で、はっ酵乳飲料を試作、評価した。分離は無かったが、底面付着した乳成分が固着していた。また粘ちょう性が高く、20人中16人が、不快な糊状感を訴え、食感が不良であった。
【0095】
[比較例11]
実施例10の増粘ゲル化剤eの代わりに、構成成分である多糖類(グアーガム)のみを用いて、実施例10と同様の方法で、おろしだれを試作、評価した。大根おろしが下から55%にしか存在せず、分離した状態で、安定性が悪かった。
[比較例12]
実施例11の増粘ゲル化剤aの代わりに、構成成分である多糖類(キサンタンガム)のみを用いて、実施例11と同様の方法で試作したが、ゲルを形成しなかった。
実施例1〜11及び比較例1〜12で用いた乾燥組成物、増粘ゲル化剤の組成及びこれを用いて作製した液状組成物、ゲル状組成物についての評価結果を表2に示す。
【0096】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の乾燥組成物は、従来技術に比べて安定性に優れ、かつ分散性も良好である。そのため、粘ちょう性を抑えつつも、安定性を付与することができる。また分散性に優れるので、水道水や食品原料と共に混合しても、製品の製造における実用性が高い。
さらに特定の多糖類との組み合わせにより、新規な増粘ゲル化剤と、それを配合した、液状あるいはゲル状組成物を提供することが可能である。
これらの性質は、食品分野のみならず、医薬品、化粧品、工業用途においても使用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物細胞壁を原料とする結晶性の、微細繊維状セルロース1〜49質量%と水溶性高分子51〜99質量%からなる乾燥組成物。
【請求項2】
前記水溶性高分子が、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムとデキストリンであることを特徴とする請求項1記載の乾燥組成物。
【請求項3】
前記水溶性高分子が、キサンタンガムとデキストリンであることを特徴とする請求項1記載の乾燥組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の乾燥組成物と、グルコマンナン、ガラクトマンナン、アルギン酸類、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、寒天、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、大豆水溶性多糖類、カラヤガム、サイリウムシードガム、プルラン、アラビアガム、トラガントガム、ガッディーガム、アラビノガラクタン及びカードランよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類とを、乾燥組成物:多糖類=1:99〜99:1の質量比で含有することを特徴とする増粘ゲル化剤。
【請求項5】
前記多糖類が、グルコマンナン、ガラクトマンナン及びアルギン酸類からなる群より選択されることを特徴とする請求項4記載の、増粘ゲル化剤。
【請求項6】
前記多糖類としてキサンタンガムとグルコマンナン、ガラクトマンナン及びアルギン酸類からなる群より選択される少なくとも一種とを含むことを特徴とする請求項4記載の増粘ゲル化剤。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の乾燥組成物を含有することを特徴とする、液状組成物。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の乾燥組成物を含有することを特徴とする、ゲル状組成物。
【請求項9】
請求項4〜6いずれかに記載の増粘ゲル化剤を含有することを特徴とする、液状組成物。
【請求項10】
請求項4〜6のいずれかに記載の増粘ゲル化剤を含有することを特徴とする、ゲル状組成物。

【公開番号】特開2008−106178(P2008−106178A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291438(P2006−291438)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】