説明

水溶液の浄化におけるスケーリングを減らす方法およびシステム

水道水、汚染された水溶液、海水、および塩性のブライン(例えば、生成水)から炭化水素およびスケール形成化合物を取り除く方法であって、この方法は、pHを約10.2に調整することにより炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムを沈殿させるために、COスパージングによる炭酸イオン、または二価カチオンの添加を含み、従って、大気からCOを永続的に隔離し、次にそのような沈殿物を販売または処分のいずれかのために連続して取り除く工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水の分野に関する。特に、本発明の実施形態は、最小限の洗浄または使用者の介入を必要とする自動プロセスでの、海水および生成水(produce water)のような、汚染された水から、および塩性の水溶液から、広い範囲に及ぶ炭化水素およびスケール形成イオンの本質的にすべてを取り除くシステムおよび方法に関するものであり、その自動プロセスは、海水または高塩性のブラインを取り扱うときに、大気からの二酸化炭素の永続的な隔離を与える。
【背景技術】
【0002】
浄水技術は、従来の水資源がますます乏しくなり、飲用に適した水に対する都市の分配システムが年数とともに悪くなり、増加した水の使用が井戸および貯水池を枯渇させて、塩性の水汚染をもたらすにつれて、急速に、現代生活の不可欠な局面になっている。しかしながら、浄水技術は、炭化水素およびスケールの形成、そして続く、熱交換器の汚損か、または膜の汚損によって、しばしば、その性能を邪魔される。他の家庭用電気器具(例えば、湯沸し器、および洗濯機)は、硬水が使用されるときはいつでも、スケールによって同等に影響され、工業用プロセスはまた、高温の水溶液に接触する表面にスケールがつきやすい。スケールがつく問題および炭化水素は、工業用脱塩プラントにおいて、ならびに油およびガス抽出操作からの生成水の処理において、特に重要である。水溶液から炭化水素およびスケール形成イオンの両方を除去する方法の必要性がある。
【0003】
水の硬度は、通常、水に存在するカルシウムイオン(Ca++)、マグネシウムイオン(Mg++)、および他の二価イオンの量として定義され、通常、これらのイオン、または炭酸カルシウム(CaCO)としてのその等価物の百万分率(ppm)で表現される。水が大気からの二酸化炭素を溶解し、そのような二酸化炭素が、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの両方を形成するように結合する炭酸イオンを提供するので、スケールが発生する;加熱に際して、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの溶解度は、著しく減少して、それらは、スケールとして沈殿する。実際は、スケールは、溶液から沈殿するあらゆる化学化合物を含む。従って、リン酸鉄、または硫酸カルシウム(石膏)もまた、スケールを生成する。表1は、水への低い溶解度を示し、従ってスケールを形成し得る多数の化学化合物を列挙する;低い溶解度は、ここで、溶解度積によって、すなわち、特定の化学物質のカチオンおよびアニオンのイオン濃度の積によって定義され、次に、溶解度が、通常は、1リットル当たりのモル(mol/l)で表現される。
【0004】
【表1−1】

【0005】
【表1−2】

【0006】
【表1−3】

【0007】
【表1−4】

【0008】
【表1−5】

【0009】
【表1−6】

【0010】
【表1−7】

【0011】
【表1−8】

従来のスケール除去技術としては、化学的および電磁的方法が挙げられる。化学的方法は、pH調整、ポリホスフェートおよびゼオライトなどを用いる化学的隔離、またはイオン交換のいずれか、ならびに代表的にこれらの方法の組み合わせを利用する。通常、化学的方法は、pHを下げ、化学的隔離を用いることによって、スケールが沈殿するのを防ぐことを目指すが、これらは、典型的に100%有効ではない。電磁的方法は、非付着性である結晶学的形態を助力するために、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムの電磁的励起に依存する。例えば、電磁的励起は、方解石よりむしろアラレ石の沈殿を助力し、アラレ石は、よりやわらかく、炭酸カルシウムのより付着性のない形態である。しかしながら、電磁的方法は、比較的短い距離および滞留時間に対して有効であるのみである。汚染された水溶液、海水、またはさらに処理される生成水からスケール形成成分を永続的に取り除く必要性がある。
【0012】
炭化水素の汚染は、水性のシステムにおける別の深刻な問題であって、工業用抽出操作において、ガスおよび油とが混合されてできる水である生成水に一般的にあることだが、特にそのような炭化水素の濃度が、その水への溶解度を超え、かつ自立構造の油(free−standing oil)が、別個の小滴、または別個の液相として存在する場合に、深刻な問題である。通例、別個の液相として存在する油は、水から油を分ける手段(例えば、API分離器、液体サイクロン、および浮選機など)として密度の違いを利用する一連の機械装置によって取り除かれる。これらの技術は、油の大半の除去において、適度によく働くが、それらは、溶液に残る炭化水素分画に対してほとんど何もしない。従って、機械的処理の後でさえ、生成水は、好ましくない量の炭化水素汚染を含み、飲用に適さない。水性のシステムにおいて、永続的に炭化水素汚染のレベルを下げる必要性がある。
【0013】
さらに、産業革命以来、産業の活動における成長は、大気における二酸化炭素(CO)レベルの顕著な増加をもたらし、COの増加が地球温暖化の一因であることが一般に受け入れられている。COを隔離するための多くの計画(例えば、深井戸注入)が提案されているが、そのような方法は、そのような温室効果ガスの永続的な隔離を保障し得ない。費用効果の高い、永続的である、炭素の隔離方法であって、分解に抵抗性があり、容易に運搬および保存される化学的生成物を生じる、炭素の隔離方法の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施形態は、機械的手段によって自立構造の油の汚染物質を取り除き、次にスケール形成イオンを不溶性炭酸塩の形態で沈殿させ、続いて加熱により他のイオンを沈殿させる一体化されたプロセスによって炭化水素および硬水成分を水溶液から永続的に取り除く改善された方法を提供する。硬水の組成物は、場所によって変動するので、本発明における沈殿工程は、化学量論量の重炭酸イオンか、または二価カチオン(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)のいずれかを添加し、不溶性の炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムを形成することにより始まる。重炭酸イオンは、水溶液を二酸化炭素ガスでスパージングすることを介してか、または重炭酸イオンを重炭酸ナトリウム、または他の可溶性の重炭酸塩化学物質の形態で直接添加することによってのいずれかで、添加される。代替の実施形態において、水酸化物イオンは、(NaOHの形態で)添加され得、同様の様式でマグネシウムと反応し、水酸化マグネシウムを形成し得る。カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンは、石灰または等価のアルカリ性化合物の形態で添加され得る。プロセスにおける沈殿の第二の工程は、炭酸塩の沈殿を促進するために、水溶液のpHを約9.2またはそれより高くに、好ましくは、10.2〜10.5またはそれより高い範囲に調整する。第三の工程は、前の工程において形成された沈殿物を沈積または濾過のいずれかによって取り除く。第四の工程は、水溶液をほぼ120℃程度の温度まで5〜10分間加熱して、不溶性硫酸塩などの沈殿を促進することからなる。第五の工程は、高温沈殿物を沈積または濾過のいずれかによって取り除くことからなる。蒸気ストリッピングによる脱ガスの最終工程は、溶液におけるあらゆる残留する炭化水素を取り除く。
【0015】
本発明の実施形態は、スケール形成化合物を水道水(tap water)、汚染された水溶液、海水、および炭化水素で汚染された塩性のブライン(例えば、生成水)から取り除く方法であって、初めに、COスパージングによる炭酸イオンまたは化学量論量での二価カチオン(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)の添加、続いてpHを約10.2またはそれより高くに調整することにより炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムを沈殿させ、従って、大気からCOを永続的に隔離し、次にそのような沈殿物を沈積または濾過のいずれかによって取り除き、第二に、水溶液の温度を5〜10分間、100℃〜120℃の範囲まで上げて、不溶性硫酸塩などのさらなる沈殿を促進し、スケールを濾過または沈積のいずれかによって取り除く加熱処理工程を含む方法を提供する。
【0016】
さらなる局面において、カルシウム添加物またはマグネシウム添加物は、炭酸塩形態において低い溶解度積を有する他の二価カチオン(例えば、バリウム、カドミウム、コバルト、鉄、鉛、マンガン、ニッケル、ストロンチウム、または亜鉛)の代わりに用いられる。
【0017】
さらなる局面において、カルシウム添加物またはマグネシウム添加物は、炭酸塩または水酸化物の形態において低い溶解度積を有する三価のカチオン(例えば、アルミニウムまたはネオジム)の代わりに用いられる。
【0018】
さらなる局面において、COスパージングは、可溶性重炭酸イオン(例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、または重炭酸アンモニウム)の添加によって置き換えられる。
【0019】
さらなる局面において、炭酸塩およびスケールの沈殿物は、沈積または濾過以外の手段(例えば、遠心分離)によって取り除かれる。
【0020】
さらなる局面において、廃熱および熱パイプは、熱を移動するため、および水溶液の温度を上げるために利用される。
【0021】
さらなる局面において、10ppmより低いレベルまでのVOC、ガス、および非揮発性有機化合物の脱ガスと同時の高温でのスケール(例えば、不溶性硫酸塩および炭酸塩)の除去は、達成されている。
【0022】
さらなる局面において、大気からのCOの永続的な隔離は、従来の脱塩システム(例えば、多段フラッシュ(MSF)蒸発法(multiple stage flash(MSF)evaporation)、多重効用蒸留(MED)プラント(multiple effect distillation(MED)plant)、および蒸気圧縮(VC)脱塩システム(vapor compression(VC)desalination system))において達成される。
【0023】
さらなる局面において、スケール形成塩は、従来の脱塩システムから永続的に取り除かれる。
【0024】
さらなる局面において、好ましくない炭化水素およびスケールは、油およびガス抽出操作の両方からの生成水から取り除かれる。
【0025】
さらなる局面において、好ましくない硬水成分(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)を含む、水道水、都市用水(municipal water)、または井戸水は、住宅の浄水システムにおいてスケール除去される。
【0026】
さらなる局面において、熱パイプは、スケール除去および炭化水素除去操作において熱を回収するために使用される。
【0027】
さらなる局面において、貴重なスケール形成塩(例えば、マグネシウム、バリウム、および他の塩)は、回収される。
【0028】
さらなる局面において、スケール形成化合物は、非付着性の、容易に濾過できる、または沈積できる固体の形態で沈殿され、最終的には取り除かれる。
【0029】
さらなる局面において、廃熱は、現存の発電所から利用され、そのような発電所からのCO排出物質は、永続的に隔離される。
【0030】
さらなる局面において、酸素および溶解した空気は、腐食およびメンテナンスの問題を減らすために、さらなる処理前に、海水および生成水の流れから取り除かれる。
【0031】
さらなる局面において、スケール形成化合物は、連続して、沈殿および取り除かれ、そのため、それらは、下流の工業用プロセスにおいて利用および再利用され得る。
【0032】
本発明のさらなる実施形態は、スケール形成化合物を水溶液から取り除く方法であって、その方法は、アルカリ性のpHで第一のスケール形成化合物の沈殿をもたらすのに十分な化学量論量で、少なくとも1つのイオンをその溶液へと添加する工程;その溶液のpHをアルカリ性のpHに調整し、それにより、その第一のスケール形成化合物を沈殿させる工程;その第一のスケール形成化合物をその溶液から取り除く工程;その溶液を、その溶液から第二のスケール形成化合物の沈殿をもたらすのに十分な温度まで加熱する工程;およびその第二のスケール形成化合物をその溶液から取り除く工程を含む、方法を提供する。
【0033】
さらなる局面において、上記イオンは、炭酸イオンおよび二価カチオンからなる群より選択される。さらなる局面において、その炭酸イオンは、HCOである。さらなる局面において、その二価カチオンは、Ca2+およびMg2+からなる群より選択される。
【0034】
さらなる局面において、上記化学量論量は、上記二価カチオンを、第一のスケール形成化合物におけるバリウム、カドミウム、コバルト、鉄、鉛、マンガン、ニッケル、ストロンチウムおよび亜鉛からなる群より選択される二価カチオンの代わりに用いるのに十分である。
【0035】
さらなる局面において、上記化学量論量は、上記二価カチオンを、第一のスケール形成化合物におけるアルミニウムおよびネオジムからなる群より選択される三価カチオンの代わりに用いるのに十分である。
【0036】
さらなる局面において、少なくとも1つのイオンを添加することは、上記溶液をCOガスでスパージングする工程を含む。
【0037】
さらなる局面において、上記COは、大気のCOである。
【0038】
さらなる局面において、少なくとも1つのイオンを添加することは、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、および重炭酸アンモニウムからなる群より選択される可溶性の重炭酸イオンを上記溶液に添加する工程を含む。
【0039】
さらなる局面において、少なくとも1つのイオンを添加することは、CaO、Ca(OH)、Mg(OH)、およびMgOからなる群より選択される化合物を上記溶液に添加する工程を含む。
【0040】
さらなる局面において、上記アルカリ性のpHは、約9.2またはそれより高いpHである。
【0041】
さらなる局面において、上記第一のスケール形成化合物は、CaCOおよびMgCOからなる群より選択される。
【0042】
さらなる局面において、上記溶液のpHを調整することは、CaOおよびNaOHからなる群より選択される化合物をその溶液に添加する工程を含む。
【0043】
さらなる局面において、上記第一のスケール形成化合物を取り除くことは、濾過、沈積および遠心分離のうちの少なくとも1つを含む。
【0044】
さらなる局面において、上記温度は、約100℃〜約120℃の範囲内にある。
【0045】
さらなる局面において、発電所または同様の工業用プロセスからの廃熱は、上記溶液の加熱を達成するために使用される。
【0046】
さらなる局面において、上記温度は、約5分〜約10分の期間の範囲内に維持される。
【0047】
さらなる局面において、上記第二のスケール形成化合物は、硫酸塩化合物を含む。
【0048】
さらなる局面において、上記第二のスケール形成化合物を取り除くことは、濾過、沈積および遠心分離のうちの少なくとも1つを含む。
【0049】
さらなる局面において、上記溶液を加熱することは、その溶液を蒸気と接触させる工程をさらに含み、それにより、その溶液からの、10ppmより低いレベルまでの揮発性有機成分(「VOC」)、ガス、および非揮発性有機化合物の脱ガスが達成される。
【0050】
さらなる局面において、汚染物質は、上記溶液から汚染物質を取り除く少なくとも1つのイオンを添加する前にその溶液から取り除かれる。
【0051】
さらなる局面において、上記汚染物質は、固体の粒子および炭化水素の小滴からなる群より選択される。
【0052】
さらなる局面において、上記水溶液は、水道水、汚染された水溶液、海水、および炭化水素で汚染された塩性のブラインからなる群より選択される。
【0053】
さらなる局面において、上記第二のスケール形成化合物が取り除かれた後、上記水溶液は、脱ガスされ、ここで、その脱ガスは、炭化水素化合物をその水溶液から取り除くように適合される。
【0054】
本発明のさらなる実施形態は、スケール形成化合物を得る方法であって、その方法は、水溶液を提供する工程;アルカリ性のpHで第一のスケール形成化合物の沈殿をもたらすのに十分な化学量論量で、少なくとも1つのイオンをその溶液に添加する工程;その溶液のpHをアルカリ性のpHに調整し、それにより、その第一のスケール形成化合物を沈殿させる工程;その第一のスケール形成化合物をその溶液から取り除く工程;その溶液を、その溶液から第二のスケール形成化合物の沈殿をもたらすのに十分な温度まで加熱する工程;その第二のスケール形成化合物をその溶液から取り除く工程;その第一のスケール形成化合物を回収する工程;およびその第二のスケール形成化合物を回収する工程を含む、方法を提供する。
【0055】
さらなる局面において、その第一および第二のスケール形成化合物は、表1に列挙される化合物の群から選択される。
【0056】
本発明のさらなる実施形態は、大気のCOを隔離する方法であって、その方法は、炭酸イオンの存在下でCO隔離化合物を形成することが可能な少なくとも1つのイオンを含む水溶液を提供する工程;アルカリ性のpHでそのCO隔離化合物の沈殿をもたらすのに十分な化学量論量で、炭酸イオンをその溶液に添加する工程;その溶液のpHをアルカリ性のpHに調整し、それにより、そのCO隔離化合物を沈殿させる工程;およびそのCO隔離化合物をその溶液から取り除く工程を含む、方法を提供し、ここで炭酸イオンを添加することは、大気のCOをその溶液に添加する工程を含み、ここで、その大気のCOは、そのCO隔離化合物において隔離される。
【0057】
さらなる局面において、上記水溶液は、汚染された水溶液、海水、および炭化水素で汚染された塩性のブラインからなる群より選択される。
【0058】
さらなる局面において、上記アルカリ性のpHは、約9.2またはそれより高いpHである。
【0059】
さらなる局面において、上記CO隔離化合物は、CaCOおよびMgCOからなる群より選択される。
【0060】
さらなる局面において、上記CO隔離化合物を取り除くことは、濾過、沈積および遠心分離のうちの少なくとも1つを含む。
【0061】
本発明のさらなる実施形態は、スケール形成化合物を水溶液から取り除く装置であって、その装置は、その水溶液のための入り口;COガスの供給源;その入り口とそのCOガスの供給源とを流体連絡(fluid communication)する第一タンク;pH上昇剤(pH−raising agent)の供給源;そのpH上昇剤の供給源とその第一タンクとを流体連絡する第二タンク;上記第二タンクと流体連絡するフィルターであって、ここで、そのフィルターは、上記第二タンクにおいて、第一のスケール形成化合物をその溶液から分けるように適合される、フィルター;上記フィルターと流体連絡する圧力容器であって、上記圧力容器内でその溶液を約100℃〜約120℃の範囲内の温度まで加熱するように適合される、圧力容器;および上記圧力容器と流体連絡するフィルターであって、ここで、そのフィルターは、その圧力容器において第二のスケール形成化合物をその溶液から分けるように適合される、フィルターを備える、装置を提供する。
【0062】
さらなる局面において、上記装置は、上記入り口と上記第一タンクとを流体連絡するディオイラ(deoiler)をさらに備え、ここで、そのディオイラは、固体の粒子および炭化水素の小滴からなる群より選択される汚染物質を上記溶液から取り除くように適合される。
【0063】
さらなる局面において、上記装置は、上記圧力容器の下流にあり、上記圧力容器と流体連絡する脱ガス装置(degasser)をさらに備え、ここで、その脱ガス装置は、炭化水素化合物を上記溶液から取り除くように適合される。
【0064】
本発明のさらなる実施形態は、CO隔離化合物に大気のCOを隔離する装置であって、その装置は、炭酸イオンの存在下でCO隔離化合物を形成することが可能な少なくとも1つのイオンを含む水溶液のための入り口;大気のCOガスの供給源;その入り口とそのCOガスの供給源とを流体連絡する第一タンク;pH上昇剤の供給源;そのpH上昇剤の供給源とその第一タンクとを流体連絡する第二タンク;および上記第二タンクと流体連絡するフィルターであって、ここで、そのフィルターは、上記第二タンクにおいて、そのCO隔離化合物をその溶液から分けるように適合される、フィルターを備える、装置を提供する。
【0065】
さらなる局面において、上記装置は、上記入り口と上記第一タンクとを流体連絡するディオイラをさらに備え、ここで、そのディオイラは、固体の粒子および炭化水素の小滴からなる群より選択される汚染物質を上記溶液から取り除くように適合される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、一体化された前処理方法を実施するために適合される装置の図である。
【図2】図2は、ディオイラの図である。
【図3】図3は、水溶液におけるpHと炭酸、重炭酸イオン、および炭酸イオンの濃度との間の関係を示す表である。
【図4】図4は、代替の脱ガス−沈殿装置(degasser−precipitator)の図である。
【図5】図5は、住宅の浄水システムに適用されるスケール除去方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明の実施形態は、いくつかの場合、例示的な形態で、または1つまたはそれより多くの図への参照により、本明細書において開示される。しかしながら、特定の実施形態のあらゆるそのような開示は、例示的であるのみであって、本発明の全範囲を示すものではない。
【0068】
以下の議論は、本発明の実施形態に従う汚染された水溶液についての例示的なスケール除去および前処理方法の構造的特徴に言及する。参照数字は、図1〜5に描かれるものと一致する。
【0069】
炭化水素および他の汚染物質を含有する海水(10)または塩性の帯水層の水(20)は、ポンプ(30)によって前処理システムの入り給送取り入れ口(incoming feed intake)までポンプでくみ上げられる。汚染された給水は、本質的に可視の油(visible oil)が存在しない水性の生成物(48)を提供するために、初めに、固体の粒子(42)(例えば、砂および他の固体の残屑)、ならびに油の小滴(44)の形態での可視の油を取り除くディオイラ(40)において処理される。ディオイラ(40)は、密度の違いに基づいて作動する。入ってくる汚染された水(41)は、固体の粒子(42)が懸濁物から沈降(settle)し、固体の廃棄物の管(43)を介してディオイラを出るのを可能にするために、流速を大いに低減する拡大された開口部を介して、そのディオイラ(40)に入る。一旦、固体が除去されると、汚染された流れは、数個の傾斜した沈降(settling)チャネル(49)に入り、ここでは、油の小滴(44)および(45)が合体し、チャネル流を介して、それらをディオイラの上部近く(46)を出るまで持ち上げることを可能にするために、チャネル流(flow)(47)は層流であって、十分に緩やかである。脱油(de−oil)された流れは、ディオイラの底部近く(48)に存在する。
【0070】
その脱油された、海水、または汚染されたブラインは、次に、スケール除去のプロセスを始める。提案されたスケール除去方法における基本的な原理は、不溶性炭酸塩としての、スケール形成化合物の沈殿を促進することである。この目的のために、図3によって描かれるように、pHの関数として、炭酸(HCO)、重炭酸イオン(HCO)、および炭酸イオン(CO2−)の活量計数を考慮することが有用である。6.0より低いpH値において、優勢な種は炭酸である。6.0と10.0との間のpH値では、重炭酸イオンが優勢であり、10.3より高いpH値では、炭酸イオンが優勢な種である。提案される方法は、必要な量の二酸化炭素を提供することからなり、それにより、9.2およびそれより高い、より好ましくは10.2およびそれより高いpH調整の際に、汚染された溶液に存在する二価カチオンおよび特にカルシウム(Ca2+)イオンおよびマグネシウム(Mg2+)イオンが、不溶性炭酸塩として沈殿する。
【0071】
ほとんどの塩性のブライン(海水が挙げられる)は、重炭酸イオンを超過するカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含む。従って、ほとんどの塩性のブラインは、スケール形成成分を沈殿させるために追加の炭酸イオンを必要とし、炭酸イオンを提供する最も実用的な方法は、重炭酸イオンとして溶解されるCOの形態においてである;アルカリ性のpH調整の際に、そのような重炭酸イオンは、炭酸イオンになり、その溶解度積に従って、すぐにカルシウム炭酸塩またはマグネシウム炭酸塩として沈殿する。大気のCOの使用は、この有害な温室効果ガスの隔離を達成する永続的な手法を提供する。
【0072】
しかしながら、いくつかのブラインは、超過の重炭酸イオン、特に油中の生成水またはトロナ鉱床を横断するガス田に関連するものを含む。重炭酸イオンが超過するようである場合、そのブライン組成物は、二価イオンを提供し、pHをアルカリ性の範囲まで上昇させる二重の目的にかなう石灰石(CaO)で調整され得る。
【0073】
図1〜5に戻って参照すると、一旦、入ってくる汚染された水が脱油されると、不溶性炭酸塩としてのカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの最初の沈殿を達成するために、化学量論量の炭酸イオンを提供するようにCOガス(60)がスパージングされる、撹拌タンクまたは静的ミキサー(50)へと入る。炭酸イオンを含んだ(carbonated)溶液は、次に、ポンプ(70)によって別の撹拌タンク反応器または静的ミキサー(80)へとポンプでくみ上げられ、pHは、石灰石(CaO)、灰汁(Na[OH])、またはその両方のpH−付加物によって、好ましくは水酸化ナトリウムを用いて、反応器(80)において調整される。アルカリ性側へ、好ましくは10.2より高いpHへのpH調整の際に、その塩性または汚染された溶液は、不溶性炭酸塩(110)などの即座の沈殿を示し、それらは、次に、ベルトフィルター、円板フィルターもしくはドラムフィルター(100)のいずれか、または向流デカンテーション(CCD)容器(vessel)、またはシックナーによってプロセス水(process water)から濾過または沈積される。
【0074】
pH調整によるスケールの最初の沈殿、および沈積または濾過によるそのようなスケールの除去の後に、澄んだ溶液は、加熱により第二のスケール沈殿工程が行われる撹拌反応器(120)に入る。発電所からの廃棄蒸気であり得る外部の熱供給源(130)からの熱、または熱パイプによって、工業用プラントから移動される熱は、反応器(120)を約120℃の温度まで加熱するために使用され、その温度は、ほぼ15ゲージpsi程度の過剰圧力において作動可能な圧力容器を必要とする。そのような条件下では、特定の不溶性硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム(石膏))は、水中での溶解度が著しく減少するので沈殿する。
【0075】
凝縮蒸気から投入水へと熱を移動するための熱パイプの議論は、2008年4月14日に出願されたENERGY−EFFICIENT DISTILLATION SYSTEMと題した米国特許出願第12/090,248号、および2005年10月14日に出願されたENERGY−EFFICIENT DISTILLATION SYSTEMと題した米国仮特許出願第60/727,106号において提供され、その両方は、本明細書において参考としてその全体が援用される。
【0076】
代替の実施形態において、この第二の沈殿工程は、蒸気ストリッピングによる脱ガスを含む二重の工程において達成される。図4を参照して、部分的にスケール除去されたプロセス流れ(process stream)(125)は、蒸留トレイ塔に入り、そこでその流れは、一連のスパージングトレイ(121)を介して段階的に流れる(cascade)。廃熱供給源(130)からの蒸気(例えば、発電所からの廃棄蒸気)は、向流様式で各蒸留トレイ(121)を介して泡(122)で、容器(120)の底部に入り、それにより、プロセス水から揮発性有機成分(VOC)をストリッピングし、同時にプロセス流れをほぼ120℃程度の温度まで加熱し、それにより、低減した溶解度を示す不溶性塩(例えば、特定の硫酸塩)を沈殿させる。各蒸気ストリッピングトレイ(121)における液体レベルは、プロセス水を上方のトレイから下方のトレイへと移動させる下降管(123)によって維持される。脱ガス容器を通って上がるにつれて、その蒸気は、次第に有機汚染物質(非揮発性であると考えられ、上部(126)において、その容器を最終的に出る汚染物質が挙げられる)を積むので、凝縮されて、捨てられ得る。加熱沈殿されたスケールを含む脱ガスされた流れは、底部(127)において、その容器を出る。
【0077】
さらなる代替の実施形態において、上記と同様の脱ガスプロセスは、水溶液が加熱され、第二の沈殿物が取り除かれた後に、最終工程として行われる。この最終の脱ガスは、あらゆる残留する炭化水素化合物を取り除くように作動し、例えば、油生産において用いられるプロセス水の場合のように、処理される水溶液が炭化水素でひどく汚染されているときに特に適している。
【0078】
次に、プロセス水におけるスケールは、メカニカルフィルターまたはシックナーのいずれかによって、濾過除去または沈積除去される。好ましい実施形態において、上記プロセス流れは、機械的に動かされるバルブ(140)によって濾過と逆洗工程との間を交互に変わる二重のサンドフィルター(150)へと入る。スケール廃棄物は、上部(160)において、この濾過工程を出て、組成物によっては、捨てられても売られてもよい。スケール除去され、脱油されたプロセス水(170)は、底部において出て、あらゆる続く処理(例えば、脱塩)のために使用され得る。
【0079】
海水のための例示的な水のスケール除去システム
海水についての近似の化学的組成は、下の表2に提示され、それは、外洋(open ocean)のものを代表しているが、地理および/または気候によって海水の組成に顕著な変動がある。
【0080】
【表2−1】

【0081】
【表2−2】

従って、第一の課題は、どの塩が最も低い溶解度定数を示すかを試験することであり、本試験を海水における最も豊富な要素に限定した。それらは、以下:
【0082】
【表3】

である。
【0083】
カルシウムイオン濃度は、海水において416ppm、すなわち10.4mmol/ltを平均とし、他方、重炭酸イオンは、145ppm、すなわち2.34mmol/ltに相当する。重炭酸イオンは、加熱に際して、炭酸イオンへと容易に分解するため、方解石スケールが発生する第一のスケールである。硫酸カルシウム(石膏)は、方解石よりも10,000倍可溶性であるので、硫酸イオン濃度は、2701ppm、すなわち28.1mmol/ltを平均とするけれども、それは、次に沈殿する。リンは、0.088ppmに達するので、潜在的なリン酸イオンは、リン酸塩スケールの量を無視できる程十分に少ない。
【0084】
【表4】

マグネシウムは、1,290ppm(53.3mmol/lt)で、海水においてカルシウムよりも3倍豊富にあるが、MgCOは、そのカルシウム相対物よりも1,000倍可溶性であるので、ほとんどのカルシウムイオンが枯渇した後に沈殿する。フッ化イオンは、顕著なスケールをもたらすのに十分な量で存在せず、それは、リン酸塩スケール形成に関する、前の議論と同様である。同様に、スケール形成化合物は、カリウム、鉄、またはアルミニウムを取り込むことが知られているが、下の表5〜7に示すように、海水の場合、これらのイオンのいずれも、沈殿しない程低濃度で存在するか、または大量に存在する場合(例えば、カリウムに関してよくあることだが)、それらは、水溶液において、沈殿しない程可溶性である(すなわち、高い溶解度定数を有する)。
【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
【表7】

本開示の方法およびシステムは、海水および海水よりもより塩性である溶液の両方を浄化するために使用される。結果は、浄化装置におけるスケールの発生についての顕著な改善を示す。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
脱ガス装置における非揮発性有機物または揮発性有機物の除去
本開示の方法およびシステムは、非揮発性有機汚染物質および揮発性有機汚染物質(メチル第三級ブチルエーテル(MTBE)が挙げられる)の商業的に観測される量を含む溶液を浄化するために使用される。結果は、従来の浄化方法に比べて汚染物質の量における顕著な減少を示す。
【0089】
(実施例2)
住宅の浄水システムにおけるスケールの除去
代替の実施形態において、本発明の方法は、都市システムからの硬水、または高レベルのカルシウム塩、もしくはマグネシウム塩を含む井戸水からの硬水を軟化するために使用され得る。
【0090】
住宅の浄水システムに関するさらなる情報は、2008年1月4日に出願されたWATER PURIFICATION SYSTEMと題した米国特許出願第11/994,832号;2006年5月31日に出願されたFULLY AUTOMATED WATER PROCESSING CONTROL SYSTEMと題した米国特許出願第11/444,911号;2006年5月31日に出願されたAN IMPROVED SELF−CLEANING WATER PROCESSING APPARATUSと題した米国特許出願第11/444,912号;および2005年10月19日に出願され、米国特許第7,678,235号として発行されたWATER PURIFICATION SYSTEMと題した米国特許出願第11/255,083号において提供され、これらは、本明細書中において、その全体が参考として援用される。
【0091】
図4を参照して、水道水または井戸からの水は、浄化システムへと入ってくる水の一定流を確実にする減圧器(pressure reducer)(200)を介して住宅の浄水システムに入る。水酸化ナトリウム(灰汁−NaOH)および重炭酸ナトリウム(重曹−NaHCO)を含むキャニスター(201)は、これらの化学物質の予め測定された量を、300ppmまでのカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを不溶性炭酸塩の形態で化学量論的に沈殿させるために用量メーター(202)へと提供し、他方、同時にpHを少なくとも10.2の値まで上昇させる。これらの化学物質は、減圧器(200)を出て、やわらかいスケールの沈殿をもたらす水道水ライン(203)において溶解する。
【0092】
部分的にスケール除去されるプロセス水は、次に、ボイラー内で水を沸騰させることによりその水が予熱されるプラスチックライン(205)によってボイラー(204)に入り、沈積容器(207)の上方部分につながった垂直の管(206)を介して出る。追加のスケールは、入ってくる水の温度を沸騰直前まで上げ、従って、温度に伴い溶解度において著しい減少を示す不溶性塩の沈殿を促進する、予熱作用によって沈殿する。ボイラーにおいて、入ってくる水の予熱を達成するためのプラスチックラインまたは管の使用は、沸騰作用によって、そのプラスチックを頻繁な屈曲に供し、従って、予熱ラインの表面へのスケールの付着を防ぐ。
【0093】
熱的に沈殿されるスケール、そしてまたpH調整により以前に沈殿したスケールは、容器(207)において沈積によって沈降し、底部(208)において、定期的にその容器から流れ出される。スケール除去された水は、次に、脱ガス装置(209)に入り、ここでVOCおよび非揮発性有機化合物が、前述の特許出願において記載されるように、蒸気または熱気の向流により蒸気ストリッピングされる。
【0094】
(実施例3)
廃棄流入組成物の処理におけるスケールの除去
肥料処理施設から廃棄物の流れとして得られる水性の廃棄流入組成物を、スケールの形成が非常に望ましくない別個の浄水装置における産物の最終的な浄化に対する前処理として、スケール形成化合物を取り除くために上に記載される様式で処理した。処理装置の処理量は、1日当たり6ガロン(GPD)であった;この装置を、2000m/日(528,401.6 GPD)を必要とする工業用の状況を試験するための試験的装置として使用した。関連のある要素およびイオンに関する廃棄流入物の組成を、下の表8に示す。
【0095】
【表8】

廃棄流入物は、35,000ppm(g/l)の総溶解固形分(TDS)含有量を有した。表8から分かり得るように、その廃棄流入物は、スケールを引き起こす傾向のある、特に高濃度のカルシウムおよびマグネシウムを有した。
【0096】
この廃棄流入物を、上に記載される様式で処理した;流入物は、炭化水素をほとんど含まないか、または全く含まないので、脱油および脱ガスを行わなかった。より詳細には、(溶液中のMgと反応させるための水酸化イオンを提供するために)COによる炭酸イオン化およびNaOHの添加後、さらなるNaOHを用いた9.3のpHへのpH調整を行った。下の表9に示す化学物質の用量を、商業的規模のプロセスにおいて用いた(用いられる実際の量を、6GPDの試験的処理量に合わせて調整した)。
【0097】
【表9】

そのプロセスにより、濾過されたスケール形成組成物(「フィルターケーキ」)および流出物(産物)がもたらされた。商業的規模のプロセスの質量バランスを下の表10に示す。
【0098】
【表10】

得られた沈殿産物は、下の表11に示される近似の組成を有する。商業的規模のプロセスのための表11に示される数は、試験的規模のプロセスにおいて生成される量に基づいている。
【0099】
【表11】

表11から分かり得るように、圧倒的に大多数の沈殿物は、CaCOまたはMg(OH)のいずれかを含み、そのため、廃棄流入物において大量のカルシウムおよびマグネシウムが、そのプロセスにより取り除かれた。給送廃棄溶液中および流出産物中に含まれる、関連する要素および化合物の量を下の表12にまとめる。
【0100】
【表12】

表12に示される結果は、スケール形成化合物を引き起こす要素(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)のレベルが、上に記載される処理プロセスよって、約99%まで減少することを示す。さらに、鉄の量は、検出されないレベルにまで減少した。さらに、水溶液における総溶解固形分は、20%より大きく減少した。
【0101】
(実施例4)
海水の処理におけるスケールの除去
本開示の処理プロセスを、高レベルのTDSおよび高度の硬水に合わせて調整された海水に応用し、それは、そのような投入溶液を取り扱うための、そのプロセスの能力を試験するためであった。その水を、米国特許出願第7,678,235号に記載されたような浄水装置において浄化される前に、本開示のプロセスを用いて前処理した。下で、より詳細に議論されるように、本開示の前処理プロセスに供される海水は、その浄水装置において給水として使用されるとき、スケールの形成を示さなかった。
【0102】
以下の量の種々の化合物を、本実施例の投入水溶液を生成するために新鮮な海水(fresh ocean water)へと加えた。7グラム/リットルのCa(OH)を7.1kppmの標的Ca2+濃度を得るために加えた。29グラム/リットルのNaClもまた加え、結果として生じる水サンプルのTDSは66kppmであった。
【0103】
第一の沈殿を、約12グラム/リットルのNaHCO、および溶液のpHを10.5より高くに上昇させるために必要に応じてNaOHを加えることにより、室温で行った。炭酸塩化合物CaCOおよびMgCOを、この第一室温手順において沈殿させた。その水を濾過し、固体の沈殿物を取り除いた。
【0104】
次に、第二の沈殿を高温で行った。具体的には、濾過した水を120℃まで、10〜15分間加熱した。その結果、初めはCaSOおよびMgSOである硫酸塩が沈殿した。その水を冷却させて、次に濾過して沈殿物を取り除いた。スケール除去および濾過された水を、サンプルをマイクロ波オーブンにおいて沸騰させることにより、沈殿物について再び調べた。沈殿物は、この試験において観測されなかった。スケール除去および濾過された水のTDSは、約66kppmであった。
【0105】
スケール除去された水を、米国特許第7,678,235号に従って、浄水装置のための流入物として使用した。産物水(product water)をその装置から収集し、その産物水のTDSを測定した。投入水は66kppmのTDSを有し、他方、その浄水装置の産物水は、10ppmより低かった。評価可能なスケールの発生は、その装置のボイラーにおいて観測されなかった。
【0106】
いくつかの実施形態において、本明細書において開示される実施形態である、水および塩性の溶液をスケール除去するためのシステムは、他のシステムおよび装置と組み合わせられ得、さらなる有益な特徴を提供する。例えば、そのシステムは、2005年5月2日出願されたSOLAR ALIGNMENT DEVICEと題した米国仮特許出願第60/676870号;2005年7月6日出願されたVISUAL WATER FLOW INDICATORと題した米国仮特許出願第60/697104号;2005年7月6日出願されたAPPARATUS FOR RESTORING THE MINERAL CONTENT OF DRINKING WATERと題した米国仮特許出願第60/697106号;2005年7月6日出願されたIMPROVED CYCLONE DEMISTERと題した米国仮特許出願第60/697107号;2004年12月1日出願されたPCT出願第US2004/039993号;2004年12月1日出願されたPCT出願第US2004/039991号;2006年10月13日出願されたPCT出願第US2006/040103号;2008年9月3日出願された米国特許出願第12/281,608号;2008年3月21日出願されたPCT出願第US2008/03744号、および2003年12月2日出願された米国仮特許出願第60/526,580号に開示される、あらゆる装置または方法と組み合わせて使用され得、前述の出願のそれぞれが、本明細書によりその全体において参考として援用される。
【0107】
当業者は、これらの方法および装置が対象を実施するために適合される、および適合され得ること、そして言及された目的および利点、ならびに種々のほかの利点および利益を得ることを正しく認識する。本明細書において記載された方法、手順、および装置は、現在のところ好ましい実施形態の代表であり、かつ例示的であって、本発明の範囲の制限として意図されるものではない。そこでの変更および他の使用は、当業者により思い浮かばれ、この変更および他の使用は、本発明の趣旨に包含され、本開示の範囲によって定義される。
【0108】
変動する置換および改変が、本発明の範囲および趣旨から外れることなく、本明細書において開示された発明に対してなされ得ることは、当業者に明らかである。
【0109】
当業者は、本明細書において示される本発明の局面および実施形態が、互いに別個に、または互いに組み合わせて実施され得ることを認識する。従って、別個の実施形態の組み合わせは、本明細書において開示されたとして本発明の範囲内にある。
【0110】
全ての特許および刊行物は、あたかも個々の刊行物が、具体的に、かつ個々に参考として援用されることが示されたのと同じ程度まで、本明細書において参考として援用される。
【0111】
本明細書において実例的に記載された発明は、本明細書において具体的に開示されないあらゆる要素(1つまたは複数)、制限(1つまたは複数)の非存在下で適切に実施され得る。用いられた用語および表現は、制限の用語ではなく、説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用において、示される特徴の等価物、および記載される特徴の等価物、またはその一部の除外を示すことは意図されない。開示された発明の範囲において、種々の改変が可能であることが認識される。従って、本発明は、好ましい実施形態および必要に応じた特徴によって具体的に開示されたが、本明細書において開示された概念の改変およびバリエーションが、当業者に行われ得、そのような改変およびバリエーションが本開示によって定義されるように本発明の範囲内にあるとみなされることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケール形成化合物を水溶液から取り除く方法であって、該方法は、
アルカリ性のpHで第一のスケール形成化合物の沈殿をもたらすのに十分な化学量論量で、少なくとも1つのイオンを該溶液へと添加する工程;
該溶液のpHをアルカリ性のpHに調整し、それにより、該第一のスケール形成化合物を沈殿させる工程;
該第一のスケール形成化合物を該溶液から取り除く工程;
該溶液を、該溶液から第二のスケール形成化合物の沈殿をもたらすのに十分な温度まで加熱する工程;および
該第二のスケール形成化合物を該溶液から取り除く工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記イオンが、炭酸イオンおよび二価カチオンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭酸イオンが、HCOである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記二価カチオンが、Ca2+およびMg2+からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記化学量論量が、前記二価カチオンを、前記第一のスケール形成化合物におけるバリウム、カドミウム、コバルト、鉄、鉛、マンガン、ニッケル、ストロンチウムおよび亜鉛からなる群より選択される二価カチオンの代わりに用いるのに十分である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化学量論量が、前記二価カチオンを、前記第一のスケール形成化合物におけるアルミニウムおよびネオジムからなる群より選択される三価カチオンの代わりに用いるのに十分である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのイオンを添加する工程が、前記溶液をCOガスでスパージングする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記COが、大気のCOである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのイオンを添加する工程が、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、および重炭酸アンモニウムからなる群より選択される可溶性の重炭酸イオンを前記溶液に添加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのイオンを添加する工程が、CaO、Ca(OH)、Mg(OH)、およびMgOからなる群より選択される化合物を前記溶液に添加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アルカリ性のpHが、約9.2またはそれより高いpHである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第一のスケール形成化合物が、CaCOおよびMgCOからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液のpHを調整する工程が、CaOおよびNaOHからなる群より選択される化合物を該溶液に添加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第一のスケール形成化合物を取り除く工程が、濾過、沈積および遠心分離のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記温度が、約100℃〜約120℃の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
発電所または同様の工業用プロセスからの廃熱が、前記溶液の加熱を達成するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記温度が、約5分〜約10分の期間の範囲内に維持される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第二のスケール形成化合物が、硫酸塩化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第二のスケール形成化合物を取り除く工程が、濾過、沈積および遠心分離のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記溶液を加熱する工程が、該溶液を蒸気と接触させる工程をさらに含み、それにより、該溶液からの、10ppmより低いレベルまでの揮発性有機成分(「VOC」)、ガス、および非揮発性有機化合物の脱ガスが達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つのイオンを添加する工程の前に、前記溶液から汚染物質を取り除く工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記汚染物質が、固体の粒子および炭化水素の小滴からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記水溶液が、水道水、汚染された水溶液、海水、および炭化水素で汚染された塩性のブラインからなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第二のスケール形成化合物を取り除く工程後、前記水溶液を脱ガスする工程をさらに含み、ここで、該脱ガスする工程が、炭化水素化合物を該水溶液から取り除くように適合される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
スケール形成化合物を得る方法であって、該方法は、
水溶液を提供する工程;
請求項1に記載の方法を実施する工程;
前記第一のスケール形成化合物を回収する工程;および
前記第二のスケール形成化合物を回収する工程
を含む、方法。
【請求項26】
前記第一および第二のスケール形成化合物は、表1に列挙される化合物の群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
大気のCOを隔離する方法であって、該方法は、
炭酸イオンの存在下でCO隔離化合物を形成することが可能な少なくとも1つのイオンを含む水溶液を提供する工程;
アルカリ性のpHで該CO隔離化合物の沈殿をもたらすのに十分な化学量論量で、炭酸イオンを該溶液に添加する工程;
該溶液のpHをアルカリ性のpHに調整し、それにより、該CO隔離化合物を沈殿させる工程;および
該CO隔離化合物を該溶液から取り除く工程;
を含む、方法であって、ここで炭酸イオンを添加する工程は、大気のCOを該溶液に添加する工程を含み、ここで、該大気のCOは、該CO隔離化合物において隔離される、方法。
【請求項28】
前記水溶液が、汚染された水溶液、海水、および炭化水素で汚染された塩性のブラインからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記アルカリ性のpHが、約9.2またはそれより高いpHである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記CO隔離化合物が、CaCOおよびMgCOからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記CO隔離化合物を取り除く工程は、濾過、沈積および遠心分離のうちの少なくとも1つを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
スケール形成化合物を水溶液から取り除く装置であって、該装置は、
該水溶液のための入り口;
COガスの供給源;
該入り口と該COガスの供給源とを流体連絡する第一タンク;
pH上昇剤の供給源;
該pH上昇剤の供給源と該第一タンクとを流体連絡する第二タンク;
前記第二タンクと流体連絡するフィルターであって、ここで、該フィルターは、該第二タンクにおいて、第一のスケール形成化合物を該溶液から分けるように適合される、フィルター;
該フィルターと流体連絡する圧力容器であって、該圧力容器内で該溶液を約100℃〜約120℃の範囲内の温度まで加熱するように適合される、圧力容器;および
前記圧力容器と流体連絡するフィルターであって、ここで、該フィルターは、該圧力容器において第二のスケール形成化合物を該溶液から分けるように適合される、フィルター
を備える、装置。
【請求項33】
請求項32に記載の装置であって、該装置は、
前記入り口と前記第一タンクとを流体連絡するディオイラをさらに備え、
ここで、該ディオイラは、固体の粒子および炭化水素の小滴からなる群より選択される汚染物質を前記溶液から取り除くように適合される、
装置。
【請求項34】
請求項32に記載の装置であって、該装置は、
前記圧力容器の下流にあり、前記圧力容器と流体連絡する脱ガス装置をさらに備え、ここで、該脱ガス装置は、炭化水素化合物を前記溶液から取り除くように適合される、
装置。
【請求項35】
CO隔離化合物に大気のCOを隔離する装置であって、該装置は、
炭酸イオンの存在下でCO隔離化合物を形成することが可能な少なくとも1つのイオンを含む水溶液のための入り口;
大気のCOガスの供給源;
該入り口と該COガスの供給源とを流体連絡する第一タンク;
pH上昇剤の供給源;
該pH上昇剤の供給源と該第一タンクとを流体連絡する第二タンク;および
該第二タンクと流体連絡するフィルターであって、ここで、該フィルターは、該第二タンクにおいて、該CO隔離化合物を該溶液から分けるように適合される、フィルター
を備える、装置。
【請求項36】
請求項35に記載の装置であって、該装置は、
前記入り口と前記第一タンクとを流体連絡するディオイラをさらに備え、ここで、該ディオイラは、固体の粒子および炭化水素の小滴からなる群より選択される汚染物質を前記溶液から取り除くように適合される、
装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−523316(P2012−523316A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504923(P2012−504923)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/030759
【国際公開番号】WO2010/118425
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511243738)シルバン ソース, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】