水生植物着生体、及び、それを張設した人工漁礁形成体、並びに、それを立体的に組み立てた人工漁礁
【課題】水生植物の活着性能を良好に確保すること。
【解決手段】海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質を、シート状体の少なくとも片面に付着させた。このようにして、基材の表面にシート状体を張設することにより、同シート状体の少なくとも片面に付着させた着生物質により、海藻類や珪藻類等の水生植物を活着させることができる。この際、シート状体は、基材の表面積の大きさや表面形状に関わりなく張設することができるため、水生植物の活着性能を良好に確保することができる。
【解決手段】海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質を、シート状体の少なくとも片面に付着させた。このようにして、基材の表面にシート状体を張設することにより、同シート状体の少なくとも片面に付着させた着生物質により、海藻類や珪藻類等の水生植物を活着させることができる。この際、シート状体は、基材の表面積の大きさや表面形状に関わりなく張設することができるため、水生植物の活着性能を良好に確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻類や珪藻類等の水生植物の着生を良好となした水生植物着生体と、同水生植物着生体を張設してなる人工漁礁形成体と、同人工漁礁形成体を立体的に組み立てて形成した人工漁礁とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工漁礁の一形態として、鉄材と貝殻をセメントで結合させると共に、鉄材を表面に露出させたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようにして、石に較べて、同じ体積でも表面積を大きくして、海藻類や珪藻類等の水生植物の養殖効率を増大させるようにしている。
【特許文献1】特開平5−192048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した人工漁礁では、水生植物に必要な栄養分が無い、若しくは少ないことから、水生植物が着生しないという不具合がある。
【0005】
しかも、セメントの製造段階で微量ではあるが混入する有害な六価クロムを、水生植物が極度に忌避するため、セメント表面を長期間(例えば、十数年間)風化させた後でなければ、水生植物が着生しないという不具合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明では、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質を、シート状体の少なくとも片面に付着させてなる水生植物着生体を提供するものである。
【0007】
そして、本発明は、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質は、貝化石であることにも特徴を有する。
【0008】
また、以下の人工漁礁形成体や人工漁礁を提供するものである。
【0009】
(1)前記水生植物着生体を、人工漁礁形成片の表面に張設してなる人工漁礁形成体。
【0010】
(2)上記(1)の人工漁礁形成体を、立体的に組み立ててなる人工漁礁。
【0011】
(3)海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質をポーラスコンクリートに混練して、ポーラス状の人工漁礁形成片を形成し、同人工漁礁形成片の表面にシート状体を張設してなる人工漁礁形成体。
【0012】
(4)上記(3)の着生物質は、貝化石であることを特徴とする水生植物着生体。
【0013】
(5)上記(3)又は(4)の人工漁礁形成体を、支持体に連設してなる人工漁礁。
【発明の効果】
【0014】
(1)請求項1記載の本発明に係る水生植物着生体は、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質を、シート状体の少なくとも片面に付着させてなるものである。
【0015】
このようにして、基材の表面にシート状体を張設することにより、同シート状体の少なくとも片面に付着させた着生物質により、海藻類や珪藻類等の水生植物を活着させることができる。
【0016】
この際、シート状体は、基材の表面積の大きさや表面形状に関わりなく張設することができるため、水生植物の活着性能を良好に確保することができる。
【0017】
(2)請求項2記載の本発明に係る水生植物着生体では、着生物質として、貝化石を採用している。
【0018】
ここで、貝化石、特に、北海道や富山県等に広く分布する天然鉱物資源の貝化石は、珪酸・石灰・可溶性石灰を主成分として多くの亜鉛・銅・鉄・燐酸等のミネラルを含有して、水生植物の成長にとって必要な栄養塩基が十分に含まれているため、かかる貝化石をシート状体に付着させた場合には、同シート状体に水生植物が着生し易く、しかも、同シート状体を育成床として水生植物を育成することができる。
【0019】
(3)請求項3記載の本発明に係る人工漁礁形成体では、前記水生植物着生体を、人工漁礁形成片の表面に張設してなるものである。
【0020】
このようにして、人工漁礁形成片の表面に水生植物着生体を張設することにより、同人工漁礁形成片への水生植物の着生性を良好に確保することができる。
【0021】
この際、人工漁礁形成片として、耐久性が強くしかも安価に製造できるコンクリート製品を使用した場合でも、水生植物着生体により人工漁礁形成片の表面を被覆することにより、同人工漁礁形成片の表面の環境を優しくすることができて、長期間風化させることなく、そのまま使用することができると共に、水生植物が生息する上での根張り性を良好となすことができて、活着性を良好に確保することができる。
【0022】
しかも、水生植物の成長に欠かせない栄養塩をも水生植物着生体より水生植物に供給することができる。
【0023】
さらには、人工漁礁形成体は、工場等においてプレキャスト製品として出荷することができるため、短時間に規格管理された高品質のものを安価に提供することができる。
【0024】
(4)請求項4記載の本発明に係る人工漁礁は、人工漁礁形成体を、立体的に組み立ててなるものである。
【0025】
このようにして、水生植物着生体を張設した人工漁礁形成体の外部表面積を可及的に広く確保して、水生植物の活着性を良好に確保することができる。
【0026】
しかも、水生植物の成長にとって必要な栄養塩基を十分に含んでいる水生植物着生体の表面積が大きいため、アワビやサザエ等の貝類の漁礁としても有効に機能させることができる。
【0027】
(5)請求項5記載の本発明に係る人工漁礁形成体は、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質をポーラスコンクリートに混練して、ポーラス状の人工漁礁形成片を形成し、同人工漁礁形成片の表面にシート状体を張設してなるものである。
【0028】
このようにして、ポーラス状の人工漁礁形成片の表面にシート状体を張設することにより、同人工漁礁形成片の表面にシート状体を介して海藻類や珪藻類等の水生植物を活着させることができる。
【0029】
この際、人工漁礁形成片はポーラス状であるため、水生植物の根が食い込み易く、安定した根張り・活着性能を良好に確保することができる。
【0030】
(6)請求項6記載の本発明に係る人工漁礁形成体は、着生物質として、貝化石を採用している。
【0031】
特に、北海道や富山県等に広く分布する天然鉱物資源の貝化石は、珪酸・石灰・可溶性石灰を主成分として多くの亜鉛・銅・鉄・燐酸等のミネラルを含有して、水生植物の成長にとって必要な栄養塩基が十分に含まれているため、経時的にこれらが水中に溶け出して、着生した水生植物に長期的に栄養源を補給することができる。
【0032】
(7)請求項7記載の本発明に係る人工漁礁は、上記(5)又は(6)の人工漁礁形成体を、支持体に連設してなるものである。
【0033】
このようにして、支持体に強度と重量を保持させることにより、人工漁礁形成片を海底等に長期間にわたって安定状態に設置(沈設)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1に示すAは、本発明に係る水生植物着生体であり、同水生植物着生体Aは、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質Bを、シート状体Sの少なくとも片面(本実施の形態では両面)に付着させてなるものである。W1は横幅であり、例えば、1.1mに設定することができる。W2は縦幅である、例えば、5.0mに設定することができる。
【0035】
ここで、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質Bとしては、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、フライアッシュ、ベンガラ、珪藻土、パーライト、タルク、ゼオライト、貝殻の粉砕物、貝化石、泥炭、木炭、活性炭、炭素繊維等を、1種類ないしは2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
特に、好ましくは、珪酸・石灰・可溶性石灰を主成分として多くの亜鉛・銅・鉄・燐酸等のミネラルを含有して、水生植物の成長にとって必要な栄養塩基が十分に含まれている北海道や富山県等に広く分布する天然鉱物資源の貝化石を使用することができる。
【0037】
シート状体Sとしては、繊維質のシートを使用しており、後述する帯状の繊維質シート1を所定の縦幅W2で切断したものである。
【0038】
図2は、水生植物着生体Aを製造する水生植物着生体製造装置Mを示しており、同水生植物着生体製造装置Mは、帯状の繊維質シート1を繰り出す繰り出し部2と、同繰り出し部2の上流側において、繰り出される繊維質シート1の表面に接着剤Dを散布する表面側接着剤散布部3と、同表面側接着剤散布部3により散布された接着剤Dの上から繊維質シート1の表面に着生物質Bを散布する表面側着生物質散布部4と、繊維質シート1の裏面に接着剤Dを散布する裏面側接着剤散布部5と、同裏面側接着剤散布部5により散布された接着剤Dの上から繊維質シート1の裏面に着生物質Bを散布する裏面側着生物質散布部6と、繊維質シート1の表・裏面にそれぞれ散布した接着剤Dと着生物質Bとを乾燥処理して、繊維質シート1に着生物質Bを固定する乾燥処理部7とを具備している。8,9,10はそれぞれ繰り出しガイドローラである。
【0039】
このようにして、水生植物着生体製造装置Mでは、図2に示すように、繰り出し部2により帯状の繊維質シート1を連続的に繰り出しながら、同繊維質シート1の表面に表面側接着剤散布部3から接着剤Dを散布すると共に、表面側着生物質散布部4から着生物質Bを散布し、続いて、繊維質シート1の裏面に裏面側接着剤散布部5から接着剤Dを散布すると共に、裏面側着生物質散布部6から着生物質Bを散布し、その後、繊維質シート1の表・裏面にそれぞれ散布した接着剤Dと着生物質Bとを乾燥処理部7により乾燥処理して、繊維質シート1に着生物質Bを固定するようにしている。
【0040】
そして、繊維質シート1を所定長さ毎に切断することにより、図1に示す水生植物着生体Aを製造することができる。
【0041】
図3は、本発明に係る第1実施形態としての人工漁礁形成体Eを示しており、同人工漁礁形成体Eは、前記した水生植物着生体Aを、人工漁礁形成片Fの表面に張設してなるものである。
【0042】
人工漁礁形成片Fは、コンクリートを素材とするものであり、後述する製造方法により水生植物着生体Aと一体化されて人工漁礁形成体Eの一部を形成している。W3は左右幅であり、例えば、450mmに設定することができる。W4は前後幅であり、例えば、5000mmに設定することができる。W5は上下幅であり、例えば、80mmに設定することができる。
【0043】
図4は、人工漁礁形成体Eの製造工程説明図であり、次に、図4を参照しながら人工漁礁形成体Eの製造方法について説明する。
【0044】
(1)図4(a)に示すように、人工漁礁形成体Eを製造するための型枠11を基板12上に載置する。
【0045】
(2)図4(b)に示すように、型枠11内に水生植物着生体Aを配置する。
【0046】
この際、人工漁礁形成体Eの上面側を被覆する水生植物着生体Aの左右側縁部は、型枠11の左右外方に張り出し状に配置しておく。
【0047】
(3)図4(c)に示すように、型枠11内にコンクリートCを投入する。
【0048】
(4)図4(d)に示すように、型枠11内に投入したコンクリートCの上面側に、水生植物着生体Aの左右側縁部を折り返して、同コンクリートCの上面を被覆する。
【0049】
(5)型枠11内のコンクリートCを固化(必要に応じてその後に養生)させた後に脱型する。
【0050】
このようにして、プレキャストコンクリート製品として人工漁礁形成体Eを得ることができる。
【0051】
図5は、本発明に係る第1実施形態としての人工漁礁Gを示しており、次に、図5を参照しながら人工漁礁Gの構造について説明する。
【0052】
すなわち、人工漁礁Gは、四角形枠状に形成した前部支持枠体13と中途部支持枠体14と後部支持枠体15とを前後方向に間隔を開けて起立状態に配置し、これら支持枠体13,14,15の左右側部間に、前後方向に伸延させて形成した複数の前記人工漁礁形成体Eを、上下方向に間隔を開けて架設すると共に、これら支持枠体13,14,15の上部間に、前後方向に伸延させて形成した複数の前記人工漁礁形成体Eを、左右方向に間隔を開けて架設している。
【0053】
このようにして、人工漁礁Gは、複数の人工漁礁形成体Eを立体的に組み立てることにより、水生植物着生体Aを張設した人工漁礁形成体Eの外部表面積を可及的に広く確保して、水生植物の活着性を良好に確保することができるようにしている。
【0054】
図6は、第1変容例としての人工漁礁Gを示しており、同人工漁礁Gは、三角形枠状に形成した前部支持枠体16と中途部支持枠体17と後部支持枠体18とを前後方向に間隔を開けて起立状態に配置し、これら支持枠体16,17,18間に前後方向に伸延させて形成した複数の前記人工漁礁形成体Eを、周縁方向に間隔を開けて架設して立体的に形成している。
【0055】
かかる人工漁礁Gの場合も、水生植物着生体Aを張設した人工漁礁形成体Eの外部表面積を可及的に広く確保して、水生植物の活着性を良好に確保することができる。
【0056】
図7は、本発明に係る第2実施形態としての人工漁礁形成体Eを示しており、同人工漁礁形成体Eは、図8及び図9にも示すように、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質をポーラスコンクリートCpに混練して、ポーラス状の人工漁礁形成片Fを形成し、同人工漁礁形成片Fの表面にシート状体Sを張設すると共に、支持体Hに連設している。
【0057】
ここで、着生物質としては、前記した貝化石等を使用することができる。
【0058】
また、シート状体Sは、通気性を有するメッシュ状態のいわゆる土木ネットを用いることができる。この土木ネットは、たとえば、繊維土木開発株式会社製の土木防砂シート(SDK#1058、SDK#1080)や、東洋紡績株式会社製ラッセルシートや、同社製ストレッチファイバーシート(#4040)が好適である。
【0059】
支持体Hは、矩形板状に形成した鉄筋コンクリート(プレキャストコンクリート)であり、同支持体Hに強度と重量を保持させて、ポーラス状の人工漁礁形成片Fを連設することにより、人工漁礁形成片を海底等に長期間にわたって安定状態に設置(沈設)することができるようにしている。21は、支持体Hに配筋した鉄筋、22は、支持体Hの前後端面にそれぞれ設けた把持体である。
【0060】
図10はポーラスコンクリートCpの配合割合を示している。図10(a)は、モスナイトを50重量部とした場合における各混和材料の許容変動幅を示しており、水は90〜110重量部、セメントは360〜440重量部、粗骨材は1400〜1500重量部、粉鉄は30〜50重量部、AE減水材は3〜5重量部であり、これらを混合して形成したポーラスコンクリートCpの全空隙率は18%〜25%とするのが好ましい。
【0061】
そして、さらに好ましくは、図10(b)にも示すように、水は100重量部、セメントは400重量部、粗骨材は1460重量部、粉鉄は40重量部、AE減水材は4重量部であり、これらを混合して形成したポーラスコンクリートCpの全空隙率は20%とするのが良い。なお、ここでAE減水材とは、界面活性剤の一種で、コンクリートに混和することにより作業性を損なうことなく使用水量を減少させることができ、かつ空気(気泡)をコンクリート中に連行する混和材料のことをいう。
【0062】
図11は、人工漁礁形成体Eの製造工程説明図であり、次に、図11を参照しながら人工漁礁形成体Eの製造方法について説明する。
【0063】
(1)図11(a)に示すように、人工漁礁形成体Eを製造するための型枠11を基板12上に載置する。
【0064】
(2)図11(b)に示すように、型枠11内にシート状体Sを配置する。
【0065】
この際、人工漁礁形成体Eの上面側を被覆するシート状体Sの左右側縁部は、型枠11の左右外方に張り出し状に配置しておく。
【0066】
(3)図11(c)に示すように、型枠11内にポーラスコンクリートCpを投入する。ここで、ポーラスコンクリートCpには、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質を混練している。
【0067】
(4)図11(d)に示すように、型枠11内に投入したポーラスコンクリートCpの上面側に、水生植物着生体Aの左右側縁部を折り返して、同ポーラスコンクリートCpの上面の左右側縁部を被覆する。
【0068】
(5)図11(e)(f)に示すように、ポーラスコンクリートCpの中央上部にプレキャストコンクリートである支持体Hを載置し、ポーラスコンクリートCpを支持体Hと一体的に固化(必要に応じてその後に養生)させた後に脱型する。
【0069】
このようにして、プレキャストコンクリート製品として人工漁礁形成体Eを得ることができる。
【0070】
そして、人工漁礁形成体Eは、着生物質を混練したポーラスコンクリートCpの周面をシート状体Sにより被覆しているため、水生植物がシート状体Sを介してポーラスコンクリートCpに根を食い込ませることができて、安定状態に根張り活着できる。
【0071】
この際、シート状体Sは、ポーラスコンクリートCpの表面を保護すると共に、水中植物の着生基板として機能し、さらに、ポーラスコンクリートCpから溶出する栄養素等を透過する。
【0072】
その結果、着生物質の主成分である可溶性石灰やミネラル成分が経時的にポーラスコンクリートCpから溶出して、水生植物に長期的に栄養補給をすることができる。
【0073】
水生植物としてのアラメ・クロメ・昆布等の海藻は着生しやすいが、着生しにくい水生植物については、沈設する前に、着生した紡績糸を人工漁礁形成体Eに取り付けておくことにより、着生効率の向上を図ることもできる。
【0074】
図12は、本発明に係る第2実施形態としての人工漁礁Gを示しており、次に、図12を参照しながら人工漁礁Gの構造について説明する。
【0075】
すなわち、人工漁礁Gは、鉄筋コンクリートにより矩形板状に形成した基礎板体K上に、第3実施形態としての人工漁礁形成体Eを多数立設している。
【0076】
そして、人工漁礁形成体Eは、図13及び図14に示すように、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質をポーラスコンクリートCpに混練して、ポーラス状の人工漁礁形成片Fを矩形筒状に形成し、同人工漁礁形成片Fの中芯部に、柱状に形成した支持体Hを連設しており、人工漁礁形成片Fを形成するポーラスコンクリートCpの周面は、シート状体Sにより被覆している。
【0077】
また、支持体Hの下部には埋設固定部23を延設し、同埋設固定部23を基礎板体Kに埋設して、同基礎板体Kに支持体Hを一体的に立設している。
【0078】
このようにして、人工漁礁Gは、基礎板体Kに多数の人工漁礁形成体Eを立体的に組み立てることにより、貝化石等の着生物質をポーラスコンクリートCpに混練してなる人工漁礁形成体Eの外部表面積を可及的に広く確保して、水生植物の活着性を良好に確保することができる。
【0079】
しかも、支持体Hに強度と重量を保持させることにより、人工漁礁形成体Eを海底等に長期間にわたって安定状態に設置(沈設)することができて、海中での波浪や波のうねりといった外部からの破壊や浸食作用に十分対抗させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る水生植物着生体の斜視説明図。
【図2】水生植物着生体製造装置の説明図。
【図3】本発明に係る第1実施形態としての人工漁礁形成体の斜視説明図。
【図4】同人工漁礁形成体の製造工程説明図。
【図5】本発明に係る第1実施形態としての人工漁礁の斜視説明図。
【図6】第1変容例としての人工漁礁の斜視説明図。
【図7】本発明に係る第2実施形態としての人工漁礁形成体の斜視説明図。
【図8】同人工漁礁形成体の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図。
【図9】同人工漁礁形成体の断面正面図。
【図10】ポーラスコンクリートの配合割合を示した説明図。
【図11】同人工漁礁形成体の製造工程説明図。
【図12】本発明に係る第2実施形態としての人工漁礁の斜視説明図。
【図13】同人工漁礁の人工漁礁形成体の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図。
【図14】同人工漁礁形成体の断面正面図。
【符号の説明】
【0081】
A 水生植物着生体
B 着生物質
C コンクリート
D 接着剤
E 人工漁礁形成体
F 人工漁礁形成片
G 人工漁礁
M 水生植物着生体製造装置
S シート状体
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻類や珪藻類等の水生植物の着生を良好となした水生植物着生体と、同水生植物着生体を張設してなる人工漁礁形成体と、同人工漁礁形成体を立体的に組み立てて形成した人工漁礁とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工漁礁の一形態として、鉄材と貝殻をセメントで結合させると共に、鉄材を表面に露出させたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようにして、石に較べて、同じ体積でも表面積を大きくして、海藻類や珪藻類等の水生植物の養殖効率を増大させるようにしている。
【特許文献1】特開平5−192048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した人工漁礁では、水生植物に必要な栄養分が無い、若しくは少ないことから、水生植物が着生しないという不具合がある。
【0005】
しかも、セメントの製造段階で微量ではあるが混入する有害な六価クロムを、水生植物が極度に忌避するため、セメント表面を長期間(例えば、十数年間)風化させた後でなければ、水生植物が着生しないという不具合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明では、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質を、シート状体の少なくとも片面に付着させてなる水生植物着生体を提供するものである。
【0007】
そして、本発明は、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質は、貝化石であることにも特徴を有する。
【0008】
また、以下の人工漁礁形成体や人工漁礁を提供するものである。
【0009】
(1)前記水生植物着生体を、人工漁礁形成片の表面に張設してなる人工漁礁形成体。
【0010】
(2)上記(1)の人工漁礁形成体を、立体的に組み立ててなる人工漁礁。
【0011】
(3)海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質をポーラスコンクリートに混練して、ポーラス状の人工漁礁形成片を形成し、同人工漁礁形成片の表面にシート状体を張設してなる人工漁礁形成体。
【0012】
(4)上記(3)の着生物質は、貝化石であることを特徴とする水生植物着生体。
【0013】
(5)上記(3)又は(4)の人工漁礁形成体を、支持体に連設してなる人工漁礁。
【発明の効果】
【0014】
(1)請求項1記載の本発明に係る水生植物着生体は、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質を、シート状体の少なくとも片面に付着させてなるものである。
【0015】
このようにして、基材の表面にシート状体を張設することにより、同シート状体の少なくとも片面に付着させた着生物質により、海藻類や珪藻類等の水生植物を活着させることができる。
【0016】
この際、シート状体は、基材の表面積の大きさや表面形状に関わりなく張設することができるため、水生植物の活着性能を良好に確保することができる。
【0017】
(2)請求項2記載の本発明に係る水生植物着生体では、着生物質として、貝化石を採用している。
【0018】
ここで、貝化石、特に、北海道や富山県等に広く分布する天然鉱物資源の貝化石は、珪酸・石灰・可溶性石灰を主成分として多くの亜鉛・銅・鉄・燐酸等のミネラルを含有して、水生植物の成長にとって必要な栄養塩基が十分に含まれているため、かかる貝化石をシート状体に付着させた場合には、同シート状体に水生植物が着生し易く、しかも、同シート状体を育成床として水生植物を育成することができる。
【0019】
(3)請求項3記載の本発明に係る人工漁礁形成体では、前記水生植物着生体を、人工漁礁形成片の表面に張設してなるものである。
【0020】
このようにして、人工漁礁形成片の表面に水生植物着生体を張設することにより、同人工漁礁形成片への水生植物の着生性を良好に確保することができる。
【0021】
この際、人工漁礁形成片として、耐久性が強くしかも安価に製造できるコンクリート製品を使用した場合でも、水生植物着生体により人工漁礁形成片の表面を被覆することにより、同人工漁礁形成片の表面の環境を優しくすることができて、長期間風化させることなく、そのまま使用することができると共に、水生植物が生息する上での根張り性を良好となすことができて、活着性を良好に確保することができる。
【0022】
しかも、水生植物の成長に欠かせない栄養塩をも水生植物着生体より水生植物に供給することができる。
【0023】
さらには、人工漁礁形成体は、工場等においてプレキャスト製品として出荷することができるため、短時間に規格管理された高品質のものを安価に提供することができる。
【0024】
(4)請求項4記載の本発明に係る人工漁礁は、人工漁礁形成体を、立体的に組み立ててなるものである。
【0025】
このようにして、水生植物着生体を張設した人工漁礁形成体の外部表面積を可及的に広く確保して、水生植物の活着性を良好に確保することができる。
【0026】
しかも、水生植物の成長にとって必要な栄養塩基を十分に含んでいる水生植物着生体の表面積が大きいため、アワビやサザエ等の貝類の漁礁としても有効に機能させることができる。
【0027】
(5)請求項5記載の本発明に係る人工漁礁形成体は、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質をポーラスコンクリートに混練して、ポーラス状の人工漁礁形成片を形成し、同人工漁礁形成片の表面にシート状体を張設してなるものである。
【0028】
このようにして、ポーラス状の人工漁礁形成片の表面にシート状体を張設することにより、同人工漁礁形成片の表面にシート状体を介して海藻類や珪藻類等の水生植物を活着させることができる。
【0029】
この際、人工漁礁形成片はポーラス状であるため、水生植物の根が食い込み易く、安定した根張り・活着性能を良好に確保することができる。
【0030】
(6)請求項6記載の本発明に係る人工漁礁形成体は、着生物質として、貝化石を採用している。
【0031】
特に、北海道や富山県等に広く分布する天然鉱物資源の貝化石は、珪酸・石灰・可溶性石灰を主成分として多くの亜鉛・銅・鉄・燐酸等のミネラルを含有して、水生植物の成長にとって必要な栄養塩基が十分に含まれているため、経時的にこれらが水中に溶け出して、着生した水生植物に長期的に栄養源を補給することができる。
【0032】
(7)請求項7記載の本発明に係る人工漁礁は、上記(5)又は(6)の人工漁礁形成体を、支持体に連設してなるものである。
【0033】
このようにして、支持体に強度と重量を保持させることにより、人工漁礁形成片を海底等に長期間にわたって安定状態に設置(沈設)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1に示すAは、本発明に係る水生植物着生体であり、同水生植物着生体Aは、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質Bを、シート状体Sの少なくとも片面(本実施の形態では両面)に付着させてなるものである。W1は横幅であり、例えば、1.1mに設定することができる。W2は縦幅である、例えば、5.0mに設定することができる。
【0035】
ここで、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質Bとしては、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、フライアッシュ、ベンガラ、珪藻土、パーライト、タルク、ゼオライト、貝殻の粉砕物、貝化石、泥炭、木炭、活性炭、炭素繊維等を、1種類ないしは2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
特に、好ましくは、珪酸・石灰・可溶性石灰を主成分として多くの亜鉛・銅・鉄・燐酸等のミネラルを含有して、水生植物の成長にとって必要な栄養塩基が十分に含まれている北海道や富山県等に広く分布する天然鉱物資源の貝化石を使用することができる。
【0037】
シート状体Sとしては、繊維質のシートを使用しており、後述する帯状の繊維質シート1を所定の縦幅W2で切断したものである。
【0038】
図2は、水生植物着生体Aを製造する水生植物着生体製造装置Mを示しており、同水生植物着生体製造装置Mは、帯状の繊維質シート1を繰り出す繰り出し部2と、同繰り出し部2の上流側において、繰り出される繊維質シート1の表面に接着剤Dを散布する表面側接着剤散布部3と、同表面側接着剤散布部3により散布された接着剤Dの上から繊維質シート1の表面に着生物質Bを散布する表面側着生物質散布部4と、繊維質シート1の裏面に接着剤Dを散布する裏面側接着剤散布部5と、同裏面側接着剤散布部5により散布された接着剤Dの上から繊維質シート1の裏面に着生物質Bを散布する裏面側着生物質散布部6と、繊維質シート1の表・裏面にそれぞれ散布した接着剤Dと着生物質Bとを乾燥処理して、繊維質シート1に着生物質Bを固定する乾燥処理部7とを具備している。8,9,10はそれぞれ繰り出しガイドローラである。
【0039】
このようにして、水生植物着生体製造装置Mでは、図2に示すように、繰り出し部2により帯状の繊維質シート1を連続的に繰り出しながら、同繊維質シート1の表面に表面側接着剤散布部3から接着剤Dを散布すると共に、表面側着生物質散布部4から着生物質Bを散布し、続いて、繊維質シート1の裏面に裏面側接着剤散布部5から接着剤Dを散布すると共に、裏面側着生物質散布部6から着生物質Bを散布し、その後、繊維質シート1の表・裏面にそれぞれ散布した接着剤Dと着生物質Bとを乾燥処理部7により乾燥処理して、繊維質シート1に着生物質Bを固定するようにしている。
【0040】
そして、繊維質シート1を所定長さ毎に切断することにより、図1に示す水生植物着生体Aを製造することができる。
【0041】
図3は、本発明に係る第1実施形態としての人工漁礁形成体Eを示しており、同人工漁礁形成体Eは、前記した水生植物着生体Aを、人工漁礁形成片Fの表面に張設してなるものである。
【0042】
人工漁礁形成片Fは、コンクリートを素材とするものであり、後述する製造方法により水生植物着生体Aと一体化されて人工漁礁形成体Eの一部を形成している。W3は左右幅であり、例えば、450mmに設定することができる。W4は前後幅であり、例えば、5000mmに設定することができる。W5は上下幅であり、例えば、80mmに設定することができる。
【0043】
図4は、人工漁礁形成体Eの製造工程説明図であり、次に、図4を参照しながら人工漁礁形成体Eの製造方法について説明する。
【0044】
(1)図4(a)に示すように、人工漁礁形成体Eを製造するための型枠11を基板12上に載置する。
【0045】
(2)図4(b)に示すように、型枠11内に水生植物着生体Aを配置する。
【0046】
この際、人工漁礁形成体Eの上面側を被覆する水生植物着生体Aの左右側縁部は、型枠11の左右外方に張り出し状に配置しておく。
【0047】
(3)図4(c)に示すように、型枠11内にコンクリートCを投入する。
【0048】
(4)図4(d)に示すように、型枠11内に投入したコンクリートCの上面側に、水生植物着生体Aの左右側縁部を折り返して、同コンクリートCの上面を被覆する。
【0049】
(5)型枠11内のコンクリートCを固化(必要に応じてその後に養生)させた後に脱型する。
【0050】
このようにして、プレキャストコンクリート製品として人工漁礁形成体Eを得ることができる。
【0051】
図5は、本発明に係る第1実施形態としての人工漁礁Gを示しており、次に、図5を参照しながら人工漁礁Gの構造について説明する。
【0052】
すなわち、人工漁礁Gは、四角形枠状に形成した前部支持枠体13と中途部支持枠体14と後部支持枠体15とを前後方向に間隔を開けて起立状態に配置し、これら支持枠体13,14,15の左右側部間に、前後方向に伸延させて形成した複数の前記人工漁礁形成体Eを、上下方向に間隔を開けて架設すると共に、これら支持枠体13,14,15の上部間に、前後方向に伸延させて形成した複数の前記人工漁礁形成体Eを、左右方向に間隔を開けて架設している。
【0053】
このようにして、人工漁礁Gは、複数の人工漁礁形成体Eを立体的に組み立てることにより、水生植物着生体Aを張設した人工漁礁形成体Eの外部表面積を可及的に広く確保して、水生植物の活着性を良好に確保することができるようにしている。
【0054】
図6は、第1変容例としての人工漁礁Gを示しており、同人工漁礁Gは、三角形枠状に形成した前部支持枠体16と中途部支持枠体17と後部支持枠体18とを前後方向に間隔を開けて起立状態に配置し、これら支持枠体16,17,18間に前後方向に伸延させて形成した複数の前記人工漁礁形成体Eを、周縁方向に間隔を開けて架設して立体的に形成している。
【0055】
かかる人工漁礁Gの場合も、水生植物着生体Aを張設した人工漁礁形成体Eの外部表面積を可及的に広く確保して、水生植物の活着性を良好に確保することができる。
【0056】
図7は、本発明に係る第2実施形態としての人工漁礁形成体Eを示しており、同人工漁礁形成体Eは、図8及び図9にも示すように、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質をポーラスコンクリートCpに混練して、ポーラス状の人工漁礁形成片Fを形成し、同人工漁礁形成片Fの表面にシート状体Sを張設すると共に、支持体Hに連設している。
【0057】
ここで、着生物質としては、前記した貝化石等を使用することができる。
【0058】
また、シート状体Sは、通気性を有するメッシュ状態のいわゆる土木ネットを用いることができる。この土木ネットは、たとえば、繊維土木開発株式会社製の土木防砂シート(SDK#1058、SDK#1080)や、東洋紡績株式会社製ラッセルシートや、同社製ストレッチファイバーシート(#4040)が好適である。
【0059】
支持体Hは、矩形板状に形成した鉄筋コンクリート(プレキャストコンクリート)であり、同支持体Hに強度と重量を保持させて、ポーラス状の人工漁礁形成片Fを連設することにより、人工漁礁形成片を海底等に長期間にわたって安定状態に設置(沈設)することができるようにしている。21は、支持体Hに配筋した鉄筋、22は、支持体Hの前後端面にそれぞれ設けた把持体である。
【0060】
図10はポーラスコンクリートCpの配合割合を示している。図10(a)は、モスナイトを50重量部とした場合における各混和材料の許容変動幅を示しており、水は90〜110重量部、セメントは360〜440重量部、粗骨材は1400〜1500重量部、粉鉄は30〜50重量部、AE減水材は3〜5重量部であり、これらを混合して形成したポーラスコンクリートCpの全空隙率は18%〜25%とするのが好ましい。
【0061】
そして、さらに好ましくは、図10(b)にも示すように、水は100重量部、セメントは400重量部、粗骨材は1460重量部、粉鉄は40重量部、AE減水材は4重量部であり、これらを混合して形成したポーラスコンクリートCpの全空隙率は20%とするのが良い。なお、ここでAE減水材とは、界面活性剤の一種で、コンクリートに混和することにより作業性を損なうことなく使用水量を減少させることができ、かつ空気(気泡)をコンクリート中に連行する混和材料のことをいう。
【0062】
図11は、人工漁礁形成体Eの製造工程説明図であり、次に、図11を参照しながら人工漁礁形成体Eの製造方法について説明する。
【0063】
(1)図11(a)に示すように、人工漁礁形成体Eを製造するための型枠11を基板12上に載置する。
【0064】
(2)図11(b)に示すように、型枠11内にシート状体Sを配置する。
【0065】
この際、人工漁礁形成体Eの上面側を被覆するシート状体Sの左右側縁部は、型枠11の左右外方に張り出し状に配置しておく。
【0066】
(3)図11(c)に示すように、型枠11内にポーラスコンクリートCpを投入する。ここで、ポーラスコンクリートCpには、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質を混練している。
【0067】
(4)図11(d)に示すように、型枠11内に投入したポーラスコンクリートCpの上面側に、水生植物着生体Aの左右側縁部を折り返して、同ポーラスコンクリートCpの上面の左右側縁部を被覆する。
【0068】
(5)図11(e)(f)に示すように、ポーラスコンクリートCpの中央上部にプレキャストコンクリートである支持体Hを載置し、ポーラスコンクリートCpを支持体Hと一体的に固化(必要に応じてその後に養生)させた後に脱型する。
【0069】
このようにして、プレキャストコンクリート製品として人工漁礁形成体Eを得ることができる。
【0070】
そして、人工漁礁形成体Eは、着生物質を混練したポーラスコンクリートCpの周面をシート状体Sにより被覆しているため、水生植物がシート状体Sを介してポーラスコンクリートCpに根を食い込ませることができて、安定状態に根張り活着できる。
【0071】
この際、シート状体Sは、ポーラスコンクリートCpの表面を保護すると共に、水中植物の着生基板として機能し、さらに、ポーラスコンクリートCpから溶出する栄養素等を透過する。
【0072】
その結果、着生物質の主成分である可溶性石灰やミネラル成分が経時的にポーラスコンクリートCpから溶出して、水生植物に長期的に栄養補給をすることができる。
【0073】
水生植物としてのアラメ・クロメ・昆布等の海藻は着生しやすいが、着生しにくい水生植物については、沈設する前に、着生した紡績糸を人工漁礁形成体Eに取り付けておくことにより、着生効率の向上を図ることもできる。
【0074】
図12は、本発明に係る第2実施形態としての人工漁礁Gを示しており、次に、図12を参照しながら人工漁礁Gの構造について説明する。
【0075】
すなわち、人工漁礁Gは、鉄筋コンクリートにより矩形板状に形成した基礎板体K上に、第3実施形態としての人工漁礁形成体Eを多数立設している。
【0076】
そして、人工漁礁形成体Eは、図13及び図14に示すように、海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質をポーラスコンクリートCpに混練して、ポーラス状の人工漁礁形成片Fを矩形筒状に形成し、同人工漁礁形成片Fの中芯部に、柱状に形成した支持体Hを連設しており、人工漁礁形成片Fを形成するポーラスコンクリートCpの周面は、シート状体Sにより被覆している。
【0077】
また、支持体Hの下部には埋設固定部23を延設し、同埋設固定部23を基礎板体Kに埋設して、同基礎板体Kに支持体Hを一体的に立設している。
【0078】
このようにして、人工漁礁Gは、基礎板体Kに多数の人工漁礁形成体Eを立体的に組み立てることにより、貝化石等の着生物質をポーラスコンクリートCpに混練してなる人工漁礁形成体Eの外部表面積を可及的に広く確保して、水生植物の活着性を良好に確保することができる。
【0079】
しかも、支持体Hに強度と重量を保持させることにより、人工漁礁形成体Eを海底等に長期間にわたって安定状態に設置(沈設)することができて、海中での波浪や波のうねりといった外部からの破壊や浸食作用に十分対抗させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る水生植物着生体の斜視説明図。
【図2】水生植物着生体製造装置の説明図。
【図3】本発明に係る第1実施形態としての人工漁礁形成体の斜視説明図。
【図4】同人工漁礁形成体の製造工程説明図。
【図5】本発明に係る第1実施形態としての人工漁礁の斜視説明図。
【図6】第1変容例としての人工漁礁の斜視説明図。
【図7】本発明に係る第2実施形態としての人工漁礁形成体の斜視説明図。
【図8】同人工漁礁形成体の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図。
【図9】同人工漁礁形成体の断面正面図。
【図10】ポーラスコンクリートの配合割合を示した説明図。
【図11】同人工漁礁形成体の製造工程説明図。
【図12】本発明に係る第2実施形態としての人工漁礁の斜視説明図。
【図13】同人工漁礁の人工漁礁形成体の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図。
【図14】同人工漁礁形成体の断面正面図。
【符号の説明】
【0081】
A 水生植物着生体
B 着生物質
C コンクリート
D 接着剤
E 人工漁礁形成体
F 人工漁礁形成片
G 人工漁礁
M 水生植物着生体製造装置
S シート状体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質を、シート状体の少なくとも片面に付着させてなる水生植物着生体。
【請求項2】
請求項1記載の着生物質は、貝化石であることを特徴とする水生植物着生体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水生植物着生体を、人工漁礁形成片の表面に張設してなる人工漁礁形成体。
【請求項4】
請求項3記載の人工漁礁形成体を、立体的に組み立ててなる人工漁礁。
【請求項5】
海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質をポーラスコンクリートに混練して、ポーラス状の人工漁礁形成片を形成し、同人工漁礁形成片の表面にシート状体を張設してなる人工漁礁形成体。
【請求項6】
請求項5記載の着生物質は、貝化石であることを特徴とする水生植物着生体。
【請求項7】
請求項5又は6記載の人工漁礁形成体を、支持体に連設してなる人工漁礁。
【請求項1】
海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質を、シート状体の少なくとも片面に付着させてなる水生植物着生体。
【請求項2】
請求項1記載の着生物質は、貝化石であることを特徴とする水生植物着生体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水生植物着生体を、人工漁礁形成片の表面に張設してなる人工漁礁形成体。
【請求項4】
請求項3記載の人工漁礁形成体を、立体的に組み立ててなる人工漁礁。
【請求項5】
海藻類や珪藻類等の水生植物を着生させる着生物質をポーラスコンクリートに混練して、ポーラス状の人工漁礁形成片を形成し、同人工漁礁形成片の表面にシート状体を張設してなる人工漁礁形成体。
【請求項6】
請求項5記載の着生物質は、貝化石であることを特徴とする水生植物着生体。
【請求項7】
請求項5又は6記載の人工漁礁形成体を、支持体に連設してなる人工漁礁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−167061(P2007−167061A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213550(P2006−213550)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(505437893)株式会社快適空間FC (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(505437893)株式会社快適空間FC (1)
【Fターム(参考)】
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