説明

水田溝切り機の溝切り刃

【課題】水田溝切り機の溝切り刃に入り込んだ土砂を容易に除去できるとともに、除去するのに用いた道具の後始末を容易にする水田溝切り機の溝切り刃を提供する。
【解決手段】溝切り刃20は、溝の側面を形成する側板部21と、溝の底面を形成する底板部23を備えている。溝切り刃20には、溝切り刃20内に入り込んだ泥土を除去する泥土作業具30を保持する保持具40が設けられている。保持具40は、溝切り刃20の上面側に設けられ、泥土作業具30が、溝切り刃20の上面側の左右の側板部21の間に着脱自在に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型や歩行型等の水田溝切り機の溝切り刃に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自走型の水田溝切り機としては、例えば、歩行型の水田溝切り機や、乗用型の水田溝切り機などが知られている。
水田溝切り機においては、前後方向に延びる伝動軸用パイプの後端部および前端部にそれぞれ、エンジンおよび減速機が取り付けられている。エンジンの回転動力は、伝動軸用パイプ内の伝動軸を介して減速機へ伝達される。伝動軸用パイプの中間部には、ハンドルの基端部が固定されており、このハンドルは後方へ向かって延びエンジンの上方へ張り出している。減速機の出力軸には、車輪が取り付けられており、この車輪は、減速機を介して減速されて伝達されて来るエンジンからの回転動力により回転駆動される。伝動軸用パイプには、斜め後方に延びるステーが固定されており、このステーの後端部には、溝切り刃(培土板)が前端側を後端側より高くなるように傾斜して取り付けられている。
【0003】
前記溝切り刃は、溝の左右側面を形成するための左右の側板部分(側板部)と、溝の底面を形成するための左右の底板部分(底板部)とを備えており、少なくとも上方および後方が開放された溝形成部を有している。
【0004】
このような水田溝切り機を用いて、水田において溝切りを行うには、溝切り刃を作業者の押す力や体重等により、水田の土中に所定深さまで沈めた状態で、溝切り機を前進させる。これにより、溝切り刃の後端部の底板部分が土中の所定深さに保持されて溝切り機が前進し、これにより土表面に所定深さの溝が形成される。
【0005】
しかしながら、上述の水田溝切り機にあっては、溝切り刃(培土板)の上方が開放されているので、溝切り作業中に水田の泥土が溝切り刃の上方から入り込み、入り込んだ泥土が溝切り刃内に堆積して、溝切り刃の重量、すなわち水田溝切り機の重量が増加してしまう。このため、運搬時あるいは方向転換時等に、手で水田溝切り機を持ち上げる際に、作業者の身体的負担が大きい。
【0006】
そこで、溝切り刃の上方に開放された部分を閉塞する閉塞部材を設け、溝切り刃内に泥土が入り込むのを防止することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−247233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、溝切りが水田の泥土中での作業であるため、溝切り刃の上方に開放する部分を閉塞部材で閉塞しても、溝切り刃内へ泥土が入り込むのを完全に防止することは困難であり、上述のように作業中に溝切り刃が泥土で重くなった場合や、水田溝切り機をしまう際などに、溝切り刃内に入り込んだ泥土を取り除く必要が生じる。
この場合に、手で泥土を取り除くのは作業性が悪く、作業者に余計な負担がかかることになるので、例えば、スコップ等の道具を用いて、溝切り刃から泥土を除去することが好ましい。
【0009】
しかしながら、溝切り刃から泥土を取り除くのにスコップを用いるには、溝切り作業を行う際に、スコップを携帯する必要があるとともに、スコップを使用すれば、スコップが泥土で汚れ、例えば、使用したスコップを持って帰るような場合に、スコップについた泥土により服が汚れたり、持ち帰った場所が汚れる虞がある。
この場合、スコップに付着した泥土による汚れを防止するために、作業後にスコップの泥土を洗い流すなどの後作業が必要となるなど、作業が煩雑になる。
また、水田の溝切り作業に際して、毎回スコップを携帯すること自体が作業者の負担となる。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、溝切り刃からの泥土の除去にスコップ等の道具を用いるものとしても、作業者がスコップを携帯する必要がなく、かつ、スコップが泥土で汚れても、問題なくスコップを格納することができる水田溝切り機の溝切り刃を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の水田溝切り機の溝切り刃(20、20A)は、 水田に概略V字状の溝を形成するために、前記溝の左右側面を形成するための左右の側板部(21)と、前記溝の底面を形成するための底板部(23)とを備える水田溝切り機の溝切り刃(20、20A)において、
左右の前記側板部(21)および前記低板部(23)で囲まれた部分に入り込んだ泥土の除去等の泥土に対する作業に用いられる泥土作業具(30)を着脱自在に保持する保持具(40、60)を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の水田溝切り機の溝切り刃(20A)は、請求項1に記載の発明において、左右の前記側板部(21)の上端から左右方向外方へ張り出した左右の張り出し板部(22)を備え、
前記泥土作業具(50)は、左右の前記張り出し板部(22)上に架け渡された状態で前記保持具(60)に保持される平板部(52)と、当該平板部(52)から左右の側板部(21)の間を下方に延出する刃(51)とを備え、
前記保持具(60)による保持を解除した状態で、左右の前記張り出し板部(22)に沿って前記平板部(52)を前後方向に移動させることにより、左右の前記側板部(21)の間で前記刃(51)を前後方向に移動可能となっていることを特徴とする。
【0013】
なお、上記における括弧内の符号は、図面において対応する要素を便宜的に表記したものであり、したがって本発明は図面上の記載に限定されるものではない。これは、「特許請求の範囲」の記載についても同様である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の本発明の水田溝切り機の溝切り刃によれば、溝切り刃の泥土を除去するスコップやシャベル等の泥土作業具が、溝切り刃の保持具に着脱自在に保持されるので、溝切り刃に入り込んだ泥土を除去する際に、泥土作業具を溝切り刃の保持具から取り外して、この泥土作業具を用いて溝切り刃の泥土を除去することができる。したがって、スコップ等の泥土作業具を作業者が溝切り作業に際して携帯する必要がなく、作業者の負担を軽減できる。
【0015】
また、溝切り刃の泥土の除去により泥土作業具が汚れても、泥土で汚れた状態の溝切り刃の保持具に使用後の汚れた泥土作業具を保持させることができるので、汚れた泥土作業具を保持したり、家に持ち帰ったりすることで、作業者の服が汚れたり、家が汚れたりすることがない。
【0016】
また、泥土作業具を水田溝切り機の溝切り刃以外の部分、例えば、ハンドルやサドルやその他のフレーム等に保持する構成とした場合に、必ずしも水田の泥土で汚れない部分が泥土を除去したことで汚れた泥土作業具により汚されてしまう可能性があるとともに、作業者に接触して作業者の服等を汚してしまう可能性がある。
これに対して、元々泥土で汚れる溝切り刃に泥土で汚れた泥土作業具を保持して、泥土作業具から溝切り刃に泥土が付着しても問題がない。また、溝切り刃は水田に溝を切るために水田溝切り機の最下部に配置されるので、溝切り刃に汚れた泥土作業具が保持されても作業者の服を汚すような問題も生じない。
【0017】
また、水田溝切り機が使用される季節が終わり、水田溝切り機を格納する際に、水田溝切り機の溝切り刃等を洗浄するような場合に、溝切り刃とともに泥土作業具を水洗いすることが可能であり、泥土作業具を溝切り刃に保持する構成としても、洗浄等の手間が増加することがない。
【0018】
請求項2に記載の本発明の水田溝切り機の溝切り刃によれば、泥土作業具の平板部を左右の張り出し板部に沿って前後に移動させることで、泥土作業具の刃が、左右の側板部の間を前後に移動するので、これにより、左右の側板部の間に入り込んだ泥土を除去することが可能となる。
すなわち、平板部を左右の張り出し板部の上面に沿って移動させる簡単な動作で
左右の側板部の間の泥土を短時間に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る図であって、水田溝切り機を示す側面図である。
【図2】同、水田溝切り機を示す背面図である。
【図3】同、水田溝切り機を示す平面図である。
【図4】同、水田溝切り機を示す斜視図である。
【図5】同、溝切り刃を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る水田溝切り機の溝切り刃を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態について説明する。
図1〜図5は本発明の第1実施形態に係る図であって、頭1は水田溝切り機を示す側面図であり、図2は水田溝切り機を示す背面図であり、図3は水田溝切り機を示す平面図であり、図4は水田溝切り機を示す斜視図であり、図5は溝切り刃を示す斜視図である。
【0021】
図1〜図4に示すように、この乗用型水田溝切り機は、後方側が少し高くなって斜めに前後方向に延びる伝動軸用パイプ1を備えている。この伝動軸用パイプ1は本体フレームとしても機能する。伝動軸用パイプ1の後端部および前端部にはそれぞれ、エンジン(原動機)2および減速機3が取り付けられている。エンジン2の回転動力は、伝動軸用パイプ1内の伝動軸(図示せず)を介して減速機3へ伝達される。減速機3の出力軸は、当該減速機3のケースから水平に突出しており、この出力軸(車軸)には、駆動用車輪4が1つ固定されている。この駆動用車輪4は、減速機3を介して減速されて伝達されるエンジン2からの回転動力により回転駆動される。
【0022】
駆動用車輪4は、複数個のラグ4aが固定された円環状の外輪4bと、中央部に設けられて減速機3の出力軸が固定されるハブ(図示せず)と、外輪4bとハブとを連結する複数個のスポーク4dとを備えている。
【0023】
伝動軸用パイプ1の上側には、サドル5が設けられている。すなわち、サドル5は、サドル支持部6の上側に固定されており、このサドル支持部6から下方に延びる支持部(図示せず)と、伝動軸用パイプ1から上方に延びる支持部(図示せず)とが固定位置を変更可能に接続されている。この固定位置を変えることにより、サドル5の高さ位置を複数段階(例えば、3段階)に変えることができるようになっている。サドル5は、駆動用車輪4の中心から後方斜め上方に位置するようになっている。
【0024】
サドル支持部6の前側部分には、前方斜め上方に延びるハンドル支持部8が設けられている。このハンドル支持部8の上端部には、水平に棒状に延びるハンドル9が上下方向の位置を調節可能に取り付けられており、ハンドル9の両端部にはグリップ10,10が設けられている。ハンドル9は、サドル5の前方斜め上方に位置するとともに、駆動用車輪4の中心から前方斜め上方に位置している。
【0025】
ハンドル9には、スロットルレバー(図示せず)が取り付けられており、このスロットルレバーによりエンジン2のスロットル開度、すなわちエンジン2の出力を調整する。また、ハンドル9には、ストップスイッチ(図示せず)が取り付けられており、このストップスイッチによりエンジン2の点火プラグへの電流の流れをショートさせ、エンジン2の駆動を停止させる。
【0026】
また、サドル支持部6には、この水田溝切り機を持ち上げて、運んだりあるいは方向を変えるためなどに用いる把手部11が取り付けられている。把手部11は、サドル支持部6の周りに概略U字状に水平に延びている。また、サドル5の下側の左右および後端に設けられた複数個の支持板12に、駆動用車輪4の後側上半部の左右側方および後方を覆うカバー13が取り付けられている。このカバー13の前端部には、駆動用車輪4の前側上半部の左右側方および前方を覆う護葉板14が取り付けられている。
【0027】
伝動軸用パイプ1には、後方斜め下方に延びるパイプからなるステー15が固定されており、このステー15の後端部に固定された支持部材16に、溝切り刃20がその前端側が後端側より高くなるように傾斜して、ボルトにより取り付けられている。ステー15の上端部には、スタンド18の上端部が回動可能に取り付けられている。溝切り刃20は、駆動用車輪4の後方に位置しているとともに、サドル5の後方斜め下方に位置している。
【0028】
図5に示すように、溝切り刃20は、取付部材28を除いて任意の横断面において左右対称な構造となっており、概略V字状の水田の溝の側面を形成するための左右の側板部21と、側板部21の上端から左右方向外方へ張り出した左右の張り出し板部22と、溝切り刃20の後端部底部に設けられ、溝の底面を形成するための左右の底板部23とを備えている。左右の側板部21、張り出し板部22および底板部23はそれぞれ、アルミニウム合金あるいはステンレス鋼等からなる1枚の金属板が折り曲げられて形成されている。
【0029】
左右の各側板部21は、前側に向かうにつれて高さ方向の寸法が短くなるように形成されて、これらの両側板部21が横断面において概略V字状になるように下端部の大部分が突き当てられ、そして前側が上になるように斜めに配置されている。両側板部21下端部のうち、後側部分を除いて突き当てられている部分は、一定の狭い寸法で重ねられて接合され、これにより前側が上になるような斜めに延びる接合部25が形成されている。
【0030】
左右の底板部23は、左右の側板部21の下端の後端部のみに設けられている。すなわち、両側板部21の下端部の接合部25の後側には、後側に向かって広がる概略三角形状の空間が形成されており、左右の各側板部23の下端からそれぞれ、各底板部23が左右内方に向かって張り出して、この空間内に位置している。各底板部23は、後側に向かって広くなる概略三角形状(ただし、後側の対向する角は丸く形成されている。)に形成されており、後側に向かうにつれて少し下側に位置するように少し傾斜している。両底板部23の間には、間隙26が設けられている。
【0031】
左右の張り出し板部22は、後側に向かうにつれて幅が広くなっており、両張り出し板部22の前端部は、両張り出し板部22に両端部を溶接により固定された板状の連結部材27により連結されている。この連結部材27の上面中央部には、上方に向けて延びる板状の取付部材28が固定されており、この取付部材28と前記支持部材16とがボルトにより連結されることにより、溝切り刃20が取り付けられる。両張り出し板部22の後端部は、ターンバックル29により連結されている。このターンバックル29は、両底板部23の間の間隙26の上方に位置しており、作業者はこのターンバックル29の長さを調整自在することにより、間隙26の寸法、すなわち前後方向に関してターンバックル29の位置における左右の張り出し板部22の間隔を調整する。
【0032】
この例の溝切り刃20には、溝切り刃20内に入り込んだ泥土を除去する泥土作業具30を着脱自在に保持する保持具40が設けられている。この例において、泥土作業具30はスコップ(シャベル)であり、手で握るための筒状の柄31と、泥土をすくったり、掻きだしたりするための円弧板状でかつ先端縁が弧状の刃32とを備えている。
当該泥土作業具30は、金属製の前記柄31と前記刃32とが一体に形成されている。泥土作業具30は、柄31を握った状態で刃32で泥土を引き剥がしたり、すくったり、かき出したりすることにより、溝切り刃20内に入り込んだ泥土を除去するようになっている。
【0033】
保持具40は、溝切り刃20の前側と後ろ側とに分けて設けられており、前側の保持具41は、溝切り刃20の前部の左右の側板部21,21の上端に形成された左右の張り出し板部22の上面間に架け渡された帯状のベース部材42と、ベース部材42に下端部が固定された挟持部材43とを備える。挟持部材43は、左側部分および右側部分がそれぞれ逆S字状およびS字状に形成されて対向した状態となっているとともに、これら左側部分と右側部分との下端部が連結されて一体に形成されている。挟持部材43の左側部分および右側部分の上端部は、上に向うにつれて互いに遠ざかるように開いている。挟持部材43の左右方向中央部の下端部は、ベース部材42の左右方向の中央部に固定されている。
【0034】
挟持部材43の左側部分と右側部分との間に、泥土作業具30の柄31を上方から下方に向けて押し込むことにより、挟持部材43の左側部分と右側部分とが外側に弾性変形し、弾性力により泥土作業具30の柄31が挟持部材43に挟持されて保持される。
また、挟持部材43に柄31が挟持された状態で泥土作業具30の柄31を上方に持ち上げることにより、柄31を挟持部材43から取り外すことができる。
【0035】
後ろ側の保持具45は、帯状の板体からなる帯部材46が溝切り刃20の後部において、左右の側板部21の上端の張り出し板部22の上面間に架け渡されている。また、帯部材46の中央部には、上側に二重に折り返されて、上側を凹とする円弧状に湾曲されており、その円弧状の中空部に刃32の先端部が挿入されて保持されている。帯部材46の中央部は、左右の張り出し板部22にそれぞれ接合された両端部より高い位置に配置されている。なお、保持具45の円弧状の中空部を有する中央部を別部材で構成し、これを平板の帯板状の帯部材46の上側に溶接等により固定することにより、保持具45を構成するようにしてもよい。
【0036】
保持具40へ泥土作業具30を保持させる際には、先に泥土作業具30の刃32を後ろ側の保持具45の帯部材46の中央部と左右の折り返し部の間に挿入した後に、泥土作業具30の柄31を前側の保持具41の挟持部材43に上側から押し込むことになる。保持具40から泥土作業具30を取り外す際には、泥土作業具30の柄31を持ち上げるようにして挟持部材43から取り外した後に、柄31を溝切り刃20の前側に移動して、帯部材46から刃32を抜くようにして外すことになる。
保持具40および保持具40に保持された泥土作業具30の位置は、左右の側板部21の上側、すなわち、溝切り刃20の上端部となる。
【0037】
この乗用型水田溝切り機を用いて、水田において溝切りを行うには、作業者がサドル5に跨って乗り、左右の脚部を駆動用車輪4の左右に配置するとともに、ハンドル9のグリップ10,10を把持しながら、エンジン2の回転駆動力により駆動用車輪4を回転させて、この駆動用車輪4により溝切り機を前進させる。そうすると、作業者の体重が駆動用車輪4と溝切り刃20とにより支持されるので、溝切り刃20が加圧され、溝切り刃20が所定深さに保持されて溝切り刃20が前進する。溝切り刃20の前進に伴い、溝切り刃20の前方の土は、左右に掻き分けられ、水田の土表面上へ排出されるとともに、溝切り刃20の後方には水田の土表面に所定深さの概略V字状の溝が形成される。この概略V字状の溝は、両側板部21により溝の側面が形成されるとともに、両底板部20により溝の底面が形成される。また、張り出し板部22により、溝の上端近傍の土表面上へ押し上げられた土が左右外方へ拡散される。
【0038】
そして、溝切り作業を行っていくと、溝切り刃20内には、水田の泥土が入り込んでくることになる。溝切り作業を続けていくうちに溝切り刃20内の泥土の量が増加傾向となるので、溝切り作業中もしくは作業後に溝切り刃20から泥土を取り除くことが好ましい。
【0039】
この場合に、溝切り刃20の保持具40に泥土作業具30が保持されているので、保持具40から泥土作業具30を取り外し、当該泥土作業具30を用いて溝切り刃20の泥土を除去することにより、手で泥土を除去するより効率的に泥土を除去することができる。
また、作業者が泥土除去のためにスコップ等を溝切り作業の際に携帯する必要がなく、作業者の負担を軽減することができる。
【0040】
また、使用した泥土作業具30は、溝切り作業により泥土で汚れている溝切り刃20に保持されることになり、泥土作業具30が汚れていても元々溝切り刃20が泥土で汚れているので問題が生じない。すなわち、水田溝切り機の溝切り刃20以外(さらに駆動用車輪4以外)の部分に泥土作業具30を保持するようにした場合のように、汚れた泥土作業具30により泥土溝切り機の汚れていない部分を汚してしまう虞がない。
【0041】
また、泥土作業具30が、水田溝切り機の下部に配置されているので、溝切り刃20に汚れた泥土作業具30が保持されていても作業者の服を汚す虞はほとんどないが、汚れた泥土作業具30が溝切り刃20と駆動用車輪4以外の部分に保持されていた場合に、汚れた泥土作業具30に接触して服を汚してしまう虞がある。
【0042】
また、泥土作業具30が、溝切り刃20の上端部に配置されているので、溝切り刃20が地面側に配置されていても、泥土作業具30を容易に保持具40に対して着脱することができる。
また、溝切り刃20の上端部に保持具40および泥土作業具30が配置されているので、溝切り刃20に保持具40や泥土作業具30を配置することによる溝切り作業への影響がなく、従来と同様に溝切り刃20を使用することができる。
【0043】
図6は、本発明の第2実施形態に係る水田溝切り機の溝切り刃を示す斜視図である。
第2実施形態の水田溝切り機は、溝切り刃20Aを除いて第1実施の形態の水田溝切り機と同様のものであり、第2実施形態の溝切り刃20Aは、保持具60と保持具60に保持される泥土作業具50を除いて、第1実施形態の溝切り刃20と同様のものである。
【0044】
泥土作業具50は、泥土をすくったり、かき出したりして除去するのに用いられる刃51と、当該刃51につながる平板部52と、泥土作業具50を手にとって操作するための持ち手部53とを備えるものである。
泥土作業具50の刃51は、溝切り刃20Aの底板部23および間隙26より少し前側の左右の断面形状である二等辺三角形状に形成されている。
【0045】
泥土作業具50の平板部52は、溝切り刃20Aの底板部23および間隙26より少し前側となる部分で、左右の側板部21の上端にそれぞれ形成された張り出し板部22間に架け渡されている。
平板部52は、上述の底板部23および間隙26の少し前側から連結部材27の部分までの間に配置されて、左右の側板部21の各張り出し板部22に取り付けられ、前側に向うほど左右の側板部21の上端間の間隔が狭くなるのに対応して略台形状に形成されている。
【0046】
また、平板部52の後端側には刃51が一体に接続された状態となっているとともに、側板部21の上側縁(張り出し板部22の上面)に沿った状態の平板部52に対して刃51が下側を向いていることから、平板部52と刃51との境界部分で平板部52と刃51とが屈曲した状態となっている。
【0047】
また、平板部52の前端部には、その中央部に前側に開放した状態のスリット部54が形成されている。平板部52の前端部は、連結部材27の下側に差し込まれる構成となっており、左右幅が連結部材27の部分における左右の側板部21の間隔より少し狭くなっている。
平板部52を連結部材27の下側に差し込んだ状態で、平板部52のスリット部54に取付部材28が挿入された状態となる。
【0048】
持ち手部53は、概略コ字状の部材で、後端部が刃51の上部に接合され、前端部が平板部52のスリット部54の少し後ろに接合されており、持ち手部53の中央部と、平板部52の上面との間には、手を挿入可能な間隔があけられている。
泥土作業具50は、持ち手部53を持って刃51を溝切り刃20Aの左右の側板部21間に挿入した状態で、溝切り刃20Aの後ろ側に動かすことで、僅かな動作により溝切り刃20A内の泥土を除去できるようになっている。すなわち、刃51の形状が左右の側板部21の間の空間の断面と略同じ形状となっているので、刃51を左右の側板部21の間に挿入して溝切り刃20Aの後ろ側に移動するだけで、多くの泥土を押し出すことが可能となっている。
【0049】
このような泥土作業具50を溝切り刃20Aに保持させる保持具60には、この例において、上述の平板部52の前端部が下側に挿入される連結部材27が含まれる。また、溝切り刃20Aの左右の張り出し板部22の泥土作業具50の平板部52の後端部が配置される部分には、それぞれ保持される泥土作業具50の平板部52と上下に重ならず、かつ、平板部52の後端部に近接する部分に、ねじ孔(雌ねじ)が形成されている。
【0050】
このねじ孔には、ワッシャ62を介して手回し用の蝶ボルト(蝶ねじ)61が螺合されている。そして、ワッシャ62は、一部が保持される泥土作業具50の平板部52の後端部と重なった状態となり、蝶ボルト61を締め付けることにより、ワッシャ62により、平板部52の後端部が固定される。
【0051】
そして、上述の連結部材27、蝶ボルト61、ワッシャ62とから保持具60が構成されている。保持具60に泥土作業具50を保持させる際には、予め、溝切り刃20Aにおいて、蝶ボルト61を緩めておく。溝切り刃20Aにおいて、連結部材27の下側に平板部52の前端部を挿入するとともにスリット部54に取付部材28が挿入されるようにし、刃51を溝切り刃20A内に上側から挿入する。次いで、平板部52の後端部がワッシャ62より少し前側となるようにして、平板部52と張り出し板部22とを当接させた状態で、平板部52を少し後ろにずらすとともに、平板部52の後端部がワッシャ62の一部の下側となるようにする。次いで、蝶ボルト61を締め付けることで、ワッシャ62と張り出し板部22との間に平板部52の後端部を挟んで、泥土作業具50を保持具60に保持した状態とする。
【0052】
また、保持具60から泥土作業具50を取り外す際には、蝶ボルト61を緩め、泥土作業具50の平板部52を前側に少しずらすことで、平板部52の後端部からワッシャ62を取り外した後に、持ち手部53を持って泥土作業具50を持ち上げならが、後ろ側に移動することで、平板部52の前端部を連結部材27の下側から出す。これにより、泥土作業具50が取り外された状態となる。
【0053】
このような第2実施形態の水田溝切り機の溝切り刃20Aによれば、除去すべき泥土は、溝切り刃20Aに保持された泥土作業具50の刃51より後ろ側部分となり、容易に泥土作業具50で泥土を除去することができる。また、刃51が溝切り刃20Aの左右の側板部21の間の形状に対応する二等辺三角形となっているので、左右の側板部21の間に入り込んだ泥土を一気にかき出すことができる。
【0054】
前記第1実施形態および第2実施形態において、スコップやシャベル等として機能する泥土作業具30、50を、溝切り刃20、20Aの泥土の除去に使用するものとしたが、例えば、以下のような用途に使用する場合もある。
水田での溝切り作業では、溝を交差するように設ける場合がある。この場合に、既に形成されている溝に対して交差するように新たに溝を形成することになるが、この際に、新たに溝を形成することにより押しのけられた泥が先に形成された溝の一部を埋めてしまい、先に形成された溝が交差部分で遮断された状態となってしまう。
【0055】
すなわち、溝同士の交差部分において、先に形成された溝の一部が埋まってしまい、溝に沿って水が流れることができない状態となる。そこで、交差部分で先に形成された溝が埋められている部分を整形して、溝を連続した状態とするのに上記泥土作業具50が用いられる場合がある。この場合も手で行うよりも作業性が向上し、かつ、スコップ等を作業者が携帯する必要がないとともに、泥土で汚れた泥土作業具30,50を溝切り刃20,20Aに保持できるので、上述の各例の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
また、第2実施形態において、左右の張り出し板部22に設けられ、蝶ボルト61が螺合されるねじ孔の位置を、保持される泥土作業具50の平板部52より左右外側とし、左右のねじ孔の間隔を平板部52の最も広くなった左右幅より長く、かつ、平板部52の最も長い左右幅と、2つのねじ孔間の距離との差が、前記ねじ孔に蝶ボルト61により固定されるワッシャ62の内周縁から外周縁までの半径方向に沿った距離の2倍より短くするものとしてもよい。
この場合に、平板部52の最も左右幅の広い部分を、ねじ孔に螺合された蝶ボルト61を締め付けてワッシャ62と張り出し板部22に挟んで保持できるとともに、蝶ボルト61を緩めてワッシャ62と張り出し板部22による挟持を解除した場合に、ねじ孔に螺合された状態の左右の蝶ボルト61の間を通して平板部52を張り出し板部22の上面に沿って前後動することが可能となる。これにより、泥土作業具50の刃51を左右の側板部21の間で前後動させる際に、張り出し板部22の上面に平板部52が案内された状態となり、作業者が左右の側板部の間の泥土を楽に除去することができる。
【符号の説明】
【0057】
20 溝切り刃
20A 溝切り刃
21 側板部
22 張り出し板部
23 底板部
30 泥土作業具
40 保持具
50 泥土作業具
51 刃
52 平板部
60 保持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田に概略V字状の溝を形成するために、前記溝の左右側面を形成するための左右の側板部(21)と、前記溝の底面を形成するための底板部(23)とを備える水田溝切り機の溝切り刃(20、20A)において、
左右の前記側板部(21)および前記低板部(23)で囲まれた部分に入り込んだ泥土の除去等の泥土に対する作業に用いられる泥土作業具(30)を着脱自在に保持する保持具(40、60)を備えることを特徴とする水田溝切り機の溝切り刃(20、20A)。
【請求項2】
左右の前記側板部(21)の上端から左右方向外方へ張り出した左右の張り出し板部(22)を備え、
前記泥土作業具(50)は、左右の前記張り出し板部(22)上に架け渡された状態で前記保持具(60)に保持される平板部(52)と、当該平板部(52)から左右の側板部(21)の間を下方に延出する刃(51)とを備え、
前記保持具(60)による保持を解除した状態で、左右の前記張り出し板部(22)に沿って前記平板部(52)を前後方向に移動させることにより、左右の前記側板部(21)の間で前記刃(51)を前後方向に移動可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の水田溝切り機の溝切り刃(20A)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−255361(P2010−255361A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109021(P2009−109021)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】