説明

水硬性材料用混和剤組成物

【課題】 乾燥収縮を効果的に低減できかつ十分な流動性/分散性をコンクリート部材等の水硬性材料に付与できる水硬性材料用混和剤組成物を提供する。
【解決手段】 側鎖(1)として、炭素原子数4〜30の炭化水素基を必須成分として有するポリアミン化合物、ならびに高性能AE減水剤および/または収縮低減剤を含む、水硬性材料用混和剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性材料用混和剤組成物に関するものである。特に、本発明は、水硬性材料、特にコンクリート部材に十分な乾燥収縮低減性ならびに流動性・分散性を付与する水硬性材料用混和剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水硬性材料は、強度や耐久性に優れた硬化物を与えることから、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等に広く用いられており、土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。このような水硬性材料においては、硬化した後に、外気温や湿度条件等により、構造物表面から未反応水分が蒸発していくが、これに起因すると考えられる乾燥収縮が進行し、硬化物中にひび割れが生じることがしばしば問題となっている。このひび割れは、構造物の美観を損なうばかりでなく、長期的に見ると、ひび割れ部分を通して空気(特に炭酸ガス)や雨水(特に酸や塩化物イオン)等の劣化要因が浸入してコンクリートの中性化、ひいては鉄筋の腐食を促進するなど、多くの複合劣化の誘因となることが指摘されている。近年、これらコンクリート構造物の早期劣化が社会的問題となり、ひび割れを抑制し、耐久性に優れた構造物への要求が高まってきていることから、現在、これら土木・建築構造物等の乾燥収縮の進行を抑制する重要性が認識され、技術革新が盛んに行なわれている。
【0003】
このような背景から、多くの収縮に関する研究報告がなされており、収縮を低減する(ひいてはひび割れを抑制する)方法としては、膨脹材を用いる方法、減水剤を用いてコンクリート組成物の単位水量を低減する方法、及び乾燥収縮低減剤を使用する方法などがある。これらのうち、減水剤を用いて単位水量を低減する方法が最も簡便な方法として広く使用されている。このような減水剤として、現在、ナフタレン系、アミノスルホン酸系及びポリカルボン酸系などが市販されており、最も優れた特徴を有するポリカルボン酸系高性能AE減水剤においては、種々の水溶性ビニル共重合体が提案されてきている(例えば、特許文献1〜5参照)。しかしながら、これらの減水剤においては、乾燥収縮低減性が十分でなく必要に応じてさらに膨脹材や乾燥収縮低減剤を併用する方法がとられている。この際、併用される乾燥収縮低減剤としては、様々な化合物が使用されている(例えば、特許文献6〜9参照)。上記公報のうち、特許文献6には、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドの付加重合体を含むセメントの乾燥収縮防止剤が開示されている。また、特許文献7には、ジフェニルメタン誘導体のアルキレンオキシド付加物を含む乾燥収縮低減剤が開示されている。
【特許文献1】特開平8−53522号公報
【特許文献2】特開平8−290948号公報
【特許文献3】特開平8−290955号公報
【特許文献4】特開平9−2855号公報
【特許文献5】特開平10−81549号公報
【特許文献6】特開昭59−21557号公報
【特許文献7】特開昭62−61450号公報
【特許文献8】特開昭59−3430号公報
【特許文献9】特許第2825855号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、膨脹材や乾燥収縮低減剤はいずれもコンクリート組成物への混和量を多くする必要があること、また、乾燥収縮低減剤においてはその製品価格も高いことから、このような乾燥収縮低減剤の混和はコンクリート単位容量当たりの単価の著しい高騰につながる。このような問題は、乾燥収縮低減剤が市場に普及しない一因となっている。
【0005】
これらの問題を解決する方策として、例えば、特許文献8には、アルコキシポリアルキレングリコールにエチレン性不飽和カルボン酸をグラフト重合した重合体が開示されている。しかしながら、上記特許文献8に開示される重合体は、分散性及び乾燥収縮低減性を同時に満足できるものではなく、上記問題を十分解決しえるものではない。
【0006】
このように、乾燥収縮を有効に低減できかつ十分な流動性/分散性をコンクリート部材等に付与できる添加剤に対する要求は強く存在するものの、このような添加剤は得られていない。
【0007】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、乾燥収縮を効果的に低減できかつ十分な流動性/分散性をコンクリート部材等の水硬性材料に付与できる水硬性材料用混和剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記諸目的を達成するために、様々な化合物について鋭意検討を行った結果、ポリアミン化合物に、炭素原子数4〜30の疎水性炭化水素基、及びオキシアルキレン、カルボン酸/塩、ヒドロキシアルキルエステルなど由来の基を側鎖として導入することによって得られた化合物は、乾燥収縮低減性及び流動性(分散性)を同時に発揮できることを見出した。さらに、本発明者らは、乾燥収縮低減性と流動性(分散性)との間のバランスをさらに改善するために鋭意検討を行なった結果、当該ポリアミン化合物を、適当な高性能AE減水剤、特にポリカルボン酸系高性能AE減水剤と組合わせることによって流動性/分散性を、さらに適当な収縮低減剤と組合わせることによって乾燥収縮低減性を所望のレベルになるように制御することができ、これにより乾燥収縮低減性および流動性/分散性双方を十分満足する水硬性材料用混和剤組成物が得られることを見出した。上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、上記目的は、側鎖(1)として、炭素原子数4〜30の炭化水素基を必須成分として有するポリアミン化合物、ならびに高性能AE減水剤および/または収縮低減剤を含む、水硬性材料用混和剤組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乾燥収縮低減性及び流動性(分散性)を同時に発揮するポリアミン化合物を、適当な高性能AE減水剤および/または収縮低減剤と組合わせることによって、乾燥収縮低減性および流動性/分散性を所望のレベルに容易に制御できる。したがって、本発明の水硬性材料用混和剤組成物は、乾燥収縮低減性および流動性/分散性双方を十分満足することができ、必要な単位水量を減らすことが可能であり、強度等のコンクリートの品質を向上することができる。
【0011】
したがって、本発明の水硬性材料用混和剤組成物は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性材料に適用して、優れたひび割れ防止効果を発揮することにより、硬化物の強度や耐久性を向上することができ、土木・建築構造物等の安全性を向上したり、修復コストを抑制したりすることができる、汎用性の高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の第一は、側鎖(1)として、炭素原子数4〜30の炭化水素基を必須成分として有するポリアミン化合物、ならびに高性能AE減水剤および/または収縮低減剤を含む、水硬性材料用混和剤組成物を提供するものである。なお、以下、「側鎖(1)として、炭素原子数4〜30の炭化水素基を必須成分として有するポリアミン化合物」を、単に、「側鎖(1)含有ポリアミン化合物」または「側鎖含有ポリアミン化合物」とも称する。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
1.側鎖(1)含有ポリアミン化合物
本発明による側鎖含有ポリアミン化合物は、乾燥収縮低減性及び流動性/分散性双方を発揮する。なお、本明細書中では、上述したように、炭素原子数4〜30の炭化水素基が導入された後のポリアミン化合物を、「側鎖(1)含有ポリアミン化合物」または「側鎖含有ポリアミン化合物」と称し、また、当該側鎖(1)を導入する前のポリアミン化合物を、「ポリアミン化合物(I)」と称する。本発明による側鎖(1)含有ポリアミン化合物が乾燥収縮を抑制できる明確な機構は不明であるが、以下のように考えられる。すなわち、水結合材比(W/B:水と結合材との質量比)が40%以上であるというように水分が多い場合には、コンクリート硬化後にコンクリート硬化体表面から水分が蒸発していくが、この水分の蒸発に伴い、硬化体内部に形成された毛管内で水の移動が生じる。その際毛管表面と水との間で引張り力が発生するために収縮が起こるといわれている。このため、水の表面張力を下げることにより毛管表面と水との間の引張り力を低減することが乾燥収縮低減剤の目的であり、本発明による側鎖(1)含有ポリアミン化合物においては、必須成分である炭素原子数4〜30の炭化水素基が疎水性基として作用して、この疎水性基部分が、当該側鎖(1)含有ポリアミン化合物が水に溶解する際に、水の表面張力を下げる効果を発現し、これにより乾燥収縮が抑制されると考えられる。
【0015】
本発明による側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、下記に詳述するように、上記側鎖(1)に加えて、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基;−COOZ(ただし、Zは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基または−(RO)−Rを表し、この際、ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し、nは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜500の数であり、Rは、水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を表す);及び−SOW(ただし、Wは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す)からなる群より選択される少なくとも一種の基をさらに側鎖(2)として有することが好ましい。本明細書中では、上記側鎖(1)及び(2)を有する化合物を、単に「側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物」とも称する。本発明による側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物は、乾燥収縮を有効に低減できかつ流動性(分散性)を水硬性材料組成物に付与できる。本発明による側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物が優れた乾燥収縮低減性及び流動性(分散性)を示す明確な機構は不明であるが、以下のようにして考えられる。すなわち、乾燥収縮低減性に関しては、上記と同様、ポリアミン化合物中に炭素原子数4〜30の炭化水素基という疎水性基を側鎖として導入することによって、毛管表面と水との界面張力を下げ、乾燥収縮の原因である水の引張り応力を低減し、その結果乾燥収縮を抑制できると考えられる。また、側鎖(2)として、オキシアルキレン、カルボン酸またはその塩、及びスルホン酸またはその塩由来の基が導入されることによって、セメント表面に吸着した際にセメント表面が疎水化され、水との間の引張り力を低減する効果が発揮され、これによって乾燥収縮低減性がさらに増大されると考えられる。上記利点に加えて、流動性/分散性に関しては、本発明による側鎖(1)は、必須成分である側鎖(1)の疎水性基部分の導入によって、AE剤のような一種の界面活性剤としての機能が発現し、水硬性材料組成物に良質な空気を連行することにより、ボールベアリング的な作用により、水硬性材料組成物に良好な分散性/流動性を付与すると考えられる。また、側鎖(2)の導入により、ポリアミン化合物のセメント粒子への吸着が起こり、その結果、上記側鎖(1)による分散性/流動性をさらに向上すると考えられる。
【0016】
さらに、本発明による側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、下記に詳述するように、上記側鎖(1)または側鎖(1)及び(2)に加えて、−COOZ’(ただし、Z’は、1〜3の炭化水素基を表す)を、側鎖(3)として有することが好ましい。本明細書中では、このような化合物を、単に「側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物」とも称する。この際、側鎖(3)は、側鎖(1)1個に対して、2.4個以下の割合で導入されることが特に好ましい。このような特定量の側鎖(3)が導入された本発明による側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物は、乾燥収縮を有効に低減できかつ流動性(分散性)を水硬性材料組成物に付与できる。本発明による側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物が優れた乾燥収縮低減性及び流動性(分散性)を示す明確な機構は不明であるが、以下のようにして考えられる。すなわち、側鎖(3)の導入によって、ポリアミン化合物のセメント粒子への吸着が起こり、硬化体表面を疎水化するため、硬化体と水との引張り力を下げ、これにより乾燥収縮低減効果をより増大させることができ、さらに上記側鎖(1)による分散性/流動性をさらに向上できると考えられる。
【0017】
このため、本発明の水硬性材料用添加剤は、普通、早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメント、ビーライト高含有セメント、アルミナセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、各種混合セメント等の水硬セメント、あるいは、石膏などのセメント以外の水硬材料に、乾燥収縮を効果的に低減する目的で、また、流動性(分散性)を水硬性材料組成物に付与する目的で、好適に使用される。
【0018】
本発明によるポリアミン化合物(I)は、その分子内に第1級および/または第2級アミノ基を有する化合物である。このようなポリアミン化合物(I)としては、その分子内に第1級および/または第2級アミノ基を有するものであれば特に制限されないが、例えば、このような基を有するアミン類またはその誘導体がある。これらのうち、アミン類としては、例えば、エチレンイミンの重合によって得られるポリエチレンイミンなど、アルキレンイミン(例えば、エチレンイミン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン等)の重合または共重合によって得られるポリアルキレンイミン;上記したようなポリアルキレンイミンおよび/またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの(ポリ)アルキレンポリアミンと、硫酸、リン酸、アジピン酸などの多塩基酸との縮合によって得られるポリアミドポリアミン;ポリアルキレンイミンおよび/またはアルキレンイミンと、尿素との反応によって得られるポリウレアポリアミン;アルキレンイミンと無水フタル酸などの酸無水物との共重合によって得られるポリアミドポリエステルポリアミン;およびアリルアミン、ジアリルアミンおよび/またはその塩酸塩の重合によって得られるポリアリルアミン、ジアリルアミンおよび/またはその塩酸塩と二酸化硫黄との共重合によって得られるポリジアリルアミン−二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミンおよび/またはその塩酸塩とマレイン酸との共重合によって得られるジアリルアミン−マレイン酸共重合体などが挙げられる。また、ポリアミン誘導体としては、前記ポリアミンに、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、及びアクリルアミドなどのα,β−不飽和アミド化合物等を付加反応させた化合物などが挙げられる。なお、本発明によるポリアミン化合物(I)は、上記したように重合や付加反応によって製造されてもよいが、市販品を使用してもよい。市販品としては、エポミン(ポリエチレンイミン) SP−003、SP−006、SP−012、SP−018、SP−200、SP−110、P−1000(株式会社日本触媒)、ポリアリルアミン PAA−03、PAA−05、PAA−08、PAA−15、PAA−15B、PAA−10C、PAA−25(日東紡株式会社)、ジアリルアミン・マレイン酸共重合体 PAS−410、PAS−410SA(日東紡株式会社)などが挙げられる。これらのうち、ポリアルキレンイミン、ポリアミドポリアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンとアジピン酸との縮合物、トリエチレンテトラミンとアジピン酸との縮合物、ジアリルアミン−マレイン酸共重合体が好ましく、ポリアルキレンイミン、ポリアミドポリアミン、ポリアリルアミンが特に好ましい。本発明によるポリアミン化合物(I)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0019】
また、本発明において、ポリアミン化合物(I)の数平均分子量は、特に制限されないが、300〜500,000であることが好ましい。この際、数平均分子量が300未満であると、側鎖(1)の付加量が少なく、十分な分散性や乾燥収縮低減性、特に乾燥収縮低減性が得られないおそれがある。逆に、数平均分子量が500,000を超えると、ポリアミン化合物(I)が大きくなりすぎて、ポリアミン化合物(I)に側鎖(1)及び必要であれば側鎖(2)/(3)を導入させた後のポリアミン化合物の分子量が過剰に大きくなり、分散性を逆に低下させるおそれがある。ポリアミン化合物(I)の数平均分子量は、乾燥収縮低減性及び流動性(分散性)を考慮すると、より好ましくは300〜300,000、さらにより好ましくは300〜100,000、最も好ましくは300〜20,000である。なお、本明細書において、「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された数平均分子量(Mn)を意味する。この際、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、市販のポリエチレングリコールを標準試料として検量線を作製した際に、狭くても1000から100000の範囲で、3次式で近似でき、その近似式の相関係数(r)が0.99以上となるものを用いることが好ましい。より好ましくは、0.999以上であり、更に好ましくは、0.9999以上である。移動相は、試料を溶解させるものを選択する。検量線は、正確に分子量を計算するにはできるだけ多くの標準試料を用いて描くのが好ましく、その目的のために5点以上の標準試料を用いる。この際、得られる分子量が信頼性をもつために、分子量1500以下と、分子量15万以上を必ず1点ずつ含むこととする。
【0020】
また、本発明において、側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、ポリアミン化合物(I)中に側鎖(1)として炭素原子数4〜30の炭化水素基を導入したものである。なお、本発明において、側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、単一の側鎖(1)をポリアミン化合物(I)中に導入したものであってもあるいは2種以上の側鎖(1)をポリアミン化合物(I)中に共存させたものであってもよい。この際、側鎖(1)の導入方法は、公知の方法によって達成でき、特に制限されないが、一般的には、ポリアミン化合物(I)を、下記式(8):
【0021】
【化1】

【0022】
で示される化合物(本明細書中では、「化合物(II)」と称する)と反応させることによって導入できる。このような化合物(II)は、ポリアミン化合物(I)との反応により、ポリアミン化合物(I)の活性アミン水素が化合物(II)の疎水性基(上記式(8)中の基R)で置換されて、ポリアミン化合物(I)に側鎖(1)としてこの疎水性基が導入される。この疎水性基の導入によって、水に溶解されると、水の表面張力を下げる効果が発現して、これにより硬化後の乾燥の際、硬化体内部の水の移動により生じる硬化体表面と水との引張り力を低減して、その結果乾燥収縮を効果的に抑制させる効果が側鎖(1)含有ポリアミン化合物に付与される。
【0023】
上記式(8)において、Rは、炭素数4〜30の炭化水素基を表わす。このような炭化水素基としては、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル、テトラデシル、オクタデシル、イコシル等の炭素数4〜30の直鎖及び分岐鎖のアルキル基;シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル、ベンジル、フェネチル、o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニリル、ベンズヒドリル、トリチル及びピレニル等のアリール基及びアルキル基を有するこれらのアリール基((アルキル)アリール基);上記アリール基の少なくとも一部を水添させた水添アリール基及びアルキル基を有するこれらの水添アリール基((アルキル)水添アリール基);およびベンジル、メチルベンジル、フェネチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル等の(アルキル)アラルキル基などを挙げることができる。また、Xは、アミノ基と反応しうる官能基を有する原子団を表す。このような原子団としては、アミノ基と反応しうる官能基を有するものであれば特に制限されないが、例えば、グリシジルエーテル、エポキシ、イソシアネート、チオイソシアネート、(メタ)アクリレート、アルデヒドケトン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル、カルボン酸、カルボン酸無水物由来の基などが挙げられる。これらのうち、好ましくはグリシジルエーテル、エポキシ、イソシアネート、(メタ)アクリレート、ハロゲン化アルキル、カルボン酸であり、特に好ましくはエポキシ、(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル、ハロゲン化アルキル、カルボン酸である。
【0024】
このような化合物(II)の具体例としては、オクチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルなどの高級アルコールのグリシジルエーテル類;オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、ラウリルフェニルグリシジルエーテル、ステアリルフェニルグリシジルエーテルなどのアルキルフェノールのグリシジルエーテル類;オクチルシクロペンチルグリシジルエーテル、オクチルシクロヘキシルグリシジルエーテル、ノニルシクロペンチルグリシジルエーテル、ノニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルシクロペンチルグリシジルエーテル、ラウリルシクロヘキシルグリシジルエーテル、ステアリルシクロペンチルグリシジルエーテル、ステアリルシクロヘキシルグリシジルエーテルなどのアルキルシクロアルカノールのグリシジルエーテル類;オクチルベンジルグリシジルエーテル、ノニルベンジルグリシジルエーテル、ラウリルベンジルグリシジルエーテル、ステアリルベンジルグリシジルエーテルなどのアルキルベンジルアルコールのグリシジルエーテル類;エポキシヘキサン、炭素数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド、炭素数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド、炭素数20〜28の混合物であるα−オレフィンエポキシド、炭素数30以上の混合物であるα−オレフィンエポキシドなどの1,2−エポキシアルカン類;オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネートなどのアルキルイソシアネート類;オクタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどのアルコール類とトリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート類との反応により得られるモノイソシアネート化合物類;オクタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどのアルコール類の末端水酸基を塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子置換したハロゲン化物類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸類;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸などの不飽和脂肪酸類;(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらの化合物(II)は、単独であるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。2種以上の化合物(II)を使用する場合には、少なくとも1種の化合物(II)がエポキシ、イソシアネート、チオイソシアネート、アルデヒドケトン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシルからなる群より選ばれるアミノ基と反応しうる官能基Xを有する化合物であることが好ましい。また、化合物(II)の使用量(即ち、側鎖(1)の導入量)は、ポリアミン化合物(I)中に十分量の側鎖(1)が導入できる(即ち、十分な乾燥収縮低減性が達成できる)量であれば特に限定されないが、ポリアミン化合物(I)との反応性を考慮すると、化合物(II)の量は、ポリアミン化合物(I)の活性アミン水素1個あたり、0.01〜0.90モル、0.05〜0.90モル、0.10〜0.85モル、0.17〜0.80モル、0.23〜0.80モルの量の順で好ましい。
【0025】
本発明においては、ポリアミン化合物(I)と化合物(II)とを反応させて、ポリアミン化合物(I)に側鎖(1)として炭素原子数4〜30の炭化水素基を付加・導入することにより、本発明による側鎖(1)含有ポリアミン化合物を得るものであるが、この際のポリアミン化合物(I)と化合物(II)との反応条件は、当該反応が進行して十分量の側鎖(1)がポリアミン化合物(I)中に導入できる条件であれば特に制限されない。例えば、ポリアミン化合物(I)と化合物(II)を、そのまま、あるいは必要に応じて溶剤により希釈して、好ましくは溶剤に溶解、分散または懸濁させて、最も好ましくは溶剤に溶解させて、好ましくは常温〜200℃、より好ましくは40〜100℃の温度で、0.5〜10時間、より好ましくは0.5〜6時間、反応する。当該反応は、常圧下、加圧下または減圧下のいずれで行われてもよいが、好ましくは常圧下である。この際、各化合物を溶解/分散/懸濁するのに必要に応じて使用される溶剤は、特に制限されないが、ポリアミン化合物(I)、化合物(II)または側鎖(1)含有ポリアミン化合物を溶解し得るものであって、かつこれらに対して不活性であることが好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール系;n−ブタン、プロパン、ベンゼン、シクロヘキサン、ナフタレン等の炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル等のエステル系;(ポリ)エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールとその誘導体系などが挙げられ、水、アルコール系、炭化水素系、及びエステル系が好ましく、特に水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサン、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチルが好ましい。なお、これらの溶剤は、ポリアミン化合物(I)、化合物(II)及び側鎖(1)含有ポリアミン化合物に対して、それぞれ異なる溶剤が使用されてもあるいは同じ溶剤が使用されてもよいが、操作性や後の溶剤除去工程の手間などを考慮すると、同じ溶剤が使用されることが好ましい。また、反応に際して、反応を促進するために、触媒を使用してもよく、このような触媒は、上記反応を促進できるものであれば特に制限されず、公知の触媒が使用できる。具体的には、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン系触媒;塩化第一スズ、オクチル酸スズ、モノブチルスズオキサイド等のスズ系触媒;p−トルエンスルホン酸等の酸類などが挙げられる。
【0026】
このようにして得られた側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、上記した反応により生じるものであれば特に制限されないが、具体的には、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド等のポリエチレンイミン/α−オレフィンエポキシド;ポリエチレンイミン/ブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ペンチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ドデシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ミリスチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ステアリル(メタ)アクリレート等のポリエチレンイミン/アルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ドデシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ミリスチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ステアリル(メタ)アクリレートなどがある。
【0027】
また、このようにして得られた側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、ポリアミン化合物(I)の活性アミン水素が側鎖(1)に置換されて、以下のような構造:
【0028】
【化2】

【0029】
を有する側鎖(1)含有ポリアミン化合物となる。なお、本発明では、側鎖(1)は完全に活性アミン水素に置換する必要はなく、上記構造のように一部が置換された形態であってもよい。本発明による側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、化合物(II)の疎水性基である炭素原子数4〜30の炭化水素基(側鎖(1))の存在により、水に溶解されると、水の表面張力を下げる効果を発現して、これにより硬化体表面と水との間に生じる引張り力を低減することにより、乾燥収縮が抑制できる。また、当該側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、AE剤のような一種の界面活性剤としての機能が発現して水硬性材料組成物に良質な空気を連行することにより、ボールベアリング的に作用して、分散性/流動性を向上でき、これによって、優れた乾燥収縮低減性及び流動性/分散性を同時に水硬性材料組成物に付与できるものである。また、側鎖(1)が加水分解によってカルボン酸を発生できる場合、セメント粒子にポリアミン化合物が吸着し、さらに分散性/流動性を向上することができる。したがって、このような側鎖(1)含有ポリアミン化合物を含む水硬性材料用混和剤組成物は、耐久コンクリートの施工に好適に使用することができる。
【0030】
本発明では、ポリアミン化合物(I)中に、上記側鎖(1)に加えて、側鎖(2)として、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基及び−COOZ(ただし、Zは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基または−(RO)−Rを表し、この際、ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し、nは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜500の数であり、Rは、水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を表す);及び−SOW(ただし、Wは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す)からなる群より選択される少なくとも一種の基をさらに側鎖(2)として有することができる。側鎖(2)の導入によって、ポリアミン化合物のセメント粒子への吸着が起こり、硬化体表面を疎水化するため、硬化体と水との引張り力を下げ、これにより乾燥収縮低減効果をより増大させることができ、さらに、側鎖(2)の導入によりセメント粒子にポリアミン化合物が吸着し、これにより上記側鎖(1)による分散性/流動性をさらに向上するからである。なお、本明細書中では、このように側鎖(1)及び(2)お有するポリアミン化合物を、「側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物」と称する。本発明において、側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物は、単一の側鎖(2)をポリアミン化合物(I)中に導入したものであってもあるいは2種以上の側鎖(2)をポリアミン化合物(I)中に共存させたものであってもよい。本明細書において、「平均付加モル数」とは、化合物1モル中における繰り返し単位のモル数の平均値を意味する。
【0031】
本発明において、側鎖(2)の導入は、公知の方法によって達成でき、特に制限されないが、本発明による側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物は、一般的には、上記したようにして製造された側鎖(1)含有ポリアミン化合物を、炭素原子数2〜4のオキシアルキレンおよび/または下記式(9):
【0032】
【化3】

【0033】
で示される化合物(本明細書では、「化合物(III)」と称する)と反応させることによって、製造できる。または、側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物は、まず、ポリアミン化合物(I)を、炭素原子数2〜4のオキシアルキレンおよび/または上記式(9)の化合物(III)と反応させた後、反応生成物をさらに上記式(8)の化合物(II)と反応させることによって、製造してもよい。このようにして得られた側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物は、側鎖(2)の導入により、セメント表面に吸着した際のセメント表面の疎水化を誘導し、水との間の引張り力を低減する効果を発揮して、これにより乾燥収縮をさらに抑制できる。
【0034】
本発明において、炭素原子数2〜4のオキシアルキレンとしては、特に制限されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド等が好ましく挙げられる。より好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、さらにより好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシドである。これらのオキシアルキレンは、単独で使用されても若しくは2種以上の混合物の形態で使用されてもまたは下記に詳述する化合物(III)と組み合わせて使用されてもよい。
【0035】
また、化合物(III)を表す上記式(9)において、Xは、アミノ基と反応しうる官能基を有する原子団を表し、この基Xがポリアミン化合物(I)の活性アミン水素と反応して、ポリアミン化合物(I)中に側鎖(2)としての基Yが導入される。このような原子団としては、アミノ基と反応しうる官能基を有するものであれば特に制限されないが、例えば、グリシジルエーテル、エポキシ、イソシアネート、チオイソシアネート、(メタ)アクリレート、アルデヒドケトン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル由来の基などが挙げられる。これらのうち、好ましくはグリシジルエーテル、エポキシ、イソシアネート、(メタ)アクリレート、ハロゲン化アルキルであり、特に好ましくはエポキシ、(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル、ハロゲン化アルキルである。また、Yは、COOZまたはSOW、好ましくはCOOZを表す。置換基「Y」を表す式:SOWにおいて、Wは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基(−NH)、有機アミン基を表す。この際、一価金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等、好ましくはナトリウム、カリウムが挙げられる。二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等、好ましくはカルシウム、バリウムが挙げられる。有機アミン基としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン及びフェニルアミン等の第一級アミン由来の基;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン及びジフェニルアミン等の第二級アミン由来の基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン及びトリフェニルアミン等の第三級アミン由来の基;およびエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来の基が挙げられる。これらのうち、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が好適に挙げられる。これらのうち、Wは、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基であることが好ましく、一価金属、二価金属、アンモニウム基であることが特に好ましい。また、置換基「Y」を表す式:COOZにおいて、Zは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基(−NH)、有機アミン基または−(RO)−Rを表す。この際、一価金属、二価金属、及び有機アミン基については、上記置換基「W」の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、上記Zを表すもののうち、式:−(RO)−Rにおいて、ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシ1−ブテン基、オキシ2−ブテン基、オキシスチレン基等が好ましく挙げられるが、より好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらにより好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。これらのオキシアルキレン基は、一つの置換基「Z」中に複数個存在する(即ち、式(9)中、nが2以上である)場合には、一つの置換基「Z」中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。これらのうち、Zは、水素原子、一価金属、二価金属、−(RO)−Rであることが好ましく、一価金属、二価金属、−(RO)−Rであることが特に好ましい。また、nは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜500の数である。nが500を超えると、過剰な流動性(分散性)を水硬性材料組成物に付与するため、乾燥収縮抑制に必要な量を添加できなくなるおそれがある。nは、好ましくは1〜300、より好ましくは1〜100、最も好ましくは1〜50ある。また、Rは、水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を表す。この際、炭素原子数1〜3の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルなどが挙げられる。
【0036】
このような化合物(III)の具体例としては、(メタ)アクリル酸;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールマレエート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールマレエートなどが挙げられる。これらの化合物(III)は、単独で使用されても若しくは2種以上の混合物の形態で使用されてもまたは上記に詳述されたオキシアルキレンと組み合わせて使用されてもよい。これらのうち、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールマレエート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールマレエートが好ましく、特にアクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールマレエート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールマレエートが好ましい。
【0037】
また、本発明において、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)の使用量は、ポリアミン化合物(I)や側鎖(1)含有ポリアミン化合物と反応して側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物を十分形成できる量であれば特に限定されないが、ポリアミン化合物(I)や側鎖(1)含有ポリアミン化合物との反応性を考慮すると、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)の合計使用量が、ポリアミン化合物(I)の活性アミン水素1個あたり、0.01〜0.90モル、より好ましくは0.05〜0.80モル、さらにより好ましくは0.10〜0.70モル、最も好ましくは0.10〜0.60モルとなるようにするのが好ましい。なお、本発明では、特に化合物(III)が過度に多く存在しないことが好ましい。化合物(III)が多量に存在すると、硬化不良が生じるおそれがあるからである。
【0038】
上記態様では、ポリアミン化合物(I)/側鎖(1)含有ポリアミン化合物と化合物(III)とを反応させて、ポリアミン化合物(I)に側鎖(2)を付加・導入することにより、本発明による側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物を得るものであるが、この際のポリアミン化合物(I)/側鎖(1)含有ポリアミン化合物と化合物(III)との反応条件は、当該反応が進行して十分量の側鎖(2)がポリアミン化合物(I)中に導入できる条件であれば特に制限されないが、例えば、ポリアミン化合物(I)/側鎖(1)含有ポリアミン化合物と化合物(II)を、そのまま、あるいは必要に応じて溶剤により希釈して、好ましくは溶剤に溶解、分散または懸濁させて、最も好ましくは溶剤に溶解させて、好ましくは常温〜200℃、より好ましくは40〜100℃の温度で、0.5〜6時間、より好ましくは0.5〜4時間、反応する。当該反応は、常圧下、加圧下または減圧下のいずれで行われてもよいが、好ましくは常圧下である。この際、各化合物を溶解/分散/懸濁するのに必要に応じて使用される溶剤は、特に制限されないが、ポリアミン化合物(I)、/側鎖(1)含有ポリアミン化合物、化合物(III)または側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物を溶解し得るものであって、かつこれらに対して不活性であることが好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール系;n−ブタン、プロパン、ベンゼン、シクロヘキサン、ナフタレン等の炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル等のエステル系;(ポリ)エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールとその誘導体系などが挙げられ、水、アルコール系、炭化水素系、及びエステル系が好ましく、特に水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサン、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチルが好ましい。なお、これらの溶剤は、ポリアミン化合物(I)、化合物(II)及び側鎖(1)含有ポリアミン化合物に対して、それぞれ異なる溶剤が使用されてもあるいは同じ溶剤が使用されてもよいが、操作性や後の溶剤除去工程の手間などを考慮すると、同じ溶剤が使用されることが好ましい。また、ポリアミン化合物(I)と化合物(II)との反応に使用される溶剤と、上記反応で使用される溶剤は、同一であってもあるいは異なるものであってもいずれでもよいが、操作性や後の溶剤除去工程の手間などを考慮すると、同じ溶剤が使用されることが好ましい。さらに、反応に際して、反応を促進するために、触媒を使用してもよく、このような触媒は、上記反応を促進できるものであれば特に制限されず、公知の触媒が使用できる。具体的には、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン系触媒;塩化第一スズ、オクチル酸スズ、モノブチルスズオキサイド等のスズ系触媒;p−トルエンスルホン酸等の酸類などが挙げられる。
【0039】
本発明では、ポリアミン化合物(I)に、側鎖(1)または側鎖(1)及び(2)に加えて、側鎖(3)として、−COOZ’(ただし、Z’は、1〜3の炭化水素基を表す)が、側鎖(1)1個に対して、2.4個以下の割合で導入されることが好ましい。なお、本明細書中では、上記側鎖(1)、(3)、及び必要であれば側鎖(2)を有する化合物を、単に「側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物」と称する。このような特定量の側鎖(3)の導入によって、ポリアミン化合物のセメント粒子への吸着が起こり、硬化体表面を疎水化するため、硬化体と水との引張り力を下げ、これにより乾燥収縮低減効果をより増大させることができ、さらに、側鎖(3)の導入により、上記側鎖(1)による分散性/流動性をさらに向上できるからである。なお、本発明において、側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物は、単一の側鎖(3)をポリアミン化合物(I)中に導入したものであってもあるいは2種以上の側鎖(3)をポリアミン化合物(I)中に共存させたものであってもよい。
【0040】
本発明において、側鎖(3)の導入は、公知の方法によって達成でき、特に制限されないが、本発明による側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物は、一般的には、上記したようにして製造された側鎖(1)含有ポリアミン化合物または側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物を、下記式(10):
【0041】
【化4】

【0042】
で示される化合物(本明細書では、「化合物(IV)」と称する)と反応させることによって、製造できる。または、側鎖(1)及び(3)を有する側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物は、まず、ポリアミン化合物(I)を、上記式(10)の化合物(IV)と反応させた後、反応生成物をさらに上記式(9)の化合物(II)と反応させることによって、製造してもよい。このようにして得られた側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物は、このような特定量のカルボン酸基の導入により、セメント表面に吸着した際の硬化体表面の疎水化を誘導し、水との間の引張り力を低減する効果を発揮して、これにより乾燥収縮をさらに抑制できる。
【0043】
本発明による側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物において、側鎖(3)は、側鎖(1)1個に対して、2.4個以下の割合で導入されることが好ましい。これは、側鎖(3)が2.4個を超えてポリアミン化合物(I)中に導入されると、側鎖(1)の導入量が相対的に減ってしまい、また、カルボン酸由来の基が過剰にポリアミン化合物(I)中に導入され、得られる側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物の分散性が上がりすぎてしまうため、乾燥収縮を抑制するために必要な量を添加できず、乾燥収縮低減性が過度に低下してしまうおそれがあるからである。側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物の乾燥収縮低減効果、さらには分散性/流動性を考慮すると、側鎖(3)のポリアミン化合物(I)への導入量は、側鎖(1)1個に対して、0.10〜2.00個、より好ましくは0.15〜1.75個、最も好ましくは0.20〜1.50個である。
【0044】
また、化合物(IV)を表す上記式(10)において、Xは、上記式(9)の置換基「X」の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、Y’は、−COOZ’を表す。この際、Z’は、1〜3の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜3の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル等の環状のアルキル基などが挙げられる。これらのうち、メチル、エチル、プロピル等の直鎖のアルキル基、特にメチル、エチルが好ましい。
【0045】
このような化合物(IV)の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルなどが挙げられる。これらの化合物(IV)は、単独で使用されても若しくは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルが好ましい。
【0046】
また、本発明において、化合物(IV)の使用量は、上記したように、側鎖(1)に対して所定量で存在するように設定され、ポリアミン化合物(I)、側鎖(1)含有ポリアミン化合物または側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物と反応して側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物を十分形成できる量であれば特に限定されないが、上記化合物との反応性を考慮すると、化合物(IV)の使用量は、ポリアミン化合物(I)の活性アミン水素1個あたり、0.01〜0.90モル、より好ましくは0.05〜0.80モル、最も好ましくは0.05〜0.70モルとなるようにするのが好ましい。
【0047】
本発明においては、上記ポリアミン化合物(I)、化合物(II)と、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)、および/または化合物(IV)とを反応させることにより、本発明による側鎖含有ポリアミン化合物を得るものである。なお、本明細書では、側鎖(1)含有ポリアミン化合物、側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物及び側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物を一括して、「側鎖含有ポリアミン化合物」と称する。この際、ポリアミン化合物(I)、上記式(8)の化合物(II)、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)、および/または化合物(IV)の添加順序は、ポリアミン化合物(I)、化合物(II)、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)、および/または化合物(IV)が反応して所望の側鎖含有ポリアミン化合物が得られるものであれば特に制限されない。例えば、ポリアミン化合物(I)、化合物(II)、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)、および/または化合物(IV)を同時に添加して反応を行なう;ポリアミン化合物(I)に、化合物(II)を反応させた後、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)と反応させる;ポリアミン化合物(I)に、化合物(II)を反応させた後、化合物(IV)と反応させる;ポリアミン化合物(I)をオキシアルキレンおよび/または化合物(III)と反応させた後、化合物(II)を添加して反応を行う;ポリアミン化合物(I)を化合物(IV)と反応させた後、化合物(II)を添加して反応を行う;ポリアミン化合物(I)に、化合物(II)及び化合物(III)を添加して反応を行う;あるいはポリアミン化合物(I)に、化合物(II)及び化合物(IV)を添加して反応を行うなど、いずれでもよい。これらのうち、ポリアミン化合物(I)、化合物(II)、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)を同時に添加して反応を行なう方法;ポリアミン化合物(I)、化合物(II)、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)、および/または化合物(IV)を同時に添加して反応を行なう方法;ポリアミン化合物(I)に、化合物(II)を反応させた後、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)と反応させる方法;ポリアミン化合物(I)に、化合物(II)を反応させた後、化合物(IV)と反応させる方法;ポリアミン化合物(I)を化合物(IV)と反応させた後、化合物(II)を添加して反応を行う方法;およびポリアミン化合物(I)をオキシアルキレンおよび/または化合物(III)と反応させた後、化合物(II)を添加して反応を行う方法が好ましく使用される。
【0048】
また、ポリアミン化合物(I)/側鎖(1)含有ポリアミン化合物/側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物と、化合物(IV)との反応条件は、当該反応が進行して十分量の側鎖(2)がポリアミン化合物(I)中に導入できる条件であれば特に制限されないが、例えば、上記ポリアミン化合物(I)/側鎖(1)含有ポリアミン化合物と化合物(III)との反応条件が同様にして好ましく使用される。
【0049】
このようにして得られた側鎖含有ポリアミン化合物は、上記した反応により生じるものであれば特に制限されないが、具体的には、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/ブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/メチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/ブチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/(メタ)アクリル酸ラウリル/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/ブチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/(メタ)アクリル酸ラウリル/(メタ)アクリル酸;
ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸ラウリル/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸ラウリル/(メタ)アクリル酸;
ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸ラウリル/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸ラウリル/(メタ)アクリル酸;
ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート等のポリエチレンイミン/α−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリレート;
ポリエチレンイミン/ブチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/ペンチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/ヘキシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/シクロヘキシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/ドデシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/ミリスチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/ステアリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸等のポリエチレンイミン/アルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸;
ポリエチレンイミン/ブチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ペンチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ヘキシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/シクロヘキシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ドデシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ミリスチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ステアリル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ブチル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ペンチル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ヘキシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/シクロヘキシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ドデシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ミリスチル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ステアリル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ブチル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ペンチル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ヘキシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/シクロヘキシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ドデシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ミリスチル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ステアリル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート等のポリエチレンイミン/アルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリレートがある。上記例示に加えて、ポリエチレンイミンの代わりに、ポリエチレンイミンのエチレンオキサイド付加物(例えば、ポリエチレンイミンのエチレンオキサイド付加物/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸など)、ポリエチレンイミンのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物(例えば、ポリエチレンイミンのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸など)を置換したものもまた、本発明による側鎖含有ポリアミン化合物に含まれる。
【0050】
2.高性能AE減水剤
本発明の水硬性材料用混和剤組成物において、側鎖含有ポリアミン化合物と組合わせることができる高性能AE減水剤は、側鎖含有ポリアミン化合物の分散性/流動性を所望のレベルになるように補助できるものであれば特に制限されず、公知の高性能AE減水剤が使用できる。具体的には、分子内にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系高性能AE減水剤や、分子内にポリキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系高性能AE減水剤などが挙げられる。スルホン酸系高性能AE減水剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系(特開平1−113419号公報参照)等が挙げられる。また、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤としては、例えば、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、およびこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体;特開昭62−68806号公報に開示されるような、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、およびこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体などが挙げられる。これらのうち、側鎖含有ポリアミン化合物との組合わせのしやすさ、分散性/流動性の制御の容易さなどを考慮すると、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤が好ましい。
【0051】
上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤は、特に制限されず、公知のポリカルボン酸系高性能AE減水剤が使用できるが、下記式(1):
【0052】
【化5】

【0053】
で示される構成単位(I)及び下記式(3):
【0054】
【化6】

【0055】
で示される構成単位(III)を必須の構成単位として含むポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A);下記式(2):
【0056】
【化7】

【0057】
で示される構成単位(II)及び上記式(3)で示される構成単位(III)を必須の構成単位として含むポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B);特開平7−53645号公報、特開平8−208769号公報、特開平8−208770号公報の如くポリエーテル化合物に不飽和カルボン酸系単量体をグラフト重合した親水性グラフト重合体などが好適である。これらの中でも、上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A)及びポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)を用いるのが特に好ましい。
【0058】
以下、上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤の好ましい形態である、上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A)、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)について説明する。なお、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A)及びポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)は、それぞれ単独で用いても若しくは2種以上の混合物の形態で使用してもまたはポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A)及びポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)の1種または2種以上を併用してもよい。
【0059】
上記式(1)において、R、R及びRは、水素原子またはメチル基を表し、好ましくはR及びRの少なくとも一方は水素原子を表す。この際、R、R及びRは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。sは、0〜2の整数、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシ1−ブテン基、オキシ2−ブテン基、オキシスチレン基等が好ましく挙げられるが、より好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらにより好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。これらのオキシアルキレン基は、一つの構成単位中に複数個存在する(即ち、式(1)中、uが2以上である)場合には、一つの構成単位中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。構成単位(I)として1種類の構成単位のみを用いる場合には、親水性と疎水性のバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましく、さらに50モル%以上はオキシエチレン基であることが好ましい。
【0060】
また、上記式(1)において、uは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜300の数である。uが300を超えると、空気連行性が高くなり、空気量の調整が困難となり、強度低下や耐凍結融解性の低下の原因となる。この際、uは、1〜150、1〜100、1〜80、1〜50、1〜30の順で好ましい。Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、特に好ましくは水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。このような炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソオクチル基、2,3,5−トリメチルヘキシル基、4−エチル−5−メチルオクチル基及び2−エチルヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−,m−若しくはp−トリル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基及びピレニル基等のアリール基などが挙げられる。
【0061】
本発明で用いられる構成単位(I)を与える単量体(以下、単に「単量体(a)」とも称する)は、下記式(4):
【0062】
【化8】

【0063】
ただし、式中、R、R、R、R、R、s及びuは、上記式(1)における定義と同様である、
で示されるオキシアルキレン基含有単量体(a)である。このような単量体(a)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸又は脂肪酸の脱水素(酸化)反応物への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの付加物、あるいは、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素原子数1〜30の飽和脂肪族アルコール類、アリルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコール等の炭素原子数3〜30の不飽和脂肪族アルコール類、シクロヘキサノール等の炭素原子数3〜30の脂環族アルコール類、フェノール、フェニルメタノール(ベンジルアルコール)、メチルフェノール(クレゾール)、p−エチルフェノール、ジメチルフェノール(キシレノール)、p−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、フェニルフェノール、ナフトール等の炭素原子数6〜30の芳香族アルコール類のいずれかに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸又はクロトン酸とのエステル化合物等が挙げられるが、式(1)において、Rが炭化水素基となる場合に相当する、アルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸又はクロトン酸とのエステル化合物が好ましい。なお、上記単量体(a)は、単独で使用されてもあるいは2種類以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0064】
単量体(a)の具体例としては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ブトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ブトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メチル−1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メチル−2−プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ペンチルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−オクチルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−エチル−1−ヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、セチルアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェニルメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メチルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、p−エチルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジメチルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、p−t−ブチルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ドデシルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ナフトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを付加させた(メタ)アリルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、エチレンオキシドを付加させたクロチルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の各種アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−プロポキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−プロポキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ブトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドを付加させた(メタ)アリルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、プロピレンオキシドを付加させたクロチルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の各種アルコキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−プロポキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−プロポキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ブトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ブトキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドとブチレンオキシドを付加させた(メタ)アリルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、エチレンオキシドとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドとブチレンオキシドを付加させたクロチルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の2種類以上のアルキレンオキシドを付加させたアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の各種アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。この際、これらの単量体(a)または構成単位(I)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0065】
上記式(2)において、R、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、好ましくはR及びR10の少なくとも一方は水素原子を表す。この際、R、R10及びR11は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。xは、0〜2の整数であり、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。R12Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、上記式(1)におけるROと同様である。これらのオキシアルキレン基は、一つの構成単位中に複数個存在する(即ち、式(2)中、yが2以上である)場合には、一つの構成単位中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。構成単位(II)として1種類の構成単位のみを用いる場合には、親水性と疎水性のバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましく、さらに50モル%以上はオキシエチレン基であることが好ましい。また、yは、オキシアルキレン基(R12O)の平均付加モル数を表し、1〜300の数である。yが300を超えると、空気連行性が高くなり、空気量の調整が困難となり、強度低下や耐凍結融解性の低下の原因となる。yは、1〜150、1〜100、1〜80、1〜50の順で好ましい。R13は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、特に好ましくは炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。なお、式(2)における置換基「R13」の定義は、式(1)における置換基「R」の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0066】
本発明で用いられる構成単位(II)を与える単量体(以下、単に「単量体(b)」とも称する)は、下記式(5):
【0067】
【化9】

【0068】
ただし、式中、R、R10、R11、R12、R13、x、及びyは、上記式(2)における定義と同様である、
で示されるオキシアルキレン基含有単量体(b)である。このような単量体(b)としては、ビニルアルコールまたはイソプレンアルコール等のアルコール類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの付加物等が挙げられる。なお、上記単量体(b)は、単独で使用されてもあるいは2種類以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0069】
単量体(b)の具体例としては、(ポリ)エチレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)ブチレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル等が挙げられる。この際、これらの単量体(b)または構成単位(II)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0070】
上記式(3)において、R14、R15及びR16は、水素原子、メチル基または−(CHCOOM’基を表す。この際、R14、R15及びR16は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。この際、M’は、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基(−NH)または有機アミン基を表す。また、qは、0〜2の整数、好ましくは0または1、特に0である。Mは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基(−NH)または有機アミン基を表す。この際、一価金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。なお、Mが二価金属である場合には、2個の−COO−で無水物の形態をとる。有機アミン基としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン及びフェニルアミン等の第一級アミン由来の基;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン及びジフェニルアミン等の第二級アミン由来の基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン及びトリフェニルアミン等の第三級アミン由来の基;およびエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来の基が挙げられる。これらのうち、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が好適に挙げられる。これらのうち、Mは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基であることが好ましく、水素原子、ナトリウムまたはカルシウムであることが特に好ましい。なお、式(3)における置換基「M’」の定義は、同式中の置換基「M」の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。なお、COOM’が2個または3個存在する場合には、これらのCOOM’は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、COOM及びCOOM’が合わせて2個以上存在する場合は、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよい。
【0071】
本発明で用いられる構成単位(III)を与える単量体(以下、単に「単量体(c)」とも称する)は、下記式(6):
【0072】
【化10】

【0073】
ただし、式中、R14、R15、R16、及びMは、上記式(3)における定義と同様である、
で示される不飽和カルボン酸系単量体(c)である。このような単量体(c)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ならびにこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等の不飽和モノカルボン酸系単量体;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、ならびにこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等の等の不飽和ジカルボン酸系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の無水物などが挙げられる。中でも、R14、R15及びR16が、それぞれ独立に水素原子またはメチル基の場合に相当する、不飽和モノカルボン酸系単量体が好ましく、とりわけ(メタ)アクリル酸及びこれらの塩が好ましい。この際、これらの単量体(c)または構成単位(III)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0074】
上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A)は、上記式(1)の構成単位(I)と上記式(3)の構成単位(III)とを必須の構成単位として含む重合体であるが、更に、以下に詳述するその他の共重合可能な単量体(e)に由来する構成単位(IV)を含むものでもよい。ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A)におけるこれらの構成単位は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0075】
上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A)における構成単位(I)と構成単位(III)と必要であれば構成単位(IV)との比率(構成単位(I)/構成単位(II)/構成単位(IV))(質量比)は、95〜10/5〜40/0〜50、より好ましくは95〜40/5〜30/0〜30、特に好ましくは95〜50/5〜25/0〜25であることが好ましい。この際、構成単位(I)、(III)及び(IV)の割合の合計は、100質量%である。また、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A)における構成単位(I)と構成単位(III)との合計の比率(質量%)としては、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A)全体の50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。
【0076】
上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)は、上記式(2)の構成単位(II)と上記式(3)の構成単位(III)とを必須の構成単位として含む重合体であるが、更に、以下に詳述するその他の共重合可能な単量体(e)に由来する構成単位(IV)を含むものでもよい。ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)におけるこれらの構成単位は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0077】
上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)において、構成単位(II)と構成単位(III)とが各々全構成単位中の1質量%以上を占め、構成単位(II)の占める割合が全構成単位中の50モル%以下であることが好ましい。構成単位(II)の割合が1質量%未満では、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)に含まれる(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体由来のオキシアルキレン基の含有量が少なすぎ、他方、構成単位(III)の割合が1質量%未満では、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)に含まれる不飽和モノカルボン酸系単量体由来のカルボキシル基の含有量が少なすぎ、分散性が低下傾向となる。また、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体の重合性が低いことから、分散性の高いポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)を高収率で得るために、構成単位(II)の占める割合が全構成単位中の50モル%以下とするのが好ましい。このため、上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)における構成単位(II)と構成単位(III)と必要であれば構成単位(IV)との比率(構成単位(II)/構成単位(III)/構成単位(IV))(質量比)は、99.5〜0.5/0.5〜35/0〜64.5、より好ましくは99〜15/1〜35/0〜50、特に好ましくは98〜35/2〜35/0〜30であることが好ましい。この際、構成単位(II)、(III)及び(IV)の割合の合計は、100質量%である。また、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)における構成単位(II)と構成単位(III)との合計の比率(質量%)としては、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)全体の50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。
【0078】
上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A)および/または(B)で使用できるその他の共重合可能な単量体(e)としては、他の単量体成分と共重合可能な単量体があり、このような単量体の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜4のアルコールとのハーフエステル、ジエステル;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド;前記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと前記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート、等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜4のアルコールとのエステル;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテル或いはアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;2−アクリロイロキシエチルホスフェート、2−メタクリロイロキシエチルホスフェートなどの不飽和リン酸エステル類等を挙げることができる。この際、これらの単量体(e)または上記単量体(e)由来の構成単位(IV)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0079】
本発明によるポリカルボン酸系高性能AE減水剤としての重合体を製造する方法は、特に制限されず、公知の重合方法が使用できるが、一般的には、重合開始剤を用いて前記単量体成分を重合させればよい。単量体成分の重合方法は、特に制限されず、公知の重合方法が同様にあるいは修飾されて使用できるが、重合は、例えば、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行なうことができる。溶媒中での重合は回分式でも連続式でも行なうことができ、その際使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物等が挙げられる。原料単量体及び得られる重合体の溶解性並びにこの重合体の使用時の簡便さを考慮すると、水及び炭素原子数1〜4の低級アルコール及びベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素よりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、水および炭素原子数1〜4の低級アルコールがより好ましく、特に水、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等が有効である。
【0080】
水媒体中で重合を行なう場合に使用される重合開始剤は、特に制限されず、公知の重合開始剤が使用でき、例えば、アンモニウム又はアルカリ金属の過硫酸塩あるいは過酸化水素等の水溶性の重合開始剤が使用される。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩、アスコルビン酸(塩)、ロンガリット等の促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物あるいはケトン化合物を溶媒とする重合を行なう場合に使用される重合開始剤もまた、特に制限されず、公知の重合開始剤が使用できるが、具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が重合開始剤として用いられる。この際、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、モール塩、ピロ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、アスコルビン酸等の還元剤;エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グリシン等のアミン化合物等の促進剤を併用することもできる。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、水−低級アルコール混合溶剤を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。重合開始剤の添加量は、特に制限されず、公知の重合方法で使用される量と同様の量が使用できる。また、重合条件も、特に制限されず、公知の重合条件と同様の条件が使用できるが、例えば、重合温度は、用いる溶媒や重合開始剤により適宜定められるが、通常、0〜120℃の範囲内で行なわれる。
【0081】
また、塊状重合の場合においても、その方法、使用される重合開始剤の種類や量、重合条件などは、特に制限されず、公知の方法などが使用できる。例えば、重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が使用できる。また、塊状重合は、例えば、50〜200℃の温度範囲内で行なわれる。
【0082】
また、得られる重合体(ポリカルボン酸系高性能AE減水剤)の分子量を調節することを目的として、連鎖移動剤を使用することができる。このような連鎖移動剤としては、特に制限されず、親水性及び疎水性連鎖移動剤のいずれも使用できるが、好ましくは炭素数3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタン系の疎水性連鎖移動剤及び親水性連鎖移動剤、特に好ましくは3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタン系の疎水性連鎖移動剤を使用することが好ましい。これは、アルキルメルカプタン系の連鎖移動剤を用いると、共重合体末端にアルキルメルカプタン基が導入されるが、これにより乾燥収縮低減性が向上するからである。このような炭素数3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタン系の疎水性の連鎖移動剤としては、特に制限されないが、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2−メルカプトプロピオン酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、オクタン酸2−メルカプトエチルエステル、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン等が挙げられる。この際、疎水性連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、親水性連鎖移動剤としては、公知のものを使用することができ、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;2−アミノプロパン−1−オール等の1級アルコール;イソプロパノール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物及びその塩等が好適である。この際、親水性連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。または、上記疎水性連鎖移動剤及び親水性連鎖移動剤は、1種あるいは2種以上をそれぞれ組合わせて使用されてもよい。これらの連鎖移動剤のうち、炭素数3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタン系の親水性連鎖移動剤を使用することが好ましい。
【0083】
これらの連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。さらに、重合体の分子量調整のためには、単量体(e)として(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。この際、連鎖移動剤の添加量は、得られる重合体(ポリカルボン酸系高性能AE減水剤)の分子量を適宜調節できる量であれば特に制限されないが、好ましくは、単量体(a)、(c)及び必要であれば単量体(e)あるいは単量体(b)、(c)及び必要であれば単量体(e)の単量体成分の合計モルに対して、15〜0.01モル%、より好ましくは10〜0.1モル%であることが好ましい。
【0084】
上記連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、連続してあるいは段階的に滴下する方法のいずれでもよいが、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することが好ましい。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入してもよく、上記した単量体(a)、(c)及び必要であれば単量体(e)あるいは単量体(b)、(c)及び必要であれば単量体(e)の単量体成分、溶媒等とあらかじめ混合しておいてもよい。
【0085】
このようにして得られた重合体は、そのままでもポリカルボン酸系高性能AE減水剤に用いられてもよいが、有機溶媒を含まない水溶液の形で取り扱ってもよく、このような場合には、重合体をさらに一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭素塩等の無機物;アンモニア;有機アミン等(好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の一価金属の水酸化物)のアルカリ性物質で中和して、重合体塩の形態としてポリカルボン酸系高性能AE減水剤に使用してもよい。
【0086】
また、本発明によるポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A)としての重合体の重量平均分子量は、得られる重合体が十分な分散性/流動性を発揮できる値であれば特に制限されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と呼ぶ)によるポリエチレングリコール換算で、5,000〜1,000,000の範囲が適当である。5,000〜500,000の範囲がより好ましく、7,000〜200,000の範囲が特に好ましい。また、本発明によるポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)としての重合体の重量平均分子量もまた、得られる重合体が十分な分散性/流動性を発揮できる値であれば特に制限されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と呼ぶ)によるポリエチレングリコール換算で、5,000〜1,000,000の範囲が適当である。5,000〜500,000の範囲がより好ましく、7,000〜200,000の範囲が特に好ましい。上記範囲において、重量平均分子量が上限を超える場合には、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤の減水性能、スランプロス防止能が低下するおそれがあり、逆に下限を下回る場合には、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤の減水性能が低下するおそれがある。
【0087】
なお、本明細書において、重合体の重量平均分子量は、特記しない限り、下記GPC測定条件によって測定された値である。
【0088】
<GPC分子量測定条件>
使用カラム:東ソー社製、TSK guard column SWXL+TSK ge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整した溶離液を用いる
打込み量:100μL
サンプル濃度:0.5重量%
溶離液流速:0.8mL/sec
カラム温度:35℃
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470
検出器:日本Waters社製、示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製、MILLENNIUM Ver.2.18。
【0089】
本発明のポリカルボン酸系高性能AE減水剤は、水硬性材料など、広範な用途に適用可能であるが、特に水硬性材料に好適に使用される。
【0090】
本発明のポリカルボン酸系高性能AE減水剤は、上記したような重合体1種のみから構成されてもあるいは上記した2種以上の重合体から構成されるものであってもよい。
【0091】
また、本発明による側鎖含有ポリアミン化合物、上記乾燥収縮低減剤及びポリカルボン酸系高性能AE減水剤にさらに下記収縮低減剤を組み合わせることによって、目的に応じた分散性と乾燥収縮低減性を容易に調整することができる。
【0092】
3.収縮低減剤
本発明の水硬性材料用混和剤組成物において、側鎖含有ポリアミン化合物と組合わせることができる収縮低減剤は、側鎖含有ポリアミン化合物の乾燥収縮低減性を所望のレベルになるように補助できるものであれば特に制限されないが、側鎖含有ポリアミン化合物との組合わせのしやすさ、収縮低減性の制御の容易さ、ならびに空気量及び分散性の制御の容易さなどを考慮すると、下記式(7):
【0093】
【化11】

【0094】
で示される化合物、ならびにポリアルキレンイミンエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物(以下、単に「ポリアルキレンイミンEO・PO付加物」と称する)であることが特に好ましい。なお、上記収縮低減剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0095】
以下、上記好ましく使用される式(7)の化合物及びポリアルキレンイミンEO・PO付加物について詳細に説明する。
【0096】
第一に、本発明の水硬性材料用混和剤組成物において収縮低減剤として使用できる式(7)の化合物について説明する。上記式(7)において、R17及びR19は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。この際、R17及びR19は、同一であってもあるいは異なるものであってもいずれでもよい。また、R17及びR19で表わされる炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル、テトラデシル、オクタデシル、イコシル等の炭素数4〜30の直鎖及び分岐鎖のアルキル基;シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル、ベンジル、フェネチル、o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニリル、ベンズヒドリル、トリチル及びピレニル等のアリール基及びアルキル基を有するこれらのアリール基((アルキル)アリール基);上記アリール基の少なくとも一部を水添させた水添アリール基及びアルキル基を有するこれらの水添アリール基((アルキル)水添アリール基);およびベンジル、メチルベンジル、フェネチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル等の(アルキル)アラルキル基などが挙げられる。これらのうち、R17及びR19は、水素原子、メチル、2−エチルヘキシル等の炭素数1〜18の直鎖及び分岐鎖のアルキル基及び上記したような炭素数4〜12の環状のアルキル基が好ましい。R18Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシ1−ブテン基、オキシ2−ブテン基、オキシスチレン基等が好ましく挙げられるが、より好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらにより好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。これらのオキシアルキレン基は、一の式(7)の化合物中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれに付加形態であってもよい。さらに、mは、オキシアルキレン基(R18O)の平均付加モル数を表し、2以上の数であり、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜30である。
【0097】
上記式(7)において、全オキシアルキレン基中に占めるオキシエチレン基の割合は、特に制限されず、所望の収縮低減性を考慮して適宜選択できる。しかしながら、R19が炭素原子数4以上の炭素原子数の大きな炭化水素基である場合には、オキシエチレン基の全オキシアルキレン基中に占める割合が高くなると、得られる収縮低減剤の空気連行性が上昇して、水硬性材料と混合する際の泡立ちが顕著になり、このような泡立ちを抑えるために消泡剤の添加を必要とする場合がある。そのため、特にR19が炭素原子数4以上の炭化水素基である場合には、オキシエチレン基の付加モル数は、好ましくは、全オキシアルキレン基の付加モル数に対して、60モル%未満、より好ましくは50モル%未満である。また、空気連行性を考慮すると、オキシプロピレン基を必須とすることが好ましい。この際、全オキシアルキレン基中に占めるオキシプロピレン基の割合は、特に制限されず、所望の収縮低減性を考慮して適宜選択できるが、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上であり、さらにより好ましくは50モル%以上である。
【0098】
本発明において、収縮低減剤は、上記式(7)中の−(R18O)−がオキシエチレン基と炭素原子数3〜18のオキシアルキレン基とを繰り返し単位として有する基を表わし、オキシエチレン基の平均付加モル数と該炭素原子数3〜18のオキシアルキレン基の平均付加モル数との比率が、0/100〜95/5である式(7)の収縮低減剤であることが好ましい。このようにオキシエチレン基の平均付加モル数と炭素原子数3〜18のオキシアルキレン基の平均付加モル数との比率が、0/100〜95/5であることにより、これらの基が有する機能が充分にバランスされて収縮低減作用をより充分に発揮させることができる。この際、95/5を超えると、炭素原子数3〜18のオキシアルキレン基の平均付加モル数の比率が少なくなり過ぎて、セメント分散性能が向上しすぎることにより、材料分離を生じるおそれがある。いずれにしても、上記の範囲を外れると、水硬性材料の分散性や硬化物の強度や耐久性等の性能が過度に低下するおそれがある。オキシエチレン基の平均付加モル数の比率は、より好ましくは、0/100〜90/10であり、最も好ましくは、0/100〜85/15である。
【0099】
上記式(7)の化合物の調製方法は、特に制限されず、公知の合成方法が単独であるいは適宜組み合わせて使用できる。例えば、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを、活性水素原子を有する化合物である水やメチルアルコールに公知の方法で重合することにより調製する方法等を好適に適用することができる。上記アルキレンオキシド及び活性水素原子を有する化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
上記方法において、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドは、所望の式(7)の化合物の種類によって適宜選択される。このため、プロピレンオキシドが含まれることが好ましく、また、必要により共重合可能なブチレンオキシド等が含まれることになる。更に、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシド以外に、スチレンオキシド等の他のアルキレンオキシドが必要により付加的に含まれていてもよい。
【0101】
上記式(7)の化合物の調製における重合方法としては特に限定されず、例えば、汎用性を考慮して公知の重合方法を用いることが好ましい。このような重合方法では、酸触媒又はアルカリ触媒を用いることが好ましい。上記酸触媒としては、例えば、三フッ化ホウ素等のルイス酸触媒である金属や半金属のハロゲン化合物;塩化水素、臭化水素、硫酸等の鉱酸等が挙げられる。また、上記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上記方法において、式(7)で表される化合物と共に式(7)で表される化合物の誘導体を含んでもよく、式(7)で表される化合物の代わりに式(7)で表される化合物の誘導体を含んでもよい。上記式(7)で表される化合物の誘導体としては、例えば、式(7)で表される化合物の末端官能基を変換してなる末端基変換体や、式(7)で表される化合物と、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、ハロゲン基等の基を1分子中に複数個有する架橋剤とを反応させて得られる架橋体等が挙げられる。上記末端基変換体としては、例えば、式(7)で表される化合物の全ての末端又は一部の末端の水酸基を、(1)炭素原子数2〜22の脂肪酸、コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸等のジカルボン酸及び/又はその無水物でエステル化したもの;(2)ハロゲン化アルキルを用いた脱ハロゲン化水素反応でアルコキシル化したもの、すなわちアルコキシポリオキシアルキレン;(3)クロルスルホン酸、無水硫酸、スルファミン酸等の公知の硫酸化剤で硫酸化したもの、すなわちポリオキシアルキレン硫酸(塩)等が挙げられる。
【0102】
上記式(7)で表される化合物の重量平均分子量(Mw)としては特に限定されず、例えば、100〜1000000であることが好ましい。より好ましくは、200〜100000であり、更に好ましくは、300〜50000である。また、分散度としては特に限定されず、例えば、1〜100であることが好ましい。より好ましくは、1.1〜10であり、更に好ましくは、1.1〜3である。尚、本明細書中において、分散度とは、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)を意味する。
【0103】
このような式(7)の化合物の具体例としては、2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド(EO)・プロピレンオキサイド(PO)付加体、メタノールのEO・PO付加体、C12の第2級アルコールのEO・PO付加体、ポリプロピレンオキサイド、EO・POの共重合体などが挙げられ、これらのうち、特に、2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド(EO)2モル・プロピレンオキサイド(PO)10モル付加体、メタノールのEO 1モル・PO 4モル付加体、C12の第2級アルコールのEO 9モル・PO 15モル付加体、平均付加モル数が5〜10のポリプロピレンオキサイドなどが好ましく使用される。
【0104】
次に、本発明の水硬性材料用混和剤組成物において収縮低減剤として使用できるポリアルキレンイミンEO・PO付加物は、エチレンオキサイド(EO)および/またはプロピレンオキサイド(PO)を有するポリアルキレンイミンであり、このような構造をゆうしかつ収縮低減性を有するものであれば特に限定されない。好ましくは、ポリアルキレンイミンが有する活性水素原子を持つアミノ基やイミノ基の窒素原子にEOおよび/またはPOを付加して得られる化合物である。
【0105】
この際好ましく使用されるポリアルキレンイミンとしては、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、1,1−ジメチルエチレンイミン等の炭素原子数2〜8のアルキレンイミンの1種または2種以上を常法により重合して得られる上記アルキレンイミンの単独重合体及び共重合体が挙げられる。上記ポリアルキレンイミンは、単独で使用されてもあるいは2種以上を併用してもいずれでもよい。ここで、ポリアルキレンイミンEO・PO付加物は、このようなポリアルキレンイミンにより付加物のポリアルキレンイミン鎖が形成されてなるが、当該ポリアルキレンイミン鎖は、直鎖状、分枝状、または三次元状のいずれの架橋構造であってもよい。さらに、ポリアルキレンイミンは、上記アルキレンイミンに代えてあるいは上記アルキレンイミンに加えて、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペタミン等を用いて製造されてもよい。このような場合には、ポリアルキレンイミン構造中に、第3級アミノ基に加えて、活性水素原子を持つ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)が存在することになる。これらのうち、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、エチレンジアミンが好ましく使用され、エチレンイミンがポリアルキレンイミン鎖の少なくとも一部を形成することが特に好ましい。この際、ポリアルキレンイミン鎖を形成するアルキレンイミンにおける、エチレンイミンの存在量は、特に制限されず、製造される収縮低減剤の所望の特性に応じて適宜選択されるが、エチレンイミンが、全アルキレンイミンの全モルに対して、50モル%以上(50〜100モル%)、より好ましくは60モル%以上、さらにより好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上を占めることが好ましい。この際50モル%未満であると、ポリアルキレンイミン鎖の親水性が低下する可能性がある。
【0106】
上記ポリアルキレンイミン鎖に付加されるEO及びPOは、それぞれが単独で付加してもあるいは組み合わせた形態で付加されてもよい。後者の場合には、EO及びPOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。
【0107】
上記ポリアルキレンイミン鎖に付加されるEO及びPOの量は、特に制限されず、製造される収縮低減剤の所望の特性に応じて適宜選択される。好ましくは、EO及びPOの合計平均付加モル数が、1〜300、より好ましくは2〜270、さらにより好ましくは3〜250、最も好ましくは5〜220である。この際、EO及びPOの平均付加モル数が300を超えると、過剰な分散性/流動性を水硬性材料組成物に付与して、乾燥収縮低減に必要な量を添加することが困難である可能性がある。また、上記範囲を逸脱する場合には、セメント組成物などの流動性及び収縮低減性を向上する効果が十分発揮されない可能性がある。なお、上記「平均付加モル数」とは、付加物を形成することになるポリアルキレンイミンが有する活性水素原子を持つ窒素原子1モルに対して付加するEO/POのモル数の平均値を意味する。
【0108】
上記ポリアルキレンイミンEO・PO付加物の重量平均分子量は、十分な収縮低減性を発揮できる値であれば特に制限されないが、ポリアルキレンイミンEO・PO付加物の重量平均分子量は、300以上、より好ましくは400以上、さらにより好ましくは500以上、特に好ましくは600以上、最も好ましくは1,000以上であることが好ましい。また、ポリアルキレンイミンEO・PO付加物の重量平均分子量は、100,000以下、より好ましくは50,000以下、最も好ましくは30,000以下であることが好ましい。
【0109】
4.水硬性材料用混和剤組成物
本発明の水硬性材料用混和剤組成物は、(ア)側鎖含有ポリアミン化合物、ならびに(イ)高性能AE減水剤、特にポリカルボン酸系高性能AE減水剤、および/または(ウ)収縮低減剤を必須の成分として含むものである。上記(ア)は、高い収縮低減性を発揮するが、分散性/流動性に劣る場合がある。このため、上記(ア)に(イ)高性能AE減水剤を組み合わせることによって、高い収縮低減性及び分散性/流動性を発揮する水硬性材料用混和剤組成物が得られる。また、(ウ)は高い収縮低減性を発揮するものの価格が高く、さらに、多量に添加する必要があり、コンクリート1m当たりのコストが高くなるという欠点があった、このため、このような価格の高い(ウ)の一部あるいは全部の代わりに、本発明に係る(ア)を使用することによって、必要とされる収縮低減性能は維持したまま、(ウ)収縮低減剤の添加量を減らし、コンクリート1mあたりのコストを有意に抑制することができる。また、上記(ア)は、収縮低減性は良好であるが、凝結遅延の程度が大きく添加量を増やして高い収縮低減性を得ることが困難な場合がある。このため、このような場合には(ア)と(ウ)他の収縮低減剤とを併用することにより、硬化遅延を抑え、かつ、高い収縮低減性を達成することが可能となる。上記利点に加えて、上記したような(ア)ならびに(イ)および/または(ウ)を適宜組合わせることによって、従来に比して高い収縮低減性及び分散性/流動性を発揮させることができるので、セメントなどの水硬性材料に添加する組成物量を従来に比して有意に減少することができる。
【0110】
本発明の水硬性材料用混和剤組成物は、材齢28日での乾燥収縮低減率が20%以上という優れた乾燥収縮低減性を示し、かつプレーンに対する凝結終結時間差が300分以内であり、迅速に凝結できるという特性を示す。
【0111】
本発明において、水硬性材料用混和剤組成物の材齢28日での乾燥収縮低減率は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、特に好ましくは30%以上である。また、本発明の水硬性材料用混和剤組成物のプレーンに対する凝結終結時間差は、好ましくは300分以内、より好ましくは240分以内、特に好ましくは120分以内である。この際、「材齢28日での乾燥収縮低減率」及び「プレーンに対する凝結終結時間差」は、それぞれ、下記実施例に記載の方法に従って測定された値とする。
【0112】
上記(ア)、(イ)及び(ウ)の組成は、所望の乾燥収縮低減性、分散性/流動性ならびに凝結終結時間差が達成できるものであれば特に制限されず、主に(ア)側鎖含有ポリアミン化合物が発揮する乾燥収縮低減性ならびに分散性/流動性、さらには所望の乾燥収縮低減性ならびに分散性/流動性を勘案して適宜選択される。本発明の組成物が上記(ア)側鎖含有ポリアミン化合物及び(イ)高性能AE減水剤を含む場合の、(ア)と(イ)の質量比は、好ましくは99〜25:1〜75、より好ましくは97〜20:3〜70、最も好ましくは95〜40:5〜60である。また、本発明の組成物が上記(ア)側鎖含有ポリアミン化合物及び(ウ)収縮低減剤を含む場合の、(ア)と(ウ)の質量比は、好ましくは5〜95:95〜5、より好ましくは10〜90:90〜10、最も好ましくは15〜85:85〜15である。さらに、本発明の組成物が上記(ア)側鎖含有ポリアミン化合物、(イ)高性能AE減水剤及び(ウ)収縮低減剤を含む場合の、(ア)、(イ)及び(ウ)の質量比は、好ましくは1〜30:4〜60:95〜10、より好ましくは1〜30:9〜60:90〜10、最も好ましくは1〜30:15〜60:84〜10である。
【0113】
本発明の水硬性材料用混和剤組成物は、水溶液の形態でしてもよいし、又は、カルシウム、マグネシウム等の二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥させたりすることにより粉体化して使用してもよい。
【0114】
本発明の水硬性材料用混和剤組成物は、各種水硬性材料、すなわち、セメントや、石膏等のセメント以外の水硬性材料に用いることができる。そして、水硬性材料と水と本発明の水硬性材料用混和剤組成物とを含有し、更に必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスターが好適である。
【0115】
上記水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も一般的であり、そのようなセメント組成物は、本発明の水硬性材料用混和剤組成物、セメント及び水を必須成分として含んでなることになる。このようなセメント組成物もまた、本発明の1つである。
【0116】
本発明のセメント組成物において使用されるセメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)が好適であり、更に、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加してもよい。また、骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。
【0117】
本発明の水硬性材料用混和剤組成物における、その1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比としては、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7とすることが好ましく、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m、使用セメント量270〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.2〜0.65が推奨され、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0118】
本発明の水硬性材料用混和剤組成物の配合割合は、所望の収縮低減性及び分散性/流動性を達成できる量であれば特に制限されない。例えば、水硬性セメントを用いるモルタルやコンクリート等の水硬性材料に添加する場合の、本発明の硬性材料用混和剤組成物の量は、水硬性材料100質量部に対して、10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2.5質量であることが好ましい。このように従来に比して少ない量で、十分な収縮低減性能及び分散性/流動性が確保できる。
【0119】
本発明の水硬性材料用混和剤組成物はまた、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形コンクリート、振動締め固めコンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり、更に、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプフロー値が50〜70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0120】
更に、本発明の水硬性材料用混和剤組成物は、以下の(1)〜(20)に例示するような他の公知のセメント添加剤(材)を含有することができる。
【0121】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;メチルセルロース、エチルセルローズ、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルローズ、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルローズエーテル類;メチルセルロース、エチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化若しくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として含有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良く、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
【0122】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
【0123】
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖等の単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又はデキストリン等のオリゴ糖、又はデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0124】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
【0125】
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
【0126】
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0127】
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0128】
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0129】
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0130】
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
【0131】
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
【0132】
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
【0133】
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
【0134】
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
【0135】
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0136】
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有してもよい、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0137】
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
【0138】
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
【0139】
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
【0140】
(20)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0141】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。尚、上記公知のセメント添加剤(材)は、複数の併用も可能である。
【実施例】
【0142】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。尚、本明細書中、特に断わりのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を表わすものとする。また、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0143】
下記実施例において、乾燥収縮低減性、凝結時間、モルタル空気量及びモルタルフロー値は、下記方法に従って評価した。
【0144】
1.乾燥収縮低減性
モルタルの混錬は以下のとおり実施した。下記表1に示されるように、下記表3及び4に示される量の側鎖含有ポリアミン化合物(表中の重合体)、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(表中のPCシリーズ)、収縮低減剤(表中のDSシリーズ)及び空気量調整剤を、それぞれ、秤量して、水で希釈したもの213.7gと太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント485.8gおよびセメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997附属書2の5.1.3に規定)1350gを、ホバート型モルタルミキサー:型番N−50(商品名、ホバート社製)を用い、JIS R 5201−1997に従いモルタルの混錬を行なった。より詳細には、練鉢に、上記下記表3及び4に示される量の側鎖含有ポリアミン化合物(表中の重合体)、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(表中のPCシリーズ)、収縮低減剤(表中のDSシリーズ)及び空気量調整剤を、それぞれ、秤量して、水で希釈した後、これにセメント485.8gを入れ、直ちに低速(自転速度140±5rpm、公転速度62±5rpm)で始動させる。始動させてから30秒後に、1350gの砂を30秒間で入れる。この混合物を、高速(自転速度285±10rpm、公転速度125±10rpm)にてさらに30秒混錬を行った後、混錬を休止する。90秒間混錬を休止して、休止の最初の15秒間に掻落を行なう。休止終了後、混合物を再度高速(自転速度285±10rpm、公転速度125±10rpm)で60秒間混錬する。混錬終了後、練鉢からモルタルを取り出し評価を行なう。
【0145】
この際、比較対照(プレーン)として、側鎖含有ポリアミン化合物、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤及び収縮低減剤を何ら添加しないものを使用した。
【0146】
【表1】

【0147】
次に、乾燥収縮低減性評価用のモルタル供試体(40×40×160mm)の作製を、JIS R 5201に従って実施した。
【0148】
また、型枠には予めシリコングリースを塗布して止水すると共に、容易に脱型できるようにした。供試体の両端には、長さ変化測定のためのゲージプラグを装着した。混錬して得られたモルタルを型枠に流し込んだ後、密閉容器に入れ20±2℃で48時間、初期養生を行なった。48時間後に脱型し、供試体表面に付着したシリコングリースをたわしを用いて水で洗浄し、続いて20℃の静水中で5日間養生(水中養生)した。
【0149】
長さ変化の測定を、JIS A 1129−3に記載の方法に従い、ダイヤルゲージ((株)西日本試験機製)を使用して実施した。静水中で5日間養生した供試体の表面の水を紙タオルでふき取った後、温度20±1℃、湿度60±5%に設定した恒温恒湿室内に3時間保管した後、測長し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20±1℃、湿度60±5%に設定した恒温恒湿室内に28日間保存し、適時測長した。この際、乾燥収縮低減率は、下記式で示されるように、基準モルタルの収縮量に対して、本発明の組成物の添加時に収縮を低減できた値とし、値が大きいほど収縮を低減できることを示す。また、10%以下では、低減効果がないものとみなす。なお、下記式において、基準モルタルとして、上記表1の評価用配合モルタル組成において、本発明の組成物の代わりに、ポゾリスNo.70(リグニンスルホン酸化合物ポリオール複合体系分散剤、ポゾリス物産製)0.25%添加して作製した供試体を用いた。
【0150】
【数1】

【0151】
2.凝結終結時間差の測定
凝結時間の測定を、温度20±2℃に設定した部屋で、ASTM C 403/C 403M−99に準じて、貫入抵抗値を測定することにより実施した。すなわち、上記1.に記載の方法と同様にして混錬して得られたモルタルを、ポリプロピレン製の容器(口径×下径×高さ=91×84×127mm)に2回に分けて詰め、注水から3または4時間目から貫入測定値の測定を開始した。注水から貫入抵抗値が28.0N/mmになるまでの経過時間を凝結終結時間(分)とし、プレーン配合での凝結終結時間(分)との差を求め、この差をプレーンに対する凝結終結時間差(分)とした。
【0152】
3.モルタル空気量の測定
モルタル空気量の測定は500mlメスシリンダーを用い、JIS A 1174(まだ固まらないポリマーセメントモルタルの単位容積質量試験方法及び空気量の質量による試験方法(質量方法))に準拠して実施した。
【0153】
また、モルタルの空気量が4.5±2%になるように、必要に応じて消泡剤またはAE剤を添加した。なお、使用したAE剤および消泡剤としては、それぞれ、マイクロエア775S及びマイクロエア404(それぞれ、ポゾリス物産社製)を使用した。
【0154】
4.モルタルフロー値の測定
モルタルフロー値は、JIS R 5201−1997に記載の方法に準拠して、測定した。
【0155】
製造例1:重合体(1)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、エポミンSP−006(分子量600のポリエチレンイミン、(株)日本触媒製) 52.77部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換して、窒素雰囲気下で90℃まで加熱した。次に、炭素原子数12〜14のα−オレフィンエポキシドAOE X24(ダイセル化学工業(株)製、以下「AOE X24」と称する)61.0部を2時間かけて滴下した。滴下終了から1.5時間、90℃で熟成した後、45℃に温度を下げ、アクリル酸ブチル(和光純薬製)56.3部を0.5時間で滴下し、さらに45℃で0.5時間熟成した後、室温まで冷却し、酢酸で中和し、重合体の濃度が16.9質量%になるように脱イオン水を加えて、側鎖含有ポリアミン化合物としての重合体(1)の水溶液を得た。
【0156】
製造例2:重合体(2)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、エポミンSP−006 46.09部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換して、窒素雰囲気下で90℃まで加熱した。次に、AOE X24 53.2部を2時間かけて滴下した。滴下終了から1.5時間、90℃で熟成した後、50℃に温度を下げ、アクリル酸2−エチルヘキシル(和光純薬製)70.7部を0.5時間で滴下し、さらに50℃で0.5時間熟成した後、室温まで冷却し、酢酸で中和し、重合体の濃度が12.4重量%になるように脱イオン水を加えて、側鎖含有ポリアミン化合物としての重合体(2)の水溶液を得た。
【0157】
製造例3:重合体(3)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、エポミンSP−006 40.91部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換して、窒素雰囲気下で90℃まで加熱した。次に、AOE X24 47.3部を2時間かけて滴下した。滴下終了から1.5時間、90℃で熟成した後、50℃に温度を下げ、アクリル酸ラウリル(和光純薬製)81.8部を0.5時間で滴下し、さらに50℃で0.5時間熟成した後、室温まで冷却し、酢酸で中和し、重合体の濃度が3.7重量%になるように脱イオン水を加えて、側鎖含有ポリアミン化合物としての重合体(3)の水溶液を得た。
【0158】
製造例4:重合体(4)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、エポミンSP−006 54.74部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換して、窒素雰囲気下で90℃まで加熱した。次に、AOE X24 63.2部を2時間かけて滴下した。滴下終了から1.5時間、90℃で熟成した後、50℃に温度を下げ、アクリル酸2−エチルヘキシル(和光純薬製)52.0部を0.5時間で滴下し、さらに50℃で0.5時間熟成した後、室温まで冷却し、酢酸で中和し、重合体の濃度が11.7重量%になるように脱イオン水を加えて、側鎖含有ポリアミン化合物としての重合体(4)の水溶液を得た。
【0159】
製造例5:重合体(5)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、エポミンSP−018(分子量1,800のポリエチレンイミン、(株)日本触媒製) 58.85部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換して、窒素雰囲気下で90℃まで加熱した。次に、AOE X24 97.1部を2時間かけて滴下した。滴下終了から1.5時間、90℃で熟成した後、50℃に温度を下げ、アクリル酸メチル(和光純薬製)14.1部を0.5時間で滴下し、さらに50℃で0.5時間熟成した後、室温まで冷却し、酢酸で中和し、重合体の濃度が13.6重量%になるように脱イオン水を加えて、側鎖含有ポリアミン化合物としての重合体(5)の水溶液を得た。
【0160】
製造例6:重合体(6)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、エポミンSP−018 53.51部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換して、窒素雰囲気下で90℃まで加熱した。次に、AOE X24 61.8部を2時間かけて滴下した。滴下終了から1.5時間、90℃で熟成した後、50℃に温度を下げ、アクリル酸2−エチルヘキシル(和光純薬製)54.7部を0.5時間で滴下し、さらに50℃で0.5時間熟成した後、室温まで冷却し、酢酸で中和し、重合体の濃度が9.0重量%になるように脱イオン水を加えて、側鎖含有ポリアミン化合物としての重合体(6)の水溶液を得た。
【0161】
製造例7:ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(PC−1)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えた5リットル容のガラス製反応容器に、脱イオン水1698部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次にメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数25)1668部、メタクリル酸332部および脱イオン水500部を混合し、さらに連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸16.7部を均一に混合することにより、単量体混合物水溶液を調製した。この単量体混合物水溶液及び10%過硫酸アンモニウム水溶液184部をそれぞれ4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに10%過硫酸アンモニウム水溶液46部を1時間で滴下した、その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。その後、重合反応温度以下の温度で30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量24,000のポリカルボン酸系共重合体(PC−1)を得た。
【0162】
製造例8:ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(PC−2)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えた1リットル容のガラス製反応容器に、脱イオン水5.1部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加してなるポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテル単量体(以下、IPN−50と称す)の80%水溶液66.9部および、過酸化水素水の30%水溶液0.84部を仕込み、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。次にIPN−50の80%溶液267.6部、脱イオン水34.7部およびラウリルメルカプタン2.5部の混合液、アクリル酸36.2部および脱イオン水9.0部の混合液を3時間で滴下、同時にL−アスコルビン酸1.1部および脱イオン水19.9部の混合液を3.5時間かけて滴下した。滴下後、引き続き58℃で1.0時間熟成し室温に冷却し、30%の水酸化ナトリウム水溶液でpH6.7に調整して、重量平均分子量30,200のポリカルボン酸系共重合体(PC−2)を得た。
【0163】
製造例9:収縮低減剤(DS−1:2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド(EO)2mol、プロピレンオキサイド(PO)10mol付加体)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたステンレス製の圧力容器に、2−エチルヘキサノール156.2g、水酸化カリウム0.57gを仕込み、窒素加圧と排気とを繰り返すことによって、容器内の窒素置換を十分行なった。容器内の温度を150±5℃に設定した後、圧力を1.0〜8.0×10−1MPaとして、安全圧下でエチレンオキシド105.73gを導入した。エチレンオキシド添加終了後、さらに1時間上記反応温度を維持した。次に、上記温度を125℃に下げ、圧力を8.0×10−1MPa以下として、安全圧下でプロピレンオキシド696.9gを導入した。この間の温度は、125±5℃に維持した。プロピレンオキシド添加終了後、さらに15時間上記反応温度を維持し、プロピレンオキシドの付加反応を完結させた。その後、揮発分を除去して、2−エチルヘキサノールのエチレンオキシド(EO)2mol、プロピレンオキサイド(PO)10mol付加体(DS−1)を得た。
【0164】
製造例10:収縮低減剤(DS−2:メタノールのEO 1mol、PO 4mol付加体)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたステンレス製の圧力容器に、メタノール(和光純薬工業社製)250.0部及び水酸化カリウム0.45部を仕込み、攪拌下で窒素加圧と排気とを繰り返すことによって、容器内の窒素置換を十分行なった。容器内を100±5℃の温度になるように加熱した。次に、温度を150±5℃とし、圧力を3.0〜8.0×10−1MPaとして、安全圧下でエチレンオキシド344.1部を導入した。エチレンオキシド添加終了後、さらに1時間上記反応温度を維持した。次に、上記温度を125℃に下げ、圧力を8.0×10−1MPa以下として、安全圧下でプロピレンオキシド1814.9部を導入した。この間の温度は、125±5℃に維持した。プロピレンオキシド添加終了後、さらに10時間上記反応温度を維持し、プロピレンオキシドの付加反応を完結させた。その後、揮発分を除去して、メタノールのエチレンオキシド(EO)1mol、プロピレンオキサイド(PO)4mol付加体(DS−2)を得た。なお、本実施例において、「部」は、「質量部」を表わす。
【0165】
製造例11:収縮低減剤(DS−3:C12の二級アルコールのEO 9mol、PO 15mol付加体)の合成
株式会社日本触媒製のソフタノールEP90150を、12の二級アルコールのEO 9mol、PO 15mol付加体(DS−3)として使用した。
【0166】
製造例12:収縮低減剤(DS−4:PEI(分子量600)のEO 10mol、PO 12mol、EO 10mol付加体)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたステンレス製の圧力容器に、市販のポリエチレンイミン(数平均分子量:600)37.2部及び水素化ナトリウム0.1部を仕込み、攪拌下で窒素加圧と排気とを繰り返すことによって、容器内の窒素置換を十分行なった。容器内を150±5℃の温度になるように加熱した。次に、容器内の温度を150±5℃に設定した後、圧力を3.0〜8.0×10−1MPaとして、安全圧下でエチレンオキシド380.9部を導入した。エチレンオキシド添加終了後、さらに1時間上記反応温度を維持した。次に、上記温度を125℃に下げ、圧力を8.0×10−1MPa以下として、安全圧下でプロピレンオキシド602.6部を導入した。この間の温度は、125±5℃に維持した。プロピレンオキシド添加終了後、さらに15時間上記反応温度を維持し、プロピレンオキシドの付加反応を完結させた。その後、容器内の温度を150±5℃に設定した後、圧力を8.0×10−1MPa以下として、安全圧下でエチレンオキシド380.9部を導入した。エチレンオキシド添加終了後、さらに1時間上記反応温度を維持した。揮発分を除去して、PEIのエチレンオキシド(EO)10mol、プロピレンオキサイド(PO)12mol、エチレンオキシド(EO)10mol付加体(DS−4)を得た。なお、本実施例において、「部」は、「質量部」を表わす。
【0167】

実施例1〜11
製造例1〜6に記載の方法と同様に製造された重合体(1)〜(6)について、以下のようにして、乾燥収縮低減効果及びモルタルフロー値を評価し、その結果を下記表3及び4に示す。また、重合体(1)〜(6)の単量体組成を表2に示す。なお、下記表2において、化合物(II)の添加量は、ポリアミン化合物(I)の活性アミン水素1個あたりの化合物(II)のモル数で表される。
【0168】
【表2】

【0169】
【表3】

【0170】
【表4】

【0171】
上記表3から、本発明の組成物は、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤単独で使用する場合に比して、凝結終結時間差は長く硬化特性は劣るものの、有意に高い乾燥収縮低減性を発揮していることが示される。特にポリカルボン酸系高性能AE減水剤PC−1と重合体(5)とを組み合わせた実施例4の組成物は、凝結終結時間差が230分とやや高いものの、32.0%という高い乾燥収縮低減性を発揮していることから、このような組成物は遅延型の混和剤組成物に好適に使用できると考えられる。
【0172】
また、上記表4から、本発明の組成物は、収縮低減剤単独で使用する場合に比して、乾燥収縮低減性はやや劣るものの、凝結終結時間差が半分以下と非常に短縮することが可能であることが示される。特に実施例6と比較例3とを比較すると、同等の乾燥収縮低減性を達成するのに、実施例6では0.80%であるのに対して比較例3では2.00%と2.5倍の添加量を必要としている。これから、本発明の組成物であれば、所望の乾燥収縮低減性を得るのに必要な量を有意に減らすことができ、経済的に非常に好ましいことと考察される。
【0173】
【表5】

【0174】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖(1)として、炭素原子数4〜30の炭化水素基を必須成分として有するポリアミン化合物、ならびに高性能AE減水剤および/または収縮低減剤を含む、水硬性材料用混和剤組成物。
【請求項2】
該ポリアミン化合物は、側鎖(2)として、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基;−COOZ(ただし、Zは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基または−(RO)−Rを表し、この際、ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し、nは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜500の数であり、Rは、水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を表す);及び−SOW(ただし、Wは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す)からなる群より選択される少なくとも一種の基をさらに有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該ポリアミン化合物は、側鎖(3)として、−COOZ’(ただし、Z’は、1〜3の炭化水素基を表す)をさらに有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
該高性能AE減水剤は、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
該ポリカルボン酸系高性能AE減水剤は、下記式(1):
【化1】

ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し;sは、0〜2の整数であり;ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し;uは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり;およびRは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す、
で示される構成単位(I)及び下記式(3):
【化2】

ただし、式中、R14、R15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または−(CHCOOM’基を表し、この際、M’は、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、およびqは、0〜2の整数であり;ならびにMは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基を表し、COOM及びCOOM’が2個以上存在する場合には、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよい、
で示される構成単位(III)を必須の構成単位として含むポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A);および下記式(2):
【化3】

ただし、式中、R、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し;xは、0〜2の整数であり;R12Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し;yは、オキシアルキレン基(R12O)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり;およびR13は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す、
で示される構成単位(II)及び上記式(3)で示される構成単位(III)を必須の構成単位として含むポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
該ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(A)は、下記式(4):
【化4】

ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し;sは、0〜2の整数であり;ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し;uは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり;およびRは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す、
で示されるオキシアルキレン基含有単量体(a)及び下記式(6):
【化5】

ただし、式中、R14、R15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または−(CHCOOM’基を表し、この際、M’は、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、およびqは、0〜2の整数であり;ならびにMは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基を表し、COOM及びCOOM’が2個以上存在する場合には、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよい、
で示される不飽和カルボン酸系単量体(c)を、炭素数3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタンを連鎖移動剤として用いて共重合することによって得られる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
該ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(B)は、下記式(5):
【化6】

ただし、式中、R、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し;xは、0〜2の整数であり;R12Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し;yは、オキシアルキレン基(R12O)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり;およびR13は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す、
で示されるオキシアルキレン基含有単量体(b)及び下記式(6):
【化7】

ただし、式中、R14、R15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または−(CHCOOM’基を表し、この際、M’は、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、およびqは、0〜2の整数であり;ならびにMは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基を表し、COOM及びCOOM’が2個以上存在する場合には、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよい、
で示される不飽和カルボン酸系単量体(c)を、炭素数3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタンを連鎖移動剤として用いて共重合することによって得られる、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
該収縮低減剤は、下記式(7):
【化8】

ただし、式中、R17及びR19は、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し;R18Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し;mは、オキシアルキレン基(R18O)の平均付加モル数を表し、2以上の数である、
で示される化合物、ならびにポリアルキレンイミンエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
材齢28日での乾燥収縮低減率が20%以上であり、プレーンに対する凝結終結時間差が300分以内である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。

【公開番号】特開2007−76971(P2007−76971A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268375(P2005−268375)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】