説明

水硬性組成物用分散保持剤

【課題】流動保持性に優れた水硬性組成物用の分散保持剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される特定の単量体1と一般式(2)で表される特定の単量体2と一般式(3)で表される特定の単量体3とを重合して得られる重量平均分子量が30000〜60000の共重合体からなる水硬性組成物用分散保持剤であって、該共重合体の該共重合体の構成単量体中、単量体1が25〜78重量%、単量体3が0〜18重量%である、水硬性組成物用分散保持剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用分散保持剤に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート等の水硬性組成物に対して、流動性を付与するためにナフタレン系、メラミン系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系等の混和剤(高性能減水剤等)が用いられている。減水剤等の混和剤については、水硬性組成物に対する流動性の付与、流動性の保持性(流動保持性)、硬化遅延の防止など、種々の性能が求められ、ポリカルボン酸系混和剤についてもこうした観点から改善が提案されている。
【0003】
特許文献1には、特定のエチレン性不飽和単量体単位とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単位とを構造単位として有する共重合体からなるコンクリート混和剤を、高性能減水剤と併用することが開示されている。また、特許文献2には、ポリオキシアルキレン基を有するエチレン系単量体、不飽和有機酸系単量体、及びアルカリ性水溶液中において加水分解されうる単量体の3元共重合体からなるセメント混和剤が、スランプ保持性と流動性に優れることが開示されている。特許文献3にはポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、モノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及び不飽和結合を有するカルボン酸系単量体の共重合体からなるセメント分散助剤が作業性、流動性及び強度発現性に優れる事が開示されている。
【特許文献1】特開平10−81549号公報
【特許文献2】特開2005−330129号公報
【特許文献3】特開2003−286057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3には、水硬性組成物の流動性や粘性を維持する技術が開示されているが、その流動保持性能は、昨今の材料事情の変化に対して更なる向上が望まれている。
【0005】
本発明の課題は、優れた流動保持性を発揮する水硬性組成物用の分散保持剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一般式(1)で表される単量体1と一般式(2)で表される単量体2と一般式(3)で表される単量体3とを重合して得られる重量平均分子量が30000〜60000の共重合体からなる水硬性組成物用分散保持剤であって、
単量体2の少なくとも一部が、[一般式(2)中のR5に対応するアルコール化合物R5−OHのlogP値/単量体(2)の分子量Mw]<−0.003の関係を満たし、
該共重合体の該共重合体の構成単量体中、単量体1が25〜78重量%、単量体3が0〜18重量%である、水硬性組成物用分散保持剤に関する。
【0007】
【化4】

【0008】
〔式中、R1〜R3は、それぞれ水素原子又はメチル基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、20〜30の数を表し、R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、qは0〜2の整数、pは0又は1を表す。〕
【0009】
【化5】

【0010】
〔式中、R5は、炭素数1〜4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基である。〕
【0011】
【化6】

【0012】
〔式中、R6〜R8は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の数を表す。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基を表す。〕
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水硬性組成物に対する優れた流動保持性を発揮する水硬性組成物用の分散保持剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
前記特許文献1、2では、初期流動性と流動保持性の両立を目指している。特許文献2は、重合方法に違いによる保持性能の差を検討している。特許文献2には、重合体の重量平均分子量は5000〜100000の一般開示があるが、実施例での具体的開示は19000〜28000に留まっている。
【0015】
また特許文献3では、作業性、流動性及び強度発現性を目指しており、重量平均分子量が30000を超えると、凝集作用を示すためコンクリートの間隙通過性向上効果は発現されない、と記載されている。
【0016】
本発明では、特定の単量体1〜3を特定比率で共重合した特定範囲の分子量を有する共重合体を用いることで、従来の技術では達成できなかった流動保持性を発揮する分散保持剤が得られる。
【0017】
<単量体1>
単量体1は、ポリアルキレングリコールモノエステル系単量体及びポリアルキレングリコールアルキルエーテル系単量体等の不飽和ポリアルキレングリコール系単量体であり、単量体1において、一般式(1)中のAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が挙げられ、中でもオキシエチレン基が好ましい。nはAOの平均付加モル数であり、20〜30の数を表し、初期分散性・流動保持性の汎用性の観点から、好ましくは20〜28、より好ましくは21〜26、さらに好ましくは22〜25、さらにより好ましくは22〜24である。R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、流動保持性の観点から好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0018】
単量体1としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステル化物や、アクリル酸又はメタクリル酸へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシドの付加物、前記片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アルケニルアルコールとのエーテル化物、及びアルケニルアルコールへの炭素数2〜4のアルキレンオキシドの付加物等を用いることができる。具体的には、ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、ω−メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、3−メチル−3−ブテン−1−オールのポリオキシエチレンモノアリルエーテル等を挙げることができる。流動保持性の観点から、片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステル化物が好ましく、好ましくはω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールモノアクリレートが挙げられ、ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートがより好ましい。
【0019】
<単量体2>
単量体2は、アクリル酸エステル系単量体であり、構造上、アクリル酸とR5−OHで表されるアルコール化合物のエステルとして捉えることができ、R5は、炭素数1〜4、好ましくは2〜3のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基である。ヘテロ原子は酸素原子、窒素原子等である。
【0020】
本発明では、単量体2の少なくとも一部として、一般式(2)で表される単量体のうち特定の単量体が用いられる。すなわち、単量体2の少なくとも一部として、一般式(2)中のR5が、一般式(2)中のR5に対応するR5−OHのlogP値と、単量体2の分子量Mwとが、[R5−OHのlogP値/単量体(2)の分子量Mw]<−0.003となる化合物(以下、単量体2−1という)が用いられる。また、単量体2−1以外、即ち単量体2のうち[R5−OHのlogP値/単量体(2)の分子量Mw]≧−0.003となる化合物を、単量体2−2という。単量体2−1の関係を満たすR5−OHとしてエチレングリコール(logP値:−1.369)、グリセリン(logP値:−1.538)等が挙げられる。すなわち、R5として、ヒドロキシエチル基及びグルセロール基が挙げられる。R5としてこれらの基を有する単量体を、単量体2の少なくとも一部として用いることが好ましい。単量体2−1の比率は、水硬性粉末の種類に対する汎用性、さらには流動保持性及び粘性の観点から、単量体2中で30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、実質100モル%がさらにより好ましい。
【0021】
単量体2−1としては、メチルアクリレート(R5−OHのlogP値(以下、単にlogPともいう):−0.764、単量体(2)の分子量Mw(以下、単にMwともいう):86.1、logP/Mw:−0.0089)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(logP:−1.369、Mw:116.1、logP/Mw:−0.0118)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(logP:−1.062、Mw:130.2、logP/Mw:−0.0081)、3−ヒドロキシプロピルアクリレート(logP:−1.037、Mw:130.2、logP/Mw:−0.0080)、メトキシエチルアクリレート(logP:−0.6064、Mw:130.2、logP/Mw:−0.0047)、n−ブチルアクリレート(logP:−1.164、Mw:144.2、logP/Mw:−0.0081)等が挙げられる。
【0022】
単量体2−1としては、流動性保持の観点から2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。また、単量体2−2としては、エチルアクリレート(logP:−0.235、Mw:100.1、logP/Mw:−0.0023)等が挙げられる。単量体2−1及び単量体2−2は、それぞれ二種以上の単量体を用いてもよい。
【0023】
[単量体3]
単量体3は、一般式(3)において、R6〜R8は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよい。その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の数を表す。R6は水素原子が好ましく、R7はメチル基が好ましい。R8は水素原子又は(CH2)sCOOM2が好ましい。
【0024】
1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基である。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属が好ましい。
【0025】
具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、又はこれらの無水物もしくは塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはエステルが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、更に好ましくは(メタ)アクリル酸又はこれらのアルカリ金属塩である。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の意味である(以下同様)。
【0026】
本発明の分散保持剤となる共重合体においては、単量体2−1を導入することで、水硬性組成物への添加初期から経時に渡り水硬性組成物の流動性を維持できる。これは、水硬性組成物への添加前には単量体2−1はアクリル酸のエステル構造を有するため、添加後に経時的にエステル結合の加水分解が進行し、カルボン酸型又はカルボン酸塩型になり、前記共重合体が水硬性粉体表面に徐々に吸着し、水硬性粉体の分散を維持することにより、水硬性粉体の水和による粘度上昇を相殺していると推察される。類似する構造であっても、アクリル酸より加水分解しにくいメタクリル酸のエステルやそのアルキレンオキサイド付加物では単量体2−1のような効果は得られない。また、単量体2−2でも単量体2−1のような効果は得られない。この理由として単量体2−2の加水分解性が単量体2−1よりも劣ると推定される。
【0027】
また、本発明の分散保持剤となる共重合体においては、単量体3を導入する事で、初期に所定の吸着量を示し、初期流動性を示す事ができる。但し、単量体3の含有量は流動保持性に影響を及ぼすため、本発明では該共重合体の該共重合体の構成単量体中、20重量%を上限として用いる。更に、単量体2の含有量(重量%)よりも少ないことが好ましい。
【0028】
また、単量体2−1については、単量体2−1の分子量及び単量体2−1の置換基R5と水酸基OHにより構成されるR5−OHで表される化合物のlogP(水/オクタノール分配係数)(以下、logPは特記しない限り当該化合物のlogPをいう)と、水硬性粉体の分散性の発現速度とに、相関があることを見出した。すなわち、アクリル酸のエステル置換基によって加水分解性が異なり、加水分解性は、水分子のエステルへの求核とアルコールの脱離のステップがあり、それぞれ立体障害の大きさとアルコールの脱離のしやすさが寄与すると考えられた。単量体の分子量が大きい(立体障害が大きい)ほど加水分解率が小さくなり、エステルを構成するアルコール化合物の加水分解基の親水性(logP)の値が小さいほど加水分解率が大きくなる。そこで、logPをアクリル酸エステルの分子量Mwで規格化し、導入した基の効率性(カルボキシル基の生成率)の指標とした。したがって、logP/分子量Mwの値が小さいほど、単量体2−1の加水分解性が大きい。本発明ではこの値が−0.003以下であり、−0.009以下が好ましく、−0.010以下がより好ましく、−0.011以下がさらに好ましい。logPは、CS Chem Draw Ultra(Ver.8.0)(頒布元 ケンブリッジソフト)のソフトウエアを用いてClogP値として得ることができ、例えばWindows(登録商標) XPの稼動するパーソナルコンピュータで前記ソフトウエアを実行できる。
【0029】
従来は、ポリカルボン酸系重合体のAO平均付加モル数がある程度大きくないと立体反発による流動性の寄与がなく、加水分解による吸着基の増加では、経時での流動性保持効果が小さいと考えられていた(特許文献2、段落0010)。またAO平均付加モル数が大きいと、経時的に粘性が増大してしまう傾向にある。しかし、本発明者は共重合体の構造と流動性や保持性能とを詳細に検討した結果、立体反発ユニット(AO平均付加ユニット)、セメント等と混練した際の高アルカリ環境下で時間と共に吸着基を生じる特定のユニット及び初期の吸着ユニット(カルボン酸ユニット)のバランスを調整し、尚且つ特定のアルキレンオキサイド平均付加ユニットの範囲において分子量を最適化する事で、流動保持性に優れる分散保持剤を完成した。
【0030】
<共重合体>
本発明の共重合体は、該共重合体の構成単量体中、単量体1が25〜78重量%であり、単量体3が0〜18重量%である。この比率は、単量体の仕込み時の比率であってもよい(以下、単量体についての他の比率も同様)。
【0031】
本発明に係る共重合体の構成単量体中、単量体1は、好ましくは28〜78重量%であり、更に好ましくは40〜70重量%である。
【0032】
本発明の共重合体は、nの異なる単量体1を2種以上併用することができる。その際は上記単量体1のnの値は、nの異なる単量体1の平均値(モル分率による)とする(以下同様)。
【0033】
本発明に係る共重合体の構成単量体中、単量体2は、好ましくは10〜70重量%であり、より好ましくは15〜60重量%、更に好ましくは25〜40重量%である。
【0034】
本発明に係る共重合体の構成単量体中、単量体3は、好ましくは0〜15重量%であり、更に好ましくは5〜15重量%、より好ましくは6〜15重量%である。
【0035】
共重合体の全構成単量体中の単量体1と単量体2及び単量体3の合計は、流動保持性の観点から90重量%以上、更に95重量%以上、より更に98重量%以上が好ましい。
【0036】
また、共重合体の全構成単量体中の単量体2と単量体3の合計は、流動保持性の観点から全構成単量体中、好ましくは22〜72重量%であり、更に好ましくは30〜65重量%である。
【0037】
また、更に、流動保持性の観点から単量体1と単量体2と単量体3の合計重量中、単量体2の重量>単量体3の重量であること、すなわち該共重合体の構成単量体中、単量体2の重量比率(X)が単量体3の重量比率(Y)よりも大きいこと〔(X)>(Y)であること〕が好ましい。具体的には、これらの重量比が(X)/(Y)≧1.0、更に(X)/(Y)≧1.2、より更に(X)/(Y)≧1.5であることが好ましい。
【0038】
単量体1、単量体2及び単量体3の重量比(単量体1/単量体2/単量体3)は流動保持性の観点から、好ましくは25〜78/10〜70/0〜18、より好ましくは28〜78/15〜60/0〜15、さらに好ましくは35〜75/20〜50/0〜15、よりさらに好ましくは40〜70/25〜40/5〜15である。いずれも場合も、上記の通り、(X)>(Y)であることが好ましい。なお、単量体1/単量体2/単量体3の表現では、例えば25〜78/10〜70/0〜18は、単量体1が25〜78、単量体2が10〜70、単量体3が0〜18であることを意味する。
【0039】
また、本発明に係る共重合体を製造するにあたり、単量体1〜3と共重合可能な単量体4を共重合しても良い。単量体4は、初期流動性や流動保持性能を抑制する観点から、共重合体の全構成単量体中5重量%以下であり、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下である。
【0040】
なお、単量体4としては、メタクリル酸リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステル、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステル、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸エステル、ポリアルキレレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル等のリン酸エステル、を挙げることができ、またこれらの何れか1種以上のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩や無水マレイン酸などの無水化合物であっても良い。
【0041】
その他の単量体4として、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、これら何れかのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩や、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メタスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−エタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、スチレン、スチレンスルホン酸などの強酸の酸基又はそれらの中和基を有する単量体が挙げられる。これらの単量体を例えば共重合体の分子量の調整等のために共重合してもよい。これらの強酸の酸基は水硬性組成物中で安定な塩として存在しセメント等の水硬性粉体への吸着基としては機能しない。
【0042】
本発明における共重合体は公知の方法で製造することができる。例えば、特開昭62−119147号公報、特開昭62−78137号公報等に記載された溶液重合法が挙げられる。即ち、適当な溶媒中で、上記単量体1、単量体2及び単量体3を上記の割合で組み合わせて重合させることにより製造される。すなわち、共重合体の重合の際に用いる全単量体中、単量体1の比率を25〜85重量%として、好ましくは更に、単量体1の比率と単量体2の比率と単量体3の比率の合計を90重量%以上として重合させる。
【0043】
溶液重合法において用いる溶剤としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。取り扱いと反応設備から考慮すると、水及びメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0044】
水系の重合開始剤としては、過硫酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩あるいは過酸化水素、2、2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等の水溶性アゾ化合物が使用される。水系以外の溶剤を用いる溶液重合にはベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等の脂肪族アゾ化合物等が用いられる。
【0045】
連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられ、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
【0046】
チオール系連鎖移動剤としては、−SH基を有するものが好ましく、特に一般式HS−R−Eg(ただし、式中Rは炭素原子数1〜4の炭化水素由来の基を表し、Eは−OH、−COOM、−COOR’または−SO3M基を表し、Mは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表す。)で表されるものが好ましく、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、単量体1〜3を含む共重合反応での連鎖移動効果の観点から、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールが好ましく、メルカプトプロピオン酸が更に好ましい。これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0047】
ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤としては、四塩化炭素、四臭化炭素などが挙げられる。
【0048】
その他の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、2−アミノプロパン−1−オールなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0049】
本発明に係る共重合体の製造方法の一例を示す。反応容器に所定量の水を仕込み、窒素等の不活性気体で雰囲気を置換し昇温する。予め単量体1、単量体2、単量体3、連鎖移動剤を水に混合溶解したものと、重合開始剤を水に溶解したものとを用意し、0.5〜5時間かけて反応容器に滴下する。その際、各単量体、連鎖移動剤及び重合開始剤を別々に滴下してもよく、また、単量体の混合溶液を予め反応容器に仕込み、重合開始剤のみを滴下することも可能である。すなわち、連鎖移動剤、重合開始剤、その他の添加剤は、単量体溶液とは別に添加剤溶液として添加しても良いし、単量体溶液に配合して添加してもよいが、重合の安定性の観点からは、単量体溶液とは別に添加剤溶液として反応系に供給することが好ましい。また、好ましくは所定時間の熟成を行う。なお、重合開始剤は、全量を単量体と同時に滴下しても良いし、分割して添加しても良いが、分割して添加することが未反応単量体の低減の点では好ましい。例えば、最終的に使用する重合開始剤の全量中、1/2〜2/3の重合開始剤を単量体と同時に添加し、残部を単量体滴下終了後1〜2時間熟成した後、添加することが好ましい。必要に応じ、熟成終了後に更にアルカリ剤(水酸化ナトリウム等)で中和し、本発明に係る共重合体を得る。
【0050】
また、本発明に係る共重合体は、単量体1を含有する液Aと、単量体2を含有する液Bと、単量体3を含有する液Cとを反応系に導入して共重合反応に用いることもでき、液A、液B及び液Cはそれぞれ別々或いは一部を別に反応系に導入することができる。また、反応系に導入される液A、液B及び液Cの全量のそれぞれ90重量%以上を並行して反応系に導入することが好ましい。液A、液B及び液Cの反応系への導入方法として、具体的には滴下及び噴霧が挙げられ、液A、液B及び液Cの粘度の観点から滴下が好ましい。液Aは凝固点の観点から水を含む溶媒とすることが好ましく、液Bは加水分解の観点から水を含まない溶媒とすることが好ましい。液A、液B及び液Cそれぞれ単独の液又はこれらの2種の混合液と残りの1種の液を別のノズルから滴下する際には、各液のノズル(導入口)の距離は任意に設定できる。また、滴下は気中及び液中いずれも可能であるが、液を全て導入する観点から気中滴下が好ましい。ノズル径は液滴の表面積を大きくする点及び溶解性の点から小さい方が好ましい。反応系に導入される液A、液B及び液Cの全量のそれぞれ90重量%以上を並行して反応系に導入することで、各単量体がランダムに導入された共重合体が得られる。液A、液B及び液Cの合計量の90重量%以上とは、言い換えると、反応系に単独で導入される液A、液B及び液Cの量が、反応系に導入される液A、液B及び液Cの全量のそれぞれ10重量%以下であることである。
【0051】
また、本発明に係る共重合体の製造にあたっては、材料、温度及び配合に対する汎用性の観点から、重合中に単量体1と単量体2又は単量体1と単量体3の共重合モル比を一回以上変化させて、重合させることが好ましい。
【0052】
本発明における共重合体の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレングリコール換算)は、30000〜60000の範囲であり、350000〜55000が好ましく、さらに好ましくは40000〜50000である。
【0053】
本発明の共重合体の重量平均分子量Mwは、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたものである。
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
【0054】
本発明の水硬性組成物用分散保持剤は、該共重合体を含有する水溶液として用いることができる。
【0055】
<水硬性組成物用混和剤>
本発明の水硬性組成物用分散保持剤は、他の共重合体、例えば、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基及びそれらの中和基から選ばれる少なくとも1種を有する重合体A(以下、重合体Aという)と組み合わせて水硬性組成物用混和剤とすることができる。すなわち、本発明の水硬性組成物用分散保持剤と、重合体Aとを含有する水硬性組成物用混和剤(以下、本発明の水硬性組成物用混和剤ということもある)を得ることができる。一般に、重合体Aは水硬性組成物用の混和剤(分散剤等)として知られている重合体である。本発明の水硬性組成物用混和剤は、本発明の分散保持剤と重合体Aとを含有する水溶液として用いることができる。
【0056】
重合体Aのうち、カルボン酸基又はその中和基を有するものとしては、(ポリ)オキシアルキレン基とカルボン酸基を有する重合体が挙げられ、具体的には、特開平7−223852号公報に示される炭素数2〜3のオキシアルキレン基110〜300モルを導入したポリアルキレングリコールモノエステル系単量体とアクリル酸系重合体、特表2004−519406号公報の重合体A、Bに示されるような重合体や、特開2004−210587号公報や特開2004−210589号公報に記載されているアミド系マクロモノマーを含むような重合体、特開2003−128738号公報や特開2006−525219号公報に記載されているポリエチレンイミンを含有する重合体が挙げられる。
【0057】
カルボン酸基又はその中和基を有する重合体Aの市販品としては、(1)BASFポゾリス(株)のレオビルドSP8LS/8LSR、SP8LS、SP8LSR、SP8N、SP8S、SP8R、SP8SE/8RE、SP8SE、SP8RE、SP8SBシリーズ(Sタイプ、Mタイプ、Lタイプ、LLタイプ)、SP8HE、SP8HR、SP8SV/8RV、SP8RV、SP8HU、SP9N、SP9R、SP9HS、レオビルド8000シリーズ、(2)日本シーカ(株)のシーカメント1100NT、シーカメント1100NTR、シーカメント2300、(3)(株)フローリックのフローリックSF500S(500SB)、フローリックSF500H、フローリックSF500R(500RB)、(4)竹本油脂(株)のチューポールHP-8、HP-11、HP-8R、HP-11R、SSP-104、NV-G1、NV-G5、(5)(株)日本触媒のアクアロックFC600S、アクアロックFC900、(6)日本油脂(株)のマリアリムAKM、マリアリムEKMなどが挙げられるが、この限りではない。
【0058】
また、重合体Aのうち、リン酸基又はその中和基を有するものとしては、ポリオキシアルキレン基とリン酸基を有する重合体である。例えば、特開2006−052381号公報記載の重合体が挙げられる。具体的には、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を平均3〜200モル導入したポリアルキレングリコールモノエステル系単量体と、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルと、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとの共重合体等が挙げられる。
【0059】
重合体Aのうち、スルホン酸基又はその中和基を有するものとしては、ナフタレン系重合体(例えばマイティ150:花王(株)製)、メラミン系重合体(例えばマイティ150V−2:花王(株)製)、アミノスルホン酸系重合体(例えばパリックFP:藤沢化学(株)製)が挙げられる。
【0060】
本発明の水硬性組成物用混和剤において、本発明の分散保持剤の含有量(固形分換算)は1〜99重量%、更に2〜80重量%、より更に5〜70重量%が好ましい。また、重合体Aの含有量(固形分換算)は1〜99重量%、更に20〜98重量%、より更に30〜95重量%が好ましい。また分散保持剤は二種以上用いることもできるが、合計含有量が上記範囲であることが好ましい。重合体Aは二種以上を用いる事が出来るが、合計含有量が上記範囲であることが好ましい。水硬性組成物用混和剤中の分散保持剤と重合体Aの重量比率(分散保持剤/重合体A(固形分換算))は、流動性と流動保持性の観点から5/95〜95/5が好ましく、10/90〜90/10が好ましく、15/85〜85/15がより好ましく、更には20/80〜80/20が好ましい。
【0061】
また、本発明の水硬性組成物用混和剤は、重合体A以外に、例えば高性能減水剤、AE剤、AE減水剤、流動化剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、増粘剤、防水剤、防泡剤や珪砂、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等の公知の添加剤(材)と併用することができる。
【0062】
<水硬性組成物>
本発明の水硬性組成物用分散保持剤と重合体Aとを用いて、好ましくは本発明の水硬性組成物用混和剤を用いて水硬性組成物を得ることができる。すなわち、上記本発明の水硬性組成物用分散保持剤と、上記重合体Aと、水硬性粉体と、水とを含有する水硬性組成物(以下、本発明の水硬性組成物ということもある)を得ることができる。本発明の水硬性組成物を得る際には、本発明の分散保持剤と重合体Aは、予め混合して用いても良いし、別々に用いても良い。
【0063】
本発明の水硬性組成物に使用される水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸セメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加されたものでもよい。なお、これらの粉体に骨材として、砂、砂及び砂利が添加されて最終的に得られる水硬性組成物が、一般にそれぞれモルタル、コンクリートなどと呼ばれている。本発明の水硬性組成物は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、グラウト用、地盤改良用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。
【0064】
本発明の水硬性組成物は、水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記されることがある。〕が60重量%以下、更に58〜15重量%、更に57〜18重量%、更に56〜20重量%、特に55〜23重量%であることができる。
【0065】
水硬性組成物において、本発明の水硬性組成物用混和剤は、水硬性粉体100重量部に対して0.02〜10重量部、更に0.02〜5重量部、更に0.05〜2重量部の比率(固形分換算)で添加されることが好ましい。また、分散保持剤は、水硬性粉体100重量部に対して0.002〜5重量部、更に0.01〜4重量部、更に0.02〜2重量部の比率(固形分換算)で添加されることが好ましい。重合体Aは、水硬性粉体100重量部に対して0.01〜8重量部、更に0.02〜4重量部の比率(固形分換算)で添加されることが好ましい。
【実施例】
【0066】
<製造例>
製造例1
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水126.1gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数23、水分35.3%、純度93.6%)165.6gとヒドロキシエチルアクリレート(表中HEAと表記する)43.3g、メタクリル酸(表中MAAと表記する)16.0gと3−メルカプトプロピオン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、試薬)1.72gとを混合溶解した単量体溶液と、過硫酸アンモニウム水溶液(I)〔過硫酸アンモニウム(和光純薬工業株式会社、試薬)2.66gを水45gに溶解したもの〕の2者を、同時に滴下を開始し、それぞれ1.5時間かけて滴下した後、過硫酸アンモニウム水溶液(II)〔過硫酸アンモニウム0.44gを水15gに溶解したもの〕を0.5時間かけて滴下した。その後、80℃で1時間熟成した。熟成終了後に20%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、共重合体(分散保持剤)を得た。なお、ヒドロキシエチルアクリレートは、一般式(2)で、R5がヒドロキシエチル基の化合物であり、R5−OHで表される化合物のlogP値が−1.369の分子量116.1の化合物である。よって、ヒドロキシエチルアクリレートは、[logP値/単量体(2)の分子量Mw]は−1.369/116.1=−0.0118である。
【0067】
なお、ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートは、特許第3874917号記載の方法に準じて、エステル化反応により合成し、未反応物として残留するメタクリル酸を留去により、1重量%未満にしたものを用いた。
【0068】
具体的には、 メタクリル酸とポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルを、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸、重合禁止剤としてハイドロキノンを用いてエステル化反応させた後、アルカリ剤として水酸化ナトリウムを用いて酸触媒を失活させ、真空蒸留法により未反応のメタクリル酸を留去した。
【0069】
製造例2〜6及び比較例1〜5
表1の単量体及び比率で製造例1と同様に共重合体(分散保持剤)を製造した。得られた共重合体を以下の実施例に用いた。
【0070】
【表1】

【0071】
表中の記号は以下の意味である。
・ME−PEG:ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、カッコ内の数値は、エチレンオキサイドの平均付加モル数である。
・HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート(エチレングリコールlogP:−1.369、logP/Mw:−1.369/116.1=−0.0118、和光純薬工業株式会社、試薬)
【0072】
実施例1(ペースト試験)
<ペースト配合>
【0073】
【表2】

【0074】
W: 上水道水
C: 普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
【0075】
500ml容器に、配合1に従い、セメント及び表1の分散保持剤(対セメント100重量部に対し0.08重量部)を含む水を投入し、ハンドミキサー(低速63rpm程度)で2分間混練し、ペーストを得た。
【0076】
<流動保持性能の評価>
得られたペーストを円筒状コーン(φ50mm×51mm)に充填し、垂直に引き上げた時の広がり(最も長い直径の長さとそれと垂直方向の長さの平均値)をペーストフローとして測定した。測定は、混練終了直後(0分後)、混練終了30分後、混練終了60分後、混練終了90分後、混練終了120分後に行い、フロー値の経時変化を測定した。流動保持性の指標として、図1に示す図形の面積をそれぞれの分散保持剤について求めた。この図形の面積は、(流動性−100mm)×時間(単位mm・min)で求まるものである。混練終了直後のフロー値を初期流動性とした。分散保持剤を添加しない場合の初期流動性は100mmであった。
【0077】
【表3】

【0078】
この評価では、流動保持性が6000mm・min以上、好ましくは7000mm・min以上であれば、水硬性組成物用分散保持剤として良好であると判断できる。
【0079】
表3の結果から以下のような考察結果が得られる。
共重合体の構成単量体中、カルボン酸基を有する単量体3の比率が20重量%になると流動保持性が悪化する(比較製造例1と製造例1〜4)。また、単量体1のエチレンオキシド平均付加モル数が小さくても大きくても流動保持性は悪化する(比較製造例2、3と製造例3)。また、共重合体の重量平均分子量が小さいと流動保持性が悪化する(比較製造例5と製造例3、5、6)。
【0080】
<流動保持率の評価>
表3の一部の製造例及び比較製造例について、30分以降の流動保持率について調査した。流動保持率については下式に従って算出した。結果を表4に示す。特に生コン分野においては30分以降の保持率が重要となる。本評価では、コンクリートにした場合、大きく流動性が低下することを考慮すると、流動保持率が110%以上であることが好ましく、120%以上であることが更に好ましい。
流動保持率=〔(120分後のペーストフロー)/(30分後のペーストフロー)〕×100
【0081】
【表4】

【0082】
表4の結果から、重量平均分子量が92000の比較品4及び比較品7については、ペーストフローの評価では流動保持率はそれぞれ103%及び104%で保持性能を有していたが、コンクリートにした場合を考慮するとまだ保持性能は不足している。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施例において、流動保持性を評価するための面積測定の対象となる図形を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される単量体1と一般式(2)で表される単量体2と一般式(3)で表される単量体3とを重合して得られる重量平均分子量が30000〜60000の共重合体からなる水硬性組成物用分散保持剤であって、
単量体2の少なくとも一部が、[一般式(2)中のR5に対応するアルコール化合物R5−OHのlogP値/単量体(2)の分子量Mw]<−0.003の関係を満たし、
該共重合体の該共重合体の構成単量体中、単量体1が25〜78重量%、単量体3が0〜18重量%である、水硬性組成物用分散保持剤。
【化1】


〔式中、R1〜R3は、それぞれ水素原子又はメチル基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、20〜30の数を表し、R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、qは0〜2の整数、pは0又は1を表す。〕
【化2】


〔式中、R5は、炭素数1〜4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基である。〕
【化3】


〔式中、R6〜R8は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の数を表す。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基を表す。〕
【請求項2】
単量体2の少なくとも一部が、一般式(2)のR5がヒドロキシエチル基又はグリセロール基の単量体である請求項1記載の水硬性組成物用分散保持剤。
【請求項3】
[一般式(2)中のR5に対応するアルコール化合物R5−OHのlogP値/単量体(2)の分子量Mw]<−0.003の関係を満たす単量体の比率が、単量体2中で30モル%以上である、請求項1又は2記載の水硬性組成物用分散保持剤。
【請求項4】
単量体1と単量体2と単量体3の重量比(単量体1/単量体2/単量体3)が25〜78/10〜70/0〜18であり、且つ単量体2と単量体3の重量比(単量体2/単量体3)が1超である、請求項1〜3何れか記載の水硬性組成物用分散保持剤。

【図1】
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【公開番号】特開2009−221025(P2009−221025A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63987(P2008−63987)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】