説明

水硬性組成物用分散保持剤

【課題】流動保持性及び粘性保持性の両方に優れた水硬性組成物用の分散保持剤、更には水硬性粉末の種類によらず優れた流動保持性及び粘性保持性を発現する分散保持剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表され、アルキレンオキシドの平均付加モル数が13〜45の範囲にある特定のアルケニルエーテル系単量体1と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(単量体2)とを重合して得られる共重合体からなる水硬性組成物用分散保持剤であって、該共重合体の構成単量体中、単量体1の比率と単量体2の比率の合計が90重量%以上である、水硬性組成物用分散保持剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用分散保持剤及び水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート等の水硬性組成物に対して、流動性を付与するためにナフタレン系、メラミン系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系等の混和剤(高性能減水剤等)が用いられている。減水剤等の混和剤については、水硬性組成物に対する流動性の付与、流動性の保持性(流動保持性)、硬化遅延の防止など、種々の性能が求められ、ポリカルボン酸系混和剤についてもこうした観点から改善が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、少ない添加量で高い分散性を示し、優れた初期分散性と分散保持性を発揮することができるセメント混和剤を提供することを課題として、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜500の不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和モノカルボン酸エステル系単量体由来の構成単位とを必須の構成単位として含み、かつ、各構成単位が全構成単位中の1質量%以上を占め、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位の占める割合が全構成単位中の50モル%以下である重合体であることを特徴とするセメント混和剤が開示されている。
【特許文献1】特開2004−519406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、水硬性組成物の流動性を維持する技術が開示されているが、例えばアルキレンオキサイドの平均付加モル数は10〜300と広範囲であり、また単量体の組み合わせが多岐の種類に渡り、セメントの品質(組成)によって、その流動保持性能が変動してしまい、期待の性能が得られない事もある。水硬性組成物に用いられる水硬性粉末(セメント等)の種類によらず、流動性の維持効果が発現することが望まれる。
【0005】
水硬性組成物の種類によらず流動保持性が優れていれば、所望の流動保持性を発現させるための調整も容易になると考えられるが、特許文献1ではこうした観点からより効果の高い構成について何ら言及していない。
【0006】
本発明の課題は、初期の流動性の付与効果が低く、水硬性粉末の種類によらず流動保持性に優れた水硬性組成物用の分散保持剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般式(1)で表される単量体1と一般式(2)で表される単量体2とを含む単量体を重合して得られる共重合体からなる水硬性組成物用分散保持剤であって、該共重合体の構成単量体中、単量体1の比率と単量体2の比率の合計が90重量%以上である、水硬性組成物用分散保持剤に関する。
【0008】
【化3】

【0009】
〔式中、R1〜R3は、それぞれ水素原子又はメチル基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、13〜45の数を表し、R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、qは0〜2の整数を表す。〕
【0010】
【化4】

【0011】
また、本発明は、上記本発明の分散保持剤と、ポリカルボン酸系分散剤及び/又はリン酸基を有する重合体からなる分散剤と、水硬性粉体と、水とを含有する水硬性組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、初期の流動性の付与効果が低く、水硬性粉末の種類によらず流動保持性に優れた水硬性組成物用の分散保持剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の分散保持剤では、単量体として水硬性粉体の吸着基として作用する(メタ)アクリル酸等ではなく、(メタ)アクリル酸エステルの中でも2−ヒドロキシエチルアクリレートを用いることで、初期(混練直後)には流動性を発現せず、アルカリ性の水硬性組成物中で該エステルの加水分解が即座に進行し、アクリル酸が生じるに伴って共重合体が経時で水硬性粉体へ吸着し、流動保持性を発現すると推定される。該単量体を用いることで、迅速な加水分解により即座に多数の吸着基が生じるため、用いる水硬性粉体の種類を変えても発現する流動性の変化が少なくすることができると考えられる。なお、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の意味である(以下同様)。
【0014】
<単量体1>
単量体1は、不飽和ポリアルキレングリコールアルキルエーテル系単量体であり、単量体1において、一般式(1)中のAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が挙げられ、中でもオキシエチレン基が好ましい。nはAOの平均付加モル数であり、13〜45の数を表し、セメント汎用性の観点から、好ましくは20〜45、より好ましくは30〜45である。流動保持性の観点では好ましくは20〜45、より好ましくは25〜40である。R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、流動保持性の観点から好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0015】
単量体1としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと分岐鎖を有していてもよい不飽和アルコールとのエーテル化物、及びアルケニルアルコールへの炭素数2〜4のアルキレンオキシドの付加物等を用いることができる。具体的には、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、ω−メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、3−メチル−3−ブテン−1−オールのポリオキシエチレンモノアリルエーテル等を挙げることができる。流動保持性の観点から、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、3−メチル−3−ブテン−1−オールのポリオキシエチレンモノアリルエーテルが好ましく、より好ましくは3−メチル−3−ブテン−1−オールのポリオキシエチレンモノアリルエーテルが挙げられる。
【0016】
<単量体2>
単量体2は流動性の発現の観点から用いられる2−ヒドロキシエチルアクリレートであり、本発明の分散保持剤となる共重合体においては、単量体2を導入することで、水硬性組成物への添加初期から経時に渡り水硬性組成物の流動性を維持できる。これは、水硬性組成物への添加前には単量体2はアクリル酸のエステル構造を有するため、初期分散性を示さないが、添加後に経時的にエステル結合の加水分解が即座に進行し、カルボン酸型又はカルボン酸塩型になり、前記共重合体が水硬性粉体表面に徐々に吸着し、水硬性粉体の分散を維持することにより、水硬性粉体の水和による粘度上昇を相殺していると推察される。類似する構造であっても、アクリル酸より加水分解しにくいメタクリル酸のエステルやそのアルキレンオキサイド付加物では単量体2のような効果は得られない。
【0017】
従来は、立体反発による流動性の効果を発現するためには、ポリカルボン酸系重合体のAO平均付加モル数がある程度大きいことが必要と考えられていた。また、加水分解による吸着基の増加では流動性の増加の効果は小さく、流動性を保持するためには、加水分解が生じる前の共重合体中にポリカルボン酸等の吸着基が必須と考えられていた。しかし、本発明者は共重合体の構造と流動性や保持性能とを詳細に検討した結果、立体反発ユニット(AO平均付加ユニット)と経時において吸着基となり得る特定のユニット(加水分解ユニット)を用いることで、初期の流動性付与効果が低く、流動保持性に優れ、しかもセメント種に対する汎用性の高い分散保持剤を完成した。
【0018】
<共重合体>
本発明の共重合体は、該共重合体の構成単量体中、単量体1の比率と単量体2の比率の合計が90重量%以上であり、構成単量体が単量体1と単量体2であることが好ましい。
【0019】
本発明の共重合体は、nの異なる単量体1を2種以上併用することができる。その際は上記単量体1の比率は、nの異なる単量体1の平均値(モル分率による)をnとする(以下同様)。
【0020】
共重合体の全構成単量体中の単量体1と単量体2の合計は、流動保持性の観点から90重量%以上、更に95重量%以上、より更に98重量%以上、より更に実質100重量%部が好ましい。
【0021】
単量体1と単量体2の重量比(単量体1/単量体2)は流動保持性の観点から、好ましくは35/65〜60/40、より好ましくは45/55〜60/40、さらに好ましくは50/50〜60/40である。
【0022】
本発明に係る共重合体には、単量体1、2以外のその他の単量体を構成単量体として用いることができる。その他の単量体として、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、これら何れかのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩や、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メタスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−エタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、スチレン、スチレンスルホン酸などの強酸の酸基又はそれらの中和基を有する単量体が挙げられる。これらの単量体を例えば共重合体の分子量の調整等のために共重合してもよい。これらの強酸の酸基は水硬性組成物中で安定な塩として存在しセメント等の水硬性粉体への吸着基としては機能しない。なお、「(メタ)アクリル」は、アクリル及び/又はメタクリルの意味である。
【0023】
本発明における共重合体は公知の方法で製造することができる。例えば、特開昭62−119147号公報、特開昭62−78137号公報等に記載された溶液重合法が挙げられる。即ち、適当な溶媒中で、上記単量体1及び単量体2を上記の割合で組み合わせて重合させることにより製造される。すなわち、共重合体の重合の際に用いる全単量体中、単量体1の比率と単量体2の比率の合計を90重量%以上、更に95重量%以上、より更に98重量%以上、より更に実質100重量%として重合させる。
【0024】
溶液重合法において用いる溶剤としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。取り扱いと反応設備から考慮すると、水及びメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0025】
水系の重合開始剤としては、過酸化物として過硫酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩あるいは過酸化水素等を、アゾ系開始剤として2、2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等の水溶性アゾ化合物が使用される。水系以外の溶剤を用いる溶液重合にはベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等の脂肪族アゾ化合物等が用いられる。
【0026】
この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。尚、水溶性の重合開始剤として過酸化水素を用いる場合は、L−アスコルビン酸(塩)等の促進剤と組み合わせて用いるのが好ましい。
【0027】
連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられ、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
【0028】
チオール系連鎖移動剤としては、−SH基を有するものが好ましく、特に一般式HS−R−Eg(ただし、式中Rは炭素原子数1〜4の炭化水素由来の基を表し、Eは−OH、−COOM、−COOR’または−SO3M基を表し、Mは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表す。)で表されるものが好ましく、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、単量体1及び2を含む共重合反応での連鎖移動効果の観点から、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールが好ましく、メルカプトプロピオン酸が更に好ましい。これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤としては、四塩化炭素、四臭化炭素などが挙げられる。
【0030】
その他の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、2−アミノプロパン−1−オールなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
各単量体の反応容器への投入方法は特に限定されず、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割若しくは連続投入する方法、一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割若しくは連続投入する方法のいずれもよい。好適な投入方法として、具体的には、下記の(1)〜(4)の方法が挙げられる。
(1)単量体1及び単量体2の全部を反応容器に連続投入する方法。
(2)単量体1及び単量体2の一方の全部を反応容器に初期に投入し、他方の全部を反応容器に連続投入する方法。
(3)単量体1及び単量体2の一方の一部を反応容器に初期に投入し、単量体1及び単量体2の一方の残りと他方の全部を反応容器に連続投入する方法。
(4)単量体1及び単量体2の一方の一部と他方の一部を反応容器に初期に投入し、単量体1及び単量体2の一方の残りと他方の残りをそれぞれ反応容器に交互に数回に分けて分割投入する方法。
【0032】
更に、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えることにより各単量体の単位時間当りの投入質量比を連続的又は段階的に変化させて、共重合体中の各構成単位の比率が異なる共重合体の混合物を重合反応中に合成するようにしてもよい。
【0033】
尚、ラジカル重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
【0034】
この際、前記単量体成分を重合する際の各単量体の反応容器への投入方法としては、重合工程において、単量体2の反応容器への累積投入量に対し、単量体1の反応容器への累積投入量が多い時点が存在するようにすることが好ましい。このような投入方法をとることにより、単量体1の重合性が単量体2の重合性に対して低いにもかかわらず、単量体1と単量体2とを効率的に共重合させることが可能となる。
【0035】
本発明に係る共重合体の製造方法の一例を示す。反応容器に所定量の水を仕込み、窒素等の不活性気体で雰囲気を置換し昇温する。予め単量体1、単量体2、連鎖移動剤を水に混合溶解したものと、重合開始剤を水に溶解したものとを用意し、0.5〜5時間かけて反応容器に滴下する。その際、各単量体、連鎖移動剤及び重合開始剤を別々に滴下してもよく、また、単量体の混合溶液を予め反応容器に仕込み、重合開始剤のみを滴下することも可能である。すなわち、連鎖移動剤、重合開始剤、その他の添加剤は、単量体溶液とは別に添加剤溶液として添加しても良いし、単量体溶液に配合して添加してもよいが、重合の安定性の観点からは、単量体溶液とは別に添加剤溶液として反応系に供給することが好ましい。また、好ましくは所定時間の熟成を行う。なお、重合開始剤は、全量を単量体と同時に滴下しても良いし、分割して添加しても良いが、分割して添加することが未反応単量体の低減の点では好ましい。例えば、最終的に使用する重合開始剤の全量中、1/2〜2/3の重合開始剤を単量体と同時に添加し、残部を単量体滴下終了後1〜2時間熟成した後、添加することが好ましい。必要に応じ、熟成終了後に更にアルカリ剤(水酸化ナトリウム等)で中和し、本発明に係る共重合体を得る。
【0036】
また、本発明に係る共重合体は、単量体1を含有する液Aと、単量体2を含有する液Bとを反応系に導入して共重合反応に用いることもでき、液Aと液Bはそれぞれ別々に反応系に導入することができる。単量体1と、単量体2の共重合性、生産効率の観点からは、単量体1はあらかじめ所定量の水と共に仕込むのが好ましい。液A及び液Bの反応系への導入方法として、具体的には滴下及び噴霧が挙げられ、液A及び液Bの粘度の観点から滴下が好ましい。液Aは凝固点の観点から水を含む溶媒とすることが好ましく、液Bは加水分解の観点から水を含まない溶媒とすることが好ましい。液Aのノズル(導入口)と液Bのノズル(導入口)の距離は任意に設定できる。また、滴下は気中及び液中いずれも可能であるが、液を全て導入する観点から気中滴下が好ましい。ノズル径は液滴の表面積を大きくする点及び溶解性の点から小さい方が好ましい。このように液Aと液Bとを別々に反応系に導入することで、単量体2と水との接触機会を少なくし加水分解が抑制される。
【0037】
また、本発明に係る共重合体の製造にあたっては、材料、温度及び配合に対する汎用性の観点から、重合中に単量体1と単量体2の共重合モル比を一回以上変化させて、重合させてもよい。
【0038】
本発明における共重合体の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレングリコール換算)は、流動保持性の観点から、5000〜200000の範囲が好ましく、10000〜150000がより好ましい。
【0039】
本発明の水硬性組成物用分散保持剤は、該共重合体を含有する水溶液として用いることができる。
【0040】
<水硬性組成物>
本発明の水硬性組成物は、上記本発明の水硬性組成物用分散保持剤と、ポリカルボン酸系分散剤及び/又はリン酸基を有する重合体からなる分散剤とを含有する。つまり、ポリカルボン酸系分散剤及びリン酸基を有する重合体からなる分散剤から選ばれる1種以上の分散剤を含有する。リン酸基を有する重合体からなる分散剤とは、例えば(メタ)アクリル酸のリン酸エステルを含む単量体を重合して得られる重合体又は共重合体からなる分散剤である。(メタ)アクリル酸のリン酸エステルとして、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステル等が挙げられる。リン酸基を有する重合体からなる分散剤のリン酸基は塩を形成する場合を含む。
【0041】
一般に、ポリカルボン酸系分散剤はカルボキシル基及び/又はその中和基を有する重合体(以下、重合体Aという)を含有する。つまり、重合体Aは水硬性組成物用の混和剤(分散剤等)として知られている重合体である。本発明の水硬性組成物では、分散保持剤と重合体Aとを含有する水溶液として用いることができる。
【0042】
カルボキシル基及び/又はその中和基を有する重合体Aとしては、オキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する重合体が挙げられる。例えば、特開平7−223852号公報に示される炭素数2〜3のオキシアルキレン基110〜300モルを導入したポリアルキレングリコールモノエステル系単量体とアクリル酸系単量体との重合体、特表2004−519406号公報の不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和モノカルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須とする重合体及びポリオキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する重合体や、特開2004−210587号公報や特開2004−210589号公報に記載されているアミド系マクロモノマーを含むような重合体、特開2003−128738号公報や特開2006−525219号公報に記載されているポリエチレンイミンを含有する重合体が挙げられる。
【0043】
カルボキシル基及び/又はその中和基を有する重合体Aの市販品としては、(1)BASFポゾリス(株)のレオビルドSP8LS/8LSR、SP8LS、SP8LSR、SP8N、SP8S、SP8R、SP8SE/8RE、SP8SE、SP8RE、SP8SBシリーズ(Sタイプ、Mタイプ、Lタイプ、LLタイプ)、SP8HE、SP8HR、SP8SV/8RV、SP8RV、SP8HU、SP9N、SP9R、SP9HS、レオビルド8000シリーズ、(2)日本シーカ(株)のシーカメント1100NT、シーカメント1100NTR、シーカメント2300、(3)(株)フローリックのフローリックSF500S(500SB)、フローリックSF500H、フローリックSF500R(500RB)、(4)竹本油脂(株)のチューポールHP-8、HP-11、HP-8R、HP-11R、SSP-104、NV-G1、NV-G5、(5)(株)日本触媒のアクアロックFC600S、アクアロックFC900、(6)日本油脂(株)のマリアリムAKM、マリアリムEKMなどが挙げられるが、この限りではない。
【0044】
また、リン酸基及び/又はその塩を有する重合体しては、ポリオキシアルキレン基とリン酸基を有する重合体が挙げられる。例えば、特開2006−052381号公報記載の重合体(以下、重合体Bという)が挙げられる。具体的には、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を平均3〜200モル導入したポリアルキレングリコールモノエステル系単量体と、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルと、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとの共重合体等が挙げられる。
【0045】
本発明の水硬性組成物において、本発明の分散保持剤、並びにポリカルボン酸系分散剤及び/又はリン酸基を有する重合体からなる分散剤(好ましくは重合体A及び/又は重合体B)は、それぞれ二種以上を用いる事ができる。分散保持剤とポリカルボン酸系分散剤及び/又はリン酸基を有する重合体からなる分散剤(好ましくは重合体A及び/又は重合体B)との重量比率〔分散保持剤/(ポリカルボン酸系分散剤及び/又はリン酸基を有する重合体からなる分散剤)(好ましくは重合体A及び/又は重合体B)(固形分換算)〕は、流動性と流動保持性の観点から1/99〜95/5が好ましく、5/95〜80/20が更に好ましく、10/90〜60/40がより好ましく、20/80〜40/60がより更に好ましい。
【0046】
また、本発明の水硬性組成物は、本発明の分散保持剤、並びにポリカルボン酸系分散剤及び/又はリン酸基を有する重合体からなる分散剤以外に、例えば高性能減水剤、AE剤、AE減水剤、流動化剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、増粘剤、防水剤、防泡剤や珪砂、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等の公知の添加剤(材)と併用することができる。
【0047】
本発明の水硬性組成物は、上記本発明の水硬性組成物用分散保持剤と、ポリカルボン酸系分散剤及び/又はリン酸基を有する重合体からなる分散剤(さらには重合体A及び/又は重合体Bを含有する分散剤)と、水硬性粉体と、水とを含有する。本発明の水硬性組成物を得る際には、本発明の分散保持剤と重合体A及び/又は重合体Bとは、予め混合して用いても良いし、別々に用いても良い。
【0048】
本発明の水硬性組成物に使用される水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加されたものでもよい。なお、これらの粉体に骨材として、砂、砂及び砂利が添加されて最終的に得られる水硬性組成物が、一般にそれぞれモルタル、コンクリートなどと呼ばれている。本発明の水硬性組成物は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、グラウト用、地盤改良用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。
【0049】
特に、生コンクリートの製造現場においては、普通ポルトランドセメント・中庸熱ポルトランドセメント・高炉スラグセメントを用いたコンクリートを通常に併産しており、更には水/粉体比の異なる種々の配合のコンクリートを製造することが日常となっている。このような状況において、セメントの品質や種類によって流動性や流動保持性の変動が少ないことは意義あることである。最近では、普通ポルトランドセメントのロットによっても、流動保持性の変動が確認されることもあり、汎用的な流動保持性を提供することは意義あることである。
【0050】
本発明の水硬性組成物は、水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記されることがある。〕が60重量%以下、更に58〜15重量%、更に57〜18重量%、更に56〜20重量%、特に55〜23重量%であることができる。
【0051】
水硬性組成物において、本発明の水硬性組成物用分散保持剤並びにポリカルボン酸系分散剤及び/又はリン酸基を有する重合体からなる分散剤は、合計で、水硬性粉体100重量部に対して0.02〜10重量部、更に0.02〜5重量部、より更に0.05〜2重量部の比率(固形分換算)で添加されることが好ましい。また、本発明の分散保持剤は、水硬性粉体100重量部に対して0.002〜5重量部、更に0.01〜4重量部、より更に0.02〜2重量部の比率(固形分換算)で添加されることが好ましい。また、ポリカルボン酸分散剤及び/又はリン酸基を有する重合体からなる分散剤、好ましくは重合体A及び/又は重合体Bは、水硬性粉体100重量部に対して0.01〜8重量部、更に0.02〜4重量部の比率(固形分換算)で添加されることが好ましい。
【実施例】
【0052】
<製造例>
製造例1
攪拌機付きガラス製反応容器に、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを平均10モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテルを65%含む水溶液を72.4g仕込み、65℃まで昇温した。そこに2%過酸化水素水溶液38.5gを滴下した。滴下後、2−ヒドロキシエチルアクリレート(表中HEAと表記する)121.1gを3.0時間かけて滴下し、それと同時に3−メルカプトプロピオン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、試薬)2.4g、L−アスコルビン酸1.0g、イオン交換水64.6gを混合溶解した単量体溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃を1時間維持し反応を終了した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、共重合体1の水溶液を得た。
【0053】
製造例2
攪拌機付きガラス製反応容器に、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを平均15モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテルを65%含む水溶液を93.3g仕込み、65℃まで昇温した。そこに2%過酸化水素水溶液35.0gを滴下した。滴下後、2−ヒドロキシエチルアクリレート(表中HEAと表記する)110.0gを3.0時間かけて滴下し、それと同時に3−メルカプトプロピオン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、試薬)2.18g、L−アスコルビン酸0.91g、イオン交換水58.7gを混合溶解した単量体溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃を1時間維持し反応を終了した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、共重合体2の水溶液を得た。
【0054】
製造例3
攪拌機付きガラス製反応容器に、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを平均25モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテルを65%含む水溶液を125.4g仕込み、65℃まで昇温した。そこに2%過酸化水素水溶液29.6gを滴下した。滴下後、2−ヒドロキシエチルアクリレート(表中HEAと表記する)92.9gを3.0時間かけて滴下し、それと同時に3−メルカプトプロピオン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、試薬)1.84g、L−アスコルビン酸0.77g、イオン交換水49.6gを混合溶解した単量体溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃を1時間維持し反応を終了した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、共重合体3の水溶液を得た。
【0055】
製造例4
攪拌機付きガラス製反応容器に、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを平均40モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテルを65%含む水溶液を158.3g仕込み、65℃まで昇温した。そこに2%過酸化水素水溶液24.0gを滴下した。滴下後、2−ヒドロキシエチルアクリレート(表中HEAと表記する)75.4gを3.0時間かけて滴下し、それと同時に3−メルカプトプロピオン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、試薬)1.50g、L−アスコルビン酸0.62g、イオン交換水40.2gを混合溶解した単量体溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃を1時間維持し反応を終了した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、共重合体4の水溶液を得た。
【0056】
製造例5
攪拌機付きガラス製反応容器に、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを平均60モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテルを65%含む水溶液を186.8g仕込み、65℃まで昇温した。そこに2%過酸化水素水溶液19.1gを滴下した。滴下後、2−ヒドロキシエチルアクリレート(表中HEAと表記する)60.3gを3.0時間かけて滴下し、それと同時に3−メルカプトプロピオン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、試薬)1.20g、L−アスコルビン酸0.50g、イオン交換水32.2gを混合溶解した単量体溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃を1時間維持し反応を終了した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、共重合体5の水溶液を得た。
【0057】
製造例6
攪拌機付きガラス製反応容器に、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテルを65%含む水溶液を174.1g仕込み、65℃まで昇温した。そこに2%過酸化水素水溶液21.3gを滴下した。滴下後、2−ヒドロキシエチルアクリレート(表中HEAと表記する)67.0gを3.0時間かけて滴下し、それと同時に3−メルカプトプロピオン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、試薬)1.33g、L−アスコルビン酸0.55g、イオン交換水35.7gを混合溶解した単量体溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃を1時間維持し反応を終了した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、共重合体6の水溶液を得た。
【0058】
製造例7
攪拌機付きガラス製反応容器に、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを平均40モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテルを65%含む水溶液を169.2g仕込み、65℃まで昇温した。そこに2%過酸化水素水溶液25.6gを滴下した。滴下後、メチルアクリレート(表中MAと表記する)59.8gを3.0時間かけて滴下し、それと同時に3−メルカプトプロピオン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、試薬)1.6g、L−アスコルビン酸0.66g、イオン交換水43.0gを混合溶解した単量体溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃を1時間維持し反応を終了した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、共重合体7の水溶液を得た。
【0059】
製造例8
攪拌機付きガラス製反応容器に、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを平均40モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテルを65%含む水溶液を153.6g仕込み、65℃まで昇温した。そこに2%過酸化水素水溶液23.3gを滴下した。滴下後、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(表中HEMAと表記する)82.0gを3.0時間かけて滴下し、それと同時に3−メルカプトプロピオン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、試薬)1.45g、L−アスコルビン酸0.60g、イオン交換水39.1gを混合溶解した単量体溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃を1時間維持し反応を終了した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、共重合体8の水溶液を得た。
【0060】
表1に、上記で得られた共重合体1〜共重合体8の概要をまとめた。
【0061】
【表1】

【0062】
なお、共重合体の重量平均分子量Mwは、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した。
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/アセトニトリル=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.5mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
【0063】
実施例1
<ペースト配合>
【0064】
【表2】

【0065】
W:上水道水
C1:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
【0066】
500ml容器に、配合1に従い、セメント及び表1の分散保持剤(セメント100重量部に対し0.08重量部)を含む水を投入し、ハンドミキサー(低速63rpm程度)で2分間混練し、ペーストを得た。
【0067】
<初期流動性及び流動保持性の評価>
得られたペーストを円筒状コーン(φ50mm×51mm)に充填し、垂直に引き上げた時の広がり(最も長い直径の長さとそれと垂直方向の長さの平均値)をペーストフローとして測定した。測定は、混練終了直後(0分後)、混練終了30分後、混練終了60分後、混練終了90分後、混練終了120分後に行い、フロー値の経時変化を測定した。流動保持性の指標として、図1に示す図形の面積をそれぞれの分散保持剤について求めた。この図形の面積は、(流動性−100mm)×時間(単位mm・min)で求まるものである。混練終了直後のフロー値を初期流動性とした。分散保持剤を添加しない場合の初期流動性は119mmであった。
【0068】
【表3】

【0069】
エチレンオキサイドの平均付加モル数が40である共重合体4と共重合体7及び8を比較すると、単量体B(単量体2)のエステル種としてはメチルアクリレート(MA)や2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)より、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の方が、流動保持性能に優れることがわかる。
【0070】
実施例2
ペースト配合を下記表4の配合2とした以外は実施例1と同様にペーストを調製し、分散保持性を評価した。分散保持剤を添加しない場合の初期流動性は117mmであった。結果を表5に示す。
【0071】
【表4】

【0072】
W:上水道水
C2:中庸熱ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
【0073】
【表5】

【0074】
実施例3
ペースト配合を下記表6の配合3とした以外は実施例1と同様にペーストを調製し、分散保持性を評価した。分散保持剤を添加しない場合の初期流動性は72mmであった。結果を表7に示す。
【0075】
【表6】

【0076】
W:上水道水
C3:早強ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
【0077】
【表7】

【0078】
実施例1〜3における配合1〜3に対する結果より、本発明の分散保持剤は、初期流動性の付与効果が低く、一方で優れた流動保持性を発現することが分かる。また流動保持性能に関して、本発明に係る共重合体2、共重合体3、共重合体4は、常に共重合体1、5、6以上の性能を発現しており、分散保持性の向上には、単量体Aにおける最適なエチレンオキシド鎖長の長さ、および最適な単量体Aと単量体Bの共重合比率が存在する事が分かる。
【0079】
上記実施例1〜3における配合1〜3に対する流動保持性の結果を表8にまとめた。
【0080】
【表8】

【0081】
セメントクリンカーの組成が異なる配合1〜3において、本発明品である共重合体2、共重合体3、共重合体4は、常に共重合体1、5、6以上の性能を発現しており、比表面積が高く、エーライト(C3S)の含有量が多いセメント(配合3)と、アルミネート相(C3A)やエーライト(C3S)の含有量が少ないセメント(配合2)との差も小さい。よって、本発明の分散保持剤は、セメント汎用性に優れることがわかる。
【0082】
実施例4
(モルタル配合)
【0083】
【表9】

【0084】
W: 上水道水
C: 普通ポルトランドセメント (太平洋セメント(株)製)
S: 京都府城陽産 山砂(細骨材、密度=2.55g/cm3
【0085】
(モルタルの調製)
容器(1Lステンレスビーカー:内径120mm)に、表に示す配合の約1/2量のSを投入し、次いでCを投入、さらに残りのSを投入し、撹拌機としてEYELA製Z−2310(東京理化器械、撹拌棒:高さ50mm、内径5mm×6本/長さ110mm)を用い、200rpmで空練り10秒後、予め調製した混和剤と水の混合溶液を5秒かけて投入し、投入後30秒間で壁面や撹拌棒の間の材料を掻き落した後、さらに1分間混練し、回転を停止した。30分後、再度200rpmで30秒間混練した後、流動性を測定した。なお、必要に応じて消泡剤を添加し、連行空気量が2%以下となるように調整した。
【0086】
混和剤は、分散保持剤である共重合体3と、下記分散剤とを組み合わせて使用したものである。
PC:ポリカルボン酸系分散剤、(株)日本触媒 FC900
PP:以下の方法で製造されたリン酸基を有する重合体からなる分散剤
【0087】
<PPの製造方法>
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水260gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数23:新中村化学製NKエステルM230G)75gとリン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物(ホスマーM:ユニケミカル(株))18.9gと3−メルカプトプロピオン酸0.88gとを水75gに混合溶解したものと、過硫酸アンモニウム3.00gを水45gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて滴下した。1時間の熟成後、過硫酸アンモニウム1.50gを水15gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に20%水酸化ナトリウム溶液25gで中和し、Mw37000のリン酸系共重合体(PP)を得た。
【0088】
(モルタル試験)
モルタルフローは、上部開口径が70mm、下部開口径が100mm、高さ60mmのコーンを使用し、モルタルフロー値の最大値と、該最大値を与える線分の1/2の長さの位置で直交する方向で測定したモルタルフロー値との平均値とした。
【0089】
【表10】

【0090】
*添加量は、セメント100重量部に対する固形分の重量部である。
【0091】
以上より、共重合体3とポリカルボン酸系分散剤又はリン酸基を有する重合体からなる分散剤と併用することで、30分後でも流動保持性に優れる水硬性組成物が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施例において、流動保持性を評価するための面積測定の対象となる図形を示すグラフ(実施例3では基準ペーストフローは70mm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される単量体1と一般式(2)で表される単量体2とを含む単量体を重合して得られる共重合体からなる水硬性組成物用分散保持剤であって、該共重合体の構成単量体中、単量体1の比率と単量体2の比率の合計が90重量%以上である、水硬性組成物用分散保持剤。
【化1】


〔式中、R1〜R3は、それぞれ水素原子又はメチル基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、13〜45の数を表し、R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、qは0〜2の整数を表す。〕
【化2】

【請求項2】
重合に用いられる単量体1と単量体2の重量比(単量体1/単量体2)が、35/65〜60/40である請求項1記載の水硬性組成物用分散保持剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の分散保持剤と、ポリカルボン酸系分散剤及び/又はリン酸基を有する重合体からなる分散剤と、水硬性粉体と、水とを含有する水硬性組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−1199(P2010−1199A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163104(P2008−163104)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】