説明

水硬性組成物

【課題】 速硬性・速乾性に優れるとともに、屋外環境下で施工でき、屋外での長期供用においても優れた耐久性・耐候性を保持し続ける水硬性組成物を提供することを目的とした。
【解決手段】 本発明は、水硬性成分と、樹脂粉末とを含む水硬性組成物であって、樹脂粉末は、塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末であることを特徴とする水硬性組成物と、該水硬性組成物を用いて得られるコンクリート構造体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外のモルタル・コンクリート表面に施工する水硬性組成物と、水硬性組成物を用いて施工して得られるコンクリート構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
平滑かつ緻密な表面を形成し維持することができる床下地材として特許文献1にはセメント、骨材、及び保水剤を主成分とし、合成樹脂として酢酸ビニル樹脂、バーサチック酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、SBRの中の一、又は二以上の混合物を含有するセルフレベリング材(自己流動性水硬性組成物)が開示されている。
耐透水性、耐凍結融解性ならびに耐薬品性などの耐久性と、基材付着性とに優れるセメント系塗装剤に関し、特許文献2には硬化の過程におけるひび割れを防止するためにセメント、フライアッシュ、珪砂からなるセルフレベリング材料に水と消泡剤、更にゴム系ラテックスを添加してなるセルフレベリング性水性組成物が、特許文献3にはポリマーラテックス、消泡剤、減水剤、及び可溶性アルカリ量がNaO重量換算で3000mg/リットル以下である水硬性物質を含有してなるポリマーセメント組成物が開示されている。
また、早期強度発現性を有し、更に中性化および塩害防止を可能とするポリマーセメント組成物に関して特許文献4には、オートクレーブを用いて養生を行うことにより製造されるポリマーセメント組成物が、特許文献5にはアルミナセメント、ポリマー、及び、砂を配合してなる混合物と水とを混練してなるモルタルを管内面に成層してなるライニング管が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−20263号公報
【特許文献2】特開平10−121708号公報
【特許文献3】特開平5−24899号公報
【特許文献4】特開2001−354463号公報
【特許文献5】特開平4−323005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、屋外環境下で施工でき、屋外での長期供用においても優れた耐久性・耐候性を保持し続ける水硬性組成物を提供することを目的とした。
さらに、本発明は、速硬性・速乾性に優れるとともに、屋外環境下で施工でき、屋外での長期供用においても優れた耐久性・耐候性を保持し続ける水硬性組成物を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究開発に取組んだ結果、水硬性成分と、特定の樹脂粉末とを含む水硬性組成物を用いることによって、屋外環境下で施工でき、屋外での長期供用においても優れた耐久性・耐候性を有するコンクリート構造体が得られることを見出した。
さらに、本発明者らは、速硬性・速乾性に優れる水硬性成分と、特定の樹脂粉末とを含む水硬性組成物を用いることによって、屋外環境下で優れた施工効率を確保しながら施工できるとともに、屋外での長期供用においても優れた耐久性・耐候性を有するコンクリート構造体が得られることを見出した。
【0006】
即ち、本発明の第1は、
水硬性成分と、樹脂粉末とを含む水硬性組成物であって、
樹脂粉末は、塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末であることを特徴とする水硬性組成物である。
本発明の第2は、
本発明の水硬性組成物を用いたスラリー硬化体層またはモルタル硬化体層を表層に有するコンクリート構造体である。
【0007】
本発明の水硬性組成物について好ましい様態を以下に示す。これらは複数組合せることができる。
(1)塩化ビニル/エチレン系共重合体は、塩化ビニル/エチレン/ラウリン酸ビニル共重合体であること。
(2)樹脂粉末は、該樹脂粉末の再分散後の平均粒径が0.3〜9.0μmであること。
(3)樹脂粉末は、水硬性成分100質量部に対して、1〜50質量部の割合で配合されること。
(4)水硬性成分は、ポルトランドセメントを含むこと。
(5)水硬性成分は、アルミナセメントを含むこと。
(6)水硬性成分は、アルミナセメント及び石膏を含むこと。
(7)水硬性成分は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏を含むこと。
(8)水硬性組成物は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、無機粉末及び細骨材を含み、さらに凝結調整剤、流動化剤、増粘剤及び消泡剤から選ばれる成分を少なくとも2種以上含むこと。
(9)水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルの硬化体表面のショア硬度は、スラリー又はモルタルを施工して5時間後に10以上であること。
(10)水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルは、屋外のモルタル面又はコンクリート面に施工されること。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水硬性組成物は、水硬性成分と、樹脂粉末とを含む水硬性組成物であって、樹脂粉末は、塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末であることを特徴とする水硬性組成物である。
本発明の水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルの硬化体は、屋外環境で供用された場合でも卓越した耐久性・耐候性を有している。
さらに、本発明の水硬性組成物は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を用い、塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末と組合せて用いることで、本発明の水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルは良好な可使時間(ハンドリングタイム)を有しつつも、速やかな硬化特性を有して高い施工効率を実現するとともに、前記スラリー又はモルタルの硬化体は、屋外環境で供用された場合でも卓越した耐久性・耐候性を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】水硬性モルタル硬化体の凍結融解試験による供試体質量の変化を示す図である。
【図2】水硬性モルタル硬化体の凍結融解試験による相対動弾性係数の変化を示す図である。
【図3】SL測定器を用いた、モルタルのセルフレベリング性評価の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水硬性組成物は、水硬性成分と、樹脂粉末とを含む水硬性組成物であって、樹脂粉末は、塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末であることを特徴としている。
【0011】
本発明の水硬性組成物では、屋外環境下で水硬性組成物を用いた水硬性スラリー又は水硬性モルタルの硬化体が長期供用された場合にも、高い耐久性・耐候性を得るために、樹脂粉末として塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末を選択して使用する。
塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末を使用した場合の効果としては、前記の通り高い耐久性・耐候性が得られるほかに、水硬性スラリー又は水硬性モルタルを施工した場合の硬化体表面の乾燥に伴う皺や気泡跡の発生、又は、材料分離によるブリージング水の発生を防止して、硬化体表面の仕上りを大幅に向上させる効果、さらには、硬化体の弾性を高めてひび割れの発生を防止する効果が挙げられる。
【0012】
本発明で用いる塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末の製造方法については、特にその種類・プロセスは限定されず、公知の製造方法で製造されたものを用いることができる。
本発明では、塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末として、塩化ビニル/エチレン/ラウリン酸ビニル共重合体樹脂粉末を好適に用いることができ、より好ましくは保護コロイドとしてポリビニルアルコールを含む塩化ビニル/エチレン/ラウリン酸ビニル共重合体樹脂粉末を好適に用いることができる。
【0013】
本発明で特に好適に用いられる塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末は、再乳化後の平均粒径が0.3〜9.0μmであるものを好適に使用することができる。この範囲のものを選択して用いることによって、緻密なポリマーフィルムの形成によって優れた接着性や耐久性・耐候性とを併せて得られることから好ましい。
【0014】
本発明で特に好適に用いられる塩化ビニル/エチレン/ラウリン酸ビニル共重合体再乳化形樹脂粉末の最低造膜温度(MFT)が、好ましくは−10℃〜10℃の範囲、さらに好ましくは−5℃〜5℃の範囲、より好ましくは−3℃〜3℃の範囲、特に好ましくは−2℃〜2℃の範囲のものを好適に使用することができる。
【0015】
本発明で使用する塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末は、水硬性成分100質量部に対して、
好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部、さらに好ましくは3〜8質量部、特に好ましくは4〜7質量部の範囲で配合することによって、良好な作業性と高耐久な硬化体特性を併せて得ることができる。
塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末の配合割合が、前記範囲よりも大きい場合、水硬性組成物に水を加えて得られる水硬性スラリー又は水硬性モルタルの粘度が高くなり、施工性および作業性が低下することがあり、また、硬化体の圧縮強度が低下する傾向がある。また、配合割合が前記範囲より小さい場合には、水硬性スラリー硬化体又は水硬性モルタル硬化体の耐久性・耐候性の向上効果が十分に得られなかったり、弾性向上によるひび割れ抑制効果が十分得られず、スラリー硬化体又はモルタル硬化体の表面仕上りも悪くなる傾向があるため好ましくない。
【0016】
本発明の水硬性組成物は、水硬性成分としてアルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏から選ばれる成分を少なくとも1種以上含むことが好ましい。
さらに、本発明の水硬性組成物は、水硬性成分としてアルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏を含むことが、速やかな硬化特性と低収縮性を安定して得られることから特に好ましい。
【0017】
アルミナセメントとしては、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、何れも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することができる。
【0018】
ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどの混合セメントなどを用いるができる。
【0019】
石膏は、無水石膏、半水石膏、二水石膏等の各石膏がその種類を問わず、1種又は2種以上の混合物として使用できる。
石膏は、自己流動性水硬性組成物と水とを混練して得られるモルタルが硬化した後の寸法安定性を保持する成分として機能するものである。
【0020】
本発明では、水硬性成分としてアルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏から選ばれる成分を少なくとも1種以上含むことが好ましい。
さらに、本発明では、水硬性成分として、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を用いることが特に好ましい。
水硬性成分として、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を用いる場合には、水硬性成分の成分構成は、好ましくはアルミナセメント20〜80質量部、ポルトランドセメント5〜70質量部及び石膏5〜45質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、さらに好ましくはアルミナセメント25〜70質量部、ポルトランドセメント10〜60質量部及び石膏10〜40質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、より好ましくはアルミナセメント30〜60質量部、ポルトランドセメント20〜50質量部及び石膏15〜35質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)、特に好ましくはアルミナセメント40〜50質量部、ポルトランドセメント30〜40質量部及び石膏20〜30質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成を用いることにより、速硬性・速乾性を有し、低収縮性又は低膨張性で硬化中の体積変化が少なく、クラックの発生を抑制した硬化体が得られやすく、高耐久な硬化体を得る上で好ましい。
【0021】
屋外のモルタル・コンクリート構造体の表面に施工して用いる本発明の水硬性組成物は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を用いることが好ましく、さらに塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末を含むとともに、無機成分、細骨材、凝結調整剤、流動化剤、増粘剤及び消泡剤を含むことができる。
【0022】
本発明の水硬性組成物は、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカヒューム、炭酸カルシウム微粉末及びドロマイト微粉末から選ばれる少なくとも1種以上の無機成分を含むことが好ましく、特に高炉スラグ微粉末を含むことにより、乾燥収縮による硬化体の耐クラック性を高めることができる。
水硬性組成物において、無機成分の添加量は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜180質量部、さらに好ましくは30〜150質量部、特に好ましくは40〜120質量部とするのが好ましい。
【0023】
水硬性組成物において、高炉スラグ微粉末の添加量は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜180質量部、さらに好ましくは30〜150質量部、特に好ましくは40〜120質量部とすることが好ましい。高炉スラグ微粉末の添加量が、少なすぎると硬化体の乾燥収縮が大きくなり、多すぎると初期強度の低下を招くことがある。
高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206に規定されるブレーン比表面積3000cm/g以上のものを用いることができる。
【0024】
水硬性組成物は、必要に応じてさらに細骨材を含むことができる。
細骨材は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは30〜500質量部、より好ましくは50〜400質量部、さらに好ましくは100〜300質量部、特に好ましくは120〜250質量部の範囲が好ましい。
細骨材としては、粒径2mm以下の骨材、好ましくは粒径0.075〜1.5mmの骨材、さらに好ましくは粒径0.1〜1mmの骨材、特に好ましくは0.15〜0.6mmの骨材を主成分としていることが好ましい。
細骨材の種類は、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂などの砂類、アルミナクリンカー、シリカ粉、石英粉末、粘土鉱物、廃FCC触媒、石灰石などの無機材料、ウレタン砕、EVAフォーム、発砲樹脂などの樹脂粉砕物などを用いることができる。
特に細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂などの砂類、廃FCC触媒、アルミナクリンカーなどが好ましく用いることが出来る。
細骨材の粒径は、JIS Z 8801に規定される呼び寸法の異なる数個のふるいを用いて測定する。
【0025】
水硬性組成物は、材料分離を抑制しつつ好適な流動性を確保する流動化剤(高性能減水剤などの減水剤)を用いることができる。
水硬性成分であるアルミナセメントの発現強度は、水/セメント比の影響を大きく受けることから、減水効果を有する流動化剤を使用して水/水硬性成分比を小さくすることが特に好ましい。
流動化剤としては、減水効果を合わせ持つ、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系等、ポリエーテルポリカルボン酸などの市販の流動化剤が、その種類を問わず使用でき、特にポリエーテル系等、ポリエーテルポリカルボン酸などの市販の流動化剤を使用することができる。
流動化剤は、使用する水硬性成分に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、水硬性成分100質量部に対して好ましくは0.01〜3.0質量部、さらに好ましくは0.05〜2.0質量部、特に好ましくは0.1〜1.5質量部を配合することができる。
特に、流動化剤は、ポリエーテル系、あるいは、ポリエーテルポリカルボン酸系の流動化剤を、水硬性成分に対して上記の適正範囲で配合することによって、自己流動性(セルフレベリング性)に優れる水硬性組成物を得ることができる。
【0026】
凝結調整剤は、使用する水硬性成分や水硬性組成物の構成成分に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、凝結遅延剤及び凝結促進剤の成分、添加量及び混合比率を適宜選択して、水硬性組成物の可使時間と速硬性・速乾性とを調整することができ、水硬性組成物としての使用が非常に容易になるため好ましい。
【0027】
凝結遅延剤としては、公知の凝結遅延剤を用いることが出来る。凝結遅延剤の一例として、酒石酸類(酒石酸一ナトリウム、酒石酸二ナトリウム)、リンゴ酸類、クエン酸類、グルコン酸類などのオキシカルボン酸類や、硫酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどの無機ナトリウム塩などを、それぞれの成分を単独で又は2種以上の成分を併用して用いることが出来る。
【0028】
オキシカルボン酸類は、オキシカルボン酸及びこれらの塩を含む。
オキシカルボン酸としては、例えばクエン酸、グルコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸などの脂肪族オキシ酸、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸、トロパ酸等の芳香族オキシ酸等を挙げることができる。
オキシカルボン酸の塩としては、例えばオキシカルボン酸のアルカリ金属塩(具体的にはナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(具体的にはカルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩など)などを挙げることができ、ナトリウム塩がより好ましい。
特に重炭酸ナトリウムや酒石酸二ナトリウムは、凝結遅延効果、入手容易性、価格の面から好ましく、これらを併用することが、更に好ましい。
【0029】
凝結遅延剤は、1種または2種類以上を用いる場合、それぞれの凝結遅延剤の添加量が水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜1.5質量部であり、より好ましくは0.1〜1.2質量部、さらに好ましくは0.2〜1.0質量部、特に好ましくは0.25〜0.8質量部の範囲で用いることにより好適な流動性が得られる可使時間(ハンドリングタイム)を確保できることから好ましい。
【0030】
凝結促進剤としては、公知の凝結を促進する成分を用いることが出来、例えば、凝結促進効果を有するリチウム塩を好適に用いることが出来る。
リチウム塩の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウムなどの無機リチウム塩や、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウムなどの有機酸有機リチウム塩などのリチウム塩を用いることが出来る。特に炭酸リチウムは、凝結促進効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
又、上記リチウム塩を使用し、リチウム塩と併用して硫酸アルミニウム、硫酸カリウム、アルミン酸ナトリウム等の凝結促進成分を併用することができ、更に促進効果を高めることができる。
【0031】
凝結促進剤としては、特性を妨げない粒径を用いることが好ましく、粒径は50μm以下にするのが好ましい。
特にリチウム塩を用いる場合、リチウム塩の粒径は50μm以下、さらに30μm以下、特に10μm以下が好ましく、粒径が上記範囲より大きくなるとリチウム塩の溶解度が小さくなるために好ましくなく、特に顔料添加系では微細な多数の斑点として目立ち、美観を損なう場合がある。
【0032】
凝結促進剤は、水硬性成分100質量部に対して、
好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.01〜0.5質量部、さらに好ましくは0.02〜0.3質量部、特に好ましくは0.02〜0.2質量部の範囲で用いることによって、水硬性組成物の可使時間を確保したのち好適な速硬性・速乾性が得られることから好ましい。
【0033】
増粘剤は、ヒドロキシエチルメチルセルロースを含み、ヒドロキシエチルメチルセルロースを除く他のセルロース系、スターチエーテル等の化工澱粉系、蛋白質系、ラテックス系、及び水溶性ポリマー系、などの増粘剤を併用して用いることが出来る。
増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1.5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部、特に0.03〜0.8質量部含むことが好ましい。
【0034】
増粘剤及び消泡剤を併用して用いることは、水硬性成分や細骨材などの骨材分離の抑制、気泡発生の抑制、硬化体表面の改善に好ましい効果を与え、水硬性組成物の硬化物の特性を向上させる上で好ましい。
【0035】
消泡剤は、シリコン系、アルコール系、ポリエーテル系などの合成物質又は鉱物油系や植物由来の天然物質など、公知のものを1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
消泡剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、1種類の消泡剤を用いる場合、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜3.0質量部、さらに好ましくは0.005〜2.5質量部、より好ましくは0.01〜2.0質量部、特に0.02〜1.7質量部含むことが好ましい。消泡剤の添加量は、上記範囲内が、好適な消泡効果が認められるために好ましい。
また、2種類以上の消泡剤を併用する場合の消泡剤の添加量は、それぞれの消泡剤の添加量が水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1.5質量部、より好ましくは0.01〜1.3質量部、特に0.02〜1.1質量部含むことが好ましい。消泡剤の添加量は、上記範囲内が、好適な消泡効果が認められるために好ましい。
【0036】
本発明の水硬性組成物は、水硬性成分と塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末とを含むものである。
さらに、本発明の水硬性組成物は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末とを含み、その他の成分として、無機成分、珪砂などの細骨材、流動化剤、増粘剤、消泡剤及び凝結調整剤を含むことができる。
本発明の水硬性組成物を構成する場合に、特に好適な成分構成は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分、塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末、無機成分、珪砂などの細骨材、流動化剤、増粘剤、消泡剤及び凝結調整剤を含むものである。
【0037】
本発明では、水硬性成分及び塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末と、無機成分、細骨材、流動化剤、増粘剤、消泡剤及び凝結調整剤などを混合機で混合し、水硬性スラリー又は水硬性モルタルを得ることができる。
【0038】
本発明では、水硬性成分及び塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末と、無機成分、細骨材、流動化剤、増粘剤、消泡剤及び凝結調整剤と、所定量の水と混合・攪拌して、スラリー状又はモルタル状の水硬性スラリー又は水硬性モルタルを製造することができ、その水硬性スラリー又は水硬性モルタルを硬化させて水硬性組成物の硬化体を得ることができる。
【0039】
水硬性組成物は、水と混合・攪拌してスラリー又はモルタルを製造することができ、水の添加量を調整することにより、スラリー又はモルタルの流動性、可使時間、材料分離性、硬化体の強度などを調整することができる。
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物(C)と水(W)とを質量比(W/C)が、好ましくは0.10〜0.34の範囲、さらに好ましくは0.11〜0.32の範囲、
より好ましくは、0.12〜0.30の範囲、特に好ましくは0.13〜0.28の範囲になるように配合して混練することが好ましい。
【0040】
本発明の水硬性組成物は、水と混合して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルのフロー値が、好ましくは120〜270mm、さらに好ましくは140〜250mm、特に好ましくは160〜230mmに調整されていることが、施工の容易さ及び良好な作業性を確保しやすいという理由により好ましい。
【0041】
本発明の水硬性スラリー又は水硬性モルタルの施工厚さは、施工箇所や施工部位及び要求される特性に応じて適宜施工厚を選択することができる。
高耐久性な硬化体を得る場合、水硬性スラリー又は水硬性モルタルの施工厚さは、好ましくは施工厚さ0.5mm〜60mmの範囲、さらに好ましくは施工厚さ1.0mm〜40mmの範囲、より好ましくは施工厚さ1.5mm〜30mmの範囲、特に好ましくは施工厚さ2mm〜20mmの範囲で施工することが好ましい。
【0042】
本発明の水硬性組成物は、水硬性成分と塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末とを含むものであり、良好な施工性を確保するために充分な可使時間(ハンドリングタイム)を有することが好ましく、施工現場や施工箇所に応じて、適宜水硬性成分の構成成分の種類と配合割合を選択するとともに、水硬性成分と塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末以外の成分として、無機成分、細骨材、流動化剤、増粘剤、消泡剤及び凝結調整剤から有効な成分を適宜選択して用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明について実施例に基づいて詳細に説明する。但し、本発明は下記の実施例により制限されるものでない。
【0044】
(特性の評価方法)
(1)水硬性スラリーの流動性評価:
・フロー値の測定法:
JASS・15M−103に準拠して測定する。厚さ5mmのみがき板ガラスの上に内径50mm、高さ51mmの樹脂製パイプ(内容積100ml)を設置し、練り混ぜた水硬性スラリーを樹脂製パイプの上端まで充填した後、パイプを鉛直方向に引き上げる。スラリーの広がりが静止した後、直角2方向の直径を測定し、その平均値をフロー値とし、スラリーの流動性を評価する。
・セルフレベリング性:
図3に示すSL測定器を使用し、幅30mm×高さ30mm×長さ750mmのレールに、先端より長さ150mmのところに堰板を設け、混練直後のスラリーを所定量満たして成形する。成形直後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をL0とする。
同様に成形後10分後、20分後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をそれぞれL10、L20とする。
【0045】
(2)水硬性スラリー硬化体の硬化特性と表面仕上りの評価:
・水引き :調製したスラリーを、13cm×19cmの樹脂製の型枠へ厚さ10mmで流し込み、その後硬化が進行し、表面を軽く触れても、スラリーが付着しなくなるまでの時間とする。
・硬化体表面のショア硬度:
打設後からの所定の経過時間において、硬化した表面の硬度をスプリング式硬度計タイプD型((株)上島製作所製)を用いて、任意の3〜5カ所の表面硬度を測定し、そのスプリング式硬度計タイプD型のゲージの読み取り値の平均値をその時間の表面硬度とする。
・硬化体表面の性状:
モルタル硬化体表面の仕上り状態は、調製したスラリーを、13cm×19cmの樹脂製の型枠へ厚さ10mmで流し込み、24時間後に表面粉化の発生を評価した。なお、表面仕上りの評価基準は、以下の通りとした。
3:良好、2:やや不良、1:不良。
【0046】
(3)水硬性スラリー硬化体の凍結融解抵抗性の評価:
・凍結融解試験方法:
JISS・A−1171「ポリマーセメントモルタルの試験方法」に準拠する。JISA−1148「コンクリートの凍結融解試験方法」のA法(水中浸漬試験方法)に従って凍結融解試験を行う。
・相対動弾性係数の測定法:
JIS・A−1127によりたわみ振動の一次共鳴振動数を測定する。測定は試験開始前及び凍結融解36サイクルを超えない間隔で行う。試験中における測定は、融解行程終了直後に行う。試験槽から取り出した供試体はその表面を軽くこすり、水洗い後表面の水を拭き取って、速やかにたわみ振動の一次共鳴振動数を測定して、供試体の上下を入れ替えて試験槽に戻す。試験体容器はよく洗い新鮮な水を入れておく。測定終了後は直ちに凍結行程を開始する。
相対動弾性係数は次式によって算出し、四捨五入によって整数に丸める。
【0047】
【数1】

【0048】
(使用材料):以下の材料を使用した。
1)水硬性組成物 : 下記の原材料を表1に示す配合割合で混合した水硬性組成物を使用した。
・アルミナセメント : フォンジュ、ケルネオス社製、ブレーン比表面積3100cm/g。
・ポルトランドセメント : 早強セメント、宇部三菱セメント社製、ブレーン比表面積4500cm/g。
・石膏 : II型無水石膏、セントラル硝子社製、ブレーン比表面積3460cm/g。
・細骨材 : 珪砂:5号珪砂。
・無機成分 : 高炉スラグ微粉末、リバーメント、千葉リバーメント社製、ブレーン比表面積4400cm/g。
・樹脂A : 塩化ビニル/エチレン/ラウリン酸ビニル共重合体1次粒子がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆された再乳化形樹脂粉末、ワッカー社製、VINNAPAS 8034H。
・樹脂B : アクリル酸エステル/メタアクリル酸エステルの共重合体、1次粒子がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆された再乳化形樹脂粉末、ニチゴー・モビニール社製、LDM7000P。
・凝結遅延剤a : 重炭酸ナトリウム、東ソー社製。
・凝結遅延剤b : L−酒石酸二ナトリウム、扶桑化学工業社製。
・凝結促進剤 : 炭酸リチウム、本荘ケミカル社製。
・流動化剤 : ポリカルボン酸系流動化剤、花王社製。
・増粘剤 : ヒドロキシエチルメチルセルロース系増粘剤、マーポローズMX−30000、松本油脂社製。
・消泡剤 : ポリエーテル系消泡剤、サンノプコ社製。
【0049】
(水硬性モルタルおよび水硬性モルタル硬化体の調製)
室温20℃、相対湿度65%の条件下で、表1に示す配合割合で調製した水硬性組成物と水とを、水硬性組成物100質量部に対して水16質量部の割合で配合し、回転数650rpmのケミスターラーを用いて3分間混練して、水硬性モルタルを調製した。
水硬性モルタル硬化体はJIS・R−5201に示される4×4×16cmの型枠に水硬性モルタルを型詰めして、温度20℃、湿度100%の条件で24時間湿空養生した後、脱型し、さらに温度20℃、湿度65%の気中にて材齢14日まで養生して得た。
【0050】
[実施例1、比較例1]
表1に示す成分を配合した水硬性組成物を用いて水硬性モルタルを調製し、モルタルの流動性、硬化体表面のショア硬度及び硬化体表面の仕上り状態を評価した結果を表2に示す。
水硬性モルタル硬化体について、凍結融解試験を行って所定サイクル数毎に供試体質量の変化と相対動弾性係数を測定した結果をそれぞれ表3及び表4と図1及び図2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
(1)樹脂成分として塩化ビニル/エチレン/ラウリン酸ビニル共重合体を含む塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末用いた実施例1の場合、凍結融解試験で250サイクルまで供試体の重量減少は起こらず、282サイクルでも相対動弾性係数は90%以上の値が得られた。
塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末以外の樹脂成分からなる再乳化形樹脂粉末を用いた比較例1では、217サイクル以上で相対動弾性係数は90%未満となり、282サイクル以上で相対動弾性係数を測定できるものはなく、いずれの供試体も崩壊した。
【0056】
本発明の水硬性組成物は、水硬性成分と、塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末とを含む水硬性組成物であって、再乳化形樹脂粉末は保護コロイドとしてポリビニルアルコールを含み、再乳化後の平均粒径が0.3〜9.0μmであることを特徴とする水硬性組成物である。
本発明の水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルの硬化体は、屋外環境で供用された場合でも卓越した耐久性・耐候性を有している。
さらに、本発明の水硬性組成物は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を用い、塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末と組合せて用いることで、本発明の水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルは良好な可使時間(ハンドリングタイム)を有しつつも、速やかな硬化特性を有して高い施工効率を実現するとともに、前記スラリー又はモルタルの硬化体は、屋外環境で供用された場合でも卓越した耐久性・耐候性を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性成分と、樹脂粉末とを含む水硬性組成物であって、
樹脂粉末は、塩化ビニル/エチレン系共重合体の再乳化形樹脂粉末であることを特徴とする水硬性組成物。
【請求項2】
塩化ビニル/エチレン系共重合体は、塩化ビニル/エチレン/ラウリン酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の水硬性組成物。
【請求項3】
樹脂粉末は、該樹脂粉末の再分散後の平均粒径が0.3〜9.0μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水硬性組成物。
【請求項4】
樹脂粉末は、水硬性成分100質量部に対して、1〜50質量部の割合で配合されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項5】
水硬性成分は、ポルトランドセメントを含むこと
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項6】
水硬性成分は、アルミナセメントを含むこと
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項7】
水硬性成分は、アルミナセメント及び石膏を含むこと
を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項8】
水硬性成分は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏を含むこと
を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項9】
水硬性組成物は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、
無機粉末及び細骨材を含み、さらに凝結調整剤、流動化剤、増粘剤及び消泡剤から選ばれる成分を少なくとも2種以上含むこと
を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項10】
水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルの硬化体表面のショア硬度は、スラリー又はモルタルを施工して5時間後に10以上であること
を特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項11】
水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルは、屋外のモルタル面又はコンクリート面に施工されること
を特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の水硬性組成物を用いたスラリー硬化体層またはモルタル硬化体層を表層に有するコンクリート構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−235362(P2010−235362A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83867(P2009−83867)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】