説明

水系の汚れを検知する方法と装置

【課題】冷却水系システム中に透明な容器及びその両側に防水処理の必要な投光部と受光部を配置した設備を必要とすることなく、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を簡便に検知しうる方法と装置を提供する。
【解決手段】発光ダイオード10と、一方の端が発光ダイオード10と接続され他方の端が水系の水中に設置された光ファイバー11と、光ファイバー11の端から照射される発光ダイオード10からの照射光が受光可能に、且つ水系の水中に設置された太陽電池パネル12と、太陽電池パネル12によって発生する起電力を測定する起電力測定器13とを備えた、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する装置と、前記装置を用い、発光ダイオード10からの照射光を太陽電池パネル12に照射した際に発生する起電力の変化を測定することにより、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系の汚れを検知する方法と装置に関し、詳しくは水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知することにより、水系の汚れを検知する方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種工場プラントの冷却水をはじめ、紙パルププロセスの白水、浴槽水、修景水などの水系では、微生物の増殖によるスライムの発生や水の濃縮によるスケールの発生等により、配管金属腐食、配管の閉塞等の障害が起きる。特に、各種工場プラントの冷却水系では、配管金属腐食、配管の閉塞等に加えて熱効率の低下等、冷却水系の機能低下に繋がる大きな障害も起きる。
こうした障害を防止して、設備機械の安全、且つ、効率的な運転を確保する為、水系では、スライムやスケールといった汚れ(以下、単に「汚れ」と称することがある。)の発生状況を調査・判定して、各種水処理剤の添加時期や添加量を決定している。
浴槽、配管、タンク、冷却塔等の水系内に発生する汚れの発生状況判定方法として、システム中に透明な容器及びその両側に投光部と受光部を配置し、透明容器を介して水槽内を通過する光の透過度を測定して、水の汚れ状況や壁面への汚れの付着程度を判断する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特に、特許文献3には、透明容器及びその両側に投光部と受光部を冷却水系システムに配置し光の透過度を測定することにより、冷却水系の配管のスライム付着状況を測定する方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、前記した如き光透過方式の方法には、以下のような問題点があった。
(1)システム中に透明な容器を設置して、その中に冷却水を流す必要があり、光透過方式による測定を具現化するための新規設備が必要になり、付加的費用が大きくなる。
(2)投光部及び受光部とも電気機器で構成されているので、その設置のためには、機器が水と接触しないように防水加工を施す必要があり、設備が大掛かりとなる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−331492号公報
【特許文献2】特開平5−322767号公報
【特許文献3】特開2002−282866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の欠点を解消し、光透過方式により、冷却水をはじめ、白水、浴槽水、修景水などの水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)を検知する方法において、水系システム中に透明な容器及びその両側に防水処理の必要な投光部と受光部を配置した設備を必要とすることなく、つまり、コストのかかる方法ではなく、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)を簡便に検知しうる方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、水系の水中に設置された光ファイバーの端から照射される照射強度の安定した光源からの照射光を、太陽電池パネルに照射した際に発生する起電力の変化を測定することにより、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知することができることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに到った。
【0007】
即ち、請求項1に係る本発明は、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する方法において、照射強度の安定した光源と、一方の端が前記照射強度の安定した光源と接続され他方の端が水系の水中に設置された光ファイバーと、前記水系の水中に設置された前記光ファイバーの端から照射される前記照射強度の安定した光源からの照射光が受光可能に、且つ前記水系の水中に設置された太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルによって発生する起電力を測定する起電力測定器と、を備えた装置を用い、前記照射強度の安定した光源からの照射光を前記太陽電池パネルに照射した際に発生する起電力の変化を測定することにより、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する方法を提供する。
請求項2に係る本発明は、照射強度の安定した光源と、一方の端が前記照射強度の安定した光源と接続され他方の端が水系の水中に設置された光ファイバーと、前記水系の水中に設置された前記光ファイバーの端から照射される前記照射強度の安定した光源からの照射光が受光可能に、且つ前記水系の水中に設置された太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルによって発生する起電力を測定する起電力測定器と、を備えた、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光透過方式により、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する方法において、水系システム中に透明な容器及びその両側に防水処理の必要な投光部と受光部を配置した設備を必要とすることなく(つまり、コストのかかる方法ではなく)、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)を簡便に検知することが可能となる。
即ち、本発明によれば、汚れの検出部となる太陽電池パネルは、一般に防水性に優れており、市販のものを直接水中に設置することができ、また、光伝達手段として用いる光ファイバーも水中で安定した性能を発揮することができるので、水系システム中に透明な容器を設置するというような、付加的な対策が不要となる。
加えて、従来の光の透過方式による判定方法では対応せざるを得ない防水加工も、本発明については不要であり、簡便な方法とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する方法及び装置は、冷却水をはじめ、白水、浴槽水、修景水などの如何なる水系においても用いることができるが、特に、以下の図1を参考にして、冷却水系システムを例にとり、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態を、冷却水系システムを例にとり、概略的に示す図である。
冷却水系システム1は、本発明の水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する装置を備えたものであって、本発明に係る冷却水系のスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する装置を備えること以外は、通常の冷却水系システムである。
【0011】
冷却水系システム1は、主に、冷却塔2と、冷却水用配管3a〜3cと、送水ポンプ4と、熱交換器5と、発光ダイオード10と、光ファイバー11と、太陽電池パネル12と、起電力測定器13と、からなる。
このうち冷却塔2と、冷却水用配管3a〜3cと、送水ポンプ4と、熱交換器5とが主に冷却水系システムを構成する。なお、図中、符号6は散水管、符号7はファン、符号8は冷却水である。
残りの発光ダイオード10と、光ファイバー11と、太陽電池パネル12と、起電力測定器13とが主に本発明に係る水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する装置を構成する。なお、図中、符号14は電源、符号15は遮蔽版、符号16は電気ケーブルである。
【0012】
冷却水系システム1は、製鉄、化学、石油化学等の各種工場の製造工程又はビル等で空調用の熱源を冷却することができる、循環式の水系を有するシステムである。
この水系において、冷却塔2内に溜められた冷却水8は、送水ポンプ4から供給される揚力により冷却水用配管内を送水され、熱交換器5を通過する際に熱源から熱を奪うことで、熱源を冷却する。その後、熱交換器5を通過後に高温となった冷却水は、冷却塔2に再び戻り、散水管6で散水時にファン7からの送風により冷却され、再び冷却塔2に溜められる。
【0013】
冷却塔2としては、前記したような製鉄、化学、石油化学等の各種工場の製造工程用の冷却水系、又はビルで空調用に用いられている冷却水系において、従来用いられている如何なるものでも用いることができるが、特に下部に冷却水を溜めることができる水槽を備えた構造のものを用いることができる。
冷却塔2の下部水槽には冷却水8を溜めることができ、水槽には冷却水用配管3aが接続されている。冷却水用配管3aは送水ポンプ4と接続されている。
【0014】
送水ポンプ4としては、如何なるものでも用いることができる。送水ポンプ4は、さらに冷却水用配管3bが接続されており、冷却水用配管3bは熱交換器5に接続されており、冷却水が循環する揚力を供給している。
この送水ポンプ4が供給する揚力により、冷却塔2に溜められている冷却水8は、冷却水用配管3a、送水ポンプ4、そして冷却水用配管3bを経て、熱交換器5に送水される。
【0015】
熱交換器5は、前記熱源からの熱を伝導する伝導体と冷却水とが接触する構造の周知の装置である。送水ポンプ4により送水された冷却水は、熱交換器5を通過する際に熱源から熱を奪うことで、熱源を冷却する。
熱交換器5としては、冷却水用の配管を備えており、冷却水を通過させることができるものであれば、従来用いられている如何なるものでも用いることができる。
熱交換器5には、冷却水用配管3cが接続されており、冷却水用配管3cは冷却塔2内の散水管6と接続されている。
熱交換器5を通過後に高温となった冷却水は、冷却塔2内の散水管6により散水又は噴霧される。散水管6から散水又は噴霧された冷却水は、微細な水滴又は霧状になって冷却塔2の下部に落下し、この時ファン7からの送風により冷却される。
冷却後の冷却水は、再び冷却塔2に溜められ、冷却水系システム1の水系を再び循環する。
【0016】
冷却水系システム1の水系のスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)は、本発明の水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)を検知する方法により、簡便に測定することができる。
【0017】
本発明に係る水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する装置は、照射強度の安定した光源と、一方の端が前記照射強度の安定した光源と接続され他方の端が水系の水中に設置された光ファイバーと、前記水系の水中に設置された前記光ファイバーの端から照射される前記照射強度の安定した光源からの照射光が受光可能に、且つ前記水系の水中に設置された太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルによって発生する起電力を測定する起電力測定器と、を備えたものである。
即ち、冷却水系システム1の水系のスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)の検知は、発光ダイオード10と、光ファイバー11と、太陽電池パネル12と、起電力測定器13と、から構成される、本発明に係る水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する装置により、行うことができる。
以下に冷却水系システム1を例に、本発明に係る水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)を検知する装置の構成及び動作を具体的に説明する。
【0018】
本発明において、照射光を照射する光源としては、照射強度の安定した光源であれば如何なるものでも用いることができるが、具体的には、冷却水系システム1で例示したように、発光ダイオード10を用いることが好適である。
発光ダイオードは、使用耐用年数も極めて長いことから、一定光量の光(LED光)を安定して供給できるため、照射強度の安定した光源として、本発明の照射光の光源に好適に用いることができる。
本発明に用いる発光ダイオード10としては、公知の発光ダイオードの如何なるものでも使用できるが、具体的には60mWの白色のものを使用することができる。
発光ダイオード10は、光ファイバー11の一方の端と接続されている。
【0019】
発光ダイオード10は、電源14に接続されており、電源14は発光ダイオード10の電源として電力を供給する。
電源14は、発光ダイオード10に直流電流を供給できるものであれば、電池、バッテリーなど如何なるものでも用いることができるが、長時間連続的にモニタリングする場合が多いので、一般的には交流電源を変換器で直流電源に変換するAC/DC電源が用いられる。
【0020】
発光ダイオード10と接続していない、光ファイバー11の他方の端は、水系の水中に設置される。
さらに、水系の水中には、前記水系の水中に設置された光ファイバー11の端から照射される発光ダイオード10からの照射光が受光可能なように、光ファイバー11の端に近接して太陽電池パネル12が設置されている。
具体的には、照射光を照射する光ファイバー11の端と太陽電池パネル12との距離は、10〜30mm、好ましくは15mm程度とすることが望ましい。
【0021】
なお、本発明に用いる光ファイバー11は、防水性を有し沈水状態で使用できるものであれば如何なるものでも使用できる。通常市販されている光ファイバーは、水中で安定した性能を発揮するものとされている。
また、本発明に用いる太陽電池パネル12は、防水性を有し沈水状態で使用できるものであれば如何なるものでも使用できる。通常市販されている太陽電池パネルは、太陽電池素子をガラス板と樹脂板とでサンドイッチした如き構造等を有しており、防水性に優れている。太陽電池パネル12としては、具体的には、20×40mm程度の大きさのものを用いることができる。
【0022】
本発明における「発光ダイオード10と接続していない側の光ファイバー11の端」及び「太陽電池パネル12」の設置場所としては、水系の水中、即ち、配管、タンク、水槽、浴槽、冷却塔内などの水中であれば如何なる場所でも設置することができるが、具体的には、図1における冷却水系システム1で示すように、冷却塔2内の下部水槽に設置することができる。
【0023】
なお、太陽電池パネル12を水系の水中に設置するときに、太陽電池パネル12を水平に設置すると、各種の汚れが太陽電池パネル12上に堆積し、本来の水の汚れ状況や壁面への付着程度を判断する妨げとなるので、太陽電池パネル12は垂直に立てて設置するのが望ましい。
また、自然光等、他の光源が太陽電池パネル12に達すると、自然光の昼夜による光エネルギーの強弱等が起電力に誤差として影響する。従って、太陽電池パネル12には、発光ダイオード10からの照射光(LED光)のみが受光されるよう、遮蔽板15により自然光等の光源を遮断することが望ましい。
なお、遮蔽板15は、耐水性及び遮光性を有する素材のものであれば如何なるものでも使用できるが、発光ダイオード10と接続していない側の光ファイバー11の端と太陽電池パネル12とを、自然光等の光源を完全に遮断するように覆う又は取り囲むように設置することが望ましい。
【0024】
太陽電池パネル12は、電気ケーブル16と接続されており、電気ケーブル16は起電力測定器13と接続されている。
発光ダイオード10からの照射光が太陽電池パネル12に照射されたときに発生する起電力は、電気ケーブル16を介して起電力測定器13で測定される。
電気ケーブル16は、防水性を有し沈水状態で使用できるものであれば如何なるものでも使用できる。
起電力測定器13は、接続された電気ケーブル16を介して送電される起電力を測定できるものであれば如何なるものでも使用でき、具体的には、テスターを用いることができる。
また、起電力測定器13をデータロガーなどの経時的データの記録が可能な機器と接続することで、太陽電池パネル12で発生する起電力の変化をモニタリングすることもできる。
本発明に係る水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)を検知する装置は、以上の如きものである。
【0025】
次に、上記構成からなる水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)の検知装置を用いた、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)を検知する方法について説明する。
即ち、上記構成からなる水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)の検知装置を用い、発光ダイオード10からの照射光を太陽電池パネル12に照射した際に発生する起電力の変化を測定することにより、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知するのであるが、以下、具体的に説明する。
【0026】
まず、測定開始時(基準時)に、発光ダイオード10から測定光を太陽電池パネル12に照射し、その時に発生した太陽電池パネル12からの起電力の電圧値(起電力測定器13で測定)をVとする。
測定開始時から、ある程度の日数が経過し、水中に汚れが発生・増加するとともに、太陽電池パネル12表面にもスライムやスケール(汚れ)が付着し、経過日数とともにスライムやスケール(汚れ)の付着度合も増加する。
太陽電池パネル12表面にスライムやスケール(汚れ)が付着すると、太陽電池パネル12表面に到達する照射光(LED光)の光エネルギーの量が減少し、その結果、太陽電池パネル12からの起電力が低下する。従って、太陽電池表面への汚れの付着度合が増加するにつれて、測定開始時と比較した時の起電力の低下量も大きくなる。
【0027】
そこで、測定開始時(基準時)からα日経過した時の太陽電池パネル12からの起電力による測定電圧値をVαとすると、起電力低下量dV0−αは、下記の数式(1)で表される。
【0028】
【数1】

【0029】
前記したように、太陽電池パネル12表面へのスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)は、起電力低下量dV0−αと相関関係を示す。従って、太陽電池パネル12の起電力低下量dV0−αを測定することにより、太陽電池パネル12に付着したスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)を測定することができる。
【0030】
なお、太陽電池パネル12と水系の内壁では、スライム及び/又はスケールの付着する度合に相関が見られることから、上記方法で測定した太陽電池パネル12に付着したスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)から、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)を検知することができる。
なお、本発明の水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)の検知装置を複数セット設置することで、より精度の高い汚れの検知が可能となる。
【0031】
なお、上記した水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)の検知装置は、設備の増設などを必要とせずに、既存の如何なる水系システムにも取り付けることが可能である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0033】
実施例1
図1に示す如き冷却水系システムにおいて、スライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)を経時的に測定した。
100RT(冷凍トン)の実機冷却塔2の下部水槽に、大きさ20×40mmの太陽電池パネル12を浸漬し、60mWの白色LEDを光源として光ファイバー11を用いて、太陽電池パネル12の表面より15mm離れた位置から光を照射し、起電力測定器13(横河電機(株)製)を用いて太陽電池パネルの起電力を経時的に測定した(本発明)。
また、比較のために、100RT(冷凍トン)の実機冷却塔2の下部水槽に、大きさ76mm×26mm×1mmのスライドグラスを10枚浸漬し、1週間に1枚ずつ取り出して、乾燥後、分光光度計(島津製作所製UV160)を用いて波長660nmの光の透過率を求めることで、スライドグラス表面の汚れ具合を判断した(対照)。
【0034】
最初の6週間は無処理で、その後4週間は微生物防除剤として、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを冷却水系で2mg/Lの濃度に維持するように薬品を添加した条件で試験を行った。
結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示すように、太陽電池パネルが発生する起電力は、測定開始時から日数の経過とともに減少し、42日経過後には37mV(測定開始時の46.3%)に減少した。同様に、スライドグラスの透過率も、測定開始時から日数の経過とともに減少し、42日経過後には37%に減少した。
また、微生物防除剤添加後の4週間は、太陽電池パネルが発生する起電力は65〜73mV(測定開始時の81〜91%)となり、スライドグラスの透過率は75〜85%まで回復した。
【0037】
この結果から、太陽電池パネルが発生する起電力(本発明)とスライドグラスの透過率(対照)には相関関係が示され、日数の経過とともに太陽電池パネル表面への付着物が、太陽電池パネルの起電力を低下させていることが示唆された。
また、微生物防除剤添加後に太陽電池パネルが発生する起電力、及び、スライドグラスの透過率ともに回復したことから、太陽電池パネル表面とスライドグラス表面の付着物の多くは、スライム(細菌類で構成される微生物膜)であることが示唆された。
なお、微生物防除剤で除去できない付着物のほとんどは、非生物性のスケールなどで構成されていると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、冷却水をはじめ、白水、浴槽水、修景水などの水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合(汚れの状況)を、新たな設備の増設などを必要とせずに(つまり、コストのかかる方法でなく)、簡便に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係る冷却水系システムを概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 冷却水系システム
2 冷却塔
3a,3b,3c 冷却水用配管
4 送水ポンプ
5 熱交換器
6 散水管
7 ファン
8 冷却水
10 発光ダイオード
11 光ファイバー
12 太陽電池パネル
13 起電力測定器
14 電源
15 遮蔽板
16 電気ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する方法において、照射強度の安定した光源と、一方の端が前記照射強度の安定した光源と接続され他方の端が水系の水中に設置された光ファイバーと、前記水系の水中に設置された前記光ファイバーの端から照射される前記照射強度の安定した光源からの照射光が受光可能に、且つ前記水系の水中に設置された太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルによって発生する起電力を測定する起電力測定器と、を備えた装置を用い、前記照射強度の安定した光源からの照射光を前記太陽電池パネルに照射した際に発生する起電力の変化を測定することにより、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する方法。
【請求項2】
照射強度の安定した光源と、一方の端が前記照射強度の安定した光源と接続され他方の端が水系の水中に設置された光ファイバーと、前記水系の水中に設置された前記光ファイバーの端から照射される前記照射強度の安定した光源からの照射光が受光可能に、且つ前記水系の水中に設置された太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルによって発生する起電力を測定する起電力測定器と、を備えた、水系におけるスライム及び/又はスケールの付着度合を検知する装置。

【図1】
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