説明

水系常温硬化型塗料組成物およびそれを用いて表面に塗膜を形成した成形部材製品

【課題】配合液が長時間のポットライフを有し、かつ常温乾燥の環境下でも迅速に硬化し、強靭で耐擦過性にすぐれ、表面光沢の良好な皮膜を得ることのできる水性塗料組成物およびその組成物による塗膜を表面に形成した成形部材製品を提供する。
【解決手段】(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂、(B)一分子中に2個以上のアミノ基を有していて水に可溶または水に分散可能な多価アミン化合物、および(C)水に可溶または水に分散可能なポリグリシジル化合物から水系常温硬化型塗料組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配合液が長時間のポットライフを有し、かつ常温乾燥の環境下でも迅速に硬化し、強靭で耐擦過性にすぐれ、表面光沢の良好な皮膜を得ることのできる水系常温硬化型塗料組成物およびそれを用いて表面に塗膜を形成した成形部材製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料業界においては、最近の環境問題への高まりから、有機溶剤を含まない、もしくはごく僅かな有機溶剤しか含まない水性塗料が要望されている。このような水性塗料の主成分としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等のポリマーにカルボキシル基を持たせ、金属塩やアミン化合物によって中和することで水に自己乳化させることが可能なアニオン型ポリマーおよびそれらのブレンド物が用いられている。
【0003】
しかしながら、水系樹脂は常温乾燥用塗料として用いた場合、溶剤系塗料に比べて皮膜の耐擦過性、耐水性、耐アルコール性等の物性に劣ることが指摘され、その解決が要望されている。その解決策の最も有効な手段の一つとして、硬化剤を用いて架橋構造を形成する塗料とすることが挙げられる。
【0004】
例えば、溶剤系塗料で広く使用されているポリオールとポリイソシアネートの重縮合を利用した2成分硬化塗料は公知であるが、このようなタイプの塗料を水系に応用したものとしては、オレフィン性ポリオールの水分散体と、これに乳化の形で存在するポリイソシアネートとの2成分系塗料用組成物(特許文献1)や、ポリウレタンまたはポリエステルポリオールの水分散体と、これにエマルジョンの形で存在するポリイソシアネートとの2成分系塗料用組成物(特許文献2)などが知られている。
【0005】
しかしながら、イソシアネート硬化剤を水系に使用する場合は、イソシアネート基の化学的性質から水と反応するため、主材と硬化剤の配合比を考慮して設計する必要がある。ところが、常温乾燥の場合、これら塗料から得られる塗膜の性能や品質は、乾燥時の温度や湿度の条件の変化によって、水とイソシアネート硬化剤との反応率が変化し、物性に影響を及ぼし、一定の物性のものを得ることが困難となる。
【0006】
また、一般的に水系塗料にイソシアネート硬化剤を投入した場合、イソシアネート硬化剤は常温でも数時間で水と反応し、ゲル化を起こしたり、主剤のポリオール成分のOH基に対して反応不活性な化合物に変化してという問題がある。
【0007】
このようなことから、水系の硬化剤には、化学的性質において水との反応の影響を受けないカルボジイミド系の化合物とカルボキシル基との反応や、エポキシ系化合物とカルボキシル基との反応によって架橋させる手法も用いられる。
【0008】
例えば、一分子あたり2個以上のエポキシ基を有する親水性のエポキシ化合物と、エポキシ基と反応可能な官能基を含んだビニル芳香族重合体エマルジョンとの塗料組成物(特許文献3)が知られている。
【特許文献1】特開平2−105879号公報
【特許文献2】特開平4−337310号公報
【特許文献3】特開昭62−116671号公報
【0009】
しかしながら、上記特許文献3のような、カルボキシル基との反応を利用した硬化剤は、主剤に含有されているカルボキシル基のアミン塩が水の蒸発とともに大気に蒸発したときに、始めてカルボキシル基と反応を起こすため、概して常温では反応が遅く、また硬化速度も気温や湿度に大きく左右されてしまう。また、ナトリウムなど金属イオン性のカルボン酸塩に対しては、水の蒸発後もカルボン酸塩としてポリマー内に存在するため、ポリマーと硬化剤の架橋反応が十分に起こらず性能を発揮しがたいという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、上記した問題を解決すべく鋭意検討した結果、配合液が長時間のポットライフを有し、かつ常温乾燥の環境下でも迅速に硬化し、強靭で耐擦過性にすぐれ、表面光沢の良好な塗膜を得ることのできる水系常温硬化型塗料組成物およびそれを用いて表面に塗膜を形成した成形部材製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂、(B)一分子中に2個以上のアミノ基を有していて、水に可溶または水に分散可能な多価アミン化合物、および(C)水に可溶または水に分散可能で、25℃における粘度が50000mPa・s以下であるポリグリシジル化合物からなる水系常温硬化型塗料組成物を特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂が、水で希釈または分散可能なカルボキシル基を含んだポリウレタン樹脂(A−1)、水で希釈または分散可能なカルボキシル基を含んだビニルモノマー共重合体(A−2)、水で希釈または分散可能なカルボキシル基を含んだポリウレタン樹脂(A−1)をビニルモノマー共重合体で変性したポリウレタンアクリル樹脂(A−3)、あるいは上記(A−1)と(A−2)の混合物(A−4)からなることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2に記載の発明において、(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂中のカルボキシル基の含有量に対して、(B)一分子中に2個以上のアミノ基を有していて、水に可溶または水に分散可能な多価アミン化合物中の活性アミノ基の含有量が当量比で0.1〜20.0であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1乃至3の何れかの項に記載の発明において、(C)水に可溶または水に分散可能で、25℃における粘度が50000mPa・s以下であるポリグリシジル化合物中のグリシジル基の含有量が、(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂中のカルボキシル基の含有量と、(B)一分子中に2個以上のアミノ基を有していて、水に可溶または水に分散可能な多価アミン化合物中の活性アミノ基の含有量の総量に対して、当量比で0.3〜1.8であることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1乃至4の何れかの項に記載の水系常温硬化型塗料組成物を用いて、表面に皮膜を形成した金属部材、無機系部材、木質部材、プラスチック成形部材製品を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
上記請求項に記載したこの発明の水系常温硬化型塗料組成物は、(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂、(B)一分子中に2個以上のアミノ基を有していて、水に可溶または水に分散可能な多価アミン化合物、(C)水に可溶または水に分散可能で、25℃における粘度が50000mPa・s以下であるポリグリシジル化合物、の3成分からなるもので、常温で硬化し、かつ適度なポットライフの調整が可能であり、またこの組成物を金属部材、無機系部材、木質部材、あるいはABS、PVC、ポリオレフィン等のプラスチック成形部材の表面に塗装すると、強靭で耐擦過性にすぐれ、表面光沢の良好な皮膜を形成することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明を詳細に説明する。まず、この発明で主成分の1つである(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂としては、水で希釈または分散可能なカルボキシル基を含んだポリウレタン樹脂(A−1)、水で希釈または分散可能なカルボキシル基を含んだビニルモノマー共重合体(A−2)、水で希釈または分散可能なカルボキシル基を含んだポリウレタン樹脂(A−1)をビニルモノマー共重合体で変性したポリウレタンアクリル樹脂(A−3)、あるいは上記(A−1)と(A−2)の混合物(A−4)の少なくとも1種を使用すればよい。
【0018】
上記の(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂のそれぞれについて説明すると、水で希釈または分散可能なカルボキシル基を含んだ水系ポリウレタン樹脂(A−1)は、ポリウレタン樹脂に含有するカルボキシル基が親水性となって水中に安定に分散したものである。この水系ポリウレタン樹脂(A−1)は、ポリオールおよび低分子グリコール、ジオール成分としてカルボキシル基をポリマー内に含有する化合物とポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタンを、カルボキシル基の一部または全部を中和させるのに使用する塩基性化合物、ジオール、ジアミン、ジカルボン酸等のような2個以上の活性水素を持つ低分子量化合物により鎖延長することで得られる。
【0019】
上記で用いるポリオールとしては、耐久性とソフトな触感にすぐれる塗膜が得られることから、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、オレフィン系ポリオール、水添オレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、およびひまし油ポリオール等が用いられる。
【0020】
ポリエステル系ポリオールとしては、多価カルボン酸と多価アルコールとのエステル化反応で得られるものが挙げられる。多価カルボン酸ととしては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、メタコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0021】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、N−アルキルジエタノールアミン、スピログリコール、あるいはこれらの多量体(2量体、8量体など)などがあり、これらは単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0022】
ポリエーテル系ポリオールとしては、上記した多価アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加重合させることによって得られるものが挙げられる。
【0023】
ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えばポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオールなどが用いられる。
【0024】
オレフィン系ポリオールとしては、例えば、1,4−ポリブタジエンと1,2−ポリブタジエンからなるポリオールが挙げられる。水添ポリブタジエンポリオールとしては、ポリブタジエンポリオールを水素添加したパラフィン骨格を持ったものが好ましい。
【0025】
アクリルポリオールとしては、水酸基を有するモノマーの共重合体がよく、水酸基含有モノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ジヒドロキシアクリレートなど、エポキシポリオールとしては、アミン変性エポキシ樹脂等がある。
【0026】
その他、シリコーンポリオールとしては、片末端あるいは両末端に活性水素を2個有するジメチルポリシロキサンジオール、メチルフェニルポリシロキサンジオール、アミノ変性シリコーンオイル、両末端ジアミン変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、カルボキシル基変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルがあり、これらを単独で、あるいは併用して用いることができる。ひまし油系ポリオールも使用可能である。
【0027】
また、低分子グリコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の2価のアルコールを用いることもできる。
【0028】
一分子中に水酸基を3個以上の多数有する低分子グリコールとして、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリンのような3価のアルコールや、4価のアルコールであるペンタエリスリトール、さらにソルビトールなどの6価のアルコールも使用することができる。これらのポリオールは単独で、または2種以上を併せて用いることもできる。
【0029】
ジオール成分として、カルボキシル基含有ポリオールを用いると、自己乳化性のポリウレタンを得ることができる。カルボキシル基を含有する化合物とは、分子中にイソシアネート基と反応する活性水素基を2個以上有するカルボン酸塩基形成可能な化合物である。このカルボン酸塩基を形成する化合物は、ウレタン樹脂の骨格中にカルボキシル基として組み込まれ、アミン化合物などによるイオン化によってウレタン樹脂に親水性を付与する働きをするものである。
【0030】
これによって、ウレタン樹脂が十分な水分散性を発揮することができる。カルボン酸基を含有する素材としては、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3、5−ジアミノ安息香酸、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸や無水フタル酸とのハーフエステル化合物等が挙げられる。
【0031】
ポリイソシアネートとしては、例えば芳香族系と脂肪族または脂環式系などを用いることができ、芳香族系ポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)など、脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなど、脂環式系ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、TDIの水素添加物等が挙げられる。その他キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネートも使用でき、これらは単独または併用することもできる。
【0032】
また、必要に応じて上記TDI、HMDI、IPDI等の3量体、あるいはトリメチロールプロパン等との反応物である多官能性イソシアネートを少量併用することも可能である。ウレタンプレポリマーを水に分散する際のイソシアネート基と水との反応性、および得られる樹脂の耐候性の点から脂肪族系または脂環式系イソシアネートが好ましい。
【0033】
次に、カルボキシル基の一部または全部を中和させるのに使用する塩基性化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミンのような各種のアルキルアミンをはじめ、さらにはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンのような各種のアミノアルコール類、またはモルホリンのような有機アミン類、あるいはアンモニアなどが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0034】
鎖長延長剤は、ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基と反応しうる活性水素を分子中に2個以上有し、ウレタンプレポリマーの末端と反応して高分子量のウレタン樹脂を生成させるものであり、そのような2個以上の活性水素をもつ低分子量の化合物としては、ジオール、ジアミンのような公知の材料を用いればよく、例えばジオール成分としては、さきに述べたポリオール類が挙げられ、またジアミンとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン類、ヒドラジン、ヒドラジド化合物などが適当である。これらの鎖長延長剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を適宜配合して用いてもよい。
【0035】
次に、(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂の一つである、水で希釈または分散可能なカルボキシル基を含んだビニルモノマー共重合体(A−2)は、カルボキシル基含有単量体および該カルボキシル基含有単量体とラジカル重合可能な単量体を水性媒体中で乳化重合させたのち、塩基性化合物で中和して得られる樹脂である。
【0036】
上記のカルボキシル基含有単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の一塩基酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の二塩基酸およびこれらの半エステル類が挙げられ、一種または二種以上の混合物として、所望の塗膜性能が得られるような量が使用されるが、メタクリル酸を多用するのが好ましい。
【0037】
カルボキシル基含有単量体とラジカル重合可能な単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸エステル類、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、メチルビニルケトン等のビニルケトン類、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有単量体、ブタジエン、イソプレン等のジエン類、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド含有単量体類、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸(2−ヒドロキシメチル)エチル、アクリル酸(2−ヒドロキシメチル)ブチル、(メタ)アクリル酸(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステル類、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテルの如き水酸基を含有するアリル化合物、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基を含有するビニルエーテル化合物、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールクロトン酸アミドのような水酸基を有する不飽和カルボン酸アミド化合物、リシノール酸等の水酸基含有不飽和脂肪酸、リシノール酸アルキル等の水酸基含有不飽和脂肪酸エステル類、水酸基含有モノマーをエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの如きアルキレンオキサイドと付加反応せしめて得られる単量体、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等の3級アミノ基含有単量体、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体、フタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、アクリル酸アリル、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の一分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体および該カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体を用いて得られる共重合体の重合方法は、得られる共重合体の重合反応操作および分子量調節が容易であることから、例えば乳化重合法、有機溶剤を用いた溶剤重合法および塊状重合法等のラジカル重合開始剤を用いた方法が挙げられる。
【0039】
共重合体の製造方法である乳化重合法は、乳化剤を添加した水中で、モノマーを添加、攪拌しながら乳化分散させて反応する方法である。例えば、水または必要に応じてアルコールなどのような有機溶剤を含む水性媒体中に乳化剤を添加し、加熱攪拌下カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体、カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体およびラジカル重合開始剤等を一括投入、連続滴下あるいは分割投入して、重合反応させる方法である。この時、乳化剤と水とを用いて予め乳化させた各種ラジカル重合性単量体を同様に滴下してもよい。
【0040】
乳化重合法で使用することのできる乳化剤としては、一般的に乳化重合で用いられているものであれば、アニオン性、カチオン性、およびノニオン性の何れの乳化剤でも特に制限なく使用することができる。
【0041】
アニオン性乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル硫酸エステル、ジアルキルサクシネートスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0042】
カチオン性乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0043】
また、ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。また、一般的に反応性乳化剤と称されるラジカル重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤も使用することができる。
【0044】
共重合体の製造方法である乳化重合法の重合条件のうち、過硫酸系、過酸化物系開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス反応でも製造処方として使用可能である。
【0045】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリルまたはその塩酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドあるいは過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。また、これらのラジカル重合開始剤とともに、還元剤を併用することも可能であり、例えばナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸等を使用することできる。
【0046】
共重合体の分子量を調整するために、連鎖移動剤を使用することができる。それらのうち代表的なものとしては、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ヘキサデシルメルカプタンなどのような各種のアルキルメルカプタン類、ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンなどのような各種のアルキルベンジルメルカプタン類、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、などのような各種のチオカルボン酸類あるいはその塩類、n−ブチルチオグリコネート、ドデシル−3−メルカプトプロピオネートなどのような各種のチオカルボン酸アルキルエステル類、モノエタノールアミンチオグリコレートのような含窒素チオール類、トリメトキシシリルプロピルメルカプタンに代表されるような各種の反応性官能基含有メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマーのような各種のダイマー型連鎖移動剤などが挙げられ、これらは1種または2種以上を併用することができる。
【0047】
また、共重合体の製造方法である乳化重合法としては、前述した乳化重合法に加えて、例えば無乳化剤乳化重合法、シード乳化重合法、マイクロエマルション重合法、パワーフィード法、ショットグロース法などの種々の方法を適用することも可能である。
【0048】
次に、得られた重合体の酸基の一部または全部を中和させるのに使用する塩基性化合物については、特に限定されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、イソブチルアミンまたはジプロピルアミンのようなアルキルアミン、さらには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンのようなアミノアルコール類、またはモルホリンのような有機アミン類やアンモニアなどが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物として用いることができる。
【0049】
次に、(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂の一つである、水で希釈または分散可能なカルボキシル基を含んだポリウレタン樹脂をビニルモノマー共重合体で変性したポリウレタンアクリル樹脂(A−3)は、上述したカルボキシル基を含んだポリウレタン樹脂(A−1)の製造途中または製造後に、上述したラジカル重合可能な単量体を投入して乳化重合を行い、水中に安定なミセルを形成し、存在させることができる樹脂である。
【0050】
この発明で、(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂とともに、主成分の一つとして使用する(B)一分子中に2個以上のアミノ基を有し、水に可溶または水に分散可能な多価アミン化合物について説明すると、このような化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、メラミン、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、N,N,N′,N′−ペンタグリシジルジエチレントリアミン、N,N,N′,N′−テトラグリシジルエチレンジアミンなどを用いることができる。この他、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどがあり、特に、二塩基酸のジヒドラジド化合物を用いた場合に、密着性、強度等の特性にすぐれた樹脂皮膜を得ることができる。
【0051】
次いで、この発明で、上記した(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂、(B)一分子中に2個以上のアミノ基を有し、水に可溶または水に分散可能な多価アミン化合物、とともに主成分の一つとして使用する、(C)水に可溶または水に分散可能なポリグリシジル化合物としては、ジグリシジルエーテルあるいはポリグリシジルエーテルからなる群から選択される。即ち、ジグリシジルエーテルとしては、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジグリシジルオルソフタレート、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート等が挙げられ、なかでも、グリセロールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルが好適である。
【0052】
この発明の水系塗料組成物において、主成分として用いる上述した(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂と、(B)一分子中に2個以上のアミノ基を有し、水に可溶または水に分散可能な多価アミン化合物と、の使用割合については、(A)のカルボキシル基を含有する水系樹脂中のカルボキシル基の含有量に対して、(B)一分子中に2個以上のアミノ基を有し、水に可溶または水に分散可能な多価アミン化合物中の活性アミノ基の含有量が、当量比で0.1〜20.0(好ましくは0.3〜10.0)とすることが必要であり、この範囲内であれば、(C)水に可溶または水に分散可能で、25℃における粘度が50000mPa・s以下であるポリグリシジル化合物を添加したときに、常温で長時間のポットライフを保持するとともに、この組成物からなる塗膜の迅速な硬化を実現することができる。
【0053】
上記(C)として用いるポリグリシジル化合物について、その粘度を25℃で50000mPa・s以下と規定するのは、主成分として同時に用いる上記(A)、(B)材料との混合を容易にするためであって、上記以上の粘度にすると、3者の混合が困難となって作業性が悪くなり、また得られる皮膜の均一性も劣るためである。
【0054】
このようなポリグリシジル化合物(C)の使用量については、(A)のカルボキシル基を含有する水系樹脂中のカルボキシル基の含有量と、(B)の多価アミン化合物中の活性アミノ基の含有量の総量に対して, ポリグリシジル化合物(C)中のグリシジル基の含有量が、当量比で0.3〜1.8(好ましくは0.5〜1.2)であれば、塗膜の耐水性や耐擦過性が良好である。これは、グリシジル基の含有量が0.3未満あるいは1.8を超えると、架橋密度が低下して得られた塗膜の物性も低下するためである。
【0055】
この発明の水系塗料組成物を得るに当たっては、この組成物を用いて得られる塗膜の光沢や平滑性をより向上させるために、消泡剤やレべリング剤を用いたり、顔料や無機シリカ、有機ビーズなどを分散、充填させて着色あるいは艶消し状の塗膜とすることもできる。
【0056】
かくして得られるこの発明の水系常温硬化型塗料組成物は、金属部材、珪酸カルシウム等を主成分とする無機系部材、木質部材、ABS、ポリオレフィン、PVCなどのプラスチック成形部材等の表面に適用して、常温乾燥の環境下でも迅速に硬化して
強靭で耐擦過性にすぐれ、表面光沢の良好な皮膜を有する塗装製品を得ることができるのである。
【0057】
以下、製造例、実施例によりこの発明を詳細に説明するが、この発明はこれらの製造例および実施例によって何ら限定されるものではない。なお、部数はすべて重量部である。
(製造例1) 水系ポリウレタン樹脂分散液PUD−1の製造
【0058】
冷却管、温度計、仕込み口、攪拌装置を備えた1リットルの4つ口セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサングリコールとアジピン酸を縮合重合して得られた両末端に水酸基を有する平均分子量2000のポリエステルポリオール600部、ネオペンチルグリコール100部、2,2−ジメチロールプロピオン酸112.5部を秤取し、これらにN−メチルピロリドン534.3部を加え、さらに4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート786部を加えて110℃で加熱したのち、ジオクチル錫ジラウレート0.3部を加えて2時間攪拌した。その後、トリエチルアミン84.8部、イオン交換水2523.2部を加えて均一に溶解分散させた。次いで、攪拌しながらN−(2−アミノエチル)エタノールアミン93.6部を加え、40℃に保って水系ポリウレタン樹脂分散液PUD−1を得た。
(製造例2) 水系アクリル分散液ACQ−1の製造
【0059】
冷却管、温度計、仕込み口、攪拌装置を備えた1リットルの4つ口セパラブルフラスコに、イソプロパノール240部、n−ブタノール120部、メチルメタクリレート646部、ブチルメタクリレート90部、ポリエチレングリコールメタクリレート(日本油脂社製、商品名 ブレンマーPE200)90部、メタクリル酸45.6部を秤取し、60℃まで昇温した。次いで、攪拌下アゾビスイソブチロニトリル17.5部を滴下して80℃まで昇温し、3時間還流を行った。その後反応液の転化率が99%以上であることを確認したのち、30℃まで冷却し、トリエチルアミン52.8部を加えて均一に混合した後、攪拌しながらイオン交換水1238.5部を滴下して水系アクリル分散液ACQ−1を得た。
(製造例3) ポリウレタンアクリル樹脂分散液PUAC−1の製造
【0060】
冷却管、温度計、仕込み口、攪拌装置を備えた1リットルの4つ口セパラブルフラスコに、メチルメタクリレート270部、ブチルアクリレート135部、ポリエチレングリコールメタクリレート45部、1,6−ヘキサングリコールとアジピン酸を縮合重合して得られた両末端に水酸基を有する平均分子量2000のポリエステルポリオール269部、ネオペンチルグリコール35部、ジメチロールブタン酸50部を仕込み、60℃まで昇温して均一攪拌を行った。次いで、攪拌下4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート353部を加え、90℃まで昇温させ3時間加熱してウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を得た。
【0061】
上記で得たアクリルモノマー溶液を30℃まで冷却し、トリエチルアミン37部を加えて均一に混合した。得られた溶液の粘度は25℃において、800mPa・sであった。この溶液にイオン交換水1846.2部を滴下してウレタンプレポリマーの水分散液を得た。次に、この水分散液にN−(2−アミノエチル)エタノールアミン38.1部を加えて約1時間加熱してウレタンプレポリマーの鎖延長を行った。
【0062】
その後、フラスコに窒素ガスを導入しながら過硫酸カリウム4.5部をイオン交換水196.2部に溶解して加え、温度を75℃に保ちながら3時間加熱してアクリルモノマーの重合を行った。そして、転化率が99%以上であることを確認した後、30℃まで冷却し、ジエチレングリコールモノブチルエーテル92.6部、ジエチルジグリコール92.6部を加えて均一に攪拌して、ポリウレタン樹脂をビニルモノマー共重合体で変性したポリウレタンアクリル樹脂分散液PUAC−1を得た。
【0063】
実施例1〜6
上記製造例1〜3で得た水系ポリウレタン樹脂分散液PUD−1、水系アクリル分散液ACQ−1、およびポリウレタンアクリル樹脂分散液PUAC−1を(A)成分として用い、(B)成分の多価アミン化合物としては、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンあるいはアジピン酸ジヒドラジド(ADH)を、また(C)成分のポリグリシジル化合物として、グリセロールトリグリシジルエーテル(エポキシ当量141)をそれぞれ用いて、表1に示すように固形分比率で配合し、十分に攪拌して塗料組成物を得た。
(比較例1〜2)
【0064】
上記実施例1〜6と同様にして上記の材料を用いて、下記表1に示すように固形分比率でそれぞれ配合して2種の塗料組成物を得た。
【0065】
上記実施例1〜6および比較例1〜2で得た各塗料組成物を厚さ3mmの黒のABS板上にバーコーターを用いて30g/m2塗工し、30℃で24時間乾燥した塗膜と、30℃で96時間乾燥させて水分や成膜助剤等を揮発させた塗膜を作成した。
【0066】
上記で得たABS板表面に形成した塗膜について、耐擦過性、耐摩耗性等の性能テストを行った。その結果は表2に示した。なお、これらテストの評価方法および評価基準は次の通りである。
【0067】
耐擦過性:塗膜に対して、約45度の角度で鉛筆(三菱鉛筆社製、ハイユニ)を持ち、芯が折れない程度に塗膜表面に押し付けて、均一な速さで押し終わるまで動かした後、鉛筆の跡がはっきりと見えるときの鉛筆芯の硬さから評価した。
【0068】
耐摩耗性(テーパー摩耗):テーパー摩耗試験機を用い、CS−10の摩耗輪を荷重1Kgで50回往復させたときの塗膜表面の状態変化を次の5段階で評価した。
5級:変化なし。 4級:部分的に摩擦跡が残る。 3級:摩擦跡が残る。
2級:摩擦により皮膜が部分的に剥がれる。 1級:皮膜が部分的に剥がれる。
【0069】
配合液の液安定性(ポットライフ):透明なガラス容器に塗料液を約250cc入れ、30℃の温水中に12時間浸漬したのち、塗料液の外観上の変化の有無を次の3段階で評価した。
○:変化なし。 △:液が部分的に粘調性を持った状態となる。
× :液が全体的に粘調性を持つか、凝固する。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
上記表2から、24時間乾燥して得た塗膜については、本実施例1〜6の塗膜は、比較例1〜2の塗膜に比べて、鉛筆硬度による耐擦過性が良好であり、また耐摩耗性もすぐれていた。96時間乾燥後の塗膜においては、乾燥時間が長いことに呼応して、耐擦過性はさらに向上することが認められ、この発明の塗料組成物が常温乾燥でもすぐれた塗膜を与えることが実証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂、(B)一分子中に2個以上のアミノ基を有していて、水に可溶または水に分散可能な多価アミン化合物、および(C)水に可溶または水に分散可能で、25℃における粘度が50000mPa・s以下であるポリグリシジル化合物からなることを特徴とする水系常温硬化型塗料組成物。
【請求項2】
(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂が、水で希釈または分散可能なカルボキシル基を含んだポリウレタン樹脂(A−1)、水で希釈または分散可能なカルボキシル基を含んだビニルモノマー共重合体(A−2)、水で希釈または分散可能なカルボキシル基を含んだポリウレタン樹脂(A−1)をビニルモノマー共重合体で変性したポリウレタンアクリル樹脂(A−3)、あるいは上記(A−1)と(A−2)の混合物(A−4)からなることを特徴とする請求項1に記載の水系常温硬化型塗料組成物。
【請求項3】
(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂中のカルボキシル基の含有量に対して、(B)一分子中に2個以上のアミノ基を有していて、水に可溶または水に分散可能な多価アミン化合物中の活性アミノ基の含有量が当量比で0.1〜20.0であることを特徴とする請求項1または2に記載の水系常温硬化型塗料組成物。
【請求項4】
(C)水に可溶または水に分散可能で、25℃における粘度が50000mPa・s以下であるポリグリシジル化合物中のグリシジル基の含有量が、(A)カルボキシル基を含有する水系樹脂中のカルボキシル基の含有量と、(B)一分子中に2個以上のアミノ基を有していて、水に可溶または水に分散可能な多価アミン化合物中の活性アミノ基の含有量の総量に対して、当量比で0.3〜1.8であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかの項に記載の水系常温硬化型塗料組成物。
【請求項5】
上記請求項1乃至4の何れかの項に記載の水系常温硬化型塗料組成物を用いて、表面に皮膜を形成した金属部材、無機系部材、木質部材、プラスチック成形部材製品。

【公開番号】特開2008−81569(P2008−81569A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261667(P2006−261667)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000107952)セイコー化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】