説明

水素分離膜の検査方法および検査装置、並びに水素分離膜モジュールの製造方法および製造装置

【課題】品質の高い水素分離膜モジュールを製造すべく、膜欠陥となるピンホールを高い精度で検出して、膜欠陥を有する水素分離膜を確実に取り除くことができ、水素分離膜モジュールの製造効率を改善可能とする水素分離膜の検査方法を提供する。
【解決手段】水素分離膜2,22のガスのリークを検査する検査方法であって、水素分離膜2,22のリーク検査部に対応して複数の孔部4bを設けた板状部材4の表面4a上に、水素分離膜2,22を載置するステップと、水素分離膜2,22に張力を加えるステップと、水素分離膜2,22のリーク検査部の外周を板状部材4に押付けるステップと、板状部材4の孔部4bから真空排気するステップと、板状部材4との当接面とは反対側の水素分離膜2,22の表面にガスを吹付けることによって、水素分離膜2,22を透過して板状部材4の孔部4bに入るガスのリーク量を測定するステップとを含む水素分離膜の検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素分離膜を透過するガスのリーク(漏れ)を検査する水素分離膜の検査方法および検査装置に関する。さらに、本発明は、水素分離膜を透過するガスのリークを検査するとともに、水素分離膜を用いて水素分離膜モジュールを製造する水素分離膜モジュールの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車用の水素ステーション、半導体製造工場などで、水素を製造することが多くなってきている。例えば、燃料電池自動車では、燃料電池内で水素と酸素とを化学反応させることによって発電するので、燃料電池自動車は、空気中から酸素を取入れるとともに、水素の供給を受ける必要がある。この燃料電池自動車に水素を供給するためには、水素ステーションが必要となる。現在、この水素ステーションは、実証試験を開始した段階であるが、今後の燃料電池自動車の普及によって広範囲に渡って多く建設されると考えられる。水素ステーションには、オフサイト方式と、オンサイト方式とがある。オフサイト方式では、水素を輸送して水素ステーションのタンクなどに貯蔵して、この水素を燃料電池自動車に供給する。オンサイト方式では、水素ステーション内で水素を製造して、この水素を燃料電池自動車に供給する。オンサイト方式は、水素の輸送を必要としない点でオフサイト方式より優れており、現在、オンサイト方式の水素ステーションが広く検討されている。また、半導体製造工場では、半導体用の材料ガスなどとして超高純度水素が必要とされ、このような超高純度水素の精製が行なわれている。
【0003】
水素については、一般的に99.99vol.%(4N)以上の純度を要求されるが、さらに99.999vol.%(5N)以上の純度を要求される場合もある。このような水素製造の代表的な方式として、PSA(Pressure Swing Adsorption)方式と、メンブレンリフォーマ方式とがある。PSA方式では、吸着剤によって都市ガスなどの改質ガスから水素以外のガスを除去することによって水素を製造する。一方、メンブレンリフォーマ方式では、水素のみを透過可能とする水素分離膜に都市ガスなどの改質ガスを透過させることによって水素を製造する。メンブレンリフォーマ方式は、水素の製造効率という点でPSA方式より優れるとされており、現在、メンブレンリフォーマ方式によって水素を製造することが広く検討されている。
【0004】
ここで、メンブレンリフォーマ方式で用いられる水素分離膜の製造方法については、ガス透過性を有する多孔質基材から成る薄膜に、Pd(パラジウム)合金などをメッキ、蒸着などすることによって、水素分離膜を製造することが知られている。この製造方法では、水素分離膜の厚さを約5μm〜約10μmに形成することができる。しかしながら、この製造方法では、リークなどの膜欠陥を減少させようとする場合、多孔質基材の細孔を塞ぐ必要があるので、水素分離膜の厚さが厚くなり、水素分離膜の薄膜化が困難となる。そのため、水素分離膜を薄膜化した場合、水素分離膜には膜欠陥が多く含まれ、このような水素分離膜によって製造される水素の純度は、99.99vol.%(4N)以下と低くなる傾向にある。
【0005】
そこで、別の水素分離膜の製造方法として、Pd合金材料などを圧延することによって薄膜化して、約20μmの厚さの水素分離膜を製造する方法を用いることがある。この製造方法により水素分離膜を作製した場合、水素分離膜によって製造される水素の純度は、99.99vol.%(4N)以上と高くなる傾向にある。しかしながら、この製造方法では、10μm単位の粒径を有する介在物が素材に含まれる場合、Pd合金材料が介在物とともに圧延されることによって、介在物を基点としたピンホールが水素分離膜に発生するおそれがある。このピンホールは、ガスのリーク、水素分離膜により製造される水素の純度低下、水素分離膜の耐久性低下などの要因となり、問題となる。
【0006】
このような問題を解決するため、特許文献1および特許文献2には、Pd合金素材をコールドクルーシブ浮遊溶解した後に、溶解により得られたインゴットから介在物の集積部分を取り除くことによって、インゴット内の介在物を減少させて、水素分離膜におけるピンホールの発生を低減させることが開示されている。
【0007】
また、ピンホールなどの膜欠陥の有無を検査して、膜欠陥を有する水素分離膜を取り除くことも考えられる。このような検査について、特許文献3および特許文献4には、光学的方法による金属膜(水素分離膜に相当)の検査が開示されている。特許文献3には、光源から発せられる光を金属膜に反射させて、その反射光を受光センサにより検知することによって、金属膜に発生する欠陥孔(ピンホールに相当)の有無を確認することが開示されている。また、特許文献4には、光源から発せられる光を金属膜に透過させて、その透過光を受光センサにより検知することによって、金属膜に発生する欠陥孔の有無を確認することが開示されている。
【0008】
さらに、水素分離膜の検査については、水素分離膜を透過するHe(ヘリウム)のリーク量を測定して膜欠陥の有無を判断するHeリーク検査、水素分離膜の耐圧性から膜欠陥の有無を判断する耐圧試験などの気密試験を行なうことが考えられる。しかしながら、薄膜から成る水素分離膜単体に対して、Heリーク検査、耐圧試験などを行なうことは難しくなっている。そこで、特許文献5のように、水素分離膜は水素を透過する孔を有する支持体などと組み合わせた水素分離膜モジュールの状態で検査される。この検査によって水素分離膜モジュールを透過するHeのリーク量が測定され、膜欠陥を有する水素分離膜モジュールは廃棄されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−175379号公報
【特許文献2】特開2008−223119号公報
【特許文献3】特開2003−057189号公報
【特許文献4】特開2002−257740号公報
【特許文献5】特開2009−011978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1および特許文献2では、インゴット内の介在物を取り除くことによって発生するピンホールを低減することのみが考慮されているにすぎず、インゴットを圧延して水素分離膜を作製する際に、異物を巻き込むことによって発生するピンホールを減少させることが困難である。
【0011】
特許文献3および特許文献4のような光学的方法による検査では、厚さ20μm以下の薄膜に発生した直径5μm程度のピンホールを検出することは困難であり、水素分離膜の厚さ方向に対して斜めに貫通するピンホールを検出することも困難である。
【0012】
さらに、特許文献5のように、水素分離膜モジュールに対してHeリーク検査を実施した場合、膜欠陥を有する水素分離膜についても水素分離膜モジュールに組み立てる必要がある。このような水素分離膜モジュールは最終的には廃棄されるので、水素分離モジュールの製造効率が悪くなって問題となる。
【0013】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、品質の高い水素分離膜モジュールを製造すべく、膜欠陥となるピンホールを高い精度で検出して、膜欠陥を有する水素分離膜を確実に水素分離膜の製造から除外でき、水素分離膜モジュールの製造効率を改善可能とする水素分離膜の検査方法および検査装置、並びに水素分離膜モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
課題を解決するために、本発明の水素分離膜の検査方法は、水素分離膜のガスのリークを検査する検査方法であって、前記水素分離膜のリーク検査部に対応して複数の孔部を設けた板状部材の表面上に、前記水素分離膜を載置するステップと、前記水素分離膜に張力を加えるステップと、前記水素分離膜のリーク検査部の外周を前記板状部材に押付けるステップと、前記板状部材の孔部から真空排気するステップと、前記板状部材との当接面とは反対側の前記水素分離膜の表面に前記ガスを吹付けることによって、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を測定するステップとを含む。
【0015】
本発明の水素分離膜の検査装置は、水素分離膜を透過するガスのリークを検査する検査装置であって、前記水素分離膜を載置可能に構成され、かつ前記水素分離膜を載置する部分に複数の孔部を有する板状部材と、前記板状部材に前記水素分離膜を押付け可能に構成され、かつ前記水素分離膜のリーク検査部に対応した開口部を有する押さえ板と、前記水素分離膜および前記押さえ板の間を密閉するように設けられるシール部材と、前記水素分離膜に張力を付加する張力付加手段と、前記板状部材の孔部から真空排気可能に構成される真空ポンプと、前記板状部材との当接面とは反対側の前記水素分離膜の表面に前記ガスを吹付けるガス吹付手段と、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を測定するガス測定手段とを備え、前記真空ポンプにより前記板状部材の孔部から真空排気するとともに、前記板状部材に載置した前記水素分離膜に前記張力付加手段により張力を付加して、前記押さえ板により前記水素分離膜のリーク検査部の外周を前記板状部材に押付けた後に、前記ガス吹付手段により前記ガスを前記水素分離膜に吹付けて、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を前記ガス測定手段により測定するように構成されている。
【0016】
本発明の水素分離膜モジュールの製造方法は、水素分離膜のガスのリークを検査するとともに、前記水素分離膜を用いて前記水素膜モジュールを製造する製造方法であって、前記水素分離膜のリーク検査部に対応する複数の孔部を有し、かつベースプレートに取付けられた板状部材の表面上に、前記水素分離膜を載置するステップと、前記水素分離膜に張力を加えるステップと、前記水素分離膜のリーク検査部の外周を前記板状部材に押付けるステップと、前記板状部材の孔部から真空排気するステップと、前記板状部材との当接面とは反対側の前記水素分離膜の表面に前記ガスを吹付けることによって、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を測定するステップと、前記リーク量が閾値以下である、前記水素分離膜を前記板状部材および前記ベースプレートに取付けるステップとを含む。
【0017】
本発明の水素分離膜モジュールの製造装置は、水素分離膜のガスのリークを検査するとともに、前記水素分離膜を用いて前記水素膜モジュールを製造する製造装置であって、前記水素分離膜を載置可能に構成され、かつ前記水素分離膜を載置する部分に複数の孔部を有する板状部材と、前記板状部材に取付けられ、かつ前記水素分離膜を取付け可能に構成されるベースプレートと、前記板状部材に前記水素分離膜を押付け可能に構成され、かつ前記水素分離膜のリーク検査部に対応した開口部を有する押さえ板と、前記水素分離膜および前記押さえ板の間を密閉するように設けられるシール部材と、前記水素分離膜に張力を付加する張力付加手段と、前記板状部材の孔部から真空排気可能に構成される真空ポンプと、前記板状部材との当接面とは反対側の前記水素分離膜の表面から前記ガスを吹付けるガス吹付手段と、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を測定するガス測定手段とを備え、前記真空ポンプにより前記板状部材の孔部から真空排気するとともに、前記板状部材に載置した前記水素分離膜に前記張力付加手段により張力を付加して、前記押さえ板により前記水素分離膜のリーク検査部の外周を前記板状部材に押付けた後に、前記ガス吹付手段により前記ガスを前記水素分離膜に吹付けて、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を前記ガス測定手段により測定し、前記リーク量が閾値以下である、前記水素分離膜を前記板状部材および前記ベースプレートに取付けるように構成されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明の水素分離膜の検査方法は、水素分離膜のガスのリークを検査する検査方法であって、前記水素分離膜のリーク検査部に対応して複数の孔部を設けた板状部材の表面上に、前記水素分離膜を載置するステップと、前記水素分離膜に張力を加えるステップと、前記水素分離膜のリーク検査部の外周を前記板状部材に押付けるステップと、前記板状部材の孔部から真空排気するステップと、前記板状部材との当接面とは反対側の前記水素分離膜の表面に前記ガスを吹付けることによって、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を測定するステップとを含む。
また、本発明の水素分離膜の検査装置は、水素分離膜を透過するガスのリークを検査する検査装置であって、前記水素分離膜を載置可能に構成され、かつ前記水素分離膜を載置する部分に複数の孔部を有する板状部材と、前記板状部材に前記水素分離膜を押付け可能に構成され、かつ前記水素分離膜のリーク検査部に対応した開口部を有する押さえ板と、前記水素分離膜および前記押さえ板の間を密閉するように設けられるシール部材と、前記水素分離膜に張力を付加する張力付加手段と、前記板状部材の孔部から真空排気可能に構成される真空ポンプと、前記板状部材との当接面とは反対側の前記水素分離膜の表面に前記ガスを吹付けるガス吹付手段と、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を測定するガス測定手段とを備え、前記真空ポンプにより前記板状部材の孔部から真空排気するとともに、前記板状部材に載置した前記水素分離膜に前記張力付加手段により張力を付加して、前記押さえ板により前記水素分離膜のリーク検査部の外周を前記板状部材に押付けた後に、前記ガス吹付手段により前記ガスを前記水素分離膜に吹付けて、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を前記ガス測定手段により測定するように構成されている。
そのため、水素分離膜を支持体などに取付けた水素分離膜モジュールの状態でなくとも、取り扱いの難しい前記水素分離膜単体に対して、膜欠陥の検出精度の高いリーク検査を行なうことができる。特に、リーク検査の際に、前記水素分離膜が張力を加えられながら保持されているので、前記水素分離膜へのシワの発生を防ぐことができる。よって、前記水素分離膜の品質の低下を防止しながら、前記水素分離膜のリーク検査を行なうことができる。
このようなリーク検査後に、例えば、膜欠陥を含まない前記水素分離膜を用いて水素分離膜モジュールを製造すれば、従来のように水素分離膜モジュールの状態で膜欠陥の有無を検査した後に、膜欠陥を有する水素分離膜を支持体に取付ける無駄な作業を削減できる。特に、高純度水素を製造するための水素分離膜モジュールを作製する場合には、膜欠陥を有する前記水素分離膜が多く発生するので、膜欠陥を有する前記水素分離膜の多くを支持体に取付ける前に取り除くことができ、このような無駄な作業を大幅に削減できる。加えて、膜欠陥を有する前記水素分離膜に取付けられた支持体を無駄に廃棄する必要がなくなる。よって、水素分離膜モジュールの歩留まりおよび製造効率を改善でき、ひいては水素分離膜モジュールの製造コストを低減できる。さらに、例えば、前記水素分離膜単体がリサイクル可能な材料から作製されていれば、膜欠陥を有する前記水素分離膜単体を回収してリサイクルすることができる。
【0019】
本発明の水素分離膜モジュールの製造方法は、水素分離膜のガスのリークを検査するとともに、前記水素分離膜を用いて前記水素膜モジュールを製造する製造方法であって、前記水素分離膜のリーク検査部に対応する複数の孔部を有し、かつベースプレートに取付けられた板状部材の表面上に、前記水素分離膜を載置するステップと、前記水素分離膜に張力を加えるステップと、前記水素分離膜のリーク検査部の外周を前記板状部材に押付けるステップと、前記板状部材の孔部から真空排気するステップと、前記板状部材との当接面とは反対側の前記水素分離膜の表面に前記ガスを吹付けることによって、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を測定するステップと、前記リーク量が閾値以下である、前記水素分離膜を前記板状部材および前記ベースプレートに取付けるステップとを含む。
本発明の水素分離膜モジュールの製造装置は、水素分離膜のガスのリークを検査するとともに、前記水素分離膜を用いて前記水素膜モジュールを製造する製造装置であって、前記水素分離膜を載置可能に構成され、かつ前記水素分離膜を載置する部分に複数の孔部を有する板状部材と、前記板状部材に取付けられ、かつ前記水素分離膜を取付け可能に構成されるベースプレートと、前記板状部材に前記水素分離膜を押付け可能に構成され、かつ前記水素分離膜のリーク検査部に対応した開口部を有する押さえ板と、前記水素分離膜および前記押さえ板の間を密閉するように設けられるシール部材と、前記水素分離膜に張力を付加する張力付加手段と、前記板状部材の孔部から真空排気可能に構成される真空ポンプと、前記板状部材との当接面とは反対側の前記水素分離膜の表面から前記ガスを吹付けるガス吹付手段と、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を測定するガス測定手段とを備え、前記真空ポンプにより前記板状部材の孔部から真空排気するとともに、前記板状部材に載置した前記水素分離膜に前記張力付加手段により張力を付加して、前記押さえ板により前記水素分離膜のリーク検査部の外周を前記板状部材に押付けた後に、前記ガス吹付手段により前記ガスを前記水素分離膜に吹付けて、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を前記ガス測定手段により測定し、前記リーク量が閾値以下である、前記水素分離膜を前記板状部材および前記ベースプレートに取付けるように構成されている。
そのため、水素分離膜を支持体などに取付けた水素分離膜モジュールの状態でなくとも、取り扱いの難しい前記水素分離膜単体に対して、膜欠陥の検出精度の高いリーク検査を行なうことができる。特に、リーク検査の際に、前記水素分離膜が張力を加えられながら保持されているので、前記水素分離膜へのシワの発生を防ぐことができる。よって、前記水素分離膜の品質の低下を防止しながら、前記水素分離膜のリーク検査を行なうことができる。
このようなリーク検査後に、膜欠陥を含まない前記水素分離膜をそのまま前記板状部材および前記ベースプレートに取付けて、前記水素分離膜モジュールを製造するので、従来のように水素分離膜モジュールの状態で膜欠陥の有無を検査した後に、膜欠陥を有する前記水素分離膜を前記板状部材および前記ベースプレートに取付ける無駄な作業を削減できる。特に、高純度水素を製造するための前記水素分離膜モジュールを作製する場合には、膜欠陥を有すると判断される前記水素分離膜が多く発生するので、膜欠陥を有する前記水素分離膜の多くを前記板状部材および前記ベースプレートに取付ける前に取り除くことができ、このような無駄な作業を大幅に削減できる。加えて、膜欠陥を有する前記水素分離膜に取付けられた前記板状部材および前記ベースプレートを無駄に廃棄する必要がなくなる。よって、前記水素分離膜モジュールの歩留まりおよび製造効率を改善でき、ひいては前記水素分離膜モジュールの製造コストを低減できる。さらに、前記水素分離膜単体がリサイクル可能な材料から作製されていれば、膜欠陥を有する前記水素分離膜単体を回収してリサイクルすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態における検査装置を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態において、横断面で示した水素分離膜を搬送中の状態で、検査装置を水素分離膜の長手方向から見た概略側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態において、横断面で示した水素分離膜をリーク検査中の状態で、検査装置を水素分離膜の長手方向から見た概略側面図である。
【図4】本発明の第2実施形態における検査装置を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態における水素分離膜の検査装置および検査方法について以下に説明する。
本発明の第1実施形態における検査装置1について説明する。図1および図2に示される検査装置1は、水素分離膜2に発生するガスのリークを検査するように構成されている。水素分離膜2は、水素を選択的に透過するように構成されており、原材料を圧延することによって作製されている。図1および図2に示されるように、水素分離膜2は帯状に形成されており、水素分離膜2の長手方向の両端部は、それぞれ円筒状のロール3によって巻き取られている。ロール3は、水素分離膜2を巻き取り、かつ巻き出し可能に構成されている。そのため、水素分離膜2は、その長手方向に沿って搬送可能となっている。
【0022】
2つのロール3の間に位置する水素分離膜2の下方には、板状部材4およびベースプレート5が配置されている。板状部材4はベースプレート5の表面5a上に取付けられている。水素分離膜2側に位置する板状部材4の表面4aとベースプレート5の表面5aとは、水素分離膜2を載置かつ取付け可能に構成されている。このような板状部材4およびベースプレート5に水素分離膜2を取付けるによって、水素分離膜モジュールが製造可能となっている。ここで、水素分離膜2が搬送される状態では、板状部材4およびベースプレート5は、水素分離膜2に対して上下方向に間隔を空けるように位置している。水素分離膜2が板状部材4およびベースプレート5に載置された状態では、水素分離膜2が板状部材4の表面4a上に配置され、板状部材4の複数の孔部4bを設けた部分上に位置する水素分離膜2の部分が、リーク検査部となる。
【0023】
板状部材4には複数の孔部4bが設けられている。また、水素分離膜2の長手方向側、かつベースプレート5の表面5a側に位置するベースプレート5の辺部5bは、湾曲して形成されている。ベースプレート5の表面5aには、板状部材4に対応して、水素分離膜2の長手方向に沿って延びる複数の溝部5cが設けられており、これら複数の溝部5cは、互いに連通している。ベースプレート5には通気孔5dが設けられ、この通気孔5dは、複数の溝部5cと連通している。
【0024】
検査装置1には、水素分離膜2の板状部材4側で真空排気をするための真空ポンプ6と、水素分離膜2を透過するガスの量を測定するガス測定手段7とが設けられている。ベースプレート5の通気孔5dには、第1の通気管8が取付けられ、第1の通気管8によって、通気孔5dと真空ポンプ6とが接続されている。第1の通気管8には真空計9が配設され、第1の通気管8の真空ポンプ6と真空計9との間に真空排気用バルブ10が配設されている。また、第1の通気管8には、真空計9と真空排気用バルブ10との間でガスの流れを分岐するように、第2の通気管11が取付けられており、第2の通気管11によって、ガス測定手段7と第1の通気管8とが接続されている。この第2の通気管11には、ガス測定用バルブ12が配設されている。
【0025】
2つのロール3の間に位置する水素分離膜2の上方には、押さえ板13が設けられている。この押さえ板13は、ベースプレート5に対応して配置されている。押さえ板13には、リーク検査部に対応して開口部13aが形成されている。このような押さえ板13は、昇降可能に構成されている。水素分離膜2と押さえ板13との間には、シール部材14が設けられている。このシール部材14は、押さえ板13の形状に対応して形成されており、シール部材14には、押さえ板13と同様に、リーク検査部に対応して開口部14aが形成されている。ここで一例として、シール部材14は、水素分離膜2側に位置する押さえ板13の表面に取付けられていてもよく、他の例として、シール部材14が、押さえ板13とは別に独立して設けられていてもよい。
【0026】
押さえ板13およびシール部材14が上昇している状態では、押さえ板13およびシール部材14は、水素分離膜2と上下方向に間隔を空けるように位置しており、水素分離膜2が搬送可能となっている。押さえ板13およびシール部材14が下降している状態では、押さえ板13およびシール部材14は、水素分離膜2のリーク検査部の外周を板状部材4およびベースプレート5に押付けており、シール部材14は、水素分離膜2と押さえ板13との間の空間を密閉している。
【0027】
押さえ板13の開口部13a付近には、ガス吹付手段15が設けられている。このガス吹付手段15は、板状部材4の表面4aとの当接面とは反対側の水素分離膜2の表面に、リーク測定用のガスを吹付けるように構成されている。
【0028】
ベースプレート5の下部には、張力付加手段16が取付けられている。張力付加手段16は、ベースプレート5を上下方向に移動可能とするように構成されている。そのため、張力付加手段16は、ベースプレート5を上方に移動させて、板状部材4およびベースプレート5を下方から水素分離膜2に押付けることによって、水素分離膜2に張力を加える構成となっている。このとき、水素分離膜2は、板状部材4の表面4aと、ベースプレート5の表面5aおよび辺部5bと当接するが、ベースプレート5の辺部5bは湾曲しているので、水素分離膜2が傷つき難くなっている。
【0029】
ここで検査装置1について、さらなる好ましい形態の一例を説明するが、検査装置1の構成を限定するものではない。
水素分離膜2に用いられる原材料としては、Pd(パラジウム)、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、V(バナジウム)などの金属、これらを主成分とする合金、または金属ガラスなどを用いると好ましい。水素分離膜2の厚さは20μm以下であると好ましく、水素分離膜2の幅は、1cm〜20cmであると好ましい。
リーク測定用のガスとしては、水素分離膜2を透過するガスのリーク量を測定可能なものを用いるとよい。このガスの一例として、He(ヘリウム)ガスを用いると好ましい。
【0030】
板状部材4は金属から作製されていると好ましいが、他の例として、水素分離膜2を支持可能であれば、板状部材4が金属以外の材料から作製されていてもよい。板状部材4の表面粗さは、Ry10μm以下であると好ましく、最適にはRy1.6μm以下であるとよい。
真空ポンプ6は、大気圧から真空排気可能に構成されているとよく、例えば、ロータリーポンプ、ドライブポンプなどであると好ましい。
ガス測定手段7は、リークディテクターおよび差動排気機能付きの残留ガス分析計(Qマス)であると好ましく、さらにガスのリーク量を最小1×10−10Pa・m/secまで測定可能であると好ましい。
真空排気用バルブ10およびガス測定用バルブ12は、流量調整バルブであるとよい。
シール部材14は、水素分離膜2と押さえ板13との間の空間を密閉可能な弾性部材であるとよく、例えば、シリコンシート、ゴムシートなどであると好ましい。
ガス吹付手段15は、ガスを少量ずつ吹付け可能に構成されているとよく、例えば、エアーガンのように構成されていると好ましい。この場合、ガス吹付手段15は、水素分離膜2のリーク検査部全体にガスを吹付けるように移動可能に構成されているとよい。
【0031】
本発明の第1実施形態における水素分離膜の検査方法について説明する。
(ステップ1)図1および図2に示されるように、板状部材4およびベースプレート5を、水素分離膜2と上下方向に間隔を空けた状態とする。押さえ板13およびシール部材14を、水素分離膜2と上下方向に間隔を空けた状態とする。真空排気用バルブ10およびガス測定用バルブ12を、閉じた状態とする。
(ステップ2)水素分離膜2をロール3により搬送して、水素分離膜2のリーク検査部を、板状部材4およびベースプレート5の上方、かつ押さえ板13の下方に移動させる。
(ステップ3)張力付加手段16によって、ベースプレート5を上昇させて、水素分離膜2を、板状部材4の表面4a上およびベースプレート5の表面5a上に載置する。
(ステップ4)さらに張力付加手段16によって、ベースプレート5を上昇させて、板状部材4およびベースプレート5を水素分離膜2に押付け、水素分離膜2に張力を加える。このとき、水素分離膜2は、板状部材4の表面4aと、ベースプレート5の表面5aおよび湾曲した辺部5bと当接することとなる。
(ステップ5)押さえ板13をシール部材14とともに下降させて、押さえ板13およびシール部材14によって、水素分離膜2のリーク検査部の外周を板状部材4およびベースプレート5に押付ける。このとき、シール部材14は、水素分離膜2と押さえ板13との間の空間を密閉することとなる。このとき、検査装置1は、図3に示すような状態となる。
(ステップ6)真空排気用バルブ10を開くとともに、真空ポンプ6を作動させて、水素分離膜2の板状部材4側に対して板状部材4の複数の孔部4bから真空排気を行なう。
(ステップ7)真空計9が閾値以下を示したときに、真空排気用バルブ10を閉じる。一例として、この閾値が10Paであると好ましい。
(ステップ8)ガス測定用バルブ12を開き、ガス吹付手段15によって水素分離膜2にリーク測定用のガスを吹付ける。吹き付けられたガスは、水素分離膜2を透過して板状部材4の孔部4bに入り、ガス測定手段7に送られる。これによって、当該ガスのリーク量の総和をリーク検知装置7によって測定する。
【0032】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態における水素分離膜の検査装置および検査方法について以下に説明する。第2実施形態における検査装置および検査方法の基本的な構成は、第1実施形態における検査装置および検査方法と同様になっている。第1実施形態と同様な要素は、第1実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0033】
本発明の第2実施形態における検査装置21について説明する。
図4に示されるように、水素分離膜22は、板状部材4およびベースプレート5に対応したシート状に形成されている。この水素分離膜22に張力を付加する張力付加手段については、図示しないが、水素分離膜22に張力を加えながら、水素分離膜22をピン、クリップなどの張力付加手段によって仮止めすると好ましい。
【0034】
本発明の第2実施形態における検査方法について説明する。
第2実施形態の検査方法は、第1実施形態の検査方法における(ステップ1)〜(ステップ4)と異なり、以下のようなステップとなっている。
(ステップ1’)図4に示されるように、押さえ板13およびシール部材14を、板状部材4およびベースプレート5と上下方向に間隔を空けた状態とする。真空排気用バルブ10およびガス測定用バルブ12を、閉じた状態とする。
(ステップ2’)水素分離膜22を、板状部材4およびベースプレート5に対応したシート状に形成する。
(ステップ3’)水素分離膜22を、板状部材4の表面4a上およびベースプレート5の表面5a上に載置する。
(ステップ4’)水素分離膜22に張力を加えながら、水素分離膜22を、ピン、クリップなどの張力付加手段によって仮止めする。
【0035】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態における水素分離膜モジュールの製造装置および製造方法について以下に説明する。第3実施形態における製造装置および製造方法で用いられる検査装置および検査方法の基本的な構成は、第1実施形態における検査装置および検査方法と同様になっている。第1実施形態と同様な要素は、第1実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0036】
本発明の第3実施形態における製造装置について説明する。
第3実施形態の製造装置は、検査装置1を備えている。さらに、水素分離膜2を透過するガスのリーク量の総和が閾値以下である場合に、製造装置は、検査した水素分離膜2を板状部材4およびベースプレート5に、そのまま取付けるように構成されている。
【0037】
一方で、水素分離膜2を透過するガスのリーク量の総和が閾値を超える場合には、製造装置は、次のように作動する構成となっている。押さえ板13およびシール部材14を上昇させた後に、張力付加手段16によってベースプレート5を下降させる。これによって、押さえ板13およびシール部材14が、水素分離膜2と上下方向に間隔を空けた状態になるとともに、板状部材4およびベースプレート5が、水素分離膜2と上下方向に間隔を空けた状態となる。さらに水素分離膜2を搬送して、新たな水素分離膜2のリーク検査部を、板状部材4およびベースプレート5の上方、かつ押さえ板13の下方に移動させる。
【0038】
本発明の第3実施形態における製造方法について説明する。
第3実施形態の製造方法は、第1実施形態の検査方法における(ステップ1)〜(ステップ8)に加えて、以下のステップを含む。
(ステップ9a)リーク検知装置7によって測定されたガスのリーク量の総和が閾値以下である場合には、検査した水素分離膜2を板状部材4およびベースプレート5に、そのまま取付ける。
【0039】
(ステップ9b)リーク検知装置7によって測定されたガスのリーク量の総和が閾値を超える場合には、押さえ板13およびシール部材14を上昇させた後に、張力付加手段16によってベースプレート5を下降させる。これによって、押さえ板13およびシール部材14が、水素分離膜2と上下方向に間隔を空けた状態となるとともに、板状部材4およびベースプレート5が、水素分離膜2と上下方向に間隔を空けた状態となる。このとき、水素分離膜2を搬送して、新たな水素分離膜2のリーク検査部を、板状部材4およびベースプレート5の上方、かつ押さえ板13の下方に移動させる。
(ステップ10b)第1実施形態の(ステップ2)〜(ステップ8)と同様のステップを実施する。
【0040】
なお第3実施形態の製造装置および製造方法の一例として、リーク量の総和の閾値は、水素分離膜2により製造する水素の純度に対応して変更可能である。例えば、1×10−6Pa・m/secであると好ましく、最適には1×10−10Pa・m/secであるとよいが、これに限定されない。
【0041】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態における水素分離膜モジュールの製造装置および製造方法について以下に説明する。第4実施形態における製造装置および製造方法で用いられる検査装置および検査方法の基本的な構成は、第2実施形態における検査装置および検査方法と同様になっている。第2実施形態と同様な要素は、第2実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第2実施形態と異なる構成について説明する。
【0042】
本発明の第4実施形態における製造装置について説明する。
第4実施形態の製造装置は、検査装置21を備えている。さらに、水素分離膜22を透過するガスのリーク量の総和が閾値以下である場合に、製造装置は、検査した水素分離膜22を板状部材4およびベースプレート5に、そのまま取付けるように構成されている。
【0043】
一方で、水素分離膜22を透過するガスのリーク量の総和が閾値を超える場合には、製造装置は、次のように作動する構成となっている。押さえ板13およびシール部材14を上昇させて、押さえ板13およびシール部材14が、水素分離膜22と上下方向に間隔を空けた状態となる。さらに水素分離膜22を仮止めした状態から取り外して、新たな水素分離膜22を、板状部材4の表面4a上およびベースプレート5の表面5a上に載置するとともに、新たな水素分離膜22に張力を加えながら、新たな水素分離膜22を、ピン、クリップなどの張力付加手段によって仮止めする。
【0044】
本発明の第4実施形態における製造方法について説明する。
第4実施形態の製造方法は、第2実施形態の検査方法における(ステップ1’)〜(ステップ4’)および(ステップ5)〜(ステップ8)に加えて、以下のステップを含む。
(ステップ9a)リーク検知装置7によって測定されたガスのリーク量の総和が閾値以下である場合には、検査した水素分離膜22を板状部材4およびベースプレート5に、そのまま取付ける。
【0045】
(ステップ9b)リーク検知装置7によって測定されたガスのリーク量の総和が閾値を超える場合には、押さえ板13およびシール部材14を上昇させる。これによって、押さえ板13およびシール部材14が、水素分離膜22と上下方向に間隔を空けた状態となる。
(ステップ10b)板状部材4およびベースプレート5に仮止めした水素分離膜22を取り外す。
(ステップ11b)新たな水素分離膜22について、第2実施形態の検査方法における(ステップ2’)〜(ステップ4’)および(ステップ5)〜(ステップ8)と同様のステップを実施する。
【0046】
なお第4実施形態の製造装置および製造方法の一例として、リーク量の総和の閾値は、水素分離膜22により製造する水素の純度に対応して変更可能である。例えば、1×10−6Pa・m/secであると好ましく、最適には1×10−10Pa・m/secであるとよいが、これに限定されない。
【0047】
以上のように本発明の第1実施形態〜第4実施形態によれば、水素分離膜2,22を板状部材4およびベースプレート5に取付けた水素分離膜モジュールの状態でなくとも、取扱いの難しい水素分離膜単体2,22に対して、膜欠陥の検出精度の高いリーク検査を行なうことができる。特に、リーク検査の際に、水素分離膜2,22が張力を加えられながら保持されているので、水素分離膜2,22へのシワの発生を防ぐことができる。よって、水素分離膜2,22の品質の低下を防止しながら、水素分離膜2,22のリーク検査を行なうことができる。
特に、このようなリーク検査後に、膜欠陥を含まない水素分離膜2,22をそのまま板状部材4およびベースプレート5に取付けて、水素分離膜モジュールを製造するので、従来のように水素分離膜モジュールの状態で膜欠陥の有無を検査した後に、膜欠陥を有する水素分離膜を板状部材およびベースプレートに取付ける無駄な作業を削減できる。特に、高純度水素を製造するための水素分離膜モジュールを作製する場合には、膜欠陥を有する水素分離膜2,22が多く発生するので、膜欠陥を有する水素分離膜2,22の多くを板状部材4およびベースプレート5に取付ける前に取り除くことができ、このような無駄な作業を大幅に削減できる。加えて、膜欠陥を有する水素分離膜2,22に取付けられた板状部材4およびベースプレート5を無駄に廃棄する必要がなくなる。よって、水素分離膜モジュールの歩留まりおよび製造効率を改善でき、ひいては水素分離膜モジュールの製造コストを低減できる。さらに、水素分離膜単体2,22がリサイクル可能な材料から作製されていれば、膜欠陥を有する水素分離膜単体2,22を回収してリサイクルすることができる。
【0048】
ここまで本発明の第1実施形態〜第4実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0049】
例えば、本発明の第1実施形態および第3実施形態の変形例として、張力付加手段16について、水素分離膜2の搬送をガイドするガイドロールを設けて、このガイドロールを上下方向に移動可能に構成し、水素分離膜2を板状部材4およびベースプレート5に押付けることによって、水素分離膜2に張力を加える構成としてもよい。本発明の第1実施形態および第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0050】
[実施例1]
本発明の実施例1について説明する。実施例1では、第1実施形態の検査装置および検査方法を含む第3実施形態の製造装置および製造方法を用いて、水素分離膜モジュールを製造する。製造する水素分離膜モジュールは、長さ50cm、幅5cmとなっている。この水素分離膜モジュールの製造に用いられる1ロット分の水素分離膜2は、長さ60m、幅6cm、厚さ20μmとなっており、水素分離膜2をロール3に巻き取った状態で使用する。なお、実施例1では、1ロット分の水素分離膜2のすべてを水素分離膜モジュールの製造に用いた場合、120枚の水素分離膜モジュールを製造可能である。リーク測定用のガスは、Heガスとする。水素純度99.999vol.%(5N)以上の水素分離膜モジュールを製造することを目標として、膜欠陥の有無を判断するガスのリーク量の閾値を、1×10−10Pa・m/secとする。
【0051】
このような条件下で製造した水素分離膜モジュールに対して気密試験を実施する。気密試験は、窒素による耐圧試験(差圧を1MPaG)とする。この気密試験において、水素分離膜モジュールを透過するガスのリーク量を精密石鹸膜流量計によって測定する。また、水素分離膜モジュールにおける水素純度を確認する。
【0052】
1ロット分の水素分離膜2を用いて製造される水素分離膜モジュールに関して、製造される水素分離膜モジュールの枚数をカウントし、製造された水素分離膜モジュールをランク分け評価を行なう。ランク分け評価については、リーク量がND(Non Detected、数値微小のため測定不可)であって、水素純度が99.999vol.%(5N)より大きい場合、評価を「ランクA」とする。リーク量が0.2Ncc/min未満であって、水素純度が99.999vol.%(5N)以下である場合、評価を「ランクB」とする。リーク量が0.2Ncc/min以上かつ2Ncc/min未満であって、水素純度99.99vol.%(4N)以下である場合、評価を「ランクC」とする。リーク量が2Ncc/minより大きいであって、水素純度が99.9vol.%(3N)以下である場合、評価を「ランクD」とする。
【0053】
[実施例2]
本発明の実施例2について説明する。実施例2では、第2実施形態の検査装置および検査方法を含む第4実施形態の製造装置および製造方法を用いて、水素分離膜モジュールを製造する。実施例2では、水素分離膜モジュールを製造するための基本的な条件を実施例1と同様とするが、実施例2は、水素分離膜22をシート状に形成している点で、実施例1と異なる。このような条件下で製造された水素分離膜モジュールに対して、実施例2と同様に、ガスのリーク量を測定し、水素純度を確認し、さらに、製造される水素分離膜モジュールの枚数をカウントし、製造された水素分離膜モジュールをランク分け評価をする。
【0054】
[比較例]
本発明の比較例について説明する。比較例では、実施例1のような1ロット分の水素分離膜すべてを、板状部材およびベースプレートに取付けて、水素分離膜モジュールを製造する。なお、比較例では、1ロット分の水素分離膜のすべてを水素分離膜モジュールの製造に用いた場合、100枚の水素分離膜モジュールを製造可能である。このような条件下で製造された水素分離膜モジュールに対して、実施例1と同様に、ガスのリーク量を測定し、水素純度を確認し、さらに、製造される水素分離膜モジュールの枚数をカウントし、歩留まりを確認し、製造された水素分離膜モジュールをランク分け評価をする。
【0055】
実施例1、実施例2、および比較例の確認結果を表1に示す。
【表1】

【0056】
実施例1および実施例2では、製造された水素分離膜モジュールのすべてが、ランクAに評価された。これに対して、比較例では、製造された水素分離膜モジュールに、ランクB、ランクC、およびランクDと評価されたものが含まれた。よって、本発明によって、高い品質かつ高い製造効率の水素分離膜モジュールを提供できることが確認できた。
【符号の説明】
【0057】
1,21 検査装置
2,22 水素分離膜
4 板状部材
4a 表面
4b 孔部
5 ベースプレート
6 真空ポンプ
7 ガス測定手段
12 ガス測定用バルブ
13 押さえ板
13a 開口部
15 ガス吹付手段
16 張力付加手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素分離膜のガスのリークを検査する検査方法であって、
前記水素分離膜のリーク検査部に対応して複数の孔部を設けた板状部材の表面上に、前記水素分離膜を載置するステップと、
前記水素分離膜に張力を加えるステップと、
前記水素分離膜のリーク検査部の外周を前記板状部材に押付けるステップと、
前記板状部材の孔部から真空排気するステップと、
前記板状部材との当接面とは反対側の前記水素分離膜の表面に前記ガスを吹付けることによって、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を測定するステップと
を含む水素分離膜の検査方法。
【請求項2】
水素分離膜を透過するガスのリークを検査する検査装置であって、
前記水素分離膜を載置可能に構成され、かつ前記水素分離膜を載置する部分に複数の孔部を有する板状部材と、
前記板状部材に前記水素分離膜を押付け可能に構成され、かつ前記水素分離膜のリーク検査部に対応した開口部を有する押さえ板と、
前記水素分離膜および前記押さえ板の間を密閉するように設けられるシール部材と、
前記水素分離膜に張力を付加する張力付加手段と、
前記板状部材の孔部から真空排気可能に構成される真空ポンプと、
前記板状部材との当接面とは反対側の前記水素分離膜の表面に前記ガスを吹付けるガス吹付手段と、
前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を測定するガス測定手段と
を備え、
前記真空ポンプにより前記板状部材の孔部から真空排気するとともに、前記板状部材に載置した前記水素分離膜に前記張力付加手段により張力を付加して、前記押さえ板により前記水素分離膜のリーク検査部の外周を前記板状部材に押付けた後に、前記ガス吹付手段により前記ガスを前記水素分離膜に吹付けて、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を前記ガス測定手段により測定するように構成されている水素分離膜の検査装置。
【請求項3】
水素分離膜のガスのリークを検査するとともに、前記水素分離膜を用いて前記水素膜モジュールを製造する製造方法であって、
前記水素分離膜のリーク検査部に対応する複数の孔部を有し、かつベースプレートに取付けられた板状部材の表面上に、前記水素分離膜を載置するステップと、
前記水素分離膜に張力を加えるステップと、
前記水素分離膜のリーク検査部の外周を前記板状部材に押付けるステップと、
前記板状部材の孔部から真空排気するステップと、
前記板状部材との当接面とは反対側の前記水素分離膜の表面に前記ガスを吹付けることによって、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を測定するステップと、
前記リーク量が閾値以下である、前記水素分離膜を前記板状部材および前記ベースプレートに取付けるステップと
を含む水素分離膜モジュールの製造方法。
【請求項4】
水素分離膜のガスのリークを検査するとともに、前記水素分離膜を用いて前記水素膜モジュールを製造する製造装置であって、
前記水素分離膜を載置可能に構成され、かつ前記水素分離膜を載置する部分に複数の孔部を有する板状部材と、
前記板状部材に取付けられ、かつ前記水素分離膜を取付け可能に構成されるベースプレートと、
前記板状部材に前記水素分離膜を押付け可能に構成され、かつ前記水素分離膜のリーク検査部に対応した開口部を有する押さえ板と、
前記水素分離膜および前記押さえ板の間を密閉するように設けられるシール部材と、
前記水素分離膜に張力を付加する張力付加手段と、
前記板状部材の孔部から真空排気可能に構成される真空ポンプと、
前記板状部材との当接面とは反対側の前記水素分離膜の表面から前記ガスを吹付けるガス吹付手段と、
前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を測定するガス測定手段と
を備え、
前記真空ポンプにより前記板状部材の孔部から真空排気するとともに、前記板状部材に載置した前記水素分離膜に前記張力付加手段により張力を付加して、前記押さえ板により前記水素分離膜のリーク検査部の外周を前記板状部材に押付けた後に、前記ガス吹付手段により前記ガスを前記水素分離膜に吹付けて、前記水素分離膜を透過して前記板状部材の孔部に入る前記ガスのリーク量を前記ガス測定手段により測定し、前記リーク量が閾値以下である、前記水素分離膜を前記板状部材および前記ベースプレートに取付けるように構成されている水素分離膜モジュールの製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−72958(P2011−72958A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229527(P2009−229527)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】