説明

水素化ニトリルゴムの製造方法

本発明は、当該技術分野において公知のものより低い分子量および狭い分子量分布を有する水素化ニトリルゴムポリマーの製造方法であって、水素および任意選択的に少なくとも1つのコオレフィンの存在下に実施される方法に関する。本発明はさらに、ニトリルゴムの同時水素化およびメタセシスによる水素化ニトリルゴムの製造方法における特定の金属化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、当該技術分野において公知のものより低い分子量および狭い分子量分布を有する水素化ニトリルゴムポリマーの製造方法であって、水素および任意選択的に少なくとも1つのコ(オレフィン)の存在下に実施される方法に関する。本発明はさらに、ニトリルゴムの同時水素化およびメタセシスによる水素化ニトリルゴムの製造方法における特定の金属化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロニトリル−ブタジエンゴム(ニトリルゴム;NBR、少なくとも1つの共役ジエン、少なくとも1つの不飽和ニトリルおよび任意選択的にさらなるコモノマーを含むコポリマー)の選択的水素化によって製造される、水素化ニトリルゴム(HNBR)は、非常に良好な耐熱性、優れた耐オゾン性および耐化学薬品性、ならびに優れた耐油性を有するスペシャルティゴムである。このゴムの高レベルの機械的特性(特に高い耐摩耗性)と関連して、HNBRが自動車(シール、ホース、ベアリングパッド)、石油(固定子、油井ヘッドシール、弁板)、電気(ケーブル被覆材料)、機械工学(車輪、ローラー)および造船(パイプシール、継手)産業において幅広い用途を見いだしてきたことは意外ではない。
【0003】
商業的に入手可能なHNBRは、34〜130の範囲のムーニー(Mooney)粘度、150,000〜500,000g/モルの範囲の分子量、2.0〜5.0の範囲の多分散性および1超〜18%(IR分光法による)の範囲の残存二重結合(RDB)含有率を有する。
【0004】
Rempel(非特許文献1)およびSivaram(非特許文献2)による独立したレビューに概説されているように、ジエンおよび特にニトリルブタジエンゴムに関する触媒研究の大半は、遷移金属ロジウム(Rh)およびパラジウム(Pd)に焦点を合わせてきた。しかしかなりの努力が、イリジウムおよびチーグラー(Ziegler)型触媒を含む代替触媒系の探査にも加えられてきた。あるいは、ルテニウム(Ru)ベース触媒を開発することへの努力が注目されてきた。これらのルテニウムベース触媒は、一般式RuCl(PPh、RuH(OCR)(PPhおよびRuHCl(CO)(PPhのものであった。ルテニウムベース触媒の利用への一否定は、ポリマーのその後の架橋/ゲル化をもたらす、第二級アミンへのニトリル基の還元のために、生じた水素化ニトリルゴムについての異常に高いムーニー粘度であった。Rempelは、これらのアミンと反応するための添加剤(すなわち、CoSOおよび(NHFe(SO)の添加が架橋/ゲル化を最小限にし得ることを指摘している。
【0005】
Rempelおよび共同研究者は、一連の特許((特許文献1);(特許文献2)および(特許文献3))においてニトリルゴムが水性のラテックス形態で供給されるときにおよび反応がニトリル基の還元を最小限にすることができる添加剤の存在下に行われるときにニトリルゴムの水素化用のルテニウムベース触媒の利用を報告した。利用された具体的なルテニウム触媒としては、カルボニルクロロヒドリドビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムII,ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムII、カルボニルクロロスチリルビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムIIおよびカルボニルクロロベンゾエートビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムIIが挙げられる。
【0006】
最近、Souzaおよび共同研究者は、一般式RuCl(PPhのルテニウム触媒を使用するニトリルゴムの水素化を報告した(非特許文献3)。効率的な水素化が報告されたが、ニトリル基還元を最小限にする必要性のために溶媒選択に制限が加えられた。
【0007】
ニトリルゴムの分子量を下げるという問題は、より最近の従来技術において水素化の前のメタセシスによって解決される。メタセシス触媒は従来技術において公知である。
【0008】
(特許文献4)は、6配位メタセシス触媒に、ならびにそれの製造および使用方法に関する。これらの触媒は式
【化1】

(式中、
Mはルテニウムまたはオスミウムであり、
XおよびX’は同じまたは異なるものであり、それぞれ独立してアニオン性配位子であり;
L、LおよびLは同じものであるかまたは異なるものであり、それぞれ独立して中性電子供与配位子であり;
RおよびRはそれぞれ独立して水素または、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボキシレート、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニルおよびシリルから選択される置換基である)
のものである。
【0009】
これらの触媒は、開環メタセシス重合、閉環メタセシス、ADMET、自己−および交差メタセシス反応、アルキン重合、カルボニルオレフィン化、不飽和ポリマーの解重合、テレケリックポリマーの合成、ならびにオレフィン合成を含むメタセシス反応において有用である。(特許文献4)のすべての実施例は、重合反応を開示している。
【0010】
(特許文献5)は、族8遷移金属錯体を触媒として使用する交差メタセシス反応の実施方法に関する。(特許文献5)による方法は、交差メタセシス反応による電子吸引性基で直接置換されているオレフィンの合成にとりわけ有用である。族8遷移金属錯体は次式(1)
【化2】

(式中、
は、強く配位する中性電子供与配位子であり;
nはゼロまたは1であり;
およびLは、弱く配位する中性電子供与配位子であり;
およびXはアニオン性配位子であり;
およびRは独立して水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換されたヘテロ原子含有ヒドロカルビル、および官能基から選択されるか、または一緒になって環式基を形成してもよく、
さらに式中、X、X、L、L、L、R、およびRの任意の1つ以上は担体に結合していてもよい);
または次式(II)、(III)もしくは(IV)
【化3】

(式中、
、X、L、L、L、R、およびRは先に定義された通りであり、rおよびsは独立してゼロまたは1であり、tはゼロ〜5の範囲の整数であり、Yは任意の非配位性アニオンであり、ZおよびZは、1〜約6個のスペーサー原子を含有する結合であり、X、X、L、L、L、Z、Z、R、およびRの任意の2つ以上は一緒になって環式基;たとえば、多座配位子を形成してもよく、X、X、L、L、L、Z、Z、R、およびRの任意の1つ以上は担体に結合していてもよい)
の1つを有する。
【0011】
(特許文献5)の実施例によればアクリロニトリルと異なる交差パートナーとの交差メタセシスは、式(1)
【化4】

の触媒の存在下に実施される。
【0012】
しかし、上述の触媒は、ニトリルゴムの分解を実施するために必ずしも好適ではない。さらに、上述の触媒は、従来技術において、水素化触媒として使用されたことがない。
【0013】
(特許文献6)においてGuerinは、当該技術分野において公知のものより低い分子量および狭い分子量分布を有する水素化ニトリルゴムポリマーの製造を報告している。この製造法は、ニトリルゴムをメタセシス反応および水素化反応に同時にかけることによって実施される。(特許文献6)による反応は、一般式1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(フェニルメチレン)ジクロリド(Grubbs第2世代触媒)
【化5】

のルテニウムベース触媒の存在下に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,210,151号明細書
【特許文献2】米国特許第5,208,296号明細書
【特許文献3】米国特許第5,258,647号明細書
【特許文献4】国際公開第03/011455A1号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/087167A2号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2005/080456A号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Journal of Macromolecular Science−Part C−Polymer Reviews,1995,Vol.C35,239−285ページ
【非特許文献2】Rubber Chemistry and Technology,July/August 1997,Vol.70,Issue 3 309ページ
【非特許文献3】Journal of Applied Polymer Science,2007,Vol.106,659−663ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、同時水素化およびメタセシス反応による水素化ニトリルゴムポリマーの製造に好適である代わりの触媒が必要とされている。さらに、水素化効率および−同時に−メタセシス活性は改善されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、当該技術分野において公知のものより低い分子量および狭い分子量分布を有する水素化ニトリルゴムが水素および任意選択的に少なくとも1つのコ(オレフィン)の存在下にニトリルブタジエンゴムのメタセシスによって製造できることを今発見した。したがって、本発明方法は、単一工程で20,000〜250,000の範囲の分子量(M)、1〜50の範囲のムーニー粘度(100℃でのML 1+4)、および2.8未満のMWD(または多分散性指数)を有する低い残存二重結合含有率(RDB)の水素化ニトリルゴムを製造することができる。
【0018】
本発明はそれ故、ニトリルゴムを、水素、任意選択的に少なくとも1つのコオレフィン(co−olefin)の存在下に、および一般式(I)、(II)または(III)
【化6】

(式中、
Mはルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは同一のまたは異なる配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
およびZは同一のまたは異なるそして中性の電子供与配位子であり、
およびRはそれぞれ独立して水素または、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボキシレート、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルおよびアルキルスルフィニルラジカルからなる群から選択される置換基であり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで任意選択的に置換されていてもよく、
Lは配位子である)
の少なくとも1つの触媒の存在下に反応させる工程を含む水素化ニトリルゴムの製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ニトリルゴム(「NBR」)として、少なくとも1つの共役ジエン、少なくとも1つのα,β−不飽和ニトリルおよび、必要ならば、1つ以上のさらなる共重合可能なモノマーの繰り返し単位を含むコポリマーまたはターポリマーを使用することが可能である。
【0020】
共役ジエンは、あらゆる性質のものであることができる。(C〜C)共役ジエンを使用することが好ましい。1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレンまたはそれらの混合物が特に好ましい、1,3−ブタジエンおよびイソプレンまたはそれらの混合物が非常に特に好ましい。1,3−ブタジエンがとりわけ好ましい。
【0021】
α,β−不飽和ニトリルとして、あらゆる公知のα,β−不飽和ニトリル、好ましくはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物などの(C〜C)α,β−不飽和ニトリルを使用することが可能である。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0022】
特に好ましいニトリルゴムは、したがってアクリロニトリルと1,3−ブタジエンとのコポリマーである。
【0023】
共役ジエンおよびα,β−不飽和ニトリルは別として、当業者に公知の1つ以上のさらなる共重合可能なモノマー、たとえばα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、それらのエステルまたはアミドを使用することが可能である。α,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸として、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。α,β−不飽和カルボン酸のエステルとして、それらのアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを使用することが好ましい。α,β−不飽和カルボン酸の特に好ましいアルキルエステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートおよびオクチルアクリレートである。α,β−不飽和カルボン酸の特に好ましいアルコキシアルキルエステルは、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートおよびメトキシメチル(メタ)アクリレートである。アルキルエステル、たとえば上述のものと、たとえば上述のものの形態での、アルコキシアルキルエステルとの混合物を使用することもまた可能である。
【0024】
使用されるべきNBRポリマー中の共役ジエンとα,β−不飽和ニトリルとの割合は、広い範囲内で変わることができる。共役ジエンのまたはそれらの合計の割合は通常、全ポリマーを基準として、範囲40〜90重量%に、好ましくは範囲55〜75重量%にある。α,β−不飽和ニトリルのまたはそれらの合計の割合は通常、全ポリマーを基準として、10〜60重量%、好ましくは25〜45重量%である。モノマーの割合はいずれの場合にも合計100重量%になる。追加モノマーは、全ポリマーを基準として、0〜40重量%、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは1〜30重量%の量で存在することができる。この場合には、共役ジエンもしくはジエン類のおよび/またはα,β−不飽和ニトリルもしくはニトリル類の相当する割合は、すべてのモノマーの割合がいずれの場合にも合計100重量%になる状態で、追加モノマーの割合に取って代わられる。
【0025】
上述のモノマーの重合によるニトリルゴムの製造は、当業者に十分知られており、ポリマー文献に包括的に記載されている。
【0026】
本発明の目的のために使用することができるニトリルゴムはまた、たとえば、Lanxess Deutschland GmbHから商品名Perbunan(登録商標)およびKrynac(登録商標)の製品範囲からの製品として、商業的に入手可能である。
【0027】
水素化/メタセシスのために使用されるニトリルゴムは通常、範囲24〜70、好ましくは28〜40のムーニー粘度(100℃でのML 1+4)を有する、これは、範囲200,000〜500,000の、好ましくは範囲200,000〜400,000の重量平均分子量Mに相当する。使用されるニトリルゴムはまた通常、範囲2.0〜6.0の、好ましくは範囲2.0〜4.0の多分散性PDI=M/M(ここで、Mは重量平均分子量であり、Mは数平均分子量である)を有する。
【0028】
ムーニー粘度の測定は、ASTM標準D 1646に従って実施される。
【0029】
本発明によれば基質はメタセシス反応および水素化反応に同時にかけられる。
【0030】
一般式(I)〜(III)の触媒は原則として公知である。このクラスの化合物の代表的なものは、国際公開第2003/011455 A1号パンフレット、Grubbsら国際公開第2003/087167 A2号パンフレット、Organometallics 2001,20,5314およびAngew.Chem.Int.Ed.2002,41,4038にGrubbsらによって記載されている触媒である。これらの触媒は商業的に入手可能であるかまたは引用された参考文献に記載されているように製造することができる。
【0031】
本特許出願の目的のために使用される用語「置換(されている)」は、示された原子の原子価が超過されておらず、置換が安定な化合物をもたらすという条件で、示されたラジカルまたは原子上の水素原子が、いずれの場合にも示された基の1つに取って代わられていることを意味する。
【0032】
本特許出願および本発明の目的のためには、一般用語でまたは好ましい範囲で上にまたは下に示されるラジカルの定義、パラメータまたは説明は、何らかの方法で、すなわちそれぞれの範囲および好ましい範囲の組み合わせを含めて、互いに組み合わせることができる。
【0033】
およびZ
本発明の方法において一般式(I)、(II)および(III)の触媒におけるZおよびZは、中性の電子供与配位子である同一のまたは異なる配位子である。そのような配位子は一般に弱配位性である。典型的にはそれらは、任意選択的に置換されている複素環基を表す。それらは、1〜4個、好ましくは1〜3個、最も好ましくは1もしくは2個のヘテロ原子を含有する5−もしくは6−員環単環式基、または2、3、4もしくは5つのそのような5−もしくは6−員環単環式基からなる二環式もしくは多環式構造を表し、ここで、すべての前述の基が1つ以上のアルキル、好ましくはC〜C10アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキル、アルコキシ、好ましくはC〜C10アルコキシ、ハロゲン、好ましくは塩素もしくは臭素、アリール、好ましくはC〜C24アリール、もしくはヘテロアリール、好ましくはC〜C23ヘテロアリールラジカルで任意選択的に置換されており、ここで、これらの前述の置換基は同様に、ハロゲン、特に塩素もしくは臭素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシおよびフェニルからなる群から好ましくは選択される、1つ以上のラジカルで置換されていてもよい。
【0034】
およびZの例としては、限定なしに、ピリジン、ピリダジン、ビピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピラゾリジン、ピロリジン、ピペラジン、インダゾール、キノリン、プリン、アクリジン、ビスイミダゾール、ピコリルイミン、イミダゾリジンおよびピロールなどの窒素含有複素環化合物が挙げられ、ここで、すべての前述の基は1つ以上のアルキル、好ましくはC〜C10アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキル、アルコキシ、好ましくはC〜C10アルコキシ、ハロゲン、好ましくは塩素もしくは臭素、アリール、好ましくはC〜C24アリール、またはヘテロアリール、好ましくはC〜C23ヘテロアリールで任意選択的に置換されており、ここで、これらの前述の置換基は同様に、ハロゲン、特に塩素もしくは臭素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシおよびフェニルからなる群から好ましくは選択される、1つ以上のラジカルで置換されていてもよい。
【0035】
およびZは一緒にまた、それによって環式構造を形成する、二座配位子を表してもよい。
【0036】

一般式(I)、(II)および(III)の触媒において、Lは、通常電子供与機能を有する、配位子である。
【0037】
配位子Lは、たとえば、ホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスフェート、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、チオエーテルであることができるか、またはLは非置換もしくは置換イミダゾリジン(「Im」)配位子であることができる。
【0038】
配位子LはC〜C24アリールホスフィン、C〜CアルキルホスフィンもしくはC〜C10シクロアルキルホスフィン配位子、スルホン化C〜C24アリールホスフィンもしくはスルホン化C〜C10アルキルホスフィン配位子、C〜C24アリールホスフィナイトもしくはC〜C10アルキルホスフィナイト配位子、C〜C24アリールホスホナイトもしくはC〜C10アルキルホスホナイト配位子、C〜C24アリールホスファイトもしくはC〜C10アルキルホスファイト配位子、C〜C24アリールアルシンもしくはC〜C10アルキルアルシン配位子、C〜C24アリールアミンもしくはC〜C10アルキルアミン配位子、ピリジン配位子、C〜C24アリールスルホキシドもしくはC〜C10アルキルスルホキシド配位子、C〜C24アリールエーテルもしくはC〜C10アルキルエーテル配位子またはC〜C24アリールアミドもしくはC〜C10アルキルアミド配位子が好ましく、そのそれぞれはフェニル基で置換されていてもよく、フェニル基は同様に、ハロゲン、C〜CアルキルラジカルもしくはC〜Cアルコキシラジカルで置換されていてもよく、またはLは非置換もしくは置換イミダゾリジン(「Im」)配位子である。
【0039】
アリールは、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族ラジカル(C〜C24アリール)を包含する。6〜10個の骨格炭素原子を有する好ましい単環式、二環式または三環式炭素環芳香族ラジカルは、たとえば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニルおよびアントラセニルである。
【0040】
アルキルは好ましくはC〜C12アルキルであり、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二ブチル、第三ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピルまたはn−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシルまたはn−ドデシルである。
【0041】
シクロアルキルは好ましくは、C〜C10シクロアルキルであり、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを包含する。
【0042】
用語ホスフィンとしては、たとえば、PPh、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(イソ−Pr)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)およびP(ネオフェニル)のような、Rがいずれの場合にも互いに独立してC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルまたはアリールである、PR構造物が挙げられる。
【0043】
ホスフィナイトとしては、たとえば、トリフェニルホスフィナイト、トリシクロヘキシルホスフィナイト、トリイソプロピルホスフィナイトおよびメチルジフェニルホスフィナイトが挙げられる。
【0044】
ホスファイトとしては、たとえば、トリフェニルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリ第三ブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイトおよびメチルジフェニルホスファイトが挙げられる。
【0045】
スチビンとしては、たとえば、トリフェニルスチビン、トリシクロヘキシルスチビンおよびトリメチルスチビンが挙げられる。
【0046】
スルホネートとしては、たとえば、トリフルオロメタンスルホネート、トシレートおよびメシレートが挙げられる。
【0047】
スルホキシドとしては、たとえば、CHS(=O)CHおよび(CSOが挙げられる。
【0048】
チオエーテルとしては、たとえば、CHSCH、CSCH、CHOCHCHSCHおよびテトラヒドロチオフェンが挙げられる。
【0049】
イミダゾリジンラジカル(Im)は通常、一般式(IVa)または(IVb)
【化7】

(式中、
、R、R、Rは同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、直鎖もしくは分岐のC〜C30アルキル、好ましくはC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、好ましくはC〜C10シクロアルキル、C〜C20アルケニル、好ましくはC〜C10アルケニル、C〜C20アルキニル、好ましくはC〜C10アルキニル、C〜C24アリール、好ましくはC〜C14アリール、C〜C20カルボキシレート、好ましくはC〜C10カルボキシレート、C〜C20アルコキシ、好ましくはC〜C10アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、好ましくはC〜C10アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、好ましくはC〜C10アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、好ましくはC〜C14アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C10アルコキシカルボニル、C〜C20アルキルチオ、好ましくはC〜C10アルキルチオ、C〜C24アリールチオ、好ましくはC〜C14アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニル、好ましくはC〜C10アルキルスルホニル、C〜C20アルキルスルホネート、好ましくはC〜C10アルキルスルホネート、C〜C24アリールスルホネート、好ましくはC〜C14アリールスルホネート、またはC〜C20アルキルスルフィニル、好ましくはC〜C10アルキルスルフィニルである)
の構造を有する。
【0050】
ラジカルR、R、R、Rの1つ以上は、互いに独立して、1つ以上の置換基、好ましくは直鎖もしくは分岐のC〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜C10アルコキシまたはC〜C24アリールで任意選択的に置換されていてもよく、ここで、これらの上述の置換基は同様に、好ましくはハロゲン、特に塩素もしくは臭素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシおよびフェニルからなる群から選択される、1つ以上のラジカルで置換されていてもよい。
【0051】
単に明確にするためにイミダゾリジンラジカルの構造に関して本出願の一般式(IVa)および(IVb)に描かれるような構造は、本明細書において以下構造(IVa’)および(IVb’)として描かれる、そしてイミダゾリジンラジカルのカルベン様構造を強調するそのようなイミダゾリジンラジカルに関して関連文献において多くの場合に使用される構造と同じ意味を有するものとすることが本明細書によって確認される。同じことは、本出願において後でまた描かれる構造(Va)〜(Vf)に適用されるものとする。
【化8】

【0052】
一般式(I)、(II)または(III)の触媒の好ましい実施形態において、配位子Lが存在し、ここで、RおよびRはそれぞれ、互いに独立して、水素、C〜C24アリール、特に好ましくはフェニル、直鎖もしくは分岐のC〜C10アルキル、特に好ましくはプロピルもしくはブチルであるか、または一緒に、それらが結合している炭素原子を包含して、シクロアルキルもしくはアリールラジカルを形成し、ここで、上述のラジカルはすべて同様に、直鎖もしくは分岐のC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C24アリールならびにヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボキシル、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメートおよびハロゲンからなる群から選択される官能基からなる群から選択される1つ以上のさらなるラジカルで置換されていてもよい。
【0053】
一般式(I)、(II)または(III)の触媒の配位子LにおけるラジカルRおよびRは好ましくは同一であるかまたは異なり、それぞれ直鎖もしくは分岐のC〜C10アルキル、特に好ましくはi−プロピルもしくはネオペンチル、C〜C10シクロアルキル、好ましくはアダマンチル、C〜C24アリール、特に好ましくはフェニル、C〜C10アルキルスルホネート、特に好ましくはメタンスルホネート、C〜C10アリールスルホネート、特に好ましくp−トルエンスルホネートである。
【0054】
好ましいとして上に述べられているこれらのラジカルRおよびRは、直鎖もしくは分岐のC〜Cアルキル、特にメチル、C〜Cアルコキシ、アリールならびにヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボキシル、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメートおよびハロゲンからなる群から選択される官能基からなる群から選択される1つ以上のさらなるラジカルで任意選択的に置換されていてもよい。
【0055】
特に、ラジカルRおよびRは同一であるかまたは異なり、それぞれi−プロピル、ネオペンチル、アダマンチルまたはメシチルである。
【0056】
特に好ましいイミダゾリジンラジカル(Im)は、式中、Mesがいずれの場合にも2,4,6−トリメチルフェニルラジカルである、構造(Va)〜(Vf)を有する。
【化9】

【0057】
およびR
本発明の方法に使用される一般式(I)、(II)および(III)の触媒のラジカルRおよびRは同一であるかまたは異なり、それぞれ水素またはアルキル、好ましくはC〜C30アルキル、より好ましくはC〜C20アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C20シクロアルキル、より好ましくはC〜Cシクロアルキル、アルケニル、好ましくはC〜C20アルケニル、より好ましくはC〜C16アルケニル、アルキニル、好ましくはC〜C20アルキニル、より好ましくはC〜C16アルキニル、アリール、好ましくはC〜C24アリール、カルボキシレート、好ましくはC〜C20カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC〜C20アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC〜C20アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC〜C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC〜C24アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C20アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC〜C30アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC〜C30アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC〜C24アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC〜C20アルキルスルホニル、もしくはアルキルスルフィニル、好ましくはC〜C20アルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで任意選択的に置換されていてもよい。
【0058】
およびX
本発明の方法に使用される一般式(I)、(II)および(III)の触媒のXおよびXは同一のまたは異なる配位子、好ましくはアニオン性配位子である。文献において、慣例の用語「アニオン性配位子」は、そのようなメタセシス触媒との関連で、それらが金属中心から切り離して考慮されるときに、閉電子殻に対して負に帯電しているであろう配位子を常に意味する。
【0059】
一般式(I)、(II)および(III)の触媒において、XおよびXは同一であるかまたは異なり、たとえば、水素、ハロゲン、擬ハロゲン、直鎖もしくは分岐のC〜C30アルキル、C〜C24アリール、C〜C20アルコキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルキルジケトネート、C〜C24アリールジケトネート、C〜C20カルボキシレート、C〜C20アルキルスルホネート、C〜C24アリールスルホネート、C〜C20アルキルチオール、C〜C24アリールチオール、C〜C20アルキルスルホニルまたはC〜C20アルキルスルフィニルであることができる。
【0060】
上述のラジカルXおよびXはまた、1つ以上のさらなるラジカルで、たとえばハロゲン、好ましくはフッ素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシまたC〜C24アリールラジカルで置換することができ、ここで、後者ラジカルはまた同様に、ハロゲン、好ましくはフッ素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシおよびフェニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されていてもよい。
【0061】
好ましい実施形態においては、XおよびXは同一であるかまたは異なり、それぞれハロゲン、具体的にはフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素、ベンゾエート、C〜Cカルボキシレート、C〜Cアルキル、フェノキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオール、C〜C24アリールチオール、C〜C24アリールまたはC〜Cアルキルスルホネートである。
【0062】
特に好ましい実施形態においては、XおよびXは同一であり、それぞれハロゲン、特に塩素、CFCOO、CHCOO、CFHCOO、(CHCO、(CF(CH)CO、(CF)(CHCO、PhO(フェノキシ)、MeO(メトキシ)、EtO(エトキシ)、トシレート(p−CH−C−SO)、メシレート(2,4,6−トリメチルフェニル)またはCFSO(トリフルオロメタンスルホネート)である。
【0063】
式中、
Mがルテニウムであり、
およびXが両方ともハロゲン、特に、両方とも塩素であり、
およびZが同一であるかまたは異なり、1〜4個、好ましくは1〜3個、最も好ましくは1もしくは2個のヘテロ原子を含有する5−もしくは6−員環単環式基、または2、3、4もしくは5つのそのような5−もしくは6−員環単環式基からなる二環式もしくは多環式構造を表し、ここで、すべての前述の基は1つ以上のアルキル、好ましくはC〜C10アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキル、アルコキシ、好ましくはC〜C10アルコキシ、ハロゲン、好ましくは塩素もしくは臭素、アリール、好ましくはC〜C24アリール、もしくはヘテロアリール、好ましくはC〜C23ヘテロアリールラジカルで任意選択的に置換されているか、またはZおよびZが一緒に、それによって環式構造を形成する、二座配位子を表し、
およびRが同一であるかまたは異なり、それぞれ水素またはC〜C30アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C20カルボキシレート、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C30アルキルアミノ、C〜C30アルキルチオ、C〜C24アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニル、C〜C20アルキルスルフィニルであり、そのそれぞれが1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで任意選択的に置換されていてもよく、
Lが、一般式(IVa)または(IVb)
【化10】

(式中、
、R、R、Rは同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、直鎖もしくは分岐のC〜C30アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C20カルボキシレート、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20アルキルチオ、C〜C24アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニル、C〜C20アルキルスルホネート、C〜C20アリールスルホネート、またはC〜C20アルキルスルフィニルである)
の構造を有する
一般式(I)の少なくとも1つの触媒の存在下に実施される本発明による方法が特に好ましい。
【0064】
一般構造式(I)の部類に入る特に好ましい触媒は、式(VI)
【化11】

(式中、
、R10は同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖もしくは分岐のC〜C20アルキル、C〜C20ヘテロアルキル、C〜C10ハロアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C24アリール、好ましくはフェニル、ホルミル、ニトロ、窒素複素環化合物、好ましくはピリジン、ピペリジンおよびピラジン、カルボキシ、アルキルカルボニル、ハロカルボニル、カルバモイル、チオカルバモイル、カルバミド、チオホルミル、アミノ、トリアルキルシリルおよびトリアルコキシシリルを表す)
のものである。
【0065】
前述のアルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、フェニル、窒素複素環化合物、アルキルカルボニル、ハロカルボニル、カルバモイル、チオカルバモイルおよびアミノラジカルはまた同様に、ハロゲン、好ましくはフッ素、塩素、もしくは臭素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシおよびフェニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されていてもよい。
【0066】
特に好ましい実施形態において触媒(VI)は、式中、RおよびR10が構造式(VI)について与えられたものと同じ意味を有する、一般構造式(VIa)または(VIb)
【化12】

を有する。
【0067】
およびR10がそれぞれ水素である場合には、触媒(VI)は、文献において「Grubbs III触媒」と言われる。
【0068】
一般構造式(I)〜(III)の部類に入るさらなる好適な触媒は、式中、Mesがいずれの場合にも2,4,6−トリメチルフェニルラジカルである、式(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、(XV)および(XVI)
【化13−1】

【化13−2】

【化13−3】

のものである。
【0069】
式(I)〜(III)および(VI)〜(XVI)の上述の触媒はすべて、NBRの同時メタセシスおよび水素化のためにそのようなものとして使用することができるか、固体担体に適用するおよび固体担体上に固定化することができるかのどちらかである。固相または担体として、第一にメタセシスの反応混合物に対して不活性であり、第二に触媒の活性を損なわない材料を使用することが可能である。触媒を固定化するために、たとえば、金属、ガラス、ポリマー、セラミック、有機ポリマー球体、無機ゾル−ゲル、シリカ、シリケート、炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムを使用することが可能である。
【0070】
上述の一般式および具体的な式(I)〜(III)および(VI)〜(XVI)すべての触媒は、ニトリルゴムの同時メタセシスおよび水素化に非常に好適である。
【0071】
同時メタセシスおよび水素化のための本発明に従って用いられる式(I)、(II)、(III)または(VI)〜(XVI)の少なくとも1つの触媒の量は、具体的な触媒の特質および触媒活性に依存する。使用される触媒の量は通常、使用されるニトリルゴムを基準として、5〜1000ppm、好ましくは5〜500ppm、特に5〜250ppm、より好ましくは5〜100ppmの貴金属である。
【0072】
本発明の方法(NBRの同時メタセシスおよび水素化)はコオレフィンを使って任意選択的に実施することができる。好適なコオレフィンは、たとえば、エチレン、プロピレン、イソブテン、スチレン、1−ヘキセンおよび1−オクテンである。
【0073】
本発明の方法(NBRの同時メタセシスおよび水素化)は、使用される触媒を不活性化しない、かつまた決して反応に悪影響を及ぼさない好適な溶媒中で実施することができる。好ましい溶媒としては、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンおよびシクロヘキサンが挙げられるが、それらに限定されない。特に好ましい溶媒はクロロベンゼンである。
【0074】
反応混合物中のNBRの濃度は決定的に重要であるわけではないが、明らかに、たとえば、混合物が余りにも粘稠で効率的に撹拌することができない場合に反応が妨害されないようであるべきである。好ましくは、NBRの濃度は、1〜40重量%の範囲に、最も好ましくは6〜15重量%の範囲にある。
【0075】
水素の濃度は通常、100psi〜2000psi、好ましくは800psi〜1400psiである。
【0076】
本方法は、60〜200℃の範囲の、好ましくは100〜140℃の範囲の温度で好ましくは実施される。
【0077】
反応時間は、セメント濃度、使用される触媒の量および反応が行われる温度を含む、多数の因子に依存するであろう。反応の進行は、標準分析技法によって、たとえばGPCまたは溶液粘度を用いて監視することができる。本明細書の全体にわたって言及されるときはいつでも、ポリマーの分子量分布は、DIN 55672−1バージョン2007に従って実施されるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された。
【0078】
本発明における水素化は、好ましくは水素化中の出発ニトリルポリマー中に存在する残存二重結合(RDB)の50%超、好ましくはRDBの90%超が水素化され、より好ましくはRDBの95%超、最も好ましくはRDBの99%超が水素化されることで理解される。
【0079】
生じたHNBRの低い粘度のために、射出成形技術に限定されないがその技術によって加工することが理想的に適している。このポリマーはまた、トランスファー成形に、圧縮成形に、または液状射出成形に有用であることができる。
【0080】
さらに、本発明の方法において得られるポリマーは、射出成形技術によって製造されるシール、ホース、ベアリングパッド、固定子、油井ヘッドシール、弁板、ケーブル被覆材料、車輪、ローラー、パイプシール、定位置ガスケットまたは履物構成部品などの、造形品の製造に非常に好適である。
【0081】
さらなる実施形態において本発明は、ニトリルゴムの同時水素化およびメタセシスによる水素化ニトリルゴムの製造方法における一般式(I)、(II)または(III)
【化14】

(式中、
Mはルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは同一のまたは異なる配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
およびZは同一であるかまたは異なり、中性の電子供与配位子であり、
およびRはそれぞれ独立して水素または、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボキシレート、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルおよびアルキルスルフィニルラジカルからなる群から選択される置換基であり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで任意選択的に置換されていてもよく、
Lは配位子である)
の少なくとも1つの触媒の使用に関する。
【0082】
一般式(I)、(II)および(III)の特に好ましい化合物だけでなく好ましい基M、X、X、Z、Z、R、RおよびLは前に述べられている。
【実施例】
【0083】
実施例1〜2
次の触媒を使用した:
「Grubbs III触媒」(本発明による):
【化15】

Grubbs III触媒は、Grubbsら、Angew.Chem.Int.Ed.,2002,41(21),4035に概説されている調製によって製造した。
【0084】
Wilkinson’s触媒(比較):
【化16】

Wilkinson’s触媒は、Umicore AGから入手した。
【0085】
Grubbs II触媒(比較):
【化17】

Grubbs II触媒は、Materia(Pasadena/California)から入手した。
【0086】
下記の分解反応は、Lanxess Deutschland GmbH製のニトリルゴムPerbunan(登録商標)NT 3429を使用して実施した。このニトリルゴムは次の特有の性質を有した:
【0087】
【表1】

【0088】
以下に続く本文において、このニトリルゴムは略してNBRと言われる。
【0089】
518グラムのニトリルゴムを室温で4300グラムのモノクロロベンゼンに溶解させ、12時間撹拌した。この12%溶液を次に、600rpmで撹拌している高圧反応器に移し、反応器でゴム溶液を、十分な撹拌下にH(7バール)で3回脱気した。反応器の温度を130℃に上げ、触媒およびトリフェニルホスフィン(必要に応じて)を含有するモノクロロベンゼン溶液を反応器に加えた。圧力を85バールに設定し、温度を138℃に上昇させ、反応の継続期間一定に維持した。水素化反応を、IR分光法を用いて様々な間隔で残存二重結合(RDB)レベルを測定することによって監視した。
【0090】
反応の完了時にGPC分析をDIN 55672−1バージョン2007に従って実施した。
【0091】
ムーニー粘度(100℃でのML 1+4)を、ASTM標準D 1646を用いて測定した。
【0092】
以下の特有の性質を、元のNBRゴム(分解前)についておよび分解ニトリルゴムについて両方ともGPC分析を用いて測定した:
【0093】
【表2】

【0094】
実施例1:詳細
【0095】
【表3】

【0096】
【表4】

【0097】
【表5】

【0098】
すべて等しい金属含有率でのHNBR1、3および4を比較して、本発明者らは、Grubbs III触媒がGrubbs IIまたはWilkinson’s触媒を使った反応のどちらよりも最初の120分で速く水素化することを観察する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素、任意選択的に少なくとも1つのコオレフィンの存在下に、および一般式(I)、(II)または(III)
【化1】

(式中、
Mはルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは同一のまたは異なる配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
およびZは同一であるかまたは異なり、中性の電子供与配位子であり、
およびRはそれぞれ独立して水素、または、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボキシレート、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルおよびアルキルスルフィニルラジカルからなる群から選択される置換基であり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで任意選択的に置換されていてもよく、
Lは配位子である)
の少なくとも1つの触媒の存在下にニトリルゴムを反応させる工程を含む水素化ニトリルゴムの製造方法。
【請求項2】
前記一般式(I)、(II)または(III)の少なくとも1つの触媒において、ZおよびZが同一であるかまたは異なり、任意選択的に置換されている複素環基、好ましくは、1〜4個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1もしくは2個のヘテロ原子を含有する5−もしくは6−員環単環式基、または2、3、4もしくは5つのそのような5−もしくは6−員環単環式基からなる二環式もしくは多環式構造を表し、ここで、すべての前述の基が1つ以上のアルキル、好ましくはC〜C10アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキル、アルコキシ、好ましくはC〜C10アルコキシ、ハロゲン、好ましくは塩素もしくは臭素、アリール、好ましくはC〜C24アリール、もしくはヘテロアリール、好ましくはC〜C23ヘテロアリールラジカルで任意選択的に置換されていてもよく、ここで、これらの前述の置換基が、好ましくはハロゲン、特に塩素もしくは臭素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシおよびフェニルからなる群から選択される、1つ以上のラジカルで同様に置換されていてもよく、好ましくはZおよびZが同一であるかまたは異なり、窒素含有複素環化合物、好ましくはピリジン、ピリダジン、ビピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピラゾリジン、ピロリジン、ピペラジン、インダゾール、キノリン、プリン、アクリジン、ビスイミダゾール、ピコリルイミン、イミダゾリジンおよびピロールを表し、または別の可能性ではZおよびZが一緒に環式構造の形成下に二座配位子を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一般式(I)、(II)または(III)の少なくとも1つの触媒において、配位子Lがホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスフェート、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、チオエーテルであるかまたはLが置換もしくは非置換イミダゾリジン(「Im」)配位子であり、好ましくは配位子LがC〜C24アリールホスフィン、C〜CアルキルホスフィンもしくはC〜C10シクロアルキルホスフィン配位子、スルホン化C〜C24アリールホスフィンもしくはスルホン化C〜C10アルキルホスフィン配位子、C〜C24アリールホスフィナイトもしくはC〜C10アルキルホスフィナイト配位子、C〜C24アリールホスホナイトもしくはC〜C10アルキルホスホナイト配位子、C〜C24アリールホスファイトもしくはC〜C10アルキルホスファイト配位子、C〜C24アリールアルシンもしくはC〜C10アルキルアルシン配位子、C〜C24アリールアミンもしくはC〜C10アルキルアミン配位子、ピリジン配位子、C〜C24アリールスルホキシドもしくはC〜C10アルキルスルホキシド配位子、C〜C24アリールエーテルもしくはC〜C10アルキルエーテル配位子もしくはC〜C24アリールアミドもしくはC〜C10アルキルアミド配位子であり、そのそれぞれがフェニル基で置換されていてもよく、そのフェニル基が、ハロゲン、C〜CアルキルラジカルもしくはC〜Cアルコキシラジカルで同様に置換されていてもよいか、またはLが置換もしくは非置換イミダゾリジン(「Im」)配位子である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記一般式(I)、(II)または(III)の少なくとも1つの触媒において、Lが、PPh、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(イソ−Pr)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)およびP(ネオフェニル)からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記イミダゾリジンラジカル(Im)が一般式(IVa)または(IVb)
【化2】

(式中、
、R、R、Rは同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、直鎖もしくは分岐のC〜C30アルキル、好ましくはC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、好ましくはC〜C10シクロアルキル、C〜C20アルケニル、好ましくはC〜C10アルケニル、C〜C20アルキニル、好ましくはC〜C10アルキニル、C〜C24アリール、好ましくはC〜C14アリール、C〜C20カルボキシレート、好ましくはC〜C10カルボキシレート、C〜C20アルコキシ、好ましくはC〜C10アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、好ましくはC〜C10アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、好ましくはC〜C10アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、好ましくはC〜C14アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C10アルコキシカルボニル、C〜C20アルキルチオ、好ましくはC〜C10アルキルチオ、C〜C24アリールチオ、好ましくはC〜C14アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニル、好ましくはC〜C10アルキルスルホニル、C〜C20アルキルスルホネート、好ましくはC〜C10アルキルスルホネート、C〜C24アリールスルホネート、好ましくはC〜C14アリールスルホネート、またはC〜C20アルキルスルフィニル、好ましくはC〜C10アルキルスルフィニルである)
の構造を有し、好ましくは前記イミダゾリジンラジカル(Im)が、式中、Mesがいずれの場合にも2,4,6−トリメチルフェニルラジカルである、式(Va)〜(Vf)
【化3】

の構造を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記一般式(I)、(II)または(III)の少なくとも1つの触媒において、RおよびRが同一であるかまたは異なり、それぞれ水素またはアルキル、好ましくはC〜C30アルキル、より好ましくはC〜C20アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C20シクロアルキル、より好ましくはC〜Cシクロアルキル、アルケニル、好ましくはC〜C20アルケニル、より好ましくはC〜C16アルケニル、アルキニル、好ましくはC〜C20アルキニル、より好ましくはC〜C16アルキニル、アリール、好ましくはC〜C24アリール、カルボキシレート、好ましくはC〜C20カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC〜C20アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC〜C20アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC〜C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC〜C24アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C20アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC〜C30アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC〜C30アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC〜C24アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC〜C20アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル、好ましくはC〜C20アルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれが1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで任意選択的に置換されていてもよい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記一般式(I)、(II)または(III)の少なくとも1つの触媒において、XおよびXが同一であるかまたは異なり、水素、ハロゲン、擬ハロゲン、直鎖もしくは分岐のC〜C30アルキル、C〜C24アリール、C〜C20アルコキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルキルジケトネート、C〜C24アリールジケトネート、C〜C20カルボキシレート、C〜C20アルキルスルホネート、C〜C24アリールスルホネート、C〜C20アルキルチオール、C〜C24アリールチオール、C〜C20アルキルスルホニルまたはC〜C20アルキルスルフィニルを表し、好ましくはXおよびXが同一であるかまたは異なり、それぞれハロゲン、具体的にはフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素、ベンゾエート、C〜Cカルボキシレート、C〜Cアルキル、フェノキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオール、C〜C24アリールチオール、C〜C24アリールまたはC〜Cアルキルスルホネートであり、より好ましくはXおよびXがそれぞれハロゲン、特に塩素、CFCOO、CHCOO、CFHCOO、(CHCO、(CF(CH)CO、(CF)(CHCO、PhO(フェノキシ)、MeO(メトキシ)、EtO(エトキシ)、トシレート(p−CH−C−SO)、メシレート(2,4,6−トリメチルフェニル)またはCFSO(トリフルオロメタンスルホネート)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記一般式(I)、(II)または(III)の少なくとも1つの触媒において、
Mがルテニウムであり、
およびXが両方ともハロゲン、特に、両方とも塩素であり、
およびZが同一であるかまたは異なり、1〜4個、好ましくは1〜3個、最も好ましくは1もしくは2個のヘテロ原子を含有する5−もしくは6−員環単環式基、または2、3、4もしくは5つのそのような5−もしくは6−員環単環式基からなる二環式もしくは多環式構造を表し、ここで、すべての前述の基が1つ以上のアルキル、好ましくはC〜C10アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキル、アルコキシ、好ましくはC〜C10アルコキシ、ハロゲン、好ましくは塩素もしくは臭素、アリール、好ましくはC〜C24アリール、もしくはヘテロアリール、好ましくはC〜C23ヘテロアリールラジカルで任意選択的に置換されているか、またはZおよびZが一緒に、それによって環式構造を形成する、二座配位子を表し、
およびRが同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、C〜C30アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C20カルボキシレート、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C30アルキルアミノ、C〜C30アルキルチオ、C〜C24アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニル、C〜C20アルキルスルフィニルであり、そのそれぞれが1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで任意選択的に置換されていてもよく、
Lが、前記一般式(IVa)または(IVb)
【化4】

(式中、
、R、R、Rは同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、直鎖もしくは分岐のC〜C30アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C20カルボキシレート、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20アルキルチオ、C〜C24アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニル、C〜C20アルキルスルホネート、C〜C24アリールスルホネート、またはC〜C20アルキルスルフィニルである)
の構造を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式(I)の少なくとも1つの触媒が、式(VI)
【化5】

(式中、
およびR10は同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖もしくは分岐のC〜C20アルキル、C〜C20ヘテロアルキル、C〜C10ハロアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C24アリール、好ましくはフェニル、ホルミル、ニトロ、窒素複素環化合物、好ましくはピリジン、ピペリジンおよびピラジン、カルボキシ、アルキルカルボニル、ハロカルボニル、カルバモイル、チオカルバモイル、カルバミド、チオホルミル、アミノ、トリアルキルシリルおよびトリアルコキシシリルを表す)
の少なくとも1つの触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式(I)、(II)または(III)の少なくとも1つの触媒が、式中、Mesがいずれの場合にも2,4,6−トリメチルフェニルラジカルである、式(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、(XV)または(XVI)
【化6−1】

【化6−2】

の少なくとも1つの触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
触媒の量が、使用される前記ニトリルゴムを基準として、5〜1000ppm、好ましくは5〜500ppm、特に5〜250ppmの貴金属である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのコオレフィン、好ましくはエチレン、プロピレン、イソブテン、スチレン、1−ヘキセンおよび/または1−オクテンを使って実施される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記水素化反応が、使用される前記触媒を不活性化しない、かつまた決して前記反応に悪影響を及ぼさない少なくとも1つの好適な溶媒、好ましくはジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンおよび/またはシクロヘキサン、特に好ましくはクロロベンゼン中で実施される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ニトリルゴムの同時水素化およびメタセシスによる水素化ニトリルゴムの製造方法における前記一般式(I)、(II)または(III)
【化7】

(式中、
Mはルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは同一のまたは異なる配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
およびZは同一であるかまたは異なり、中性の電子供与配位子であり、
およびRはそれぞれ独立して水素、または、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボキシレート、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルおよびアルキルスルフィニルラジカルからなる群から選択される置換基であり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで任意選択的に置換されていてもよく、
Lは配位子である)
の少なくとも1つの触媒の使用。

【公表番号】特表2013−503228(P2013−503228A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526073(P2012−526073)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062529
【国際公開番号】WO2011/023788
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】