説明

水素化触媒

フルオロオレフィンの水素化に有用である水素化触媒のためのアルファ−アルミナ担体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンを水素化するための触媒に関する。より詳細には、本発明は、フルオロオレフィンを水素化するための担持触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロオレフィンの接触水素化は、有用な生成物および/または中間体としてのハイドロフルオロカーボンの製造によく用いられる。基材に担持されたPdなどの種々の金属が、非常に効果的な水素化触媒として長い間認識されてきた。これらの触媒は、気相反応において特に効果的である。アルミナは、このような触媒の担体として公知である。アルミナは、アルファ(α)(コランダムとしても知られる)、ベータ(β)、カイ(χ)、カッパ(κ)、イータ(η)、シータ(θ)、デルタ(δ)、およびガンマ(λ)を例とする異なるギリシャ文字で通常は指定される複数の異なる相を有する。この各々は、独特の結晶構造および特性を有している。例えば、アルファアルミナは、六方晶系の結晶から成り、一方ガンマアルミナは、立方晶系の結晶から成る(http://www.infoplease.com/ce6/sci/A0803541.html)。
【0003】
アルファ相アルミナ以外のアルミナは、高温にてアルファ形態に転移することができることから、遷移相として知られる(同上)。アルミナのその他の形態としては、アモルファスアルミナ(すなわち、結晶構造を持たないアルミナ)、および比表面積が大きく、多くの場合200平方メートル/gを大きく超える脱水アルミナの高多孔性の形態である活性化アルミナが挙げられる(http://en.wikipedia.org/wiki/Activated alumina)。
【0004】
通常、好ましい担体は、高い比表面積を特徴とする。例えば、米国特許第2,657,980号には、「活性化アルミナと対照的であるのは、コランダム[アルファ−アルミナ]として知られるアルミナの公知の形態であり、これは、マイクロ多孔性ではなく、[水素化触媒としての使用に]不適である」と記されている。米国特許第2,908,654号も参照されたい(「高反応性改質触媒のための担体として、コランダム(アルファアルミナと称されることもある)を用いることは適しておらず、コランダムと区別するために、触媒担体グレードは、活性化アルミナ、収着性アルミナ、またはガンマアルミナなどの用語で称される」と記載)。アモルファスアルミナも、水素化触媒用担体として報告されている(米国特許第2,875,158号)。
【0005】
アルファ−アルミナに担持された低濃度パラジウム/銀触媒が、アセチレンの選択的水素化のための水素化触媒として報告されている(米国特許第4,404,124号)。対照的に、他の相のアルミナは、アルケン、特にフルオロアルケンの水素化触媒として報告されている。例えば、I.L. Knunyants and E.I. Mysov(Kinetika i Kataliz, Vol. 8, No. 4, pp. 834-840)は、CF=CFのCHFCHFへの、およびCFCF=CF(HFP)のCFCHFCHF(236ea)への水素化のための、比表面積が約200m/gであるPd/Al触媒を報告した。表面積の情報に基づくと、この触媒で用いられたアルミナは、遷移アルミナの1つであり得る。
【発明の概要】
【0006】
しかし、炭素−フッ素結合の水素化分解開裂の発生に起因して、フルオロオレフィンの水素化の過程で少量のHFが発生し、これは、遷移アルミナ触媒担体を攻撃して、触媒構造の変化および触媒の不活性化を引き起こし得る。従って、金属触媒のための公知の遷移アルミナ担体はすべて、フロオロオレフィンの水素化においてHFの攻撃を受ける傾向にあり、それによって、有用な寿命が限定される。従って、フルオロオレフィンの水素化に有用である触媒のための長寿命触媒担体が依然として求められている。本発明は、中でも、この必要性を満足するものである。
【0007】
出願者らは、予想外なことに、これらの遷移アルミナの高温焼成の最終生成物であり、小さい比表面積(通常50m/g未満)を特徴とするアルファ−アルミナ上に担持された金属触媒が、フルオロオレフィンの水素化において安定した活性を提供し、一方ガンマ−アルミナなどの遷移アルミナに担持されたものは、不安定な活性を示すことを見出した。
【0008】
従って、本発明の1つの態様では、(a)約90から約99.9のアルミナであって、前記アルミナは、少なくとも約90重量%がアルファ−アルミナである、アルミナ、および(b)約0.1から約10重量%の少なくとも1つの金属であって、前記金属は、Pd、Ru、Pt、Rh、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Re、Os、Au、およびこれらのいずれかの組み合わせから成る群より選択される、金属、を含む組成物が提供される。
【0009】
本発明の別の態様によると、担持水素化触媒を含む製品が提供され、ここで、前記担持水素化触媒は、(a)アルファ−アルミナを含有し、少なくとも1つの表面を有する担体、および(b)前記表面の少なくとも一部に配置された少なくとも1つのゼロ価金属、を含み、ここで、前記ゼロ価金属は、担体および還元されたゼロ価金属の総重量に基づいて、約0.1から約10重量パーセントの量で存在する。
【0010】
本発明の別の態様によると、(a)少なくとも1つの金属塩、少なくとも1つの溶媒、およびアルファ−アルミナを接触させてスラリーを形成する工程;(b)前記溶媒を前記スラリーから除去して、溶媒フリー粉末を形成する工程;(c)所望に応じて前記粉末を焼成する工程;(d)前記粉末を担持触媒へ変換する工程;および(e)前記担持触媒を、Hを含む気体組成物と接触させて、前記担持触媒を活性化する工程、を含む、触媒を作製するための方法が提供され、ここで、前記活性化担持触媒は、約90から約99.9重量パーセントの脱水アルファ−アルミナ、および約0.1から約10重量パーセントの前記金属塩由来ゼロ価金属を含む。特定の好ましい実施形態では、この方法は、(a)金属成分の塩(例:Pdの場合、Pd(NO、PdCl)を適切な溶媒に溶解して、溶液を形成する工程;(b)前記溶液に適切な量のアルファ−アルミナを添加してスラリーを形成する工程;(c)前記スラリーから溶媒を除去してペーストを形成する工程;(d)前記ペーストを乾燥して、溶媒フリー粉末を形成する工程;(e)前記溶媒フリー粉末をN気流中、300〜500℃にて2から8時間焼成する工程;(f)この焼成粉末を微細分解状態まで粉砕する工程;(g)前記微細粉末をペレット化して錠剤とする工程;および(h)使用前に、前記触媒ペレットを、Hまたは希釈H気流中、150〜250℃にて2から4時間還元する工程、を含む。
【0011】
本発明のさらに別の態様によると、化合物を水素化するための方法が提供され、その方法は、オレフィンを含む反応物であって、ここで前記オレフィンは少なくとも1つの炭素−フッ素結合を有する、反応物を、前記オレフィンの水素化誘導体を含む反応生成物を形成するのに効果的な反応条件下にて、担持水素化触媒と接触させる工程を含み;ここで、前記担持水素化触媒は、アルファ−アルミナを含む担体上に配置されたゼロ価金属を含む。好ましくは、この方法は、フルオロオレフィンまたはハイドロフルオロオレフィンを水素化することを含み、より好ましくは、フルオロオレフィンまたはハイドロフルオロオレフィンを水素化してハイドロフルオロアルカンを生成させることを含む。好ましい実施形態では、この方法は、(a)水素化触媒を含有する反応容器へ、水素およびフルオロオレフィンを添加する工程;および(b)前記水素化触媒上で前記フルオロオレフィンを水素と反応させてハイドロフルオロカーボンを生成させる工程、を含む。特定のフルオロオレフィンの水素化によって生成させることができるハイドロフルオロカーボンの限定されない例としては、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(236ea)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(245eb)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)、1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(254fb)、および1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(254eb)が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン(HFP)の操作中の変換を、0.5重量%Pd/ガンマ−アルミナおよび0.5重量%Pd/アルファ−アルミナ触媒上でのHFP水素化の過程にて、時間に対して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施形態によると、アルファ−アルミナ担持金属触媒が、フルオロオレフィンのハイドロフルオロカーボンへの水素化に用いられる。金属成分の限定されない例としては、Pd、Ru、Pt、Rh、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Re、Os、Au、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。金属充填量は、広い範囲内で様々であってよく、例えば0.1〜10重量%である。しかし、Ru、Ph、Pd、Pt、Irなどの貴金属の場合、金属充填量は、好ましくは約0.1から約5重量%、より好ましくは約0.1から約1重量%である。約0.1重量%未満の金属濃度である担持触媒は、フルオロオレフィンまたはハイドロフルオロオレフィンの水素化において高い効果を示さないことが見出された。
【0014】
1つの実施形態では、金属成分の塩(例:Pdの場合、Pd(NOまたはPdCl)が、この金属塩を実質的に溶解するか、または可溶化するのに十分な量の溶媒に添加される。好ましい溶媒は、金属塩が容易に溶解可能な溶媒である。溶媒の選択は、特定の金属塩に応じて様々であり得る。本発明の触媒組成物の作製に用いることができる溶媒の例としては、水、アルコール、エーテル、およびこれらの混合物が挙げられる。有用なアルコールとしては、一価および多価アルコールが挙げられる。最も好ましいアルコールは、一価であり、1から5個の炭素原子を有するものである。最も好ましい溶媒は水である。
【0015】
所望される量のアルファ−アルミナ粉末が、前記金属塩の溶液に添加され、スラリーが形成される。スラリーの形成後、実質的にすべての溶媒が除去され、前記金属塩と前記アルファ−アルミナとの混合物の固体塊が形成される。溶媒は一段階で除去してもよいが、好ましい方法では、スラリーから溶媒の一部を除去してペーストを形成し、続いてこのペーストを乾燥して固体塊を形成する。溶媒の除去には、従来技術のいずれを用いてもよい。そのような技術の例としては、室温または高温での激しい攪拌、蒸発、沈降とデカンテーション、遠心分離、およびろ過が挙げられる。所望される量の溶媒を蒸発させてペーストを形成することが好ましい。次に、適切ないずれかの方法によってペーストを乾燥させ、易流動性で、実質的に溶媒フリーである粉末を形成する。好ましい乾燥方法としては、最も好ましい温度が約110℃から約120℃であるオーブン乾燥、およびスプレー乾燥が挙げられる。本明細書で用いる「溶媒フリー」という用語は、溶媒除去/乾燥の後、粉末に残留する溶媒が、1重量%未満、好ましくは約0.5重量%もしくはそれ未満、より好ましくは約0.1重量%もしくはそれ未満であり、最も好ましくは溶媒がまったく残留していないことを意味する。溶媒の除去後、粉末は、前記金属塩および前記アルファ−アルミナの粒子の混合物の固体塊(または粉末)の形態をとる。
【0016】
必要に応じて、前記金属塩および前記アルファ−アルミナ粉末の混合物の固体塊は、続いて焼成してよい。焼成は、好ましくは、約100℃から約750℃の温度で、より好ましくは約200℃から約600℃の温度で、最も好ましくは約300℃から約500℃の温度で実施される。焼成は、さらに所望に応じて、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスの存在下で実施してもよい。
【0017】
焼成後、粉末は、所望に応じて、それがより微細に分解された状態となるように、さらに粉砕してもよい。粉末は、さらに所望に応じて、ペレットを形成する目的でペレット化してもよい。
【0018】
触媒ペレットは、次に、反応器に充填され、使用前に、水素または希釈水素気流中、2〜4時間、約50から約500℃の温度にて、より好ましくは約100から約300℃の温度にて、最も好ましくは約150から約250℃の温度にて、還元される。
【0019】
フルオロオレフィンの水素化は、バッチ操作で実施してよいことが意図されるが、水素化反応は、実質的に連続的な操作で行われることが好ましい。さらに、水素化反応は、特定の実施形態において、液相反応を含み得ることが可能であるが、好ましい実施形態では、水素化反応は、少なくとも2つの気相反応段階を含むか、またはさらにより好ましくは、少なくとも2つの気相反応段階から成ることが意図される。
【0020】
反応段階の数に関して、出願者らは、驚くべきことに、そして予想外なことに、少なくとも2つの反応段階を用いることで、反応全体の変換および選択性が、比較的高いレベルで達成可能であることを見出したものであり、ここで、反応の第一段階は、比較的低い第一の変換率の達成に効果的な条件下で実施されて、第一段階反応流を生成し、ならびに、少なくとも反応の第二段階は、前記第一段階流の少なくとも一部が供給され、前記第一の変換率よりも高い第二の変換率を達成するに効果的である条件下で実施される。好ましくは、反応条件は、本発明に従う所望される変換を達成する目的で、第一および第二段階の各々で制御される。本明細書で用いる「反応条件」という用語は、単数の意味も含むことが意図され、本明細書に含まれる教示事項に従って供給物質の変換を行うために、反応のオペレーターによって改変可能であるいずれかの1もしくは2つ以上のプロセスパラメータの制御を意味する。限定されない例として、供給物質の変換は、以下のいずれかの1もしくは2つ以上を制御または調節することによって制御または調節することができる:反応の温度、反応物の流速、希釈剤の存在、反応容器中に存在する触媒の量、反応容器の形状とサイズ、反応の圧力、およびこれらのいずれかの組み合わせ、ならびに本明細書に含まれる開示事項を考慮して、当業者にとって利用可能であり公知であるその他のプロセスパラメータ。
【0021】
出願者らは、好ましい実施形態において、水素化反応の第一段階において変換を制御する工程は、1もしくは2つ以上の反応物の供給速度に対する反応の第一段階に存在する触媒の量の適切な選択および制御、ならびに/または反応温度の適切な選択および制御によって、ならびに、好ましくは、これらのプロセスパラメータの両方の適切な選択および制御によって達成されるものであることを見出した。反応の第一段階で用いられる触媒の量を適切に選択する工程は、供給物質の100%を変換するのに理論的に必要である触媒の量を推定する工程を含む。そのような推定は、そのような推定を行うためのどのような公知の方法によっても得ることができ、それは、当業者であれば、本明細書に含まれる教示事項を考慮して、明らかであるはずである。加えて、触媒の量を適切に選択する工程はまた、ベンチ、パイロット、または類似の研究を行って、代わりに選択された他のプロセスパラメータにおける供給速度下で、供給物質の100%を変換するのに必要である用いられた特定の触媒の量を決定することも含んでよい。この推定に基づいて、本発明の好ましい実施形態は、次に、100%変換に要する量よりも相当に少ない触媒量、さらにより好ましくは、得られる供給オレフィンの変換が約10%から約60%、より好ましくは約10%から約40%、さらにより好ましくは約10%から25%となるような十分に少ない触媒量を、反応の第一段階で提供する工程を含む。ここでも、当業者であれば、触媒の量を適切に選択する工程は、追加のベンチ、パイロット、またはその他の研究を減少させた触媒量で行い、それに従って触媒の量を調節することをさらに含んでよいことは理解されるであろう。そのような研究および推定はすべて、本明細書に含まれる教示事項を考慮して、過度な実験を行うことなしに達成することができることが意図される。
【0022】
出願者らは、反応の第一段階において、本発明に従って反応物の変換を比較的低く維持する工程は、所望されるハイドロフルオロカーボンへの反応の選択性に有利な影響を有することを見出した。言い換えると、反応の第一段階で行われる変換の量は、水素化工程全体に所望されるものよりも十分に低く制御されるものの、本明細書で述べるように変換を制御することによって、第一反応段階において所望されるハイドロフルオロカーボンへ変換される供給物質のパーセントが改善され、高められること(すなわち、改善された選択性が得られること)を出願者らは見出した。より具体的には、多くの実施形態において、第一反応段階での所望されるハイドロフルオロカーボンへの選択性は、少なくとも約80%であることが好ましく、より好ましくは少なくとも約90%、さらにより好ましくは少なくとも約95%、そして、多くの好ましい実施形態では、約97%以上である。
【0023】
特定の好ましい実施形態では、第一反応段階での変換を制御する工程は、反応混合物の少なくとも一部を冷却することによって、反応から熱を除去することをさらに含む。当業者であれば、本明細書に含まれる教示事項を考慮して、そのような冷却を達成するための多くの手段および機構を過度の実験を行うことなしに考案することができ、そのような手段および機構はすべて本発明の範囲内であることが意図される。
【0024】
好ましい実施形態では、第一反応段階からの排出流の少なくとも一部が、直接、または所望に応じて行ってよい何らかのさらなる処理の後、第二反応段階へ供給され、ここで、第一反応段階後の排出流中に残留する未反応フルオロオレフィンが、本発明に従ってハイドロフルオロカーボンへ変換される。より具体的には、第二反応段階、または存在する場合は続いての反応段階が、第一反応段階の変換パーセントよりも高い、好ましくは著しく高い変換率にて、第二反応器段階への供給流中に含有されるフルオロオレフィンを変換するのに効果的である条件下で操作されることが好ましい。特定の好ましい実施形態では、例えば、第二反応段階での変換パーセントは、約20%から約99%であり、用いられて全体の変換工程に影響を与える反応物段階の総数に主として応じて異なる。例えば、二段階反応システムから構成される実施形態では、第二反応段階での変換は、好ましくは95%超であり、さらにより好ましくは約100%であることが意図される。しかし、当業者であれば本明細書に含まれる教示事項から理解されるように、そのような二段階反応は、ハイドロフルオロカーボンへの所望される選択性を得るのに十分でない場合がある。そのような場合、変換工程が、ある実施形態における10もしくはそれを超える多さの反応段階を含む、3つ以上の反応段階を有する場合があることは、本発明の範囲内である。
【0025】
反応容器自体のサイズ、形状、およびその他の特性は、本発明の範囲内で幅広く様々であってよく、各段階に関わる容器は、その上流および下流の反応段階に関わる容器と異なっていても、同一であってもよいことが意図される。さらに、すべての反応段階は、変換の制御に必要である手段および機構が提供される限りにおいて、単一の容器内部で行われてよいことが意図される。例えば、特定の実施形態では、各反応段階に、管状反応器全体にわたって触媒の量および/または分布を適切に選択することによって変換の制御が提供される単一の管状反応器を利用することが望ましい場合もある。そのような場合、管状反応器の異なるセクションから除去される、またはそこに加えられる熱の量を制御することによって、同一の管状反応器の異なるセクションにおける変換をさらに制御することも可能である。
【0026】
本発明で開示される触媒組成物は、フルオロオレフィンをハイドロフルオロカーボンに変換するのに有用である。この触媒は、HFの攻撃に対する耐性を有することから、安定であり、再生後に再使用することができる。本発明で開示される水素化触媒の1もしくは2つ以上は、本発明に従う反応段階の1もしくは2つ以上に用いてよい。
【0027】
従って、本方法の特定の実施形態は、第一反応段階にて、フルオロオレフィンとHなどの水素化剤とを触媒の第一の量と接触させて、1もしくは複数のハイドロフルオロカーボン、未反応のフルオロオレフィン、および水素を含む反応流を生成する工程;反応の第二段階にて、この第一の排出流の少なくとも一部を触媒の第二の量と接触させて、ハイドロフルオロカーボンを生成する工程を含み、ここで、触媒の第二の量は、触媒の第一の量よりも多く、およびここで、フルオロオレフィンへの変換は、反応の第二段階の方が高い。
【0028】
表1は、ハイドロフルオロカーボン、およびそれらを得ることができるフルオロオレフィンの例を示す(フルオロオレフィンが左カラム、対応するハイドロフルオロカーボンが右カラム)。
【0029】
【表1】

【0030】
以下は、本発明の例であり、限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例1:1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンの水素化におけるガンマ−アルミナおよびアルファ−アルミナ担持Pd触媒の比較
比表面積がそれぞれ243および33m/gである、0.5重量%Pd/ガンマ−アルミナおよび0.5重量%Pd/アルファ−アルミナを、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン(HFP)の水素化について比較した。20mlのモネル充填剤(Monel packing)で希釈した約2gの触媒を、3/4インチのモネル管状反応器中に充填し、10%H/N気流中、200℃にて2時間in−situで還元した。HFPを5g/時間の速度で反応器に供給し、H/HFPのモル比が1.5と等しくなるようにHを共供給した。表2に示すように、両触媒共に、最初はほぼ完全なHFP変換が得られ、236eaの選択性は99.5%超であった。しかしながら、図1に示すように、操作中、1000時間後であっても0.5重量%Pd/アルファ−アルミナ触媒に不活性化は見られなかったが、0.5重量%Pd/ガンマ−アルミナでは、操作中、約600時間で急速な不活性化の開始が見られた。このことは、アルファ−アルミナ担持Pd触媒が、ガンマ−アルミナ担持Pd触媒よりも非常に安定性が高いことを示している。
【0031】
【表2】

【0032】
実施例2:アルファ−アルミナ担持Pd触媒による1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンの水素化
比表面積が33m/gである0.5重量%Pd/アルファ−アルミナ触媒を、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン(HFP)の水素化に用いた。10mlのモネル充填剤で希釈した約1gの触媒を、3/4インチのモネル管状反応器中に充填し、10%H/N気流中、200℃にて2時間in−situで還元した。HFPを65g/時間の速度で反応器に供給し、H/HFPのモル比が1.5と等しくなるようにHを共供給した。生成物流のGC分析から示されるように、触媒は、約55%のHFP変換、および約99.5%の245eb選択性を示した。800時間にわたる試験期間の間では不活性化は見られず、このことは、アルファ−アルミナ担持Pd触媒が、HFP水素化において安定な活性を提供することができることを示している。
【0033】
実施例3:アルファ−アルミナ担持Pd触媒による1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンの水素化
比表面積が33m/gである0.5重量%Pd/アルファ−アルミナ触媒を、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(1225ye)の水素化に用いた。10mlのモネル充填剤で希釈した約0.5gの触媒を、3/4インチのモネル管状反応器中に充填し、10%H/N気流中、200℃にて2時間in−situで還元した。1225yeを30g/時間の速度で反応器に供給し、H/1225yeのモル比が1.5と等しくなるようにHを共供給した。生成物流のGC分析から示されるように、この触媒は、約45%の1225ye変換、および約98.5%の245eb選択性を示した。800時間にわたる試験期間の間では不活性化は見られず、このことは、アルファ−アルミナ担持Pd触媒が、1225ye水素化において安定な活性を提供することができることを示している。
【0034】
前述の説明は、本発明の単なる例示であることは理解されるべきである。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、種々の変形および変更を考案することができる。従って、本発明は、添付の請求項の範囲内に含まれるそのような変形、変更、および変化のすべてを包含することを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.約90から約99.9のアルミナであって、ここで、前記アルミナは、少なくとも約90重量%がアルファ−アルミナである、アルミナ;および、
b.約0.1から約10重量%の少なくとも1つのゼロ価金属であって、ここで、前記ゼロ価金属は、Pd、Ru、Pt、Rh、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Re、Os、およびAuから成る群より選択される、ゼロ価金属、
を含む組成物。
【請求項2】
担持水素化触媒を含む製品であって、ここで、前記担持水素化触媒は;
a.アルファ−アルミナを含有し、少なくとも1つの表面を有する担体、および
b.前記表面の少なくとも一部に配置された少なくとも1つのゼロ価金属であって、ここで、前記ゼロ価金属は、前記担体および還元されたゼロ価金属の総重量に基づいて、約0.1から約10重量パーセントの量で存在する、ゼロ価金属、
を含む、製品。
【請求項3】
前記ゼロ価金属が、Pd、Ru、Pt、Rh、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Re、Os、およびAuから成る群より選択される、請求項2に記載の製品。
【請求項4】
前記担体が、少なくとも約50重量%のアルファ−アルミナを含む、請求項2に記載の製品。
【請求項5】
a.少なくとも一種の金属塩、少なくとも一種の溶媒、およびアルファ−アルミナを一緒に添加して触媒前駆体組成物を形成する工程;
b.前記溶媒を前記触媒前駆体組成物から除去して、乾燥触媒前駆体組成物を形成する工程;
c.所望に応じて前記乾燥触媒前駆体組成物を焼成する工程;および、
d.前記乾燥触媒前駆体組成物を、Hを含む気体組成物と接触させて、約90から約99.9重量パーセントの脱水アルファ−アルミナ、および約0.1から約10重量パーセントの前記金属塩由来のゼロ価金属を含む活性化担持触媒を形成する工程、
を含む、触媒を製造するための方法。
【請求項6】
前記触媒前駆体組成物が、前記金属塩および前記溶媒の溶液中にアルファ−アルミナを含むスラリーであり、前記乾燥触媒前駆体組成物が、粉末であり、前記接触の前に、前記粉末を予備活性化担持触媒に変換する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
前記アルファ−アルミナが、ペレットまたは球体の形態であり、前記添加が、前記ペレットまたは球体を、前記溶媒中に溶解した前記金属塩を含む溶液に浸漬することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
オレフィンを含む反応物であって、ここで前記オレフィンは少なくとも1つの炭素−フッ素結合を有する、反応物を、前記オレフィンの水素化誘導体を含む反応生成物の形成に効果的である反応条件下にて、担持水素化触媒と接触させる工程を含み;ここで、前記担持水素化触媒は、アルファ−アルミナを含む担体上に配置されたゼロ価金属を含む、化合物を水素化するための方法。
【請求項9】
前記担体が、少なくとも約50重量%のアルファ−アルミナを含み、ゼロ価金属が、Pd、Ru、Pt、Rh、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Re、Os、およびAuから成る群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
前記接触が、前記オレフィンを、前記水素化触媒の生産性よりも約60から約90%高い速度でフッ素化反応器の第一段階へ供給することを含み、ここで、前記反応生成物が、前記接触後も未反応のままである前記反応物からの前記オレフィンの少なくとも一部をさらに含み;ならびに、前記方法が、前記フッ素化水素化反応器の1もしくは2つ以上のこれに続く段階において、前記反応生成物中の前記オレフィンの約20から約100パーセントを、前記オレフィンの前記水素化誘導体に変換することを含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−500861(P2013−500861A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523648(P2012−523648)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/043460
【国際公開番号】WO2011/017138
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】