説明

水素吸蔵合金アクチュエータ及びその作動方法

【課題】水素の放出・吸蔵時に余計なエネルギー消費を必要とせず、装置を少ない部品数で小型に構成できる水素吸蔵合金アクチュエータを提供する。
【解決手段】圧力室41の圧力を増減させることで作動体47を可動可能としたアクチュエータ31と、圧力室41に高圧配管53を介して接続される高圧容器33と、高圧配管53に設けられる高圧開閉弁55と、圧力室41に低圧配管57を介して接続される低圧容器35と、低圧配管57に設けられる低圧開閉弁59とを具備し、高圧容器33に収容された水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出を、略同一温度において低圧容器35に収容された水素吸蔵合金より高圧でなされるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵合金のガス吸蔵、放出現象を利用してアクチュエータを作動させる水素吸蔵合金アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
水素吸蔵合金のガス吸蔵、放出現象を利用してアクチュエータを作動させる水素吸蔵合金アクチュエータは、一般的に水素吸蔵合金を収容する容器(MH容器)を備える。MH容器を備えたこの種のアクチュエータには、単動型と複動型とが知られている。単動型のアクチュエータは、単一の圧力室に1個のMH容器を接続させる。複動型のアクチュエータは、2個の圧力室のそれぞれに1個のMH容器を接続させる。
【0003】
単動型のアクチュエータは、MH容器内の水素吸蔵合金を加熱し、放出させた水素を圧力室に供給して伸長作動される一方、MH容器内の水素吸蔵合金を冷却し、水素を吸蔵させて収縮作動される。これに対し、複動型のアクチュエータは、一方のMH容器内の水素吸蔵合金を加熱し、放出させた水素を一方の圧力室に供給し、他方のMH容器内の水素吸蔵合金を冷却し、他方の圧力室内の水素を吸蔵させて伸長作動される一方、他方のMH容器内の水素吸蔵合金を加熱し、放出させた水素を他方の圧力室に供給し、一方のMH容器内の水素吸蔵合金を冷却し、一方の圧力室内の水素を吸蔵させて収縮作動される。
【0004】
ところが、このような従来の水素吸蔵合金アクチュエータでは、同一の水素吸蔵合金に加熱又は冷却を交互に繰り返して与えて水素吸蔵合金に水素を放出・吸蔵させるため、伸縮作動の切換え時に、加熱又は冷却されている水素吸蔵合金を直ちに冷却又は加熱に切換えることが困難であり、アクチュエータの作動切換え応答性や、その後の伸縮速度が緩慢となる問題があった。
【0005】
このような問題を解消しようとしたものに、例えば特許文献1に開示される水素吸蔵合金利用アクチュエータが提案された。この水素吸蔵合金利用アクチュエータ1は、図6に示すように、水素吸蔵合金を収容し、加熱・冷却手段3を付属する少なくとも3個のMH容器4,5,6をアクチュエータ7の圧力室7aに選択的に接続可能に備えさせ、このアクチュエータ7を収縮作動させた状態で、アクチュエータ7を伸長作動させ得る量の水素を少なくとも2個のMH容器4,6にそれぞれ吸蔵させ、少なくとも1個のMH容器5に水素を放出させた状態が与えられるように水素量を設定し、水素を吸蔵させたMH容器4,6の1個を加熱し、放出された水素をアクチュエータ7に供給して伸長作動させると共に、水素を放出させたMH容器5の水素吸蔵合金を冷却し、該冷却した水素吸蔵合金に、アクチュエータ7内の水素を吸蔵させ、アクチュエータ7に収縮作動を与えるようにしている。
【0006】
このような従来の水素吸蔵合金利用アクチュエータ1によれば、伸縮作動の切換え時に、加熱又は冷却されている水素吸蔵合金を直ちに冷却又は加熱に切換えて水素の放出・吸蔵を行う必要がなく、水素吸蔵合金による水素の放出・吸蔵作用に時間的遅れが生じなくなる。その結果、アクチュエータの作動切換え時の応答速度、その後の伸縮速度も比較的迅速となる。
【0007】
【特許文献1】特開平8−100808号公報
【特許文献2】特開2000−65014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来の水素吸蔵合金利用アクチュエータは、3個のMH容器4,5,6をアクチュエータ7の圧力室7aに選択的に接続可能にすることで、水素吸蔵合金を直ちに冷却又は加熱に切換えて水素の放出・吸蔵を行う必要をなくし、アクチュエータの作動切換え時の応答速度、その後の伸縮速度の迅速化を図っているが、水素の放出・吸蔵時には冷却又は加熱が必要になって余計なエネルギー消費が強いられ、かつMH容器の数が多くなり、装置コストが高くなるとともに、装置が大型となった。また、水素吸蔵合金の水素吸放出を利用して効率的かつ実用的な動力を得るものには特許文献2に開示されるようなガス吸脱着を利用した動力発生装置もあるが、この動力発生装置10では、水素吸蔵合金を備えたガス吸放出装置11、12、13、14と、二方のガス導入・排出部15、16で水素の導入、排出を交互かつ互いに対称的に行う複動式ガスアクチュエータ17と、ガス吸放出装置の一方側とガスアクチュエータ17のガス導入・排出部の一方側とを接続する対のガス移動路18,19,20,21,22,23,24,25と、ガス移動路に介在してガス吸放出装置側とガスアクチュエータ側との接続をガス移動路間において高速で切り換える接続切換器27を有した構成であるため、水素の吸放出間隔に拘わらず複動アクチュエータを高速で動作させることができるものの、水素の放出・吸蔵時には高温熱媒供給装置29、低温熱媒供給装置30の駆動による冷却又は加熱が必要になって余計なエネルギー消費が強いられ、かつ装置が大がかりとなって、装置コストが高くなるとともに、装置が大型となる問題があった。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、水素の放出・吸蔵時に余計なエネルギー消費を必要とせず、装置を少ない部品数で小型に構成できる水素吸蔵合金アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る請求項1記載の水素吸蔵合金アクチュエータは、水素吸蔵合金の水素吸放出を利用して動力を得る水素吸蔵合金アクチュエータであって、圧力室の圧力を増減させることで作動体を可動可能としたアクチュエータと、前記圧力室に高圧配管を介して接続される高圧容器と、前記高圧配管に設けられる高圧開閉弁と、前記圧力室に低圧配管を介して接続される低圧容器と、前記低圧配管に設けられる低圧開閉弁とを具備し、前記高圧容器に収容された水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出が、略同一温度において前記低圧容器に収容された水素吸蔵合金より高圧でなされることを特徴とする。
【0010】
この水素吸蔵合金アクチュエータでは、高圧容器の水素吸蔵合金に水素が吸蔵されている状態において、低圧開閉弁が閉じられ、高圧開閉弁が開かれると、高圧容器から高圧水素がアクチュエータの圧力室へ供給され、作動体が可動してアクチュエータが作動される。次いで、高圧開閉弁が閉じられ、低圧開閉弁が開かれることにより、圧力室の水素が低圧容器の水素吸蔵合金へと吸蔵されて、作動体が元の位置へと戻る。すなわち、高圧容器からの高圧水素が高圧配管を介して圧力室へ供給されることで、作動体を可動させてアクチュエータが作動され、作動後の水素が低圧容器へと吸蔵されることとなる。
【0011】
請求項2記載の水素吸蔵合金アクチュエータは、前記低圧容器に加熱ヒータが付設され、前記高圧容器と前記高圧開閉弁との間の前記高圧配管と、前記低圧容器と前記低圧開閉弁との間の前記低圧配管とがバイパス配管によって接続され、該バイパス配管に再充填用開閉弁が設けられたことを特徴とする。
【0012】
この水素吸蔵合金アクチュエータでは、高圧容器に収容された水素吸蔵合金からの水素放出が完了すると、低圧容器にはその分の水素が吸蔵された状態となっている。したがって、高圧開閉弁及び低圧開閉弁が閉じられるとともに、再充填用開閉弁が開かれ、加熱ヒータによって低圧容器が加熱されると、低圧容器の水素吸蔵合金に吸蔵された水素が高圧となって放出され、その高圧の水素が今度は高圧容器の水素吸蔵合金へと吸蔵される。すなわち、これにより高圧容器の再充填が完了する。
【0013】
請求項3記載の水素吸蔵合金アクチュエータの作動方法は、圧力室の圧力を増減させることで作動体を可動可能としたアクチュエータと、前記圧力室に高圧配管を介して接続される高圧容器と、前記高圧配管に設けられる高圧開閉弁と、前記圧力室に低圧配管を介して接続される低圧容器と、前記低圧配管に設けられる低圧開閉弁とを具備し、前記低圧容器に水素吸蔵合金を収容し、略同一温度において該水素吸蔵合金より高圧で水素吸蔵・放出がなされる水素吸蔵合金を前記高圧容器に収容し、前記高圧容器から前記圧力室に供給して前記作動体を可動させた後の水素を前記低圧容器の水素吸蔵合金に吸蔵させることを特徴とする。
【0014】
この水素吸蔵合金アクチュエータの作動方法では、高圧容器と低圧容器とにそれぞれ収容される水素吸蔵合金の水素吸放出圧力が異なることにより、作動流体としてアクチュエータを作動させた後の高圧容器からの高圧水素を、低圧容器へと吸蔵させることが可能となる。したがって、アクチュエータへの高圧水素の供給のために高圧容器を加熱したり、低圧容器への水素の吸蔵のために低圧容器を冷却したりする必要がなくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る水素吸蔵合金アクチュエータによれば、作動体を有するアクチュエータと、圧力室に接続される高圧容器と、圧力室に接続される低圧容器とを具備し、高圧容器に収容された水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出が、略同一温度において低圧容器に収容された水素吸蔵合金より高圧でなされるようにしたので、高圧容器からの高圧水素を高圧配管を介して圧力室へ供給することで作動体を可動させてアクチュエータを作動させ、作動後の水素を低圧容器へと吸蔵させることができる。この結果、水素の放出・吸蔵時に余計なエネルギー消費を必要とせず、装置を少ない部品数で小型に構成できる。
【0016】
本発明に係る水素吸蔵合金アクチュエータの作動方法によれば、低圧容器に水素吸蔵合金を収容し、略同一温度において水素吸蔵合金より高圧で水素吸蔵・放出がなされる水素吸蔵合金を高圧容器に収容し、高圧容器から圧力室に供給して作動体を可動させた後の水素を低圧容器の水素吸蔵合金に吸蔵させるので、アクチュエータへの高圧水素の供給のために高圧容器を加熱したり、低圧容器への水素の吸蔵のために低圧容器を冷却したりする必要がない。この結果、水素の放出・吸蔵時に余計なエネルギー消費を必要とせずに、実用的な動力を効率的に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る水素吸蔵合金アクチュエータ及びその作動方法の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本実施の形態による水素吸蔵合金アクチュエータの概念を表す構成図、図2は高圧容器に収容される水素吸蔵合金の等温における圧力−水素濃度の相関を表したグラフ、図3は低圧容器に収容される水素吸蔵合金の等温における圧力−水素濃度の相関を表したグラフ、図4は図1に示した水素吸蔵合金アクチュエータの動作状態を説明するタイムチャート、図5は図1に示した水素吸蔵合金アクチュエータの変形例の構成図である。
本実施の形態による水素吸蔵合金アクチュエータ100は、アクチュエータ31と、高圧容器(MHU)33と、低圧容器(MHD)35と、それぞれの高圧容器33,低圧容器35に収容される水素吸蔵合金とを基本構成要素として備える。
【0018】
アクチュエータ31は、トランスレータ37と昇降シリンダー39とからなる。トランスレータ37には圧力室41が形成され、圧力室41は昇降シリンダー39のシリンダー室43に配管45によって接続される。シリンダー室43には作動体であるピストン47が摺動自在に内設され、ピストン47はコンロッド49を介して昇降シリンダー39の外部へ導出され、負荷Wを昇降可動可能としている。トランスレータ37の圧力室41とシリンダー室43とには作動流体である例えばシリコンオイル51が充填される。したがって、トランスレータ37の圧力室41の圧力が上昇すれば、シリコンオイル51がシリンダー室43へと押し出され、それによってピストン47が摺動されて、コンロッド49を介して負荷Wが上昇作動されるようになっている。すなわち、アクチュエータ31は、圧力室41の圧力を増減させることで、ピストン47を可動可能としている。
【0019】
なお、アクチュエータ31は、昇降シリンダー39に代えて、べーローズを伸縮させるように構成されたものであってもよい。
【0020】
高圧容器33は、高圧配管53を介してトランスレータ37の圧力室41に接続される。高圧配管53には高圧開閉弁55が介装されている。また、低圧容器35は、低圧配管57を介してトランスレータ37の圧力室41に接続されている。この低圧配管57には低圧開閉弁59が介装されている。なお、低圧配管57は、圧力室41に直接接続される他、図例のように、高圧開閉弁55と圧力室41との間の高圧配管53に分岐接続されてもよい。
【0021】
また、低圧容器35には加熱ヒータ61が付設される。加熱ヒータ61は、図示しない装置制御部に接続され、装置制御部によって動作制御される。加熱ヒータ61は、加熱されることによって、低圧容器35を加熱し、収容される後述の水素吸蔵合金を加熱する。
【0022】
高圧容器33と高圧開閉弁55との間の高圧配管53と、低圧容器35と低圧開閉弁59との間の低圧配管57とは、バイパス配管63によって接続されている。このバイパス配管63には再充填用開閉弁65が設けられている。したがって、高圧開閉弁55及び低圧開閉弁59が閉じられ、再充填用開閉弁65が開かれることで、高圧容器33と低圧容器35とは内部がバイパス配管63を介して通じるようになっている。
【0023】
水素吸蔵合金アクチュエータ100は、水素吸蔵合金の水素吸放出を利用して動力を得る。このため、高圧容器33及び低圧容器35には、反応によって水素の吸収、放出を行う材料として水素吸蔵合金が収容されている。水素吸蔵合金は、加熱することによりこの合金に吸収されている水素を放出させ、冷却することにより周囲の水素をこの合金に吸収させることができる。
【0024】
ここで、高圧容器33に収容された水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出は、略同一温度において、低圧容器35に収容された水素吸蔵合金より高圧でなされるようになっている。このような高圧容器33に収容される水素吸蔵合金としては、例えば図2に示す水素吸蔵合金(Mm Ni4,15Fe0.85)が挙げられ、低圧容器35に収容される水素吸蔵合金としては、例えば図3に示す水素吸蔵合金(La Ni4,7Al0.3)が挙げられ。水素吸蔵合金(Mm Ni4,15Fe0.85)は、摂氏30度における水素吸放出圧力が略0.95MPaであり、水素吸蔵合金(La Ni4,7Al0.3)は、摂氏30度における水素吸放出圧力が略0.06MPaである。
【0025】
次に、以上のように構成された水素吸蔵合金アクチュエータ100の作用を説明する。
水素吸蔵合金アクチュエータ100では、高圧容器33の水素吸蔵合金に水素が吸蔵されている状態において、低圧開閉弁59、再充填用開閉弁65が閉じられ、高圧開閉弁55が開かれると、高圧容器33から高圧水素がトランスレータ37の圧力室41へ供給される。すると、シリコンオイル51が昇降シリンダー39のシリンダー室43へと流れ込みピストン47を押し上げることで、負荷Wが上昇される。すなわち、アクチュエータ31が作動される。
【0026】
次いで、高圧開閉弁55が閉じられ、低圧開閉弁59が開かれることにより、圧力室41の水素が低圧容器35の水素吸蔵合金へと吸蔵されて、ピストン47が元の位置へと戻る。すなわち、高圧容器33からの高圧水素が高圧配管53を介して圧力室41へ供給されることで、ピストン47を可動させてアクチュエータ31が作動され、作動後の水素が低圧容器35へと吸蔵されることで、ピストン47が元の位置へと戻り、負荷Wが下降されることとなる。
【0027】
この高圧容器33からの高圧水素の供給と、低圧容器35への水素への吸蔵が繰り返されることにより、図4に示すように、負荷Wが一定のストロークで、所定時間(例えば3〜10秒程度)間隔で昇降を繰り返せるようになっている。なお、負荷Wの昇降高さは、高圧開閉弁55と、低圧開閉弁59との開閉タイミングによって制御が可能となる。
【0028】
このような昇降動作が繰り返し行われることによって、高圧容器33内の圧力が規定値(例えば0.3MPa)より下がったなら、低圧容器35を加熱・高圧化させ、低圧容器35に吸蔵させた水素を高圧容器33へ吸蔵させる(再充填させる)。すなわち、高圧容器33に収容された水素吸蔵合金からの水素放出が完了すると、低圧容器35にはその分の水素が吸蔵された状態となっている。したがって、高圧開閉弁55び低圧開閉弁59を閉じ、再充填用開閉弁65を開き、加熱ヒータ61によって低圧容器35を加熱する。これにより、低圧容器35の水素吸蔵合金に吸蔵された水素が高温となって放出され、その高温高圧の水素が今度は高圧容器33の水素吸蔵合金へと吸蔵される。すなわち、これにより高圧容器の再充填が完了する。
【0029】
このように、水素吸蔵合金アクチュエータ100の作動方法では、上記した装置構成において、略同一温度において高圧で水素吸蔵・放出がなされる水素吸蔵合金を高圧容器33に収容し、高圧容器33から圧力室41に供給してピストン47を可動させた後の水素を低圧容器35の水素吸蔵合金に吸蔵させる。そして、高圧容器33と低圧容器35とにそれぞれ収容される水素吸蔵合金の水素吸放出圧力が異なることにより、作動流体としてアクチュエータ31を作動させた後の高圧容器33からの高圧水素を、低圧容器35へと吸蔵させる。したがって、アクチュエータ31への高圧水素の供給のために高圧容器33を加熱したり、低圧容器35への水素の吸蔵のために低圧容器35を冷却したりする必要がなくなる。
【0030】
本実施の形態による水素吸蔵合金アクチュエータ100によれば、ピストン47を有するアクチュエータ31と、圧力室41に接続される高圧容器33と、圧力室41に接続される低圧容器35とを具備し、高圧容器33に収容された水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出が、略同一温度において低圧容器35に収容された水素吸蔵合金より高圧でなされるようにしたので、高圧容器33からの高圧水素が高圧配管53を介して圧力室41へ供給されることでピストン47を可動させてアクチュエータ31を作動させ、作動後の水素を低圧容器35へと吸蔵させることができる。この結果、水素の放出・吸蔵時に余計なエネルギー消費を必要とせず、装置を少ない部品数で小型に構成できる。
【0031】
また、本実施の形態による水素吸蔵合金アクチュエータ100の作動方法によれば、低圧容器35に水素吸蔵合金を収容し、略同一温度において水素吸蔵合金より高圧で水素吸蔵・放出がなされる水素吸蔵合金を高圧容器33に収容し、高圧容器33から圧力室41に供給してピストン47を可動させた後の水素を低圧容器35の水素吸蔵合金に吸蔵させるので、アクチュエータ31への高圧水素の供給のために高圧容器33を加熱したり、低圧容器35への水素の吸蔵のために低圧容器35を冷却したりする必要がない。この結果、水素の放出・吸蔵時に余計なエネルギー消費を必要とせずに、実用的な動力を効率的に取り出すことができる。
【0032】
なお、上記の実施の形態による水素吸蔵合金アクチュエータ100では、低圧容器35を一つで構成したが、略同一温度で異なる水素吸放出圧力の水素吸蔵合金(LaNi4,45Co0,5Mn0.05)を収容した中圧容器(MHC)35aを増設してもよい。この場合、中圧容器35aは中圧開閉弁59aを介してトランスレータ37に接続されるとともに、当該中圧容器35aと低圧容器35並びに高圧容器33との間には各々バイパス配管63,63aを介して再充填用開閉弁65,65aが夫々設けられる。
斯る構成によれば、各再充填用開閉弁65,65aを各々開閉操作すること、例えば弁65を開、弁65aを閉にすることでまずは中圧容器35aを所定圧にし、次いで弁65を閉、弁65aを開にすることで中圧容器35aよりさらに高圧容器33を高圧にするなど、各容器を段階的かつ多様に高圧にすることが可能となる。すなわち、実用的な動力を容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態による水素吸蔵合金アクチュエータの概念を表す構成図である。
【図2】高圧容器に収容される水素吸蔵合金の等温における圧力−水素濃度の相関を表したグラフである。
【図3】低圧容器に収容される水素吸蔵合金の等温における圧力−水素濃度の相関を表したグラフである。
【図4】図1に示した水素吸蔵合金アクチュエータの動作状態を説明するタイムチャートである。
【図5】図1に示した水素吸蔵合金アクチュエータの変形例の構成図である。
【図6】従来の水素吸蔵合金利用アクチュエータの構成図である。
【図7】従来のガス吸脱着を利用した動力発生装置の構成図である。
【符号の説明】
【0034】
31…アクチュエータ、33…高圧容器、35…低圧容器、41…圧力室、47…ピストン(作動体)、53…高圧配管、55…高圧開閉弁、57…低圧配管、59…低圧開閉弁、61…加熱ヒータ、63…バイパス配管、65…再充填用開閉弁、100…水素吸蔵合金アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵合金の水素吸放出を利用して動力を得る水素吸蔵合金アクチュエータであって、
圧力室の圧力を増減させることで作動体を可動可能としたアクチュエータと、前記圧力室に高圧配管を介して接続される高圧容器と、前記高圧配管に設けられる高圧開閉弁と、前記圧力室に低圧配管を介して接続される低圧容器と、前記低圧配管に設けられる低圧開閉弁とを具備し、
前記高圧容器に収容された水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出が、略同一温度において前記低圧容器に収容された水素吸蔵合金より高圧でなされることを特徴とする水素吸蔵合金アクチュエータ。
【請求項2】
前記低圧容器に加熱ヒータが付設され、
前記高圧容器と前記高圧開閉弁との間の前記高圧配管と、前記低圧容器と前記低圧開閉弁との間の前記低圧配管とがバイパス配管によって接続され、
該バイパス配管に再充填用開閉弁が設けられたことを特徴とする請求項1記載の水素吸蔵合金アクチュエータ。
【請求項3】
圧力室の圧力を増減させることで作動体を可動可能としたアクチュエータと、前記圧力室に高圧配管を介して接続される高圧容器と、前記高圧配管に設けられる高圧開閉弁と、前記圧力室に低圧配管を介して接続される低圧容器と、前記低圧配管に設けられる低圧開閉弁とを具備し、
前記低圧容器に水素吸蔵合金を収容し、略同一温度において該水素吸蔵合金より高圧で水素吸蔵・放出がなされる水素吸蔵合金を前記高圧容器に収容し、
前記高圧容器から前記圧力室に供給して前記作動体を可動させた後の水素を前記低圧容器の水素吸蔵合金に吸蔵させることを特徴とする水素吸蔵合金アクチュエータの作動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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