説明

水素燃料および構造的物質を効率的に生成する化学プロセスおよび反応器、ならびに関連するシステムおよび方法

水素燃料および構造的物質を効率的に生成する化学プロセスおよび反応器ならびにその関連システムおよび方法であって、代表的プロセスは、水素供与体にエネルギーを加えることによって水素供与体を解離生成物に解離するステップであり、エネルギーは、水素供与体を解離する以外のプロセスによって発生させた廃熱を含むステップを含む。そのプロセスは、その解離生成物から、構造構築ブロックおよび/または水素ベース燃料を供給するステップをさらに含むことができ、このとき構造構築ブロックは、炭素、窒素、ホウ素、珪素、硫黄、および/または遷移金属をベースとするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、水素燃料および構造的物質を効率的に生成する化学プロセスおよび反応器、ならびにそれに関連するシステムおよび方法を対象とする。特定の実施形態では、そのようなプロセスは、広く様々な原料油から清浄燃焼性水素ベース燃料を生成するために使用することができ、水素ベース燃料を形成するとき放出される炭素および/または他の元素から構造構築ブロックを生成することができる。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年2月13日出願の米国特許出願第61/304,403号明細書(名称「FULL SPECTRUM ENERGY AND RESPONSE INDEPENDENCE」)の優先権および特典を主張する。本出願は、2009年8月27日出願の米国特許仮出願第61/237,425号明細書(名称「OXYGENATED FUEL PRODUCTION」)、2009年8月27日出願の米国特許仮出願第61/237,466号明細書(名称「MULTIFUEL MULTIBURST」)、2009年8月27日出願の米国特許仮出願第61/237,479号明細書(名称「FULL SPECTRUM ENERGY」)、2009年12月7日出願のPCT出願第PCT/US09/67044号(名称「INTEGRATED FUEL INJECTORS AND IGNITERS AND ASSOCIATED METHODS OF USE AND MANUFACTURE」)、2010年2月13日出願の米国特許仮出願第61/304,403号明細書(名称「FULL SPECTRUM ENERGY AND RESOURCE INDEPENDENCE」)、および2010年3月9日出願の米国特許仮出願第61/312,100号明細書(名称「SYSTEM AND METHOD FOR PROVIDING HIGH VOLTAGE RF SHIELDING, FOR EXAMPLE, FOR USE WITH A FUEL INJECTOR」)の優先権および特典を主張する2010年7月21日出願の米国特許出願第12/804,509号明細書(名称「METHOD AND SYSTEM OF THERMOCHEMICAL REGENERATION TO PROVIDE OXYGENATED FUEL, FOR EXAMPLE, WITH FUEL ?COOLED INJECTORS」)の一部継続出願である。米国特許出願第12/804,509号明細書は、また、2008年1月7日出願の米国特許出願第12/006,774号明細書(名称「MULTIFUEL STORAGE, METERING, AND IGNITION SYSTEM」)[米国特許第7,628,137号明細書]、の一部継続出願であり、かつ2009年8月27日出願の米国特許仮出願第61/237,466号明細書(名称「MULTIFUEL MULTIBURST」)の優先権および特典を主張する2009年12月7日出願の米国特許出願第12/653,085号明細書(名称「INTEGRATED FUEL INJECTORS AND IGNITERS AND ASSOCIATED METHODS OF USE AND MANUFACTURE」)の一部継続出願でもある。米国特許出願第12/804,509は,また、2008年1月7日出願の米国特許出願第12/006,774号明細書(名称「MULTIFUEL STORAGE, METERING, AND IGNITION SYSTEM」)[米国特許第7,628,137号明細書]の分割出願である、2009年10月19日出願の米国特許出願第12/581,825号明細書(名称「MULTIFUEL STORAGE, METERING, AND IGNITION SYSTEM」)の一部継続出願でもある。これらの出願の各々はその全体が参照により本明細書に援用される。前述の出願および/または参照により本明細書に援用されるいずれの他の資料も本明細書に示された開示と矛盾する場合には、本明細書の開示が優先する。
【0003】
太陽エネルギー、風、波、落下水、バイオマスをベースとした供給源などの再生可能エネルギー供給源は、重要なエネルギー供給源として極めて大きな可能性を有するが、現時点では、広く採用されるのを妨げる様々な問題を抱えている。たとえば、発電への再生可能エネルギー供給源の使用は、その供給源の利用可能性に依存しており、それは間欠的であり得る。中でも、太陽エネルギーは陽光の利用可能性によって制約され(すなわち日中のみ)、風エネルギーは風の変動性によって制約され、落下水エネルギーは渇水によって制約され、バイオマスエネルギーは季節的変動によって制約される。これらおよび他の要因の結果として、再生可能供給源からの、捕捉されまたは捕捉されなかった多量のエネルギーが、無駄になりやすい。
【0004】
エネルギーの捕捉および保存に関する前述の非効率性が、それら非効率性がしばしばエネルギー生成の高コスト化をもたらすので、世界の多くの地域向けに発展し得るエネルギー供給体へ再生可能エネルギー供給源が拡張することを制約している。したがって、少なくとも部分的には、化石燃料に関連する技術開発を支援する政府の助成金および他のプログラムが、そのような燃料を使用することを一見好都合で見かけ上費用が掛からないとするので、世界は、主要なエネルギー供給源として石油および他の化石燃料に頼り続ける。同時に、使い果たされた資源に対する代替コスト、ならびに環境劣化、健康への影響、および化石燃料使用による他の副産物についてのコストは、これら燃料から生じるエネルギーの購入価格に含まれていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,503,584号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
再生可能エネルギーを継続的に生成することに現時点で関連する前述および他の欠点を考慮すると、上記資源により製品および燃料を製造することに関する効率および商業的成立性を改善する必要性が残る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
水素燃料および構造的物質を効率的に生成する装置、システム、および方法のいくつかの例が、以下に説明される。この効率性は、他のプロセス、再生可能エネルギー供給源、および/または内部熱交換器(たとえば逆流または反流の熱交換器)によって生成された廃熱を用いることによって得ることができる。プロセスは、清浄燃焼性燃料を生成することができ、ポリマーおよび炭素複合材を含む耐久財に使用するために、炭素および/または他の成分を再利用することができる。以下の説明は、当業者がそれら例を実施し、製作し、使用することを可能にするために十分なように、下記の例の多くの特定の細部を示すが、以下に説明されるいくつかの細部および利点は、本技術の特定の例を実施するために必要ないこともある。さらに、本技術は、特許請求の範囲には包含されるが、ここでは詳細には説明されていない別の例も含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の技術の実施形態による、水素ベース燃料および耐久財を構築する成分を効率的に生成するプロセスを示すフロー図である。
【図2】本発明の技術の実施形態による、廃熱および/または再生可能エネルギー供給源からエネルギーを受け取るシステムの部分的に概略化された部分断面図である。
【図3】本発明の技術の実施形態による、逆流熱交換器と組み合わせた反応器を含むシステムの部分的概略図である。
【図4】本発明の技術の実施形態による、分子構造を有する構成構造物を示す図である。
【図5】本発明の技術の実施形態による、固体塊として形作られた構成構造物の等角図である。
【図6】本発明の技術の実施形態による、平行層を有する構成構造物の側部断面図である。
【図7】本発明の技術の実施形態による、相互連結された平行層を有する構成構造物の側面図である。
【図8】本発明の技術の実施形態による、平行層を有する構成構造物の側部断面図である。
【図9】本発明の技術の実施形態による、同心の管状層を有する構成構造物の側部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この明細書を通して「一例」、「ある例」、「一実施形態」、または「ある実施形態」という言及は、その例に関連して説明されている特定の特徴、構造、プロセス、または特性が、本技術の少なくとも1つの例に含まれていることを意味する。したがって、この明細書を通して様々な箇所で語句「一例では」、「例では」、「一実施形態」、または「実施形態」が現れたとき、必ずしもすべてが同じ例を指す訳ではない。さらに、特定の特徴、構造、ルーチン、ステップ、または特性は、本技術の1つまたは複数の例において任意の適切な態様で組み合わせることができる。本明細書で示される見出しは、単に便宜的なものであり、特許請求の範囲に記載された技術の範囲または趣旨を限定または説明するものではない。
【0010】
以下に説明される本技術のいくつかの実施形態は、プログラマブルコンピュータまたはコントローラによって実行されるルーチンを含めて、コンピュータで実行可能な命令の形態を取ることができる。当業者は、本技術が、以下に示され説明されるもの以外のコンピュータまたはコントローラシステム上でも実施することができることを理解するであろう。本技術は、以下に説明される1つまたは複数のコンピュータで実行可能な命令を実行するように固有にプログラムされ、構成され、または構築された専用コンピュータ、コントローラ、またはデータプロセッサで具体化することができる。したがって、本明細書に全般的に使用されている用語「コンピュータ」および「コントローラ」は、あらゆるデータプロセッサを指し、インターネット機器、ハンドヘルドデバイス、多重プロセッサシステム、プログラマブルコンシューマエレクトロニクス(programmable consumer electronics)、ネットワークコンピュータ、ミニコンピュータなどを含み得る。本技術はまた、タスクまたはモジュールが、通信ネットワークを介してリンクされているリモートプロセッシングデバイス(remote processing device)によって実行される分散環境で実施することもできる。以下に説明される本技術の態様は、磁気もしくは光学的可読コンピュータディスクまたは磁気もしくは光学的リムーバブルコンピュータディスク、ならびにネットワーク上で電子的に分散された媒体を含めて、コンピュータ可読媒体上に記憶しまたは分散処理することができる。特定の実施形態では、本技術の態様に特有のデータ構造、およびデータ伝送もまた、本技術の範囲に包含される。本技術は、特定のステップを実施するためにコンピュータ可読媒体をプログラムする方法、ならびにそれらステップを実行する方法を共に包含する。
【0011】
特定の実施形態による方法は、水素供与体にエネルギーを加えることによって水素供与体を解離生成物に解離するステップを含み、このときエネルギーは、水素供与体を解離する以外のプロセスによって発生させた廃熱を含んでいる。たとえば、廃熱は、燃焼プロセスの生成物から得ることができる。その方法はさらに、水素ベース燃料および/または炭素、窒素、ホウ素、珪素、硫黄、および/または遷移金属を含む構造構築ブロックを供給するステップをさらに含み得る。構造構築ブロックおよび水素ベース燃料は解離生成物から供給され、特定の実施形態では解離生成物から形成される。
【0012】
本技術の別の実施形態による方法は、第1の水素供与体塊を第1の解離生成物に解離するステップと、第1の解離生成物から、水素ベース燃料および/または炭素、窒素、ホウ素、珪素、硫黄、および/または遷移金属をベースとする構造構築ブロックを供給するステップとを含む。その方法は、構造構築ブロック、解離生成物、および/または水素ベース燃料から第2の水素供与体塊に熱を伝達するステップと、第2の水素供与体を第2の解離生成物に解離するステップとをさらに含む。第1の水素供与体を解離するプロセスからの熱を、第2の水素供与体を解離するプロセスへ伝達することにより、第2の水素供与体を解離するのに必要とされるエネルギー量を低減することができ、したがってプロセスの全体効率を改善することができる。
【0013】
図1は、本発明の技術のいくつかの実施形態による代表的プロセスを示すフロー図である。図2および3は、そのようなプロセスを行うことができる代表的反応器を示しており、図4〜9は、本明細書で説明される方法を用いて形成することができる構成構造物を示している。
【0014】
代表的プロセス
図1は、本発明の技術の一実施形態による、水素ベース燃料および耐久財を形成する成分(たとえば構成構造物)を形成する化学プロセス180を示すフロー図である。プロセス部分181は、水素供与体にエネルギーを加えることによって水素供与体を解離生成物に解離するステップを含む。多くの場合、水素供与体は炭化水素を含むが、他の実施形態では、水素供与体は、炭化水素燃料以外の炭素ベースの化合物(たとえば、炭水化物、アルコール、エステル、セルロースおよび/または他のもの)を含み得る。さらに別の実施形態では、水素供与体は、水素原子を炭素以外の元素と組み合わせて含み得る。たとえば、窒素化合物(たとえば、アンモニアおよび/または尿素)は、類似の機能を果たすことができる。これらの実施形態のいずれにおいても、解離生成物を生成するために水素供与体に加えられるエネルギーは、水素供与体を解離する以外のプロセス(プロセス部分182)によって発生させた廃熱から得ることができる。たとえば、プロセス部分182は、内燃機関、または他の機関からの廃熱を再使用して水素供与体を解離するプロセスを進めるステップを含み得る。他の実施形態では、熱は、燃料セル、回生制動または他の供給源から得ることができる。通常、熱は、プロセスまたは反応領域に容易に伝達するのに十分な高さの温度で入手可能であり、またはそれより低温の熱の場合、その熱を別のプロセスによってより高い温度出力に変換することができる。
【0015】
前述の実施形態の少なくとも一部では、プロセス部分182で特定された廃熱は、プロセス部分181で特定された化学解離を実施するのにそれ自体が十分でないことがある。したがって、プロセス部分183は、廃熱を、可能であれば継続性の再生可能エネルギー供給源から得られた熱で補充するステップを含む。本明細書では、エネルギー供給源の文脈で用語「継続性の」または「再生可能な」は、全般的に、代替えするのにかなり長い時間がかかる、急速に枯渇し始めているエネルギー貯蔵体を必要としない供給源を示す。たとえば、これらの用語は、太陽光エネルギー、波エネルギー、風エネルギー、地熱エネルギー、潮エネルギーおよび落下水エネルギーを含み得るが、化石燃料エネルギーは含まない。
【0016】
プロセス部分184は、プロセス部分181内で形成された解離生成物から有用な最終生成物を供給するステップを含む。最終生成物は、(プロセス部分185で特定されるような)構造構築ブロックおよび/または(プロセス部分186で特定されるような)水素ベース燃料を含み得る。構造構築ブロックは、構成構造物を生成するようにさらに処理することができる組成物を含む。たとえば、構造構築ブロックは、解離プロセスの結果として生じる化合物または分子を含み、炭素、ホウ素、窒素、珪素、硫黄、および/または遷移金属を含み得る。通常、構築ブロック元素は水素を含まない。特有の例では、メタンが解離され、水素および二酸化炭素または一酸化炭素(構造構築ブロック)を形成する。二酸化炭素および/または一酸化炭素は、ポリマー、グラフェン、炭素繊維、および/または別の構成構造物を形成するようにさらに処理することができる。構成構造物は、上記で説明された元素(炭素、窒素、ホウ素、珪素、硫黄、および/または遷移金属)を含む、様々な適切な元素のいずれかから形成された自己組織化構造体(たとえば結晶)を含み得る。これらの実施形態のいずれにおいても、構成構造物は、耐久財、たとえばグラフェンまたは炭素複合材、および/または図4〜9を参照してさらに説明された他の構造体を形成することができる。他の実施形態では、構造構築ブロックは、ポリマーフィルムまたは他の耐久財を形成することができる。
【0017】
プロセス部分186で特定された水素ベース燃料は、二原子水素、すなわち燃料として使用するのに適する水素化合物を含み得る。通常、水素ベース燃料は、これが形成される元の水素供与体と比べると、より高いエネルギーを有し、および/または改善された燃焼特性をもたらし、および/または大気汚染を防止または低減する。たとえば、水素ベース燃料は、解離中(そして少なくとも一部の場合)、その後のプロセス中に、水素ベース燃料の成分にエネルギーが加えられるため、水素供与体の解離エネルギーを上回る解離エネルギーを有し得る。プロセス部分187は、解離生成物、構造構築ブロック、および/または水素ベース燃料からの熱を次の水素供与体へ伝達するステップを含む。たとえば、プロセス部分187は、(吸熱性解離プロセスで加熱された)高温の解離生成物からの熱を、水素供与体の入来する塊または量へ伝達するステップを含み得る。反流または逆流の熱交換をこうして構成することにより、それでなければその後の使用のために関連する成分が冷却されるときに廃棄されたであろう熱が利用され、したがってプロセスの全体効率が改善する。特定の実施形態では、プロセスは、貯蔵を含む様々な目的のいずれかのためにこれらの成分からさらに熱を除去する前に、解離生成物、構造構築ブロック、および/または水素ベース燃料の熱および/または圧力ポテンシャルエネルギーから仕事を引き出すステップを含み得る。その仕事は、タービン、熱機関、燃料セルまたは他の適切な装置によって行うことができる。
【0018】
特定の実施形態では、プロセス部分181で特定される水素供与体はメタンを含み得る。メタン自体は、様々な適切な供給源から得ることができる。少なくともいくつかの実施形態では、供給源は、再生可能供給源、たとえば再生可能バイオマスの嫌気性消化から、またはゴミ埋立地から得られたメタンを含む。以下で特定される方程式1〜4は、メタンが解離されて水素および炭素または炭素化合物を形成する吸熱反応を示している。
CH+HEAT→C+2H 方程式1
CH+HO+HEAT→CO+3H 方程式2
CH+CO+HEAT→2CO+2H 方程式3
10+HEAT→CHOH+4CO+3H+C 方程式4
【0019】
特定の実施形態では、前述の吸熱反応は、水素ベース燃料をさらに処理するために発熱反応と共に使用することができる。たとえば、以下の方程式5は、方程式2または方程式3の解離生成物を使用してメタノールを形成する発熱反応を表している。
2CO+2H→CHOH+HEAT 方程式5
【0020】
いくつかの実施形態では、メタノールは燃料としての多用性が高く、現在液体水素炭素燃料に使用されている既存のタンク内にこれを貯蔵することができるため、二原子水素ではなくメタノールを生成することが有益である。発熱および吸熱を組み合わせた反応、およびそのような組合せと共に利用することができる関連する熱交換プロセスのさらなる詳細は、本明細書と同時に出願され、本明細書に参照により援用される、共願の米国特許出願[整理番号69545.8616US]明細書(名称「REACTOR VESSELS WITH PRESSURE AND HEAT TRANSFER FEATURES FOR PRODUCING HYDROGEN-BASED FUELS AND STRUCTURAL ELEMENTS, AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」)に開示されている。
【0021】
以下の方程式6は、アルケン、たとえばエチレンまたはエテンを生成する別のメタン変換プロセスを特徴付けている。
CH+C→C 方程式6
【0022】
エテンは、幅広い工業的用途および植物ホルモン用途を有する。方程式6によって表されたプロセスの一態様は、これが水素ベース燃料を生成物として含み得ないことである(たとえばエテンがそのような燃料を生成するようにさらに処理されない限り)。したがって、本技術による反応は、構成構造物、水素ベース燃料、またはその両方を生成することができる。
【0023】
さらに別の実施形態では、水素供与体は、炭素以外の元素、以下の方程式7および8によって示されるような、たとえば窒素元素を含み得る。
2NH+HEAT→N+3H 方程式7
NHOH+C+HEAT→CO+N+H 方程式8
【0024】
成分は、グラフェンまたは水素で満たされた別の構成構造物によって供給することができる。
【0025】
前述のプロセスは、自原的に行うことができる。特に、水素ベース燃料を生成する結果として生じる炭素、窒素、および/または他の成分は、環境内に放出されて有毒レベルまで蓄積し得るのではなく、有用な最終生成物として制御され、再投資することができる。このタイプのサイクルの結果、自然に発生する炭素および窒素サイクルを模倣することができる。そのようなサイクルを実施することにより、生活の質を落とすことなく、実際には生活の質が向上することを見込んで、地球の収容力がより高められる(たとえば人口の収容力が高められる)という結果が生じ得ることが予想される。したがって、限りある資源を枯渇させ、環境に害を与え、および/または作り出された生成物を再投資または無駄にして/またはこれをし損なうプロセスは、自原的とはみなされない。本発明の技術の一態様は、水素ベース燃料の形成をより自原的にすることである。
【0026】
代表的反応器
前述の反応は、本出願の譲受人に譲渡されたいくつかの共願の米国特許出願に記載された多種多様な反応器内で行うことができる。代表的な反応器の態様は、一般的意味で以下の図2および3を参照して説明され、より詳細には、本明細書と同時に出願され本明細書に参照により援用される、共願の米国特許出願[整理番号69545.8602]明細書(名称「REACTOR VESSELS WITH TRANSMISSIVE SURFACE FOR PRODUCING HYDROGEN-BASED FUELS AND STRUCTURAL ELEMENTS, AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」)に開示されている。
【0027】
図2は、反応器110を備える代表的システム100の部分的概略図である。反応器110は、反応領域112を囲繞または部分的に囲繞する反応容器111をさらに備える。少なくとも一部の場合では、反応容器111は、反応領域112内で生じる化学反応を容易にするように配置された1つまたは複数の透過面を有する。代表的例では、反応容器111は、供与体供給源130によって供与体入口ポート113へ供給される水素供与体を受け取る。たとえば、水素供与体は、メタンまたは別の炭化水素を含み得る。反応容器111内の供与体分配器またはマニホルド115は、水素供与体を反応領域112内に散布しまたは分散させる。反応容器111はまた、蒸気/水供給源140から蒸気入口ポート114を経由して蒸気を受け取る。反応容器111内の蒸気分配器116は、蒸気を反応領域112内に分散させる。反応容器111は、吸熱反応を容易にするために反応領域112へ熱を供給する加熱器123をさらに備え得る。加熱器の動力(たとえば電力)は、再生可能エネルギー供給源165によって供給することができる。上記で説明されたように、再生可能エネルギー供給源165は、太陽光、風、水および/または他の適切な継続性の供給源を含み得る。反応領域112で行われる反応は、メタンまたは別の炭化水素を、水素もしくは水素化合物、および炭素もしくは炭素化合物(方程式1〜6を参照して上記で論じられたように)、または窒素もしくは窒素化合物(方程式7〜8を参照して上記で論じたように)に解離することを含み得る。反応の生成物は、反応容器111から出口ポート117を経由して出て、反応生成物収集器160aに収集される。
【0028】
システム100は、放射エネルギー(たとえば廃熱)および/または追加の反応体の供給源150をさらに備え得、供給源150は、反応容器111内の通路118に諸成分を供給する。たとえば、熱/反応体供給源150は、矢印Aによって示されるように通路118に高温の燃焼生成物152を供給する燃焼室151を備え得る。燃焼生成物152および関連する廃熱は、解離プロセスとは別個のプロセス(たとえば発電プロセス)によって生成される。燃焼生成物収集器160bは、さらなる再生および/または他の用途のために、反応容器111を出る燃焼生成物を収集する。特定の実施形態では、燃焼生成物152は、高温の二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気、および/または他の成分を含み得る。1つまたは複数の透過面119は、(通路118の周りに環状に配設することができる)反応領域112と、経路118の内部領域120との間に配置される。したがって透過面119は、放射エネルギーおよび/または化学成分が、矢印Bで示されるように通路118から放射状に外方向に反応領域112内に入ることを可能にし得る。放射エネルギー(たとえば熱)および/または燃焼生成物152の流れによって供給された化学成分(1つまたは複数)を送出することにより、システム100は、たとえば反応領域の温度および/または圧力、したがって反応の反応速度および/または熱力学的効率を上昇させることによって、反応領域112内で生じる反応を促進することができる。したがって、前述のプロセスは、反応領域112での反応を容易にすることに加えて、それでなければ無駄になるエネルギーおよび/または成分を再生または再利用することができる。
【0029】
透過面119の組成および構造は、通路118の内部領域120から反応領域112に放射エネルギーを容易に通過させるように選択することができる。したがって、透過面119は、ガラス、グラフェンまたは再放射構成要素を含み得る。適切な再放射構成要素は、本明細書と同時に出願され、本明細書に参照により援用される、共願の米国特許出願[整理番号69545.8603US]明細書(名称「CHEMICAL REACTORS WITH RE-RADIATING SURFACE AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」)にさらに記載されている。
【0030】
上記で留意されたように、燃焼生成物152は、蒸気および/または反応領域112内で反応体として働くことができる他の成分を含み得る。したがって、透過面119は、放射エネルギーを反応領域112内に流入させることに加えて、またはその代わりに、そのような成分が反応領域112内に選択的に入ることを可能にするように製造することができる。特定の実施形態では、透過面119は、炭素結晶構造体、たとえば層状のグラフェン構造体から形成することができる。炭素ベースの結晶構造体は、圧力、温度、インピーダンス、および/または濃度勾配の結果、水分子が通過することを可能にするように意図的に選択される(たとえば流れ方向Aに対して横断方向に向けられた平行層の間に)間隔を含み得る。それと同時に、間隔は、反応領域112内で生成された有用な反応生成物が反応領域から出て行くことを防止するように選択することができる。したがって、透過面119は、反応器110内で行われたプロセスによって直接的にまたは間接的に生成される同じタイプの構成構造物を用いることによって形成することができる。このループは、プロセスを使用してそのプロセスの効率を向上させる生成物を形成する自原的サイクルの一例を表している。
【0031】
システム100は、入力信号191を受け取り(たとえばセンサから)、入力191に少なくとも部分的に基づいて出力信号192(たとえば制御命令)を送出するコントローラ190をさらに備え得る。したがって、コントローラ190は、適切なプロセッサ、メモリおよびI/O機能を備え得る。コントローラ190は、測定または感知された圧力、温度、流速、化学濃度、および/または他の適切なパラメータに対応する信号を受け取ることができ、反応体送出率、圧力および温度、加熱器の作動、バルブの設定、ならびに/または他の適切な能動的に制御可能なパラメータを制御する命令を出すことができる。操作者は、コントローラ190によって自律的に実行される命令を修正し、調整し、かつ/または覆す追加の入力をすることができる。
【0032】
図3は、本発明の別の実施形態による、熱を伝達し、反応生成物を分別するように構成された熱交換器およびセパレータと組み合わせた反応器310を備えるシステム300の部分的概略図である。この実施形態の特定の態様では、システム300は、生成物の形成を容易するために反応容器311に蒸気を供給する蒸気/水供給源340を備える。蒸気/水供給源340からの蒸気は、1つまたは複数のチャネルを経由して反応器310に供給することができる。特定の実施形態では、第1のチャネルは、第1の熱交換器370aを通過し、第1の蒸気分配器316aを経由して反応容器311に入る第1の水路341aを備える。反応容器311から除去された生成物は、反応器の生成物出口ポート317を通過し、生成物経路361に沿って進む。生成物経路361は、生成物を冷却し、反応容器311に入る蒸気を加熱するために逆流式または反流式に第1の熱交換器370aを通過する。生成物は続いて、後で生成物収集器360aに収集される有用な最終生成物(たとえば水素および炭素または炭素化合物)を分別する反応生成物セパレータ380aに至る。生成物経路361内に残存する水は、反応生成物セパレータ380aで分離させ、蒸気/水供給源340に戻すことができる。
【0033】
蒸気/水供給源340が蒸気を反応器310に供給するのに経由する第2のチャネルは、第2の熱交換器370bを通過する第2の水路341bを含む。第2の水路341bに沿って進む水は、第2の蒸気分配器316bより蒸気の形態で反応器310に入る。この水は、放射エネルギー/反応体供給源350を出て(たとえば燃焼生成物出口353にある燃焼室351を出て)、燃料生成物経路354に沿って燃焼生成物通路318(透過面319を含む)を通過する燃焼生成物によって加熱される。消費された燃焼生成物は、燃焼生成物収集器360bで収集され、窒素化合物、リン酸塩、使用済み発光添加物(たとえばナトリウム、マグネシウムおよび/またはカリウムの供給源)、および/または他の目的(たとえば農業用途)のために再生または使用することができる他の組成物を含み得る。
【0034】
第2の水路341bに沿って水を加熱し、燃焼生物経路354に沿って燃焼生成物を冷却することに加えて、第2の熱交換器370bは、反応容器311内に位置する供与体分配器315まで供与体経路331に沿って進む水素供与体を加熱することができる。特に、システム300は、水素供与体、たとえばメタンなどの炭化水素、またはアンモニアなどの窒素供与体を収容する供与体容器330を備え得る。供与体容器330は、水素供与体を中で蒸発させおよび/または加圧する1つまたは複数の加熱器332(第1の加熱器332aおよび第2の加熱器332bとして示す)を備え得る。三方弁333および調節器334は、供与体容器330を出て供与体経路331に沿って進み、第2の熱交換器370bを抜けて反応容器311に入る流体および/または蒸気の量を制御する。
【0035】
反応容器311では、燃焼生成物152は、放射エネルギーおよび/または反応体を透過面319を通して反応領域312内へ送出する間に燃焼生成物通路318を通過する。第2の熱交換器370bを通過した後、燃焼生成物152は、水を燃焼生成物から分離する燃焼生成物セパレータ380bに入ることができる。水は蒸気/水供給源340に戻り、残りの燃焼生成物は燃焼生成物収集器360bで収集される。特定の実施形態では、セパレータ380bは、燃焼生成物流れの運動エネルギーによって駆動される遠心セパレータを備え得る。燃焼生成物流れの運動エネルギーが遠心力によって水を分離するのに不十分な場合、必要な遠心力を供給するために、モータ/発電機381がセパレータ380bにエネルギーを加えることができる。燃焼生成物流れの運動エネルギーが、水を分離するのに必要であるものを上回る場合、モータ/発電機381は、たとえばシステム300の他の構成要素によって使用されるエネルギーを生成することができる。コントローラ190はシステム300の様々な要素から入力を受け取り、流量、圧力、温度、および/または他のパラメータを制御する。
【0036】
前述の実施形態の少なくともいくつかのうち1つの特徴は、反応システムが、熱を再生することによって内部損失を低減する内部熱交換器を備え得ることである。たとえば、そのような熱交換器は、反応領域、入来蒸気、および/または他の入来化学反応体を加熱しながら、燃焼生成物および/または化学反応生成物を冷却するために使用することができる。この構成は、水素ベース燃料および構成構造物が形成される効率性を改善することができ、したがってこれらの生成物のコスト競争力的地位を改善する。
【0037】
代表的構成構造物
図1を参照して上記で説明したプロセス180は、水素ベース燃料を生成することに加えてまたはその代わりに、構成構造物(または関連する構造構築ブロック前駆体)を生成することができる。構成構造物は、有用な特性を示すように形成された構成可能な構築ブロック構造体を含み得る。構成構造物は、合成マトリクスおよび/または他の自己組織化構造体または結晶の配列を含み得る。構造物は、炭素ベース(たとえばグラフェンまたはグラファイトの場合)でも、他の元素または構成要素(たとえばホウ素、窒素、または窒化ホウ素)をベースとするものでよい。構造物は、固体塊として、一原子と同じ薄さの層として、または他の配列またはバリエーションで構成することができる。構造物の構成は、様々な条件下でのその挙動を決定付ける大きな役割を担う。結果として、構成構造物は、幅広い用途で極めて専門性の高いタスクを行うように設計することができる。5組の代表的特性、すなわち(i)熱特性、(ii)電磁気特性、光学特性、および音響特性、(iii)触媒特性、(iv)毛細管作用特性、および(v)吸着特性は、特に技術的用途に合わせて修正可能である。これらの特性は、論議のために前述の方法でグループ化されているが、異なるカテゴリからの特性を互いに相関または関連付ける場合もある。したがって、構成構造物は、本明細書を通して論じられる特性のいくつかまたはすべてを示すように構成することができる。
【0038】
構成構造物の挙動は、構造物に施される組成、ドーパント、およびコーティング(触媒を含む)によって決まる。層として構成される場合、構造物の挙動はまた、層厚さ、層間のスペーサ、層を分離する距離、および層を支持および/または分離に使用される構造体によっても決まる。巨視的観点から構造物は、比密度、弾性係数、および/または断面係数を有するように構成することができる。微視的観点から構造物は、分子プロセッサ、電荷(charge)プロセッサおよび/またはバイオプロセッサとして作用するように設計することができる。
【0039】
図4〜9は、代表的な構成構造物を示している。さらなる代表的構造物は、本明細書と同時に出願され、本明細書に参照による組み込まれる、共願の米国特許出願(整理番号69545.8701US)明細書(名称「ARCHITECTURAL CONSTRUCT HAVING FOR EXAMPLE A PLURALITY OF ARCHITECTURAL CRYSTALS」)に含まれる。図4は、後で結晶のマトリクス配列を形成することができる層400の分子図を示している。層400は、炭素の一原子厚さの平坦なシートであるグラフェンを含み得る。図5は、固体塊として構成された構成構造物500の等角図を示している。構成構造物500は、たとえばグラファイトまたは窒化ホウ素を含み得る。固体塊として構成された構成構造物は、積み重ねられた複数の単一原子厚さの層を含み得る。固体塊として構成された代表的な構成構造物は、特殊化され、たとえば独自の形で挙動するように変更される。
【0040】
いくつかの実施において、固体塊はドーピングによって特殊化される。たとえば、グラフェンを含む構成構造物は、ホウ素と反応して化学量論的および非化学量論的の両方のサブセットを形成する領域を有し得る。グラフェンは、さらに窒素と組み合わせることができ、また、グラフェンおよび窒素界面を有する窒化ホウ素グラフェンの両方を含み得る。いくつかの実施では、化合物は構成構造物上に構築される。たとえば設計者は、窒化ホウ素界面からマグネシウム−アルミニウム−ホウ素化合物を構築することができる。こうした方法で構成構造物を特殊化することにより、設計者は、1つの材料のみから構成される構造物ではなく様々な特性を示す構造物を創出することができる。
【0041】
結晶の一原子厚さのシートおよび固体塊は以下で論じられる特性の多くを示すが、他の構成もまた、幅広い特性を生み出し、より有用な結果を達成することができる。たとえば図6は、本技術の実施形態による平行層を有する構成構造物600の側部断面図である。構成構造物の平行層は、グラフェン、グラファイト、または窒化ホウ素などのいくつかの適切な材料のうちのいずれかから形成することができる。平行層は、矩形、円形でよく、または他の形状を有し得る。図6では、層は円形であり、支持チューブ610が構成構造物600を支持する穴を含む。層は各々距離620によって分離され、層間に領域630を作り出す。
【0042】
構成構造物は、単一結晶を所望の形状に機械加工し、単一結晶を層状に剥離することによって形成することができる。いずれも本明細書に参照により援用される、特許文献1および2010年8月16日出願の係属中の米国特許出願第12/857,515号明細書(名称「APPARATUSES AND METHODS FOR STORING AND/OR FILTERING A SUBSTANCE」)は、この手法および他の手法を記載している。他の実施形態では、構成構造物は、たとえば本出願と同時に出願され、本明細書に参照により援用される共願の米国特許出願[整理番号69545.8611]明細書(名称「COUPLED THERMOCHEMICAL REACTORS AND ENGINES, AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」)で開示されたようにエピタキシャル成長プロセスを使用して、シード物質上に構築することができる。
【0043】
図7は、各々が1原子を上回る厚さである平行層を含む構成構造物700の側面図である。層は、断続スペーサ710で互いに対して支持することができる。平行層は、数原子のみの厚さから20原子またはそれ以上の厚さまで様々になり得る。
【0044】
いくつかの実施においては、層のすべては同じ厚さを有するが、他の実施においては個々の層は異なる厚さを有することができる。図8は、様々に異なる厚さを有する平行層を有する構成構造物800の側部断面図である。上記で論じられたように、一原子を上回る厚さまたは互いに厚さが異なる層は、流体が結晶内に拡散される深さを、層を剥離させるように制御することによって(たとえば所望の深さで不純物またはドーパントを組み込むことによって)単一結晶から剥離させることができる。
【0045】
構成構造物は、図6に示されるような均等距離、または図8に示されるような不均等距離で離間された平行層を有し得る。構成構造物800の層間の距離は、図8に示される配列では様々である。たとえば、第1の組810の層間の距離は、第2の組820の層間の距離を上回り、これは、第1の組810の層間の領域が第2の組820の層間より大きいことを意味している。
【0046】
図9は、結晶のマトリクス特徴を有する同心の管状層からなる構成構造物900の側部断面図を示している。たとえば、構成構造物の第1の層910は管状であり、構成構造物の第2の層920を上回る直径を有し、第2の層620は第1の層910内に配置される。同心チューブからなる構成構造物は、いくつかの適切な方法のいずれかで形成することができる。特許文献1で全般的に論じられている1つの方法は、ガス(たとえば炭化水素)をフレーム内で脱水素化して構成構造物900の第1の層910を形成し、材料(たとえば水素化チタン)を脱水素化し第1の層の内面にスペーサを形成してから、ガスを脱水素化してそのスペーサ上に第2の層920を形成することである。次いで次の層を類似の形で堆積させることができる。一部の実施においては、各管状層は、それ自体のフレーム内でガスを脱水素化することによって形成される。脱水素化された層は次いで、図9に示す形状で互いの中に構成される。層の内面または外面のいずれかにスペーサが置かれ、これらの面を特定の距離で離間させることができる。
【0047】
図4〜9を参照して上記で説明した代表的な構成構造物の1つの特徴は、これらが、水素供与体分子を水素ベース燃焼に使用される生成物に解離した結果として生じる炭素または他の物質を用いて形成できることである。したがって、構成構造物を形成するプロセスは、平行して、および/または水素ベースの燃料を形成することと併せた別の形で行うことができる。図2を参照して上記で説明されたように、構成構造物は、より多くの構成構造物および水素燃料を形成するためにさらに使用される反応器の構成要素を形成するために使用することができる。他の実施形態は、構成構造物および水素ベース燃料の他の相乗的組合せを含む。たとえば、グラフェンを含む炭素ベース構造物は、水素で(吸着力によって)充填し、次いで粉体になるように形成することができ、この粉体は、液体水素に比べて体積単位当たりの水素原子の濃度が大きく、貯蔵するのがより簡単でより好都合なものである。別の例では、水素供与体は、ディーセル燃料を含むことができ、その反応においては、解離反応を容易にするために、水素供与体(ディーゼル燃料または他のもの)から事前に解離された水素を解離反応に加えることができる。
【0048】
本技術の特定の実施形態が例示のために本明細書に説明されてきたが、本技術から逸脱することなく、様々な変更を加えることができることが、上記から理解されるであろう。たとえば、上記で説明されたプロセス特定の実施形態は、メタンに関連して説明されてきた。他の実施形態では、他の炭化水素燃料または非炭素含有水素供与体が、同様のプロセスを行って水素ベース燃料および構成構造物を形成することができる。他の実施形態は、燃焼機関以外の供給源からの廃熱を使用することができ、かつ/または上記で明白に説明されたもの以外の方法で内部的に、またはサブプロセス間で熱を再生することができる。
【0049】
特定の実施形態に関連して説明された本技術のいくつかの態様は、他の実施形態において組み合わされ、または削除され得る。たとえば、特定の実施形態は、廃熱をエネルギーの供給源として解離プロセスに使用すると共に、内部熱交換器を使用して熱を一定に保つということに関連して上記で説明されてきた。他の実施形態では、前述の構成のいずれか1つを個々に使用することができる。さらに、本技術の特定の実施形態に伴う利点が、それら実施形態に関連して説明されているが、他の実施形態もそのような利点を示し得、また、本発明の範囲に包含されるためにすべての実施形態がそのような利点を必ずしも示す必要はない。したがって、本発明および関連する技術は、本明細書に明らかに示しまたは説明されていない他の実施形態を包含することができる。
【0050】
参照によって本明細書にこれまで援用されなかった範囲まで、本出願は、以下の資料のそれぞれの主題を、それら全体として参照により援用する。すなわち、2010年8月16日出願の米国特許出願第12/857,553号明細書(名称「SUSTAINABLE ECONOMIC DEVELOPMENT THROUGH INTEGRATED PRODUCTION OF RENEWABLE ENERGY, MATERIALS RESOURCES, AND NUTRIENT REGIMES」)、2010年8月16日出願の米国特許出願第12/857,553号明細書(名称「SYSTEMS AND METHODS FOR SUSTAINABLE ECONOMIC DEVELOPMENT THROUGH INTEGRATED FULL SPECTRUM PRODUCTION OF RENEWABLE ENERGY」)、2010年8月16日出願の米国特許出願第12/857,554号明細書(名称「SYSTEMS AND METHODS FOR SUSTAINABLE ECONOMIC DEVELOPMENT THROUGH INTEGRATED FULL SPECTRUM PRODUCTION OF RENEWABLE MATERIAL RESOURCES USING SOLAR THERMAL」)、2010年8月16日出願の米国特許出願第12/857,502号明細書(名称「ENERGY SYSTEM FOR DWELLING SUPPORT」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−8505.US00]明細書(名称「DELIVERY SYSTEMS WITH IN-LINE SELECTIVE EXTRACTION DEVICES AND ASSOCIATED METHODS OF OPERATION」)、2012年8月16日出願の米国特許出願第61/401,699号明細書(名称「COMPREHENSIVE COST MODELING OF AUTOGENOUS SYSTEMS AND PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF ENERGY, MATERIAL RESOURCES AND NUTRIENT REGIMES」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−8602.US00]明細書(名称「REACTOR VESSELS WITH TRANSMISSIVE SURFACE FOR PRODUCING HYDROGEN-BASED FUELS AND STRUCTURAL ELEMENTS, AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−8603.US00]明細書(名称「CHEMICAL REACTORS WITH RADIATING SURFACE AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−8604.US00]明細書(名称「THERMAL TRANSFER DEVICE AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」)、2011年2月14出願の米国特許出願[整理番号69545−8605.US00]明細書(名称「CHEMICAL REACTORS WITH ANNULARLY POSITIONED DELIVERY AND REMOVAL DEVICES, AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−8606.US00]明細書(名称「REACTORS FOR CONDUCTING THERMOCHEMICAL PROCESSES WITH SOLAR HEAT INPUT, AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−8608.US00]明細書(名称「INDUCTION FOR THERMOCHEMICAL PROCESS, AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−8611.US00]明細書(名称「COUPLED THERMOCHEMICAL REACTORS AND ENGINES, AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」)、2010年9月22日出願の米国特許出願第61/385,508号明細書(名称「REDUCING AND HARVESTING DRAG ENERGY ON MOBILE ENGINES USING THERMAL CHEMICAL REGENERATION」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−8616.US00]明細書(名称「REACTOR VESSELS WITH PRESSURE AND HEAT TRANSFER FEATURES FOR PRODUCING HYDROGEN-BASED FUELS AND STRUCTURAL ELEMENTS, AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−8701.US00]明細書(名称「ARCHITECTURAL CONSTRUCT HAVING FOR EXAMPLE A PLURALITY OF ARCHITECTURAL CRYSTALS」)、2010年8月16日出願の米国特許出願第12/806,634号明細書(名称「METHODS AND APPARATUSES FOR DETECTION OF PROPERTIES OF FLUID CONVEYANCE SYSTEMS」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−8801.US01]明細書(名称「METHODS, DEVICES, AND SYSTEMS FOR DETECTING PROPERTIES OF TARGET SAMPLES」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−9002.US00]明細書(名称「SYSTEM FOR PROCESSING BIOMASS INTO HYDROCARBONS, ALCOHOL VAPORS, HYDROGEN, CARBON, ETC.」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−9004.US00]明細書(名称「CARBON RECYCLING AND REINVESTMENT USING THERMOCHEMICAL REGENERATION」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−9006.US00]明細書(名称「OXYGENATED FUEL」)、2009年8月27日出願の米国特許出願第61/237,419号明細書(名称「CARBON SEQUESTRATION」)、2009年8月27日出願の米国特許出願第61/237,425号明細書(名称「OXYGENATED FUEL PRODUCTION」)、2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−9102.US00]明細書(名称「MULTIPURPOSE RENEWABLE FUEL FOR ISOLATING CONTAMINANTS AND STORING ENERGY」)、2010年12月8日出願の米国特許出願第61/421,189号明細書(名称「LIQUID FUELS FROM HYDROGEN, OXIDES OF CARBON, AND/OR NITROGEN;AND PRODUCTION OF CARBON FOR MANUFACTURING DURABLE GOODS」)、および2011年2月14日出願の米国特許出願[整理番号69545−9105.US00]明細書(名称「ENGINEERED FUEL STORAGE, RESPECIATION AND TRANSPORT」)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素供与体を処理する方法であって、
前記水素供与体にエネルギーを加えることによって前記水素供与体を解離生成物に解離するステップであって、前記エネルギーは、前記水素供与体を解離する以外のプロセスによって発生させた廃熱を含むステップと、
前記解離生成物から、
(a)炭素、窒素、ホウ素、珪素、硫黄および遷移金属の少なくとも1つをベースとする構造構築ブロックと、
(b)水素ベース燃料と
の少なくとも1つを供給するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記廃熱は、燃焼生成物から得られた熱を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
持続性の再生可能エネルギー供給源から得られた熱で前記廃熱を補充するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記廃熱を補充するステップは、前記廃熱を太陽光エネルギーで補充するステップを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記廃熱を補充するステップは、前記廃熱を風エネルギーで補充するステップを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記水素供与体は、第1のエネルギーを有し、
前記水素ベース燃料は、前記第1のエネルギーを上回る第2のエネルギーを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のエネルギーは、第1の解離エネルギーを含み、
前記第2のエネルギーは、第2の解離エネルギーを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記供給するプロセスは、前記構造構築ブロックおよび前記水素ベース燃料の両方を供給するステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記解離生成物から前記構造構築ブロックおよび前記水素ベース燃料を形成するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記構造構築ブロックから構成構造物を形成するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記構成構造物を形成するステップは、解離された炭素からグラフェン構造物を形成するステップを含み、
前記プロセスは、
前記グラフェン構造物に水素を吸着させるステップと、
前記水素を前記グラフェン構造物から放出するステップと、
前記水素を燃焼させ、水素供与体を解離生成物に解離する次のプロセスのためのエネルギーを供給するステップと、
をさらに含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水素供与体は、アンモニアを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記水素供与体は、炭化水素を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記水素供与体に蒸気を加えるステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
水素供与体を処理する方法であって、
第1の水素供与体塊を第1の解離生成物に解離するステップと、
前記第1の解離生成物から、
(a)炭素、窒素、ホウ素、珪素、硫黄および遷移金属の少なくとも1つをベースとする構造構築ブロックと、
(b)水素ベース燃料と
の少なくとも1つを供給するステップと、
前記構造構築ブロック、前記解離生成物、および前記水素ベース燃料の少なくとも1つから第2の水素供与体塊へ熱を伝達するステップと、
前記第2の水素供与体塊を第2の解離生成物に解離するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記第1の水素供与体塊を解離するステップは、第1の炭化水素塊を解離するステップを含む、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の炭化水素供与体塊を解離するステップは、メタンの第1の塊を解離するステップを含む、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の炭化水素供与体塊は、第1の解離エネルギーを有し、
前記水素ベース燃料は前記第1の解離エネルギーを上回る第2の解離エネルギーを有する、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の水素供与体塊は、ディーゼル燃料の第1の塊を含み、
前記第2の水素供与体塊は、ディーゼル燃料の第2の塊を含み、
前記方法は、前記ディーゼル燃料の第1の塊を解離することから得られた水素を前記ディーゼル燃料の第2の塊に加えて前記ディーゼル燃料の第2の塊を解離するのを助けるステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
炭化水素を処理する方法であって、
第1の炭化水素塊にエネルギーを加えることによって前記炭化水素塊を第1の解離生成物に解離するステップであって、前記エネルギーは、
(a)前記炭化水素塊を解離する以外のプロセスによって発生させた廃熱と、
(b)持続性のエネルギー供給源からのエネルギーと、
を含み、
前記第1の炭化水素塊は、第1の解離エネルギーを有するステップと、
前記第1の解離生成物から、
(a)炭素ベースの構造構築ブロックと、
(b)前記第1の解離エネルギーを上回る第2の解離エネルギーを有する水素ベース燃料と、
を供給するステップと、
前記構造構築ブロック、前記水素ベース燃料、および前記解離生成物の少なくとも1つから第2の炭化水素塊へ熱を伝達するステップと、
前記第2の炭化水素塊を第2の解離生成物に解離するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記第1の炭化水素塊を解離するステップは、メタンの第1の塊を解離するステップを含み、
前記第2の炭化水素塊を解離するステップは、メタンの第2の塊を解離するステップを含み、
前記水素ベース燃料を供給するステップは、前記メタンの第1の塊を解離することによって放出された水素を供給するステップを含み、
前記方法は、
前記メタンの第1の塊を解離することによって放出された炭素からグラフェンを形成するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−519622(P2013−519622A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553089(P2012−553089)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2011/024804
【国際公開番号】WO2011/100724
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(511201174)マクアリスター テクノロジーズ エルエルシー (23)
【Fターム(参考)】