説明

水素製造装置

【課題】エネルギー利用効率の向上と設備簡素化が可能な水素製造装置を提供する。
【解決手段】水素製造装置102は、水素を含んでいる燃料と水との混合蒸気を触媒113の存在下で加熱しながら水素生成反応を行う改質器103を有する。また、他のプラントの燃焼排ガスを加熱源として回収するエネルギー回収装置101と、エネルギー回収装置101と排ガス輸送管109を介して接続され改質器103の外部容器を形成するシェル112と、シェル112内に設けられた複数の反応管111と、反応管111に混合蒸気を原料供給配管114を経由して供給する原料供給系104と、反応管111において生成されたガスを生成ガス回収配管118を経由して回収する生成ガス回収系105と、反応管111内の触媒113の劣化による改質能力の低下を検出し混合蒸気の流量を調整する原料流量調整弁115と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を含んでいる燃料を用いて水蒸気を改質する水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電力産業分野では、化石燃料枯渇に対応する省エネルギー化、COやNOxの濃度増加に伴う環境保全等から燃料の多様化が研究開発されており、その一つに水素ガス利用技術がある。
【0003】
この水素ガスの利用技術には、例えば、燃料電池発電システムや水素燃焼発電プラントがある。前者の技術として、水素等の燃料と酸素に代表される酸化剤との電気化学反応で直接電気エネルギーを発生させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、後者の技術として、高圧の水素ガスと純酸素ガスを燃焼させ高温の水蒸気を発生させ、発生した高温の水蒸気をタービンで膨張仕事をさせ、その際に発生する動力で発電機を駆動して発電を行うものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
前者、後者共にNOx、SOx、CO等の環境汚染物質や温暖化効果ガスを発生させない極めてクリーンなエネルギーを利用する点で、21世紀の新エネルギー推進政策の一環として研究開発の成果が注目されている。
【0006】
一般に、燃料電池発電プラントや水素燃焼発電プラントに燃料として供給する水素は、水の電気分解により製造することが提案されている。この水の電気分解による水素製造では、必要なコストの大半が電力である。現在の原子力発電プラントや火力発電プラントでは、熱に交換される核分裂エネルギーや石油、天然ガス等の燃料エネルギーの約50%程度しか電力に変換されていない。特に、原子力発電プラントでの熱利用効率は30数%である。このため水の電気分解による水素製造では、エネルギーの利用効率が極めて悪く、コスト高につながる不都合があった。
【0007】
一方、メタノールやジメチルエーテル等の含酸素炭化水素は、低温で水蒸気改質ができるため、水素製造の際に、コスト的に有利である。また、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール等は、中小ガス田や炭酸ガス、CO含有量の多いガス田のメタンから製造されるために、この量が比較的多い。
【0008】
ジメチルエーテルの場合は水蒸気によって、以下の(1)式が示すように、改質反応が行われ水素ガスを生成している。
CHOCH+3HO→6H+2CO (1)
【0009】
上述の反応をさせるには熱源が必要であると同時に触媒が必要である。原料が触媒と接触しつつ熱を受けながら流れることにより水素ガスが生成される。この触媒を充填した改質器は、加熱媒体との熱交換器でもある。
【0010】
この水素製造用改質器として、多管式のシェルアンドチューブ型が使用されていることが知られている(例えば、特許文献3参照)。多管式のチューブ内に触媒が充填されて反応層を形成している。この多管式シェルアンドチューブ型の熱交換器は、発電プラントにも使用されている一般的な型式であり、効率よく大量の熱を交換するのに適している。
【0011】
すなわち、伝熱管を多数使用することにより伝熱面積をコンパクトに増やすことにより、大量で効率良い熱交換が行われる。
【0012】
従って、大量の水素製造を行う場合には、大量の熱を必要とするので、このような水素製造プラントの改質器にシェルアンドチューブ型の熱交換器を使用することはエネルギー利用の効率化のために有効である。
【0013】
また、製鉄所におけるエネルギー回収手段としてのシステムが知られている(例えば、特許文献4参照)。この製鉄所の還元炉等から排出されるガスのエネルギー回収技術に係わるもので、排出される可燃性ガスを抽出し、再燃焼させて高温ガスを発生させ、この高温ガスでガスタービンを駆動して発電する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平6−140065号公報
【特許文献2】特開平11−36820号公報
【特許文献3】特開昭59−184706公報
【特許文献4】特開平4−311632公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した従来の水素製造装置(特許文献3参照)においては、水素製造用改質器として、多管式のシェルアンドチューブ型が使用され、多管式のチューブ内に触媒が充填されて反応層を形成している。この水素製造用改質器として多管式の熱交換器を採用することは、伝熱面積を増やすことにより、大量で効率良い熱交換が行われる点に特徴がある。
【0016】
しかし、メタノールやジメチルエーテル等の含酸素炭化水素の水蒸気改質による水素製造法は、触媒充填体積あたりの水素製造量は触媒の性能に大きく依存する。その製造量に対応した量の原料を供給する必要がある。含酸素炭化水素は、供給量が多すぎれば反応せずに、残ガスとして生成水素と一緒に回収されて分離される。分離すれば再利用可能であるが、分離のための無駄なエネルギーを労費することになる。
【0017】
このように、多管式の改質器の場合においては、触媒が充填された多数本の反応管内に流れる原料の量は不均一になる可能性がある。また、水素製造量が触媒の劣化等で水素製造量が少なくなった反応管と劣化が生じていない反応管が生じた場合には、水素製造量が反応管毎に不均一になり、改質されないで流出する原料が多くなるという課題があった。
【0018】
また、上述した従来の水素製造装置においては、加熱媒体に液体の熱媒体油を使用している。この熱媒体油を使用することは、改質器の熱の安定性の観点では有効な技術である。
【0019】
しかし、循環装置、加熱装置、この加熱装置の熱交換器が別途必要であり、過大な設備を必要とし環境負荷が増大する可能性があるという課題があった。
【0020】
一方、製鉄所におけるエネルギー回収手段としてのシステム(例えば、特許文献4参照)は、製鉄所における排ガスエネルギー等の他目的で使用された排ガスエネルギーを再利用して有効利用を行えばエネルギー利用効率向上で環境負荷低減を図ることができる。
【0021】
しかし、上述の製鉄所におけるエネルギー回収手段としてのシステムにおいては、直接的に水素製造利用に係る技術が存在しないという課題があった。
【0022】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、水素製造プラント用に使用されるエネルギーの無駄を軽減し、既設の他のプラントの燃焼排ガスを加熱源とすることによるエネルギー利用効率の向上と設備簡素化による環境負荷が低減できる水素製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するため、本発明の水素製造装置は、水素を含んでいる燃料と水との混合蒸気を触媒の存在下で加熱しながら水素生成反応を行う改質器を有する水素製造装置において、他のプラントの燃焼排ガスを加熱源として回収するエネルギー回収装置と、このエネルギー回収装置と排ガス輸送管を介して接続され前記改質器の外部容器を形成するシェルと、このシェル内に設けられた複数の反応管と、この反応管に前記混合蒸気を原料供給配管を経由して供給する原料供給系と、前記反応管において生成されたガスを生成ガス回収配管を経由して回収する生成ガス回収系と、前記反応管内の前記触媒の劣化による改質能力の低下を検出し前記混合蒸気及び前記生成ガスから選択された少なくとも一流体の流量を調整する改質能力低下検出調整手段と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の水素製造装置によれば、他のプラントから発生した排ガスの熱エネルギーを水素を製造する改質器に利用できるので、水素製造に必要なエネルギーの大半を効果的に活用できエネルギーの有効利用を図ることができる。
【0025】
また、反応管内の触媒の劣化による改質能力の低下を検出する改質能力低下検出調整手段を設けることにより、触媒の劣化等による改質能力低下を監視し、水素製造装置内の回収分離のための無駄なエネルギーの使用を削減することができ、環境負荷の低減をも図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態の水素製造装置の概略構成を示す構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態の水素製造装置の概略構成を示す構成図。
【図3】図2の生成ガス回収配管を拡大して示す断面図。
【図4】図2の生成ガス回収配管の変形例を拡大して示す断面図。
【図5】本発明の第3の実施の形態の水素製造装置の概略構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る水素製造装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施の形態の水素製造装置の概略構成を示す構成図である。
【0029】
まず、水素製造装置102の基本構成について、図1を用いて説明する。この水素製造装置102は、水素を含んでいる燃料と水の混合蒸気を触媒の存在下で加熱しながら水素生成反応を行う改質器103を備えている。
【0030】
この改質器103内に反応管111が鉛直方向に延立設され、邪魔板119が設けられている。また、この改質器103には、排ガス輸送管109を介して、エネルギー回収装置101が接続されている。このエネルギー回収装置101は、他のプラントの一例として、火力発電プラント、原子力発電プラント、製鉄プラント等の発電プラント(以下、製鉄プラントと省略する。)に接続され、製鉄プラントの排ガスエネルギーの回収に利用されている。この改質器103において、この回収した熱を利用して、燃料を水蒸気改質して水素を生成している。
【0031】
また、水素製造装置102は、改質器103に燃料と水の混合蒸気である原料を供給する原料供給系104と、改質器103において生成されたガスを回収する生成ガス回収系105と、を備えている。
【0032】
原料供給系104は、例えばエタノール、ジメチルエーテルなどの燃料タンクやガス化してかつ予熱する予熱器等を備えた燃料供給装置106と、原料水を蒸気にして供給する水タンク、ポンプや水蒸発器等を有する原料水蒸気供給装置107と、燃料ガスと原料水蒸気の混合部108等を備えている。生成ガス回収系105の詳細については図示しないが、混合蒸気が改質されて生成された水素ガスやほかの生成ガスを分離回収し、水素ガスを精製する装置等を備えている。
【0033】
エネルギー回収装置101は、例えば、製鉄排ガスエネルギーを回収するために、排ガス輸送管109が接続され、この排ガス輸送管109には排ガスブロワー110が設置され、改質器103に排ガスを供給している。
【0034】
上記改質器103は、複数の反応管111と、これらを包含するシェル112とを備えている。この反応管111内には、例えば、Cu−Zn等を合成した触媒113が充填される。
【0035】
さらに、原料供給系104からの原料供給配管114が、複数の反応管111のそれぞれの底部に分岐して接続されている。また、原料供給管114には流量調節弁115が設置されている。
【0036】
このように構成された本実施の形態において、例えば、製鉄排ガスが排ガスブロワー110によってエネルギー回収装置101を介して抽出される。この抽出された排ガスの有する熱が、改質器103のシェル112内に輸送されて改質に必要な熱エネルギーとして供給することができる。
【0037】
一方、原料供給系104の燃料供給装置106から供給される燃料、例えば、エタノール、ジメチルエーテル等の含酸素炭化水素は燃料供給装置106でガス化され、また原料供給系104の原料水蒸気供給装置107から供給される水は、原料水蒸気供給装置107で蒸気化される。
【0038】
このガス化されたエタノール又はジメチルエーテル等の燃料ガスと原料水蒸気は混合部108で混合して混合ガスとなり、改質器103の反応管111内に複数の原料供給配管114を介して供給される。
【0039】
この原料供給配管114は、複数の反応管111それぞれに接続され、かつ原料流量調節弁115が設置されている。この原料流量調節弁115を介して、混合ガス原料の供給量を反応管111毎に調節することができるようになっている。
【0040】
この混合ガスは、反応管111内の触媒113の充填層の空隙部を通過する間に改質反応をして水素ガスが生成される。例えば、燃料がジメチルエーテルの場合は、水蒸気によって、上述の(1)式が示すように、改質反応を行って水素ガスが生成される。
【0041】
このようにして生成された水素ガスは、二酸化炭素COを含んでいるので、改質器103の上方に設けられた生成ガス回収配管118を経由して生成ガス回収系105に導入され分離及び精製されて回収される。また、生成ガス回収系105には、余剰ジメチルエーテル及び水蒸気を分離回収する装置が含まれている。
【0042】
一般に、供給する原料の量は、触媒113の単位体積当たりの単位時間あたり改質能力に応じて設定される。反応管111毎の能力は運転初期性能において同じであり、原料は均一に供給される。しかし、触媒113の性能の劣化が生じた反応管111が存在する場合は、改質されずに余剰の混合ガスが存在することから、この余剰の混合ガスを回収するために、この分離に無駄なエネルギーが費やされる。
【0043】
本実施の形態においては、反応管111毎に原料供給配管114と原料流量調節弁115が設置されているので、改質能力が低下した反応管111には少ない原料を供給するように調節することができる。このために、生成ガス回収系105から余剰ジメチルエーテル及び水蒸気を分離するための無駄なエネルギーの浪費を削減することができる。
【0044】
図1に示すように、反応管111内に温度センサー116を設置することにより、触媒113の劣化等による改質能力低下を監視することができる。
【0045】
上述の(1)式の反応は、吸熱反応であり改質反応を継続するためには所定の熱量を与え続ける必要があるので、エネルギー回収装置101の熱エネルギーを輸送して利用するようになっている。
【0046】
すなわち、この改質反応は吸熱反応であり、反応が起こらないと外部の加熱用排ガスの熱によって温度上昇するので、この温度上昇を監視することにより、触媒113の劣化等による改質能力低下を監視することができる。
【0047】
図1に示すように、反応管111内に圧力センサー117を設置することによっても、触媒劣化等による改質能力低下を監視することができる。
【0048】
すなわち、上述の(1)式の反応のように、改質反応が起こると生成ガスの量が2倍に増加する。このために、正常に改質反応が行われると、ガスの量が増加することに伴い圧力が上昇する。この改質反応が低下すると圧力が下がる。この圧力の変化を圧力センサー117で検知して触媒113の劣化等による改質能力低下を監視することができる。
【0049】
本実施の形態によれば、製鉄炉で発生した排ガスをエネルギー回収装置101を介して水素製造プラント102を接続することにより、さらにエネルギーの有効利用が可能になる。
【0050】
すなわち、製鉄炉から発生した排ガスの熱エネルギーを水素製造プラントの改質器103に利用できるので水素製造に必要なエネルギーの大半を効果的に活用できるのでエネルギーの有効利用が可能になる。
【0051】
また、本実施の形態よれば、水素製造のために利用する熱エネルギー源を製鉄炉の燃焼排ガスの熱としているが、火力発電用燃焼排ガス又はごみ焼却燃焼排ガス等の熱エネルギーを利用することも可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0052】
さらに、反応管111内に温度センサー116を設置することにより、触媒113の劣化等による改質能力低下を監視することができ、また、反応管111内に圧力センサー117を設置することによっても、触媒劣化等による改質能力低下を監視することができるので、水素製造装置内の余剰ジメチルエーテル及び水蒸気を回収分離するための無駄なエネルギーの使用を低減することができ、環境負荷の低減をも図ることができる。
【0053】
図2は、本発明の第2の実施の形態の水素製造装置の概略構成を示す構成図であり、図3は、図2の生成ガス回収配管を拡大して示す断面図であり、図4は、図2の生成ガス回収配管の変形例を拡大して示す断面図である。
【0054】
図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0055】
図2に示すように、水素製造装置202には、エネルギー回収装置101が設けられ、このエネルギー回収装置101からの排ガスエネルギーは、排ガス輸送管209を経由して、改質器203のシェル212に導入される。また、原料水を蒸気にして供給する水タンクやポンプや水蒸発器等を備えた原料水蒸気供給装置207が設けられている。さらに、改質器203の上部には生成ガス回収系205が設けられている。
【0056】
この生成ガス回収系205は、上述の混合蒸気が改質されて生成された水素ガスやほかの生成ガスを分離回収し、水素ガスを精製する装置等で構成される。
【0057】
また、エネルギー回収装置101には、排ガス輸送管209が接続され、この排ガス輸送管209には排ガスブロワー210が介在し改質器203に排ガスを供給している。
【0058】
さらに、上記改質器203は、複数の反応管211と、この反応管211を包含するシェル212とを備えている。この反応管211内には、例えば、Cu−Zn等を合成した触媒213が充填される。さらに、複数のそれぞれの反応管211の上部(出口側)には、生成ガス回収配管214が接続され、そして、生成ガス回収系205に接続されている。生成ガス回収配管214には生成ガス流量調節弁215が設置されている。
【0059】
このように形成された本実施の形態において、排ガスが排ガスブロワー210によって製鉄プラントの排ガスは、エネルギー回収装置101から抽出され排ガスの熱が改質器203のシェル212内の邪魔板219を経由して輸送される。排ガスの熱が改質に必要な熱エネルギーとして、改質器203に供給することができる。
【0060】
一方、原料供給系204の燃料供給装置206から供給される燃料、例えばエタノール、ジメチルエーテル等の含酸素炭化水素は、燃料供給装置206でガス化される。また、原料供給系204から供給される水は、原料水蒸気供給装置207で蒸気化される。
【0061】
上記エタノール又はジメチルエーテル等の燃料ガスと原料水蒸気は、混合部208で混合して混合ガスとなる。混合ガスは、改質器203の反応管211内に原料供給配管220を介して供給される。この混合ガスは反応管211内の触媒213の充填層の空隙部を通過する間に改質反応をして水素ガスが生成される。例えば、燃料がジメチルエーテルの場合は、水蒸気によって、上述の(1)式の反応のように、改質反応を行って水素ガスが生成される。このようにして生成された水素ガスは二酸化炭素COを含んでいるので、生成ガス回収系205で分離及び精製されて回収される。
【0062】
一般に、生成ガス回収系205には、余剰ジメチルエーテル及び水蒸気を分離回収する装置が含まれている。供給する原料の量は、触媒213の単位体積当たりの単位時間当たり改質能力に応じて設定される。反応管211毎の能力は運転初期性能において同じであり、原料は均一に供給される。しかし、触媒性能の劣化が生じた反応管が存在する場合は、改質されずに余剰の混合ガスが回収されて、その分離に無駄なエネルギーが費やされる可能性があった。
【0063】
本実施の形態によれば、反応管211毎に生成ガス回収配管214と生成ガス流量調節弁215が設置されているので、触媒劣化等による改質能力低下を監視することができるので、触媒213の改質能力が低下した反応管211から回収される余剰の混合ガスを少なくすると共に、供給される原料ガスも少なく供給するように調節することができる。かくして、改質されずに存在する余剰の混合ガスを回収するために、この分離のための無駄なエネルギーの浪費を抑制することができる。
【0064】
また、図2においては、反応管211内に温度センサー216を設置することにより、触媒213の劣化等による改質能力低下を監視することができる。すなわち、本実施の形態に関わる改質反応は吸熱反応であり、反応が起こらないと外部の加熱用排ガスの熱によって温度上昇するのを監視することができるので、触媒213の改質能力が低下した反応管211から回収される余剰の混合ガスを少なくすると共に、供給される原料ガスも少なく供給するように調節することができ、無駄なエネルギーの浪費を抑制することができる。
【0065】
さらに、反応管211に圧力センサー217を設置することによっても、触媒213の劣化等による改質能力低下を監視することができる。この変化を圧力センサー217で検知して触媒213劣化等による改質能力低下を監視することができるので、触媒213の改質能力が低下した反応管211から回収される余剰の混合ガスを少なくすると共に、供給される原料ガスも少なく供給するように調節することができ、無駄なエネルギーの浪費を抑制することができる。また、反応管211内に温度センサー216を設置することにより、触媒213の劣化等による改質能力低下を監視することができる。
【0066】
図3は、図2の生成ガス回収配管214を拡大して示す断面図である。
【0067】
図3に示すように、生成ガス回収配管214の内部に温度によって変位するバイメタル218が設けられている。このバイメタル218は、図2に示す生成ガス流量調節弁215と同様の働きをする。
【0068】
すなわち、このバイメタル218は、温度上昇により曲がり、変形が大きくなるように形成されている。触媒213の改質性能が劣化すると吸熱量が低下するので改質されないで回収される余剰原料混合ガスの温度が上昇する。この温度上昇により、バイメタルの変形が大きくなり生成ガス回収配管214の流路が狭くなり、回収される余剰原料混合ガスの流量を低減することができる。かくして、温度上昇により自然に流量調節弁の働きを果たすことができる。
【0069】
図4は、図2の生成ガス回収配管214の変形例を拡大して示す断面図である。
【0070】
図4に示すように、生成ガス回収配管214の内部に浮子219を設けることによって生成ガスの流量調節弁の働きをさせている。また、生成ガス回収配管214の立上り部の内面に部分的にテーパ部220を形成し、挿入されている浮子219が落下しないようになっている。
【0071】
改質反応が正常に行われると、上記(1)式が示すように、流量が2倍に増加して、生成ガスは矢印に示すように上向きに流れ、浮子219が浮遊して生成ガスは回収される。一方、触媒213の改質性能が劣化すると反応が少なくなり流量が低下するので、浮子219の浮遊高さが少なくなり余剰原料混合ガスの流出流量を低減することができる。
【0072】
本実施の形態によれば、製鉄炉から発生した排ガスの熱エネルギーを水素製造装置202の改質器203に利用できるので、水素製造に必要なエネルギーの大半を効果的に活用できるのでエネルギーの有効利用が可能になる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、水素製造のために利用する熱エネルギー源を製鉄プラントの燃焼排ガスの熱を例として説明しているが、火力発電用燃焼排ガス又はごみ焼却燃焼排ガス等の熱エネルギーを利用することも可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0074】
さらに、反応管213毎に生成ガス回収配管214と生成ガス流量調節弁215が設置されているので、触媒213の改質能力が低下した反応管211から回収される余剰の混合ガスを少なくすると共に、供給される原料ガスも少なく供給するように調節することができる。かくして、改質されずに存在する余剰の混合ガスを回収するために、この分離のための無駄なエネルギーの浪費を抑制することができる。
【0075】
加えて、生成ガス回収配管214の内部に温度によって変位するバイメタル218を設け、また、生成ガス回収配管214の内部に浮子219を設けることによる生成ガスの流量調節弁の働きをさせ、触媒213の劣化等による改質能力低下を監視することができ、触媒劣化等による改質能力低下を監視することができるので、水素製造装置202内の余剰ジメチルエーテル及び水蒸気を回収分離するための無駄なエネルギーの使用を低減することができ、環境負荷の低減をも図ることができる。
【0076】
図5は、本発明の第3の実施の形態の水素製造装置の概略構成を示す構成図である。
【0077】
図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0078】
図5に示すように、水素製造装置330は、図1に示す改質器103の変形例である改質器303を備えている。この改質器303は、複数の反応管311と、これらを包含するシェル312とで構成されている。
【0079】
この反応管311は、二重管構成のバイオネット管から形成される。すなわち、反応管311は、外管311A及び内管311Bより構成される。外管311Aは、下端部が閉止し、上端部は外管フランジ蓋321が設置されている。この外管フランジ蓋321の下側に外管固定フランジ322が設置され、この外管固定フランジ322を介して、反応管311が、シェル312のシェル蓋323に着脱自在にボルト締結されている。内管311Bは、下端は開口し、上端部は外管フランジ蓋321に固定されている。
【0080】
シェル312には、排ガス輸送管324が接続され、図1に示すエネルギー回収装置101から抽出した排ガスが邪魔板319を経由して導入されて反応管311を加熱するように構成されている。また、外管311Aの上方部に原料供給配管325が接続されジメチルエーテルと水蒸気の混合ガス原料が供給される構成になっている。
【0081】
さらに、内管311Bの上端には生成ガス回収配管326が接続され、改質反応により生成された水素ガス等の生成ガスがこの生成ガス回収配管326を経由して生成ガス回収系に回収される。
【0082】
そして、反応管311の外管311Aと内管311Bで形成される環状隙間には触媒313が充填されている。この触媒313の充填層は、空隙部を有し混合ガスが流れるように形成されている。
【0083】
なお、原料供給配管325は、複数の反応管311のそれぞれに接続され、かつ原料流量調節弁(図示せず)が設置されている。この原料流量調節弁を介して、混合ガス原料の供給量を反応管311毎に調節することができるようになっている。
【0084】
さらに、複数のそれぞれの反応管311には、生成ガス回収配管326が接続され、そして、生成ガス回収系(図示せず)に接続されている。生成ガス回収配管326には生成ガス流量調節弁(図示せず)が設置されている。この生成ガス流量調節弁を介して、混合ガス原料の供給量を反応管311毎に調節することができるようになっている。
【0085】
このように構成された本実施の形態において、混合ガスがこの触媒313の充填層の空隙部を下降するうちに、改質生成されたガスは外管311Aの下端部でUターンして、内管311Bの下端開口部から内管311B内部を通って上昇して上部の生成ガス回収管326を経由して生成ガス回収系に回収される。
【0086】
加えて、反応管311の外管311Aには外管固定フランジ322が固定され、反応管311はフランジ構造による着脱自在な締結構成としたが、ネジ締結による着脱自在な構成にすることも可能である。
【0087】
このように形成された本実施の形態において、反応管311が着脱自在にシェル蓋323にボルト締結されているので、反応管311の取外し、再取り付けが容易に行われる。また、反応管311を二重管構成のバイオネット型にしたことにより、原料供給部及び生成ガス回収部が上部に設置可能となり、かつ固定支持部も上部だけになるので、反応管311を引き抜くことが容易な着脱自在な構造となっている。
【0088】
このように、反応管311の取り外し、再取り付けが容易になったことにより、反応管311の交換が可能になる。このように、触媒313が劣化した場合は酸化、還元処理等の再生処理が必要であったが、正常な触媒を充填した反応管311毎に交換可能となり、現場での還元処理が不要となり、プラント停止時間が短縮され稼動率が向上し、効率向上を図ることができる。さらに、劣化した触媒313を充填した反応管311をセットにして工場等の別の場所で再生処理を行い再利用することができる。
【0089】
かくして、本実施の形態によれば、上述した第1及び第2の実施の形態で示した効果に加えて、触媒313を充填したまま反応管311と一体で触媒313の交換が可能になり、水素製造に係る触媒再生処理が不要になるので、停止時間が短くなり、プラント稼動効率が向上し、エネルギー利用効率も高い水素製造を実現することができる。
【0090】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は、上述したような各実施の形態に何ら限定されるものではなく、各実施の形態の構成を組み合わせて、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0091】
101…エネルギー回収装置、102,202,330…水素製造装置、103,203,303…改質器、104,204,325…原料供給系、105,205…生成ガス回収系、109,209,324…排ガス輸送管、110,210…排ガスブロワー、111,211,311…反応管、114,220,325…原料供給配管、115…原料流量調整弁、116,216…温度センサー、117,217…圧力センサー、118,214,326…生成ガス回収配管、119,219,319…邪魔板、215…生成ガス流量調節弁、311A…外管、311B…内管、112,212,312…シェル、113,213,313…触媒、218…バイメタル、219…浮子、321…外管フランジ蓋、322…外管固定フランジ、323…シェル蓋、325…原料供給系、330…水素製造装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含んでいる燃料と水との混合蒸気を触媒の存在下で加熱しながら水素生成反応を行う改質器を有する水素製造装置において、
他のプラントの燃焼排ガスを加熱源として回収するエネルギー回収装置と、
このエネルギー回収装置と排ガス輸送管を介して接続され前記改質器の外部容器を形成するシェルと、
このシェル内に設けられた複数の反応管と、
この反応管に前記混合蒸気を原料供給配管を経由して供給する原料供給系と、
前記反応管において生成されたガスを生成ガス回収配管を経由して回収する生成ガス回収系と、
前記反応管内の前記触媒の劣化による改質能力の低下を検出し前記混合蒸気及び前記生成ガスから選択された少なくとも一流体の流量を調整する改質能力低下検出調整手段と、
を有することを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
前記他のプラントは、製鉄プラント、火力発電プラント又はごみ焼却プラントであること、を特徴とする請求項1記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記改質能力低下検出調整手段は、前記原料供給配管に設けられ前記混合蒸気の流量を検知しさらに調整する原料流量調整弁を具備すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記改質能力低下検出調整手段は、前記生成ガス回収配管に設けられ前記生成ガスの流量を検知しさらに調整する生成ガス量調節弁を具備すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記改質能力低下検出調整手段は、前記反応管内に設けられた温度センサーを具備すること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記改質能力低下検出調整手段は、前記反応管内の圧力を検知する圧力センサーを具備すること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項7】
前記改質能力低下検出調整手段は、前記生成ガス回収配管内に設けられ温度によって変位するバイメタルを具備すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造装置。
【請求項8】
前記改質能力低下検出調整手段は、前記生成ガス回収配管内に設けられ前記生成ガスの流量を検知しさらに調整する浮子を具備すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造装置。
【請求項9】
前記反応管は、外管と内管を有する二重管構成のバイオネット管と、この二重管の環状隙間に充填された触媒と、を備え、前記シェルの上部に着脱自在に設けられていること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水素製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−207654(P2011−207654A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76524(P2010−76524)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】