説明

水耕栽培装置及び水耕栽培方法

【課題】 植物の水耕栽培装置において、効率的で自動的な2次元スペーシングを行えるような水耕栽培装置の構成と水耕栽培方法を提供するものである。
【解決手段】 中央部に播種ユニット供給エリアを設け、外周部に収穫エリアを設け、播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアまで間、前記播種ユニットを回転移送しながら送り出し機構によって、漸次外周方向に移動させて、育成した植物は前記収穫エリアにおいて収穫される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に植物の育成・収穫が可能な水耕栽培装置及び水耕栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は種子より発芽して育成により日々大きくなり収穫されるものである。その際、種蒔き時の種子間の間隔は小さく、そのままで全てを育成して収穫するものではない。通常は二葉の出てきた辺りから、育成に従って随時間引きを行い、最終的には適度な株間の植物だけが収穫まで育成されることになる。この場合には、最終収穫量に対して必要な耕地面積を最初から確保しておく必要があり、間引きによる育成植物の無駄も多い。
【0003】
これに対して、種蒔き時には間隔を小さくし、育成に従って株間距離を大きくするスペーシングという技術がある。例えば、特許文献1(特開平9−23774号公報)において、山葵などの植物を短い栽培期間で効率良く養液栽培する方法を提供する発明が開示されている。この発明によると、この養液栽培方法は先ず、断熱性と遮光性を有する細長い板状の本体に複数の定植穴を1条または2条配列したスペーシングカセットを複数組み合わせてなる定植ユニットを用意する。そして各スペーシングカセットを水耕栽培ベットに整列配置すると共に、それらの定植穴に植物の苗を固定して栽培を開始し、生育に応じてそのスペーシングカセットの整列間隔を広げていく。
【0004】
さらに、特許文献2(特開平7−147856号公報)においては、搬送経路の長さを確保しながら長大化を回避できるパネル式搬送栽培装置および運転方法が開示されている。この発明によると、互いに平行逆向きの送りラインおよび戻りラインと、送りラインからのパネルを戻りラインに送るレーンシフタを設けて第1〜第3のステージを構成する。各ステージ間はパネルサーバでパネルを交換しながらスペーシングマシンで株を移植してゆく。これにより長い搬送経路を確保しながらコンパクト化できるようにする。
【0005】
また、特許文献3(特開平8−23804号公報)においては、葉菜類を定植した多数のトラフのピッチを成長に応じて違え、かつ、日毎の移動の際に少しずつ大きいピッチとなるように配置変更できる発明が開示されている。この発明では、同一ピッチにあるトラフを一体にしたトラフ群を移動する移送用ブロックが、一定のストローク長で往復変位するスペーシングロッドによって動かされる。スペーシングロッドに固定した往行用プッシャと移送用ブロックの往行用押面との間隔もしくは復行用押面と復行用プッシャとの間隔は、最も離れた状態において、一定のストローク長から該当するトラフ群におけるトラフピッチを差し引いた長さに選定される。全ての移送用ブロックを前進・後退させると共に、その前後でトラフ群に離接させることによりウォーキング運動を行わせる。各往行用押面が当接した時点で該当する移送用ブロックが移動し、トラフのピッチが順次増大される。
【0006】
また、特許文献4(特開平8−308409号公報)においては、栽培バーの間隔を設定するスペーシング作業を人手を用いずに能率的に、しかも経済的に行うことができる水耕栽培装置を提供することを目的とする発明が開示されている。この発明は、栽培ベットと、被栽培物を保持し栽培ベット上に並べて配置される複数の栽培バーと、栽培バーを保持して栽培ベット上に被栽培物の生育段階に応じた間隔で並べて配置する栽培バースペーシング装置とを具備し、栽培バースペーシング装置は、栽培ベット上を走行する本体と、栽培バーの並び方向に並ぶ複数の吊りレバーを動作して各栽培バーを保持する保持機構と、各吊りレバーを栽培バーの並び方向に移動して各吊りレバーの間隔を被栽培物の生育段階に応じた各栽培バーの間隔の大きさに調節する配置位置調節機構と、保持機構および配置位置調節機構を昇降する昇降機構とを備えることを特徴とする。
【0007】
さらに、一次元的なスペーシングではなく2次元的なスペーシングを達成するものとして、特許文献5(特開平9−47170号公報)においては、構造が簡単で低コストで大型で多量生産に適し、定植間隔を二次元的に任意の距離に調整可能な植物搬送体及びこれを用いた植物栽培装置を提供する発明が開示されている。この発明においては、植物搬送体は、長い栽培カラムと短い栽培ボードとの組合せを備えた第1植物搬送体と、これらに加えてボード間に介装される栽培スペーサとの組合せを備えた第2植物搬送体から成る。栽培ボードの丸穴には、立方体形状のウレタンチューブが嵌め込まれる。植物栽培装置は、第1、第2搬送体をそれぞれ別々の隣接したラインに多数並設し、定植、ライン方向及びこれに直角方向のスペーシング及び収穫装置を備える。
【0008】
さらに、全体として円形形状の水槽を備えたものとして、特許文献6(特開平8−205701号公報)においては、野菜、果物、花等の作物を水耕栽培するための水耕栽培水槽に関し、特にハウス栽培に適した作業性の高い水耕栽培水槽を提供するとした発明が開示されている。この発明においては、水耕栽培水槽が支柱と同心状に配設され、該水耕栽培水槽は半径Rの短円筒状の外周壁と、該外周壁より小径で同心状の半径rの短円筒状の内周壁と、該外周壁および内周壁の下縁に水密に一体に接合された底壁とよりなり、また水耕栽培水槽の外周壁および内周壁の上端縁切欠きに、案内棒の両端部が係合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−23774号公報
【特許文献2】特開平7−147856号公報
【特許文献3】特開平8−23804号公報
【特許文献4】特開平8−308409号公報
【特許文献5】特開平9−47170号公報
【特許文献6】特開平8−205701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、植物の水耕栽培装置において、効率的で自動的な2次元スペーシングを行えるような水耕栽培装置の構成と水耕栽培方法を提供するものである。
【0011】
さらに、本発明が解決しようとする課題は、全体的に円形状の(楕円形状や多角形状を含む)水耕栽培槽を備えた装置であって、水槽の周方向と半径方向の2方向にスペーシングを達成する水耕栽培装置の構成と水耕栽培方法を提供するものである。つまり、植物の育成に従って、前後左右の平面的なスペーシングを達成するものである。
【0012】
さらに、本発明が解決しようとする更なる課題は、全体的に円形状(楕円形状や多角形状を含む)の水耕栽培槽を備えた装置であって、播種ユニットを水槽の中心部から投入し、育成植物を円形水槽の外周部の1箇所から収穫する水耕栽培装置の構成と水耕栽培方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
植物の育成に必要な耕地面積は育成植物の最終的な大きさによって決定されるが、種子から育成の過程においてはそれ程までに広い面積を必要とはしていない。そこで考えられた手法がスペーシングの考え方であるが効果的に且つ安価に2次元方向(縦横の広がり)のスペーシングを実現できる装置及び方法は未だ提案されていない。本発明は安価で且つ効果的な2次元方向(縦横の広がり)のスペーシングを実現できる装置及び方法を提供することである。
【0014】
そこで、本発明の水耕栽培装置は、育成する植物を播種して定植した複数の播種ユニットを水耕栽培槽で育成し、この水耕栽培槽の中央部に前記播種ユニット供給エリアを設けるとともに、外周部に収穫エリアを設けた植物の水耕栽培装置であって、前記播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアまで間、前記播種ユニットを案内する案内手段と、この案内手段で支持した前記播種ユニットを一定方向に回動させる回転駆動手段と、この回転駆動手段による前記播種ユニットの回転動作と連動して播種ユニットを漸次外周方向に送り出す送り出し機構とを備え、前記播種ユニット供給エリアから供給させた播種ユニットは、前記回転駆動手段によって一方向に回転しながら前記送り出し機構によって前記播種ユニット供給エリアから収穫エリアへと移動し、育成した植物が前記収穫エリアにおいて収穫されることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の水耕栽培装置は、請求項1記載の水耕栽培装置において、前記送り出し機構を前記播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアに至るまでの間を連続した渦巻状を成す一対の渦巻状搬送レールで構成するとともに、この渦巻状搬送レールに案内した前記播種ユニットを前記回転駆動手段によって回転させ、該播種ユニットを前記渦巻状搬送レールに沿わせて播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアへと連続的に移送させたことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の水耕栽培装置は、請求項1記載の水耕栽培装置において、前記播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアまで播種ユニットを直線的に案内する一対の搬送レールを前記水耕栽培槽の半径方向に配置し、この前記搬送レールを前記回転駆動手段により回動させるとともに、前記送り出し機構として前記搬送レールによって回転搬送される前記播種ユニットの回動軌跡上に位置して該播種ユニットと当接する複数の送り出しバーで構成し、この各送り出しバーを前記播種ユニットの回転方向に対して交叉するように傾斜させて配置し、前記搬送レールで支持した播種ユニットを前記送り出しバーに当接させることによって、前記搬送レールで支持した前記播種ユニットを播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアへと断続的に移送させたことを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の水耕栽培装置は、請求項3記載の水耕栽培装置において、前記搬送レールの両側に一対のフロート板を配置し、前記搬送レールを前記水耕栽培槽に浮動的に配置したことを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明の水耕栽培装置は、請求項1〜4の何れか1項に記載の水耕栽培装置において、複数台水の耕栽培装置を、夫々の収穫エリアが近傍に位置するように配置して構成したことを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の水耕栽培方法は、記請求項1〜5の何れか1項の水耕栽培装置を用いた水耕栽培方法であって、育成する植物を播種して定植した複数の播種ユニットを水耕栽培槽で育成し、この水耕栽培槽の中央部に前記播種ユニットの供給エリアを設けるとともに、外周部に収穫エリアを設け、前記播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアまで間、前記播種ユニットを回転移送しながら送り出し機構によって、漸次外周方向に移動させて、育成した植物が前記収穫エリアにおいて収穫されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上のような水耕栽培の構成により、比較的に小さな耕地面積であっても高い収穫率を得ることができるものである。したがって、この水耕栽培装置を複数台集約して配置することにより、大規模水耕栽培施設を構築することも容易である。
【0021】
さらに、本発明は、以上のような構成により、育成のスタート点は水耕栽培装置の中心部であり、収穫地点はその外周部の所定地点であるために、効率的な育成・収穫作業が実現可能なものである。
【0022】
さらに、本発明は、以上のような構成により、植物が螺旋状を移動しながら育成されることにより、日当たりが東西南北に影響されずに全ての育成植物に均等になる効果がある。
【0023】
さらに、本発明は、以上のような構成により、比較的少ない敷地面積で収穫量の大きな農場を達成することができ、ハウス全体の容積を小さくすることが可能で空調に要するエネルギーの消費を効率的に節約することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1を示す水耕栽培装置の発明思想を説明する概念図である。
【図2】図1に示した水耕栽培装置の断面構成の概念図である。
【図3】(A)(B)は播種ユニットの詳細と、その支持構成図である。
【図4】本発明の実施例2を示す水耕栽培装置の発明思想を説明する概念図である。
【図5】送り出し機構を模式的に表した説明図である。
【図6】搬送レールの断面図である。
【図7】搬送レールの一部を切り欠いた斜視図である。
【図8】送り出し機構の回動軌跡を示す説明図である。
【図9】送り出し機構を示す構成図である。
【図10】送り出し機構の変形例を示す構成図である。
【図11】(A)(B)は本発明の水耕栽培装置をハウス内に設置した場合の上面図及び側面図である。
【図12】本発明の水耕栽培装置を複数台設けた植物育成プラントの配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の実施例1について説明する。なお、本明細書において上下方向は図2に示した方向で表現する。従って、製品に適用する場合には天地が逆に配置されたり、左右配置であったり、前後配置となることは設計的事項であり、本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例1】
【0026】
本発明の水耕栽培装置及び水耕栽培方法におけるスペーシングの概念を図1及び図2を用いて説明する。図1及び図2は、寸法や数については実際の製品とは大きな相違があるが、本願発明の概念的な技術思想を理解するにはより的確である。本発明のスペーシングの概念は、円の中心から渦巻状に巻かれた渦巻きの一周分の距離は半径の外側に行くほど長くなることを前提としているものである。
【0027】
図1及び図2に示す本発明の水耕栽培装置100の概念図は、円形の水耕栽培槽110内には水耕栽培用の養液Wが満たされて循環されており、本実施例1においては、前記播種ユニット供給エリア140から収穫エリア150まで間、前記播種ユニット10を支持する支持し、該播種ユニット10を漸次外周方向に案内する連続した渦巻状搬送レール120が配置されている。すなわち、本実施例では播種ユニット10の支持手段と案内手段を渦巻状搬送レール120で兼用した構成である。さらに水耕栽培槽110内には、中心から放射状の延びる回転駆動手段として複数本の回転桿130,130・・・が設けられている。ここにおいて、複数本の隣り合う回転桿130,130・・・と連続した渦巻状搬送レール120との交点の距離を見れば、渦巻状の外側に行くほど距離が長い(広がっている)ことが容易に理解される。さらに渦巻状搬送レール120の半径方向(放射方向)のピッチを漸次大きくしていけば、縦方向(半径方向)及び横方向(円弧方向)の距離を大きくすることができる。これにより植物Aが生育するに従って必要なスペースを確保して栽培が可能となる。
【0028】
この水耕栽培装置100の外周形状は、図示したように円形である必要はなく、本水耕栽培装置100を設置する地形に応じて柔軟に選択することが可能である。例えば三角形であっても、その内部に設けられた渦巻状搬送レールを外周形状に沿った形状に配置することで実現が可能である。従って、6角形や8角形、或いは楕円形状であっても問題はない。但し、以下の実施例においては、外周形状は円形に限定して説明する。
【0029】
まず、本発明の水耕栽培装置100の、栽培の基本となる播種ユニット10から説明する。図3の播種ユニット10は、シリンダー状本体11に円形のフランジ12が形成されたものであり、そのシリンダー本体11内に多孔質のウレタン樹脂13が充填挿入されており、その多孔質ウレタン樹脂13内に育成植物の種子14が植え込まれている。播種された播種ユニット10は、適度な温度と水量の制御により発芽作業が行われる。この播種作業から発芽作用までは本発明とは直接的には関係はないのでこれ以上の説明はしない。
【0030】
発芽後の播種ユニット10は、1日分の収穫量の数だけが、図1に示す水耕栽培装置100の中心部に配置された播種ユニット供給エリア140に供給され、その播種ユニット供給エリア140から、連続した渦巻状搬送レール120に対して一つずつ投入供給される。渦巻状搬送レール120は、所定距離だけ離した一対のレール120,120から成っている。その一対のレール120,120間の所定距離は、播種ユニット10のシリンダー状本体11の直径よりも僅かに大きな距離であり、それにより当該一対のレール120,120間を播種ユニット10が自由に移動可能にされている。播種ユニット10は、円形フランジ12によって一対のレール120,120上に支持可能に構成されている。播種ユニット10では、天地の向きが重力に対してどうなっても重力屈性と呼ばれる発芽の際の重力反応により芽は上に出てくるので問題はないが、播種ユニット10を支持した際に、天地の向きを所定方向となるようにするために円形フランジ12は中央部から何れかの方向にずらして配置されている。勿論、何れかの側を少し重くしておくことも考えられる。
【0031】
図3(A)に示すように、播種ユニット供給エリア110から連続した渦巻状搬送レール120に対して一つずつ投入供給された播種ユニット10,10・・・は、一対の渦巻状搬送レール120,120間に円形フランジ12によって支持され、下方は円形水耕栽培槽110内の養液W内に浸漬されて成長を続ける。この渦巻状搬送レール120の下方には、一対の回転桿130,130が一方向に回転可能に配置されている。この回転桿130の回転方向は、渦巻状搬送レール120の配置方向により決定されるものであり、例えば図1の方向で渦巻状搬送レール120が配置されている場合には反時計周りとなる。
【0032】
図3(A)及び(B)においては、渦巻状搬送レール120及び回転桿130共に一対とする構成で図示されているが、回転桿130は1本で構成することも可能である。
【0033】
図3(A)及び(B)に示すとおり、一対の渦巻状搬送レール120,120内に支持された播種ユニット10,10・・・は、一対の回転桿130,130がゆっくりと回動することにより、連続した渦巻状搬送レール120,120内を外周部に向かって押し進められることになり、播種ユニット10,10の半径方向(放射方向)の間隔と、円周方向(横方向)の間隔とが漸次大きくなっていく。このように、育成中の植物Aは、回転桿130の回転により漸次外側に移動させられ、終点の収穫エリア150において収穫される。
【実施例2】
【0034】
図4〜図11は本発明の実施例2を示しており、前記実施例1と共通する部分には共通する符号を付し、重複する部分の説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0035】
前記実施例1においては、播種ユニット10の送り出し機構として連続した渦巻状搬送レール120によって構成し、この渦巻状搬送レール120で播種ユニット10を案内して播種ユニット10を連続的に終点の収穫エリア150へと送り出した例を示したが、本実施例2においては、後述する送り出し機構によって播種ユニット10を断続的に送り出す。すなわち、本実施例2では、播種ユニット10は、播種ユニット供給エリア140から前記収穫エリア150まで半径方向に延びる一対の搬送レール300によって案内するように構成している。この一対の搬送レール300は、図4の概念図に示すように、多数の搬送レール300群が水耕栽培装置100の中心(播種ユニット供給エリア140)から放射状に延びて収穫エリア150へと指向するように配置されている。また、前記左右一対の搬送レール300はそれぞれフロート板301に固定され、この各フロート板301と前記左右一対の搬送レール300とを交互に配置することによって、このフロート板301によって搬送レール300が水耕栽培槽110内に貯めた養液Wに浮いて配置されることになる。
【0036】
前記搬送レール300を支える前記フロート板301は、例えば、発泡スチロールなど成形加工が容易で浮力を有する素材によって形成されるとともに、各フロート板301は、収穫エリア150に向かうに従って次第に幅広となる扇型に成形されている。また、搬送レール300は図6、図7に示すように、下部に前記フロート板301の両端を嵌合する溝部302を有し、この溝部302の両端にフロート板301に食い込ませるフランジ部303を形成するとともに、搬送レール300は上部に播種ユニット10のシリンダー状本体311をスライド自在に案内するコ字形の案内溝305を形成し、この案内溝305の先端部にシリンダー状本体311の抜け出し防止用のフランジ部306を形成している。
【0037】
前記シリンダー状本体311は全体として上下を開口した円筒部312と、その円筒部312の上面から水平方向に突出した正方形状のスライド案内板313とからなり、そのスライド案内板313の両端縁にそれぞれ倒L型のレール314を形成し、このレール314を前記案内溝305に嵌合させている。これにより、シリンダー状本体311を搬送レール300に沿わせてスライドさせるとともに、案内溝305に形成した抜け出し防止用のフランジ部306によって、シリンダー状本体311と、その両側に配した左右一対の搬送レール300及びフロート板301とを連結することによって、左右のフロート板301が外側に離れることなく一体化する。すなわち、フロート板301はシリンダー状本体311を介してシリンダー状本体311の両側に配置され、そのフロート板301間をスライドすることから、左右一対の搬送レール300間に配置される各フロート板301を相互に固定して各フロート板301の間隔を保持した場合、シリンダー状本体31の移送路を遮ることになる。そこで、シリンダー状本体311に形成するレール314を左右のフロート板301に固定した搬送レール300の案内溝305に嵌合させることによって、シリンダー状本体311の移送路を遮ることなく、各フロート板301の間隔を一定の間隔で保持するとともに、シリンダー状本体31(播種ユニット10)が搬送レール300に沿って自由にスライドして移動可能となる。なお、図5、図6において符号316は前記シリンダー状本体311の円筒部312に形成した通水用の開口部である。
【0038】
また、前記各搬送レール300の基部はそれぞれ円盤状の連結盤321に固定され、この連結盤321によって各搬送レール300を一体化している。また、本実施例では回転駆動手段として出没自在な回動レバー(図示しない)を設け、この回動レバーを搬送レール300の中央部より外側に係合させ、搬送レール300に回動レバーを引っ掛けた状態で搬送レール300を水平方向に回転させるように押し出すことによって、連結盤321を介して一体化した各搬送レール300とフロート板301及び搬送レール300間に配置された播種ユニット10を一斉に回転する。すなわち、前記回動レバーは、該回動レバーと係合する一部の搬送レール300を回転させることによって、連結盤321を介して一体化した各搬送レール300,フロート板301及び搬送レール300で案内する播種ユニット10の全てを全体的に回転させることができる。また、回動レバーは、この回動レバーと係合する搬送レール300を連続的に回転駆動するのではなく、所定の角度だけ回転させた後、搬送レール300との係合を解除して初期位置に復帰させ、再び別の搬送レール300と係合させ、その搬送レール300を所定角度、押し出して回動させる動作を繰り返すことによって搬送レール300によって案内されるシリンダー状本体31(播種ユニット10)を一方向に回転搬送するようにしている。また、各搬送レール300は、その一端を連結盤321に固定して片持ち状に支持されているため、各搬送レール300の先端側が自由端となり、搬送レール300自体が撓む虞がある。しかし、本実施例では等間隔毎に配置した複数のフロート板301の間に搬送レール300を配置することによって、そのフロート板301の浮力によって各搬送レール300を支持することにより、搬送レール30の撓みを抑えて安定状態に保つことができる。
【0039】
次に搬送レール300間に配置された前記シリンダー状本体311(播種ユニット10)の送り出し機構について説明する。図8に示すように、円形水耕栽培槽110内には、搬送レール300によってスライド自在に案内される播種ユニット10を外側、すなわち、収穫エリア150方向に送り出す送り出しエリアBが配置されている。なお、図8においては、送り出しエリアBは1箇所設けた場合を例として本実施例の概略を説明するが、移送エリアBを等間隔毎に複数箇所設けてもよく、送り出しエリアBの個数は問わない。送り出しエリアBは、搬送レール300間に配置したシリンダー状本体311の回動軌跡C上に配置した複数の送り出しバー350からなる。この各送り出しバー350は図5に示すように、搬送レール300で回転搬送されるシリンダー状本体311の進行方向Xに対して斜め上方に傾斜しており、搬送レール300によって回転搬送するシリンダー状本体311と各送り出しバー350とが当接し、送り出しバー350の傾斜に沿ってシリンダー状本体311が断続的に送り出される。
【0040】
すなわち、移送エリアBに到達するまではシリンダー状本体311は同心円状の軌跡を描いて回転搬送され、送り出しエリアBに到達したシリンダー状本体311は送り出しバー350の傾斜に沿って送り出しバー350による段差分、外側に押し出され、送り出しエリアBを通過したシリンダー状本体311は再び同心円状の軌跡を描いて回転搬送され、次に送り出しエリアBに到達することによって送り出しバー350とシリンダー状本体311との当接によって、再度、送り出しバー350による段差分、外側に押し出される。このような移送工程を繰り返して最終的に終点の収穫エリア150へと搬送し、この収穫エリア150において収穫される。つまり、前記実施例1では、シリンダー状本体11を渦巻状搬送レール120,120に沿わせて回転桿130によって押し出すことによって収穫エリア150に向かって渦巻状の回動軌跡を描いて収穫エリア150へと搬送させているのに対し、本実施例2では、送り出しバー350を配置した送り出しエリアBにおいてシリンダー状本体311を各送り出しバー350によって断続的に送り出し、最終的に終点となる収穫エリア150へと搬送する点において実施例1と異なる。
【0041】
このように、本実施例では、搬送レール300によって回転搬送するシリンダー状本体311と各送り出しバー350とを当接させてシリンダー状本体311を円形水耕栽培槽110の中心部(収穫エリア150)から円形水耕栽培槽110の外側(収穫エリア150)へと断続的に送り出しているが、そのシリンダー状本体311と各送り出しバー350とを当接させるタイミングは各送り出しバー350の配置次第で変更可能である。すなわち、図9に示すように、各送り出しバー350群をシリンダー状本体311から放射状に配置し、搬送レール300に配置させた複数のシリンダー状本体311と各送り出しバー350との当接ポイントfを結ぶ仮想線Yを円形水耕栽培槽110の中心線と一致するように直線状に並べた場合、各シリンダー状本体311と各送り出しバー350とが一斉に各送り出しバー350と当接することになる。この場合、各シリンダー状本体311は、各送り出しバー350によって同時に送り出されるが、図9に示すように、各送り出しバー350とこれを一体化する基台136に固定する場合、送り出しバー350と基台351とをコンパクトに纏めて配置できる利点を有する。一方、円形水耕栽培槽110を大型化して搬送レール300で搬送するシリンダー状本体31(播種ユニット10)の量が増えると、このシリンダー状本体31(播種ユニット10)と各送り出しバー350とを一斉に当接させる構造においては、シリンダー状本体31(播種ユニット10)と各送り出しバー350との当接時において、シリンダー状本体31(播種ユニット10)が受ける反力が搬送レール300へと直接的に伝わり、搬送レール300に外側に向かうモーメントが作用する。この場合、図10に示すように、シリンダー状本体311と各送り出しバー350との当接ポイントfをずらして当接ポイントfを結ぶ仮想線Yを傾斜させるように各送り出しバー350を配置すれば、シリンダー状本体31(播種ユニット10)が受ける反力、ひいては、搬送レール300が外側へと向かうモーメントも分散でき、結果的に搬送レール300を駆動する回動レバーに加わる負荷も分散させることができる利点を有しており、これらシリンダー状本体311と各送り出しバー350との当接ポイントfを決める各送り出しバー350の配置は、収穫量や施設の規模などに応じてレイアウト自在であり、さらに、図9及び図10に示すように、各送り出しバー350を纏めることなく、それぞれ分離して配置してもよく、要は、搬送レール300によって回転搬送するシリンダー状本体311の回動軌跡上に送り出しバー350を配置すればよい。また、送り出しバー350はシリンダー状本体311を挟み込むように、間隔をおいて一対の送り出しバー350を配置するようにしてもよい(図10において上部に部分的に示す)。
【0042】
以上のように、本実施例では、搬送レール300によって回転搬送するシリンダー状本体311と各送り出しバー350とを当接させてシリンダー状本体311を円形水耕栽培槽110の中心部(収穫エリア150)から円形水耕栽培槽110の外側(収穫エリア150)へと断続的に送り出す構成としたことにより、実施例1のような渦巻状搬送レール120,120のような大型な機構を用いることなく、シリンダー状本体311の送り出し機構をコンパクト化できるとともに、送り出し機構を簡略化でき、送り出し機構としての送り出しバー350の成形加工も容易となる。
【0043】
次に、図11(A)及び(B)を参照して、本発明の実施例1及び実施例2における水耕栽培装置100をハウス内に設置した場合についての構成を説明する。一般的な本発明の水耕栽培装置100の水槽外径は20mとし、その外周には外周レール160が配置され、その外側には外周通路160が環状に配置されている。外周通路160の更に外側には機械設置スペース180を配置することが望ましい。そして、この水耕栽培装置100全体が、ハウス190により覆われている。その際の外径は、27m程度となる。
【0044】
このようなハウス190内に本発明の水耕栽培装置100を設けることにより、所定量の収穫をするハウスとして容積を小さくすることが可能である。本実施例で説明した水耕栽培装置100を設置した設備の施設面積は約570m2であるが、通常のハウスに比較して収穫株数は約1.5倍で収穫重量は約2倍の収穫量を確保することが可能となる。また、結果的にハウス内での温度等の育成環境の調節に要するエネルギー消費も効率的にできるものである。
【0045】
図12は、本発明の水耕栽培装置100を複数台(6台)設けた植物育成プラントの配置図である。本発明の水耕栽培装置100は、図示のとおりに、6台の水耕栽培装置100が略菱形の収穫作業スペース210を挟んで配置されている。その際に、各水耕栽培装置100の収穫エリア150は隣接させて配置するのが収穫作業の面から望ましい。収穫作業スペース210には、収穫用のトラック200が進入できるようなスペースを確保するのが望ましい。
【0046】
以上、本発明の各実施例について詳述したが、本発明は前記各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、播種ユニット10を回転搬送するための回転駆動手段も前記実施例1、実施例2の構造に限らず、要は播種ユニット10を一方向に回転させる構造であればよい。
【符号の説明】
【0047】
A 育成植物
10 播種ユニット
100 水耕栽培装置
110 水耕栽培槽
120 渦巻状搬送レール(送り出し機構)
130 回転桿(回転駆動手段)
140 播種ユニット供給エリア
150 収穫エリア
300 搬送レール
301 フロート板
350 送り出しバー(送り出し機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
育成する植物を播種して定植した複数の播種ユニットを水耕栽培槽で育成し、この水耕栽培槽の中央部に前記播種ユニット供給エリアを設けるとともに、外周部に収穫エリアを設けた植物の水耕栽培装置であって、前記播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアまで間、前記播種ユニットを案内する案内手段と、この案内手段で支持した前記播種ユニットを一定方向に回動させる回転駆動手段と、この回転駆動手段による前記播種ユニットの回転動作と連動して播種ユニットを漸次外周方向に送り出す送り出し機構とを備え、前記播種ユニット供給エリアから供給させた播種ユニットは、前記回転駆動手段によって一方向に回転しながら前記送り出し機構によって前記播種ユニット供給エリアから収穫エリアへと移動し、育成した植物が前記収穫エリアにおいて収穫されることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
前記送り出し機構を前記播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアに至るまでの間を連続した渦巻状を成す一対の渦巻状搬送レールで構成するとともに、
この渦巻状搬送レールに案内した前記播種ユニットを前記回転駆動手段によって回転させ、該播種ユニットを前記渦巻状搬送レールに沿わせて播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアへと連続的に移送させたことを特徴とする請求項1記載の水耕栽培装置。
【請求項3】
前記播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアまで播種ユニットを直線的に案内する一対の搬送レールを前記水耕栽培槽の半径方向に配置し、この前記搬送レールを前記回転駆動手段により回動させるとともに、前記送り出し機構として前記搬送レールによって回転搬送される前記播種ユニットの回動軌跡上に位置して該播種ユニットと当接する複数の送り出しバーで構成し、この各送り出しバーを前記播種ユニットの回転方向に対して交叉するように傾斜させて配置し、前記搬送レールで支持した播種ユニットを前記送り出しバーに当接させることによって、前記搬送レールで支持した前記播種ユニットを播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアへと断続的に移送させたことを特徴とする請求項1記載の水耕栽培装置。
【請求項4】
前記搬送レールの両側に一対のフロート板を配置し、前記搬送レールを前記水耕栽培槽に浮動的に配置したことを特徴とする請求項3記載の水耕栽培装置。
【請求項5】
複数台水の耕栽培装置を、夫々の収穫エリアが近傍に位置するように配置して構成したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の水耕栽培装置。
【請求項6】
前記請求項1〜5の何れか1項の水耕栽培装置を用いた水耕栽培方法であって、育成する植物を播種して定植した複数の播種ユニットを水耕栽培槽で育成し、この水耕栽培槽の中央部に前記播種ユニットの供給エリアを設けるとともに、外周部に収穫エリアを設け、前記播種ユニット供給エリアから前記収穫エリアまで間、前記播種ユニットを回転移送しながら送り出し機構によって、漸次外周方向に移動させて、育成した植物が前記収穫エリアにおいて収穫されることを特徴とする水耕栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−24076(P2012−24076A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252186(P2010−252186)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(510174163)
【出願人】(510174174)
【Fターム(参考)】