説明

水耕栽培資材

【課題】優れた保水性、吸水性および形態保持性を有し、焼却処分などが可能で廃棄性に優れた水耕栽培資材を提供する。
【解決手段】単繊維繊度が0.5〜30デシテックスの範囲内の合成樹脂繊維からなるマトリックス繊維40〜90重量%と、前記合成樹脂繊維より低い融点を有する低融点熱可塑性樹脂繊維からなる結合繊維10〜60重量%とを含有し、見かけ密度が0.01〜0.12g/cmの範囲内にある水耕栽培資材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた保水性、吸水性および形態保持性を有し、更に、焼却処分などが可能で廃棄性に優れた水耕栽培資材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、野菜や花などの栽培については、土壌に苗を植え込み栽培する土壌栽培が一般的であった。
【0003】
しかしながら、農作物や花などの土壌栽培では、土壌の具合や、気温、雨量などの気候条件によりその生産量が大きく左右され、これらの栽培については高度な専門性と経験が要求される。
【0004】
このような従来の土壌栽培方法に替わり、近年では、安定的に農作物が生産でき、かつ、高度な専門性が要求されない水耕栽培が注目されている。この水耕栽培は、培土を用いず、生育に必要な養分を含ませた水溶液を、繊維からなるマットやブロックに供給し保水させ、植物を育てる栽培法であり、一般的に屋内で効率的に農作物を栽培できることから、土壌の具合や、雨量、気温などの気候条件に左右されず、農作物の栽培を安定的に実施可能としたものである。
【0005】
この水耕栽培に使用される上述の繊維からなるマットやブロックは、その保水性や吸水性により植物の生長を大きく左右するため、従来からそれらの要求特性を満たすための検討が多数なされてきた。
【0006】
すなわち、この種のマットやブロックの原料に関する従来技術としては、保水性や通気性、あるいは耐久性の点から、ロックウールなどの人造鉱物繊維からなるもの(例えば、特許文献1参照)が用いられているが、人造鉱物繊維を用いた資材は、不燃物であるため焼却処分が不可能であると共に、見かけ密度が小さく嵩が高いばかりか、投棄の後に繊維が飛散し公害の原因となるため、埋め立て処分にも困難であるという問題点があった。また、この従来技術においては、繊維を一定方向に配列させることにより植物の生長を促進し、かつ、密度範囲を規定することにより優れた保水性と吸水性が得られるとされているが、このような繊維資材の吸水や保水は、繊維間の空隙に水が流れ込み、毛細管作用によって行われるものであることから、個々の空隙の大きさにより、その吸水性や保水性が大きく左右されることは言うまでもない。繊維資材の個々の空隙の大きさは、使用する繊維の太さ、すなわち単繊維繊度により左右されるため、例えば適切な単繊維繊度の繊維を用いなかった場合は、必要な保水性と吸水性が得られない。また、水耕栽培資材として用いられるブロックは、保水時に水の重さによって形状が変形する場合があるため、適切な単繊維繊度の繊維を用いなかった場合には、繊維資材が変形するなどの問題があった。
【0007】
一方、ロックウールなどを用いた繊維資材の廃棄困難性を解決するために、近年では、ポリエステルなどの合成樹脂繊維を低融点のバインダーで結合させた繊維材料からなるもの(例えば、特許文献2参照)が提案されており、ポリエステルなどの合成樹脂繊維を用いた繊維材料は、使用の後に焼却処分することができるため、従来のロックウール資材にくらべ環境に優しいという特徴を有している。しかしながら、この従来技術においては、吸水性や保水性を得るために必要な繊維資材の密度や単繊維繊度については全く言及されていないことから、不適切な単繊維繊度の繊維を用いるか、あるいは繊維資材の密度が不適切であった場合には、必要な吸水性、保水性および形態保持性が得られないという問題があった。
【特許文献1】特開2004−135593号公報(請求項1、請求項2、第0010段落、第0012段落)
【特許文献2】特開2004−33228号公報(請求項1、請求項2、第0014段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、優れた保水性、吸水性および形態保持性を有し、更に、焼却処分などが可能で廃棄性に優れた水耕栽培資材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明によれば、単繊維繊度が0.5〜30デシテックスの範囲内の合成樹脂繊維からなるマトリックス繊維40〜90重量%と、前記合成樹脂繊維より低い融点を有する低融点熱可塑性樹脂繊維からなる結合繊維10〜60重量%とを含有し、見かけ密度が0.01〜0.12g/cmの範囲内にある水耕栽培資材が提供される。
【0011】
なお、本発明の水耕栽培資材においては、
前記マトリックス繊維と前記結合繊維との融点差が30℃以上であること、
前記マトリックス繊維を構成する合成樹脂繊維がポリエステル系繊維であること、
生分解性繊維を全繊維に対して40重量%以上含むこと、
前記生分解性繊維がポリ乳酸繊維であること、
前記マトリックス繊維が融点160℃〜180℃の範囲内のポリ乳酸繊維であり、前記結合繊維が融点50〜150℃範囲内の低融点生分解性繊維であること、
前記結合繊維を構成する低融点生分解性繊維が、低融点ポリ乳酸繊維、ポリカプロラクトン繊維、ポリブチレンサクシネート繊維、ポリブチレンサクシネートアジペート繊維、ポリエチレンサクシネート繊維、ポリエチレンサクシネートカーボネート繊維、ポリブチレンアジペートテレフタレート繊維から選ばれた少なくとも1種の繊維であること、
前記低融点生分解繊維の繊維全体に対する含有率が10〜40重量%の範囲内であること、
前記結合繊維を構成する低融点生分解性繊維が、融点160〜180℃のポリ乳酸樹脂からなる芯部と、融点が50℃〜150℃の範囲内の低融点生分解性樹脂からなる鞘部とを有する芯鞘繊維であること、
前記芯鞘繊維の鞘部が、低融点ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリエチレンサクシネートカーボネート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなること、
前記芯鞘繊維の繊維全体に対する含有率が10〜60重量%の範囲内であること、
水耕栽培用資材を構成する繊維が略一方向に配行していること、
水耕栽培用資材の形状が直方体または立方体であること、および
保水量が0.2g/cm〜0.9g/cmの範囲内にあること
が、いずれも好ましい条件であり、これらの条件を満たすことによって、さらに優れた効果の取得を期待することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下に説明するとおり、優れた保水性、吸水性および形態保持性を有し、更に、焼却処分などが可能で廃棄性に優れた水耕栽培資材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0014】
本発明は、単繊維繊度が0.5〜30デシテックスの範囲内の合成樹脂繊維からなるマトリックス繊維40〜90重量%と、前記合成樹脂繊維より低い融点を有する低融点熱可塑性樹脂繊維からなる結合繊維10〜60重量%とを含有し、見かけ密度が0.01〜0.12g/cmの範囲内に調整した繊維資材を、水耕栽培資材として使用することに特徴を有し、これらの条件を全て満足することにより、優れた保水性、吸水性および形態保持性を有し、かつ焼却処分などが可能で廃棄性に優れた水耕栽培資材を効率的に提供することができる。
【0015】
本発明の水耕栽培資材を構成するマトリックス繊維材料となる合成樹脂繊維としては、好ましくは焼却処分が容易に可能なポリエステル系繊維が用いられる。ポリエステル系繊維の中でもさらに好ましくは、汎用性が高く、耐久性に優れているポリエチレンテレフタレート繊維を用いることもできるし、特に好ましくは、近年植物由来原料でかつ、生分解性を有することで注目されているポリ乳酸樹脂を用いた繊維を活用することもできる。
【0016】
本発明の水耕栽培資材においては、全繊維の全重量に対して40重量%以上の生分解性繊維を含むことが好ましい。本発明の水耕栽培資材は、マトリックス繊維として合成樹脂繊維を用いることにより、焼却処分により簡易的に廃棄処分を行うことができるという特徴を有するが、生分解性を有する繊維を含有させることにより、焼却処分に加え埋め立て処分にも有効な水耕栽培資材を得ることができる。ここで、生分解性繊維の含有量が40重量%を下回ると、土中に埋設処分された際に構成材料の大半が分解されず長期間残存することになるため好ましくない。なお、本発明の生分解性繊維は水耕栽培資材の骨材の役割を果たすマトリックス繊維と、前記マトリックス繊維を結合するための結合繊維の双方に用いることが可能であり、マトリックス繊維として生分解性繊維を用いる場合には、ポリエステル系の生分解性繊維であるポリ乳酸繊維の使用が好ましい。
【0017】
上述のポリ乳酸樹脂の使用は、生分解性を有することによる環境メリットに加え、非石油系原料、すなわちトウモロコシなどの植物を原料とするものであることにより、製造工程においても石油系の溶剤をほとんど使用しないために、水耕栽培資材の製造、使用、廃棄の段階を全体で考えたとき、環境への負荷を極めて少なくすることができるという利点を招くものである。また、ポリ乳酸樹脂は、一般的には生分解性プラスチックの中でも融点が160〜180℃℃程度と適度な耐熱性を有するとともに、成形性にも優れている点からも有利であるといえる。
【0018】
本発明で使用するポリ乳酸樹脂は、ポリ乳酸ホモポリマーの他、乳酸コポリマー、ブレンドポリマーを含むものである。乳酸系ポリマーの重量平均分子量は、一般に5〜50万である。また、ポリ乳酸樹脂におけるL−乳酸単位、D−乳酸単位の構成モル比L/Dは、100/0〜0/100のいずれであっても良いが、高い融点を得るにはL乳酸あるいはD乳酸いずれかの単位を75モル%以上、さらに高い融点を得るにはL乳酸あるいはD乳酸のいずれかの単位を90モル%以上含むことが好ましい。
【0019】
本発明の水耕栽培資材において、マトリックス繊維を構成する合成樹脂繊維の単繊維繊度は、0.5〜30デシテックスとする必要があり、この範囲に限定することにより、優れた吸水性、保水性および形態保持性を満足させることができる。合成樹脂繊維の単繊維繊度が30デシテックスを超えると、水耕栽培資材中の個々の空隙が大きくなるため、吸水性や保水性が低下し、結果的に植物の育成を低下させることになる。一方、単繊維繊度が0.5デシテックスを下回ると、水耕栽培資材を構成する繊維の剛性が低くなることから、形態保持性が低下し、水分を含んだ際に水耕栽培資材の形状が崩れやすくなるため好ましくない。
【0020】
本発明の水耕栽培資材は、上述の合成樹脂繊維を結合するために、結合材として低融点熱可塑性樹脂繊維(結合繊維)を含有させる必要がある。従来、結合材を付与する手法としては、低融点の熱可塑性樹脂を含むエマルジョンをスプレー法などにより繊維に付与し結合する手法が用いられてきたが、本発明では、低融点熱可塑性樹脂繊維と上述のマトリックス繊維を構成する合成樹脂繊維とを複合し、例えば熱風などを用いて低融点熱可塑性樹脂繊維を溶融させ、合成樹脂繊維同士を結合させることにより、効率的に水耕栽培資材を得ることができる。ここで、低融点熱可塑性樹脂繊維とは、低融点熱可塑性樹脂を含む繊維をも広義に意味するものである。
【0021】
なお、結合繊維を構成する低融点熱可塑性樹脂繊維は、水耕栽培資材の全重量に対して10〜60重量%の範囲で含有する必要がある。この範囲内で含有させることにより、優れた吸水性、保水性および形態保持性を満足させることができる。結合繊維としての低融点熱可塑性樹脂繊維の含有率が10重量%を下回ると、目的とする結合効果が得られず、水耕栽培資材の形態保持性が低下するため、水を含んだ際に形態が崩れることとなる。一方、低融点熱可塑性樹脂繊維の含有量が60重量%を超えると、水耕栽培資材中の空隙にバラツキが生じたり、或いは空隙を有しない部位が発生したりするため、吸水性や保水性が低下するおそれがある。
【0022】
また、前記マトリックス繊維を構成する合成樹脂繊維と、前記結合繊維を構成する低融点熱可塑性樹脂との融点差は30℃以上であることが好ましい。この融点差を30℃以上とすることにより、合成樹脂繊維と低融点熱可塑性樹脂を含む繊維を混合し、これらを溶融、成形し、一体化させるという簡易的な工程により、効率よく水耕栽培資材を得ることが可能となる。融点差を上記のように設けることで、溶融、成形時の温度管理を厳密にせずとも、資材中に繊維の形状を残し、均一な保水性、吸水性および形態保持性を有する水耕栽培資材を容易に得ることができる。水耕栽培資材が大型である場合には、溶融、成形時温度にばらつきが生じやすいので特に好ましい。合成樹脂繊維と低融点熱可塑性樹脂との融点差が30℃未満であった場合は、合成樹脂繊維と低融点熱可塑性樹脂繊維の双方が成形の際に溶融することから、資材中の空隙に片寄りを生じたり、吸水性、保水性および形態保持性が低下したりするので好ましくない。
【0023】
本発明の合成樹脂繊維からなるマトリックス繊維と、低融点生分解性繊維からなる結合繊維の好ましい組み合わせとしては、融点が160〜180℃の汎用的なポリ乳酸繊維と、融点が50〜150℃の範囲内の低融点生分解性繊維との組み合わせが好ましい。生分解性を有するポリ乳酸繊維と、同じく生分解性を有する低融点生分解性繊維との組み合わせにより、生分解性材料の含有率を向上させ、埋め立て処分にも有効な水耕栽培資材が得られる。また、上述の様にマトリックス繊維と結合繊維の間に融点差を設けることにより、保水性、吸水性、形態保持性などの性能が均一な水耕栽培資材を効率的に得ることができる。また、低融点生分解性樹脂の融点を50℃〜150℃の範囲内とすることにより、少ない熱量で均一な空隙を有しかつ形態保持性に優れた水耕栽培資材を効率的に成形することができる。低融点生分解性繊維の融点が50℃を下回ると、水耕栽培資材としての使用時に、例えば日光などの熱により低融点生分解性繊維が溶融し、形態が崩れるため好ましくない。一方、低融点生分解性繊維の融点が150℃を超えると、ポリ乳酸繊維との融点差が少なくなり、均一な空隙が得られないため好ましくない。
【0024】
上述の低融点生分解性繊維としては、好ましくは低融点ポリ乳酸繊維、ポリカプロラクトン繊維、ポリブチレンサクシネート繊維、ポリブチレンサクシネートアジペート繊維、ポリエチレンサクシネート繊維、ポリエチレンサクシネートカーボネート繊維、ポリブチレンアジペートテレフタレート繊維から選ばれた少なくとも1種の繊維が用いられる。上述の低融点生分解性繊維は、50〜150℃の融点を有する繊維であり、水耕栽培資材の製造工程において、少ない熱量で効率的に水耕栽培資材が得られると同時に、生分解性を有するため埋め立て処分にも有効な水耕栽培資材が得られるため好ましい。
【0025】
低融点生分解性繊維の含有率は、全重量に対して10〜40重量%の範囲内であることが特に好ましい。このような含有率に調整することにより、優れた保水性、吸水性および形態保持性の双方を得ることができる。低融点生分解性繊維の配合率が10重量%を下回ると、結合材としての効果が発揮されず、水耕栽培資材の形態保持性が低下するため好ましくない。一方、40重量%を超えると、実質的に繊維の形態を残したマトリックス繊維の含有率が少なくなり、均一な空隙が得られず吸水性や保水性が低下する傾向が招かれることになる。
【0026】
結合繊維としてのさらに好適な形態としては、芯鞘繊維、すなわち、融点が160〜180℃のポリ乳酸樹脂からなる芯部と、融点が50℃〜150℃の範囲内の低融点生分解性樹脂からなる鞘部とを有する芯鞘繊維が挙げられる。このような芯鞘繊維を水耕栽培資材に含有させることにより、熱融着成分を含みつつも、成形後の水耕栽培中に繊維の形態を残す部位が多くなり、均一な空隙を有することで優れた保水性と吸水性が得られ、かつ、形態保持性にも優れた水耕栽培資材が得られる。また、芯部を構成する材料と、鞘部を構成する材料の双方を、生分解性を有する材料とすることにより、水耕栽培資材の生分解性の向上に大きく寄与することができる。また、鞘部を構成する低融点生分解性樹脂の融点を50℃〜150℃の範囲内とすることにより、均一な空隙と優れた形態保持性を有する水耕栽培資材を効率的に成形することができる。低融点生分解性樹脂の融点が50℃を下回ると、水耕栽培資材としての使用時に、例えば日光などの熱により低融点生分解性樹脂が溶融し、形態が崩れるという不具合が招かれることがある。一方、低融点生分解性樹脂の融点が150℃を超えると、マトリックス繊維との融点差が少なくなり、均一な空隙が得られない傾向となる。
【0027】
上述の芯鞘繊維の鞘部を構成する生分解性樹脂として、好ましくは低融点ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリエチレンサクシネートカーボネート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂が用いられる。上述の低融点生分解性樹脂は、50〜150℃の融点を有する樹脂であり、水耕栽培資材の製造工程において、少ない熱量で効率的に水耕栽培資材が得られると同時に、生分解性を有するため埋め立て処分にも有効な水耕栽培資材が得られる点で好ましく使用される。
【0028】
上述の芯鞘繊維の含有率は、全重量に対して10〜60重量%の範囲内であることが好ましい。このような含有率に調整することにより、優れた保水性、吸水性および形態保持性を得ることができる。芯鞘繊維の配合率が10重量%を下回ると、結合材としての効果が発揮されず、水耕栽培資材の形態保持性が低下するため好ましくない。一方、60重量%を超えると、実質的に繊維の形態を残したマトリックス繊維の含有率が少なくなり、均一な空隙が得られず吸水性や保水性が低下する傾向が招かれることになる。
【0029】
本発明の水耕栽培資材は、その見かけ密度が0.01〜0.12g/cmの範囲内に調整されているものであることが好ましく、それにより一層優れた保水性、吸水性と形態保持性を満足することができる。見かけ密度が0.01g/cmを下回ると、水耕栽培資材内の空隙が大きくなり、吸水性、保水性が低下すると共に、形態保持性が低下する傾向が招かれる。一方、見かけ密度が0.12g/cmを超えると、水耕栽培資材内の空隙が小さくなって、吸水性が低下して水が空隙に進入しにくくなり、結果的に保水性が低下する傾向が招かれる。
【0030】
なお、本発明でいう見かけ密度は下記の方法により測定される値である。
【0031】
まず、水耕栽培資材を20℃、65%RHの標準状態で24hr放置後、高さ7.5cm×横7.5cm×奥行き7.5cmに切り出し、その重量を測定する。次に、水耕栽培資材の体積は、切り出した水耕栽培資材の高さ、横、奥行きのそれぞれ1辺の長さを定規にて測定し、下式により求める。
【0032】
水耕栽培資材の体積(cm)=高さ(cm)×横長さ(cm)×奥行き長さ(cm)
これらより水耕栽培資材の見かけ密度を下式により求める。
【0033】
見かけ密度[g/cm]=(水耕栽培資材の重量[g])/(水耕栽培資材の体積[cm])
また、本発明の水耕栽培資材は、その吸水性をさらに高くするために、構成する繊維が、略一方向に配行していることが好ましい。繊維が配列した水耕栽培資材を配行方向が垂直となるように配置させて用いることにより、毛細管作用を向上させ、より高く水分を揚水させることが可能となる。
【0034】
本発明の水耕栽培資材の形状は、シート状、平板状、容器状など、育成する農作物に応じて各種の形状に加工されるが、好ましくは、保水量が高く、かつ、周知の裁断機で効率的に裁断され製造することができる直方体あるいは立方体である。
【0035】
本発明の水耕栽培資材は、上述のようにその構成材料、形状などを工夫することにより、優れた保水性が得られるようにしたものであるが、各種の植物を効率的に栽培するために、その保水量は0.2g/cm〜0.9g/cmの範囲内であることが好ましい。保水量が0.2g/cmを下回ると、植物の生育を阻害するおそれがあり、0.9g/cmを超えると、場合によっては植物の根腐れなどを引き起こし、同様に生育を阻害するおそれがある。
【0036】
なお、本発明でいう保水量は下記の方法により測定される値である。
【0037】
まず、水耕栽培資材を20℃、65%RHの標準状態で24hr放置後、高さ7.5cm×横7.5cm×奥行き7.5cmに切り出し、その乾燥重量を測定する。次に、水耕栽培資材の体積は、切り出した水耕栽培資材の高さ、横、奥行きのそれぞれ1辺の長さを定規にて測定し、下式により求める。
【0038】
水耕栽培資材の体積(cm3)=高さ(cm)×横長さ(cm)×奥行き長さ(cm)
次に、20℃の蒸留水を容器入れ、前記寸法の水耕栽培資材の全てが前記蒸留水に浸かるように10分間浸積させる。次いで、水耕栽培資材を水中から取り出し、30cm角以上の面積を有するステンレススチール製の金属バットの上に10分間放置した後、秤量計により水耕栽培資材の含水重量を測定し、下式により保水量を求める。
【0039】
水耕栽培資材の保水量(g/cm)=〔含水重量(g)−乾燥重量(g)〕/水耕栽培資材の体積(cm
以上の構成からなる本発明の水耕栽培資材は、優れた吸水性、保水性および含水時の形態保持性を有しており、かつ、焼却処分などにより簡易的に廃棄できることから、トマトや花苗などの植物を育成するための水耕栽培資材として好適に用いられる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお実施例中の諸物性の測定方法は以下の方法を用いた。
【0041】
[水耕栽培資材の見かけ密度]
まず、水耕栽培資材を20℃、65%RHの標準状態で24hr放置後、高さ7.5cm×横7.5cm×奥行き7.5cmに切り出し、その重量を測定する。次に、水耕栽培資材の体積は、切り出した水耕栽培資材の高さ、横、奥行きのそれぞれ1辺の長さを定規にて測定し、下式により求める。
【0042】
水耕栽培資材の体積(cm)=高さ(cm)×横長さ(cm)×奥行き長さ(cm)
これらより水耕栽培資材の見かけ密度を下式により求める。
【0043】
見かけ密度[g/cm]=(水耕栽培資材の重量[g])/(水耕栽培資材の体積[cm])
[保水量]
まず、水耕栽培資材を20℃、65%RHの標準状態で24hr放置後、高さ7.5cm×横7.5cm×奥行き7.5cmに切り出し、その乾燥重量を測定する。次に、水耕栽培資材の体積は、切り出した水耕栽培資材の高さ、横、奥行きのそれぞれ1辺の長さを定規にて測定し、下式により求める。
【0044】
水耕栽培資材の体積(cm)=高さ(cm)×横長さ(cm)×奥行き長さ(cm)
次いで20℃の蒸留水を容器入れ、前記寸法の水耕栽培資材の全てが前記蒸留水に浸かるように10分間浸積させる。次いで、水耕栽培資材を水中から取り出し、30cm角以上の面積を有するステンレススチール製の金属バットの上に10分間放置した後、秤量計により水耕栽培資材の含水重量を測定し、下式により保水量を求める。
【0045】
水耕栽培資材の保水量(g/cm)=〔含水重量(g)−乾燥重量(g)〕/水耕栽培資材の体積(cm
[形態保持性]
まず、水耕栽培資材を20℃、65%RHの標準状態で24hr放置後、高さ7.5cm×横7.5cm×奥行き7.5cmに切り出す。次に、20℃の蒸留水を容器入れ、前記寸法の水耕栽培資材の全てが前記蒸留水に浸かるように10分間浸積させる。次いで、水耕栽培資材を水中から取り出し、30cm角以上の面積を有するステンレススチール製の金属バットの上に10分間放置した後、以下の基準で目視で評価した。
【0046】
○:初期の形状を維持している、
△:形状が若干崩れる、
×:初期の形状が維持できず原型をとどめていない。
【0047】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点255℃)を公知の方法で溶融紡糸し、繊維化することにより、捲縮付与後カットして単繊維繊度2.2デシテックス、平均繊維長51mmの汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維を得た。
【0048】
一方、鞘部にイソフタル酸を40モル%共重合した低融点ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点110℃)、芯部にポリエチレンテレフタレート樹脂(融点255℃)を、それぞれ50:50の重量比で配した芯鞘繊維を周知の方法で溶融紡糸して繊維化し、捲縮付与後カットすることにより、単繊維繊度4.4デシテックス、平均繊維長51mmの低融点ポリエチレンテレフタレート芯鞘短繊維を得た。
【0049】
前記汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維をマトリックス繊維とし、前記低融点ポリエチレンテレフタレート芯鞘短繊維を結合繊維として、それぞれ70:30の重量比でローラーカードを用いて混綿、開繊することにより、目付3150g/mのウェブを得た。このウェブを2枚のパンチングメタル(穴径5mm)の間に70mmのスペーサーと共に挟み、180℃加熱の熱風を前記パンチングメタルの穴を通過させ、10分間加熱成形を行い、次いで7.5cm角に裁断することにより、水耕栽培資材を得た。
【0050】
得られた水耕栽培資材の重量は17.49g/個、高さは7.3cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.043g/cmであった。
【0051】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表1に示した。この水耕栽培資材は保水量と形態保持性の双方に優れるものであった。
【0052】
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点255℃)を公知の方法で溶融紡糸、繊維化し、捲縮付与後カットすることにより、単繊維繊度7.7デシテックス、平均繊維長51mmの汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維を得た。
【0053】
この短繊維をマトリックス繊維として用いた以外は、実施例1と同一の方法にて水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は16.72g/個、高さは7.1cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.042g/cmであった。
【0054】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表1に示した。この水耕栽培資材は保水量と形態保持性の双方に優れるものであった。
【0055】
[実施例3]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点255℃)を公知の方法で溶融紡糸、繊維化し、捲縮付与後カットすることにより、単繊維繊度20デシテックス、平均繊維長51mmの汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維を得た。
【0056】
この短繊維をマトリックス繊維として用いた以外は、実施例1と同一の方法にて水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は17.98g/個、高さは7.6cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.042g/cmであった。
【0057】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表1に示した。この水耕栽培資材は保水量と形態保持性の双方に優れるものであった
[実施例4]
実施例3にて用いた汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維(単繊維繊度20デシテックス、平均繊維長51mm)をマトリックス繊維として用い、実施例1にて用いた低融点ポリエチレンテレフタレート芯鞘短繊維(単繊維繊度4.4デシテックス、平均繊維長51mm)を結合繊維として用い、それぞれ80:20の重量比でローラーカードを用いて混綿、開繊してウェブを得た。
【0058】
このウェブを実施例1と同一の方法で加熱成形を行い、次いで7.5cm角に裁断することにより、水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は17.50g/個、高さは7.5cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.041g/cmであった。
【0059】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表1に示した。この水耕栽培資材は保水量と形態保持性の双方に優れるものであった。
【0060】
[実施例5]
実施例3にて用いた汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維(単繊維繊度20デシテックス、平均繊維長51mm)をマトリックス繊維として用い、実施例1にて用いた低融点ポリエチレンテレフタレート芯鞘短繊維(単繊維繊度4.4デシテックス、平均繊維長51mm)を結合繊維として用い、それぞれ50:50の重量比でローラーカードを用いて混綿、開繊することにより、ウェブを得た。
【0061】
このウェブを実施例1と同一の方法で加熱成形を行い、次いで7.5cm角に裁断することにより、水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は17.11g/個、高さは7.1cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.043g/cmであった。
【0062】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表1に示した。この水耕栽培資材は保水量と形態保持性の双方に優れるものであった。
【0063】
[実施例6]
実施例3にて用いた汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維(単繊維繊度20デシテックス、平均繊維長51mm)をマトリックス繊維として用い、実施例1にて用いた低融点ポリエチレンテレフタレート芯鞘短繊維(単繊維繊度4.4デシテックス、平均繊維長51mm)を結合繊維として用い、それぞれ70:30の重量比でローラーカードを用いて混綿、開繊することにより、目付1302g/mのウェブを得た。
【0064】
このウェブを実施例1と同一の方法で加熱成形を行い、次いで7.5cm角に裁断することにより、水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は7.11g/個、高さは7.1cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.018g/cmであった。
【0065】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表1に示した。この水耕栽培資材は形態保持性にやや劣るが、保水性に優れるものであった。
【0066】
[実施例7]
実施例3にて用いた汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維(単繊維繊度20デシテックス、平均繊維長51mm)をマトリックス繊維として用い、実施例1にて用いた低融点ポリエチレンテレフタレート芯鞘短繊維(単繊維繊度4.4デシテックス、平均繊維長51mm)を結合繊維として用い、それぞれ70:30の重量比でローラーカードを用いて混綿、開繊することにより、目付7721g/mのウェブを得た。
【0067】
このウェブを実施例1と同一の方法で加熱成形を行い、次いで7.5cm角に裁断し、水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は46.11g/個、高さは7.8cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.105g/cmであった。
【0068】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表1に示した。この水耕栽培資材は保水性と形態保持性の双方に優れるものであった。
【0069】
[実施例8]
ポリ乳酸樹脂(融点168℃)を公知の方法で溶融紡糸、繊維化し、捲縮付与後カットすることにより、単繊維繊度6.6デシテックス、平均繊維長51mmの汎用ポリ乳酸短繊維を得た。
【0070】
一方、鞘部にポリL乳酸とポリD乳酸を共重合した低融点ポリ乳酸樹脂(融点134℃)、芯部にポリ乳酸樹脂(融点168℃)を、それぞれ50:50の重量比で配した芯鞘繊維を周知の方法で溶融紡糸、繊維化し、捲縮付与後カットすることにより、単繊維繊度4.4デシテックス、平均繊維長51mmの低融点ポリ乳酸芯鞘短繊維を得た。
【0071】
前記汎用ポリ乳酸短繊維をマトリックス繊維とし、前記低融点ポリ乳酸芯鞘短繊維を結合繊維として、それぞれ70:30の重量比でローラーカードを用いて混綿、開繊することにより、目付3030g/mのウェブを得た。
【0072】
このウェブを2枚のパンチングメタル(穴径5mm)の間に70mmのスペーサーと共に挟み、160℃加熱の熱風を前記パンチングメタルの穴を通過させ、10分間加熱成形を行い、次いで7.5cm角に裁断することにより、水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は16.92g/個、高さは7.2cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.042g/cmであった。
【0073】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表1に示した。この水耕栽培資材は保
水性と形態保持性の双方に優れるものであった。
【0074】
【表1】

【0075】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点255℃)を房部とし、ナイロン6樹脂(融点225℃)を芯部とし、周知の方法で複合溶融紡糸し、繊維化し、捲縮付与後カットすることにより、単繊維繊度1.8デシテックス、平均繊維長38mmの分割型複合短繊維を得た。
【0076】
この短繊維をマトリックス繊維として用い、実施例1にて用いた低融点ポリエチレンテレフタレート芯鞘短繊維(単繊維繊度4.4デシテックス、平均繊維長51mm)を結合繊維として用い、それぞれ70:30の重量比でローラーカードを用いて混綿、開繊し、かつ分割型複合短繊維を分割することにより、目付2912g/mのウェブを得た。
【0077】
このウェブに含まれる分割型複合繊維を電子顕微鏡を用いて観察したところ、その繊度は0.3デシテックスであった。
【0078】
このウェブを実施例1と同一の方法で加熱成形を行い、次いで7.5cm角に裁断することにより、水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は16.51g/個、高さは7.0cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.042g/cmであった。
【0079】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表2に示した。この水耕栽培資材は、マトリックス繊維の単繊維繊度が小さいため、形態保持性に劣るものであった。
【0080】
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点255℃)を公知の方法で溶融紡糸、繊維化し、捲縮付与後カットすることにより、単繊維繊度40デシテックス、平均繊維長51mmの汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維を得た。
【0081】
この短繊維をマトリックス繊維として用いた以外は、実施例1と同一の方法にて水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は16.45g/個、高さは7.8cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.037g/cmであった。
【0082】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表2に示した。この水耕栽培資材はマトリックス繊維の単繊維繊度が大きいため、保水量に劣るものであった。
【0083】
[比較例3]
実施例3にて用いた汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維(単繊維繊度20デシテックス、平均繊維長51mm)をマトリックス繊維として用い、実施例1にて用いた低融点ポリエチレンテレフタレート芯鞘短繊維(単繊維繊度4.4デシテックス、平均繊維長51mm)を結合繊維として用い、それぞれ95:5の重量比でローラーカードを用いて混綿、開繊することにより、ウェブを得た。
【0084】
このウェブを実施例1と同一の方法で加熱成形を行い、次いで7.5cm角に裁断することにより、水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は16.20g/個、高さは8.4cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.034g/cmであった。
【0085】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表2に示した。この水耕栽培資材は、マトリックス繊維の含有率が多すぎるため、形態保持性に劣るものであった。
【0086】
[比較例4]
実施例3にて用いた汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維(単繊維繊度20デシテックス、平均繊維長51mm)をマトリックス繊維として用い、実施例1にて用いた低融点ポリエチレンテレフタレート芯鞘短繊維(単繊維繊度4.4デシテックス、平均繊維長51mm)を結合繊維として用い、それぞれ30:70の重量比でローラーカードを用いて混綿、開繊することにより、ウェブを得た。
【0087】
このウェブを実施例1と同一の方法で加熱成形を行い、次いで7.5cm角に裁断することにより、水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は17.92g/個、高さは7.1cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.045g/cmであった。
【0088】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表2に示した。この水耕栽培資材は、マトリックス繊維の含有率が少なすぎるため、保水性と形態保持性の双方に劣るものであった。
【0089】
[比較例5]
実施例3にて用いた汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維(単繊維繊度20デシテックス、平均繊維長51mm)をマトリックス繊維として用い、実施例1にて用いた低融点ポリエチレンテレフタレート芯鞘短繊維(単繊維繊度4.4デシテックス、平均繊維長51mm)を結合繊維として用い、それぞれ70:30の重量比でローラーカードを用いて混綿、開繊することにより、目付438g/mのウェブを得た。
【0090】
このウェブを実施例1と同一の方法で加熱成形を行い、次いで7.5cm角に裁断することにより、水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は2.41g/個、高さは6.5cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.007g/cmであった。
【0091】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表2に示した。この水耕栽培資材は、
見かけ密度が小さいため、保水性と形態保持性の双方に劣るものであった。
【0092】
[比較例6]
実施例3にて用いた汎用ポリエチレンテレフタレート短繊維(単繊維繊度20デシテックス、平均繊維長51mm)をマトリックス繊維として用い、実施例1にて用いた低融点ポリエチレンテレフタレート芯鞘短繊維(単繊維繊度4.4デシテックス、平均繊維長51mm)を結合繊維として用い、それぞれ70:30の重量比でローラーカードを用いて混綿、開繊することにより、目付10156g/mのウェブを得た。
【0093】
このウェブを実施例1と同一の方法で加熱成形を行い、次いで7.5cm角に裁断することにより、水耕栽培資材を得た。得られた水耕栽培資材の重量は59.9g/個、高さは8.1cm、横長さは7.5cm、奥行きは7.5cm、見かけ密度は0.131g/cmであった。
【0094】
このようにして、得られた水耕栽培資材の特性を表2に示した。この水耕栽培資材は、見かけ密度が大きいため、保水性に劣るものであった。
【0095】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の水耕栽培資材は、優れた吸水性、保水性および含水時の形態保持性を有しており、かつ、焼却処分などにより簡易的に廃棄できることから、トマトや花苗などの植物を育成するための水耕栽培資材として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維繊度が0.5〜30デシテックスの範囲内の合成樹脂繊維からなるマトリックス繊維40〜90重量%と、前記合成樹脂繊維より低い融点を有する低融点熱可塑性樹脂繊維からなる結合繊維10〜60重量%とを含有し、見かけ密度が0.01〜0.12g/cmの範囲内にある水耕栽培資材。
【請求項2】
前記マトリックス繊維と前記結合繊維との融点差が30℃以上である請求項1に記載の水耕栽培資材。
【請求項3】
前記マトリックス繊維を構成する合成樹脂繊維が、ポリエステル系繊維である請求項1または2に記載の水耕栽培資材。
【請求項4】
生分解性繊維を全繊維に対して40重量%以上含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の水耕栽培資材。
【請求項5】
前記生分解性繊維が、ポリ乳酸繊維である請求項4に記載の水耕栽培資材。
【請求項6】
前記マトリックス繊維が融点160℃〜180℃の範囲内のポリ乳酸繊維であり、前記結合繊維が融点50〜150℃範囲内の低融点生分解性繊維である請求項1〜5のいずれか1項に記載の水耕栽培資材。
【請求項7】
前記結合繊維を構成する低融点生分解性繊維が、低融点ポリ乳酸繊維、ポリカプロラクトン繊維、ポリブチレンサクシネート繊維、ポリブチレンサクシネートアジペート繊維、ポリエチレンサクシネート繊維、ポリエチレンサクシネートカーボネート繊維、ポリブチレンアジペートテレフタレート繊維から選ばれた少なくとも1種の繊維である請求項6に記載の水耕栽培資材。
【請求項8】
前記低融点生分解繊維の繊維全体に対する含有率が、10〜40重量%の範囲内である請求項6または7に記載の水耕栽培資材。
【請求項9】
前記結合繊維を構成する低融点生分解性繊維が、融点160〜180℃のポリ乳酸樹脂からなる芯部と、融点が50℃〜150℃の範囲内の低融点生分解性樹脂からなる鞘部とを有する芯鞘繊維である請求項6〜8のいずれか1項に記載の水耕栽培資材。
【請求項10】
前記芯鞘繊維の鞘部が、低融点ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリエチレンサクシネートカーボネート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる請求項9に記載の水耕栽培資材。
【請求項11】
前記芯鞘繊維の繊維全体に対する含有率が、10〜60重量%の範囲内である請求項9または10に記載の水耕栽培資材。
【請求項12】
水耕栽培用資材を構成する繊維が、略一方向に配行している請求項1〜11のいずれか1項に記載の水耕栽培資材。
【請求項13】
水耕栽培用資材の形状が、直方体または立方体である請求項1〜12のいずれか1項に記載の水耕栽培資材。
【請求項14】
保水量が0.2g/cm〜0.9g/cmの範囲内にある請求項1〜13のいずれか1項に記載の水耕栽培資材。

【公開番号】特開2007−20508(P2007−20508A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209614(P2005−209614)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】