説明

水耕用植物栽培装置及び水耕用植物栽培方法

【課題】養液の断続供給と人工光の照射に所定のタイミングが得られるように完全制御することにより、所望の植物栽培条件を簡単に得ることができて、植物の品質や商品価値を十分に高めることが可能な水耕用植物栽培装置及び水耕用植物栽培方法を提供する。
【解決手段】弱い流路勾配を持ち雨樋状の養液流路が並列状態で配置された流路列構造体と、各養液流路に養液を循環して供給させる養液給水機構と、各養液流路に配置されて栽培する植物が保持もしくは収容されるパネルと、該パネルの上方に配置されて植物に人工光を照射させる照明と、養液給水機構と照明をオンオフさせるタイマと、を備え、養液給水機構と照明をタイマでそれぞれ独立してオンオフさせることにより、養液給水機構による養液の供給と照明による人工光の照射を所定のタイミングで制御し養液を断続供給可能に構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業分野において使用されている水耕用植物栽培装置の改良に係わるもので、特に、人工光を照射して栽培する完全制御型の植物栽培工場に使用して好適な水耕用植物栽培装置及び水耕用植物栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水耕用植物栽培装置として種々のものが提案使用されているが、最近最も広く使用されているのは、NFT方式の植物栽培装置である。このNFT方式の植物栽培装置は、湛水式のため養液の使用量が多くなりがちで、その取扱いや処理が面倒になって、養液の供給量を野菜等の植物の栽培条件や品質が最適となるように調整することが極めて困難であった。そこで、このような不具合を解決するために、特許文献1に示す水耕用植物栽培装置が提案された。この水耕用植物栽培装置は、雨樋を傾斜状態で複数本並列に並べた流路部と、この流路部を支持する脚部と、雨樋に養液を供給する給水部と、雨樋から養液を排出させる排水部と、雨樋の上部に載置されて植物を植栽する穴を有する板状の栽培パネルと、栽培パネルの上方に配置された照明等を備え、雨樋内に養液を供給しつつ照明の人工光を栽培パネルに照射するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−197843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような完全制御型の人工光による水耕用植物栽培装置にあっては、一般的に植物を栽培する養液給水装置が湛水型(NFT方式)のため、養液の交換が不可能であったり、また、養液が交換可能であったとしても湛水量が多いためその交換作業自体が面倒となって、流路部内に養液を連続して供給しているのが実情である。そのため、養液の流路部内における供給(流通)を制御することが困難で、植物に対して過剰な栄養供給となり植物が無駄に成長してしまう等、植物の品質や商品価値を十分に高めることが難しい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、養液の断続供給と人工光の照射に所定のタイミングが得られるように完全制御することにより、所望の植物栽培条件を簡単に得ることができて、植物の品質や商品価値を十分に高めることが可能な水耕用植物栽培装置及び水耕用植物栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の水耕用植物栽培装置は、弱い流路勾配を持ち雨樋状に形成された複数の養液流路が並列状態で配置された流路列構造体と、前記各養液流路のそれぞれの上流端から供給された養液を当該養液流路を流下させてその下流端から回収し該回収した養液を再び養液流路の上流端に供給して循環させる養液給水機構と、前記各養液流路の上部に配置されて栽培する植物が保持もしくは収容されるパネルと、該パネルの上方に配置されて前記植物に人工光を照射させる照明と、前記養液給水機構と照明をオンオフさせるタイマと、を備え、前記養液給水機構と照明を前記タイマでそれぞれ独立してオンオフさせることにより、前記養液給水機構による養液の供給と前記照明による人工光の照射を所定のタイミングで制御し、前記各養液流路に養液を断続供給可能に構成したことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の水耕用植物栽培方法は、弱い流路勾配を持ち雨樋状に形成された複数の養液流路が並列状態で配置された流路列構造体の各養液流路に、養液給水機構により、その上流端から供給した養液を各養液流路を流下させてその下流端から回収し該回収した養液を再び養液流路の上流端に供給して循環させると共に、前記各養液流路の上部に配置されて栽培する植物が保持もしくは収容されるパネル上方に前記植物に人工光を照射させる照明を配置し、該照明と前記養液給水機構をタイマでそれぞれ独立してオンオフさせることにより、前記養液給水機構による養液の供給と前記照明による人工光の照射を所定の相互に関連するタイミングで制御し、前記各養液流路に養液を断続供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水耕用植物栽培装置及び水耕用植物栽培方法によれば、雨樋状の養液流路内に養液を供給する養液給水機構と植物に人工光を照射する照明をタイマでそれぞれ独立してオンオフさせることにより、養液給水機構による養液の供給と照明による人工光の照射を所定のタイミングで制御し養液を断続供給可能に構成しているため、雨樋状の養液流路内への養液の断続供給(流通)と植物への人工光の照射を完全制御することができて、例えば植物への過剰な栄養供給を抑制できる等、所望の植物栽培条件を簡単に得ることができて、植物の品質や商品価値を十分に高めることができる。
【0009】
また、タイマにより、養液給水機構による養液の供給もしくは停止と、照明の点灯もしくは消灯を完全重複もしくは一部重複させる等、所望に制御することができるため、人工光の照射と養液の断続供給を効果的に行うことができて、例えば植物の乾物重量割合を増したり、糖度を濃縮させたり、あるいは植物にストレスを好適に作用させて側枝や花雷を早く誘導できる等、植物の品質と商品価値を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係わる水耕用植物栽培装置の一例を示す基本構成図
【図2】同その要部の縦断面図
【図3】同養液給水機構と照明の動作の一例を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明に係わる水耕用植物栽培装置の一実施形態を示している。図1に示すように、水耕用植物栽培装置1(以下、栽培装置1という)は、複数(図では3本)の養液流路3を有する流路列構造体2と、この流路列構造体2の上部(養液流路3の上部)に配置されたパネル4と、このパネル4の上方に所定間隔を有して配置された照明5と、前記養液流路3の上流端3aと下流端3b間に接続配置された養液給水機構6と、この養液給水機構6や照明5を制御するタイマ装置7等を備えている。
【0012】
前記流路列構造体2は、枠組み構造の脚部2aを有し、この脚部2aの上部に弱い勾配α(図2参照)により傾斜状態で前記養液流路3が配置されている。この養液流路3は、脚部2a上に固定状態で配置され、断面半円弧形状の雨樋形状に形成され、その上流端3aから供給された養液8が傾斜に沿って所定の速度で流下してその下流端3bから排水されるようになっている。
【0013】
前記パネル4は、適宜の材質で所定の厚さを有する平面視長方形状(もしくは正方形状)の板体で形成され、前記養液流路3の間隔及び後述する筒状体9の形状や植物の種類等に対応して二次元的に規則的間隔で複数個(図では9個)の穴4aが形成されている。この穴4aは、パネル4の表裏面に例えばストレートに貫通した貫通穴で形成されており、このパネルの各穴4aには、カップ形状の筒状体9がそれぞれ着脱可能に挿入されている。
【0014】
また、前記筒状体9の外周面の底部9a側の対向位置には、図2に示すように、養液8の流通(吸排水)経路を形成する一組もしくは複数組の適宜形状の開口10が設けられている。なお、養液8の流通経路としては、筒状体9の側面に設けられる開口10に限らず、筒状体9の底部9aの一部(もしくは全部)に開口10を設けることで構成することもできる。この底部9aに開口10を設ける構成においては、栽培植物が例えば小松菜、野沢菜、ミズナ、チンゲンサイ等の大型野菜の場合は、所定の大きさまで育成された苗を筒状体9内に定植するようにしたり、あるいは小型野菜の場合は、栽培植物の種を播種した発泡ウレタン等を筒状体9内の底部に配置するようにすれば良い。この筒状体9としては、本出願人が出願して登録された特許第4507444号公報に開示されている筒状体を使用することが好ましい。
【0015】
前記照明5は、例えば高圧ナトリウムランプあるいは植物の栽培に適した所定色の発光ダイオード(LED)等により形成され、その照明光(人工光)が下方のパネル4に向けて照射されるようになっている。この照明5には、タイマ装置7の後述する第2タイマ7bが接続され、この第2タイマ7bでオンオフ制御(点灯もしくは消灯)されるようになっている。
【0016】
前記養液給水機構6は、給水口11aを有して前記養液流路3の上流端3aの上方に配置された給水管11と、養液流路3の下流端3bの下方に配置された排水タンク12と、この排水タンク12と前記給水管11との間に接続されたポンプ13(図1参照)等を有している。そして、ポンプ13がオンして作動することにより、養液流路3の上流端3aに養液8が供給されると共に、養液流路3内を流下して排水タンク12内に回収された養液8が汲み上げられて再び給水管11に供給されるようになっている。
【0017】
前記タイマ装置7は、前記養液給水機構6のポンプ13に接続された第1タイマ7aと、前記照明5に接続された第2タイマ7bを有している。なお、第1タイマ7a及び第2タイマ7bは、図示しない所定の電源(ポンプ駆動用電源と照明用電源)に接続されている。そして、タイマ装置7の各タイマ7a、7bにより、ポンプ13と照明5がオンオフされ、養液給水機構6により養液8が供給もしくは停止(遮断)されたり、照明5が点灯もしくは消灯されるようになっている。なお、タイマ装置7としては、ポンプ13と照明5を後述するタイミングでオンオフ制御可能な別体型もしくは一体型の適宜のタイマが使用される。
【0018】
次に、このように構成された栽培装置1の動作を、図3に示すタイミングチャート等を参照して説明する。先ず、前記栽培装置1の養液流路3として、建築用規格の硬質ポリ塩化ビニル製で幅114mmの雨樋を使用し、これを7本並列に並べて、前記勾配αが3%程度の弱い勾配となるように脚部2aに固定した。また、筒状体9としては、直径が30〜70mmの範囲で外周面がテーパ形状のものを使用すると共に、照明5は高圧ナトリウムランプでほぼ300μmolm−2−1を保つようにした。さらに、養液8としては、サラダ菜用の標準園試処方とし、その電気伝導度は2.5mS/cmで、そのpHは5.5〜6.5とした。
【0019】
そして、このような条件下で、栽培植物として大型野菜であるチンゲンサイをサンプルとし、その種を苗箱に播種し、発芽後に7日間育成し、さらに苗圃に移動して7日間育成した苗を、前記栽培装置1の筒状体9に定植し、この定植後約15日で収穫した。この実験を、図3に示す実施例1(a)、実施例2(b)、実施例3(c)についてそれぞれ行った。
【0020】
先ず、照明5がオンオフ制御(点灯・消灯)され、ポンプ13が照明の点灯や消灯に関係なく連続してオン(作動)して、養液8が断続することなく連続供給される従来例(比較例)として、人工光の照射時間を1日24時間のうち12時間毎にオンオフさせ、前記植物(チンゲンサイ)を20株栽培した。その結果、収穫時の1日の生体重量は平均120g程度で、出荷に適当な大きさとなった。
【0021】
これに対し、図3(a)に示す実施例1は、照明5が点灯中の時間T1中にポンプ13をオンさせて養液8を供給し、照明5が消灯中の時間T2には、養液8の供給を停止するようにしたものである。すなわち、12時間の人工光の照射と同期させて養液8の供給を行い、12時間の消灯時(暗時)には、養液8の供給を停止する。この暗時における養液8の停止の理由は、葉緑素における光合成の際には根部より水の供給が要求されるが、光合成が行われていない暗時には水はそれほど必要でないためである。この実施例1の実験によれば、収穫時の生体重量は前記比較例に比べてやや減少する傾向を持つが、その差は大きくないことが確認された。つまり、養液8を断続供給してもしなくても、収穫された生体重量差は10%程度の範囲内にとどまり、必ずしも有意の差ではなくバラツキの範囲内と言える。この実施例1の場合は、ポンプ13の使用電力は、比較例に比べて当然ながら節約できることになる。
【0022】
また、図3(b)に示す実施例2は、12時間の照明5の点灯時間内に、実施例1に比べて養液供給の時間を2時間だけ後にずらせて、照明5の点灯時間と一部重複させると共に、養液供給の時間T3を10時間としたものである。この実施例2の実験によれば、収穫された植物は前記比較例に比べて成長が遅れたため、生体重量は平均して約10%減少した。しかし、乾物重量で比較すると、減少は生体重量の場合より少なく、比較例の乾物重量と比較して半分の5%程度の減少にとどまった。
【0023】
この5%の差は、それぞれの測定値のバラツキを考慮した場合、それらの平均した値の5%は有意であると言える。つまり、実施例2の場合、植物はそれぞれ緻密に成長したことになり、これは水分過剰にならずに成長できたことを示している。また、食味についても、良好な結果を得ることができた。
【0024】
さらに、図3(c)に示す実施例3は、養液供給の時間T4を照明5の点灯と完全に重複させ、照明5の点灯開始から2時間後に養液供給を開始すると共に、照明5の消灯と同時に養液供給を停止させて、養液供給の時間T4を10時間としたものである。この実施例3の実験によれば、収穫時の平均重量は誤差ばらつきの範囲で実施例2とほぼ同じであった。すなわち、植物にとって水を必要とするのは主に光合成時であって、暗時の給水はあまり影響しないことが判る。この実施例3は、実施例2のポンプ13の消費電力の節約をさらに進めたものであって、この実施例3から従来のような養液の連続供給は必ずしも必要でないことが判明した。
【0025】
これらの実施例1〜3の実験結果から、間歇給水は露地栽培や土耕、ハウス温室栽培では公知であるものの、水耕栽培では間歇給水が行われておらず、養液流路3に勾配αを持たせ、各タイマ7a、7bにより照明5とポンプ13をそれぞれ独立してオンオフ制御可能な前記栽培装置1に適用して間歇給水を行うことで、多様な種類の植物を水耕栽培できる等、水耕栽培の分野において大きな効果が期待できることが証明されたことになる。
【0026】
以上のことから、点灯時間の長さは基本的に光合成による成長を決定するが、一方で新しく設定した養液供給の時間との関係が初めて知られるようになった。つまり、照明5の点灯時間と重複する部分の養液供給の時間の長さ、あるいは照明5の点灯時間中の養液供給の停止時間の長さは、植物の品質に影響するのである。
【0027】
また、照明5の点灯タイミングと養液供給のタイミングとの関係については、相互に時間帯が重複する程度によって、また栽培植物によって、さらに収穫物の要求特性によっても異なり、それぞれの植物について決定する必要があることが判明した。このような関係があることは、前記実験によって初めて得られたものであり、養液供給時間が点灯時間に比較してどのくらい重複するかまたは重複しないかは、栽培する植物毎に実験によって決定しておくことが好ましい。
【0028】
このように、前記栽培装置1によれば、雨樋状の養液流路3内に養液8を循環供給させる養液給水機構6と植物に人工光を照射する照明5を、第1タイマ7aと第2タイマ7bによりそれぞれ独立してオンオフさせることにより、養液給水機構6による養液8の供給と照明5による人工光の照射を所定のタイミングで制御するため、雨樋状の養液流路3内への養液8の断続供給(流通)と植物への人工光の照射を完全制御することができ、例えば植物への過剰な栄養供給を抑制できる等、所望の植物栽培条件を簡単に得ることができて、植物の品質や商品価値を十分に高めることができる。
【0029】
特に、タイマ7a、7bにより、養液給水機構6による養液8の供給もしくは停止と、照明5の点灯もしくは消灯を完全重複もしくは一部重複させる等、所望に制御することができるため、人工光の照射と養液8の断続供給を効果的に行うことができて、例えば植物の乾物重量割合を増したり、糖度を濃縮させたり、あるいは植物にストレスを好適に作用させて側枝や花雷を早く誘導できる等、植物の品質と商品価値を一層高めることができる。
【0030】
また、従来の湛水型の場合において、養液の供給を停止する場合は、最低でも1トン以上の水量を断続させる必要があり、装置や仕掛けが大がかりとなり、切り替えにも時間がかかり、しかも水が完全に切れる状態とすることが困難であったが、前記栽培装置1の場合は、勾配αを有する雨樋状の養液流路3を使用すると共に、タイマ7aによりポンプ13をオンオフして養液8の供給・停止を簡単に実現できることから、養液流路3に流す養液8の総液量を例えば数十リットルと量を少なくできると共に、養液流路8の勾配αのため水切りも自動的に終わらせることができる。
【0031】
また、各タイマ7a、7bにより養液8の供給を制御する際に、養液8を無駄に循環させる必要がないため、養液流路3内における養液8の流量を一層少なくすることができる。特に、養液流路3として断面半円弧形状を採用しその最深部3cに細い流路が形成されているため、栽培装置1で使用される養液8の量自体をより一層少なくすることができると共に、養液8の供給もしくは停止時に、養液8と植物の根部との接触を素早くかつ確実に行うことができて、養液8の供給・停止時の待ち時間を少なくすることもできる。
【0032】
また、養液8の断続供給により、養液8の絶対流量を少なくできるため、ポンプ13を計画的にオンオフ制御することで、湛水型等に比較して容易かつ短時間で植物の根部への養液8の供給と停止(水切り)とを繰り返すことができる。また、全体の養液量自体も湛水型やその他の従来方式に比べてはるかに少なくて済むため、養液循環用のポンプ13を小型とすることができて、ポンプ13自体のコストダウンやその消費電力の低減化等を図ることができる。
【0033】
さらに、従来の水耕用植物栽培装置においては、静止水中か流動水中のいずれの場合であっても、植物の根部は常時養液中に浸漬されており、その結果過剰の養液が供給されがちで、収穫物はいわゆる「水ぶくれ」の状態となって生体重量は増加するが、品質は必ずしも優れるわけではない。これに対して、前記栽培装置1の場合は、収穫直前ではなくとも植物成長中に、所定の時間帯を区切って養液8を断続して供給していることから、「水ぶくれ」等が防止されて、植物の品質の一層の向上を図ることができる。
【0034】
特に、植物の光合成作用について養液8や植物の成長時間に無駄がない条件で各タイマ7a、7bによりポンプ13や照明5をオンオフ制御することができるため、植物の所定の収穫サイクルに対して効率的な早い成長が可能になると共に、植物の水ポテンシャルを養液8の断続供給によって調節することができることから、植物の風味や含有栄養素の量等を調整することも可能となる。
【0035】
また、養液8の供給時間を調整できるため、照明5の点灯時間とのタイミング等の相互関係、例えば点灯時間(もしくは消灯時間)と養液8の供給時間を完全あるいは部分的に重複させたり、全く重複させない等の関係を、栽培する植物に応じて設定することができて、各種植物の水耕栽培に適用することができる。
【0036】
なお、前記実施形態においては、栽培装置1のタイマ装置7が第1タイマ7aと第2タイマ7bを有する構成としたが、本発明はこの構成に限定されず、例えば栽培台が広くて複数の照明用タイマ群と複数の養液用タイマ群が存在する量産型の植物工場等においては、前記タイマ装置を、工場全体として複数の照明用タイマ群と複数の養液用タイマ群とからなる複数用途のタイマ装置としたり、これらを複数設ける構成とすることも可能である。また、前記実施形態における、パネル4の穴4aの数や養液流路3の本数、給水管11の構成、養液8の供給時間帯の長さや照明5の点灯とのタイミング等は一例であって、本発明に係わる各発明と同等の作用効果が得られる適宜の構成を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、パネルに筒状体を着脱可能に挿入して栽培する栽培装置に限らず、例えば筒状体を使用することなくパネルの穴に、各種植物の種を播種した発泡ウレタン等を直接挿入して栽培する各種形態の栽培装置及び栽培方法にも利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・・・・・・・・水耕用植物栽培装置
2・・・・・・・・・・流路列構造体
2a・・・・・・・・・脚部
3・・・・・・・・・・養液流路
3a・・・・・・・・・上流端
3b・・・・・・・・・下流端
3c・・・・・・・・・最深部
4・・・・・・・・・・パネル
4a・・・・・・・・・穴
5・・・・・・・・・・照明
6・・・・・・・・・・養液給水機構
7・・・・・・・・・・タイマ装置
7a・・・・・・・・・第1タイマ
7b・・・・・・・・・第2タイマ
8・・・・・・・・・・養液
9・・・・・・・・・・筒状体
9a・・・・・・・・・底部
10・・・・・・・・・開口
11・・・・・・・・・給水管
11a・・・・・・・・給水口
12・・・・・・・・・排水タンク
13・・・・・・・・・ポンプ
α・・・・・・・・・・勾配

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱い流路勾配を持ち雨樋状に形成された複数の養液流路が並列状態で配置された流路列構造体と、前記各養液流路のそれぞれの上流端から供給された養液を当該養液流路を流下させてその下流端から回収し該回収した養液を再び養液流路の上流端に供給して循環させる養液給水機構と、前記各養液流路の上部に配置されて栽培する植物が保持もしくは収容されるパネルと、該パネルの上方に配置されて前記植物に人工光を照射させる照明と、前記養液給水機構と照明をオンオフさせるタイマと、を備え、
前記養液給水機構と照明を前記タイマでそれぞれ独立してオンオフさせることにより、前記養液給水機構による養液の供給と前記照明による人工光の照射を所定のタイミングで制御し、前記各養液流路に養液を断続供給可能に構成したことを特徴とする水耕用植物栽培装置。
【請求項2】
弱い流路勾配を持ち雨樋状に形成された複数の養液流路が並列状態で配置された流路列構造体の各養液流路に、養液給水機構により、その上流端から供給した養液を各養液流路を流下させてその下流端から回収し該回収した養液を再び養液流路の上流端に供給して循環させると共に、前記各養液流路の上部に配置されて栽培する植物が保持もしくは収容されるパネル上方に前記植物に人工光を照射させる照明を配置し、該照明と前記養液給水機構をタイマでそれぞれ独立してオンオフさせることにより、前記養液給水機構による養液の供給と前記照明による人工光の照射を所定の相互に関連するタイミングで制御し、前記各養液流路に養液を断続供給することを特徴とする水耕用植物栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−27369(P2013−27369A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166829(P2011−166829)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(599116845)
【Fターム(参考)】