水蒸気電解装置及び水蒸気電解方法
【解決課題】水素極と酸素極とで共通のガスとして水蒸気を用い、電気化学セルにおける電極の酸化・還元劣化を抑制しつつ、効率的に水蒸気を電気分解することができる高温水蒸気電解装置及び方法を提供する。
【解決手段】固体酸化物を主として含有する電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、水蒸気を主な成分とするガスを該電気化学セル11に供給する水蒸気供給部13と、水蒸気が電気分解され水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部14と、水蒸気が電気分解され酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部15と、を有する水蒸気電解装置であって、酸素極が、耐還元性材料を含有する水蒸気電解装置10。
【解決手段】固体酸化物を主として含有する電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、水蒸気を主な成分とするガスを該電気化学セル11に供給する水蒸気供給部13と、水蒸気が電気分解され水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部14と、水蒸気が電気分解され酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部15と、を有する水蒸気電解装置であって、酸素極が、耐還元性材料を含有する水蒸気電解装置10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素極と酸素極とに供給するガスを同一の水蒸気とした簡易な装置構造により形成され、電極を長寿命化して、高効率に水蒸気を電気分解して水素を製造することができる水蒸気電解装置及び水蒸気電解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温水蒸気電解法は、高温の水蒸気を電気分解することにより水素と酸素とを得る方法で、その動作原理は固体電解質燃料電池(以下、SOFCと称する。)の逆反応である。
【0003】
高温水蒸気電解を行うには、一般には、固体酸化物電解質材料を介して水素極と酸素極の電極を設けた電気化学セルを用い、この電気化学セルによる水蒸気の電気分解によって得られる水素と酸素とを隔てる構造が必要である。従来、水素極側雰囲気は、燃料となる水蒸気と水素が主成分となり、一方、酸素極側雰囲気は、供給ガスを空気とした場合、窒素と酸素が主な成分となり、供給ガスを酸素とした場合は、酸素が主な成分となる。この場合、両極へ供給するガスの種類が全く異なり、夫々に対して、ガスの供給機構が必要となり、構成が複雑であった。
【0004】
また、電気化学セルの構造は、平板型や円筒型などがあり、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気は電気化学セルを構成している固体酸化物電解質の緻密構造とセル端部のガスシールにより分け隔てられ、相互への雰囲気ガスのリークを最小限にとどめている。電気化学セル単体で使用する場合であれば、セル端部のガスシールは比較的容易であるが、これらを積層するなどして集合体として使用する場合、特にセル端部のガスシール信頼性は低下すると考えられる。
【0005】
ここで、円筒型セルを複数配置した従来の高温水蒸気電解装置(特許文献1参照)を例にとり、以下、図面を参照しながら説明する。従来の高温水蒸気電解装置の構造模式図を図12に、セル周辺部の構造を図13に示した。
【0006】
図12に示したように、水蒸気電解装置100の主要構成部は、円筒型の電解セル101と、水蒸気供給室102と、水蒸気及び生成水素排出室103と、水蒸気注入管104と、酸素生成室105と、からなっている。
【0007】
そして、図13に示したように、この電気化学セル101は、その片端に、電流リード用金属キャップ106が設けられ、他端にはシールキャップ107を設けて閉構造とし、セルでの燃料の供給・排出を一方の端部のみで行うようになっている。また、管板とのシール部においてセルを支持する。電流リードは、水素極側電流リード部はテーパ型シーリング108を用いて取り出され、酸素極側はセル下端のセルリード部がシールキャップ107に固定されてセル内部に導入され、還元雰囲気を通って電流リード用金属キャップ106から取り出される構成となっている。
【0008】
この構成の場合、水素極側と酸素極側の雰囲気ガスがそれぞれ、水素極側では水素及び水蒸気、酸素極側では窒素及び酸素であるため、ガス導入部を分割しなければならず、構造的に複雑である。また、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気のガスシール部はセル上下の2箇所となり、かつ、該ガスシール部は、いずれの場合でもセルリード部を含んだシール構造となっているため、確実で信頼性のあるシールの実現が困難である。さらには、高温で使用するため、シールの寿命が短命化しやすく、これを長命化することも課題であった。
【0009】
これらの課題についての一つの有力な解決方法としては、特許文献2に示されるように、固体酸化物を主な素材とする電解質と、水素極と、酸素極と、を主な構成要素とする電気化学セルを用いて、水蒸気を電気分解し、水素を生成する水蒸気電解において、水素極及び酸素極に供給するガスが、いずれも水蒸気を主な成分とすることを基本とし、供給条件や、流れ条件などを特徴とする水蒸気電解方法及び装置を、また、水素極雰囲気と酸素極雰囲気とを分け隔てる、シール部分近傍に、水素及び酸素以外の不活性ガスや水蒸気を主な成分とするガスを供給することを特徴とする水蒸気電解方法及び装置を提案した。
【0010】
これらによって、装置構造を簡易化し、また、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減し、できるだけ緩和・簡易・安全な運転が可能な高温水蒸気電解方法及び装置を得ることが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平3−62460号公報
【特許文献2】特開2007−63619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、水素極材料としては、一般的に、Ni−YSZ(ニッケル−イットリア安定化ジルコニア)、Ni−SDC(ニッケル−セリア)等の材料が用いられているが、これらの材料は還元性雰囲気で使用されており、また酸素極材料は、一般的に、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)等の複合酸化物が用いられているが、これらの複合酸化物材料は、低濃度の酸素雰囲気での使用に際しては、結晶構造を構成する酸素の離脱により構造が変化し、共に水蒸気を主成分とするガスにおいては、その特性維持が困難となる場合がある。
【0013】
そこで、本発明は、水素極と酸素極とで共通のガスとして水蒸気を用いる水蒸気電解装置及び方法の発明における利点を保持しながら、電気化学セルにおける電極の酸化・還元劣化を抑制しつつ、効率的に水蒸気を電気分解することができる高温水蒸気電解装置及び方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討した結果、電極の材料として、水素極側の電極に耐酸化性の材料及び/又は酸素極側の電極に耐還元性の材料を用いることによって、電気化学セルの性能・耐久性を向上させることができることを見出し、本発明を完成したものである。
【0015】
すなわち、本発明に係る水蒸気電解装置は、固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、同一の水蒸気を水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部と、水蒸気の電気分解により水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部と、水蒸気の電気分解により酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部と、を有する水蒸気電解装置であって、酸素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐還元性材料を含有し、耐還元性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属又は該貴金属の合金であることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係る他の水蒸気電解装置は、固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、同一の水蒸気を前記水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部と、水蒸気の電気分解により水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部と、水蒸気の電気分解により酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部と、を有する水蒸気電解装置であって、水素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐酸化性材料を含有し、耐酸化性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属、該貴金属の合金又はYSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDCの多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメットであることを特徴とするものである。
【0017】
さらに、本発明に係る他の水蒸気電解装置は、固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、同一の水蒸気を水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部と、水蒸気の電気分解により水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部と、水蒸気の電気分解により酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部と、を有する水蒸気電解装置であって、水素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐酸化性材料を含有し、かつ、酸素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐還元性材料を含有し、耐還元性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属又は該貴金属の合金であり、耐酸化性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属、該貴金属の合金又はYSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDCの多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメットであることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る他の水蒸気電解方法は、同一の水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、供給された水蒸気を、固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルの前記水素極及び酸素極に接触させて、水蒸気を電気分解して水素ガスと酸素ガスを生成する電解工程と、水素ガスと前記酸素ガスが互いにリークしないように別々に排出されるガス排出工程と、を有する水蒸気電解方法において、水素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐酸化性材料を含有し、かつ、酸素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐還元性材料を含有し、耐還元性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属又は該貴金属の合金であり、耐酸化性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属、該貴金属の合金又はYSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDCの多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメットであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水蒸気電解装置及び方法によれば、簡易な装置構造を形成でき、かつ、電気化学セルにおける電極の酸化・還元劣化を抑制して、効率的に水蒸気を電気分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】平板型電気化学セルを用いた水蒸気電解装置の概略構成を示した斜視図
【図2】図1に示した水蒸気電解装置の側断面図
【図3】円筒型電気化学セルを用いた水蒸気電解装置の概略構成を示した斜視図
【図4】図3に示した水蒸気電解装置の側断面図
【図5】片端閉じ円筒型の電気化学セルを用いた水蒸気電解装置の側断面図
【図6】水素極側と酸素極側とでガスの流れ方向を逆方向にした水蒸気電解装置の側断面図
【図7】第2の実施の形態に係る水蒸気電解装置の構成概略を示した側断面図
【図8】第3の実施の形態に係る水蒸気電解装置の構成概略を示した側断面図
【図9】第4の実施の形態に係る水蒸気電解装置の構成概略を示した側断面図
【図10】第5の実施の形態に係る水蒸気電解装置の構成概略を示した側断面図
【図11】第6の実施の形態に係る水蒸気電解装置の構成概略を示した側断面図
【図12】従来の高温水蒸気電解装置の構造模式図
【図13】従来のセル周辺部の構造図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法の第1の実施の形態について、図1〜6を参照しながら説明する。図1は平板型電気化学セルを単体で適用した場合の水蒸気電解装置の構成概略を示した斜視図(内部構造については、容器内部の電気化学セルのみ破線で示した。)であり、図2はその側断面図である。
【0023】
まず、図1及び図2に示したように、この第1の実施の形態に係る水蒸気電解装置10は、主に、電気化学セル11と、該電気化学セル11を格納する容器12と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する水蒸気供給部13と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部14と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部15と、水素極側電流リード部16と、酸素極側電流リード部17と、から構成されている。
【0024】
本発明で用いる電気化学セルは、固体酸化物を主として含有する電解質を水素極及び酸素極で挟持して構成されたものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、図2に示したように、平板状の固体酸化物を主として含有する電解質11aを基体とし、それを挟む形で水素極11b及び酸素極11cを設けた平板型の電気化学セル11が一例として挙げられる。
【0025】
ここで用いる電解質は、固体酸化物を主として含有するものであり、例えば、ZrO2に、Y2O3、Sc2O3、Nd2O3、Sm2O3、Gd2O3、Yb2O3等を固溶した安定化ジルコニア系の電解質、CeO2に、Sm2O3、Gd2O3、Y2O3等を固溶したセリア系の電解質、LaSrGaMgO3等のLaGaO3を母体に一部元素を置換したランタンガレード系の電解質、SrCeO3、BaCeO3やこれらを母体として一部を元素を置換した電解質等のプロトン導電体、Bi2O3に、Y2O3、Nd2O5、WO3、Gd2O3等を固溶した酸化ビスマス系の電解質、La2Zr2O7、La2Zr2O7、Sm2Zr2O7、Gd2Zr2O7等のパイロクロール型酸化物系等の電解質が挙げられる。
【0026】
さらに、ここで用いる水素極11bは、耐酸化性材料を含有して形成されたもので、酸化により、電気伝導性、触媒活性などの電気化学反応に必要な機能が失われないものであればよい。ここで、電極に耐酸化性材料を含有させることで、供給ガスに、従来のガスより還元雰囲気が低減されている水蒸気を主な成分とするガスを用いても、電極の酸化劣化を低減させることを可能としたものである。
【0027】
この場合、耐酸化性材料は、従来使用されていた水素極の材質(Ni−YSZ、Ni−SDC等)よりも耐酸化性に優れた材質であればその種類は特に制限されるものではなく、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属が挙げられ、水素極をこれら貴金属を単独で用いて形成しても構わないし、これら貴金属の合金や、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリア置換セリア)、GDC(ガドリニウム置換セリア)、LDC(ランタニウム置換セリア)等の多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメット(セラミックと金属との混合物)としてもよい。サーメットを用いる場合には、貴金属の混合割合が0.1〜2質量%とすることが好ましい。
【0028】
一方、ここで用いる酸素極11cは、耐還元性材料を含有して形成されるもので、還元により、電気伝導性、触媒活性などの電気化学反応に必要な機能が失われないものであればよい。ここで、電極に耐還元性材料を含有させることで、供給ガスに、従来のガスより酸化雰囲気が低減されている水蒸気を用いても、電極の還元劣化を低減させることを可能としたものである。
【0029】
この場合、耐還元性材料は、従来使用されていた酸素極の材質(LSM、LSC)よりも耐還元性に優れた材質であればその種類は特に制限されるものではなく、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属が挙げられ、酸素極をこれら貴金属を単独で用いて形成しても構わないし、これら貴金属の合金としてもよい。
【0030】
また、本実施の形態ではこのように構成された電気化学セル11は、容器12に格納され、この容器12は原料となる水蒸気を主成分とするガスを、電気化学セル11の水素極11b及び酸素極11cにそれぞれ導き、この水蒸気を電気分解することにより水素ガスと酸素ガスを生成させ、それぞれ排出するように構成されている。すなわち、この容器12には、水蒸気を主成分とするガスを供給する水蒸気供給部13、水素極側で生成した水素ガスと原料ガスの混合ガスを排出する水素ガス排出部14、酸素極側で生成された酸素ガスと原料ガスの混合ガスを排出する酸素ガス排出部15が形成されており、水素ガスと酸素ガスは互いにリークして混合しないように電気化学セルの端部がシールされている。
【0031】
この電気化学セル端部のシール方法に関しては、水素極側と酸素極側のガスが互いにリークしないようにするものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス材料やセラミック材料などを用いて、電気化学セル11と、容器12を接合し、シールする方法が挙げられる。
【0032】
この他に、例えば、図1の平板型電気化学セルを用いる場合、容器12に、電気化学セル11を支持・固定する支持・固定部を、機械的に溝を設けることで形成し、電気化学セル11を支持・固定するのみで、簡易的なシールが可能である。さらには、セラミック材料やガラス材料で接合を補強することにより、シール性能を向上させることができる。
【0033】
そして、この電気化学セル11は、水素極に水素極側電流リード部16、酸素極に酸素極側電流リード部17が接続され、これら両リード部により、酸素極と水素極に電圧をかけることができるようになっている。
【0034】
このように構成された本実施の形態に係る水蒸気電解装置10において、水素極11b側及び酸素極11c側に供給されるガスは、水蒸気を主成分とする同一のガスを導入するため、供給部13を共用することができる。従って、従来のように、例えば、水素極側では水蒸気及び還元性ガスを供給し、酸素極側に空気を供給するといった、両極で全く異なるガスを導入するための機器及び機構が不必要となり、簡易な装置構造を有する水蒸気電解装置とすることができる。また、供給部を同一としていることから、両極の供給圧は同一となるため、セル端部におけるガスリークを最小限にとどめることも可能となる。
【0035】
本実施の形態では平板型の電気化学セルを示したが、本発明においては、特に、その形態が問われるものではなく、電気化学セルの形態としては、平板型、円筒型、片端閉じ円筒型、ハニカム型、プリーツ型、波型等を用いることもできる。そして、このセルは単体でも複数を用いた集合体でも構わないし、その大きさについても、十分に電気分解を行うことができるものであれば、特に制限されるものではない。
【0036】
例えば、円筒型の電気化学セルを用いた水蒸気電解装置について、図3に円筒型電気化学セルを用いた場合の水蒸気電解装置の構成概略を示した斜視図(内部構造については、容器内部の電気化学セルのみ破線で示した。)、図4にその側断面図を示した。この水蒸気電解装置20は、主に、電気化学セル21と、該電気化学セル21を格納する容器22と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する水蒸気供給部23と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部24と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部25と、水素極側電流リード部26と、酸素極側電流リード部27と、から構成されている。この円筒型の電気化学セル21は、円筒型の電解質21aを基体とし、その内側に水素極21bを、その外側に酸素極21cを設けて構成されたものである。
【0037】
この図3及び図4の円筒型電気化学セル21を用いる場合、セルの端部を容器22に支持・固定して、セルにシールを施しているが、特に、支持・固定位置は限定されるものではない。例えば、セルの基体部分を長くし、セル途中部分で容器22に支持・固定し、セルにシールを施すこともできる。水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部24を高温の反応部から離せば、シール部を反応部から離して温度を低い条件とすることが可能となるため、高温環境では使用できなかったシール材料や方法の選択肢が増え、シール性能を向上させることができる。これにより、水素極及び酸素極の一方の雰囲気から他方の雰囲気へのガスリークを軽減することが容易に、効果的に行うことができる。
【0038】
さらに、片端閉じ円筒型の電気化学セルは、その形状は円筒型の片側の端部が閉塞して、一方のみが開放された形状であり、これを用いた水蒸気電解装置について、図5にその側断面図を示した。この片端閉じ円筒型の電気化学セルを適用した水蒸気電解装置30は、主に、電気化学セル31と、該電気化学セル31を格納する容器32と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する水蒸気供給部33と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部34と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部35と、水素極側電流リード部36と、酸素極側電流リード部37と、から構成されている。
【0039】
ここで、水素極及び酸素極に供給する水蒸気を主成分とするガスの供給条件、例えば、水蒸気供給流量、供給流速等は、本実施の形態では同一として説明したが、同一に限るものではなく、異なっても構わない。水素極及び酸素極に供給する水蒸気を主成分とするガスの供給条件が異なる場合には、供給条件を調整できる仕組みを組み込み、供給流量や供給流速などを調整すればよく、例えば、水素極及び酸素極のそれぞれのガス排出部において、流量調整弁を設けたり、配管径を調整する等を実施すればよく、供給条件を調整できる仕組みについては、特にその方法、機構などは問わない。
【0040】
また、このように構成された本実施の形態において、水素極と酸素極に供給するガスの流れ方向については、特に限定されるものではなく、水素極と酸素極に供給するガスの流れが、互いに逆方向でも直交方向でも、それ以外のものでもよい。
【0041】
例えば、水素極と酸素極に供給するガスの流れを逆方向として、ガスを流して運転した場合の構成の一例を図6に示した。図6は平板型電気化学セルを単体で適用したものである。この場合、水素極41b側では、ガスの供給部43a側からガスの排出部44側に向かって水素濃度が高い雰囲気となる。一方、酸素極41c側では、水素極側とガスの流れ方向が逆となる。すなわち、水素極側でガスの排出部44側が、酸素極側ではガスの供給部43bになる。よって、水素極側で水素濃度が高い雰囲気に対して、酸素極側では酸素濃度が低い雰囲気となる。そのため、微量の水素がリークした場合も、酸素が少ないため、燃焼反応は最小限に抑制することが可能となり、水素極側への微量の酸素リークが生じた場合も同様の効果が得られる。
【0042】
本実施の形態によれば、簡易な装置構造により形成でき、かつ、水素極が酸化されたり、酸素極が還元されたりすることを抑制し、電極の長寿命化を図ることができる。さらに、装置構成が簡易であることから、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減することも容易に達成できる。したがって、本実施形態における水蒸気電解装置及び方法は、全体として高効率に水蒸気を電気分解することができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法の第2の実施の形態について、図7を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図7は平板型電気化学セルを単体で適用した場合の側断面図の構成概略を示したものである。
【0044】
図7に示したように、この第2の実施の形態に係る水蒸気電解装置50は、主に、電気化学セル51と、該電気化学セルを格納する容器12と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する水蒸気供給部13と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部14と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部15と、水素極側電流リード部16と、酸素極側電流リード部17と、から構成されている。
【0045】
ここで示した電気化学セル51は、第1の実施の形態と同様に平板型のものを示したが、これに限定されるものではないことも第1の実施の形態と同様である。また、第2の実施の形態に係る水蒸気電解装置50は、電気化学セル51以外は第1の実施の形態と同一の構成を有している。以下、相違点のみについて説明する。
【0046】
この電気化学セル51は、平板状の固体酸化物を主として含有する電解質51aを基体とし、それを挟む形で水素極51b及び酸素極51cが設けられている平板型の電気化学セルである点で第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態における水素極及び酸素極は、電極材料に耐酸化性材料又は耐還元性材料を添加して作成されたものである。すなわち、水素極51bは、耐酸化性材料を他の電極材料に添加し、酸素極51cは、耐還元性材料を他の電極材料に添加して形成されたものである。
【0047】
このように構成された本実施の形態において、水素極51b側の雰囲気は、従来のガスより還元雰囲気が低減されている水蒸気を主な成分とするガスであるため、水素極層内部では、電極材料粒子の表面において、部分的に電極材料が酸化されて電気化学反応活性が低下するが、電解反応により逐次水素が生成されて還元雰囲気が増長されるようになっている。このように還元雰囲気が増長されると、その近辺には添加により混合又は分散された耐酸化性材料が存在し、水蒸気電解反応によって生成された水素によって、酸化された電極材料が再還元され、電気化学反応活性が回復して、効果的に水蒸気電解反応を行うことが可能となる。したがって、水素極の酸化劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。
【0048】
このとき、水素極51bの製造は、電極材料に耐酸化性材料を添加したものを用いるが、ここで添加とは、混合又は分散させることをいい、混合とは、対象となるそれぞれの粉体を機械的に混合することをいい、分散とは、成形された電極材料に耐酸化性材料を含む液体を含浸させることをいう。このように電極材料に耐酸化性材料を添加したものを所望の形状とし、焼成して水素極用の電極を製造することができる。
【0049】
ここで、水素極の電極材料としては、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDC等のセラミックが挙げられ、耐酸化性材料としては、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属材料が挙げられる。
【0050】
ここで、添加の割合は特に限定されないが、酸化劣化を効果的に低減する観点から、耐酸化性材料を0.1〜2質量%含有するような量とすることが好ましい。また、水蒸気を含む水蒸気供給部側で耐酸化性材料の組成比を多くし、ガス排出部側に向かって、徐々に耐酸化性材料の組成比を減らした、傾斜構成としてもよい。
【0051】
一方、酸素極51c側について、従来のガスより酸化雰囲気が低減されている水蒸気が主な成分となるガスであるため、酸素極層内部では、電極材料粒子の表面において、部分的に電極材料が還元されて電気化学反応活性が低下するが、電解反応により酸化物イオンが酸素へ再生成されることにより、逐次酸素が生成され、酸化雰囲気が増長されると、その近辺には添加された耐還元性材料が存在し、酸素再生成反応によって生成された酸素によって、還元された電極材料が再酸化され、電気化学反応活性が回復して、効果的に水蒸気電解反応を行うことが可能となる。したがって、酸素極の還元劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。
【0052】
このとき、酸素極51cの製造は、電極材料に耐還元性材料を添加した物を用いるが、ここで添加とは、混合又は分散させることをいい、混合とは、対象となるそれぞれの粉体を機械的に混合することをいい、分散とは、成形された電極材料に耐還元性材料を含む液体を含浸することをいう。このように電極材料に耐還元性材料を添加した物を所望の形状とすることで酸素極用の電極を製造することができる。
【0053】
ここで、酸素極の電極材料としては、LSMやLSC等が挙げられ、耐還元性材料としては、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属材料が挙げられる。
【0054】
ここで、添加の割合は特に限定されないが、還元劣化を効果的に低減する観点から、耐還元性材料を0.1〜2質量%含有するような量とすることが好ましい。また、水蒸気を含む水蒸気供給部側で耐還元性材料の組成比を多くし、ガス排出部側に向かって、徐々に耐還元性材料の組成比を減らした、傾斜構成としてもよい。
【0055】
本実施の形態によれば、簡易な装置構造を形成でき、かつ、水素極及び酸素極の両電極が酸化又は還元されることを効率的に抑制し、電極の長寿命化を図ることができる。さらに、装置構成が簡易であることから、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減することも容易に達成できる。したがって、本実施形態における水蒸気電解装置及び方法は、全体として高効率に水蒸気を電気分解することができる。
【0056】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法の第3の実施の形態について、図8を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図8は平板型電気化学セルを単体で適用した場合の実施の形態を示したものである。
【0057】
図8に示したように、この第3の実施の形態に係る水蒸気電解装置60は、主に、電気化学セル61と、該電気化学セルを格納する容器12と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する供給部13と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部14と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部15と、水素極側電流リード部16と、酸素極側電流リード部17と、から構成されている。
【0058】
ここで示した電気化学セル61は、第1の実施の形態と同様に平板型のものを示したが、これに限定されるものではないことは第1の実施の形態と同様である。また、第3の実施の形態に係る水蒸気電解装置60は、電気化学セル61以外は第1の実施の形態と同一の構成を有している。以下、相違点のみについて説明する。
【0059】
この電気化学セル61は、平板状の固体酸化物を主として含有する電解質61aを基体とし、それを挟む形で水素極及び酸素極が設けられている平板型の電気化学セルである点は第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態における水素極は水素極61b及び61d、酸素極は酸素極61c及び61eからなるものであり、それぞれガスの供給部側とガスの排出部側で異なる材料の電極で構成されたものである。
【0060】
このように構成された本実施の形態において、水素極側の雰囲気は、従来のガスより還元雰囲気が低減されている水蒸気を主な成分とするガスであり、それは水蒸気供給部13側で顕著であり、水素ガス排出部側に向かって、水蒸気が電解されて水素を生成するため、還元雰囲気が増長するようになっている。よって、水蒸気供給部側の水素極61bの電極を、耐酸化性材料により形成することにより、電極の酸化劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。
【0061】
この場合、耐酸化性材料としては、従来使用されていた水素極の材質(Ni−YSZ、Ni−SDC等)よりも耐酸化性に優れた材質であればその種類は特に制限されるものではなく、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属が挙げられ、水素極をこれら貴金属を単独で用いて形成しても構わないし、これら貴金属の合金や、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDC等の多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメット(セラミックと金属との混合物)を用いてもよい。サーメットを用いる場合には、貴金属の混合割合が0.1〜2質量%とすることが好ましい。
【0062】
また、水素ガス排出部側に配した水素極61dの材質は、特に制限されずに用いることができ、例えば、Ni−YSZやNi−SDCなどを用いてもよい。
【0063】
また、水蒸気を含むガスの供給部側に配した水素極61bと水素ガス排出部側に配した水素極61dの構成割合は特に制限されず、電流の大きさや水蒸気の利用率等のそのときの状況に応じて適宜決定すればよい。
【0064】
ここで、本実施の形態では、水素極を2つの異なる材料により形成するものとし、水蒸気供給部13側を耐酸化性材料を含むものとしたが、これをさらに3以上の異なる材料により形成することもできる。その場合には、使用する電極材料のうち、水蒸気供給部13側を耐酸化性に最も優れた材料とし、水素ガス排出部14側に向かって段階的に耐酸化性が低下するように材料を接合して設けてもよい。
【0065】
一方、酸素極側は、従来のガスより還元雰囲気が低減されている水蒸気を主な成分とするガスであり、それは水蒸気供給部13側で顕著であり、酸素ガス排出部15側に向かって、水素極側の水蒸気の電解によって生成した酸化物イオンが、電解質を移動して、酸素極側で酸素を再生成するため、酸化雰囲気が増長されるようになっている。よって、ガスの供給部側の酸素極61cの電極を、耐還元性材料により形成することにより、電極の還元劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。
【0066】
この場合、耐還元性材料としては、耐還元性材料を含有して形成されるもので、還元により、電気伝導性、触媒活性などの電気化学反応に必要な機能が失われないものであればよい。この場合、耐還元性材料は、従来使用されていた酸素極の材質(LSM、LSC)よりも耐還元性に優れた材質であればその種類は特に制限されるものではなく、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属が挙げられ、酸素極をこれら貴金属を単独で用いて形成しても構わないし、これら貴金属の合金としてもよい。
【0067】
また、酸素ガス排出部側に配した酸素極61eの材質は、特に制限されずに用いることができ、例えば、LSMやLSCなどを用いてもよい。
【0068】
また、水蒸気を含むガスの供給部側に配した酸素極61cと酸素ガス排出部側に配した酸素極61eの構成割合は特に制限されず、電流の大きさや水蒸気の利用率等のそのときの状況に応じて適宜決定すればよい。
【0069】
ここで、本実施の形態では、酸素極を2つの異なる材料により形成するものとし、水蒸気供給部13側を耐還元性材料を含むものとしたが、これをさらに3以上の異なる材料により形成することもできる。その場合には、使用する電極材料のうち、水蒸気供給部13側を耐還元性に最も優れた材料とし、酸素ガス排出部15側に向かって段階的に耐還元性が低下するように材料を接合して設けてもよい。
【0070】
本実施の形態によれば、簡易な装置構造を形成でき、かつ、水素極及び酸素極の両電極が酸化又は還元されることを効率的に抑制し、電極の長寿命化を図ることができる。さらに、装置構成が簡易であることから、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減することも容易に達成できる。したがって、本実施形態における水蒸気電解装置及び方法は、全体として高効率に水蒸気を電気分解することができる。
【0071】
(第4の実施の形態)
次に、本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法の第4の実施の形態について、図9を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図9は平板型電気化学セルを単体で適用した場合の実施の形態を示したものである。
【0072】
図9に示したように、この第4の実施の形態に係る水蒸気電解装置70は、主に、電気化学セル71と、該電気化学セルを格納する容器12と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する供給部13と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部14と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部15と、水素極側電流リード部16と、酸素極側電流リード部17と、から構成されている。
【0073】
この電気化学セル71は、平板状の固体酸化物を主として含有する電解質71aを基体とし、それを挟む形で水素極71b及び酸素極71cが設けられている平板型の電気化学セルである点は第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態における水素極及び酸素極は、それぞれ耐酸化性材料又は耐還元性材料を含有する割合が、ガスの供給部側から排出部側に向けて減少するように構成されるものである。
【0074】
すなわち、水素極71bは、水蒸気供給部13側からガスの水素ガス排出部14側に向かって、耐酸化性材料を含有する濃度が傾斜的に減少していくように形成されたものであり、酸素極71cは、水蒸気供給部13側から酸素ガス排出部15側に向かって、耐還元性材料を含有する濃度が傾斜的に減少していくように形成されたものである。
【0075】
このように構成された本実施の形態において、水素極71b側の雰囲気は、従来のガスより還元雰囲気が低減されている水蒸気を主な成分とするガスであり、それは水蒸気供給部13側で顕著であり、水素ガス排出部側に向かって、水蒸気が電解されて水素を生成するため、還元雰囲気が増長するようになっている。よって、水素極71bは、ガスの供給部側の耐酸化性材料の組成比が多くなっており、排出部側に向かって、徐々に耐酸化性材料の組成比を減らすように濃度の傾斜した構成を有する電極であるため、電極材料の酸化劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。
【0076】
この場合、耐酸化性材料としては、従来使用されていた水素極の材質(Ni−YSZ、Ni−SDC等)よりも耐酸化性に優れた材質であればその種類は特に制限されるものではなく、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属が挙げられ、水素極をこれら貴金属を単独で用いて形成しても構わないし、これら貴金属の合金や、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDC等の多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメット(セラミックと金属との混合物)を用いてもよい。サーメットを用いる場合には、貴金属の混合割合が0.1〜2質量%とすることが好ましい。
【0077】
一方、酸素極側は、従来のガスより還元雰囲気が低減されている水蒸気を主な成分とするガスであり、それは水蒸気供給部13側で顕著であり、酸素ガス排出部15側に向かって、水素極側の水蒸気の電解によって生成した酸化物イオンが、電解質を移動して、酸素極側で酸素を再生成するため、酸化雰囲気が増長されるようになっている。よって、酸素極71cは、ガスの供給部側の耐還元性材料の組成比が多くなっており、排出部側に向かって、徐々に耐還元性材料の組成比を減らすように濃度の傾斜した構成を有する電極であるため、電極材料の還元劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。
【0078】
この場合、耐還元性材料としては、耐還元性材料を含有して形成されるもので、還元により、電気伝導性、触媒活性などの電気化学反応に必要な機能が失われないものであればよい。この場合、耐還元性材料は、従来使用されていた酸素極の材質(LSM、LSC)よりも耐還元性に優れた材質であればその種類は特に制限されるものではなく、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属が挙げられ、酸素極をこれら貴金属を単独で用いて形成しても構わないし、これら貴金属の合金としてもよい。
【0079】
本実施の形態によれば、簡易な装置構造を形成でき、かつ、水素極及び酸素極の両電極が酸化又は還元されることを効率的に抑制し、電極の長寿命化を図ることができる。さらに、装置構成が簡易であることから、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減することも容易に達成できる。したがって、本実施形態における水蒸気電解装置及び方法は、全体として高効率に水蒸気を電気分解することができる。
【0080】
(第5の実施の形態)
次に、本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法の第5の実施の形態について、図10を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図10は平板型電気化学セルを単体で適用した場合の実施の形態を示したものである。
【0081】
図10に示したように、この第5の実施の形態に係る水蒸気電解装置80は、主に、電気化学セル11と、該電気化学セルを格納する容器12と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する供給部13と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部14と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部15と、水素極側電流リード部16と、酸素極側電流リード部17と、水素極側雰囲気に還元性ガスを供給する還元性ガス供給部83aと、酸素極側雰囲気に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給部83bと、から構成されている。
【0082】
この電気化学セル11は、第1の実施の形態と同一のものであり、本実施の形態においては、この電気化学セル11の水蒸気供給部13側に、還元性ガス供給部83aと酸化性ガス供給部83bとが設けられている以外は、第1の実施の形態と同一の構成となっている。
【0083】
すなわち、この電気化学セル11の水素極11b側において、還元性ガスを供給する還元性ガス供給部83aが、水素極11bの水蒸気供給部側表面を還元雰囲気にするように還元性ガスを供給することができるように設けられている。また、酸素極11c側において、酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給部83bが、酸素極11cの水蒸気供給部側表面を酸化雰囲気にするように酸化性ガスを供給することができるように設けられている。
【0084】
この電気化学セル11の水素極11b側は、水蒸気が主な成分である供給ガスに、還元性ガスを供給することにより、還元雰囲気が増長されるため、電極材料の酸化劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。用いる還元性ガスとしては、水素が挙げられるが、還元雰囲気を増長させることができるものであれば、特に種類は制限されない。
【0085】
この還元性ガスの供給場所は、特に水蒸気により酸化される可能性が高い部分、例えば、水蒸気供給部13側のセル端部を十分に還元性雰囲気とすることができるようなものとすることが好ましい。
【0086】
一方、酸素極11c側は、水蒸気が主な成分である供給ガスに、酸化性ガスを供給することにより、酸化雰囲気が増長されるため、電極材料の還元劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。用いる酸化性ガスとしては、酸素、空気等が挙げられるが、酸化雰囲気を増長させることができるものであれば、特に種類は限定されない。
【0087】
この酸化性ガスの供給場所は、特に水蒸気により還元される可能性が高い部分、例えば、水蒸気供給部13側のセル端部を十分に酸化雰囲気とすることができるようなものとすることが好ましい。
【0088】
本実施の形態によれば、簡易な装置構造を形成でき、かつ、水素極及び酸素極の両電極が酸化又は還元されることを効率的に抑制し、電極の長寿命化を図ることができる。さらに、装置構成が簡易であることから、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減することも容易に達成できる。したがって、本実施形態における水蒸気電解装置及び方法は、全体として高効率に水蒸気を電気分解することができる。
【0089】
(第6の実施の形態)
次に、本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法の第6の実施の形態について、図11を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図11は平板型電気化学セルを単体で適用した場合の実施の形態を示したものである。
【0090】
図11に示したように、この第6の実施の形態に係る水蒸気電解装置90は、主に、電気化学セル11と、該電気化学セルを格納する容器12と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する供給部13と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部14と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部15と、水素極側電流リード部16と、酸素極側電流リード部17と、水素ガス排出部から排出されるガスの一部を水素極側雰囲気に循環させる水素ガス循環供給部93aと、酸素ガス排出部から排出されるガスの一部を酸素極側雰囲気に循環させる酸素ガス循環供給部93bと、水素ガスを循環させるためのブロアー94aと、酸素ガスを循環させるためのブロアー94bと、から構成されている。
【0091】
この電気化学セル11は、第1の実施の形態と同一のものであり、本実施の形態においては、この電気化学セル11の水蒸気供給部13側に、水素ガス循環供給部93aと酸素ガス循環供給部93bと、水素ガスを循環させるためのブロアー94aと、酸素ガスを循環させるためのブロアー94bと、が設けられている以外は第1の実施の形態と同一の構成となっている。
【0092】
すなわち、この電気化学セル11の水素極11b側においては、水素ガス排出部14から排出されるガスの一部を、水素極11bの表面を還元雰囲気にするように循環させて供給することができるように設けられている。また、酸素極11c側には、酸素ガス排出部15から排出されるガスの一部を、酸素極11cの表面を酸化雰囲気にするように循環させて供給することができるように設けられている。
【0093】
この電気化学セル11の水素極11b側は、水蒸気が主な成分である供給ガスに、水素ガス排出部14から排出されるガスの一部を循環して供給することにより、水素ガス濃度が高まり還元雰囲気が増長されるため、電極材料の酸化劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。水素ガス排出部14から排出されるガスは、水素ガスが主な成分であるため、還元雰囲気を増長するために別の還元性ガスを用意する必要がなく、水素極11bの電解特性を低コストで有効に維持することができる。
【0094】
この生成した水素ガスの供給場所は、特に水蒸気により酸化される可能性が高い部分、例えば、水蒸気供給部13側のセル端部を十分に還元性雰囲気とすることができるようなものとすることが好ましい。
【0095】
一方、酸素極11c側は、水蒸気が主な成分である供給ガスに、酸素ガス排出部15から排出されるガスの一部を循環して供給することにより、酸素ガス濃度が高まり酸化雰囲気が増長されるため、電極材料の還元劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。酸素ガス排出部15から排出されるガスは、酸素ガスが主な成分となっているため、生成した酸素ガスを循環させることで、酸化雰囲気を増長するために別の供給ガスを用意する必要がなく、酸素極11cの電解特性を低コストで有効に維持することができる。
【0096】
この生成した酸素ガスの供給場所は、特に水蒸気により還元される可能性が高い部分、例えば、水蒸気供給部13側のセル端部を十分に酸化雰囲気とすることができるようなものとすることが好ましい。
【符号の説明】
【0097】
10…水蒸気電解装置、11…電気化学セル、11a…電解質、11b…水素極、11c…酸素極、12…容器、13…水蒸気供給部、14…水素ガス排出部、15…酸素ガス排出部、16…水素極側電流リード部、17…酸素極側電流リード部、83a…還元性ガス供給部、83b…酸化性ガス供給部、93a…水素ガス循環供給部、93b…酸素ガス循環供給部、94a…ブロアー、94b…ブロアー、100…水蒸気電解装置、101…電気化学セル、102…水蒸気供給室、103…生成水素排出室、104…水蒸気注入管、105…酸素生成室、106…電流リード用金属キャップ、107…シールキャップ、108…テーパ型シーリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素極と酸素極とに供給するガスを同一の水蒸気とした簡易な装置構造により形成され、電極を長寿命化して、高効率に水蒸気を電気分解して水素を製造することができる水蒸気電解装置及び水蒸気電解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温水蒸気電解法は、高温の水蒸気を電気分解することにより水素と酸素とを得る方法で、その動作原理は固体電解質燃料電池(以下、SOFCと称する。)の逆反応である。
【0003】
高温水蒸気電解を行うには、一般には、固体酸化物電解質材料を介して水素極と酸素極の電極を設けた電気化学セルを用い、この電気化学セルによる水蒸気の電気分解によって得られる水素と酸素とを隔てる構造が必要である。従来、水素極側雰囲気は、燃料となる水蒸気と水素が主成分となり、一方、酸素極側雰囲気は、供給ガスを空気とした場合、窒素と酸素が主な成分となり、供給ガスを酸素とした場合は、酸素が主な成分となる。この場合、両極へ供給するガスの種類が全く異なり、夫々に対して、ガスの供給機構が必要となり、構成が複雑であった。
【0004】
また、電気化学セルの構造は、平板型や円筒型などがあり、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気は電気化学セルを構成している固体酸化物電解質の緻密構造とセル端部のガスシールにより分け隔てられ、相互への雰囲気ガスのリークを最小限にとどめている。電気化学セル単体で使用する場合であれば、セル端部のガスシールは比較的容易であるが、これらを積層するなどして集合体として使用する場合、特にセル端部のガスシール信頼性は低下すると考えられる。
【0005】
ここで、円筒型セルを複数配置した従来の高温水蒸気電解装置(特許文献1参照)を例にとり、以下、図面を参照しながら説明する。従来の高温水蒸気電解装置の構造模式図を図12に、セル周辺部の構造を図13に示した。
【0006】
図12に示したように、水蒸気電解装置100の主要構成部は、円筒型の電解セル101と、水蒸気供給室102と、水蒸気及び生成水素排出室103と、水蒸気注入管104と、酸素生成室105と、からなっている。
【0007】
そして、図13に示したように、この電気化学セル101は、その片端に、電流リード用金属キャップ106が設けられ、他端にはシールキャップ107を設けて閉構造とし、セルでの燃料の供給・排出を一方の端部のみで行うようになっている。また、管板とのシール部においてセルを支持する。電流リードは、水素極側電流リード部はテーパ型シーリング108を用いて取り出され、酸素極側はセル下端のセルリード部がシールキャップ107に固定されてセル内部に導入され、還元雰囲気を通って電流リード用金属キャップ106から取り出される構成となっている。
【0008】
この構成の場合、水素極側と酸素極側の雰囲気ガスがそれぞれ、水素極側では水素及び水蒸気、酸素極側では窒素及び酸素であるため、ガス導入部を分割しなければならず、構造的に複雑である。また、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気のガスシール部はセル上下の2箇所となり、かつ、該ガスシール部は、いずれの場合でもセルリード部を含んだシール構造となっているため、確実で信頼性のあるシールの実現が困難である。さらには、高温で使用するため、シールの寿命が短命化しやすく、これを長命化することも課題であった。
【0009】
これらの課題についての一つの有力な解決方法としては、特許文献2に示されるように、固体酸化物を主な素材とする電解質と、水素極と、酸素極と、を主な構成要素とする電気化学セルを用いて、水蒸気を電気分解し、水素を生成する水蒸気電解において、水素極及び酸素極に供給するガスが、いずれも水蒸気を主な成分とすることを基本とし、供給条件や、流れ条件などを特徴とする水蒸気電解方法及び装置を、また、水素極雰囲気と酸素極雰囲気とを分け隔てる、シール部分近傍に、水素及び酸素以外の不活性ガスや水蒸気を主な成分とするガスを供給することを特徴とする水蒸気電解方法及び装置を提案した。
【0010】
これらによって、装置構造を簡易化し、また、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減し、できるだけ緩和・簡易・安全な運転が可能な高温水蒸気電解方法及び装置を得ることが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平3−62460号公報
【特許文献2】特開2007−63619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、水素極材料としては、一般的に、Ni−YSZ(ニッケル−イットリア安定化ジルコニア)、Ni−SDC(ニッケル−セリア)等の材料が用いられているが、これらの材料は還元性雰囲気で使用されており、また酸素極材料は、一般的に、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)等の複合酸化物が用いられているが、これらの複合酸化物材料は、低濃度の酸素雰囲気での使用に際しては、結晶構造を構成する酸素の離脱により構造が変化し、共に水蒸気を主成分とするガスにおいては、その特性維持が困難となる場合がある。
【0013】
そこで、本発明は、水素極と酸素極とで共通のガスとして水蒸気を用いる水蒸気電解装置及び方法の発明における利点を保持しながら、電気化学セルにおける電極の酸化・還元劣化を抑制しつつ、効率的に水蒸気を電気分解することができる高温水蒸気電解装置及び方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討した結果、電極の材料として、水素極側の電極に耐酸化性の材料及び/又は酸素極側の電極に耐還元性の材料を用いることによって、電気化学セルの性能・耐久性を向上させることができることを見出し、本発明を完成したものである。
【0015】
すなわち、本発明に係る水蒸気電解装置は、固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、同一の水蒸気を水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部と、水蒸気の電気分解により水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部と、水蒸気の電気分解により酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部と、を有する水蒸気電解装置であって、酸素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐還元性材料を含有し、耐還元性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属又は該貴金属の合金であることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係る他の水蒸気電解装置は、固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、同一の水蒸気を前記水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部と、水蒸気の電気分解により水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部と、水蒸気の電気分解により酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部と、を有する水蒸気電解装置であって、水素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐酸化性材料を含有し、耐酸化性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属、該貴金属の合金又はYSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDCの多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメットであることを特徴とするものである。
【0017】
さらに、本発明に係る他の水蒸気電解装置は、固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、同一の水蒸気を水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部と、水蒸気の電気分解により水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部と、水蒸気の電気分解により酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部と、を有する水蒸気電解装置であって、水素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐酸化性材料を含有し、かつ、酸素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐還元性材料を含有し、耐還元性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属又は該貴金属の合金であり、耐酸化性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属、該貴金属の合金又はYSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDCの多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメットであることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る他の水蒸気電解方法は、同一の水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、供給された水蒸気を、固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルの前記水素極及び酸素極に接触させて、水蒸気を電気分解して水素ガスと酸素ガスを生成する電解工程と、水素ガスと前記酸素ガスが互いにリークしないように別々に排出されるガス排出工程と、を有する水蒸気電解方法において、水素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐酸化性材料を含有し、かつ、酸素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐還元性材料を含有し、耐還元性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属又は該貴金属の合金であり、耐酸化性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属、該貴金属の合金又はYSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDCの多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメットであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水蒸気電解装置及び方法によれば、簡易な装置構造を形成でき、かつ、電気化学セルにおける電極の酸化・還元劣化を抑制して、効率的に水蒸気を電気分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】平板型電気化学セルを用いた水蒸気電解装置の概略構成を示した斜視図
【図2】図1に示した水蒸気電解装置の側断面図
【図3】円筒型電気化学セルを用いた水蒸気電解装置の概略構成を示した斜視図
【図4】図3に示した水蒸気電解装置の側断面図
【図5】片端閉じ円筒型の電気化学セルを用いた水蒸気電解装置の側断面図
【図6】水素極側と酸素極側とでガスの流れ方向を逆方向にした水蒸気電解装置の側断面図
【図7】第2の実施の形態に係る水蒸気電解装置の構成概略を示した側断面図
【図8】第3の実施の形態に係る水蒸気電解装置の構成概略を示した側断面図
【図9】第4の実施の形態に係る水蒸気電解装置の構成概略を示した側断面図
【図10】第5の実施の形態に係る水蒸気電解装置の構成概略を示した側断面図
【図11】第6の実施の形態に係る水蒸気電解装置の構成概略を示した側断面図
【図12】従来の高温水蒸気電解装置の構造模式図
【図13】従来のセル周辺部の構造図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法の第1の実施の形態について、図1〜6を参照しながら説明する。図1は平板型電気化学セルを単体で適用した場合の水蒸気電解装置の構成概略を示した斜視図(内部構造については、容器内部の電気化学セルのみ破線で示した。)であり、図2はその側断面図である。
【0023】
まず、図1及び図2に示したように、この第1の実施の形態に係る水蒸気電解装置10は、主に、電気化学セル11と、該電気化学セル11を格納する容器12と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する水蒸気供給部13と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部14と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部15と、水素極側電流リード部16と、酸素極側電流リード部17と、から構成されている。
【0024】
本発明で用いる電気化学セルは、固体酸化物を主として含有する電解質を水素極及び酸素極で挟持して構成されたものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、図2に示したように、平板状の固体酸化物を主として含有する電解質11aを基体とし、それを挟む形で水素極11b及び酸素極11cを設けた平板型の電気化学セル11が一例として挙げられる。
【0025】
ここで用いる電解質は、固体酸化物を主として含有するものであり、例えば、ZrO2に、Y2O3、Sc2O3、Nd2O3、Sm2O3、Gd2O3、Yb2O3等を固溶した安定化ジルコニア系の電解質、CeO2に、Sm2O3、Gd2O3、Y2O3等を固溶したセリア系の電解質、LaSrGaMgO3等のLaGaO3を母体に一部元素を置換したランタンガレード系の電解質、SrCeO3、BaCeO3やこれらを母体として一部を元素を置換した電解質等のプロトン導電体、Bi2O3に、Y2O3、Nd2O5、WO3、Gd2O3等を固溶した酸化ビスマス系の電解質、La2Zr2O7、La2Zr2O7、Sm2Zr2O7、Gd2Zr2O7等のパイロクロール型酸化物系等の電解質が挙げられる。
【0026】
さらに、ここで用いる水素極11bは、耐酸化性材料を含有して形成されたもので、酸化により、電気伝導性、触媒活性などの電気化学反応に必要な機能が失われないものであればよい。ここで、電極に耐酸化性材料を含有させることで、供給ガスに、従来のガスより還元雰囲気が低減されている水蒸気を主な成分とするガスを用いても、電極の酸化劣化を低減させることを可能としたものである。
【0027】
この場合、耐酸化性材料は、従来使用されていた水素極の材質(Ni−YSZ、Ni−SDC等)よりも耐酸化性に優れた材質であればその種類は特に制限されるものではなく、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属が挙げられ、水素極をこれら貴金属を単独で用いて形成しても構わないし、これら貴金属の合金や、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリア置換セリア)、GDC(ガドリニウム置換セリア)、LDC(ランタニウム置換セリア)等の多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメット(セラミックと金属との混合物)としてもよい。サーメットを用いる場合には、貴金属の混合割合が0.1〜2質量%とすることが好ましい。
【0028】
一方、ここで用いる酸素極11cは、耐還元性材料を含有して形成されるもので、還元により、電気伝導性、触媒活性などの電気化学反応に必要な機能が失われないものであればよい。ここで、電極に耐還元性材料を含有させることで、供給ガスに、従来のガスより酸化雰囲気が低減されている水蒸気を用いても、電極の還元劣化を低減させることを可能としたものである。
【0029】
この場合、耐還元性材料は、従来使用されていた酸素極の材質(LSM、LSC)よりも耐還元性に優れた材質であればその種類は特に制限されるものではなく、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属が挙げられ、酸素極をこれら貴金属を単独で用いて形成しても構わないし、これら貴金属の合金としてもよい。
【0030】
また、本実施の形態ではこのように構成された電気化学セル11は、容器12に格納され、この容器12は原料となる水蒸気を主成分とするガスを、電気化学セル11の水素極11b及び酸素極11cにそれぞれ導き、この水蒸気を電気分解することにより水素ガスと酸素ガスを生成させ、それぞれ排出するように構成されている。すなわち、この容器12には、水蒸気を主成分とするガスを供給する水蒸気供給部13、水素極側で生成した水素ガスと原料ガスの混合ガスを排出する水素ガス排出部14、酸素極側で生成された酸素ガスと原料ガスの混合ガスを排出する酸素ガス排出部15が形成されており、水素ガスと酸素ガスは互いにリークして混合しないように電気化学セルの端部がシールされている。
【0031】
この電気化学セル端部のシール方法に関しては、水素極側と酸素極側のガスが互いにリークしないようにするものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス材料やセラミック材料などを用いて、電気化学セル11と、容器12を接合し、シールする方法が挙げられる。
【0032】
この他に、例えば、図1の平板型電気化学セルを用いる場合、容器12に、電気化学セル11を支持・固定する支持・固定部を、機械的に溝を設けることで形成し、電気化学セル11を支持・固定するのみで、簡易的なシールが可能である。さらには、セラミック材料やガラス材料で接合を補強することにより、シール性能を向上させることができる。
【0033】
そして、この電気化学セル11は、水素極に水素極側電流リード部16、酸素極に酸素極側電流リード部17が接続され、これら両リード部により、酸素極と水素極に電圧をかけることができるようになっている。
【0034】
このように構成された本実施の形態に係る水蒸気電解装置10において、水素極11b側及び酸素極11c側に供給されるガスは、水蒸気を主成分とする同一のガスを導入するため、供給部13を共用することができる。従って、従来のように、例えば、水素極側では水蒸気及び還元性ガスを供給し、酸素極側に空気を供給するといった、両極で全く異なるガスを導入するための機器及び機構が不必要となり、簡易な装置構造を有する水蒸気電解装置とすることができる。また、供給部を同一としていることから、両極の供給圧は同一となるため、セル端部におけるガスリークを最小限にとどめることも可能となる。
【0035】
本実施の形態では平板型の電気化学セルを示したが、本発明においては、特に、その形態が問われるものではなく、電気化学セルの形態としては、平板型、円筒型、片端閉じ円筒型、ハニカム型、プリーツ型、波型等を用いることもできる。そして、このセルは単体でも複数を用いた集合体でも構わないし、その大きさについても、十分に電気分解を行うことができるものであれば、特に制限されるものではない。
【0036】
例えば、円筒型の電気化学セルを用いた水蒸気電解装置について、図3に円筒型電気化学セルを用いた場合の水蒸気電解装置の構成概略を示した斜視図(内部構造については、容器内部の電気化学セルのみ破線で示した。)、図4にその側断面図を示した。この水蒸気電解装置20は、主に、電気化学セル21と、該電気化学セル21を格納する容器22と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する水蒸気供給部23と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部24と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部25と、水素極側電流リード部26と、酸素極側電流リード部27と、から構成されている。この円筒型の電気化学セル21は、円筒型の電解質21aを基体とし、その内側に水素極21bを、その外側に酸素極21cを設けて構成されたものである。
【0037】
この図3及び図4の円筒型電気化学セル21を用いる場合、セルの端部を容器22に支持・固定して、セルにシールを施しているが、特に、支持・固定位置は限定されるものではない。例えば、セルの基体部分を長くし、セル途中部分で容器22に支持・固定し、セルにシールを施すこともできる。水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部24を高温の反応部から離せば、シール部を反応部から離して温度を低い条件とすることが可能となるため、高温環境では使用できなかったシール材料や方法の選択肢が増え、シール性能を向上させることができる。これにより、水素極及び酸素極の一方の雰囲気から他方の雰囲気へのガスリークを軽減することが容易に、効果的に行うことができる。
【0038】
さらに、片端閉じ円筒型の電気化学セルは、その形状は円筒型の片側の端部が閉塞して、一方のみが開放された形状であり、これを用いた水蒸気電解装置について、図5にその側断面図を示した。この片端閉じ円筒型の電気化学セルを適用した水蒸気電解装置30は、主に、電気化学セル31と、該電気化学セル31を格納する容器32と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する水蒸気供給部33と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部34と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部35と、水素極側電流リード部36と、酸素極側電流リード部37と、から構成されている。
【0039】
ここで、水素極及び酸素極に供給する水蒸気を主成分とするガスの供給条件、例えば、水蒸気供給流量、供給流速等は、本実施の形態では同一として説明したが、同一に限るものではなく、異なっても構わない。水素極及び酸素極に供給する水蒸気を主成分とするガスの供給条件が異なる場合には、供給条件を調整できる仕組みを組み込み、供給流量や供給流速などを調整すればよく、例えば、水素極及び酸素極のそれぞれのガス排出部において、流量調整弁を設けたり、配管径を調整する等を実施すればよく、供給条件を調整できる仕組みについては、特にその方法、機構などは問わない。
【0040】
また、このように構成された本実施の形態において、水素極と酸素極に供給するガスの流れ方向については、特に限定されるものではなく、水素極と酸素極に供給するガスの流れが、互いに逆方向でも直交方向でも、それ以外のものでもよい。
【0041】
例えば、水素極と酸素極に供給するガスの流れを逆方向として、ガスを流して運転した場合の構成の一例を図6に示した。図6は平板型電気化学セルを単体で適用したものである。この場合、水素極41b側では、ガスの供給部43a側からガスの排出部44側に向かって水素濃度が高い雰囲気となる。一方、酸素極41c側では、水素極側とガスの流れ方向が逆となる。すなわち、水素極側でガスの排出部44側が、酸素極側ではガスの供給部43bになる。よって、水素極側で水素濃度が高い雰囲気に対して、酸素極側では酸素濃度が低い雰囲気となる。そのため、微量の水素がリークした場合も、酸素が少ないため、燃焼反応は最小限に抑制することが可能となり、水素極側への微量の酸素リークが生じた場合も同様の効果が得られる。
【0042】
本実施の形態によれば、簡易な装置構造により形成でき、かつ、水素極が酸化されたり、酸素極が還元されたりすることを抑制し、電極の長寿命化を図ることができる。さらに、装置構成が簡易であることから、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減することも容易に達成できる。したがって、本実施形態における水蒸気電解装置及び方法は、全体として高効率に水蒸気を電気分解することができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法の第2の実施の形態について、図7を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図7は平板型電気化学セルを単体で適用した場合の側断面図の構成概略を示したものである。
【0044】
図7に示したように、この第2の実施の形態に係る水蒸気電解装置50は、主に、電気化学セル51と、該電気化学セルを格納する容器12と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する水蒸気供給部13と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部14と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部15と、水素極側電流リード部16と、酸素極側電流リード部17と、から構成されている。
【0045】
ここで示した電気化学セル51は、第1の実施の形態と同様に平板型のものを示したが、これに限定されるものではないことも第1の実施の形態と同様である。また、第2の実施の形態に係る水蒸気電解装置50は、電気化学セル51以外は第1の実施の形態と同一の構成を有している。以下、相違点のみについて説明する。
【0046】
この電気化学セル51は、平板状の固体酸化物を主として含有する電解質51aを基体とし、それを挟む形で水素極51b及び酸素極51cが設けられている平板型の電気化学セルである点で第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態における水素極及び酸素極は、電極材料に耐酸化性材料又は耐還元性材料を添加して作成されたものである。すなわち、水素極51bは、耐酸化性材料を他の電極材料に添加し、酸素極51cは、耐還元性材料を他の電極材料に添加して形成されたものである。
【0047】
このように構成された本実施の形態において、水素極51b側の雰囲気は、従来のガスより還元雰囲気が低減されている水蒸気を主な成分とするガスであるため、水素極層内部では、電極材料粒子の表面において、部分的に電極材料が酸化されて電気化学反応活性が低下するが、電解反応により逐次水素が生成されて還元雰囲気が増長されるようになっている。このように還元雰囲気が増長されると、その近辺には添加により混合又は分散された耐酸化性材料が存在し、水蒸気電解反応によって生成された水素によって、酸化された電極材料が再還元され、電気化学反応活性が回復して、効果的に水蒸気電解反応を行うことが可能となる。したがって、水素極の酸化劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。
【0048】
このとき、水素極51bの製造は、電極材料に耐酸化性材料を添加したものを用いるが、ここで添加とは、混合又は分散させることをいい、混合とは、対象となるそれぞれの粉体を機械的に混合することをいい、分散とは、成形された電極材料に耐酸化性材料を含む液体を含浸させることをいう。このように電極材料に耐酸化性材料を添加したものを所望の形状とし、焼成して水素極用の電極を製造することができる。
【0049】
ここで、水素極の電極材料としては、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDC等のセラミックが挙げられ、耐酸化性材料としては、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属材料が挙げられる。
【0050】
ここで、添加の割合は特に限定されないが、酸化劣化を効果的に低減する観点から、耐酸化性材料を0.1〜2質量%含有するような量とすることが好ましい。また、水蒸気を含む水蒸気供給部側で耐酸化性材料の組成比を多くし、ガス排出部側に向かって、徐々に耐酸化性材料の組成比を減らした、傾斜構成としてもよい。
【0051】
一方、酸素極51c側について、従来のガスより酸化雰囲気が低減されている水蒸気が主な成分となるガスであるため、酸素極層内部では、電極材料粒子の表面において、部分的に電極材料が還元されて電気化学反応活性が低下するが、電解反応により酸化物イオンが酸素へ再生成されることにより、逐次酸素が生成され、酸化雰囲気が増長されると、その近辺には添加された耐還元性材料が存在し、酸素再生成反応によって生成された酸素によって、還元された電極材料が再酸化され、電気化学反応活性が回復して、効果的に水蒸気電解反応を行うことが可能となる。したがって、酸素極の還元劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。
【0052】
このとき、酸素極51cの製造は、電極材料に耐還元性材料を添加した物を用いるが、ここで添加とは、混合又は分散させることをいい、混合とは、対象となるそれぞれの粉体を機械的に混合することをいい、分散とは、成形された電極材料に耐還元性材料を含む液体を含浸することをいう。このように電極材料に耐還元性材料を添加した物を所望の形状とすることで酸素極用の電極を製造することができる。
【0053】
ここで、酸素極の電極材料としては、LSMやLSC等が挙げられ、耐還元性材料としては、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属材料が挙げられる。
【0054】
ここで、添加の割合は特に限定されないが、還元劣化を効果的に低減する観点から、耐還元性材料を0.1〜2質量%含有するような量とすることが好ましい。また、水蒸気を含む水蒸気供給部側で耐還元性材料の組成比を多くし、ガス排出部側に向かって、徐々に耐還元性材料の組成比を減らした、傾斜構成としてもよい。
【0055】
本実施の形態によれば、簡易な装置構造を形成でき、かつ、水素極及び酸素極の両電極が酸化又は還元されることを効率的に抑制し、電極の長寿命化を図ることができる。さらに、装置構成が簡易であることから、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減することも容易に達成できる。したがって、本実施形態における水蒸気電解装置及び方法は、全体として高効率に水蒸気を電気分解することができる。
【0056】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法の第3の実施の形態について、図8を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図8は平板型電気化学セルを単体で適用した場合の実施の形態を示したものである。
【0057】
図8に示したように、この第3の実施の形態に係る水蒸気電解装置60は、主に、電気化学セル61と、該電気化学セルを格納する容器12と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する供給部13と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部14と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部15と、水素極側電流リード部16と、酸素極側電流リード部17と、から構成されている。
【0058】
ここで示した電気化学セル61は、第1の実施の形態と同様に平板型のものを示したが、これに限定されるものではないことは第1の実施の形態と同様である。また、第3の実施の形態に係る水蒸気電解装置60は、電気化学セル61以外は第1の実施の形態と同一の構成を有している。以下、相違点のみについて説明する。
【0059】
この電気化学セル61は、平板状の固体酸化物を主として含有する電解質61aを基体とし、それを挟む形で水素極及び酸素極が設けられている平板型の電気化学セルである点は第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態における水素極は水素極61b及び61d、酸素極は酸素極61c及び61eからなるものであり、それぞれガスの供給部側とガスの排出部側で異なる材料の電極で構成されたものである。
【0060】
このように構成された本実施の形態において、水素極側の雰囲気は、従来のガスより還元雰囲気が低減されている水蒸気を主な成分とするガスであり、それは水蒸気供給部13側で顕著であり、水素ガス排出部側に向かって、水蒸気が電解されて水素を生成するため、還元雰囲気が増長するようになっている。よって、水蒸気供給部側の水素極61bの電極を、耐酸化性材料により形成することにより、電極の酸化劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。
【0061】
この場合、耐酸化性材料としては、従来使用されていた水素極の材質(Ni−YSZ、Ni−SDC等)よりも耐酸化性に優れた材質であればその種類は特に制限されるものではなく、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属が挙げられ、水素極をこれら貴金属を単独で用いて形成しても構わないし、これら貴金属の合金や、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDC等の多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメット(セラミックと金属との混合物)を用いてもよい。サーメットを用いる場合には、貴金属の混合割合が0.1〜2質量%とすることが好ましい。
【0062】
また、水素ガス排出部側に配した水素極61dの材質は、特に制限されずに用いることができ、例えば、Ni−YSZやNi−SDCなどを用いてもよい。
【0063】
また、水蒸気を含むガスの供給部側に配した水素極61bと水素ガス排出部側に配した水素極61dの構成割合は特に制限されず、電流の大きさや水蒸気の利用率等のそのときの状況に応じて適宜決定すればよい。
【0064】
ここで、本実施の形態では、水素極を2つの異なる材料により形成するものとし、水蒸気供給部13側を耐酸化性材料を含むものとしたが、これをさらに3以上の異なる材料により形成することもできる。その場合には、使用する電極材料のうち、水蒸気供給部13側を耐酸化性に最も優れた材料とし、水素ガス排出部14側に向かって段階的に耐酸化性が低下するように材料を接合して設けてもよい。
【0065】
一方、酸素極側は、従来のガスより還元雰囲気が低減されている水蒸気を主な成分とするガスであり、それは水蒸気供給部13側で顕著であり、酸素ガス排出部15側に向かって、水素極側の水蒸気の電解によって生成した酸化物イオンが、電解質を移動して、酸素極側で酸素を再生成するため、酸化雰囲気が増長されるようになっている。よって、ガスの供給部側の酸素極61cの電極を、耐還元性材料により形成することにより、電極の還元劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。
【0066】
この場合、耐還元性材料としては、耐還元性材料を含有して形成されるもので、還元により、電気伝導性、触媒活性などの電気化学反応に必要な機能が失われないものであればよい。この場合、耐還元性材料は、従来使用されていた酸素極の材質(LSM、LSC)よりも耐還元性に優れた材質であればその種類は特に制限されるものではなく、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属が挙げられ、酸素極をこれら貴金属を単独で用いて形成しても構わないし、これら貴金属の合金としてもよい。
【0067】
また、酸素ガス排出部側に配した酸素極61eの材質は、特に制限されずに用いることができ、例えば、LSMやLSCなどを用いてもよい。
【0068】
また、水蒸気を含むガスの供給部側に配した酸素極61cと酸素ガス排出部側に配した酸素極61eの構成割合は特に制限されず、電流の大きさや水蒸気の利用率等のそのときの状況に応じて適宜決定すればよい。
【0069】
ここで、本実施の形態では、酸素極を2つの異なる材料により形成するものとし、水蒸気供給部13側を耐還元性材料を含むものとしたが、これをさらに3以上の異なる材料により形成することもできる。その場合には、使用する電極材料のうち、水蒸気供給部13側を耐還元性に最も優れた材料とし、酸素ガス排出部15側に向かって段階的に耐還元性が低下するように材料を接合して設けてもよい。
【0070】
本実施の形態によれば、簡易な装置構造を形成でき、かつ、水素極及び酸素極の両電極が酸化又は還元されることを効率的に抑制し、電極の長寿命化を図ることができる。さらに、装置構成が簡易であることから、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減することも容易に達成できる。したがって、本実施形態における水蒸気電解装置及び方法は、全体として高効率に水蒸気を電気分解することができる。
【0071】
(第4の実施の形態)
次に、本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法の第4の実施の形態について、図9を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図9は平板型電気化学セルを単体で適用した場合の実施の形態を示したものである。
【0072】
図9に示したように、この第4の実施の形態に係る水蒸気電解装置70は、主に、電気化学セル71と、該電気化学セルを格納する容器12と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する供給部13と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部14と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部15と、水素極側電流リード部16と、酸素極側電流リード部17と、から構成されている。
【0073】
この電気化学セル71は、平板状の固体酸化物を主として含有する電解質71aを基体とし、それを挟む形で水素極71b及び酸素極71cが設けられている平板型の電気化学セルである点は第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態における水素極及び酸素極は、それぞれ耐酸化性材料又は耐還元性材料を含有する割合が、ガスの供給部側から排出部側に向けて減少するように構成されるものである。
【0074】
すなわち、水素極71bは、水蒸気供給部13側からガスの水素ガス排出部14側に向かって、耐酸化性材料を含有する濃度が傾斜的に減少していくように形成されたものであり、酸素極71cは、水蒸気供給部13側から酸素ガス排出部15側に向かって、耐還元性材料を含有する濃度が傾斜的に減少していくように形成されたものである。
【0075】
このように構成された本実施の形態において、水素極71b側の雰囲気は、従来のガスより還元雰囲気が低減されている水蒸気を主な成分とするガスであり、それは水蒸気供給部13側で顕著であり、水素ガス排出部側に向かって、水蒸気が電解されて水素を生成するため、還元雰囲気が増長するようになっている。よって、水素極71bは、ガスの供給部側の耐酸化性材料の組成比が多くなっており、排出部側に向かって、徐々に耐酸化性材料の組成比を減らすように濃度の傾斜した構成を有する電極であるため、電極材料の酸化劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。
【0076】
この場合、耐酸化性材料としては、従来使用されていた水素極の材質(Ni−YSZ、Ni−SDC等)よりも耐酸化性に優れた材質であればその種類は特に制限されるものではなく、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属が挙げられ、水素極をこれら貴金属を単独で用いて形成しても構わないし、これら貴金属の合金や、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDC等の多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメット(セラミックと金属との混合物)を用いてもよい。サーメットを用いる場合には、貴金属の混合割合が0.1〜2質量%とすることが好ましい。
【0077】
一方、酸素極側は、従来のガスより還元雰囲気が低減されている水蒸気を主な成分とするガスであり、それは水蒸気供給部13側で顕著であり、酸素ガス排出部15側に向かって、水素極側の水蒸気の電解によって生成した酸化物イオンが、電解質を移動して、酸素極側で酸素を再生成するため、酸化雰囲気が増長されるようになっている。よって、酸素極71cは、ガスの供給部側の耐還元性材料の組成比が多くなっており、排出部側に向かって、徐々に耐還元性材料の組成比を減らすように濃度の傾斜した構成を有する電極であるため、電極材料の還元劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。
【0078】
この場合、耐還元性材料としては、耐還元性材料を含有して形成されるもので、還元により、電気伝導性、触媒活性などの電気化学反応に必要な機能が失われないものであればよい。この場合、耐還元性材料は、従来使用されていた酸素極の材質(LSM、LSC)よりも耐還元性に優れた材質であればその種類は特に制限されるものではなく、例えば、Pt、Ru、Pd、Rh等の貴金属が挙げられ、酸素極をこれら貴金属を単独で用いて形成しても構わないし、これら貴金属の合金としてもよい。
【0079】
本実施の形態によれば、簡易な装置構造を形成でき、かつ、水素極及び酸素極の両電極が酸化又は還元されることを効率的に抑制し、電極の長寿命化を図ることができる。さらに、装置構成が簡易であることから、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減することも容易に達成できる。したがって、本実施形態における水蒸気電解装置及び方法は、全体として高効率に水蒸気を電気分解することができる。
【0080】
(第5の実施の形態)
次に、本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法の第5の実施の形態について、図10を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図10は平板型電気化学セルを単体で適用した場合の実施の形態を示したものである。
【0081】
図10に示したように、この第5の実施の形態に係る水蒸気電解装置80は、主に、電気化学セル11と、該電気化学セルを格納する容器12と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する供給部13と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部14と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部15と、水素極側電流リード部16と、酸素極側電流リード部17と、水素極側雰囲気に還元性ガスを供給する還元性ガス供給部83aと、酸素極側雰囲気に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給部83bと、から構成されている。
【0082】
この電気化学セル11は、第1の実施の形態と同一のものであり、本実施の形態においては、この電気化学セル11の水蒸気供給部13側に、還元性ガス供給部83aと酸化性ガス供給部83bとが設けられている以外は、第1の実施の形態と同一の構成となっている。
【0083】
すなわち、この電気化学セル11の水素極11b側において、還元性ガスを供給する還元性ガス供給部83aが、水素極11bの水蒸気供給部側表面を還元雰囲気にするように還元性ガスを供給することができるように設けられている。また、酸素極11c側において、酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給部83bが、酸素極11cの水蒸気供給部側表面を酸化雰囲気にするように酸化性ガスを供給することができるように設けられている。
【0084】
この電気化学セル11の水素極11b側は、水蒸気が主な成分である供給ガスに、還元性ガスを供給することにより、還元雰囲気が増長されるため、電極材料の酸化劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。用いる還元性ガスとしては、水素が挙げられるが、還元雰囲気を増長させることができるものであれば、特に種類は制限されない。
【0085】
この還元性ガスの供給場所は、特に水蒸気により酸化される可能性が高い部分、例えば、水蒸気供給部13側のセル端部を十分に還元性雰囲気とすることができるようなものとすることが好ましい。
【0086】
一方、酸素極11c側は、水蒸気が主な成分である供給ガスに、酸化性ガスを供給することにより、酸化雰囲気が増長されるため、電極材料の還元劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。用いる酸化性ガスとしては、酸素、空気等が挙げられるが、酸化雰囲気を増長させることができるものであれば、特に種類は限定されない。
【0087】
この酸化性ガスの供給場所は、特に水蒸気により還元される可能性が高い部分、例えば、水蒸気供給部13側のセル端部を十分に酸化雰囲気とすることができるようなものとすることが好ましい。
【0088】
本実施の形態によれば、簡易な装置構造を形成でき、かつ、水素極及び酸素極の両電極が酸化又は還元されることを効率的に抑制し、電極の長寿命化を図ることができる。さらに、装置構成が簡易であることから、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減することも容易に達成できる。したがって、本実施形態における水蒸気電解装置及び方法は、全体として高効率に水蒸気を電気分解することができる。
【0089】
(第6の実施の形態)
次に、本発明に係る高温水蒸気電解装置及び方法の第6の実施の形態について、図11を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図11は平板型電気化学セルを単体で適用した場合の実施の形態を示したものである。
【0090】
図11に示したように、この第6の実施の形態に係る水蒸気電解装置90は、主に、電気化学セル11と、該電気化学セルを格納する容器12と、水蒸気を主な成分とするガスを供給する供給部13と、水素極側雰囲気のガスを排出する水素ガス排出部14と、酸素極側雰囲気のガスを排出する酸素ガス排出部15と、水素極側電流リード部16と、酸素極側電流リード部17と、水素ガス排出部から排出されるガスの一部を水素極側雰囲気に循環させる水素ガス循環供給部93aと、酸素ガス排出部から排出されるガスの一部を酸素極側雰囲気に循環させる酸素ガス循環供給部93bと、水素ガスを循環させるためのブロアー94aと、酸素ガスを循環させるためのブロアー94bと、から構成されている。
【0091】
この電気化学セル11は、第1の実施の形態と同一のものであり、本実施の形態においては、この電気化学セル11の水蒸気供給部13側に、水素ガス循環供給部93aと酸素ガス循環供給部93bと、水素ガスを循環させるためのブロアー94aと、酸素ガスを循環させるためのブロアー94bと、が設けられている以外は第1の実施の形態と同一の構成となっている。
【0092】
すなわち、この電気化学セル11の水素極11b側においては、水素ガス排出部14から排出されるガスの一部を、水素極11bの表面を還元雰囲気にするように循環させて供給することができるように設けられている。また、酸素極11c側には、酸素ガス排出部15から排出されるガスの一部を、酸素極11cの表面を酸化雰囲気にするように循環させて供給することができるように設けられている。
【0093】
この電気化学セル11の水素極11b側は、水蒸気が主な成分である供給ガスに、水素ガス排出部14から排出されるガスの一部を循環して供給することにより、水素ガス濃度が高まり還元雰囲気が増長されるため、電極材料の酸化劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。水素ガス排出部14から排出されるガスは、水素ガスが主な成分であるため、還元雰囲気を増長するために別の還元性ガスを用意する必要がなく、水素極11bの電解特性を低コストで有効に維持することができる。
【0094】
この生成した水素ガスの供給場所は、特に水蒸気により酸化される可能性が高い部分、例えば、水蒸気供給部13側のセル端部を十分に還元性雰囲気とすることができるようなものとすることが好ましい。
【0095】
一方、酸素極11c側は、水蒸気が主な成分である供給ガスに、酸素ガス排出部15から排出されるガスの一部を循環して供給することにより、酸素ガス濃度が高まり酸化雰囲気が増長されるため、電極材料の還元劣化を低減し、電解特性を維持することが可能となる。酸素ガス排出部15から排出されるガスは、酸素ガスが主な成分となっているため、生成した酸素ガスを循環させることで、酸化雰囲気を増長するために別の供給ガスを用意する必要がなく、酸素極11cの電解特性を低コストで有効に維持することができる。
【0096】
この生成した酸素ガスの供給場所は、特に水蒸気により還元される可能性が高い部分、例えば、水蒸気供給部13側のセル端部を十分に酸化雰囲気とすることができるようなものとすることが好ましい。
【符号の説明】
【0097】
10…水蒸気電解装置、11…電気化学セル、11a…電解質、11b…水素極、11c…酸素極、12…容器、13…水蒸気供給部、14…水素ガス排出部、15…酸素ガス排出部、16…水素極側電流リード部、17…酸素極側電流リード部、83a…還元性ガス供給部、83b…酸化性ガス供給部、93a…水素ガス循環供給部、93b…酸素ガス循環供給部、94a…ブロアー、94b…ブロアー、100…水蒸気電解装置、101…電気化学セル、102…水蒸気供給室、103…生成水素排出室、104…水蒸気注入管、105…酸素生成室、106…電流リード用金属キャップ、107…シールキャップ、108…テーパ型シーリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、同一の水蒸気を前記水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部と、前記水蒸気の電気分解により水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部と、前記水蒸気の電気分解により酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部と、を有する水蒸気電解装置であって、
前記酸素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐還元性材料を含有し、
前記耐還元性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属又は該貴金属の合金であることを特徴とする水蒸気電解装置。
【請求項2】
固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、同一の水蒸気を前記水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部と、前記水蒸気の電気分解により水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部と、前記水蒸気の電気分解により酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部と、を有する水蒸気電解装置であって、
前記水素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐酸化性材料を含有し、
前記耐酸化性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属、該貴金属の合金又はYSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDCの多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメットであることを特徴とする水蒸気電解装置。
【請求項3】
固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、同一の水蒸気を前記水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部と、前記水蒸気の電気分解により水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部と、前記水蒸気の電気分解により酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部と、を有する水蒸気電解装置であって、
前記水素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐酸化性材料を含有し、かつ、前記酸素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐還元性材料を含有し、
前記耐還元性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属又は該貴金属の合金であり、前記耐酸化性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属、該貴金属の合金又はYSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDCの多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメットであることを特徴とする水蒸気電解装置。
【請求項4】
前記同一の水蒸気を前記水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部が、同一の供給部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の水蒸気電解装置。
【請求項5】
前記同一の水蒸気を前記水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部を、それぞれ異なる供給部とし、前記水素極及び酸素極に供給される水蒸気の流れ方向を逆方向としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の水蒸気電解装置。
【請求項6】
前記耐酸化性材料及び前記耐還元性材料の少なくとも一方が、前記水蒸気供給部側からガス排出部側に向かって含有する濃度が減少するように傾斜的に含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の水蒸気電解装置。
【請求項7】
前記水素極及び酸素極の少なくとも一方が、電極材料に、前記耐酸化性材料又は前記耐還元性材料を添加して形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の水蒸気電解装置。
【請求項8】
前記水素極側に還元性ガスを含有するガスの添加供給手段及び前記酸素極側に酸化性ガスを含有するガスの添加供給手段の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の水蒸気電解装置。
【請求項9】
前記還元性ガスが、水素極を流通して水素ガス排出部から排出されるガスであり、前記酸化性ガスが、酸素極を流通して酸素ガス排出部から排出されるガスであって、前記還元性ガス及び前記酸化性ガスの少なくとも一方を循環して添加供給する循環供給手段を有することを特徴とする請求項8記載の水蒸気電解装置。
【請求項10】
同一の水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、前記供給された水蒸気を、固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルの前記水素極及び酸素極に接触させて、前記水蒸気を電気分解して水素ガスと酸素ガスを生成する電解工程と、前記水素ガスと前記酸素ガスが互いにリークしないように別々に排出されるガス排出工程と、を有する水蒸気電解方法において、
前記水素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐酸化性材料を含有し、かつ、前記酸素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐還元性材料を含有し、
前記耐還元性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属又は該貴金属の合金であり、前記耐酸化性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属、該貴金属の合金又はYSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDCの多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメットであることを特徴とする水蒸気電解方法。
【請求項1】
固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、同一の水蒸気を前記水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部と、前記水蒸気の電気分解により水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部と、前記水蒸気の電気分解により酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部と、を有する水蒸気電解装置であって、
前記酸素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐還元性材料を含有し、
前記耐還元性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属又は該貴金属の合金であることを特徴とする水蒸気電解装置。
【請求項2】
固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、同一の水蒸気を前記水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部と、前記水蒸気の電気分解により水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部と、前記水蒸気の電気分解により酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部と、を有する水蒸気電解装置であって、
前記水素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐酸化性材料を含有し、
前記耐酸化性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属、該貴金属の合金又はYSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDCの多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメットであることを特徴とする水蒸気電解装置。
【請求項3】
固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルと、同一の水蒸気を前記水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部と、前記水蒸気の電気分解により水素極で生成した水素を排出する水素ガス排出部と、前記水蒸気の電気分解により酸素極で生成した酸素を排出する酸素ガス排出部と、を有する水蒸気電解装置であって、
前記水素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐酸化性材料を含有し、かつ、前記酸素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐還元性材料を含有し、
前記耐還元性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属又は該貴金属の合金であり、前記耐酸化性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属、該貴金属の合金又はYSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDCの多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメットであることを特徴とする水蒸気電解装置。
【請求項4】
前記同一の水蒸気を前記水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部が、同一の供給部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の水蒸気電解装置。
【請求項5】
前記同一の水蒸気を前記水素極及び酸素極に供給する水蒸気供給部を、それぞれ異なる供給部とし、前記水素極及び酸素極に供給される水蒸気の流れ方向を逆方向としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の水蒸気電解装置。
【請求項6】
前記耐酸化性材料及び前記耐還元性材料の少なくとも一方が、前記水蒸気供給部側からガス排出部側に向かって含有する濃度が減少するように傾斜的に含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の水蒸気電解装置。
【請求項7】
前記水素極及び酸素極の少なくとも一方が、電極材料に、前記耐酸化性材料又は前記耐還元性材料を添加して形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の水蒸気電解装置。
【請求項8】
前記水素極側に還元性ガスを含有するガスの添加供給手段及び前記酸素極側に酸化性ガスを含有するガスの添加供給手段の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の水蒸気電解装置。
【請求項9】
前記還元性ガスが、水素極を流通して水素ガス排出部から排出されるガスであり、前記酸化性ガスが、酸素極を流通して酸素ガス排出部から排出されるガスであって、前記還元性ガス及び前記酸化性ガスの少なくとも一方を循環して添加供給する循環供給手段を有することを特徴とする請求項8記載の水蒸気電解装置。
【請求項10】
同一の水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、前記供給された水蒸気を、固体酸化物電解質、水素極及び酸素極からなる電気化学セルの前記水素極及び酸素極に接触させて、前記水蒸気を電気分解して水素ガスと酸素ガスを生成する電解工程と、前記水素ガスと前記酸素ガスが互いにリークしないように別々に排出されるガス排出工程と、を有する水蒸気電解方法において、
前記水素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐酸化性材料を含有し、かつ、前記酸素極が少なくとも水蒸気供給部側に耐還元性材料を含有し、
前記耐還元性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属又は該貴金属の合金であり、前記耐酸化性材料は、Pt、Ru、Pd、Rhの少なくとも一つを含む貴金属、該貴金属の合金又はYSZ、ScSZ、SDC、GDC、LDCの多孔質セラミックに貴金属を混合したサーメットであることを特徴とする水蒸気電解方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−214904(P2012−214904A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141891(P2012−141891)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2007−102383(P2007−102383)の分割
【原出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2007−102383(P2007−102383)の分割
【原出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]