説明

水質予測装置および水質制御装置

【課題】 上流側下水道設備内に測定部を設けることができない場合であっても、下流側下水道設備へ流入する下水の水質予測値と水質測定値との偏差を考慮することにより、上流側下水道設備への流入下水の水質を精度良く予測することができる水質測定装置およびこの水質予測装置により測定された水質の予測値を利用して下水の水質の制御を行う水質制御装置を提供すること。
【解決手段】 水質予測装置10は、上流側下水道設備へ流入する下水の水質を予測する第1の水質予測部12と、下流側下水道設備へ流入する下水の水質を予測する第2の水質予測部22とを備えている。補正部25は、下流側下水道設備における水質予測値と水質測定値との偏差に基づいて水質補正値を算出する。第1の水質予測部12は、水質補正値によりこの第1の水質予測部12で予測された上流側下水道設備の流入下水の水質予測値の補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ場、下水処理場、雨水貯留施設、自然吐口等の下水道設備を備えた下水道システムにおける、上流側の下水道設備内の下水の水質を予測する水質予測装置およびこの水質予測装置により測定された水質の予測値を利用して下水の水質の制御を行う水質制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば合流式下水道等の下水道システムにおいて、雨天時に河川、湖沼、海域等の公共用水区域に排出される水中のBOD(生物化学的酸素要求量)、SS(浮游物質)、大腸菌群等の汚濁物質が公共用水の水環境に悪影響を及ぼしている。とりわけ、下水道システムにおける下水処理設備(下流側下水道設備)の上流側に設けられたポンプ設備や自然吐口(上流側下水道設備)から放流される処理前放流水は下水処理がなされていないので、この処理前放流水に含有される汚濁物質が高濃度となってしまうという問題がある。
流入下水等の被処理下水の水質を測定することにより、このような汚濁物質の濃度を低減させる下水道システムの水質制御装置としては例えば特許文献1に示すものが知られている。
【0003】
従来の下水道システムの水質制御装置について図6を用いて詳しく説明する。
図6に示すように、例えば下水処理施設からなる下水道システムは、ポンプ設備(上流側下水道設備)2と、このポンプ設備2の下流側に接続ライン8を介して設けられた下水処理設備(下流側下水道設備)3とを備えている。ポンプ設備2には流入ライン7から合流下水1が流入するようになっており、またこのポンプ設備2内から下水を河川等の公共用水へ放流する下水放流ポンプ5が設けられている。下水放流ポンプ5により引き抜かれたポンプ設備2内の下水は、ポンプ設備流出ライン9bから処理前放流水6として流出し、最終的に公共用水へ送られるようになっている。また、下水放流ポンプ5にはこの下水放流ポンプ5の制御を行う下水放流ポンプ制御装置14が接続されている。一方、下水処理設備3において下水処理が行われた処理済放流水4が下水処理設備流出ライン9aから流出するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−107744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図6の示すような従来の下水道システムにおいては、ポンプ設備(上流側下水道設備)2の水深が深いため当該ポンプ設備2内に濁度計等の水質の測定器を設置することは困難である。また、ポンプ設備2内に測定器を設置した場合には、この測定器により測定すべき流入下水はまだ下水処理設備(下流側下水道設備)3により下水処理が行われていないので、当該流入下水の汚れが測定器に付着して測定精度が低下するという問題がある。
【0006】
このため、例えば図6に示すように、流入水質予測部82を有する水質予測装置80を下水放流ポンプ制御装置14に接続し、当該流入水質予測部82が、オペレータにより入力されたポンプ設備2の流入量予測値81(または雨量強度予測値)に基づいてポンプ設備2の流入水質予測値を予測する方法が考えられている。しかし、このような方法によっても流入水質予測部82による流入水質予測値と実際の流入水質との間には大きな誤差があり、とりわけ下水道システムの運転状態が変化したときにはこの誤差が更に大きくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、上流側下水道設備内に下水の水質を測定する測定部を設けることができない場合であっても、下流側下水道設備へ流入する下水の水質予測値と水質測定値との偏差を考慮することにより、上流側下水道設備に流入する下水の水質を精度良く予測することができる水質予測装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、このような水質予測装置により予測された下水の水質の予測値を用いることにより、下水の水質の制御を精度良く行うことができる水質制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、直列に設けられた上流側下水道設備および下流側下水道設備を有する下水道システムに用いられる水質予測装置において、前記下流側下水道設備の入口側に設けられ、この下流側下水道設備に流入する下水の水質を測定する測定部と、外部より上流側下水道設備の流入量予測値または雨量強度予測値が入力され、これらの予測値に基づいて上流側下水道設備の流入水質予測値を予測する第1の水質予測部と、外部より下流側下水道設備の流入量予測値または雨量強度予測値が入力され、これらの予測値に基づいて下流側下水道設備の流入水質予測値を予測する第2の水質予測部と、前記第2の水質予測部および前記測定部に接続され、当該測定部により測定された測定値と、前記第2の水質予測部から送られた下流側下水道設備の流入水質予測値との偏差を算出する偏差算出部と、前記偏差算出部に接続され、この偏差算出部により算出された偏差に基づいて水質補正値を算出し、この水質補正値を前記第1の水質予測部に送る補正部と、を備え、前記第1の水質予測部において、前記補正部から送られた水質補正値により前記第1の水質予測部で予測された前記上流側下水道設備の流入水質予測値に対して更に補正を行うことを特徴とする水質予測装置である。
このような水質予測装置によれば、上流側下水道設備内に下水の水質を測定する測定部を設けることができない場合であっても、下流側下水道設備へ流入する下水の水質予測値と水質測定値との偏差を考慮することにより、上流側下水道設備に流入する下水の水質を精度良く予測することができる。
【0009】
本発明は、前述の水質予測装置を備えた下水道システムに用いられ、前記上流側下水道設備内から下水を公共用水へ放流する下水放流ポンプと、この下水放流ポンプを制御する下水放流ポンプ制御装置とを更に備え、前記水質予測装置の第1の水質予測部において補正された上流側下水道設備の流入水質予測値が前記下水放流ポンプ制御装置に送られ、前記下水放流ポンプ制御装置は、前記水質予測装置から送られた補正後の上流側下水道設備の流入水質予測値に基づいて前記下水放流ポンプの制御を行うことを特徴とする水質制御装置である。
このような水質制御装置によれば、下水放流ポンプ制御装置は、下流側下水道設備へ流入する下水の水質予測値と水質測定値との偏差を考慮して予測された上流側下水道設備への流入下水の水質予測値を用いているので、下水道システムの実際の運転に沿ったより的確な下水放流ポンプの制御を行うことができ、上流側下水道設備内から所望の量の下水を公共用水へ放流することができ、このため下水の水質の制御を精度良く行うことができる。
【0010】
本発明は、前述の水質予測装置を備えた下水道システムに用いられ、前記上流側下水道設備内に薬品を注入する薬品注入ポンプと、この薬品注入ポンプを制御する薬品注入ポンプ制御装置とを更に備え、前記水質予測装置の第1の水質予測部において補正された上流側下水道設備の流入水質予測値が前記薬品注入ポンプ制御装置に送られ、前記薬品注入ポンプ制御装置は、前記水質予測装置から送られた補正後の上流側下水道設備の流入水質予測値に基づいて前記薬品注入ポンプの制御を行うことを特徴とする水質制御装置である。
このような水質制御装置によれば、薬品注入ポンプ制御装置は、下流側下水道設備へ流入する下水の水質予測値と水質測定値との偏差を考慮して予測された上流側下水道設備への流入下水の水質予測値を用いているので、下水道システムの実際の運転に沿ったより的確な薬品注入ポンプの制御を行うことができ、上流側下水道設備内に所望の量の薬品を注入することができ、このため下水の水質の制御を精度良く行うことができる。
【0011】
本発明は、前述の水質予測装置を備えた下水道システムに用いられ、前記上流側下水道設備内から下水を公共用水へ放流する下水放流ポンプと、この下水放流ポンプの下流側に設けられたスクリーンと、前記スクリーンを洗浄するスクリーン洗浄器と、前記スクリーン洗浄器を制御するスクリーン洗浄制御装置とを更に備え、前記水質予測装置の第1の水質予測部において補正された上流側下水道設備の流入水質予測値が前記スクリーン洗浄制御装置に送られ、前記スクリーン洗浄制御装置は、前記水質予測装置から送られた補正後の上流側下水道設備の流入水質予測値に基づいて前記スクリーン洗浄器の制御を行うことを特徴とする水質制御装置である。
このような水質制御装置によれば、スクリーン洗浄制御装置は、下流側下水道設備へ流入する下水の水質予測値と水質測定値との偏差を考慮して予測された上流側下水道設備への流入下水の下水予測値を用いているので、下水道システムの実際の運転に沿ったより的確なスクリーン洗浄器の制御を行うことができ、例えば補正後の水質予測値が高い場合にはスクリーン洗浄器によるスクリーンの洗浄を予め行ったり、また降雨時の最中にスクリーンの洗浄を行ったりすることができるので、スクリーンの濾過性能を向上させることができ、このため下水の水質の制御を精度良く行うことができる。
【0012】
本発明は、前述の水質予測装置を備えた下水道システムに用いられ、前記上流側下水道設備および前記下流側下水道設備の間から分岐して設けられた貯留設備と、前記上流側下水道設備から貯留設備への下水の流入を調整する流入ゲートと、前記流入ゲートを制御する流入ゲート制御装置とを備え、前記水質予測装置の第1の水質予測部において補正された上流側下水道設備の流入水質予測値が前記流入ゲート制御装置に送られ、前記流入ゲート制御装置は、前記水質予測装置から送られた補正後の上流側下水道設備の流入水質予測値に基づいて前記流入ゲートの制御を行うことを特徴とする水質制御装置である。
このような水質制御装置によれば、流入ゲート制御装置は、下流側下水道設備へ流入する下水の水質予測値と水質測定値との偏差を考慮して予測された上流側下水道設備への流入下水の水質予測値を用いているので、下水道システムの実際の運転に沿って流入ゲートを制御することができ、上流側下水道設備から貯留設備へ流入する下水の流量を所望の量に調整することができ、このため下水の水質の制御を精度良く行うことができる。
【0013】
本発明は、前述の水質予測装置を備えた下水道システムに用いられ、前記上流側下水道設備および前記下流側下水道設備の間から分岐して設けられた貯留設備と、前記貯留設備から前記下流側下水道設備へ下水を返送する返送ポンプと、前記返送ポンプを制御する返送ポンプ制御装置とを備え、前記水質予測装置の第1の水質予測部において補正された上流側下水道設備の流入水質予測値が前記返送ポンプ制御装置に送られ、前記返送ポンプ制御装置は、前記水質予測装置から送られた補正後の上流側下水道設備の流入水質予測値に基づいて前記返送ポンプの制御を行うことを特徴とする水質制御装置である。
このような水質制御装置によれば、返送ポンプ制御装置は、下流側下水道設備へ流入する下水の水質予測値と水質測定値との偏差を考慮して予測された上流側下水道設備への流入下水の水質予測値を用いているので、下水道システムの実際の運転に沿って返送ポンプを制御することができ、貯留設備から下流側下水道設備へ返送する下水の流量を所望の量に調整することができ、このため下水の水質の制御を精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水質予測装置によれば、下流側下水道設備へ流入する下水の水質を予測する第2の水質予測部を備え、下流側下水道設備における水質予測値と水質測定値との偏差に基づいて水質補正値を算出し、この水質補正値により第1の水質予測部で予測された上流側下水道設備への流入下水の水質予測値の補正を行っている。このため、上流側下水道設備内に下水の水質を測定する測定部を設けることができない場合であっても、下流側下水道設備へ流入する下水の水質予測値と水質測定値との偏差を考慮することにより、上流側下水道設備に流入する下水の水質を精度良く予測することができる。
また、本発明の水質制御装置によれば、このような水質予測装置により予測された下水の水質の予測値を用いることにより、下水の水質の制御を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態の水質予測装置および水質制御装置の構成を示す説明図である。
【0016】
まず、本実施の形態の下水道システムについて説明する。
本実施の形態における下水道システムは、ポンプ設備(上流側下水道設備)2と、このポンプ設備2の下流側に接続ライン8を介して設けられた下水処理設備(下流側下水道設備)3とを備えている。ポンプ設備2には流入ライン7から合流下水1が流入するようになっており、またこのポンプ設備2内から下水を河川等の公共用水へ放流する下水放流ポンプ5が設けられている。下水放流ポンプ5から引き抜かれたポンプ設備2内の下水は、ポンプ設備流出ライン9bから処理前放流水6として流出し、最終的に公共用水へ送られるようになっている。また、下水放流ポンプ5にはこの下水放流ポンプ5の制御を行う下水放流ポンプ制御装置14が接続されている。ここで、下水放流ポンプ5および下水放流ポンプ制御装置14により水質制御装置が構成されている。
一方、下水処理設備3において下水処理が行われた処理済放流水4は下水処理設備流出ライン9aから流出するようになっている。下水処理設備3の入口側の例えば最初沈殿池内には流入下水の濁度を測定する濁度計(測定部)20が設置されている。
なお、本実施の形態においては、下水道システムの上流側下水道設備としてポンプ設備2を用いるとともに下流側下水道設備として下水処理設備3を用いているが、上流側および下流側の下水道設備としてはこれらのものに限定されることはなく、ポンプ設備、下水処理設備、雨水貯留設備、自然吐口等を任意に組み合わせたものとすることができ、具体的には、例えば上流側下水道設備を自然吐口、下流側下水道設備を下水処理設備とすることもできる。
【0017】
また、図1に示すように、この下水道システムはポンプ設備2への流入下水の濁度(水質)を予測する水質予測装置10を備えている。この水質予測装置10は、図1に示すように、前述の濁度計20と、ポンプ設備2の流入下水の濁度を予測する第1の水質予測部12と、下水処理設備3の流入下水の濁度を予測する第2の水質予測部22と、第2の水質予測部22および濁度計20に接続された偏差算出部24と、偏差算出部24および第1の水質予測部12に接続された補正部25とを備えている。
【0018】
第1の水質予測部12は、例えばオペレータによりポンプ設備2への合流下水1の流入量予測値11(または雨量強度予測値)が入力されるようになっており、この流入量予測値11(または雨量強度予測値)に基づいてポンプ設備2の流入下水の濁度を予測するよう構成されている。この第1の水質予測部12は、更に前述の方法により予測された流入下水の濁度の予測値に対して、後述の補正部25から送られた濁度補正値により補正を行い、補正後の流入下水の濁度の予測値を下水放流ポンプ制御装置14に送るようになっている。
【0019】
第2の水質予測部22は、例えばオペレータにより下水処理設備3への下水の流入量予測値21(または雨量強度予測値)が入力されるようになっており、この流入量予測値21(または雨量強度予測値)に基づいて下水処理設備3の流入下水の濁度を予測するよう構成されている。
【0020】
偏差算出部24は、第2の水質予測部22から下水処理設備3の流入下水の濁度の予測値が送られるとともに濁度計20により測定された濁度測定値が送られるようになっており、前述の濁度予測値から濁度測定値を減算するようになっている。
【0021】
補正部25は、下水処理設備3の流入下水の濁度予測値と濁度測定値との差の値が偏差算出部24から送られるようになっており、この濁度予測値と濁度測定値との差の値に基づいて濁度補正値を算出するようになっている。
【0022】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
水質予測装置10において、例えばオペレータが第1の水質予測部12にポンプ設備2へ流入する合流下水1の流入量予測値11(または雨量強度予測値)を入力し、この第1の水質予測部12は入力された流入量予測値11(または雨量強度予測値)に基づいてポンプ設備2の流入下水の濁度を予測する。
また、例えばオペレータが第2の水質予測部22に下水処理設備3への流入下水の流入量予測値21(または雨量強度予測値)を入力し、この第2の水質予測部22は入力された流入量予測値21(または雨量強度予測値)に基づいて下水処理設備3の流入下水の濁度を予測する。
【0023】
一方、濁度計20により、下水処理設備3の入口側の例えば最初沈殿池内の流入下水の濁度が測定される。第2の水質予測部22により予測された下水処理設備3の流入下水の濁度予測値と、濁度計20により測定された濁度測定値とがそれぞれ偏差算出部24に送られる。
【0024】
偏差算出部24において、下水処理設備3の流入下水の濁度予測値から濁度測定値を減算することにより差の値が算出される。補正部25は、この差の値に基づいて濁度補正値を算出する。
【0025】
補正部25により算出された濁度補正値は第1の水質予測部12に送られる。この第1の水質予測部12において、補正部25から送られた濁度補正値により、前述のポンプ設備2の流入下水の濁度の予測値に対して更に補正を行う。補正された濁度予測値は下水放流ポンプ制御装置14に送られる。
【0026】
下水放流ポンプ制御装置14は、第1の水質予測部12により算出された補正後の濁度予測値に基づいて下水放流ポンプ5を制御して公共用水へ放流する下水の流量を調整する。
【0027】
以上のように本実施の形態の水質予測装置10によれば、この水質予測装置10は、下水処理設備(下流側下水道設備)3へ流入する下水の濁度(水質)を予測する第2の水質予測部22を備え、下水処理設備3における濁度予測値(水質予測値)と濁度測定値(水質測定値)との偏差に基づいて濁度補正値(水質補正値)を算出し、この濁度補正値により第1の水質予測部12で予測されたポンプ設備(上流側下水道設備)2への流入下水の濁度予測値(水質予測値)の補正を行っている。このため、ポンプ設備(上流側下水道設備)2内に濁度計(測定部)を設けることができない場合であっても、下水処理設備(下流側下水道設備)3における流入下水の濁度予測値と濁度測定値との偏差を考慮することにより、ポンプ設備2(上流側下水道設備)に流入する下水の濁度(水質)を精度良く予測することができる。
【0028】
また、本実施の形態の水質制御装置によれば、水質予測装置10の第1の水質予測部12において補正されたポンプ設備2(上流側下水道設備)の流入下水の濁度予測値(水質予測値)が下水放流ポンプ制御装置14に送られ、この下水放流ポンプ制御装置14は、水質予測装置10から送られた補正後の濁度予測値(水質予測値)に基づいて下水放流ポンプ5の制御を行っている。このように、下水放流ポンプ制御装置14は、下水処理設備3へ流入する下水の濁度予測値と濁度測定値との偏差を考慮して予測されたポンプ設備2への流入下水の濁度予測値を用いているので、下水道システムの実際の運転に沿ったより的確な下水放流ポンプ5の制御を行うことができ、ポンプ設備2内から所望の量の下水を公共用水へ放流することができ、このため下水の水質の制御を精度良く行うことができる。
【0029】
本発明による水質予測装置および水質制御装置は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
例えば、水質予測装置により予測される下水の水質は濁度に限られず、UV(紫外線吸光度)、COD(化学的酸素要求量)、BOD(生物化学的酸素要求量)、SS(浮遊物質)、大腸菌群数等の他の種類のものであってもよい。
【0030】
他の変形例としては、図2に示すように、薬品注入ライン32により液体の消毒剤をポンプ設備内2に注入する薬品注入ポンプ31とこの薬品注入ポンプ31を制御する薬品注入ポンプ制御装置33とを更に設け、第1の水質予測部12から下水放流ポンプ制御装置14にポンプ設備2の流入下水の補正後の濁度予測値が送られる代わりに薬品注入ポンプ制御装置33にこの補正後の濁度予測値が送られるようになっていてもよい。
本変形例においては、薬品注入ポンプ31および薬品注入ポンプ制御装置33により水質制御装置が構成されている。
【0031】
このような水質制御装置によれば、水質予測装置10の第1の水質予測部12において補正されたポンプ設備(上流側下水道設備)2の流入下水の濁度予測値(水質予測値)が薬品注入ポンプ制御装置33に送られ、この薬品注入ポンプ制御装置33は、水質予測装置10から送られた補正後の濁度予測値(水質予測値)に基づいて薬品注入ポンプ31の制御を行っている。このように、薬品注入ポンプ制御装置33は、下水処理設備3の流入下水の濁度予測値と濁度測定値との偏差を考慮して予測されたポンプ設備2への流入下水の濁度予測値を用いているので、下水道システムの実際の運転に沿ったより的確な薬品注入ポンプ31の制御を行うことができ、ポンプ設備2内に所望の量の消毒剤(薬品)を注入することができ、このため下水の水質の制御を精度良く行うことができる。
【0032】
更に他の変形例としては、図3に示すように、下水放流ポンプ5の下流側にスクリーン40を設けるとともに、このスクリーン40を洗浄するスクリーン洗浄器41と、スクリーン洗浄器41を制御するスクリーン洗浄制御装置42とを更に設け、第1の水質予測部12から下水放流ポンプ制御装置14にポンプ設備(上流側下水道設備)2の流入下水の補正後の濁度予測値が送られる代わりにスクリーン洗浄制御装置42にこの補正後の濁度予測値が送られるようになっていてもよい。
本変形例においては、下水放流ポンプ5、スクリーン40、スクリーン洗浄器41およびスクリーン洗浄制御装置42により水質制御装置が構成されている。
【0033】
このような水質制御装置によれば、水質予測装置10の第1の水質予測部12において補正されたポンプ設備(上流側下水道設備)2の流入下水の濁度予測値(水質予測値)がスクリーン洗浄制御装置42に送られ、このスクリーン洗浄制御装置42は、水質予測装置10から送られた補正後の濁度予測値(水質予測値)に基づいてスクリーン洗浄器41の制御を行っている。このように、スクリーン洗浄制御装置42は、下水処理設備3の流入下水の濁度予測値と濁度測定値との偏差を考慮して予測されたポンプ設備2への流入下水の濁度予測値を用いているので、下水道システムの実際の運転に沿ったより的確なスクリーン洗浄器41の制御を行うことができ、例えば補正後の濁度予測値が高い場合にはスクリーン40の汚れがそれほど酷くないときであってもスクリーン洗浄器41によるスクリーン40の洗浄を予め行ったり、また降雨時の最中にスクリーン40の洗浄を行ったりすることができるので、スクリーン40の濾過性能を向上させることができ、このため下水の水質の制御を精度良く行うことができる。
【0034】
更に他の変形例としては、図4に示すように、ポンプ設備(上流側下水道設備)2および下水処理設備(下流側下水道設備)3の間の接続ライン8から分岐して設けられた雨水貯留設備(貯留設備)50と、この雨水貯留設備50への下水の流入を調整する流入ゲート51と、この流入ゲート51を制御する流入ゲート制御装置52とを更に設け、第1の水質予測部12から下水放流ポンプ制御装置14にポンプ設備2の流入下水の補正後の濁度予測値が送られる代わりに流入ゲート制御装置52にこの補正後の濁度予測値が送られるようになっていてもよい。
本変形例においては、雨水貯留設備50、流入ゲート51および流入ゲート制御装置52により水質制御装置が構成されている。
【0035】
このような水質制御装置によれば、水質予測装置10の第1の水質予測部12において補正されたポンプ設備(上流側下水道設備)2の流入下水の濁度予測値(水質予測値)が流入ゲート制御装置52に送られ、この流入ゲート制御装置52は、水質予測装置10から送られた補正後の濁度予測値(水質予測値)に基づいて流入ゲート51の制御を行っている。このように、流入ゲート制御装置52は、下水処理設備3へ流入する下水の濁度予測値と濁度測定値との偏差を考慮して予測されたポンプ設備2への下水の濁度予測値を用いているので、下水道システムの実際の運転に沿って流入ゲート51を制御することができ、ポンプ設備(上流側下水道設備)2から雨水貯留設備(貯留設備)50へ流入する下水の流量を所望の量に調整することができ、このため下水の水質の制御を精度良く行うことができる。
【0036】
更に他の変形例としては、図5に示すように、図4に示す下水道システムに対して雨水貯留設備50から接続ライン8へ下水を返送する返送ポンプ53と、この返送ポンプ53を制御する返送ポンプ制御装置54とを設け、第1の水質予測部12から下水放流ポンプ制御装置14にポンプ設備(上流側下水道設備)2の流入下水の補正後の濁度予測値が送られる代わりに返送ポンプ制御装置54にこの補正後の濁度予測値が送られるようになっていてもよい。
本変形例においては、雨水貯留設備50、返送ポンプ53および返送ポンプ制御装置54により水質制御装置が構成されている。
【0037】
このような水質制御装置によれば、水質予測装置10の第1の水質予測部12において補正されたポンプ設備(上流側下水道設備)2の流入下水の濁度予測値(水質予測値)が返送ポンプ制御装置54に送られ、この返送ポンプ制御装置54は、水質予測装置10から送られた補正後の濁度予測値(水質予測値)に基づいて返送ポンプ53の制御を行っている。このように、返送ポンプ制御装置54は、下水処理設備3の流入下水の濁度予測値と濁度測定値との偏差を考慮して予測されたポンプ設備2への流入下水の濁度予測値を用いているので、下水道システムの実際の運転に沿って返送ポンプ53を制御することができ、雨水貯留設備(貯留設備)50から下水処理設備(下流側下水道設備)3へ返送する下水の流量を所望の量に調整することができ、このため下水の水質の制御を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施の形態の水質予測装置および水質制御装置の構成を示す説明図である。
【図2】本実施の形態の他の水質制御装置の構成を示す説明図である。
【図3】本実施の形態の更に他の水質制御装置の構成を示す説明図である。
【図4】本実施の形態の更に他の水質制御装置の構成を示す説明図である。
【図5】本実施の形態の更に他の水質制御装置の構成を示す説明図である。
【図6】従来の水質予測装置および水質制御装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 合流下水
2 ポンプ設備(上流側下水道設備)
3 下水処理設備(下流側下水道設備)
4 処理済放流水
5 下水放流ポンプ
6 処理前放流水
7 流入ライン
8 接続ライン
9a 下水処理設備流出ライン
9b ポンプ設備流出ライン
10 水質予測装置
11 ポンプ設備(上流側下水道設備)の流入量予測値
12 第1の水質予測部
14 下水放流ポンプ制御装置
20 濁度計(測定部)
21 下水処理設備(下流側下水道設備)の流入量予測値
22 第2の水質予測部
24 偏差算出部
25 補正部
31 薬品注入ポンプ
32 薬品注入ライン
33 薬品注入ポンプ制御装置
40 スクリーン
41 スクリーン洗浄器
42 スクリーン洗浄制御装置
50 雨水貯留設備(貯留設備)
51 流入ゲート
52 流入ゲート制御装置
53 返送ポンプ
54 返送ポンプ制御装置
80 水質予測装置
81 流入量予測値
82 流入水質予測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に設けられた上流側下水道設備および下流側下水道設備を有する下水道システムに用いられる水質予測装置において、
前記下流側下水道設備の入口側に設けられ、この下流側下水道設備に流入する下水の水質を測定する測定部と、
外部より上流側下水道設備の流入量予測値または雨量強度予測値が入力され、これらの予測値に基づいて上流側下水道設備の流入水質予測値を予測する第1の水質予測部と、
外部より下流側下水道設備の流入量予測値または雨量強度予測値が入力され、これらの予測値に基づいて下流側下水道設備の流入水質予測値を予測する第2の水質予測部と、
前記第2の水質予測部および前記測定部に接続され、当該測定部により測定された測定値と、前記第2の水質予測部から送られた下流側下水道設備の流入水質予測値との偏差を算出する偏差算出部と、
前記偏差算出部に接続され、この偏差算出部により算出された偏差に基づいて水質補正値を算出し、この水質補正値を前記第1の水質予測部に送る補正部と、
を備え、
前記第1の水質予測部において、前記補正部から送られた水質補正値により前記第1の水質予測部で予測された前記上流側下水道設備の流入水質予測値に対して更に補正を行うことを特徴とする水質予測装置。
【請求項2】
請求項1記載の水質予測装置を備えた下水道システムに用いられ、
前記上流側下水道設備内から下水を公共用水へ放流する下水放流ポンプと、この下水放流ポンプを制御する下水放流ポンプ制御装置とを更に備え、
前記水質予測装置の第1の水質予測部において補正された上流側下水道設備の流入水質予測値が前記下水放流ポンプ制御装置に送られ、
前記下水放流ポンプ制御装置は、前記水質予測装置から送られた補正後の上流側下水道設備の流入水質予測値に基づいて前記下水放流ポンプの制御を行うことを特徴とする水質制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の水質予測装置を備えた下水道システムに用いられ、
前記上流側下水道設備内に薬品を注入する薬品注入ポンプと、この薬品注入ポンプを制御する薬品注入ポンプ制御装置とを更に備え、
前記水質予測装置の第1の水質予測部において補正された上流側下水道設備の流入水質予測値が前記薬品注入ポンプ制御装置に送られ、
前記薬品注入ポンプ制御装置は、前記水質予測装置から送られた補正後の上流側下水道設備の流入水質予測値に基づいて前記薬品注入ポンプの制御を行うことを特徴とする水質制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の水質予測装置を備えた下水道システムに用いられ、
前記上流側下水道設備内から下水を公共用水へ放流する下水放流ポンプと、この下水放流ポンプの下流側に設けられたスクリーンと、前記スクリーンを洗浄するスクリーン洗浄器と、前記スクリーン洗浄器を制御するスクリーン洗浄制御装置とを更に備え、
前記水質予測装置の第1の水質予測部において補正された上流側下水道設備の流入水質予測値が前記スクリーン洗浄制御装置に送られ、
前記スクリーン洗浄制御装置は、前記水質予測装置から送られた補正後の上流側下水道設備の流入水質予測値に基づいて前記スクリーン洗浄器の制御を行うことを特徴とする水質制御装置。
【請求項5】
請求項1記載の水質予測装置を備えた下水道システムに用いられ、
前記上流側下水道設備および前記下流側下水道設備の間から分岐して設けられた貯留設備と、前記上流側下水道設備から貯留設備への下水の流入を調整する流入ゲートと、前記流入ゲートを制御する流入ゲート制御装置とを備え、
前記水質予測装置の第1の水質予測部において補正された上流側下水道設備の流入水質予測値が前記流入ゲート制御装置に送られ、
前記流入ゲート制御装置は、前記水質予測装置から送られた補正後の上流側下水道設備の流入水質予測値に基づいて前記流入ゲートの制御を行うことを特徴とする水質制御装置。
【請求項6】
請求項1記載の水質予測装置を備えた下水道システムに用いられ、
前記上流側下水道設備および前記下流側下水道設備の間から分岐して設けられた貯留設備と、前記貯留設備から前記下流側下水道設備へ下水を返送する返送ポンプと、前記返送ポンプを制御する返送ポンプ制御装置とを備え、
前記水質予測装置の第1の水質予測部において補正された上流側下水道設備の流入水質予測値が前記返送ポンプ制御装置に送られ、
前記返送ポンプ制御装置は、前記水質予測装置から送られた補正後の上流側下水道設備の流入水質予測値に基づいて前記返送ポンプの制御を行うことを特徴とする水質制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−274577(P2006−274577A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92060(P2005−92060)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】