説明

水質検出器用洗浄装置

【課題】細径かつ長尺のチューブ等を使用しながら洗浄ノズルに所要圧力の圧縮気体を供給可能とし、水深深く設置された検出器本体の洗浄対象部位に対しても十分な洗浄力を発揮する水質検出器用洗浄装置を提供する。
【解決手段】電極部等に付着した汚濁物質を洗浄ノズルから噴射する圧縮空気により除去する水質検出器用洗浄装置において、圧縮気体供給源としてのポンプ40と、ポンプから圧縮空気を供給するためのチューブ22と、チューブ22に連結され、かつ試料水W中の検出器本体10の近傍に配置されたタンク20と、タンク20に連結されて圧縮空気が供給されるバルブ30と、バルブ30の出口側に配置されて電極部13等の洗浄対象部位に試料水Wを介して対向する洗浄ノズル31と、を備える。バルブ30は、タンク40から供給される圧縮空気圧が所定の設定圧力を超えた時に開動作して圧縮空気を洗浄ノズル31から噴射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH計、ORP計、溶存酸素計等の各種水質検出器を洗浄するための水質検出器用洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業用水、下水、河川水、湖沼水または海洋水等の水質は連続的に測定して監視していく必要がある。連続的な測定を行ううちに試料水に含まれる汚濁物質が検出器(電極部)に付着すると検出能力が低下し、分析精度が低下してくる。このため、電極部等を一定周期で洗浄することが望ましく、例えば特許文献1に記載されているような間欠式洗浄方法及び間欠式洗浄装置が既に公知となっている。
【0003】
この特許文献1に係る間欠式洗浄方法は、圧縮気体を洗浄ノズルから洗浄対象部位に向けて噴射する圧縮気体噴射期間と、圧縮気体噴射を停止する停止期間とを備え、前記圧縮気体噴射期間と前記停止期間とを交互に繰り返し、これらの圧縮気体噴射期間と停止期間とのそれぞれをほぼ0.1〜60秒に設定するものである。また、この洗浄方法を実施する洗浄装置は、液体中の電極部等の洗浄対象部位に向けて圧縮気体を噴射する洗浄ノズルと、洗浄ノズルに圧縮気体を供給する圧縮気体供給部と、圧縮気体の供給を制御する制御弁と、この制御弁の開動作と閉動作とを制御する機能を有する中央処理部と、必要に応じて圧縮気体を所定量蓄えるタンクとを備え、制御弁が、ほぼ0.1〜60秒の周期で開閉する機能を備えているものである。
【0004】
上記従来技術によれば、電極部等の洗浄対象部位に付着した汚濁物質に試料水と気泡との境界部が無秩序に接触する際に汚濁物質に振動を生じさせてこれを効率的に剥離除去することができると共に、洗浄開始直後の洗浄力を長時間にわたり維持して確実に洗浄を行うことが可能である。ここで、洗浄ノズルから洗浄対象部位に向けて噴射される圧縮気体は、洗浄効率の観点から、短時間のうちに多量を噴射させることが望ましい。
【0005】
【特許文献1】特開2005−211858号公報(段落[0015]〜[0021],[0028]〜[0031]、図1,図3〜図7等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、上記従来技術では、陸上に設置された圧縮気体供給部からチューブ等を介して圧縮空気を洗浄ノズルに供給している。しかるに、検出器本体が例えば湖底や下水の深槽反応タンクのように水深が比較的深い位置に設置される場合には、前述のチューブを長くして陸上の圧縮気体供給部から検出器の洗浄対象部位近傍の洗浄ノズルまで圧縮空気を供給しなくてはならない。
このため、チューブの長さに応じて配管抵抗が増大することとなり、短時間のうちに多量の圧縮空気を供給することができず、十分な洗浄力を得ることができないという問題があった。
また、別の方法として、制御弁を洗浄ノズル及びタンクの近傍に配置することで、チューブの延長に伴う配管抵抗の増大を回避することができるが、制御弁に電磁弁を用いる場合には防水型とする必要があり、防水対策と絶縁対策が厄介であった。
【0007】
チューブの配管抵抗を小さくするにはチューブの内径を太くすればよいが、一般的に小型・軽量である検出器の近傍に洗浄ノズルと共に配置されるチューブの内径が太くなることは、チューブの柔軟性やチューブ及び検出器の設置自由度を損なう結果となる。また、太径のチューブに圧縮空気が充満すると、その浮力が検出器本体に作用するので、検出器本体を安定して設置するには錘を取り付ける等の対策が必要になる。
【0008】
そこで本発明の解決課題は、細径かつ長尺のチューブ等を使用しながら、かつ、防水型の電磁弁を必要とせずに、洗浄ノズルに所要圧力の圧縮気体を供給可能とし、水深深く設置された検出器本体の洗浄対象部位に対しても十分な洗浄力を発揮することができる水質検出器用洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、水質検出器の、試料水に接触する洗浄対象部位に付着した汚濁物質を洗浄ノズルから噴射する圧縮気体の作用により除去する水質検出器用洗浄装置において、
圧縮気体供給源と、この圧縮気体供給源から圧縮気体を供給するための気体供給管と、この気体供給管に連結され、かつ試料水中の検出器本体の近傍に配置されて圧縮気体を貯蔵するタンクと、このタンクに連結されて圧縮気体が供給されるバルブと、このバルブの出口側に配置されて前記洗浄対象部位に試料水を介して対向する洗浄ノズルと、を備え、
前記バルブは、前記タンクから供給される圧縮気体の圧力が所定の設定圧力を超えた時に開動作して圧縮気体を前記洗浄ノズルから噴射させるものである。
【0010】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した水質検出器用洗浄装置において、前記バルブは、前記タンクから供給される圧縮気体の圧力が所定値より低下した時に閉動作して圧縮気体の噴射を停止させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検出器本体が水深深く設置される際に、前記気体供給管として比較的細径のチューブを用いた場合でも、検出器本体近傍のタンクの内圧を所定値まで高めれば、以後はバルブの開閉動作により多量の圧縮気体を間欠的に洗浄ノズルから噴射させることができる。
このため、太径のチューブを用いた場合の柔軟性低下や検出器本体の設置自由度の低下がなく、チューブ内の圧縮気体の浮力によって設置安定性が低下するおそれもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は本発明の第1実施形態の使用状態を示す構成図であって、水質検出器が例えば試料水のpH値を検出するpH計であり、その電極部の洗浄に本発明を適用した場合のものである。
【0013】
図1において、10は洗浄対象部位としての電極部を内蔵した検出器本体であり、pH値を測定するべき河川水や湖沼水等の試料水W中にワイヤ11を介して浸漬されている。ワイヤ11の上端部は、陸地Gに設置された基台50上の腕金51に固着されている。
また、前記電極部に接続されたリード線12がワイヤ11に沿って腕金51方向に延伸されており、その先端部は基台50上の変換器60に接続されている。この変換器60は、電極部による測定信号のインピーダンス変換、増幅等を行って測定値を得るためのものである。
【0014】
検出器本体10の側方には、その電極部に供給される圧縮空気を貯蔵するためのタンク20が一体的に取り付けられており、このタンク20に圧縮空気を供給する気体供給管としてのチューブ22が、前記リード線12と同様にワイヤ11に沿って腕金51方向に延伸されている。そして、チューブ22の先端部は基台50上のポンプ40に連結されている。
圧縮気体供給源としては、ポンプ40に限定されず、例えば、圧縮空気が収容されたボンベを用いたり、工場等にて使用する計装空気を電磁弁を介して供給しても良い。
更に、チューブ22は可撓性、耐候性、耐久性の観点から、軟質塩化ビニル(PVC)製やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製などの樹脂製チューブを用いることが望ましいが、本発明の原理上は、気体供給管として可撓性のない樹脂製のチューブや金属製のパイプを用いても差し支えない。
【0015】
タンク20の下端部には、圧縮空気が供給されるほぼJ字形のパイプ21が連結され、その終端部にはバルブ30を介して洗浄ノズル31が取り付けられている。
なお、洗浄ノズル31は、圧縮空気が検出器本体10の電極部方向に噴射される向きに配置されているが、これらの配置構造は図2を参照しつつ以下に説明する。
【0016】
図2は、図1の要部の拡大図である。前記パイプ21に連結されるバルブ30としては、例えば安全弁のように、バルブの入口側(パイプ21側)の圧力が上昇して設定圧力を超えた時に自動的に作動して弁体が開くことにより圧縮空気を瞬時に排出し、圧力が所定値まで低下した時に弁体が再び閉じる機能を持っている。このバルブ30の出口側に前記洗浄ノズル31が設けられており、その先端部は適宜な間隙を介して検出器本体10の内部の電極部13に対向している。
ここで、洗浄ノズル31の形状は特に限定されないが、バルブ30の開動作時に多量の圧縮空気を短時間に吐出させるためや、吐出直後にバルブ30の内圧を一気に下げてバルブ30の閉動作を確実に行わせるために、洗浄ノズル31の先端部を極度に絞らないことが好ましい。
【0017】
次に、本実施形態の動作を図3を参照しつつ説明する。
図3は、ポンプ40の動作、バルブ30の内圧(入口側圧力)及びバルブ30の動作を示すタイミングチャートである。
【0018】
図3に示すように、所定の長さの洗浄周期Tを設定し、そのうち、洗浄期間T1はポンプ40をオン、その他の期間T2はポンプ40をオフしてpH値等の測定期間とする。
洗浄期間T1において、ポンプ40をオンすると、チューブ22を介してタンク20に圧縮空気が徐々に供給され、パイプ21を経てバルブ30の内圧も徐々に高くなっていく。そして、この内圧がバルブ30固有の設定圧力を超えると、バルブ30の弁体が瞬時に開き、圧縮空気を洗浄ノズル31を介して試料水W中に噴射する。
【0019】
これにより、圧縮空気は急激に膨張して気泡を含んだ高速な水流を発生させる。この水流の勢いと、電極部13に付着した汚濁物質に試料水W及び気泡の境界部が無秩序に接触する際に引き起こされる汚濁物質自体の振動との相乗作用により、汚濁物質が効率よく除去されることとなる。
その後、バルブ30の内圧が低下すると弁体が閉じて洗浄ノズル31からの圧縮空気の噴射が停止し、電極部13の周囲は再び試料水Wによって包囲される。
【0020】
洗浄期間T1では、上述したバルブ30の開動作、閉動作が複数回繰り返されるため、圧縮空気の使用量を少なくして電極部13を効率的に間欠洗浄することができる。なお、洗浄期間T1中の洗浄回数(バルブ30が開動作する回数)は、洗浄期間T1の長さやタンク20の容量、バルブ30の設定圧力等によって所望の値に設定可能である。
【0021】
上記のように本実施形態では、ポンプ40からチューブ22を介してタンク20に所定量の圧縮空気を貯蔵し、この圧縮空気の圧力が設定圧力を超えた時に開動作するバルブ30の作用によって、洗浄ノズル31から電極部13方向へ圧縮空気を噴射させるものである。
従って、検出器本体10が水深深く設置され、チューブ22が長尺になってその配管抵抗が大きくなる場合、タンク20の内圧が所定値に達するまでにはある程度の時間がかかったとしても、タンク20の内圧がバルブ30の設定圧力を超えた時点以降はバルブ30の開閉動作によって間欠洗浄を行うことができる。すなわち、チューブ22としては所定圧力の圧縮空気をタンク20に大量に供給する機能が要求されず、単に空気の供給路として機能すれば足りることから、細径のものを使用しても差し支えない。
【0022】
このため、太径のチューブを使用した場合の柔軟性低下や検出器本体の設置自由度の低下を招くことがないと共に、チューブ内の大量の圧縮空気の浮力により検出器本体10の設置安定性が損なわれる等の不都合も生じない。
また、圧縮空気を貯蔵するタンク20には一般にある程度の重量を持つ金属製容器が用いられるので、タンク20が浮力を持つこともない。
【0023】
次に、図4は本発明の第2実施形態を示す構成図である。
多項目水質分析計や複合電極のように、検出器が、複数の洗浄対象部位としての電極部を有する場合や、濁度計の発光部及び受光部のように複数の洗浄対象部位が離れて配置される場合には、これらの洗浄対象部位に対応させて同数の洗浄ノズルを設け、タンクから各洗浄ノズルへ並列的に圧縮空気を供給するように構成しても良い。
図4の第2実施形態は、検出器本体10A,10Bがそれぞれ電極部13A,13Bを有しており、タンク20に連結された単一のバルブ30Aの出口側を二つに分岐して洗浄ノズル31A,31Bを形成した例である。
【0024】
また、図5は本発明の第3実施形態、図6は本発明の第4実施形態をそれぞれ示す構成図である。洗浄対象部位の位置によっては側方から洗浄する方が効果的な場合もあるので、第3,第4実施形態ではこの点を考慮して洗浄対象部位に側方から圧縮空気を噴射するようにした。
図5の第3実施形態は、タンク20の底部中央に垂直方向にバルブ30Cを配置すると共に、その出口側にL字形の洗浄ノズル31Cを連結したものであり、図6の第4実施形態は、タンク20の下端部側面に水平方向にバルブ30Dを配置して洗浄ノズル31Dを連結したものである。
【0025】
何れの実施形態も、洗浄ノズル31C,31Dにより、検出器本体10Cの下端部に位置する洗浄対象部位に側方から圧縮空気を噴射するように構成されている。なお、洗浄対象部位の位置(高さ)は検出器本体により様々であるから、その高さに応じて洗浄ノズル31C,31Dの位置を相対的に設定することは言うまでもない。
また、上記バルブ30C,30Dは、内蔵されたスプリング32に抗して弁体を移動させることにより圧縮空気を排出するようになっているが、バルブの構造は図示例に何ら限定されるものではない。
【0026】
なお、上記各実施形態において、洗浄用の圧縮気体としては、空気ばかりでなく、各種溶剤や洗浄剤等のミストを混合して用いることもできる。
更に、前述した如く洗浄対象部位は電極部に限定されず、例えば光電変換式検出セルの発光部及び受光部を構成するセル窓であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態の使用状態を示す構成図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明の第1実施形態の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態の使用状態を示す構成図である。
【図5】本発明の第3実施形態の使用状態を示す構成図である。
【図6】本発明の第4実施形態の使用状態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0028】
10,10A,10B,10C:検出器本体
11:ワイヤ
12:リード線
13,13A,13B:電極部
20:タンク
21:パイプ
22:チューブ
30,30A,30C,30D:バルブ
31,31A,31B,31C,31D:洗浄ノズル
32:スプリング
40:ポンプ
50:基台
51:腕金
60:変換器
G:陸地
W:試料水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質検出器の、試料水に接触する洗浄対象部位に付着した汚濁物質を洗浄ノズルから噴射する圧縮気体の作用により除去する水質検出器用洗浄装置において、
圧縮気体供給源と、
この圧縮気体供給源から圧縮気体を供給するための気体供給管と、
この気体供給管に連結され、かつ試料水中の検出器本体の近傍に配置されて圧縮気体を貯蔵するタンクと、
このタンクに連結されて圧縮気体が供給されるバルブと、
このバルブの出口側に配置されて前記洗浄対象部位に試料水を介して対向する洗浄ノズルと、
を備え、
前記バルブは、前記タンクから供給される圧縮気体の圧力が所定の設定圧力を超えた時に開動作して圧縮気体を前記洗浄ノズルから噴射させることを特徴とする水質検出器用洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載した水質検出器用洗浄装置において、
前記バルブは、前記タンクから供給される圧縮気体の圧力が所定値より低下した時に閉動作して圧縮気体の噴射を停止させることを特徴とする水質検出器用洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−190535(P2007−190535A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13725(P2006−13725)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】