説明

水質浄化材および人工藻並びにそれらの製造方法

【課題】水質浄化機能を長期間持続できるようにすることにある。
【解決手段】表面を起毛することで水中の微生物を固着し易くするとともに所定量を超える量の微生物が剥離し易くした炭素繊維製の織物を具えてなる水質浄化材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭素繊維を用いた水質浄化材および人工藻並びにそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願発明者の一人は、炭素繊維を汚濁した環境水につけると水中の微生物が大量に固着することを発見した。この現象の発見を契機に炭素繊維は、環境水の浄化や、藻場の育成に用いられるようになった。炭素繊維は水中に入れると、炭素繊維に固着した微生物によって水中の汚濁物を分解し、水質を浄化する。
【0003】
また、炭素繊維は、海や環境水中に入れると、魚類が集まり、そこで産卵も行なわれ、貝類も成長する。その他の水中生物も顕著に繁殖する。貝類の付着によって、汚濁海水を浄化することもできる。
【0004】
これまでに開発された炭素繊維製の水質浄化材および人工藻は、様々な形態が作られており、水質浄化材も人工藻も同じ形状のものが使用されている。それらは、水中で炭素繊維フィラメントが広く分散するようにしたものが多い。例えば特許文献1には、水溶性サイジング剤を用いて水中で分散するようにした炭素繊維製人工藻が記載されている。また特許文献2には、炭素繊維製水質浄化材として両端部を結束したストランド状、ネット状、組紐状、ふさ状、枝状、ほうき型ストランド状、はたき状、モール状、ムカデ状、のれん状、筒状、イソギンチャク状、フェルト状のもの等が紹介されている。
【0005】
水中で分散するように炭素繊維フィラメントを軸の片端あるいは両端に引き出した水質浄化材や人工藻も知られている(特許文献3〜5参照)。また、水中でのユラギを確保するために、炭素繊維とともに太めのナイロン製のテグスを配置し、炭素繊維フィラメントの垂れ下がりを防ぐ方法もある(特許文献6参照)。
【0006】
すなわち、これまでの炭素繊維製の水質浄化材や人工藻は、炭素繊維の各ストランドを水中で分散させて、炭素繊維の露出する表面積を大きくし、微生物などを固定化できる領域を大とすることによって、汚濁物の効率的な分解を可能としている。
【特許文献1】特許第3331372号
【特許文献2】特許第3328700号
【特許文献3】登録実用新案第3062050号
【特許文献4】登録実用新案第3070150号
【特許文献5】登録実用新案第3078474号
【特許文献6】特開2001−104974号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の炭素繊維製の水質浄化材は、設置初期の段階には高い水質浄化能力が認めらるが、大量の固着物があると、水中のユラギが抑制され、効果的な浄化ができなくなる。このため、環境水中に設置した後約3ケ月間は性能を維持するが、それ以降になるとユラギが不可能となり、浄化効果が低減することがある。
【0008】
炭素繊維製の水質浄化材への固着物には無機系と有機系とがあり、無機系固着物の場合には、軽い振動を与えると剥落する。しかし、有機系固着物では、強制的に上下や左右に振動を与えたりそぎ落としたりして取除いている。このような強制剥離は炭素繊維を傷付けることになり、望ましいことではない。
【0009】
また、従来の炭素繊維ストランドが分散した人工藻は、海水中に設置すると、1ケ月後にはホヤ、貝などの生物類が大量に付着するが、4ケ月から6ケ月間を経過すると、房型人工藻では、房の部分がちぎれてなくなってしまう。ムカデ型人工藻でも、同じように房部分はなくなり、中心部の帯のみになる。炭素繊維とナイロン製のテグスを配置した人工藻でも、同じように炭素繊維部はちぎれ、ナイロンテグスのみになる。
【0010】
このような炭素繊維の切断現象は、淡水では認められないが、海域では顕著な現象であった。それゆえ、このように炭素繊維がちぎれるのは、波の動きや水の流れによって炭素繊維にネジリ力や剪断力が発生することが原因と推定される。付着物が多いと、さらに切断されやすくなる。炭素繊維の欠点は、ネジリ力や剪断力に対する抵抗力が小さいことである。人工藻でもこの欠点が露呈し、それによって人工藻としての機能が失われる。またフィラメント状の炭素繊維製人工藻は、エビ、カニ、カワハギ、カメ、フグなどによって切断されたりかみ切られたりすることも多く見られた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、これらの問題点を解決するべく、フィラメント状の炭素繊維を使わないで済む炭素繊維製の水質浄化材および人工藻を鋭意研究し、水中微生物が最小量しか付着しない、機能を持続する耐久力のある新しい浄化材および人工藻を開発した。すなわち、本発明の水質浄化材および人工藻は、炭素繊維からなる起毛した平面状の織物であり、本発明の水質浄化材および人工藻の製造方法は、炭素繊維製の織物の表面に、微生物が固し易くかつ所定量を超える量の微生物が剥離し易いように起毛処理を施すことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水質浄化材および人工藻によれば、炭素繊維のフィラメント部分はなくても良いので大量の微生物の固着はないが、炭素繊維製の織物への起毛処理によって、所定量としての、水質浄化に必要な最小の微生物の固着は可能であり、それによって水質浄化および魚貝類の繁殖補助の機能を効果的に遂行することができる。
【0013】
さらに本発明の水質浄化材および人工藻によれば、織物ゆえ平坦であることから、微生物が大量に固着した場合に表面の起毛部分に固着したもの以外、すなわち所定量を超えた分の固着物は剥落し、常に起毛した炭素繊維部分が露出することとなるので、水質浄化および魚貝類の繁殖補助の機能を長期間持続することができる。
【0014】
ところで、炭素繊維は、1本7ミクロンの繊維を束ねて作られる非常に繊細な繊維である。通常の炭素繊維は、12000本を1束にしてあるものが多い。炭素繊維束は、加工を加える度に強度が低下するので、本来の強度を維持するためにはその扱いに細心の注意が必要である。現在の製織技術では、炭素繊維製織物を作った場合に、本来の炭素繊維の強度を維持することには限界がある。炭素繊維織物の強度は、加工工程数と関係し、利便性を上げるための加工(解れ止め等)は、さらに炭素繊維織物の強度を低下させることになる。また、炭素繊維が毛羽立つ事は繊維の断裂を意味し、断裂した炭素繊維は本来の強度を発揮できない。断裂させる(傷付ける)ことなく織物にすることにより、多くのメリットが生まれる。
【0015】
そこで、本発明の水質浄化材および人工藻では、好ましくは横糸が連続した炭素繊維製の織物を用いる。このように横糸を連続させた炭素繊維製の織物としては例えば、本願発明者の一人が発明し(特開2005−220496号)、有限会社フクオカ機業が製造・販売している「ハイ・ファブリックス(商品名)」を用いることができる。
【0016】
ハイ・ファブリックスの織り方は、横糸が連続した耳付きなので、炭素繊維の強度が向上するとともに解れ止めの機能が高まることが特徴である。この織り方で炭素繊維製の織物を製作すれば、耳の部分の炭素繊維にストレスをかけないため、本発明の水質浄化材および人工藻を丈夫で高い耐久性を持つものとすることができる。
【0017】
ハイ・ファブリックスの織り方は、幅は1cm〜100cm、長さは1cm〜無限長、厚さは0.1mm〜2mm、目付(密度)は25mm/3越〜25mm/45越まで製作可能である。ハイ・ファブリックスに関する上記公開公報では、水質浄化材や人工藻としての応用までは触れていない。
【0018】
また、本発明では、ハイ・ファブリックス等の炭素繊維製織物の表面の炭素繊維に起毛処理を施し、炭素繊維を毛羽立たせてある。なお、ハイ・ファブリックス織物の起毛処理の方法としては、縦糸は起毛せず、上記の如く連続している横糸のみをその編み込み途中でエメリー起毛と同様にして起毛するという方法を用いることが好ましい。連続している横糸のみ起毛することで、起毛処理効率を高めるとともに炭素繊維の強度低下を防止することができるからである。また、起毛する毛足の長さは1mm〜5mmとすることが好ましい。1mm未満では固着物の固着量が充分でなく、5mmを超えると固着物の固着量が過多になるからである。
【0019】
さらに、本発明における炭素繊維製織物の両端部では、炭素繊維ストランドを露出させても良く、このようにすれば、初期の浄化効率をより高めるのに効果的である。
【0020】
従来の炭素繊維フィラメントが露出する水質浄化材では大量の固着物がある。しかし、本発明の炭素繊維製の織物からなる浄化材では、無機系も有機系も固着物量は極めて少ない。本発明の炭素繊維製の織物の表面上には僅かな固着物があり、この固着物をそぎ落として光学顕微鏡で観察すると微生物の存在は確認される。炭素繊維製の織物の浄化材に無機系の固着物が付着すると、従来の浄化材にはない特異な挙動をしめす。浄化材に付着した無機系の固着物は徐々に下がり、上部から下部に移動する。そしてその固着物は、水の緩やかな流れで剥落する。これによって浄化材に新しい固着物を作り、水中の汚濁物量を少なくすることができる。固着物の落下する箇所に受け器を設置しておけばその回収も可能となる。従来の浄化材は、大量の固着物によって水質を浄化したが、逆に長期間におよぶ水質浄化では困難となった。しかし、本発明の炭素繊維製の織物からなる浄化材によれば、持続可能な水質浄化が可能となった。
【0021】
本発明の炭素繊維製の織物からなる人工藻を海域に設置した場合でも、従来の人工藻と同じように生物類が付着し、その付着量は経月的に増加する。しかしながら本発明の人工藻では、従来の人工藻のような炭素繊維のちぎれや切断はなく、人工藻の変形や破壊も見られなかった。すなわち、従来の人工藻に比較して、本発明の炭素繊維製の織物からなる人工藻は高い耐久性を示した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、本発明の一実施例の炭素繊維製ファイハブリックス織物水質浄化材を示す平面図である。
【実施例1】
【0023】
上記実施例の炭素繊維製ファイハブリックス織物水質浄化材による水質浄化実験に使用した実験水槽は、コンクリート製のU字溝をロの字状に連結したもので、長辺3.788m、短辺1.76m、幅0.3m、深さ0.29mで、内容積は0.86m3(863リットル)であった。この水路に、上記実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物水質浄化材を設置した。
【0024】
この実施例の炭素繊維製ファイハブリックス織物水質浄化材は、前述のフクオカ機業製で、図1に示すように、平面状に形成し、長さ30cm、幅17cm、厚さ1mm、目付25mm/6越とした。また、図1に示すように、この実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物水質浄化材の平面状部分1の長手方向両端には、繊維が分散したフィラメント部分2があり、その長さは7cmとした。さらに、この実施例の水質浄化材の炭素繊維を織った平面状部は、縦糸は起毛せず、連続している横糸のみをその編み込み途中でエメリー起毛と同様にして起毛する起毛処理で、毛足の長さ1mm〜5mmに毛羽立たせておいた。実験では、この実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物水質浄化材を13枚用いた。
【0025】
この実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物水質浄化材を組み入れた実験水槽は、本願発明者の一人が属する群馬工業高等専門学校内にあるため池の西南岸に設置した。ため池内の水をポンプで汲み上げ、実験水槽内に流し入れた。実験水槽内に流し込む水の量を変化させて、流速および接触時間を変化させて実験を行なった。流入水量を増加させると、接触時間は短く、少なくすると接触時間は長くなった。接触時間を55分、100分および170分と変化させて浄化実験を行った。その時の流速は、1.55〜15.6リットル/minであった。流入水と流出水の水質分析を行い、水質浄化能力を調べた。測定項目を下記に示す。
【0026】
固着物重量:水中から取りだした接触材は、乾燥することなくそのままの状態で重量を測定した。
pH:pHメータ(HM−21P、東亜ディーケーケー(株))で測定した。
透視度:JIS−K−0102準拠の透視度計を用いた。
COD(化学的酸素消費量):CODメータ(COD 50S、東亜電波工業(株))を用い、過マンガン酸カリウムを用いた電量滴定法で求めた。
全窒素および全リン:分光光度計(UV 1200、(株)島津製作所)を用いた比色法で求めた。
改善率:流入水と流出水の測定値の差を流入水の値で割った数値の絶対値。
【0027】
流入水は、肉眼でも見ても明らかに濁りがあったが、この実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物水質浄化材での処理水は、濁りが少なくなり、やがて透明となり、水質も向上した。この実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物水質浄化材への固着量は、80g程度であった。固着物は、見かけ上では常に一定であった。固着物量が増えると、固着物は下部に剥落していた。
【0028】
水質分析結果を以下の表1に示す。この実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物水質浄化材を用いた実験では、接触時間が長くなるにつれて、透視度は著しく改善され向上した。また、CODは6.1が4.1へと向上した。全窒素も全リンでも改善効果は顕著であった。T−P、COD、T−Nの順にそれぞれ10〜20%程少なくなっていた。水質の改善率を図2に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
この実験により、本発明が目指した、起毛による微生物の初期固着の促進と、付着物の自然剥落現象が確認できた。また、織物の破断、切断、切れ、両端(耳部分)のほぐれ現象も見られなかったことから、初期の目的を達していた。さらに、水質浄化の点でも高い改善効果が見られた。
【0031】
比較のために、同じ実験水槽を用いて水質浄化実験を行なった。この水路内には、従来の2種類の炭素繊維製水質浄化材を設置した。使用した炭素繊維製水質浄化材は、ムカデ形(柿文織物製)およびナイロン強化型(トシテックス製)であった。ムカデ型は、図3に示すように、帯状になった芯部の両端から魚の骨のように炭素繊維フィラメントが突き出た物である。突き出た炭素繊維フィラメントの長さは20cmで、5cm間隔で突き出ている。全体の長さは65cmであった。
【0032】
ナイロン強化型は、図4に示すように、炭素繊維とともにナイロン製のテグスがロープ状の芯に挟み込まれていた。炭素繊維フィラメントおよびナイロン製テグスの長さは7cmから15cm程度であり、全長約90cmであった。この浄化材におけるナイロン繊維の役割は、水中で炭素繊維が広く分散するようにしたものである。
【0033】
実験には、ムカデ型の炭素繊維製水質浄化材を18本、ナイロン強化型の炭素繊維製水質浄化材を8本用いた。水路内への設置本数は、それぞれの水質浄化材を対にして、ムカデ型は9組(18本)、ナイロン強化型は4組(8本)、合わせて13組(26本)とした。
【0034】
実験では、水槽内に流し込む水の量を上記実施例の場合と同様にし、流速および接触時間を変化させて実験を行なった。流入水と流出水の水質分析を行い、水質浄化能力を調べた。水質分析項目は実施例1と同じである。
【0035】
流入水は目で見ても明らかに濁りがあった。上記従来の炭素繊維製水質浄化材での処理水は、濁りが少なくなり、水質も向上した。炭素繊維製水質浄化材には大量の固着物があった。固着量は、ナイロン強化型では1530g、ムカデ型では410gであった。上記実施例の水質浄化材と比べると、ナイロン強化型では19倍、ムカデ形では4.5倍にも達していた。大量の固着物によって、炭素繊維フィラメントの動きおよびユラギは小さくなった。
【0036】
水質分析結果を以下の表2に、またこれから算出した改善率を図5に示す。透視度以外の改善率は、10〜60%であった。上記実施例の水質浄化材を用いた場合の改善率は20から90%であることと比べると、明らかに異なっていた。
【0037】
【表2】

【0038】
上記実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物水質浄化材を用いた場合に、高い水質浄化効果を示したのは、水質浄化に必要な活性で水質浄化能力の高い微生物が付着するからである。それに対し、固着物量が多いと、水質浄化能力の高い炭素繊維近傍の微生物が汚泥や固着物によって埋没してしまうためにその露出が少なく、また汚泥の保持力が弱くてすぐに剥がれてしまうために、汚泥の更新が頻繁に行われたからであろうと推測される。
【実施例2】
【0039】
本発明の他の一実施例としての炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物人工藻の、海域での固着物付着状況を知るために、その実施例のファイハブリック織人工藻を三重県英虞湾内に設置し、8ケ月間観察を行なった。平成16年8月6日に、英虞湾内にある木製イカダに4種類の人工藻をつり下げた。設置場所の水深は約10mであった。
【0040】
設置した炭素繊維製人工藻は、下記の4種類であった。それらは、比較例としてのムカデ型人工藻 、房型人工藻、ナイロン強化型人工藻およびこの実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物人工藻であった。この実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物人工藻は、先の実施例の水質浄化材と同様の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物を、長さ20cm、幅10cmの平面状に形成するとともに、その炭素繊維を織った平面状部を先の実施例と同様の起毛処理で毛羽立たせておいたものであり、この実施例の人工藻を全長8mのナイロンロープに50cm間隔で縛り付け、下部には錘を付けて海中につり下げた。平成16年9月21日および同年11月22日に各人工藻を引き上げ、固着物の付着状況を観察した。
【0041】
ムカデ型人工藻、房型人工藻およびナイロン強化型人工藻では、設置1ケ月後には付着物が多数観察できた。しかし、3ケ月後には炭素繊維の房が消失し、それらの付着物ごと海底に千切れ落ちていた。このことは、炭素繊維に付着したホヤや貝などの付着物が炭素繊維の表面をこすって炭素繊維が摩耗し、この作用の繰り返しで炭素繊維が切断されたのが原因であろうと推定される。
【0042】
これに対し、この実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物人工藻では、3ヶ月後でも形状を保持し、多数の貝や生物群が生息していた。また、他の人工藻では認められなかった海藻も生育し、海藻の大きさが2cmから4cm程度まで成長していた。その後、平成17年6月まで実験を継続し、この実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物人工藻が形状を保持していることを確認した。この実施例の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物人工藻は、全体的に付着物があり、大きな固まりを形成し、海藻のようであった。その中には魚類(例えばハギ)が入り込んでいたこともあった。
【0043】
このように、海域では、炭素繊維フィラメントが分散した人工藻は切断してしまって機能を維持できないが、この実施例の平面状の炭素繊維製ハイ・ファブリックス織物人工藻では長期間その機能を持続した。
【0044】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、例えばこの発明の炭素繊維製織物を用いた水質浄化材や人工藻は、平坦ではあっても平面状でなく、円筒状等の曲面状としても良い。また、この発明の水質浄化材や人工藻に用いる炭素繊維製織物は、通常の織物でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
かくして本発明の水質浄化材および人工藻によれば、炭素繊維のフィラメント部分はないので大量の微生物の固着はないが、炭素繊維製の織物への起毛処理によって、水質浄化に必要な最小の微生物の固着は可能であり、それによって水質浄化および魚貝類の繁殖補助の機能を効果的に遂行することができる。
【0046】
さらに本発明の水質浄化材および人工藻によれば、織物ゆえ平坦であることから、微生物が大量に固着した場合に表面の起毛部分に固着したもの以外は剥落し、常に起毛した炭素繊維部分が露出することとなるので、水質浄化および魚貝類の繁殖補助の機能を長期間持続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例の炭素繊維製ファイハブリックス織物水質浄化材を示す平面図である。
【図2】上記実施例の炭素繊維製ファイハブリックス織物水質浄化材による水質浄化に関する改善率を示す線図である。
【図3】従来の炭素繊維製ムカデ型水質浄化材を示す平面図である。
【図4】従来の炭素繊維製ナイロン強化型水質浄化材を示す平面図である。
【図5】上記従来の炭素繊維製水質浄化材による水質浄化に関する改善率を示す線図である。
【符号の説明】
【0048】
1 平面状部分
2 フィラメント部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を起毛することで水中の微生物を固着し易くするとともに所定量を超える量の微生物が剥離し易くした炭素繊維製の織物を具えてなる水質浄化材。
【請求項2】
前記炭素繊維製の織物は横糸が連続したものである、請求項1記載の水質浄化材。
【請求項3】
炭素繊維製の織物を用いて水質浄化材を形成し、
その織物の表面を起毛することで水中の微生物を固着し易くするとともに所定量を超える量の微生物が剥離し易くすることを特徴とする、水質浄化材の製造方法。
【請求項4】
前記炭素繊維製の織物は横糸が連続したものである、請求項3記載の水質浄化材の製造方法。
【請求項5】
表面を起毛することで水中の微生物を固着し易くするとともに所定量を超える量の微生物が剥離し易くした炭素繊維製の織物を具えてなる人工藻。
【請求項6】
前記炭素繊維製の織物は横糸が連続したものである、請求項5記載の人工藻。
【請求項7】
炭素繊維製の織物を用いて水質浄化材を形成し、
その織物の表面を起毛することで水中の微生物を固着し易くするとともに所定量を超える量の微生物が剥離し易くすることを特徴とする、人工藻の製造方法。
【請求項8】
前記炭素繊維製の織物は横糸が連続したものである、請求項7記載の人工藻の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−237100(P2007−237100A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64414(P2006−64414)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(504050965)有限会社フクオカ機業 (4)
【Fターム(参考)】