説明

水質調整装置

【課題】イオン交換樹脂のイオン交換能力が低下した場合でも、イオン交換樹脂を頻繁に交換したり再生したりする必要がなく、軟水化効率を維持することができるとともに、取り扱いが簡単な水質調整装置を提供する。
【解決手段】イオン交換樹脂18を充填した軟水化濾材充填部に原水を通過させて、その原水を軟水化させる。前記濾材充填部の上流または下流に金属イオン封鎖剤33を設け、軟水化濾材充填部を通過した軟水化水中に金属イオン封鎖剤33が溶出するように構成した。さらに、金属イオン封鎖剤33の上流または下流に分散剤45を設け、スケール表面のリン酸アパタイトが分散されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば水を加熱したり、蒸気を発生させたりする厨房機器等において、供給原水の水質を調整するために給水管路等に接続して用いられる水質調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気を庫内に入れて食品を加熱処理するスチームコンベンションオーブン等の厨房機器においては、水道水等の原水を加熱部に直接供給すると、その原水中に含まれるカルシウム、マグネシウム等の硬度成分によりスチームジェネレーター内でスケールが発生する。そして、このスケールが蒸気発生部のボイラ伝熱面に付着したり、水位センサや排水管等に堆積したりして、厨房機器の運転に支障を来たすおそれがあった。
【0003】
このため、一般には、厨房機器の給水管路に軟水器等の水質調整装置を接続して、原水の水質を調整するようにしている。すなわち、この水質調整装置においては、イオン交換樹脂よりなる濾材を充填したカートリッジ等の濾材充填部が設けられている。そして、この濾材充填部に原水を通過させることにより、原水中に含まれるイオンが、濾材充填部の陽イオン交換樹脂によりイオン交換されて、その原水が軟水化されるようになっている。
【0004】
しかしながら、このような軟水器等の水質調整装置を使用し続けると、イオン交換樹脂の交換反応基が原水に含まれるイオン物質と交換されて減少し、イオン交換樹脂のイオン交換能力が低下して、軟水化効率が低下する。そのため、イオン交換樹脂を充填したカートリッジを、新しいイオン交換樹脂が充填されたものと頻繁に交換する必要があって、管理コストが高くなるという問題があった。
【0005】
このような問題に対処するため、例えば特許文献1に開示されるような構成の水質調整装置も従来から提案されている。すなわち、この従来構成においては、イオン交換樹脂を充填したカートリッジを収容するイオン交換樹脂容器と、イオン交換樹脂を再生するための再生剤を充填したカートリッジを交換可能に収容する再生剤容器とが装備されている。また、再生剤容器の出水口が接続ホースを介して、イオン交換樹脂容器の給水口に接続されている。そして、再生剤容器内に再生剤を充填したカートリッジを収容した状態で、再生剤容器を介してイオン交換樹脂容器に通水されることにより、再生剤が水に溶出して樹脂容器のカートリッジ内に供給される。これにより、再生剤溶液中の交換反応イオンとイオン交換樹脂に捕捉されたイオンとが交換されて、イオン交換樹脂が再生されるようになっている。
【特許文献1】特開平9−141259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、この従来の水質調整装置においては、イオン交換樹脂のイオン交換能力が低下するごとに、再生剤によるイオン交換樹脂の再生作業を頻繁に行う必要があって、その作業が面倒であるという問題があった。また、イオン交換樹脂の再生作業のたびに、新しい再生剤を充填したカートリッジを再生剤容器内にセットする必要があるため、やはり管理コストが高くなるという問題もあった。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、イオン交換樹脂のイオン交換能力が低下した場合でも、イオン交換樹脂を頻繁に交換したり再生したりする必要がなく、軟水化効率を維持することができるとともに、取り扱いが簡単な水質調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明においては、イオン交換樹脂よりなる軟水化濾材を充填した軟水化濾材充填部に原水を通過させて、その原水を軟水化させるようにした水質調整装置において、
前記濾材充填部の上流または下流に金属イオン封鎖剤を収容する封鎖剤収容部を設け、軟水化濾材充填部を通過した軟水化水中に金属イオン封鎖剤が溶出するように構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、前記イオン交換樹脂として、酸性の軟水化水が生成されるようにしたものを用いたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、前記イオン交換樹脂として、pH4.0〜6.9の範囲内の軟水化水が生成されるようにしたものを用いたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明においては、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の発明において、金属イオン封鎖剤の溶出が少なくなるように、前記封鎖剤収容部は、金属イオン封鎖剤の溶出速度を遅延させるための溶出遅延手段を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明においては、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の発明において、前記封鎖剤充填部の上流または下流に分散剤を収容する分散剤収容部を設け、軟水化水中に分散剤が溶出するように構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明においては、請求項5に記載の発明において、前記分散剤はタンニンまたはリグニンを主成分とすることを特徴とする。
(作用)
この発明においては、原水が濾材充填部を通過することにより、原水中に含まれるイオン物質が濾材充填部のイオン交換樹脂によりイオン交換されて、その原水が軟水化される。その後、濾材充填部を通過した軟水化水が収容部を通過することにより、その軟水化水中に金属イオン封鎖剤が溶出する。よって、イオン交換樹脂のイオン交換能力が低下した場合でも、軟水化水中に溶出した金属イオン封鎖剤により、軟水化効率の低下を補足することができる。このため、イオン交換樹脂を頻繁に交換したり再生したりする必要がなく、長時間にわたって軟水化効率を維持することができて、取り扱いが簡単であるとともに管理コストのアップを抑制することができる。
【0013】
また、酸性の軟水化水が生成されるようにすれば、配管系の内部が酸により洗浄されて、スケールの生成を抑制できる。
また、軟水化水中に分散剤が溶出されるようにすれば、アパタイト系スケールを分散させ、結果として、スケール付着を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、この発明によれば、イオン交換樹脂のイオン交換能力が低下した場合でも、スケールの発生を抑制できて、スチームコンベンションオーブン等の管理コストを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、この発明の実施形態の第1の例を、図1に基づいて説明する。
図1に示すように、この第1の例の水質調整装置においては、収容ケース11が装備されている。この収容ケース11は、有底円筒状をなすステンレス鋼製のケース本体12と、そのケース本体12の上端開口部にパッキン13を介して締付バンド14により着脱可能に取り付けられたステンレス鋼製の蓋体15とから構成されている。
【0016】
収容ケース11のケース本体12内には合成樹脂製のカートリッジ16が着脱可能に収容されるとともに、そのカートリッジ16の上下両端の内部板16i,16kには通水孔16f,16eが形成され、その通水孔16f,16eと対応して同カートリッジ16の内部の上下両端には不織布等よりなるフィルタ17が配設されている。カートリッジ16内の両フィルタ17間には、粒状活性炭よりなる活性炭層46が充填されるとともに、その活性炭層46の下流側に不織布よりなるフィルタ17を介して軟水化濾材としての粒状をなすイオン交換樹脂18が充填されている。従って、両フィルタ17間が軟水化濾材充填部になる。このイオン交換樹脂18は、Na形陽イオン交換樹脂,H形弱酸性陽イオン交換樹脂のうちのいずれかが使用されている。H型弱酸性イオン交換樹脂を用いた場合は、スケール原因物質となる重炭酸硬度等の一時硬度を除去することができる。なお、ここで、イオン交換樹脂18として、H形強酸性陽イオン交換樹脂を使用することも可能であるが、その初期水のpH(ペーハー)が3.0前後となるため、腐食の問題が発生するおそれがあり、この場合には、配管系において耐腐食性の高いものを使用することが必要である。この実施形態においては、イオン交換樹脂18として、pH4.0〜6.9の範囲内の軟水化水が生成されるものを使用する。
【0017】
前記収容ケース11内のカートリッジ16の上壁には入口19及び出口20が形成され、その出口20と連通するように、カートリッジ16内の中心にはパイプ21が延長配置されている。収容ケース11の蓋体15には給水口22及び出水口23が配置され、その給水口22内には逆止弁24が配設されている。そして収容ケース11のケース本体12内にカートリッジ16を収容した状態で、ケース本体12上に蓋体15を取り付けたとき、これらの給水口22及び出水口23にパッキン25を介して、カートリッジ16上の入口19及び出口20が直接連結されるようになっている。
【0018】
前記給水口22には、水道水等の原水を供給するための給水ホース26が止水弁27を介して接続されている。出水口23には、軟水化水を吐出するための吐出ホース28が接続されている。そして、給水ホース26から給水口22及び入口19を介してカートリッジ16内に原水が供給されることにより、その原水中に含まれるイオンがイオン交換樹脂18によりイオン交換されて、原水が軟水化されるようになっている。
【0019】
前記カートリッジ16の内底部には、収容部としての収容容器29が配設されている。この収容容器29は、有蓋無底円筒状をなす合成樹脂製の容器本体30と、その容器本体30の下部外周に接合固定された通水性を有する厚手のフェルト状不織布よりなる円筒状の流路形成部31とを備えている。そして、収容容器29の下端は開放されており、その開放部に前記フィルタ17が位置している。容器本体30の中心には円筒状のパイプ部32が設けられ、そのパイプ部32の上端には前記パイプ21が接続されている。そして、前記流路形成部31からフィルタ17を通り、間隙55を通ってパイプ部32の下端開口にかけて収容容器29の下部を通る通路Lが形成されている。容器本体30の上壁には、通水シート34を介して収容容器29内のエアを抜いたり、軟水化水を導入したりするための抜くための小孔30aが透設されている。
【0020】
前記カートリッジ16の底壁を構成する底板16aは、カートリッジ16の周壁16bに対してネジ部16cを介して着脱可能に構成されている。前記底板16aの内面には前記通水孔16eを有する内部板16kが支持され、この内部板16kに前記フィルタ17が支持されている。通水孔16eは前記通路Lの一部を構成している。
【0021】
前記収容容器29の内部における上下方向中央部には、軟水化水を通過させるための小孔30aを有する中間壁42が形成されており、この中間壁42により収容容器29の内部に分散剤収容部としての上部室43及び封鎖剤充填部としての下部室44が形成されている。
【0022】
前記下部室44の内部には、使用初期状態において指先の先端程度の大きさの粒状若しくは塊状で、かつ半透明ガラス状をなす金属イオン封鎖剤(この実施形態ではポリリン酸ナトリウム)33が不織布よりなる複数の袋状の通水シート34に包んだ状態で収容されている。そして、カートリッジ16内のイオン交換樹脂18を通過した軟水化水が収容容器29内に流路形成部31から流入することにより、その軟水化水中に金属イオン封鎖剤33が溶出し、このため、後述するようにミネラル分が封鎖されてスケールの生成が抑制されるようになっている。
【0023】
上部室43には、ペレットよりなる分散剤45が充填収容されている。この分散剤45は、タンニン酸を主成分とするものであり、後述するように、リン酸アパタイトの再結晶物の生成を抑制する。前記分散剤として、リグニンスルフォン酸塩を用いてもよい。
【0024】
次に、前記のように構成された水質調整装置の作用を説明する。
さて、この水質調整装置において、給水口22の止水弁27が開かれると、水道水等の原水が給水ホース26から給水口22及び入口19を介してカートリッジ16内に供給され、活性炭層46を経て、イオン交換樹脂18中を通過して下方に流される。このとき、原水中に含まれるイオンがイオン交換樹脂18の交換反応基とイオン交換して捕捉され、その原水が軟水化される。
【0025】
その後、イオン交換樹脂18中を通過した軟水化水が流路形成部31から収容容器29の下部室44内に流入し、その下部室44内の金属イオン封鎖剤33の下部の通路Lを斜めに通過して、パイプ部32内に流される。
【0026】
この場合、金属イオン封鎖剤33は流動状態の水には溶出し難く、静止状態の水には溶出しやすい性質がある。このため、前記通路L部分の金属イオン封鎖剤33は、軟水化水が流れていないときにその周囲の水に溶出し、軟水化水が流されることにより、金属イオン封鎖剤33が流出される。また、収容容器29内において、前記通路L部分以外の部分の金属イオン封鎖剤33は、軟水化水があまり流れないところに位置しているため、この部分には金属イオン封鎖剤33が溶出した軟水化水が滞留して、少しずつ通路L側に供給される。以上のように、金属イオン封鎖剤33の余分な溶出を抑えることができる。
【0027】
しかも、金属イオン封鎖剤33が通水シート34に包んだ状態で収容容器29内に収容されているため、金属イオン封鎖剤33を含んだ通水シート34内の軟水化水は、通水シート34を通して徐々に少しずつしか流出しない。従って、金属イオン封鎖剤33は少しずつ、かつ適量ずつ溶出する。従って、前記通路Lを下部に形成した収容容器29や通水シート34は、金属イオン封鎖剤33の溶出速度を遅延させるための溶出遅延手段を構成している。
【0028】
このように、金属イオン封鎖剤33が軟水化水中に溶出されると、軟水化水中に含まれるミネラル分、主としてカルシウムやマグネシウムがこの金属イオン封鎖剤33と反応して封鎖され、リン酸カルシウムやリン酸マグネシウムの一種であるヒドロキシアパタイトが生成される。この状態で、これらの生成物は軟水化水中を浮遊するのみで、スケールになり難いため、イオン交換樹脂18のイオン交換能力が低下して、軟水化水中にカルシウムやマグネシウムが残留していても、スケールが発生するのを抑制することができる。また、金属イオン封鎖剤33はシリカとは反応しないが、シリカと反応しやすいマグネシウムを封鎖するため、シリカスケールの形成が抑制される。なお、本来、軟水化水中にはカルシウム等のミネラル分はほとんど含まれていないものであるが、ここでは、原水を軟水化処理したものは、ミネラル分を含んでいても、軟水化水とする。
【0029】
そして、収容容器29内の金属イオン封鎖剤33を通過した軟水化水は、パイプ部32内からパイプ21、出口20、出水口23及び吐出ホース28を介して外部配管系に供給される。よって、この軟水化水をスチームコンベンションオーブン等の厨房機器に供給して使用すれば、蒸気発生部のスチームジェネレーター伝熱面にスケールが付着したり、水位センサや排水管等にスケールが堆積したりするおそれを抑制することができて、厨房機器を長期にわたって支障なく運転することが可能になる。従って、管理コストを大幅に低減することが可能になる。
【0030】
特に、マグネシウムを混入して熱溶融を経て固化した金属イオン封鎖剤33を用いた場合には、イオン交換樹脂18の軟水化能力が低下した場合に溶出量が多くなる性質を有しており、逆に、イオン交換樹脂18の能力が低下しない場合はあまり溶出しない性質を有している。従って、継続使用によりイオン交換樹脂の能力が低下した場合に、金属イオン封鎖剤33がその低下分をほぼ補うことが可能になる。
【0031】
以上のように、この水質調整装置においては、長時間の使用に伴ってイオン交換樹脂18のイオン交換能力が低下した場合でも、軟水化水中に溶出した金属イオン封鎖剤33により、軟水化効率の低下を補足することができる。このため、イオン交換樹脂18や金属イオン封鎖剤33を頻繁に交換する必要がなく、長時間にわたって軟水化効率を維持することができる。従って、イオン交換樹脂18や金属イオン封鎖剤33等の交換作業を簡略化することができるとともに、前記のように管理コストの低減を図ることができる。しかも、イオン交換樹脂18のイオン交換能力が低下する前は、金属イオン封鎖剤33は溶出しにくいため、経済的で、長寿命を図ることができる。
【0032】
しかも、軟水化水に金属イオン封鎖剤33が溶出されると、その軟水化水は、管壁等にいったん付着した残存スケールを剥離させる洗浄作用を有する。
また、イオン交換樹脂18として、H形弱酸性陽イオン交換樹脂が用いれば、軟水化水は、酸性水となる。従って、酸性水の酸洗い作用により、残存スケールを洗浄できる。しかも、酸性水は金属イオン封鎖剤33を容易に溶出させる作用も有する。ここで、軟水化水はpH4.0〜6.9の範囲内であり、pH4.0〜6.0の範囲が好ましい。
【0033】
加えて、軟水化水の一部は、小孔30aから上部室43内に至り、タンニン成分あるいはリグニン成分を溶出して、中間壁42の小孔30aから下部室44を通過して外部へ送られる。このタンニン成分は、スケールの表面に形成されたリン酸アパタイトを分離させる。すなわち、金属イオン封鎖剤33を連続使用すると、カルシウムよりなるスケールの表面部にリン酸アパタイトの層が形成されて、そのカルシウム成分が溶出しにくくなるおそれがあるが、分散剤はそれを防止する。このため、さらに有効なスケール防止効果を得ることができる。
【0034】
さらに、金属イオン封鎖剤33は、酸による金属の腐食作用を抑制する作用を有する。このため、イオン交換樹脂18により、酸性の軟水化水が生成されたとしても、配管系の腐食を抑えることができる。
【0035】
次に、この発明の実施形態の第2の例を、前記第1の例と異なる部分を中心に説明する。なお、以下に示す実施形態の各例の説明においては、既述の例から構成が変更された部分を中心に説明する。
【0036】
この第2の例においては、図2に示すように、収容容器29の容器本体30の下部に剛性の高い不織布等の通水シートよりなる底壁53が固定され、その底壁53の下部に空間54が形成されている。流路形成部31は、容器29の金属イオン封鎖剤33の収容部と、空間54とに跨っている。従って、軟水化水は、前記第1実施形態と同様に流路形成部31を介して金属イオン封鎖剤33の収容部に至り、そこから空間54内に流出する。また、これと同時に、軟水化水は前記収容部に至ることなく、空間54内に直接流入するようになっている。
【0037】
従って、この第2の例においては、スチームコンベクションオーブンの不使用時等の軟水化水の停滞時において、金属イオン封鎖剤33の収容部に高濃度の金属イオン封鎖剤溶出水が貯留されるとともに、空間54内には金属イオン封鎖剤がほとんど溶出されていない軟水化水が貯留される。そして、スチームコンベクションオーブンの稼働等にともなう軟水化水の流出により、まず、空間54内の溶出水が出水口23側に運ばれ、次いで、下部室44内の溶出水が底壁53を介して徐々に運ばれる。従って、スチームコンベクションの始動時等において軟質スケールの排出を目的としたスチームジェネレーター洗浄水を多量に排出したとしても、金属イオン封鎖剤33が浪費されることを防止でき、その後は、金属イオン封鎖剤33が溶出された軟水化水を用いることができる。
【0038】
次に、第3の例について説明する。
この第3の例においては、図3に示すように、収容容器29の容器本体30内の下部に、底壁71と周壁72とよりなる受け皿73が固定され、底壁71には複数の小孔74が透設されている。底壁71上には不織布等の通水シートよりなるフィルタ17が敷設されている。前記底壁71の下方には空間76が形成されている。
【0039】
従って、この第3の例においては、受け皿73上に金属イオン封鎖剤33が支持される。なお、図3においては、構成の理解を容易にするために、受け皿73内に位置する金属イオン封鎖剤33が描かれていないが、実際には存在する。
【0040】
この第3の例では、受け皿73の周壁72の周囲及び受け皿73の下方の空間76が貯留部としての空間となる。従って、この第3の例では、前記第2の例とほぼ同様な作用を有する。
【0041】
次に、実施形態の第4の例を説明する。
この第4の例においては、図4に示すように、前記カートリッジ16は、円筒状の通水シート34及び活性炭層46に包まれた状態の粒状のイオン交換樹脂18と、前記通水シート34の上端に取り付けられた状態で、そのイオン交換樹脂18の上端に設けられた収容容器29とを備えている。パイプ21は通水性を有している。収容容器29の内部には、金属イオン封鎖剤33が収容されている。そして、給水口22からの原水が、カートリッジ16と収容ケース11の内周面との間の間隙から通水シート34及び活性炭層46を介してイオン交換樹脂18内に至り、軟水化水がパイプ21を介して収容容器29の軸心部の通路35を通って出水口23から供給される。
【0042】
従って、この第4の例においては、前記第1実施形態の作用及び効果に加えて、原水がカートリッジ16の全周からカートリッジ16内に流入するため、収容ケース11を横倒しにして、水質調整装置を横置きで使用する場合に都合がよい。また、原水の水圧が低い場合には、水流の下降流型や上昇流型に比べると、側面通水式のほうが通水抵抗が小さく都合がよい。
【0043】
次に、実施形態の第5の例について説明する。
この第5の例においては、図5に示すように、前記第4の例と同様に、給水口22からの原水がケース11とカートリッジ16との間を通ってカートリッジ16内に導入される。カートリッジ16は、上部ケース16gと、下部ケース16hとがネジ部16cを介して固定されている。下部ケース16hの下端部においてパイプ部32と同軸位置に円筒状の調節バルブ61が設けられ、その調節バルブ61には複数の小孔61aが形成されている。カートリッジ16内はフィルタ17により上下に区画され、下部側には活性炭層46が、上部側にはイオン交換樹脂18が充填されている。そして、原水は、その大部分が調節バルブ61を介してパイプ21内に直接至り、残りが小孔61a及び通水孔16eを介して下部ケース16h内に至る。なお、調節バルブ61を回動調節することにより、パイプ21内及び下部ケース16h内への分配率が調節される。
【0044】
下部ケース16hの上端において、パイプ21の上端には収容容器29が連結されており、その収容容器29の内部には分散剤45が充填されている。収容容器29の天井部と、底部のイオン交換樹脂18の充填部と対向する部分とには小孔29aが形成されている。収容容器29の天井部及び底部にはフィルタ17が設置されている。前記パイプ21は、収容容器29内を通ってその上端開口が上部ケース16gの下部開口16dに前記小孔29aを介して連通している。
【0045】
前記上部ケース16gの内部には分散剤45が充填され、前記下部開口16dを介して上部ケース16gの内部が収容容器29の内部と連通している。上部ケース16gの底壁及び天井部にはフィルタ17が設置されている。
【0046】
従って、この第5の例においては、原水の大部分が調節バルブ61,パイプ21を介して収容容器29内に直接至り、そこで分散剤45を溶出させて上部ケース16gに導かれ、その上部ケース16g内において金属イオン封鎖剤33を溶出させて、外部配管系に供給される。また、原水の一部は、調節バルブ61の小孔61aを介してイオン交換樹脂18の充填部に至り、そこでイオン交換されて、小孔30aを介して収容容器29内に至る。
【0047】
従って、この第5の例では、カートリッジ16内の水流が上昇流であるため、水流がイオン交換樹脂18,分散剤45及び金属イオン封鎖剤33の充填領域全体をほぼ均一に流れる。従って、イオン交換,分散剤45及び金属イオン封鎖剤33の溶出をそれぞれ効率よく行うことができる。
【0048】
次に、第6の例について説明する。
この第6の例においては、図6に示すように、収容容器29が中間壁42を介して上部室43と下部室44とに2分割され、上部室43の上端には上部壁29gを介して合流室29fが区画されている。中間壁42及び上部壁29gにはフィルタ17を有する小孔30aが形成されている。
【0049】
パイプ21は3分割され、パイプ下部21a,パイプ中間部21b,パイプ上部21cが設けられている。パイプ下部21aは、その上端が下部室44の上部において開口するとともに、その開口には開口方向が下向きとなるように流路変更カバー81が被せられている。パイプ中間部21bは下端開口が下部室の上端に開口するとともに、上端開口が合流室29fに開口している。
【0050】
さて、入口19からの原水は、イオン交換樹脂18の充填部,通水孔16e,パイプ下部21aを経て、パイプ下部21aの上端から流路変更カバー81により下向き流になり、金属イオン封鎖剤33の充填部に至る。さらにそこから、大部分はパイプ中間部21bに導かれ、さらにパイプ上部21cを経て出口20から外部に供給される。金属イオン封鎖剤33の充填部内の一部の水は、小孔30aを経て上部室43内に至り、さらに小孔30aを経て合流室29fに至る。そして合流室29fにおいて、下部室44からの水と合流する。従って、金属イオン封鎖剤33及び分散剤45を溶出した処理水が外部配管に供給される。また、分散剤45の充填部内の一部の分散剤を含む水は通水休止中に小孔30aを経て下部室44内に至り、金属イオン封鎖剤33の溶出水と混和され、金属イオン封鎖剤33から溶出した成分がリン酸カルシウムやリン酸マグネシウムのスラッジ(軟質固形物)形成を抑制し、水の流動性を維持する。
【0051】
この第6の例においては、収容容器29内においては、前記第4の例と同様に金属イオン封鎖剤33及び分散剤45が上昇流に溶出される。従って、効率的な溶出が可能になる。
【0052】
また、この第6の例においては、パイプ下部21aの上端が金属イオン封鎖剤33の充填部の上端おいて開口し、しかも流路変更カバー81により下方を向いているため、金属イオン封鎖剤33と反応したカルシウムのスラッジが硬化することなく、下部室44の下部に沈殿状態で滞留する。従って、スラッジが外部配管系に侵入するのを抑制できる。しかも、分散剤45が中間壁42の小孔30aから金属イオン封鎖剤33の充填部にわずかずつ供給されるため、スラッジの硬化をさらに抑制できる。
【0053】
なお、図6においては、理解を容易にするために、収容容器29を大きめに描いてある。
この実施形態の効果を列挙すれば以下の通りである。
【0054】
・ イオン交換樹脂18により、原水が軟水化され、その後、その軟水化水中に微量の金属イオン封鎖剤33が溶出するが、イオン交換樹脂18のイオン交換能力が低下してくると、軟水化水中に溶出した金属イオン封鎖剤33により、軟水化効率の低下を補足することができる。このため、イオン交換樹脂を頻繁に交換したり再生したりする必要がなく、長時間にわたって軟水化効率を維持することができて、取り扱いが簡単であるとともに、管理コストのアップを抑制することができる。
【0055】
・ イオン交換樹脂18による軟水化が低下する以前は、金属イオン封鎖剤33の溶出量が少なく、軟水化が低下すると、金属イオン封鎖剤33の溶出量が増加する。従って、金属イオン封鎖剤33の無駄な溶出を抑制できて、経済的であるとともに、イオン交換樹脂18の能力低下を金属イオン封鎖剤33により有効に補うことができる。
【0056】
・ 金属イオン封鎖剤33が溶出された軟水化水により、管壁等に固着されているスケールを剥離させることができるため、管内の洗浄効果を得ることができる。この剥離現象は、軟水化水中にリン酸が存在することにより、より効果を発揮することができる。従って、管壁等にスケールが固着状態で発生していても、新品のカートリッジ16を用いれば、その使用により、洗浄効果が有効に発揮されて、スケールを除去することが可能になる。
【0057】
・ 容器29の構成や通水シート34により金属イオン封鎖剤33の溶出速度を簡単な構成をもって遅延させることができ、金属イオン封鎖剤33を長期間にわたって経済的に使用できる。
【0058】
・ イオン交換樹脂18と金属イオン封鎖剤33とが同一のケース11内に収容されているため、全体がコンパクトであるとともに、配管構成が簡単になり、水質調整装置を厨房機器の給水管路等に対して容易に配管接続することができる。
【0059】
・ イオン交換樹脂18として弱酸性陽イオン交換樹脂を用いたため、軟水化水を酸性化させることができる。従って、配管系の内部を酸により洗浄でき、スラッジの生成を抑制できる。しかも、このように軟水化水が酸性であっても、金属イオン封鎖剤33の作用により配管系の金属の腐食を抑えることができる。
【0060】
・ 分散剤45を用いたため、その分散剤45の作用により、カルシウムの表面部にアパタイト層が定着硬化するのを防止して、スラッジの生成を抑制できる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0061】
・ イオン交換樹脂18を金属イオン封鎖剤33や分散剤45の容器とは別にすること。すなわち、2つの容器をパイプを介して接続し、一方の容器にイオン交換樹脂18を、他方の容器に金属イオン封鎖剤33及び分散剤45を充填すること。
【0062】
・ 分散剤45を省略すること。
・ 第6の例において、分散剤45を金属イオン封鎖剤33の上流側に配置すること。
【実施例】
【0063】
表1及び表2は、市水及び軟水に対する金属イオン封鎖剤(ポリリン酸ナトリウム)の溶出度を示すものである。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

前記のように、マグネシウムを混入して熱溶融を経て固化した金属イオン封鎖剤33は、イオン交換樹脂18の能力が低下した場合に同金属イオン封鎖剤33の溶出量が多くなる性質を有している。これが表1及び表2に表れている。
【0066】
すなわち、表1の試験条件は、水温20℃の厚木市の上水(市水)と、その上水をイオン交換樹脂により軟水化させた軟水化水とをそれぞれ1リットル用意し、それらの1リットルに金属イオン封鎖剤としてのポリリン酸ナトリウムを浸漬し、1時間後、3時間後、5時間後、7時間後及び10時間後におけるポリリン酸ナトリウムの溶出速度を測定したものである。
【0067】
表2の試験条件は、水温30℃で、同様に溶出速度を測定したものである。
ここで、「残存量」は、前記それぞれの時間ごとのポリリン酸ナトリウムの未溶出残存量を示し、「溶出速度」は、前記各時間ごとの溶出量を積算したものである。
【0068】
表1及び表2から明らかなように、軟水化水より上水市水の方が、溶出速度が速いことが理解される。従って、継続使用によりイオン交換樹脂の能力が低下した場合に、金属イオン封鎖剤33が多く溶出してその低下分をほぼ補うことが可能になる。
【0069】
表3及び表4は、市水及び軟水に対するサンゴ,すなわちカルシウムの溶出度を示すものである。
【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

表3及び表4は、厚木市水(カルシウム硬度38.0ppm)及び同軟水化水(カルシウム硬度2ppm未満)の1リットルにサンゴを30g添加して、8時間後にカルシウム硬度を測定した結果を示すものである。さらに、表4は、表3と同条件の厚木市水及び軟水化水1リットルに、さらにポリリン酸ナトリウムを10g添加したものである。なお、市水のカルシウム硬度は、原水硬度を差し引いた補正値である。
【0072】
表3及び表4から理解されるように、市水よも軟水化水のほうがカルシウム溶出量が増えてカルシウム硬度が高くなり、金属イオン封鎖剤33が添加されると、カルシウム硬度はさらに高くなる。従って、軟水化水に金属イオン封鎖剤33が溶出されると、スケール化を抑制できるばかりでなく、その軟水化水は配管の内壁等にいったん付着したスケールを剥離させる作用を有することが理解される。
【0073】
金属イオン封鎖剤はマグネシウムで熱溶融を経て固化されたポリリン酸ナトリウムでもよく、またカルシウムで熱溶融を経て固化されたポリリン酸ナトリウムのどちらを使用してもよい。
【0074】
ところで、ポリリン酸ナトリウムを含む軟水化水のカルシウム硬度がそれほど高くならない原因は、ポリリン酸ナトリウムがサンゴの表面部に侵入して、サンゴ表面にリン酸アパタイト層を形成するため、炭酸カルシウムの溶出量が増大しないことが推察される。
【0075】
ここで、サンゴカルシウムに取り付いているリン酸アパタイトを排除し、溶出させるためには、軟水のpHを下げる方法と分散剤を投入する方法とが考えられる。すなわち、軟水化水には、カルシウム硬度溶出促進能力を有するが、さらに、カルシウム硬度をリン酸と反応させてリン酸カルシウム[Ca3(PO4)2]に変えてやれば、物質の溶出度積から考えてサンゴのカルシウムは更にイオン化して軟化水中に溶出するのではないか推察される。
【0076】
表5は、市水及び酸性水に対する金属イオン封鎖剤の溶出度を示すものである。
【0077】
【表5】

表5は、試料として、それぞれpH7のつくば市水の原水(非軟水化水),pH6の調整水(軟水化水),pH5の調整水(軟水化水),pH4の調整水(軟水化水)を500ミリリットル用意し、それらの調整水にそれぞれ金属イオン封鎖剤を150g添加して、時間ごとの溶出量を測定したものである。表5から理解されるように酸性度が高いほうが金属イオン封鎖剤の全リン酸溶出量は多いが、特に、pH5の調整水に対する溶出量が多い。
【0078】
従って、軟水化水はpH4.0〜6.9(やがて原水のpHに近づく)、pH4.0〜6.0の範囲が好ましい。実施形態においては、イオン交換樹脂18として、H形弱酸性陽イオン交換樹脂が用いられている。酸性水は金属イオン封鎖剤33を容易に溶出させる。
【0079】
なお、つくば市水の水質測定結果は表6に示すとおりである。
【0080】
【表6】

そして、それぞれ1リットルのつくば市水(原水),つくば市水のpHが異なる軟水化水にそれぞれサンゴを浸漬し、金属イオン封鎖剤添加によるリン酸アパタイト形成条件をSEM(走査電子顕微鏡)・EPMA(電子線マイクロアナライザ)映像により目視分析した。その分析結果、pH4にてリン酸アパタイトはサンゴ表面から効果的にはずれることが判明した。
【0081】
表7〜9は、金属イオン封鎖剤及び分散剤の有無のpH7,pH6,pH4の中性水及び酸性水に対するカルシウムの溶出度を示すものである。
【0082】
【表7】

【0083】
【表8】

【0084】
【表9】

すなわち、表7〜9は、それぞれつくば市軟水化水で、pH7,pH6,pH4の軟水化水において、金属イオン封鎖剤、タンニン酸の添加によるカルシウム硬度溶出量の測定をしたものである。
【0085】
表7〜9から明らかなように、カルシウム硬度溶出量は、タンニン酸及び金属イオン封鎖剤を溶出した軟水化水が多く、次いで、金属イオン封鎖剤のみを溶出した軟水化水,タンニン酸及び金属イオン封鎖剤の双方とも溶出していない軟化水の順序であり、さらにその傾向は、pH4が多く、次いで、pH6,pH7の順序であった。
【0086】
従って、タンニンの投入でリン酸アパタイトが分散されてカルシウムが多く溶出することが理解される。
ちなみに、タンニン錠剤の配合割合の一例は以下の通りである。
【0087】
タンニン酸70%
メタリン酸ナトリウム20%
消石灰9%
メチルセルロース1%
ここで、メタリン酸ナトリウム及び消石灰は、かため機能、メチルセルロースは粘剤として機能する。消石灰は二酸化珪素でもよい。
【0088】
表10及び11は、軟鋼に対する腐食試験を示すものである。
【0089】
【表10】

【0090】
【表11】

表10及び11は、つくば市水道水の軟化水を試験水として塩酸を添加して、pH6.0,pH4.0に調整した各1リットルの試験水を作成し、それに軟鋼(SPCC)よりなる腐食試験片(30mm×50mm)を4日間浸漬した。
【0091】
以上のように、金属イオン封鎖剤33を添加すると、腐食度が遅延して軟鋼の防食効果を向上させる。そして、添加濃度が高いほど防食効果はよくなる傾向にある。また、カルシウム硬度30ppmが存在する場合(H形軟化水では硬度が存在するため)は、金属表面にリン酸カルシウムやリン酸マグネシウムの防食被膜を形成するため、軟水単独に比して防食効果は改善されている。特にpH4の条件において顕著に出ている。
【0092】
(他の技術的思想)
前述した実施形態及び実施例から把握されるが、請求項に記載されていない技術的思想は以下の通りである。
【0093】
(1) 前記溶出遅延手段は、軟水化水の流路を前記収容部の隅部に形成することにより構成されたことを特徴とする請求項2に記載の水質調整装置。
従って、濾材充填部からの軟水化水が、収容部の隅部に形成された流路を通して流されることにより、溶出が遅延される。従って、通路の位置を規定したのみであるので、部品点数が増えることがなく、構成が簡単である。
【0094】
(2) 前記溶出遅延手段は、粒状若しくは塊状の金属イオン封鎖剤を通水シートに包んで収容部に収容することにより構成されたことを特徴とする請求項2または前記技術的思想(1)項に記載の水質調整装置。
【0095】
従って、金属イオン封鎖剤の表面を通水シートが覆うような状態になり、金属イオン封鎖剤が軟水化水中に短時間で過剰に溶出するのを抑制することができる。
(3) 前記収容部の下部における軟水化水の流路の一部に金属イオン封鎖剤の溶出水を貯留するための貯留部を設け、軟水化水が停滞しているときに前記貯留部に金属イオン封鎖剤の溶出水が貯留され、軟水化水が流れるときに前記溶出水が除々に流出されるように構成したことを特徴とする請求項に記載の水質調整装置。
【0096】
従って、軟水化水が停滞しているときに貯留部に金属イオン封鎖剤の溶出水が貯留され、軟水化水が流れるときに前記溶出水が除々に流出されるように構成されているため、軟水化水の使用量が多量であっても、前記溶出水が少しずつ流出されるようにすれば、金属イオン封鎖剤が溶出された軟水化水の存在を維持できる。
【0097】
(4) 分散剤は、ペレットであることを特徴とする請求項5または6に記載の水質調整装置。
(5) 前記分散剤は、タンニン酸と、メタリン酸ナトリウム及び消石灰のうちの少なくとも一方と、メチルセルロース(カルボキシメチルセルロースでもよい)とを含むことを特徴とする前記技術的思想(4)項に記載の水質調整装置。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第1の例の水質調整装置を示す断面図。
【図2】第2の例の水質調整装置を示す断面図。
【図3】第3の例の水質調整装置を示す断面図。
【図4】第4の例の水質調整装置を示す断面図。
【図5】第5の例の水質調整装置を示す断面図。
【図6】第6の例の水質調整装置を示す断面図。
【符号の説明】
【0099】
11…収容ケース、12…ケース本体、16…濾材充填部としてのカートリッジ、18…濾材としてのイオン交換樹脂、29…金属イオン封鎖剤収容部としての金属イオン封鎖剤容器、30…容器本体、31…流路形成部、33…金属イオン封鎖剤33…通水シート、41…第2収容ケース、44…接続ホース、45…分散剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂よりなる軟水化濾材を充填した軟水化濾材充填部に原水を通過させて、その原水を軟水化させるようにした水質調整装置において、
前記濾材充填部の上流または下流に金属イオン封鎖剤を収容する封鎖剤収容部を設け、軟水化濾材充填部を通過した軟水化水中に金属イオン封鎖剤が溶出するように構成したことを特徴とする水質調整装置。
【請求項2】
前記イオン交換樹脂として、酸性の軟水化水が生成されるようにしたものを用いたことを特徴とする請求項1に記載の水質調整装置。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂として、pH4.0〜6.9の範囲内の軟水化水が生成されるようにしたものを用いたことを特徴とする請求項1に記載の水質調整装置。
【請求項4】
金属イオン封鎖剤の溶出が少なくなるように、前記封鎖剤収容部は、金属イオン封鎖剤の溶出速度を遅延させるための溶出遅延手段を有することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の水質調整装置。
【請求項5】
前記封鎖剤収容部の上流または下流に分散剤を収容する分散剤収容部を設け、軟水化水中に分散剤が溶出するように構成したことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の水質調整装置。
【請求項6】
前記分散剤はタンニンまたはリグニンを主成分とすることを特徴とする請求項5に記載の水質調整装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−7651(P2007−7651A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232717(P2006−232717)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【分割の表示】特願2006−47135(P2006−47135)の分割
【原出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(591024719)クリタック株式会社 (14)
【Fターム(参考)】