説明

水路構築用ブロック及びこれを用いた水路構造物

【課題】 勾配を有する水路を備えた水路構造物の上面の耐荷力にバラツキが生じることを防止できる水路構築用ブロックを提供する。
【解決手段】 水路構築用ブロックは、所定厚さtcの頂版部21cと一端から他端に及ぶ所定上下寸法dの流水路21aを有するブロック21と、ブロック21の流水路21a内に敷設された状態で流水路21aの底面を構成すると共に該底面に所定の勾配を形成する勾配形成部材22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾配を有する水路を備えた水路構造物を構築する際に有用な水路構築用ブロックとこれを用いた水路構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は勾配を有する水路WWを備えた水路構造物の一例を示すもので、該水路構造物10は路面勾配に見合った図中右下がりの上面勾配Guと図中左下がりの水路勾配Gwを有している。図1中の符号HPは水平面を示すもので、実際上の上面勾配Guと水路勾配Gwはそれぞれ数%程度である。
【0003】
この水路構造物10は、図2に示す形状のコンクリートブロック(以下、単にブロックと言う)11を互いの流水路11aが連続するように複数連結することによって構築されている。
【0004】
図1に示した複数のブロック11のうち中央の3つのブロック11は、流水路11aの上下寸法dがそれぞれ同じで且つ一定であり、底版部11bの厚さtbもそれぞれ同じで且つ一定であるが、上面高さHは各々の上面が所定の勾配をもって連なるように図中右方向に向かって徐々に小さくなっていて、各ブロック11の頂版部11cの厚さtcは上面勾配Guに準じてそれぞれ図中右方向に向かって徐々に小さくなっている。
【0005】
また、図1に示した複数のブロック11のうち両側の2つのブロック11は、流水路11aの上下寸法dが異なる点と上面高さHの平均値が異なる点で中央の3つのブロック11と形状を相違している。図1には両側の2つのブロック11に続くブロックの図示を省略してあるが、両側の2つのブロック11にも各々のブロック11と類似形状のブロックが複数連結されている。
【0006】
水路構造物10を構築する複数のブロック11は図1に示すように図中左下がりに傾いた姿勢でそれぞれ設置されており、水路勾配Gwは左下がりに連なる流水路11aの底によって形成され、上面勾配Guは右下がりに連なる各ブロック11の上面によって形成される。
【特許文献1】特開平6−254832
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の水路構造物10にあっては、所定の勾配Gwの水路WWを得るために、頂版部11cの厚さtcの平均値が異なり且つ厚さtcが流水路11aに沿って徐々に小さくなるものをブロック11として用いている。
【0008】
そのため、頂版部11cの厚さtcの平均値が小さなブロック11は該平均値がそれよりも大きなブロック11に比べて耐荷力(強度)が劣ると共に、1つのブロック11を見ても頂版部11cの厚さtcに応じて耐荷力(強度)に違いが生じる。
【0009】
依って、車両通過等によって水路構造物10の上面に荷重が加わったときに、往々にして耐荷力の低い頂版部を有するブロックに亀裂発生や破損等の不具合を生じる恐れがある。この不具合は使用するブロック11の頂版部11cの厚さtcを全体的に厚くすることによって未然に防止することも可能であるが、ブロック11自体の重量が増加して水路構造物10を施工する際の障害となり且つ1ブロック当たりの単価が増してしまうため、コスト削減が望まれている現状にあっては得策とは言えない。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたもので、その目的とするところは、勾配を有する水路を備えた水路構造物の上面の耐荷力にバラツキが生じることを防止できる水路構築用ブロック及びこれを用いた水路構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明の水路構築用ブロックは、所定厚さの頂版部と一端から他端に及ぶ所定上下寸法の流水路を有するブロックと、ブロックの流水路内に敷設された状態で流水路の底面を構成すると共に該底面に所定の勾配を形成する勾配形成部材とを備える、ことをその特徴とする。
【0012】
また、本発明の水路構造物は、前記水路構築用ブロック(勾配形成部材が敷設されたブロック)を互いの流水路が連続するように複数連結することによって構築されており、各ブロックの流水路内に敷設された勾配形成部材によって所定の水路勾配が形成されている、ことをその特徴とする。
【0013】
前述の水路構築用ブロック及びこれを用いた水路構造物にあっては、所定の勾配を有する水路を得るために、頂版部の厚さが一定のものをブロックとして用い、該ブロックの流水路内に敷設して使用される勾配形成部材を用いている。
【0014】
つまり、水路構造物を構築する複数のブロックとして頂版部の厚さが同じで且つ一定のものを用いることができるので、頂版部の耐荷力(強度)がブロック毎に異なることを防止できる。依って、車両通過等によって水路構造物の上面に荷重が加わったときでも、頂版部の厚さを原因として一部のブロックに亀裂や破損等の不具合を生じることを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上面勾配とは異なる勾配を有する水路が有する水路構造物の上面の耐荷力にバラツキが生じることを防止できる水路構築用ブロック及びこれを用いた水路構造物を提供できる。
【0016】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図3は勾配を有する水路WWを備えた水路構造物の一実施形態を示すもので、該水路構造物20は路面勾配に見合った図中右下がりの上面勾配Guと図中左下がりの水路勾配Gwを有している。図3中の符号HPは水平面を示すもので、実際上の上面勾配Guと水路勾配Gwはそれぞれ数%程度である。
【0018】
この水路構造物20を構築する際に用いられる水路構築用ブロックは、図4に示すように、所定厚さtcの頂版部21cと一端から他端に及ぶ所定上下寸法dの流水路21aを有するコンクリートブロック(以下、単にブロックと言う)21と、ブロック21の流水路21a内に敷設された状態で流水路21aの底面を構成すると共に該底面に所定の勾配を形成する勾配形成部材22とを備えている。水路構造物20は前記水路構築用ブロック(勾配形成部材22が敷設されたブロック21)を互いの流水路21aが連続するように複数連結することによって構築されており、各ブロック21の流水路21a内に敷設された勾配形成部材22によって所定の水路勾配Gwが形成されている。因みに、図4中の符号21dは左側壁部、21eは右側壁部、21fは境界部(歩車道部)である。
【0019】
図3に示した複数のブロック21のうち中央の3つのブロック21は、流水路21aの上下寸法dがそれぞれ同じで且つ一定であり、底版部21bの厚さtbがそれぞれ同じで且つ一定であり、頂版部21cの厚さtcがそれぞれ同じで且つ一定であり、上面高さHがそれぞれ同じである。図3には同一形状の3つのブロック21を中央に配したものを示してあるが、これらブロック21の数は水路勾配Gw等に応じて適宜増減できる。
【0020】
また、図3に示した複数のブロック21のうち両側の2つのブロック21は、流水路21aの上下寸法dが異なる点と上面高さHが異なる点で中央の3つのブロック21と形状を相違している。図3には両側の2つのブロック21に続くブロックの図示を省略してあるが、両側の2つのブロック21にも各々のブロック21と同形状のブロックが複数連結されている。両側に配されるブロック21の数も中央のブロック21と同様に水路勾配Gw等に応じて適宜増減できる。
【0021】
各ブロック21に敷設される勾配形成部材22は、ブロック21と同様のコンクリート或いはプラスチックやセラミクス等の他の材料で形成されており、流水路21aの底の形状(断面V字形)に相似した形状(断面V字形)の上面22aと、流水路21aの底の形状(断面V字形)に合致した形状(断面V字形)の下面22bを有している。また、勾配形成部材22の幅は流水路21aの幅とほぼ一致していて、長さは流水路21aの長さとほぼ一致している。さらに、勾配形成部材22の厚さtは一端から他端に向かって徐々に大きくなっていてその上面22aに所定の勾配を有している。
【0022】
図3から分かるように、各勾配形成部材22の上面22aの勾配は全て同じであるが、各勾配形成部材22の最大厚さ及び最小厚さは隣接する勾配形成部材22の上面22aが所定の勾配をもって連なるように予め異なる厚さに設定されている。各ブロック21の流水路21a内に勾配形成部材22を敷設した状態では、該勾配形成部材22の上面22aによって流水路21aの底面が構成されると共に該底面に上面22aの傾きに準じた勾配が形成される。
【0023】
各勾配形成部材22を各ブロックの流水路21内に敷設する方法には、勾配形成部材22の下面22bとブロック21の流水路21aの底の少なくとも一方にエポキシ樹脂等を主成分とする接着剤を塗布し、勾配形成部材22の下面22bを流水路21aの断面V字形の底に嵌め込むようにして載置し、接着剤を硬化させて勾配形成部材22をブロック21と一体化させる方法が好ましく採用できる。また、勾配形成部材22の敷設には接着剤を使用しない方法も採用でき、例えば、相互嵌合を可能とした凹部と凸部の一方を勾配形成部材22の下面22bに予め形成し他方を流水路21aの底に予め形成しておき、両者の凹凸嵌合によって勾配形成部材22を流水路21a内に敷設するようにすれば、接着剤を使用しなくとも勾配形成部材22の敷設を行える。この場合に接着剤を併用すれば勾配形成部材22とブロック21の一体化をより強固に行うことができる。
【0024】
水路構造物20を構築する複数の水路構築用ブロック(勾配形成部材22が敷設されたブロック21)は図3に示すように図中右下がりに傾いた姿勢でそれぞれ設置されており、水路勾配Gwは左下がりに連なる勾配形成部材22の上面22aによって形成され、上面勾配Guは右下がりに連なる各ブロック21の上面によって形成される。
【0025】
前述の水路構築用ブロック及びこれを用いた水路構造物20にあっては、上面勾配Guとは異なる所定の勾配Gwを有する水路WWを得るために、頂版部21cの厚さtcが一定のものをブロック21として用い、該ブロック21の流水路21a内に敷設して使用される勾配形成部材22を用いている。
【0026】
つまり、水路構造物20を構築する複数のブロック21として頂版部21cの厚さtcが同じで且つ一定のものを用いることができるので、頂版部21cの耐荷力(強度)がブロック21毎に異なることを防止できる。依って、車両通過等によって水路構造物20の上面に荷重が加わったときでも、頂版部21cの厚さtcを原因として一部のブロック11に亀裂や破損等の不具合を生じることを確実に防止できる。
【0027】
また、ブロック21の流水路21a内に敷設された勾配形成部材22によって所定の水路勾配Gwを得ているので、該水路勾配Gwを得るためにブロック21の底版部21bの厚さtbや頂版部21cの厚さtcを可変する場合に比べて、ブロック21自体の重量を軽減できると共に1ブロック当たりの単価を低減できる。
【0028】
さらに、勾配形成部材22はブロック21と別体で用意されるものであるので、上面22aの勾配が異なる勾配形成部材22を使用することによって任意の勾配Gwの水路WWを簡単に得ることができる。
【0029】
さらにまた、勾配形成部材22をブロック21を同じ材料で形成する必要はないので、該材料を選択することによって勾配形成部材22それ自体の重量及び単価、ひいては水路構築用ブロックそれ自体の重量及び単価を抑制できる。
【0030】
図5は勾配を有する水路WWを備えた水路構造物の他の実施形態を示すもので、該水路構造物20’は路面勾配に見合った図中右下がりの上面勾配Guと図中右下がりの水路勾配Gwを有しており、水路勾配Gwは上面勾配Guよりも大きい。図5中の符号HPは水平面を示すもので、実際上の上面勾配Guと水路勾配Gwはそれぞれ数%程度である。
【0031】
この水路構造物20’を構築する際に用いられる水路構築用ブロック(勾配形成部材22が敷設されたブロック21)が図3及び図4に示した水路構築用ブロックと異なるところは、ブロック21の流水路21a内に敷設される勾配形成部材22の向きを180度変化させた点にある。
【0032】
つまり、ブロック21の流水路21a内に敷設される勾配形成部材22の向きを180度変化させることによって、水路勾配Gwの向きを180度異ならせることでき、また、上面22aの勾配が異なる勾配形成部材22を使用することによって任意の勾配Gwの水路WWを得ることができる。他の作用効果は図3及び図4に示した水路構築用ブロック及び水路構造物と同じである。
【0033】
尚、図3及び図4の示した実施形態と図5に示した実施形態では同一形状のブロック21を中央に複数配しその両側に流水路21aの上下寸法dが異なるブロック21を複数配したものを例示したが、両側の複数のブロック21のさらに両側に上下寸法dが異なるブロック21を複数配してもよく、水路構造物20,20’の全長が短い場合等には単一形状のブロック21のみで水路WWを構成することも可能である。
【0034】
また、図3及び図4の示した実施形態と図5に示した実施形態では数%の上面勾配Guを有する水路構造物20,20’を例示したが、上面勾配Guが0%となるように水路構築用ブロックを設置しても勾配形成部材22の存在によって所定の勾配Gwを有する水路WWを備えた水路構造物を構築することができ、前記同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
さらに、図3及び図4の示した実施形態と図5に示した実施形態では各ブロック21の流水路21aの底の形状と各勾配形成部材22の下面22bの形状を互いが合致可能な断面V字形としたが、各ブロック21の流水路21aの底と各勾配形成部材22の下面22bをそれぞれ平坦としても流水路21a内への勾配形成部材22の敷設を行えることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来例を示す、勾配を有する水路を備えた水路構造物の縦断面図である。
【図2】図1に示したブロックの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示す、勾配を有する水路を備えた水路構造物の縦断面図である。
【図4】図3に示したブロック及び勾配形成部材の斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す、勾配を有する水路を備えた水路構造物の縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
20,20’…水路構造物、21…ブロック、21a…ブロックの流水路、21b…ブロックの底版部、21c…ブロックの頂版部、d…流水路の上下寸法、tb…底版部の厚さ、tc…頂版部の厚さ、H…ブロックの上面高さ、22…勾配形成部材、22a…勾配形成部材の上面、22b…勾配形成部材の下面、t…勾配形成部材の厚さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定厚さの頂版部と一端から他端に及ぶ所定上下寸法の流水路を有するブロックと、ブロックの流水路内に敷設された状態で流水路の底面を構成すると共に該底面に所定の勾配を形成する勾配形成部材とを備える、
ことを特徴とする水路構築用ブロック。
【請求項2】
請求項1に記載の水路構築用ブロックを互いの流水路が連続するように複数連結することによって構築されており、各ブロックの流水路内に敷設された勾配形成部材によって所定の水路勾配が形成されている、
ことを特徴とする水路構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−63824(P2008−63824A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242840(P2006−242840)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(390027568)株式会社カイエーテクノ (12)
【Fターム(参考)】