説明

水路設置物に対する砂溜まりの防止構造

【課題】し渣破砕機などの水路設置物に対し、簡易な構造でその上流側における沈砂の溜まりを防止でき、砂の可動機構部への影響を解消し得る水路設置物に対する砂溜まりの防止構造を提供する。
【解決手段】し渣破砕機1の上流側において水路の底部寄りに設置される沈砂透過用のスクリーン6と、し渣破砕機1の下方に形成され、スクリーン6とし渣破砕機1の下流側とを連通するバイパス路7と、を備え、沈砂をスクリーン6およびバイパス路7を介して下流側に流す構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流に対して抵抗体となり、水面下に可動機構部を備えた水路設置物に対し、その上流側における沈砂の溜まりを防止する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記水路設置物の一例として、汚水路に設置されるし渣破砕機が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。同文献に記載のし渣破砕機は、内回転体と、この内回転体の外側に設けられる外胴体とを備えており、内回転体を回転させ、両者間で刃を摺接させることで、し渣を破砕する構造である。
【特許文献1】特開2004−49944号公報(段落0012、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記し渣破砕機は水流に対して抵抗体となり、その際、汚水中に含まれる砂の一部は、し渣破砕機に遮られて下流側に流れず、し渣破砕機の手前の水路底部に沈砂として溜まる場合がある。そして、この沈砂がある程度まで堆積すると、水流の影響やし渣からの巻き上げにより、まとまった量の沈砂が一度にし渣破砕機に流入し、この砂の噛み込みにより刃の磨耗度に影響がでるおそれがある。
【0004】
本発明は、以上のような課題を解決するために創作されたものであり、し渣破砕機などの可動機構部を備えた水路設置物に対し、簡易な構造でその上流側における沈砂の溜まりを防止でき、砂の可動機構部への影響を解消し得る水路設置物に対する砂溜まりの防止構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、水流に対して抵抗体となり、水面下に可動機構部を備えた水路設置物に対し、その上流側における沈砂の溜まりを防止する構造であって、前記水路設置物の上流側において水路の底部寄りに設置される沈砂透過用のスクリーンと、前記水路設置物の下方に形成され、前記スクリーンと前記水路設置物の下流側とを連通するバイパス路と、を備え、沈砂を前記スクリーンおよび前記バイパス路を介して下流側に流す構成としたことを特徴とする水路設置物に対する砂溜まりの防止構造とした。
【0006】
この構造によれば、水路設置物に対して沈砂を迂回させて下流側に流すことができるので、水路設置物の手前で沈砂が溜まることがなく、この沈砂に起因する可動機構部への影響の問題が解消される。また、簡易な構造で済むため、経済的な砂溜まりの防止構造となる。
【0007】
また、本発明では、前記水路設置物は、刃の摺接によりし渣を破砕するし渣破砕機からなり、前記スクリーンは、水流方向に沿い、底部に沈砂の透過孔が形成された複数のガイド溝を有していることを特徴とする水路設置物に対する砂溜まりの防止構造とした。
【0008】
この構造によれば、し渣をガイド溝に沿って効率的にし渣破砕機まで移動させることができ、ガイド溝内の沈砂は透過孔を通って沈降するので、ガイド溝内での沈砂の堆積を防止できる。
【0009】
また、本発明では、前記スクリーンは、前記ガイド溝をV溝とするアングル材の並設からなる水路設置物に対する砂溜まりの防止構造とした。
【0010】
この構造によれば、経済的で組み付けの容易なスクリーン構造となる。また、ガイド溝がV溝として形成されることで、砂がその傾斜面に沿って効率的に溝の底部まで案内されて透過孔から落下する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、し渣破砕機などの可動機構部を備えた水路設置物に対し、簡易な構造でその上流側における沈砂の溜まりを防止でき、もって砂の可動機構部への影響を解消し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
「水流に対して抵抗体となり、水面下に可動機構部を備えた水路設置物」の例として、汚水路に設置されるし渣破砕機とした場合について以下に説明する。図1は、し渣破砕機の正面図、図2は、し渣破砕機および本発明に係る砂溜まりの防止構造を示す側面図、図3は図2におけるA−A断面図である。
【0013】
図1において、し渣破砕機1は架台9を介して矩形断面の水路に縦置きに設置され、水路との間には適宜にモルタル部が形成される。本発明においては、その破砕部に関する具体的な構造については特に限定するものではなく、図では前記特許文献1に記載のし渣破砕機と同様のものを図示しており、螺旋状に巻回したスクリュー羽根2を有する内回転体3と、この内回転体3の半径方向外側に設けられ、スクリュー羽根2の螺旋刃2aの摺接面を構成する外胴体4と、を備えている。し渣破砕機1と水路の両側壁との間は側板5(図3も参照)によって閉塞されており、水は全てし渣破砕機1の破砕部に流入する。そして、駆動モータMにより内回転体3が回転し、螺旋刃2aが外胴体4に対して摺接することで、水中のし渣が破砕され、下流側に流れる。
【0014】
このとき、水中にほぼ均一に分布している砂がそのままし渣破砕機1に流入する分については然程問題はないのであるが、砂の一部が、し渣破砕機1に遮られてその手前の水路底部に沈砂として溜まり、この堆積した沈砂がまとまった量で一度にし渣破砕機1に流入した場合、その砂の噛み込みにより刃の磨耗度に影響がでるおそれがあるという問題については既述した通りである。
【0015】
これに対し本発明は、図2に示すように、し渣破砕機1の上流側において水路の底部寄りに設置される沈砂透過用のスクリーン6と、し渣破砕機1の下方に形成され、スクリーン6とし渣破砕機1の下流側とを連通するバイパス路7と、を備え、沈砂をスクリーン6およびバイパス路7を介して下流側に流す構成としたことを主な特徴とする。
【0016】
し渣破砕機1は、その底部を形成するディスク部材8が水路の底部から離間されたうえで、図3に示すように、その外胴体4が水路に鉛直状に立設された架台9(9A)に固設されており、したがって、ディスク部材8の底面と水路の底部との間の空間が図2に示すバイパス路7を構成する。
【0017】
スクリーン6は、沈砂のみを透過させて、し渣の流入を防止する機能を有していればよく、例えば汎用品としてスクリーン目が網目状に形成されたパンチングメタル材などを使用することができるが、本実施形態では、スクリーン6として、水流方向に沿い、底部に沈砂の透過孔10が形成された複数のガイド溝11を有する構成のものとし、具体的にはL型鋼であるアングル材12を水路幅方向に並設させた構成としている。
【0018】
図4は図3におけるB矢視図、図5(a)は図3におけるC−C断面図、図6はスクリーン6周りの斜視図であり、図3〜図6を適宜に参照してスクリーン6について説明すると、スクリーン6は、水平状に、かつ開口側を上方として、いわゆる上方に臨むV溝を形成するようにして、水路幅方向に並設された複数(本実施形態では10本)のアングル材12を本体としている。各アングル材12同士の連結については、各上流端部が、水路幅方向に沿って延設されたフレーム材13に固設されるとともに、両端の2本ずつのアングル材12が延設方向中程の底部で連結板14に固設され、中央の8本のアングル材12が延設方向中程(両端のアングル材12については延設方向下流寄り)の底部で連結板15に固設されており、これにより、複数のアングル材12は一体のスクリーン6を構成する。なお、各アングル材12の長さおよびその下流端部の形状については、側板5やし渣破砕機1の形状に合わせて、これらと干渉しないように構成されている。
【0019】
前記フレーム材13には、水路幅方向に間隔をおいて3つの長孔13aが穿設されている。水路の底部には、図6に示すように、水路幅方向に延設された鉛直状の取り付け板16が立設されており、その上フランジ部16aにフレーム材13があてがわれ、長孔13a(および上フランジ部16aに形成された図示しない孔)を介して、図示しないボルトおよびナットで締結固定される。また、図3に示すように、中央の6本のアングル材12については、その延設方向下流寄りの底部において、水路幅方向に延設され、2つの長孔17aが穿設されたフレーム材17(図6では図示せず)に固設されている。このフレーム材17は、左右の側板5間に掛け渡した図示しない取り付けブラケットに対して、長孔17aを介して図示しないボルトおよびナットで締結固定される。以上のフレーム材13、17における締結固定により、複数のアングル材12からなるスクリーン6は、水路に対し、その底部から適宜な距離をおいて水平状に固定される。
【0020】
各アングル材12の底部には、その延設方向に長手の長孔からなる透過孔10が、延設方向に間隔をおいて複数穿設されている。この透過孔10はガイド溝11内における砂の堆積を防止する。また、隣接し合うアングル材12同士は、図5(a)に示すように、上端において隙間Sを形成するように位置している。
【0021】
本実施形態の砂溜まりの防止構造は以上の構成からなり、水中に含まれる砂の一部がし渣破砕機1に当たって沈降すると、その沈砂はスクリーン6の隙間Sおよび透過孔10を通過し、図2に示すように、スクリーン6と連通するバイパス路7を通過して下流側へと流れる。このように、し渣破砕機1の上流側において水路の底部寄りに設置される沈砂透過用のスクリーン6と、し渣破砕機1の下方に形成され、スクリーン6とし渣破砕機1の下流側とを連通するバイパス路7と、を備え、沈砂をスクリーン6およびバイパス路7を介して下流側に流す構成とすれば、し渣破砕機1に対して沈砂を迂回させて下流側に流すことができるので、し渣破砕機1の手前で沈砂が溜まることがなく、この沈砂に起因する破砕刃の砂の噛み込みの問題が解消される。また、簡易な構造で済むため、経済的な砂溜まりの防止構造となる。
【0022】
また、スクリーン6として、図3等に示すように、水流方向に沿い、底部に沈砂の透過孔10が形成された複数のガイド溝11を有する構成とすれば、し渣をガイド溝11に沿って効率的にし渣破砕機1まで移動させることができ、ガイド溝11内の沈砂は透過孔10を通って沈降するので、ガイド溝11内での沈砂の堆積を防止できる。
【0023】
さらに、スクリーン6として、ガイド溝11をV溝とするアングル材12の並設からなる構成とすれば、経済的で組み付けの容易なスクリーン構造となる。また、ガイド溝11がV溝として形成されることで、砂がその傾斜面に沿って効率的に溝の底部まで案内され、透過孔10から落下することとなる。また、図5(a)に示すように、隙間Sがアングル材12の上端側に形成されているので、多量の砂が流れてきても、下方の広がり形状によりスクリーン6(隙間S)の砂の目詰まりが発生しにくい。
【0024】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。スクリーン6において、水質等によっては、アングル材12を互いに接触させて並設させる構成、つまり図5(a)に示す隙間Sを設けない構成としても良い。また、アングル材12を用いたスクリーン6の構造としては、図5(b)に示すように、アングル材12をその開口側を下方に向けて設置することも可能である。この場合には、ガイド溝11が、隣接し合うアングル材12の傾斜面によって形成されることとなり、し渣はそのガイド溝11に沿って効率的にし渣破砕機1まで移動し、ガイド溝11に沈降した砂は、隣接し合うアングル材12の下端の隙間Sを通って沈降する。この場合、アングル材12自体に透過孔10を設けなくても良い。この図5(b)の場合には、隙間Sが請求項に記載の透過孔に相当する。
【0025】
また、本発明の対象となる「水路設置物」とは、し渣破砕機1に限られず、砂の影響を受ける可動機構部を有しているものであればこれに含まれる。その他、本発明は、図面に記載されたものに限定されず、各構成要素に関するレイアウトや形状、個数等については適宜に変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】し渣破砕機の正面図である。
【図2】し渣破砕機および本発明に係る砂溜まりの防止構造を示す側面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】図3におけるB矢視図である。
【図5】(a)は図3におけるC−C断面図、(b)はアングル材を用いたスクリーンの変形例を示す断面説明図である。
【図6】スクリーン周りの斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 し渣破砕機(水路設置物)
6 スクリーン
7 バイパス路
10 透過孔
11 ガイド溝
12 アングル材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流に対して抵抗体となり、水面下に可動機構部を備えた水路設置物に対し、その上流側における沈砂の溜まりを防止する構造であって、
前記水路設置物の上流側において水路の底部寄りに設置される沈砂透過用のスクリーンと、
前記水路設置物の下方に形成され、前記スクリーンと前記水路設置物の下流側とを連通するバイパス路と、を備え、
沈砂を前記スクリーンおよび前記バイパス路を介して下流側に流す構成としたことを特徴とする水路設置物に対する砂溜まりの防止構造。
【請求項2】
前記水路設置物は、刃の摺接によりし渣を破砕するし渣破砕機からなり、前記スクリーンは、水流方向に沿い、底部に沈砂の透過孔が形成された複数のガイド溝を有していることを特徴とする請求項1に記載の水路設置物に対する砂溜まりの防止構造。
【請求項3】
前記スクリーンは、前記ガイド溝をV溝とするアングル材の並設からなる請求項2に記載の水路設置物に対する砂溜まりの防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−152599(P2006−152599A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342260(P2004−342260)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【Fターム(参考)】