説明

水道メータシステムのシール構造

【課題】水道メータシステムの組み立ての作業性を向上させることが可能な水道メータシステムのシール構造の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の水道メータシステム100のシール構造では、メータ本体ケースの外周面に形成された環状シール収容溝121のうち、内側の溝内側面121Aから複数の保持突起122が突出形成されており、それら各保持突起122が、環状シール部材S2を外側の溝内側面121Bとの間で圧迫して挟持する。これにより、水道メータ20を内筒ケース31に挿入する前の状態で、環状シール部材S2をメータ本体ケース120の外周面に沿って3次元的に湾曲した形状に保持して、周方向の全体に亘って環状シール収容溝121に収容させることができる。従って、内筒ケース31に対する水道メータ20の挿入をスムーズに行うことができ、組み立ての作業性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の円筒ケースに円柱形の水道メータを挿入組み付けしてなる水道メータシステムのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、この種の水道メータシステムとして、例えば、下記特許文献1に開示された水道メータシステムを既に出願している。この水道メータシステムは、水道管に接続される一端開放の円筒ケースと、その内側に挿抜可能に嵌合した水道メータとから構成され、円筒ケースは、外筒ケースとその内側に回動可能に嵌合されかつ水道メータを受容した内筒ケースとで構成されている。通常使用時は、内筒ケースを外筒ケースに対して第1回動位置にしておくことで、外筒ケースの筒壁を貫通した1対のメータ流路と内筒ケースの筒壁を貫通した1対のメータ流路とが連通状態になって、水道メータを貫通したメータ流路を水道水が通過し、水道使用量の計測が可能となる。これに対し、水道メータのメンテナンスを行う場合は、内筒ケースを外筒ケース内で回動させて第2回動位置にする。すると、外筒ケースの1対のメータ流路と内筒ケースの1対のケース流路とが断絶するので内筒ケース内への水道水の進入が禁止される。これにより、水道管に円筒ケースを接続したまま円筒ケースから水道メータを抜き取った場合でも、放水を防ぐことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−275588号公報(段落[0058]〜[0076]、第13図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の水道メータシステムでは、内筒ケースと水道メータとの間の防水を図るために、水道メータの外周面のうちメータ流路の開口周縁に環状シール収容溝が形成され、そこに環状シール部材が収容されている。
【0005】
ところが、従来の水道メータシステムでは、環状シール収容溝が水道メータの外周面に沿って3次元的に湾曲しているため、内筒ケースに水道メータを挿入する前の状態で、平面的な形状の環状シール部材の全体を環状シール収容溝に収容させることができず、図13に示すように環状シール部材1の一部が環状シール収容溝2から離脱してしまう。そのため、内筒ケースに水道メータを挿入する場合には、環状シール部材1の環状シール収容溝2から離脱した部分を押さえながら作業を行う必要があり、組み立ての作業性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、水道メータシステムの組み立ての作業性を向上させることが可能な水道メータシステムのシール構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る水道メータシステムのシール構造は、一端開放の筒状をなした円筒ケースの周方向の2箇所に水道管に連通可能な1対のケース流路を備え、円筒ケースに円柱状の水道メータを挿入すると、その水道メータが有するメータ流路の両端開口が1対のケース流路に接続されて水道水の流量計測が可能になる水道メータシステムのシール構造であって、メータ流路の両端開口の開口縁に水道メータの外周面に沿って3次元的に湾曲した環状シール収容溝を形成してそこに環状シール部材を収容すると共に、環状シール収容溝の一方の溝内側面に突出形成されて、他方の溝内側面との間で環状シール部材を挟持し、環状シール部材を環状シール収容溝に合わせて3次元的に湾曲した形状に保持する複数の保持突起を設けたところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の水道メータシステムのシール構造において、円筒ケースは外筒ケースの内側に内筒ケースを嵌合挿入してなり、通常は、1対のケース流路がそれら外筒ケースと内筒ケースとを貫通して、内筒ケースの内側の水道メータに水道水が流れ、外筒ケースに対して内筒ケースを回転させると、外筒ケースの1対のケース流路と内筒ケースの1対のケース流路とがずれて、水道メータへの水道水の流れが遮断される構成とされ、複数の保持突起を含む環状シール収容溝及び環状シール部材を、内筒ケースの外周面におけるケース流路の開口縁にも設けたところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の水道メータシステムのシール構造において、環状シール部材に、複数の保持突起が嵌合する複数の周面凹部を設けたところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の水道メータシステムのシール構造において、保持突起を角柱形状として、その先端部のエッジ部を環状シール収容溝の周方向で環状シール部材に係止可能としたところに特徴を有する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の水道メータシステムのシール構造において、複数の保持突起は、環状シール収容溝における1対の溝内側面のうち内側の溝内側面に分散配置され、それら複数の保持突起に含まれて環状シール収容溝のうち円筒ケースの軸方向において円筒ケースの底面側の半分に配置された複数の底面側保持突起を、内側の溝内側面から円筒ケースの底面と直交する方向に突出した角柱状としかつ複数の底面側保持突起の先端面を、環状シール収容溝における外側の溝内側面と同心の円弧面としたところに特徴を有する。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の水道メータシステムのシール構造において、複数の保持突起は、環状シール収容溝における1対の溝内側面のうち内側の溝内側面に分散配置され、それら複数の保持突起に含まれて環状シール収容溝のうち円筒ケースの軸方向において円筒ケースの底面と反対側の半分に配置された複数の筒開口側保持突起のうちの少なくとも一部を、内側の溝内側面から円筒ケースの底面と平行な方向に突出した角柱状としかつ複数の筒開口側保持突起の先端面を、環状シール収容溝における外側の溝内側面と同心の円弧面としたところに特徴を有する。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の水道メータシステムのシール構造において、複数の保持突起は、環状シール収容溝が形成された水道メータ又は内筒ケースの外周面のうち、環状シール収容溝より外側部分と面一の外側面を有しているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0014】
[請求項1及び7の効果]
請求項1の発明によれば、水道メータを円筒ケースに挿入する前の状態で、環状シール部材を、水道メータの外周面に沿って3次元的に湾曲させた形状に保持して、環状シール部材を周方向の全体に亘って環状シール収容溝に収容させることができるので、円筒ケースに対する水道メータの挿入をスムーズに行うことができ、水道メータシステムの組み立て作業性が向上する。
【0015】
ここで、複数の保持突起は、環状シール収容溝が形成された水道メータ又は内筒ケースの外周面のうち、環状シール収容溝より外側部分の面に対して陥没或いは傾斜した外側面を有していてもよいし、請求項7の発明のように、水道メータ又は内筒ケースの外周面のうち、環状シール収容溝より外側部分と面一の外側面を有していてもよい。
【0016】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、内筒ケースを外筒ケースに挿入する前の状態で、環状シール部材を、内筒ケースの外周面に沿って3次元的に湾曲させた形状に保持して、環状シール部材を周方向の全体に亘って環状シール収容溝に収容させることができるので、外筒ケースに対する内筒ケースの挿入をスムーズに行うことができ、水道メータの組み立て作業性が向上する。
【0017】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、環状シール部材に設けた複数の周面凹部に複数の保持突起が嵌合することで、環状シール収容溝の周方向における環状シール部材のズレや伸びが抑制される。よって、水道メータを円筒ケース内に挿抜する場合(及び内筒ケースを外筒ケース内に挿抜する場合)に、摩擦によって環状シール部材が環状シール収容溝からはみ出す事態を防止することができる。
【0018】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、角柱形状をなした保持突起の先端部のエッジ部が、環状シール収容溝の周方向で環状シール部材に係止することで、環状シール収容溝内に収容保持された環状シール部材のズレや伸びが抑制される。よって、水道メータを円筒ケース内に挿抜する場合(及び内筒ケースを外筒ケース内に挿抜する場合)に、摩擦によって環状シール部材が環状シール収容溝からはみ出す事態を防止することができる。
【0019】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、複数の底面側保持突起を設けたことで、水道メータを円筒ケース内に挿入するとき(及び内筒ケースを外筒ケース内に挿入するとき)の摩擦による環状シール部材のズレや伸びをより確実に防止することが可能となる。
【0020】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、複数の筒開口側保持突起を設けたことで、水道メータを円筒ケース内に挿入するとき(及び内筒ケースを外筒ケース内に挿入するとき)の摩擦による環状シール部材のズレや伸びをより確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】水道メータシステムの(A)平面図、(B)正面図
【図2】インナーケースが通水位置に位置している状態の水道メータシステムの正断面図
【図3】インナーケースが通水位置に位置している状態の水道メータシステムの平断面図
【図4】インナーケースが通水位置と止水位置の中間に位置している状態の水道メータシステムの平断面図
【図5】インナーケースが止水位置に位置している状態の水道メータシステムの平断面図
【図6】メータ本体ケースの(A)正面図、(B)A−A線断面図
【図7】流入口側から見たメータ本体ケースの側面図
【図8】流出口側から見たメータ本体ケースの側面図
【図9】内筒ケースの側面図
【図10】第2実施形態に係る環状シール部材の(A)平面図、(B)B−B線断面図
【図11】第3実施形態に係るメータ本体ケースの側面図
【図12】変形例に係るメータ本体ケースの側面図
【図13】従来のシール構造を有した水道メータの断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図2及び図3に示すように、本実施形態の水道メータシステム100は、水道管(図示せず)に接続されるアウターケース10の内側にインナーケース30が回動可能に嵌合し、そのインナーケース30の内側に水道メータ20が挿抜可能に嵌合した構成となっている。
【0023】
アウターケース10は、上下両端が開放した円筒形の外筒ケース11から相反する方向に1対の接続管11J,11Kが突出した構造をなしている。例えば、図1における左側の接続管11Jは一次側(上流側)の水道管に接続され、その内部を上流側固定流路12が貫通している(図2及び図3参照)。また、反対側の接続管11Kは二次側(下流側)の水道管に接続され、その内部を下流側固定流路13が貫通している(図2及び図3参照)。上流側固定流路12及び下流側固定流路13は、外筒ケース11の内側に連通している。
【0024】
インナーケース30は、上端開放の有底円筒状をなした内筒ケース31と、内筒ケース31の外周面から側方に突出した逆止弁保持筒32とから構成されている。内筒ケース31の内周面は、曲率が若干異なる2つの円弧面から構成されており、これら2つの円弧面のうち曲率が小さい小曲率円弧面31Aを逆止弁保持筒32が貫通して内筒ケース31の側方に突出している。
【0025】
内筒ケース31と逆止弁保持筒32とは別部品で構成されており、逆止弁保持筒32は、内筒ケース31のうち小曲率円弧面31Aが形成された部分の筒壁を貫通した筒部取付孔34に、内筒ケース31の内側から挿入組み付けされている。また、内筒ケース31のうち筒部取付孔34と正反対の位置には、内筒ケース31の筒壁を貫通した断面円形の上流側可動流路35が貫通形成されている。
【0026】
逆止弁保持筒32は、両端開放の円筒構造をなしている。逆止弁保持筒32の基端側の外周面にはOリング85が嵌合しており、このOリング85によって逆止弁保持筒32と筒部取付孔34との間がシールされている。
【0027】
また、逆止弁保持筒32の基端部から側方に突出したフランジ部32Fが、筒部取付孔34の内周面の段差部に係止して、逆止弁保持筒32が内筒ケース31の外側に抜けないようになっている。さらに、逆止弁保持筒32の基端面は、内筒ケース31における小曲率円弧面31Aと面一の円弧面となっている。
【0028】
逆止弁保持筒32の内部は水道水が通過可能な断面円形の下流側可動流路32Aとなっており、公知な逆止弁38が収容されている。逆止弁38は、上流側固定流路12から下流側固定流路13に向かう順方向への水の流れを許容し、下流側固定流路13から上流側固定流路12に向かう逆方向への水の流れを禁止する。また、逆止弁38は、逆止弁保持筒32の基端側の開口から挿抜可能となっている。
【0029】
内筒ケース31は外筒ケース11の内側に挿入嵌合されている。図2に示すように、内筒ケース31の上端部及び下端部にはOリング81,81が嵌合されている。
【0030】
内筒ケース31は、外筒ケース11の底面開口部14Bから挿入され、底面開口部14Bに螺合された抜止リング36によって抜け止めが図られている。また、図1(B)に示すように、内筒ケース31の上端部31Bが外筒ケース11の上面開口部14Aから突出すると共に、上端部31Bの外周面が上面開口部14Aの開口縁と係止して抜け止めが図られている(図2参照)。これにより、インナーケース30は、アウターケース10内での上下方向への移動が禁止されている。
【0031】
これに対し、インナーケース30は、アウターケース10の内側で回動可能となっている。具体的には、図2及び図3に示す「通水位置」と図5に示す「止水位置」との間で回動可能となっている。
【0032】
なお、抜止リング36と外筒ケース11(底面開口部14B)との間もOリング86によってシールされている。また、Oリング81,81のうち、下端側のOリング81は抜止リング36の内周面に密着しており、上端側のOリング81とOリング86とにより、外筒ケース11と内筒ケース31との間の防水が図られている。
【0033】
インナーケース30を「通水位置」にした場合、上流側固定流路12と上流側可動流路35との間及び、下流側固定流路13と下流側可動流路32Aとの間がそれぞれ連通する。これに対し、インナーケース30を「止水位置」にした場合、上流側固定流路12と上流側可動流路35との間及び、下流側固定流路13と下流側可動流路32Aとの間がそれぞれ断絶する。ここで、外筒ケース11の内側に内筒ケース31を嵌合挿入したものが本発明における「円筒ケース」に相当し、互いに連通可能な上流側固定流路12と上流側可動流路35、下流側固定流路13と下流側可動流路32Aは、それぞれ本発明における「ケース流路」に相当する。
【0034】
インナーケース30が通水位置と止水位置との間で回動するとき、内筒ケース31の側方を逆止弁保持筒32が旋回する。この逆止弁保持筒32を外筒ケース11内に旋回可能に収容するために、外筒ケース11には側方膨出部40が形成されている。側方膨出部40は、外筒ケース11の筒壁を外側に膨出させてなり、インナーケース30の回動方向に延びている。即ち、図3に示すように、側方膨出部40は、外筒ケース11の筒壁を、「通水位置」(図3の状態)と「止水位置」(図5の状態)との間における逆止弁保持筒32の旋回範囲に応じて側方に膨出させて、外筒ケース11の内側にのみ開放した袋構造をなしている。
【0035】
図3に示すように、逆止弁保持筒32の先端面はインナーケース30の回動中心と同心の円弧面をなしており、側方膨出部40の内部に組み付けられた摺動プレート60に突き合わされている。また、逆止弁保持筒32の先端面には円環状のOリング溝が陥没形成され、そこに収容されたOリング83が摺動プレート60の摺動面61に押し付けられて密着している。
【0036】
図3に示すように、摺動プレート60はインナーケース30の回動方向に延びた湾曲板構造をなしている。摺動プレート60の摺動面61は、インナーケース30の回動中心と同心でかつ逆止弁保持筒32の先端面と摺接可能な滑らかな円弧面となっている。
【0037】
摺動プレート60の長手方向における一端部には、下流側固定流路13と連通した円形貫通孔64が貫通形成されている。円形貫通孔64の開口縁からは筒形突出部62が突出しており接続管11Kの内側に嵌合している。円形貫通孔64の内側には、シール部材離脱防止壁63が設けられている。シール部材離脱防止壁63は、摺動プレート60に一体形成されており、円形貫通孔64をインナーケース30の回動方向に横切るように差し渡されている。これにより、インナーケース30が回動して逆止弁保持筒32が円形貫通孔64を横切る際に、逆止弁保持筒32の先端面に備えられたOリング83が円形貫通孔64の開口縁に引っ掛かって脱落することを防止することができる。
【0038】
摺動プレート60は、側方膨出部40を貫通した調整用ボルト71によって位置及び姿勢が調整され、側方膨出部40を貫通した固定用ボルト72によってアウターケース10に固定されている。調整用ボルト71は、側方膨出部40の壁部を貫通した螺子孔43に螺合し、固定用ボルト72は調整用ボルト71の軸心部を貫通し、摺動プレート60の螺旋孔に螺合している。調整用ボルト71の螺合量を調節することで、摺動プレート60の摺動面61に逆止弁保持筒32の先端面が摺接するように位置を合わせ、その位置で、アウターケース10と摺動プレート60とを固定用ボルト72によって固定することが可能となっている。
【0039】
水道メータ20は、インナーケース30(詳細には、内筒ケース31)の内側に一体回転可能に嵌合している。図2に示すように、水道メータ20は、円柱形をなしたメータ本体ケース120の上端部に表示装置130を備えており、メータ本体ケース120の内部には水道水が通過可能なメータ流路21が備えられている(図3参照)。本実施形態の水道メータ20は、例えば、「羽根車式水道メータ」であり、メータ流路21内には、メータ流路21内を通過する水道水を受けて回転する羽根車(図示せず)が収容されている。
【0040】
図2に示すように、表示装置130は、全体がアウターケース10の上面から突出すると共に、メータ本体ケース120の外周面よりも側方に張り出している。表示装置130は、メータ本体ケース120に対して所定の角度範囲で相対回転可能となっている。表示装置130は、メータ本体ケース120に収容された羽根車(図示せず)の回転軸と磁気的に結合しており、メータ流路21を通過した水道水の積算体積(水道使用量)が表示装置130の上部に備えた流量表示部(図示せず)にて表示される。
【0041】
図3に示すように、メータ本体ケース120の外周面は、内筒ケース31の内周面に対応して、曲率が若干異なる2つの円弧面で構成されている。これら2つの円弧面のうち、曲率が小さい小曲率円弧面120Aが、内筒ケース31の内周面に備えられた小曲率円弧面31A(図2参照)と面当接することで、メータ本体ケース120と内筒ケース31との相対回転が禁止されている。即ち、インナーケース30と水道メータ20とが一体回転可能となっている。また、メータ本体ケース120は、小曲率円弧面31A,120A同士が面当接する位置以外では、内筒ケース31に対して挿入不可能になっている。
【0042】
小曲率円弧面120Aには、メータ流路21の流出口21Bが形成され、逆止弁保持筒32を貫通した下流側可動流路32Aに連通している。一方、メータ本体ケース120の外周面のうち流出口21Bと正反対の位置には、メータ流路21の流入口21Aが形成され、内筒ケース31の筒壁を貫通した上流側可動流路35に連通している。なお、流入口21Aには、異物やゴミを漉し取るための格子状のストレーナ22が設けられている。ストレーナ22は、メータ本体ケース120とは別部品で構成され、メータ本体ケース120に取り付けた状態でメータ本体ケース120の外周面と面一になっている。
【0043】
図3に示すように、内筒ケース31の外周面と外筒ケース11の内周面との間には、インナーケース30を止水位置(図5の状態)にした場合に、上流側固定流路12と下流側固定流路13との間を、上流側可動流路35、下流側可動流路32A及びメータ流路21を経由せずに連絡するためのバイパス流路39が形成されている。バイパス流路39は内筒ケース31の外周面を約半周に亘って溝状に陥没させることで形成されている(図9参照)。より詳細には、内筒ケース31のうち、上流側可動流路35から周方向における一方向(図3における反時計回り方向)に約45[deg]離れた位置にはバイパス入口部39Aが形成され、下流側可動流路32Aから周方向における一方向に約45[deg]離れた位置にはバイパス出口部39Bが形成されている。そして、これらバイパス入口部39Aとバイパス出口部39Bとを繋ぐようにバイパス流路39が内筒ケース31の外周面に沿って延びている。
【0044】
水道メータシステム100の通常使用時に、例えば、図4に示すように、インナーケース30が「通水位置」からずれていると、水道使用量を正確に計測することができなくなったり、水の出が悪くなる虞がある。そのため、通常使用時には、アウターケース10(外筒ケース11)に対するインナーケース30の相対回転を禁止して「通水位置」で固定できるようになっている。具体的には、内筒ケース31のうち、外筒ケース11の上面から突出した上端部31Bには、溝形のロック係止凹部24が形成されている(図9参照)。これに対し、アウターケース10の上面には、ボルト固定式の回動ロック部材16が備えられており、ロック係止凹部24に側方から回動ロック部材16が挿入されることで、アウターケース10に対するインナーケース30の回動が禁止されている。なお、メータ本体ケース120の上端部のうち、ロック係止凹部24に対応する位置には溝形のロック係止凹部120Bが形成されており(図7参照)、そのロック係止凹部120Bにも側方から回動ロック部材16が挿入されるようになっている。
【0045】
さて、水道メータ20のうち、内筒ケース31の内側に嵌合したメータ本体ケース120の外周面には、メータ本体ケース120と内筒ケース31との間の防水を図るための環状シール部材S2,S2(具体的には、Oリング)が組み付けられている。
【0046】
詳細には、図7及び図8に示すように、メータ本体ケース120の外周面のうちメータ流路21の流入口21A及び流出口21Bの各開口縁には、それら流入口21A及び流出口21Bと同心の円環状をなした環状シール収容溝121,121が陥没形成されており、ここに環状シール部材S2,S2が収容されている。環状シール収容溝121,121は、その周方向と直交した断面が「凹」字形状をなし、互いに平行な内側の溝内側面121Aと外側の溝内側面121Bとの間隔が環状シール部材S2の太さ(Oリングの線径)より大きくなっている。また、環状シール収容溝121,121の深さは周方向で一定となっている。
【0047】
図2及び図3に示すように、流入口21Aの周囲に組み付けられた環状シール部材S2は、内筒ケース31の内周面との間で押し潰されて密着している。また、流出口21Bの周囲に組み付けられた環状シール部材S2は、逆止弁保持筒32の基端面との間で押し潰されて密着している。
【0048】
図9に示すように、内筒ケース31の外周面のうち上流側可動流路35の開口の開口縁には、上流側固定流路12と上流側可動流路35とが連通したとき(インナーケース30が通水位置に配置されたとき)に、内筒ケース31と外筒ケース11との間への水の浸入を防止するための環状シール部材S1(具体的には、Oリング)が組み付けられている。
【0049】
詳細には、内筒ケース31の外周面には、上流側可動流路35と同心の円環状をなした環状シール収容溝33が陥没形成されており、ここに環状シール部材S1が収容されている。環状シール収容溝33は、周方向と直交した断面が「凹」字形状をなし、互いに平行な内側の溝内側面33Aと外側の溝内側面33Bとの間隔が環状シール部材S1の太さ(Oリングの線径)より大きくなっている。また、環状シール収容溝33の深さは周方向で一定となっている。そして、環状シール部材S1は、外筒ケース11の内周面に押し付けられて密着するようになっている(図2及び図3参照)。
【0050】
ところで、環状シール部材S1,S2は、環状シール収容溝33,121に組み付ける前の状態で、その中心軸と直交する平面と平行なリング形状になっている。
【0051】
これに対し、環状シール収容溝121はメータ本体ケース120の外周面に沿って3次元的に湾曲した構造をなしており(図6参照)、環状シール収容溝33は、内筒ケース31の外周面に沿って3次元的に湾曲した構造をなしている。
【0052】
そして、上記環状シール部材S1,S2を、環状シール収容溝33,121に合わせて3次元的に湾曲した形状に保持するために、環状シール収容溝33,121には、以下の構成が備えられている。
【0053】
即ち、図7〜図9に示すように、環状シール収容溝33,121のうち、内側の溝内側面33A,121Aからは、複数の保持突起37,122が放射状に突出している。これら複数の保持突起37,122は、環状シール収容溝33,121を周方向に8等配した位置に分散配置されている。具体的には、環状シール収容溝33,121のうち、内筒ケース31及びメータ本体ケース120の外周面の周方向で互いに最も離れた2箇所と、内筒ケース31及びメータ本体ケース120の軸方向で互いに最も離れた2箇所と、これら各箇所から環状シール収容溝33,121の周方向に45[deg]ずつ離れた4箇所に、それぞれ保持突起37,122が配置されている。
【0054】
ここで、環状シール部材S1,S2には、水圧が内側からかかるため、環状シール部材S1,S2は環状シール収容溝33,121の外側の溝内側面33B,121Bに接触させて使用する必要がある。そのために、保持突起37,122は内側の溝内側面33A,121Aから突出している。
【0055】
保持突起37,122は角柱形状(具体的には、四角柱形状)をなしている。各保持突起37,122のうち、環状シール収容溝33,121における内側の溝内側面33A,121Aから起立した突起側面37A,37A及び122A,122Aは、互いに平行な平面となっている。また、突起側面37A,37Aの間及び122A,122Aの間を連絡して外側の溝内側面33B,121Bと対向した突起先端面37B,122Bは、突起側面37A,122Aと直交した平面となっている。そして、突起先端面37B,122Bと突起側面37A,122Aとの交差部分の稜角によって、保持突起37,122の先端に角張ったエッジ部37E,122Eが形成されている。ここで、各保持突起37,122は、内筒ケース31及びメータ本体ケース120の外周面のうち、環状シール収容溝33,121より外側部分と面一になった外側面を有している(図6参照)。
【0056】
各保持突起37,122の突起先端面37B,122Bと環状シール収容溝33,121における外側の溝内側面33B,121Bとの間の距離は、環状シール収容溝33,121に組み付ける前の状態の環状シール部材S1,S2の太さ(Oリングの線径)よりも僅かに小さくなっている。即ち、環状シール収容溝33,121の周方向に、環状シール部材S1,S2の太さより幅狭な複数の狭窄部が分散配置されている。
【0057】
この環状シール収容溝121,121に環状シール部材S2,S2を組み付けると、複数の保持突起122が環状シール部材S2を外側の溝内側面121Bとの間(狭窄部)で圧迫して挟持する。すると、水道メータ20を内筒ケース31に挿入する前の状態において、環状シール部材S2がメータ本体ケース120の外周面に沿って3次元的に湾曲した形状に撓らされたまま保持され、環状シール部材S2を周方向の全体に亘って環状シール収容溝121に収容させることができる。
【0058】
同様に、環状シール収容溝33に環状シール部材S1を組み付けると、複数の保持突起37が環状シール部材S1を外側の溝内側面33Bとの間(狭窄部)で圧迫して挟持する。すると、内筒ケース31を外筒ケース11に挿入する前の状態において、環状シール部材S1が内筒ケース31の外周面に沿って3次元的に湾曲した形状に撓らされたまま保持され、環状シール部材S1を周方向の全体に亘って環状シール収容溝33に収容させることができる。
【0059】
ここで、メータ本体ケース120及び内筒ケース31は、共に樹脂成形品であり、環状シール収容溝33,121及び保持突起37,122は、メータ本体ケース120及び内筒ケース31に一体成形されている。よって、環状シール収容溝33,121及び保持突起37,122をメータ本体ケース120又は内筒ケース31から削り出して形成する場合や、保持突起37,122を別部品で構成して環状シール収容溝33,121内に組み付ける場合に比べて、形状のバラツキを抑えることができる。
【0060】
以上が水道メータシステム100の構成であって、次に、水道メータシステム100の組み立て方法について説明する。まず、アウターケース10における外筒ケース11の底面開口部14Bからインナーケース30のうち内筒ケース31を挿入する。内筒ケース31を外筒ケース11に挿入する前の状態で、環状シール部材S1は、内筒ケース31の外周面に沿って3次元的に湾曲した形状に保持され、全体が環状シール収容溝33に収容されているので、内筒ケース31を外筒ケース11に挿入する際に、環状シール部材S1を環状シール収容溝33内に押さえ付けながら作業を行うという煩わしさが解消され、内筒ケース31の挿入作業をスムーズに行うことができる。
【0061】
また、内筒ケース31を外筒ケース11に挿入する際には、外筒ケース11の内周面との摩擦により、環状シール部材S1が挿入方向とは逆方向に引っ張られる。このとき、各保持突起37のエッジ部37Eが環状シール収容溝33の周方向で環状シール部材S1の内周面に係止して、環状シール部材S1が引っ張られたときのズレや伸びを抑制する。これにより、内筒ケース31を外筒ケース11に挿入する過程で、環状シール収容溝33から環状シール部材S1が引き摺り出されるという事態を防止することができる。
【0062】
さらに挿入過程において、環状シール部材S1が外筒ケース11の内周面に開口した上流側固定流路12の側方を通過するときでも、環状シール部材S1は複数の保持突起37によって環状シール収容溝33内に保持されており、環状シール収容溝33から抜け出して上流側固定流路12内にはみ出すことはないから、環状シール部材S1が上流側固定流路12の開口縁で引っ掛かったり切断されるという事態を防止することができる。
【0063】
内筒ケース31を外筒ケース11の上面開口部14Aの開口縁に突き当たるまで挿入したら、底面開口部14Bに抜止リング36を螺合し、内筒ケース31を外筒ケース11に対して抜け止め状態にする。
【0064】
次に、内筒ケース31の内側から筒部取付孔34に逆止弁保持筒32を挿入し、さらに逆止弁保持筒32内に逆止弁38を挿入する。
【0065】
次いで、メータ本体ケース120の小曲率円弧面120Aと内筒ケース31の小曲率円弧面31Aの位置を合わせて、内筒ケース31の上端開口30Bから水道メータ20を挿入する。
【0066】
ここで、水道メータ20を内筒ケース31に挿入する前の状態で、環状シール部材S2,S2は、メータ本体ケース120の外周面に沿って3次元的に湾曲した形状に保持され、全体が環状シール収容溝121,121に収容されているので、水道メータ20をインナーケース30に挿入する際に、環状シール部材S2を環状シール収容溝121内に押さえ付けながら作業を行うという煩わしさが解消され、水道メータ20の挿入作業をスムーズに行うことができる。
【0067】
また、水道メータ20を内筒ケース31に挿入する際には、内筒ケース31の内周面との摩擦により、環状シール部材S2,S2が、挿入方向とは逆方向に引っ張られる。このとき、各保持突起122のエッジ部122Eが環状シール収容溝121の周方向で環状シール部材S2に係止して、環状シール部材S2が引っ張られたときのズレや伸びを抑制する。これにより、水道メータ20を内筒ケース31に挿入する過程で、環状シール収容溝121から環状シール部材S2が引き摺り出されるという事態を防止することができる。
【0068】
さらに挿入過程において、環状シール部材S2,S2が、内筒ケース31の内周面に開放した上流側可動流路35及び下流側可動流路32Aの側方を通過するときでも、環状シール部材S2,S2は複数の保持突起122によって環状シール収容溝121,121内に保持されており、環状シール収容溝121,121から抜け出して上流側可動流路35内及び下流側可動流路32A内にはみ出すことはないから、上流側可動流路35及び下流側可動流路32Aの各開口縁で環状シール部材S2,S2が引っ掛かったり切断されるという事態を防止することができる。
【0069】
水道メータ20を内筒ケース31の底壁に突き当たるまで挿入したら、回動ロック部材16を組み付けてインナーケース30を回り止めする。以上が水道メータシステム100の組み立て方法の説明である。
【0070】
次に、上記構成の水道メータシステム100の動作について説明する。水道メータシステム100を使用して水道使用量(積算体積)を計測する場合には、インナーケース30を図2及び図3に示すように「通水位置」に配置する。このとき、アウターケース10の上流側固定流路12及び下流側固定流路13と、インナーケース30の上流側可動流路35及び下流側可動流路32Aと、水道メータ20のメータ流路21が互いに連通状態になり、水道水が、水道メータシステム100を通過する。このとき、メータ流路21内の羽根車が水道水を受けて回転し、羽根車の回転に応じて表示装置130に流量が表示される。
【0071】
水道メータシステム100は、水道メータ20や逆止弁38の保守、点検、定期交換等のメンテナンスを、水道管に接続したまま行うことができる。メンテナンスを行う場合は、まず、回動ロック部材16を取り外してインナーケース30を回動操作可能な状態とし、インナーケース30を「通水位置」から「止水位置」に向けて回動操作する。このとき、水道メータ20とインナーケース30とは一体回転する。
【0072】
インナーケース30が回動すると、インナーケース30の上流側可動流路35及び下流側可動流路32Aが、アウターケース10の上流側固定流路12及び下流側固定流路13に対して徐々にずらされる(図4を参照)。そして、インナーケース30が「通水位置」から所定角度(例えば、約45[deg])回動して「止水位置」に至ると、図5に示すように、上流側可動流路35の開口が外筒ケース11の内面で塞がれ、下流側可動流路32Aの開口が摺動プレート60で塞がれて、上流側固定流路12と上流側可動流路35との間、及び、下流側可動流路32Aと下流側固定流路13との間が断絶する。その代わりに、バイパス入口部39Aが上流側固定流路12に連絡すると共に、バイパス出口部39Bが、側方膨出部40の内側に連絡して、上流側固定流路12と下流側固定流路13との間がバイパス流路39によって連絡する。即ち、水道水は、インナーケース30の内側に流れ込まずに、インナーケース30とアウターケース10との間のバイパス流路39を通って水道メータシステム100を通過可能となる。このとき、インナーケース30とアウターケース10との間からの漏水をOリング81,81によって防止することができる。
【0073】
インナーケース30を「止水位置」にしたら、インナーケース30(内筒ケース31)の上端開口30Bから水道メータ20を引き抜く。水道メータ20を抜き取ることで、逆止弁保持筒32から逆止弁38を抜き取ることが可能になる。インナーケース30を「止水位置」にすると、インナーケース30の内側に水道水が流れ込まなくなるので、水道メータ20又は逆止弁38を取り外しても、放水することはない。しかも、上流側固定流路12と下流側固定流路13との間がバイパス流路39によって連絡しているので、インナーケース30を「止水位置」にした状態でも、下流側の給水栓への給水を継続することができる。つまり、水道メータ20及び逆止弁38のメンテナンスに伴う断水を回避することができる。
【0074】
ここで、インナーケース30から水道メータ20を引き抜く際には、メータ本体ケース120の外周面に組み付けられた環状シール部材S2,S2が内筒ケース31の内周面及び逆止弁保持筒32の基端面との摩擦によって、引き抜き方向とは逆方向に引っ張られる。このとき、環状シール収容溝121内に設けられた各保持突起122のエッジ部122Eが環状シール部材S2に係止して、環状シール部材S2のズレや伸びが抑制されるので、水道メータ20を引き抜く過程で、環状シール収容溝122から環状シール部材S2が引き摺り出される事態を防止することができる。
【0075】
また、引き抜き過程において、環状シール部材S2,S2が、内筒ケース31の内周面に開放した上流側可動流路35及び下流側可動流路32Aの側方を通過するときでも、環状シール部材S2,S2は複数の保持突起122によって環状シール収容溝121,121内に保持されており、環状シール収容溝121,121から抜け出して上流側可動流路35内及び下流側可動流路32A内にはみ出すことはないから、上流側可動流路35及び下流側可動流路32Aの各開口縁で環状シール部材S2,S2が引っ掛かったり切断されるという事態を防止することができる。
【0076】
インナーケース30から取り出した水道メータ20や逆止弁38に対して必要なメンテナンスを行ったら、それらを元の状態に組み付ける。まず、逆止弁38を逆止弁保持筒32の内側に挿入し、次いで、水道メータ20をインナーケース30の上端開口30Bから挿入する。
【0077】
上述したように、水道メータ20をインナーケース30に挿入する前の状態で、環状シール部材S2はメータ本体ケース120の外周面に沿って3次元的に湾曲した形状に保持され、環状シール部材S2の全体が環状シール収容溝121に収容されているので、水道メータ20の挿入作業をスムーズに行うことができる。
【0078】
また、インナーケース30に水道メータ20を挿入する際には、保持突起122のエッジ部122Eが環状シール部材S2に係止して環状シール部材S2のズレや伸びが抑制されるので、水道メータ20を挿入する過程で環状シール収容溝121から環状シール部材S2が引き摺り出される事態を防止することができる。
【0079】
水道メータ20をインナーケース30内に嵌合させたら、水道メータ20及びインナーケース30を図5に示す「止水位置」から同図における反時計回り方向に回動操作して「通水位置」(図3の状態)に戻す。すると、バイパス流路39と上流側固定流路12及び下流側固定流路13との間が断絶し、代わりに上流側固定流路12と上流側可動流路35及び、下流側可動流路32Aと下流側固定流路13とが連通して、水道メータ20内への通水が再開され、水道メータ20により水道使用量の計測が可能になる。最後に、回動ロック部材16をインナーケース30のロック係止凹部24に係止させてアウターケース10の上面にボルト固定する。
【0080】
このように、本実施形態によれば、水道メータ20を内筒ケース31に挿入する前の状態で、環状シール部材S2をメータ本体ケース120の外周面に沿って3次元的に湾曲した形状に保持して、周方向の全体に亘って環状シール収容溝121に収容させることができるから、内筒ケース31に対する水道メータ20の挿入をスムーズに行うことができる。
【0081】
また、内筒ケース31を外筒ケース11内に挿入する前の状態で、環状シール部材S1を内筒ケース31の外周面に沿って3次元的に湾曲した形状に保持して、周方向の全体に亘って環状シール収容溝33に収容保持させることができるから、外筒ケース11に対する内筒ケース31の挿入をスムーズに行うことができる。これらにより、水道メータシステム100の組み立て作業性が向上する。
【0082】
さらに、内筒ケース31に対する水道メータ20の挿抜時や、外筒ケース11に対する内筒ケース31の挿抜時には、各保持突起37,122のエッジ部37E,122Eが環状シール収容溝33,121の周方向で環状シール部材S1,S2と係止して、摩擦による環状シール部材S1,S2のズレや伸びを抑制するので、挿抜時に環状シール収容溝33,121から環状シール部材S1,S2が引き摺り出される事態を防ぐことができる。
【0083】
[第2実施形態]
この第2実施形態は、環状シール収容溝121に収容される環状シール部材S2の形状が、上記第1実施形態とは異なる。その他の構成については上記第1実施形態と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0084】
図10に示すように、環状シール部材S2は、リング状をなしたシール本体部S2aの内周面から複数の鍔壁S2bが張り出した形状となっている。鍔壁S2bは、シール本体部S2aの内周面に等間隔で配置されており、周方向で隣り合った鍔壁S2b,S2b同士の間隔が、ちょうど保持突起122の幅と同じとなっている。つまり、環状シール部材S2には、複数の保持突起122が嵌合する複数の周面凹部S2cが設けられている。
【0085】
この環状シール部材S2を環状シール収容溝121に組み付けると、各保持突起122が環状シール部材S2のシール本体部S2aを外側の溝内側面121Bとの間で圧迫して挟持し、環状シール収容溝121が形成された部分の外周面に沿って3次元的に湾曲した形状に保持する。また、各保持突起122が環状シール部材S2の周面凹部S2cに嵌合する。
【0086】
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同等の効果を奏すると共に、以下の点でより優れた効果を奏する。即ち、水道メータ20を内筒ケース31内に挿抜する場合の摩擦による環状シール部材S2のズレや伸びをより確実に防止して、環状シール収容溝121から環状シール部材S2が引き摺り出される事態をより確実に防止することができる。
【0087】
本実施形態では、環状シール部材S2に周面凹部S2cを形成していたが、環状シール部材S1を上述した構成にすれば、内筒ケース31を外筒ケース11内に挿抜する場合の摩擦による環状シール部材S1のズレや伸びをより確実に防止して、環状シール収容溝33から環状シール部材S1が引き摺り出される事態をより確実に防止することができる。
【0088】
[第3実施形態]
この第3実施形態は、保持突起122の形状が上記第1実施形態とは異なる。即ち、図11に示すように、環状シール収容溝121のうち、メータ本体ケース120の底面側(内筒ケース31の底面側)半分に配置された複数の保持突起122Y(本発明の「底面側保持突起」に相当する)は、メータ本体ケース120の軸方向(内筒ケース31の底面と直交する方向)に突出している。以下、説明の便宜のため、複数の保持突起122Yのうちで最下端に位置する1つの保持突起122Yを「保持突起122Y1」といい、他の複数(具体的には、8個)の保持突起122Yを「保持突起122Y2」という。
【0089】
一方、環状シール収容溝121のうちメータ本体ケース120の上端側(内筒ケース31の底面と反対側)半分に配置された複数の保持突起122X(本発明の「筒開口側保持突起」に相当する)であって、最上端に位置する1つの保持突起122X1を除く他の複数(具体的には、8個)の保持突起122X2,122X3は、メータ本体ケース120の外周面と平行な方向(内筒ケース31の底面と平行な方向)に突出している。
【0090】
また、全ての保持突起122X,122Yの突起先端面122Bは、外側の溝内側面121Bと同心の円弧面をなしている。
【0091】
そして、複数の保持突起122X,122Yのうち、メータ本体ケース120の周方向で最も離れた両端位置に配置された保持突起122X3,122X3と、メータ本体ケース120の軸方向で最も離れた両端位置に配置された保持突起122X1,122Y1とを除いた残りの複数(具体的には、12個)の保持突起122X2,122Y2については、突起先端面122Bが溝内側面121Bと同心の円弧面をなしたことにより、図11に示すように、保持突起122X2,122Y2の先端部に備えた2つのエッジ部122E、122Eのうちの一方(詳細には、各保持突起122X2における保持突起122X3に近い側のエッジ部122Eと、各保持突起122Y2における保持突起122Y1に近い側のエッジ部122E)が鋭角に尖っている。その他の構成については上記第1実施形態と同じである。
【0092】
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同等の効果を奏すると共に、以下の点でより優れた効果を奏する。即ち、水道メータ20を内筒ケース31に挿入する場合に摩擦で環状シール部材S2が挿入方向とは逆方向に引っ張られたときに、2つのエッジ部122E,122Eのうち鋭角に尖った方のエッジ部122Eが環状シール部材S2に係止するので、環状シール部材S2のズレや伸びをより確実に防止することが可能になる。
【0093】
ここで、図11には、メータ流路21のうち、流出口21Bの開口縁に形成された環状シール収容溝121の各保持突起122について示したが、流入口21Aの開口縁に形成された環状シール収容溝121の各保持突起122を上述した構成にしてもよい。
【0094】
さらに、内筒ケース31の外周面に形成された保持突起37を上述した保持突起122X,122Yと同様の構成にした場合には、以下の効果を奏する。即ち、内筒ケース31を外筒ケース11に挿入するときの摩擦で環状シール部材S1が挿入方向とは逆方向に引っ張られた場合に、鋭角に尖った方のエッジ部37Eが環状シール部材S1に係止するので、環状シール部材S1のズレや伸びをより確実に防止することが可能になる。
【0095】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0096】
(1)上記第1及び第2実施形態では、保持突起37,122が8個であったが、個数は特に限定するものではなく、例えば、図12に示すように16個の保持突起122を放射状に設けてもよい。
【0097】
(2)上記第1〜第3実施形態では、環状シール部材S1,S2に内側から圧力がかかるために、保持突起37,122を環状シール収容溝33,121における内側の溝内側面33A,121Aから突出させていたが、環状シール部材S1,S2に外側から圧力がかかる場合、即ち、環状シール部材S1,S2の内周面を環状シール収容溝33,121における内側の溝内側面33A,121Aに接触させて使用する必要がある場合には、複数の保持突起37,122を、外側の溝内側面33B,121Bから内向きに突出させてもよい。
【0098】
(3)上記第2実施形態では、環状シール部材S2の内周面に周面凹部S2cを形成していたが、環状シール収容溝の外側の溝内側面から保持突起を突出させた場合には、環状シール部材の外周面に周面凹部を形成してもよい。
【0099】
(4)上記第1〜第3実施形態における環状シール部材S1,S2は、Oリングに限定するものではなく、断面D形の「Dリング」や、断面矩形の「角リング」でもよい。
【0100】
(5)上記第1〜第3実施形態において、保持突起37,122が、環状シール収容溝33,121が形成された内筒ケース31及びメータ本体ケース120の外周面のうち、環状シール収容溝33,121より外側部分に対して陥没或いは傾斜した外側面を有した構成としてもよい。
【0101】
(6)上記第1及び第2実施形態では、保持突起37,122を環状シール収容溝33,121の周方向に等間隔で配置していたが、隣接した保持突起の間の間隔を位置に応じて異ならせてもよい。また、保持突起37,122の幅や突出量を位置に応じて異ならせてもよい。
(7)上記第1及び第2実施形態では、保持突起37,122の幅が基端部と先端部との間で一定であったが、基端部から先端部に向かって幅広になるようにして、突起先端面37B,122Bの両側のエッジ部37E,37E又は122E,122Eが、共に鋭角になるように構成してもよい。
【0102】
(8)上記第1及び第2実施形態では、保持突起37,122の突起先端面37B,122Bを平面としていたが溝内側面と同心の円弧面としてもよい。
【符号の説明】
【0103】
11 外筒ケース
12 上流側固定流路(外筒ケースのケース流路)
13 下流側固定流路(外筒ケースのケース流路)
20 水道メータ
21 メータ流路
21A 流入口
21B 流出口
31 内筒ケース
32A 下流側可動流路(内筒ケースのケース流路)
33 環状シール収容溝
33A 内側の溝内側面
33B 外側の溝内側面
35 上流側可動流路(内筒ケースのケース流路)
37 保持突起
37E エッジ部
100 水道メータシステム
120 メータ本体ケース
121 環状シール収容溝
121A 内側の溝内側面
121B 外側の溝内側面
122 保持突起
122E エッジ部
122X 保持突起(筒開口側保持突起)
122Y 保持突起(底面側保持突起)
S1,S2 環状シール部材
S2c 周面凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端開放の筒状をなした円筒ケースの周方向の2箇所に水道管に連通可能な1対のケース流路を備え、前記円筒ケースに円柱状の水道メータを挿入すると、その水道メータが有するメータ流路の両端開口が前記1対のケース流路に接続されて水道水の流量計測が可能になる水道メータシステムのシール構造であって、
前記メータ流路の両端開口の開口縁に前記水道メータの外周面に沿って3次元的に湾曲した環状シール収容溝を形成してそこに環状シール部材を収容すると共に、
前記環状シール収容溝の一方の溝内側面に突出形成されて、他方の溝内側面との間で前記環状シール部材を挟持し、前記環状シール部材を前記環状シール収容溝に合わせて3次元的に湾曲した形状に保持する複数の保持突起を設けたことを特徴とする水道メータシステムのシール構造。
【請求項2】
前記円筒ケースは外筒ケースの内側に内筒ケースを嵌合挿入してなり、通常は、前記1対のケース流路がそれら外筒ケースと内筒ケースとを貫通して、前記内筒ケースの内側の前記水道メータに水道水が流れ、
前記外筒ケースに対して前記内筒ケースを回転させると、前記外筒ケースの前記1対のケース流路と前記内筒ケースの前記1対のケース流路とがずれて、前記水道メータへの水道水の流れが遮断される構成とされ、
前記複数の保持突起を含む前記環状シール収容溝及び前記環状シール部材を、前記内筒ケースの外周面における前記ケース流路の開口縁にも設けたことを特徴とする請求項1に記載の水道メータシステムのシール構造。
【請求項3】
前記環状シール部材に、前記複数の保持突起が嵌合する複数の周面凹部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の水道メータシステムのシール構造。
【請求項4】
前記保持突起を角柱形状として、その先端部のエッジ部を前記環状シール収容溝の周方向で前記環状シール部材に係止可能としたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の水道メータシステムのシール構造。
【請求項5】
前記複数の保持突起は、前記環状シール収容溝における1対の溝内側面のうち内側の溝内側面に分散配置され、それら複数の保持突起に含まれて前記環状シール収容溝のうち前記円筒ケースの軸方向において前記円筒ケースの底面側の半分に配置された複数の底面側保持突起を、前記内側の溝内側面から前記円筒ケースの底面と直交する方向に突出した角柱状としかつ前記複数の底面側保持突起の先端面を、前記環状シール収容溝における外側の溝内側面と同心の円弧面としたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の水道メータシステムのシール構造。
【請求項6】
前記複数の保持突起は、前記環状シール収容溝における1対の溝内側面のうち内側の溝内側面に分散配置され、それら複数の保持突起に含まれて前記環状シール収容溝のうち前記円筒ケースの軸方向において前記円筒ケースの底面と反対側の半分に配置された複数の筒開口側保持突起のうちの少なくとも一部を、前記内側の溝内側面から前記円筒ケースの底面と平行な方向に突出した角柱状としかつ前記複数の筒開口側保持突起の先端面を、前記環状シール収容溝における外側の溝内側面と同心の円弧面としたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の水道メータシステムのシール構造。
【請求項7】
前記複数の保持突起は、前記環状シール収容溝が形成された前記水道メータ又は前記内筒ケースの外周面のうち、前記環状シール収容溝より外側部分と面一の外側面を有していることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の水道メータシステムのシール構造。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図13】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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