説明

水選択性吸着剤とその製造方法

【課題】高い水吸着能力を有し、かつ、繰り返して水の吸着、脱着を行った場合においても水吸着能力が低下することのない、新規の水選択性吸着剤とその製造方法を提供する。
【解決手段】多孔質材料1に吸湿性材料2を化学結合させた。多孔質材料1は、シリカゲル、アルミナ、セピオライト、ハロイサイト、アロフェンのいずれかが好ましく、吸湿性材料2は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウムのいずれかが好ましい。特に、多孔質のセピオライトに塩化リチウムを化学結合させたものが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中から高効率で水分を回収し、同時に淡水を製造するための、高効率の水選択性吸着剤とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の大気中から水分を吸着するために用いられる水吸着剤、すなわちデシカント剤としては、多孔質のゼオライト、シリカゲル、アルミナ、粘度鉱物、活性炭、吸湿性ポリマー、不織布、吸湿性塩類又はその水溶液、などが知られている。しかし、これらの従来の水吸着剤は、概して吸湿能力が自重の40%以下と低く、自重以上の水吸着能力を示すのは相対湿度が90%以上のときに限られ、また、高湿度で人体に有害な吸湿性塩類を含む活性材料が溶出するなどの問題があった。
【0003】
なお、特許文献1には、最大吸着量が450ml/gの極めて高い水吸着能力を有する吸放湿剤が開示されている。しかし、これは塩化カルシウムを焼成物に含浸させたあと乾燥させることで、塩化カルシウムを担持させてなるものであり、初回の脱水時に塩化カルシウムが溶出してしまい、繰り返して水の吸着、脱着を行った場合に、2回目以降の水吸着能力が大きく低下してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2004−223366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、高い水吸着能力を有し、かつ、繰り返して水の吸着、脱着を行った場合においても水吸着能力が低下することのない、新規の水選択性吸着剤とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水選択性吸着剤は、多孔質材料の孔内に吸湿性材料を固着させた水選択性吸着剤であって、前記多孔質材料は、シリカゲル、アルミナ焼成物、セピオライト焼成物、ハロイサイト焼成物、アロフェン焼成物、パリゴルスカイト焼成物のいずれかからなることを特徴とする。
【0006】
また、前記吸湿性材料は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウムのいずれかからなることを特徴とする。
【0007】
また、多孔質のシリカゲル又は多孔質のセピオライト酸化焼成物の孔内に塩化リチウムを固着させたことを特徴とする。
【0008】
本発明の水選択性吸着剤の製造方法は、多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し沸騰するまで加熱する加熱工程と、加熱を続けて吸湿性材料を析出させる析出工程と、前記水溶液から前記多孔質材料を分離して洗浄する洗浄工程と、前記多孔質材料を乾燥する乾燥工程とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、容器内に収容した多孔質材料を加熱する加熱工程と、前記容器内を真空状態にする真空工程と、前記多孔質材料を冷却する冷却工程と、吸湿性材料の水溶液を前記容器内に導入して前記多孔質材料に前記吸湿性材料を含浸する含浸工程と、前記水溶液から前記多孔質材料を分離して洗浄する洗浄工程と、前記多孔質材料を乾燥する乾燥工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し水熱処理を行う水熱処理工程と、前記水溶液から前記多孔質材料を分離して洗浄する洗浄工程と、前記多孔質材料を乾燥する乾燥工程とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し沸騰するまで加熱する加熱工程と、加熱を続けて吸湿性材料を析出させる析出工程と、前記水溶液から前記多孔質材料を分離する分離工程と、前記多孔質材料を乾燥する乾燥工程と、前記多孔質材料の表面を研磨する研磨工程とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し水熱処理を行う水熱処理工程と、前記水溶液から前記多孔質材料を分離する分離工程と、前記多孔質材料を乾燥する乾燥工程と、前記多孔質材料の表面を研磨する研磨工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水選択性吸着剤によれば、多孔質材料の孔内に吸湿性材料を固着させた水選択性吸着剤であって、前記多孔質材料は、シリカゲル、アルミナ焼成物、セピオライト焼成物、ハロイサイト焼成物、アロフェン焼成物、パリゴルスカイト焼成物のいずれかからなることにより、繰り返して水の吸着、脱着を行った場合においても吸湿性材料が溶出することなく、水吸着能力が低下することがない。
【0014】
また、多孔質のシリカゲル又は多孔質のセピオライト酸化焼成物の孔内に塩化リチウムを固着させたことにより、極めて高い水吸着能力を有する。
【0015】
本発明の水選択性吸着剤の製造方法によれば、多孔質材料の孔内に吸湿性材料を固着させて、高い水吸着能力を有する水選択性吸着剤を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の水選択性吸着剤とその製造方法について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
本発明の水選択性吸着剤は、多孔質材料の孔内に吸湿性材料を固着させたものである。
【0018】
ここで、多孔質材料としては、特定のものに限定されるものではないが、シリカゲル、アルミナ焼成物、セピオライト焼成物、ハロイサイト焼成物、アロフェン焼成物、パリゴルスカイト焼成物、ムライト、アルミナ系セラミックス、発泡ガラス、電解酸化物、珪藻土、ゼオライト、粘土鉱物、活性炭、籾殻灰、有機ポリマー系素材などが好適に用いられる。
【0019】
また、吸湿性材料としては、特定のものに限定されるものではないが、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸銅、硝酸カルシウムなどが好適に用いられる。
【0020】
このように、本発明の水選択性吸着剤は、多孔質材料の孔内に吸湿性材料を固着させたことにより、繰り返して水の吸着、脱着を行った場合においても、多孔質材料に吸湿性材料を単に担持させたときのように吸湿性材料が溶出することがない。このため、水の吸着、脱着を繰り返しても、水吸着能力が低下することがない。
【0021】
なお、多孔質材料に吸湿性材料の組み合わせとしては、水吸収能力の高さから、多孔質のシリカゲル又は多孔質のセピオライト酸化焼成物と塩化リチウムの組み合わせが最も好適である。
【0022】
つぎに、図1を参照しながら、本発明の水選択性吸着剤による水の吸着、脱着のサイクルの例を説明する。水の吸着の初期状態において、図1の左上に示すように、多孔質材料1の孔内に吸水性材料2が封入、固着されている。つぎに図1の右上に示すように、吸水性材料2が空気中の水分を吸収した状態となり、さらに、図1の右下に示すように、多孔質材料1の孔の壁面が水3で濡れてくる。そして、最終段階においては、図1の左下に示すように、多孔質材料1の孔内が水3で満たされた状態となる。その後、水の脱着により、図1の左上に示す初期状態に戻る。その後、以上のサイクルが繰り返される。
【0023】
以下、本発明の水選択性吸着剤の製造方法について説明する。
【0024】
第一の製造方法は、煮沸処理を行うものである。はじめに、多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し、撹拌しながら沸騰するまで加熱する。そして、加熱を続けて吸湿性材料を析出させる。その後、水溶液から多孔質材料を分離して洗浄し、乾燥する。
【0025】
以上のように、第一の製造方法は、多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し沸騰するまで加熱する加熱工程と、加熱を続けて吸湿性材料を析出させる析出工程と、水溶液から多孔質材料を分離して洗浄する洗浄工程と、多孔質材料を乾燥する乾燥工程とを備えている。
【0026】
第二の製造方法は、真空処理を行うものである。この製造方法に用いられる装置の一例を図2に示す。11は多孔質材料1を収容する容器であり、容器11を加熱するための加熱手段12、容器に液体を導入するための導入管13、導入管13を開閉するための導入間弁14、容器から液体を排出するための排出管15、容器と図示しない真空ポンプ、アスピレータなどの吸引手段とを接続する吸引管16、排出管15と吸引管16とを切替える切替弁17が設けられている。
【0027】
図3のフローチャートに示すように、はじめに、多孔質材料1を容器1に収容し、加熱手段12により50℃以上に加熱しながら吸引手段で吸引して容器内を真空にしていく(S1〜S2)。容器1内を真空状態に保ったまま、常温になるまで放置する(S3)。その後、吸水性材料の水溶液を導入管13から容器1に導入して多孔質材料1に吸湿性材料を含浸する(S4)。そして、S1〜S4の操作を約3回繰り返し、容器1内を水で洗浄し(S5)、乾燥する(S6)。
【0028】
以上のように、第二の製造方法は、容器11内に収容した多孔質材料1を加熱する加熱工程S1と、容器11内を真空状態にする真空工程S2と、多孔質材料1を冷却する冷却工程S3と、吸湿性材料の水溶液を容器11内に導入して多孔質材料1に吸湿性材料を含浸する含浸工程S4と、水溶液から多孔質材料1を分離して洗浄する洗浄工程S5と、多孔質材料1を乾燥する乾燥工程S6とを備えている。
【0029】
第三の製造方法は、水熱処理を行うものである。はじめに、多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し、密閉容器中で100℃以上に加熱して水熱処理を行う。水熱処理完了後、水溶液から多孔質材料を分離して洗浄し、乾燥する。
【0030】
以上のように、第三の製造方法は、多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し水熱処理を行う水熱処理工程と、水溶液から多孔質材料を分離して洗浄する洗浄工程と、多孔質材料を乾燥する乾燥工程とを備えている。
【0031】
第四の製造方法は、第一の製造方法と同じ、多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し沸騰するまで加熱する加熱工程と、加熱を続けて吸湿性材料を析出させる析出工程の後に、水溶液から多孔質材料を分離する。その後、乾燥し、吸湿性材料の表面を研磨する。
【0032】
以上のように、第四の製造方法は、多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し沸騰するまで加熱する加熱工程と、加熱を続けて吸湿性材料を析出させる析出工程と、分離する分離工程と、前記多孔質材料を乾燥する乾燥工程と、前記多孔質材料の表面を研磨する研磨工程とを備えている。
【0033】
第五の製造方法は、第三の製造方法と同じ、多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し水熱処理を行う水熱処理工程の後に、水溶液から多孔質材料を分離する。その後、乾燥し、吸湿性材料の表面を研磨する。
【0034】
以上のように、第五の製造方法は、多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し水熱処理を行う水熱処理工程と、前記水溶液から前記多孔質材料を分離する分離工程と、前記多孔質材料を乾燥する乾燥工程と、前記多孔質材料の表面を研磨する研磨工程とを備えている。
【0035】
本発明の水選択性吸着剤の製造方法によれば、多孔質材料の孔内に吸湿性材料を固着させて、高い水吸着能力を有する水選択性吸着剤を製造することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【0037】
以下の具体的実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0038】
多孔質材料としてセピオライトの酸化焼成物を用いて、煮沸処理により水選択性吸着剤を製造した。
【0039】
はじめに、セピオライトの酸化焼成物を調製した。
【0040】
スペイン産のセピオライト(昭和KDE社製)85部と蒸留水15部の原料配合比で、造粒装置(不二パウダル社製 マルメライザー1000型)を用いて造粒を行った。スプレー(イソテック社製 チュービングポンプ 口径2mm)で蒸留水を0.1〜1.0L/分、フィーダ(クマエンジニアリング社製 アキュレートフィーダ)でセピオライトを0.1〜1.0kg/分で30分間供給して造粒し、篩い分けにより粒径4mm未満を回収した。そして、スプレー(イソテック社製 チュービングポンプ 口径2mm)で蒸留水を0.1〜1.0L/分、フィーダ(クマエンジニアリング社製 アキュレートフィーダ)で回収した粒径4mm未満の造粒物を0.1〜1.0kg/分で20分間供給して造粒し、篩い分けにより粒径6〜7mmのみを回収した。
【0041】
そして、回収した粒径6〜7mmの造粒物を、乾燥機を用いて60〜80℃で12〜24時間乾燥した。その後、乾燥した造粒物をアルミナサヤ(縦280mm×横260mm×高さ140mm)に7kgずつ充填し、八重洲技研社製雰囲気台車炉を用いて昇温速度100℃/時間で7時間焼成を行い、セピオライトの酸化焼成物を得た。
【0042】
つぎに、セピオライトの酸化焼成物5gに、40質量%塩化リチウム水溶液を約200mL加えた。なお、塩化リチウムは和光純薬工業社製のものを用いた。マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、沸騰するまで温度を上昇させた。そして、塩化リチウムが析出し始めるまで煮沸を続け、その後、セピオライトの酸化焼成物を吸引濾過により分離した。純水で洗浄した後に乾燥させ、水選択性吸着剤を得た。
【0043】
得られた水選択性吸着剤の相対湿度と吸着量の関係を表す25℃における吸着等温線を図4に示す。ここで、吸着量は、水選択性吸着剤の質量に対する吸着した水の質量の比を表している。すなわち、水選択性吸着剤の質量を100%としたときの吸着した水の質量を百分率で表している。なお、「塩化リチウム処理吸着」、「塩化リチウム処理脱着」は、セピオライトの酸化焼成物を塩化リチウムで処理して作製した本実施例の水選択性吸着剤の水を吸着する際と脱着する際の吸着等温線をそれぞれ示し、「未処理吸着」、「未処理脱着」は、塩化リチウムで処理していないセピオライトの酸化焼成物の水を吸着する際と脱着する際の吸着等温線をそれぞれ示している。
【0044】
また、比較例として、このほかの水選択性吸着剤の25℃における吸着等温線を図5に示す。なお、「活性炭」は関東化学社製の粒状活性炭、「シリカゲル」は関東化学社製の白色、粒径1.68〜4.00mのシリカゲル、「セピオライト茶」は上記で作成したセピオライトの酸化焼成物、「セピオライト黒」はセピオライトの還元焼成物、「昭和KDEシリカゲル」は昭和KDE社製の粒状シリカゲルである。
【0045】
塩化リチウムで処理した本実施例の水選択性吸着剤は、塩化リチウムで処理していないセピオライトの酸化焼成物や、このほかの水選択性吸着剤と比較して、高い水吸着能力を有することが確認された。
【実施例2】
【0046】
多孔質材料として昭和KDE社製の粒状シリカゲルを用いて、煮沸処理により水選択性吸着剤を製造した。
【0047】
粒状シリカゲル5gに、40質量%塩化リチウム水溶液を約200mL加えた。なお、塩化リチウムは和光純薬工業社製のものを用いた。マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、沸騰するまで温度を上昇させた。そして、塩化リチウムが析出し始めるまで煮沸を続け、その後、粒状シリカゲルを吸引濾過により分離した。純水で洗浄した後に乾燥させ、水選択性吸着剤を得た。
【0048】
得られた水選択性吸着剤の相対湿度と吸着量の関係を表す吸着等温線を図6に示す。ここで、吸着量は、水選択性吸着剤の質量に対する吸着した水の質量の割合を表している。本実施例の水選択性吸着剤は、極めて高い水吸着能力を有するとともに、吸着時と脱着時の吸着等温線はほぼ一致しており、安定した吸着と脱着のサイクルが可能であることが確認された。
【実施例3】
【0049】
多孔質材料としてセピオライトの酸化焼成物を用いて、真空処理により水選択性吸着剤を製造した。
【0050】
セピオライトの酸化焼成物3gをガラス管の中に入れて加熱し、60〜70℃まで温度を上昇させた。その後、アスピレータを用いてガラス管の内部を真空状態にし、常温になるまで放置した。常温まで温度が下がってから、ガラス管に40質量%塩化リチウム水溶液を約50mL導入した。以上の加熱から水溶液の導入までの操作を3回繰り返した。その後、セピオライトの酸化焼成物を吸引濾過により分離した。純水で洗浄した後に乾燥させ、水選択性吸着剤を得た。
【実施例4】
【0051】
多孔質材料としてセピオライトの酸化焼成物を用いて、水熱処理により水選択性吸着剤を製造した。
【0052】
セピオライトの酸化焼成物5gをテフロン(登録商標)製ボトルに入れ、さらに、40質量%塩化リチウム水溶液を約50mL加えた。テフロン(登録商標)製ボトルをモーレーボンベのステンレスジャケットに封入し、150℃で72時間加熱する水熱処理を行った。処理終了後、モーレーボンベを常温まで冷却し、セピオライトの酸化焼成物を吸引濾過により分離した。純水で洗浄した後に乾燥させ、水選択性吸着剤を得た。
【実施例5】
【0053】
多孔質材料として昭和KDE社製の粒状シリカゲルを用いて、煮沸処理により水選択性吸着剤を製造した。
【0054】
実施例1で吸引濾過にて分離したセピオライトの酸化焼成物をそのまま乾燥した。その後、乾式バレル研磨機にて研磨を行った後、純水洗浄し乾燥させ、水選択性吸着剤を得た。
【実施例6】
【0055】
多孔質材料としてセピオライトの酸化焼成物を用いて、水熱処理により水選択性吸着剤を製造した。実施例4で吸引濾過にて分離したセピオライトの酸化焼成物をそのまま乾燥した。その後、乾式バレル研磨機にて研磨を行った後、純水洗浄し乾燥させ、水選択性吸着剤を得た。
[比較例1]
多孔質材料として昭和KDE社製セピオライト酸化焼成物を用い、浸漬処理にて水選択性吸着剤を製造した。
【0056】
セピオライト酸化焼成物5gを40質量%塩化リチウム水溶液200ml中に浸漬し、10日間放置した。その後、セピオライト酸化焼成物を吸引濾過にて分離し、乾燥させ、水選択性吸着剤を得た。
[比較例2]
多孔質材料として昭和KDE社製粒状シリカゲルを用い、浸漬処理にて水選択性吸着剤を製造した。
【0057】
粒状シリカゲル各5gを40質量%塩化リチウム水溶液200ml中に浸漬し、10日間放置した。その後、粒状シリカゲルを吸引濾過にて分離し、乾燥させ、水選択性吸着剤を得た。
【実施例7】
【0058】
製品からのリチウム溶出試験を実施した。実施例1、2、比較例1、2で製造した水選択性吸着剤を純粋100ml中にいれ、マグネチックスターラーにて10分間攪拌した(溶出処理)。その後吸引濾過にて吸着剤を分離した。ろ液のリチウム濃度をICPにて分析した。
【0059】
ただし実施例1、2で製造した水選択性吸着剤の吸引濾過後の洗浄は、60〜70℃に加温した純水200ml中に入れ、マグネチックスターラーにて10分間攪拌することによって行った。吸引濾過にて吸着剤を分離し、純水で洗浄した後に乾燥させた。
【0060】
得られた水選択性吸着剤および、その結果を表1に示す。表1より、本実施例の水選択性吸着材はリチウムの溶出が低く抑えられている一方、比較例は多くのリチウムが溶出した。
【0061】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の水選択性吸着剤による水の吸着、脱着のサイクルの例を示す模式図である。
【図2】本発明の水選択性吸着剤の製造方法に用いられる装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の水選択性吸着剤の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図4】実施例1の水選択性吸着剤の吸着等温線を示すグラフである。
【図5】比較例の水選択性吸着剤の吸着等温線を示すグラフである。
【図6】実施例2の水選択性吸着剤の吸着等温線を示すグラフである。
【符号の説明】
【0063】
1 多孔質材料
2 吸水性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料の孔内に吸湿性材料を固着させた水選択性吸着剤であって、前記多孔質材料は、シリカゲル、アルミナ焼成物、セピオライト焼成物、ハロイサイト焼成物、アロフェン焼成物、パリゴルスカイト焼成物のいずれかからなることを特徴とする水選択性吸着剤。
【請求項2】
前記吸湿性材料は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウムのいずれかからなることを特徴とする請求項1記載の水選択性吸着剤。
【請求項3】
多孔質のシリカゲル又は多孔質のセピオライト酸化焼成物の孔内に塩化リチウムを固着させたことを特徴とする水選択性吸着剤。
【請求項4】
多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し沸騰するまで加熱する加熱工程と、加熱を続けて吸湿性材料を析出させる析出工程と、前記水溶液から前記多孔質材料を分離して洗浄する洗浄工程と、前記多孔質材料を乾燥する乾燥工程とを備えたことを特徴とする水選択性吸着剤の製造方法。
【請求項5】
容器内に収容した多孔質材料を加熱する加熱工程と、前記容器内を真空状態にする真空工程と、前記多孔質材料を冷却する冷却工程と、吸湿性材料の水溶液を前記容器内に導入して前記多孔質材料に前記吸湿性材料を含浸する含浸工程と、前記水溶液から前記多孔質材料を分離して洗浄する洗浄工程と、前記多孔質材料を乾燥する乾燥工程とを備えたことを特徴とする水選択性吸着剤の製造方法。
【請求項6】
多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し水熱処理を行う水熱処理工程と、前記水溶液から前記多孔質材料を分離して洗浄する洗浄工程と、前記多孔質材料を乾燥する乾燥工程とを備えたことを特徴とする水選択性吸着剤の製造方法。
【請求項7】
多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し沸騰するまで加熱する加熱工程と、加熱を続けて吸湿性材料を析出させる析出工程と、前記水溶液から前記多孔質材料を分離する分離工程と、前記多孔質材料を乾燥する乾燥工程と、前記多孔質材料の表面を研磨する研磨工程とを備えたことを特徴とする水選択性吸着剤の製造方法。
【請求項8】
多孔質材料と吸湿性材料の水溶液を混合し水熱処理を行う水熱処理工程と、前記水溶液から前記多孔質材料を分離する分離工程と、前記多孔質材料を乾燥する乾燥工程と、前記多孔質材料の表面を研磨する研磨工程とを備えたことを特徴とする水選択性吸着剤の製造方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−226265(P2009−226265A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72352(P2008−72352)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(591172526)昭和KDE株式会社 (17)
【Fターム(参考)】