説明

水還元機能付き給湯機

【課題】皮膚へのダメージが少ない水を供給する水還元機能付き給湯機を提供する。
【解決手段】貯湯タンク2と、水熱交換器9と、水還元手段13を設け、水還元手段13は、1対の電極15a、15b間を流路17bと流路17aに分離する隔膜16と、流路17a内の湯の流速を加速させるスペーサー19と、流路17bの出口側に配されたガス抜き手段20を備え、給湯時に、貯湯タンク2の湯を水還元手段13に導入すると共に電極15a、15b間に電圧を印加し、電極反応により酸化還元電位を低下させた湯を出湯させるもので、流路17aで生成した水素ガスを微小気泡として電極15aの表面に付着した状態で離脱できるため、水素ガスの溶解効率を向上し酸化還元電位を低下させ、また流路17bで生成した酸素ガス、塩素ガスは、電極15bの表面を流れる流速が遅いため気泡径が大きくなり塩素ガスの溶解を減少させ次亜塩素酸イオンを減少できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用の電気温水器やヒートポンプ給湯機等の水還元機能付き給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の水道水には、殺菌のために塩素が添加されており、次亜塩素酸イオンの酸化力により酸化還元電位は高くなっている。この酸化力により、皮膚は、酸化のダメージをうけ劣化していく。皮膚の劣化は、老化現象と同じであり、入浴時の皮膚や頭髪へのダメージをなくすことは、皮膚や頭髪を健やかに保つために重要なことである。
【0003】
酸化のダメージから皮膚を守り、入浴水に還元性を付与する方法としては、還元性ガスである水素ガスを水素ガスボンベから供給し添加する方法(例えば、特許文献1参照)や、炭素電極を用いて水を電気分解し、二酸化炭素と水素ガスを発生させる方法(例えば、特許文献2参照)や、電極間に電圧を印加し、水の電気分解により水素ガスを発生させる方法(例えば、特許文献3参照)があった。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された水素ガスボンベから水素ガスを供給する方法は、水素ガスボンベの貯蔵場所やボンベの交換が必要となり、家庭用給湯機の水素ガス発生手段としては不向きであるという課題があった。
【0005】
また、上記特許文献2に記載された炭素電極を用いて水を電気分解する方法においても、水電気分解の電極として用いるには、炭素電極は、消耗が激しく、短期間での交換が必要になるという課題があった。
【0006】
図5は、上記特許文献3に記載された、水の電気分解により水素ガスを発生させる従来の水還元装置の構成図を示すものである。従来の水還元装置は、浴室もしくは浴室近傍に設置し、浴用水を汲み上げ循環して処理するものである。
【0007】
浴用水101を浴槽102に供給する供給路を備えた供給手段として、フィルタ103、循環路104a、循環ポンプ105、循環路104b、循環路104c、流量センサ106、循環路104dとを備え、循環路104bと循環路104cとの間に、電解槽107を備えている。
【0008】
108aおよび108bは、浴用水101の流れ方向を示している。電解槽107は、電極を備えた無隔膜電解槽および電極間を隔膜で分離した有隔膜電解槽のいずれを用いてもよく、電極間に直流電圧を印加することで、水の電気分解により水素ガスを発生させ、酸化還元電位を低下させた浴用水101を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−19426号公報
【特許文献2】特開2000−308891号公報
【特許文献3】特開2004−202429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献3に記載された従来の水還元装置の構成では、循環ポンプ
105により浴用水101を汲み上げるため、フィルタ103が、毛髪やゴミ詰まりを起こすという課題や、フィルタ103では除去しきれない垢や皮膚片などの有機物が、電解槽107に流入し、電解槽107が不衛生になるという課題があった。
【0011】
さらに、浴用水101の酸化還元電位のみを低下させても、シャワーや洗面所および台所等から供給される湯水は、通常の水道水であるため、人体洗浄時の皮膚や頭髪へのダメージを防止することは出来ず、また日常家事での皮膚へのダメージも防止することができないという課題もあった。
【0012】
上記課題を解決するため、従来の水還元装置を給湯機に設けた場合には、溶解しきれなかった気泡が、給湯機から屋内の給湯箇所への配管内デッドスペースに溜まり、気泡溜まりが発生することで、運転時にポンプのエア噛みや騒音が発生するという課題があった。
【0013】
さらに電極間に直流電圧を印加した場合、水の電気分解により、陰極側では、水中の陽イオンが還元され水素ガスが発生するが、それと共に、陽極側では、水中の陰イオンが酸化され、塩素ガスや酸素ガスが発生し、発生した塩素ガスが溶解することで次亜塩素酸イオンなどが水中に発生する。
【0014】
塩素ガスや次亜塩素酸イオンは、酸化力が高く皮膚にダメージを与えるため、活性炭や亜硫酸ナトリウムなどの塩素消費剤が必要になり、塩素消費剤の補給や交換が必要になるという課題があった。
【0015】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、薬剤補給や交換の必要がなく簡易な構成で給湯機への組込みを図り、生体酸化還元電位に近く、酸化による皮膚へのダメージを低減する、肌にやさしい水を供給することができる水還元機能付き給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記従来の課題を解決するために、本発明の水還元機能付き給湯機は、貯湯タンクと、水加熱手段と、水還元手段を設け、前記水還元手段は、1対の電極と、前記電極間を陽極室と陰極室に分離形成する隔膜と、前記電極間に電圧を印加する電源と、前記陰極室を流れる湯の流速を加速させる流速変換手段と、前記陽極室の出口側に配されたガス抜き手段とを備え、給湯時に、前記貯湯タンクからの湯を前記水還元手段に導入するとともに前記電極間に電圧を印加し、電極反応により酸化還元電位を低下させた湯を出湯させるようにしたもので、電極間に直流電圧が印加されることで、陰極を設けた陰極室では電極の還元反応により水中の陽イオンが還元され水素ガスが発生するとともに、陽極を設けた陽極室では、電極の酸化反応により水中の陰イオンが酸化され塩素ガスや酸素ガスなどが発生する。
【0017】
電極反応で生成するガスは、発生初期は極微小気泡として電極表面に付着しているが、電極反応が進むにつれて気泡は成長し隣接する気泡との合体などにより気泡径が大きくなり電極表面から離脱するため、電極表面を流れる流速が速いと気泡径が小さな状態で電極表面から離脱し、電極表面を流れる流速が遅くなると、気泡が成長し気泡径が大きくなることが知られている。
【0018】
流速変換手段により陰極室を流れる湯の流速を加速させ陰極室の電極還元反応で生成した水素ガスが、微小気泡として電極表面に付着した状態で電極表面から離脱させることができるため、水素ガスの溶解効率を向上することができ、酸化還元電位を低下させた湯を出湯することが出来る。陽極室では電極酸化反応で生成した酸素ガスや塩素ガスは電極表面を流れる流速が遅いため気泡径が大きくなり、大きな気泡として湯と接触するため塩素
ガスの溶解を減少させ、さらに、陽極室出口側に設けたガス抜き手段により、陽極室で生成した塩素ガスや酸素ガスを除去することができるため、塩素ガスが溶解して生成する次亜塩素酸イオンを減少させることができる。
【0019】
このように、陰極室に湯の流速を加速させる流速変換手段を設けることで、陰極室で生成した還元性の高い水素ガスを効率良く溶解することができるとともに、陽極室で生成した酸化性のある塩素ガスや酸素ガスは、気泡径が大きくなり溶解を少なくすると共に生成したガスはガス抜き手段により除去することで、塩素ガスが溶解して生成する次亜塩素酸イオンを減少させることができる。そのため生体酸化還元電位に近く酸化による皮膚へのダメージを低減する肌にやさしい水を供給することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水還元機能付き給湯機は、薬剤補給や交換の必要がなく簡易な構成で給湯機への組込みを図り、生体酸化還元電位に近く酸化による皮膚へのダメージを低減する、肌にやさしい水を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における水還元機能付き給湯機の構成図
【図2】同水還元機能付き給湯機のスペーサーの構成図
【図3】本発明の第2の実施の形態における水還元機能付き給湯機のスペーサーの構成図
【図4】本発明の第3の実施の形態における水還元機能付き給湯機の水還元手段の断面図
【図5】従来の水還元装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の発明は、貯湯タンクと、水加熱手段と、水還元手段を設け、前記水還元手段は、1対の電極と、前記電極間を陽極室と陰極室に分離形成する隔膜と、前記電極間に電圧を印加する電源と、前記陰極室を流れる湯の流速を加速させる流速変換手段と、前記陽極室の出口側に配されたガス抜き手段を備え、給湯時に、前記貯湯タンクからの湯を前記水還元手段に導入するとともに前記電極間に電圧を印加し、電極反応により酸化還元電位を低下させた湯を出湯させるようにしたもので、電極間に直流電圧が印加されることで、陰極を設けた陰極室では電極の還元反応により水中の陽イオンが還元され水素ガスが発生するとともに、陽極を設けた陽極室では、電極の酸化反応により水中の陰イオンが酸化され塩素ガスや酸素ガスなどが発生する。
【0023】
電極反応で生成するガスは、発生初期は極微小気泡として電極表面に付着しているが、電極反応が進むにつれて気泡は成長し隣接する気泡との合体などにより気泡径が大きくなり電極表面から離脱するため、電極表面を流れる流速が速いと気泡径が小さな状態で電極表面から離脱し、電極表面を流れる流速が遅くなると、気泡が成長し気泡径が大きくなることが知られている。
【0024】
流速変換手段により陰極室を流れる湯の流速を加速させ陰極室の電極還元反応で生成した水素ガスが微小気泡として電極表面に付着した状態で電極表面から離脱させることができるため、水素ガスの溶解効率を向上することができ、酸化還元電位を低下させた湯を出湯することが出来る。陽極室では電極酸化反応で生成した酸素ガスや塩素ガスは電極表面を流れる流速が遅いため気泡径が大きくなり、大きな気泡として湯と接触するため塩素ガスの溶解を減少させ、さらに、陽極室出口側に設けたガス抜き手段により、陽極室で生成した塩素ガスや酸素ガスを除去することができるため、塩素ガスが溶解して生成する次亜塩素酸イオンを減少させることができる。
【0025】
このように、陰極室に湯の流速を加速させる流速変換手段を設けることで、陰極室で生成した還元性の高い水素ガスを効率良く溶解することができるとともに、陽極室で生成した酸化性のある塩素ガスや酸素ガスは、気泡径が大きくなり溶解を少なくすると共に生成したガスはガス抜き手段により除去することで、塩素ガスが溶解して生成する次亜塩素酸イオンを減少させることができる。そのため生体酸化還元電位に近く酸化による皮膚へのダメージを低減する肌にやさしい水を供給することができる。
【0026】
第2の発明は、特に、第1の発明の流速変換手段を、流路を形成するスペーサーで形成したもので、流速の加速を流路断面積の変化により実現することができ陰極室を流れる湯の流速を加速することができ、装置の小型化を図ると共に、電極還元反応で生成した水素ガスが微小気泡として電極表面に付着した状態で電極表面から離脱させることができる。
【0027】
第3の発明は、特に、第2の発明のスペーサーは、流路の下流側に向かって流路断面が連続的ないしは断続的に狭くなる構成としたもので、水素ガスの溶解がしにくい下流に行くにしたがって連続的もしくは断続的に流速が速くなり、効果的に水素ガスを溶解することができるとともに、全域の流路を狭くするよりも流路の圧力損失を少なくすることができる。
【0028】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の電極を、マグネシウムもしくはマグネシウム合金で構成したもので、電極還元反応で生成した水素ガスのみでなく、電極マグネシウムないしはマグネシウム合金の水との反応により水の酸化還元電位を低下させることができ、さらに酸化還元電位の低い水を供給することが出来る。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における水還元機能付き給湯機の構成図、図2は、同水還元機能付き給湯機のスペーサーの構成図である。
【0031】
図1において、本実施の形態における水還元機能付き給湯機の貯湯ユニット1には、原水と沸き上げられた湯を貯留する貯湯タンク2が設置されている。貯湯タンク2の下部には、水道水から原水を貯湯タンク2へ供給する給水配管3が開口して接続されて設けられている。
【0032】
また、貯湯タンク2の下部及び上部には流水配管4が開口して接続されており、貯湯タンク2の水を、沸き上げポンプ5によってヒートポンプユニット6に送り、そこで沸き上げた湯を、貯湯タンク2の上部から供給するように構成されている。さらに、貯湯タンク2の上部には、給湯配管7が開口して接続されており、沸き上げられて貯湯タンク2の上部に存在する湯を風呂(図示せず)等へ供給する。
【0033】
ヒートポンプユニット6内には、圧縮機8と、水加熱手段である水熱交換器9と、外気の熱を吸熱する空気熱交換器10が冷媒配管11で接続されて構成されCO等の冷媒を用いたヒートポンプサイクル12を内蔵している。
【0034】
貯湯ユニット1の貯湯タンク2の下部から出た流水配管4は、ヒートポンプユニット6内の水熱交換器9に導入され、水熱交換器9で加熱された湯が、貯湯タンク2の上部へ戻されるように接続されている。13は、水還元手段で、貯湯タンク2の上部の給湯配管7に接続されている。
【0035】
水還元手段13は、ケーシング14内に、1対の電極15a、15bが両端に設けられている。電極15a、15bは、チタン基材に白金、イリジウム、パラジウム、タンタルの1つ以上を含む成分を、焼結もしくはメッキしたものであり、電極の耐消耗性を確保している。電極15a、15bの間には、隔膜16は、流路17a、17bの間に設けられている。電極15a、15bには、直流電源18により、電極15aを陰極として直流電圧を印加する構成となっており、隔膜16で分離された電極15a側の流路17aには、流路17aを流れる水の流速を加速する流速変換手段として流路を形成するスペーサー19を備え、隔膜16で分離された電極15b側の流路17bの出口側には、ガス抜き手段20が備えられている。
【0036】
以上のように、本実施の形態では、流路17aが陰極室を、流路17bが陽極室をそれぞれ構成している。
【0037】
図2において、流速変換手段であるスペーサー19は、流路17aの流路断面積が流路17bの断面積よりも狭くなるように蛇行流路を形成するものであり、流路17a内に気泡溜まりが形成しないよう傾斜をつけた構成としている。
【0038】
以上のように構成された本実施の形態における水還元機能付き給湯機について、以下その動作、作用について説明する。
【0039】
まず、給水配管3を通じて、貯湯ユニット1の貯湯タンク2へ原水が供給される。通常、ヒートポンプ給湯機の沸き上げは、電気代の安価な深夜電力の時間帯を通じて行われる。深夜電力の開始時刻になると、沸き上げポンプ5によって、貯湯タンク2内の原水が流水配管4を通じてヒートポンプユニット6の水熱交換器9に流入する。ヒートポンプサイクル12において、圧縮機8の運転により水熱交換器9内の冷媒が蒸発し外気の熱を吸熱する。そして、冷媒配管11を通じて外気を吸熱した冷媒が、高圧に圧縮され水熱交換器9で放熱される。この熱により水熱交換器9内の水が加熱されて原水が沸き上げられる。
【0040】
そして、この水熱交換器9で沸き上げられた湯が、流水配管4を通じて貯湯タンク2の上部から導入され、使用者が風呂(図示せず)などにおいて湯を使用する時は、貯湯タンク2に溜められた上層の湯が風呂の浴槽へ供給される。
【0041】
このとき、貯湯タンク2からの湯は、給湯配管7を通じて水還元手段13に流入するとともに、直流電源18により、電極15a、15b間に直流電圧が印加される。このとき、陰極となる電極15aでは、電極還元反応で水素ガスが発生し、陽極となる電極15bでは、電極酸化反応により酸素ガスと塩素ガスが発生する。
【0042】
電極15a側の流路17aには、スペーサー19を備えているため、流路17aを流れる湯の流速は加速され、電極15aで発生した水素ガスが、微小気泡として電極15aの表面に付着した状態で電極15a表面から離脱させられ、効率良く湯に溶解される。電極15b側の流路17bでは、電極15bの表面を流れる流速が遅いため、生成したガスの気泡径は大きくなり、大きな気泡として湯と接触するため、酸素ガスおよび塩素ガスは溶解しきれず、流路17bの出口側に設けたガス抜き手段20から排出される。そのため、塩素ガスが溶解して生成する次亜塩素酸イオンを減少させることができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態における水還元機能付き給湯機によれば、陰極となる電極15a側の流路17aに湯の流速を加速させるスペーサー19を設けることで、電極15aで生成した還元性の高い水素ガスを効率良く溶解することができるとともに、電極15bで生成した酸化性のある塩素ガスや酸素ガスは、気泡径が大きくなり溶解を少なくする
と共に生成したガスは、ガス抜き手段20により排出することで、塩素ガスが溶解して生成する次亜塩素酸イオンを減少させることができる。そのため生体酸化還元電位に近く、酸化による皮膚へのダメージを低減する肌にやさしい水を供給することができる。
【0044】
さらに、流速変換手段を、流路を形成するスペーサー19としたことで、流速の加速を流路断面積の変化により実現することができ、流路17aを流れる湯の流速を加速することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0045】
尚、本実施の形態において、水加熱手段として、ヒートポンプサイクル12を用いた水熱交換器9による方法を説明したが、ヒーター加熱あるいはガス加熱により水加熱する方式を適用しても同様の効果が得られる。
【0046】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態における水還元機能付き給湯機のスペーサーの構成図である。なお、上記実施の形態における水還元機能付き給湯機と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
本実施の形態における水還元機能付き給湯機の流路変換手段であるスペーサー19は、図3に示すように、蛇行流路の断面積が、流路17aの下流側に向かって次第に狭くなるように、ピッチ間隔が下流側に向かって狭くなるように構成したもので、他の構成は、上記実施の形態1における水還元機能付き給湯機と同一である。
【0048】
以上のように構成された本実施の形態における水還元機能付き給湯機の流速変換手段を用いた水還元手段13について、以下その動作について説明する。
【0049】
使用者が、風呂(図示せず)などにおいて湯を使用する時は、貯湯タンク2に溜められた上層の湯が風呂の浴槽へ供給され、貯湯タンク2からの湯は、給湯配管7を通じて、水還元手段13に流入するとともに、直流電源18により電極15a、15b間に直流電圧が印加される。
【0050】
このとき、陰極となる電極15aでは、電極還元反応で水素ガスが発生し、陽極となる電極15bでは、電極酸化反応により酸素ガスと塩素ガスが発生する。電極15a側の流路17aには、スペーサー19を備えているため、流路17aを流れる湯の流速は、加速され、電極15aで発生した水素ガスが微小気泡として電極15aの表面に付着した状態で電極15aの表面から離脱させられ、効率良く湯に溶解される。
【0051】
電極15aから発生する水素ガスは、流れた電流に比例し、電極15aの電流密度は、一定であるため、電極15aの表面に付着する水素ガスの気泡量も、流路17aの上流下流にかかわらず一定であるが、流路17aの下流側では、すでに上流側の水素ガスが溶解しているため水素ガスの溶解がしにくくなっている。
【0052】
しかしながら、本実施の形態の流路変換手段であるスペーサー19は、流路の下流側に向かって、流路断面が連続的ないしは断続的に狭くなる構成になっているので、下流側にいくに従って流速が速くなり、水素ガスの気泡径が小さい状態で溶解させることができ、溶解効率を高めることが出来る。
【0053】
このように、本実施の形態では、流路17aの下流側に向かって流路断面が連続的ないしは断続的に狭くなる構成としたもので、そのため水素ガスの溶解がしにくい下流に行くにしたがって連続的もしくは断続的に流速が速くなり、効率的に水素ガスを溶解することができる。
【0054】
(実施の形態3)
図4は、本発明の第3の実施の形態における水還元機能付き給湯機の水還元手段の断面図である。なお、上記実施の形態における水還元機能付き給湯機と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図4において、本実施の形態における水還元機能付き給湯機の水還元手段13は、円筒状のケーシング14内に、1対の電極22a、22bが設けられている。直流電源18により、陰極として直流電圧が印加される電極22aは、円筒形状としケーシング14内の外周部に設けられ、陽極となる電極22bは、円柱形状とし、ケーシング14内の中心に設けられている。
【0056】
電極22aは、マグネシウムないしはマグネシウム合金であり、電極22bは、チタン基材に白金、イリジウム、パラジウム、タンタルの1つ以上を含む成分を焼結もしくはメッキしたものである。
【0057】
電極22a、22bの間には、隔膜23が流路24a(陰極室)、24b(陽極室)を挟んで設けられている。隔膜23で分離された電極22a側の流路24aには、流路24aを流れる水の流速を加速する流速変換手段として、流路を螺旋状に形成するコイル25が設けられている。ここで流路24aを螺旋状に形成するコイル25は、コイル25のピッチ間26を構成する流路断面積が、流路24bと電極22bとの間に構成された略ドーナツ状の流路の断面積より狭くなるようなピッチで旋回させるようにしている。
【0058】
以上のように構成された本実施の形態における水還元機能付き給湯機の流速変換手段を用いた水還元手段13について、以下その動作について説明する。
【0059】
使用者が風呂(図示せず)などにおいて湯を使用する時は、貯湯タンク2に溜められた上層の湯が風呂の浴槽へ供給され、貯湯タンク2からの湯は、流水配管4を通じて水還元手段13に流入するとともに、直流電源18により電極22a、22b間に直流電圧が印加される。このとき、陰極となる電極22aでは、電極還元反応で水素ガスが発生し、陽極となる電極22bでは、電極酸化反応により酸素ガスと塩素ガスが発生する。
【0060】
電極22a側の流路24aには、流路断面積を狭くするコイル25を備えているため、流路24aを流れる湯の流速は加速され、電極22aで発生した水素ガスが微小気泡として電極22aの表面に付着した状態で電極22aの表面から離脱させられ、効率良く湯に溶解される。
【0061】
電極22b側の流路24bでは、電極22bの表面を流れる流速が遅いため生成したガスの気泡径は大きくなり、大きな気泡として湯と接触するため、酸素ガスおよび塩素ガスは溶解しきれず、流路24bの出口側に設けたガス抜き手段20から排出される。そのため、塩素ガスが溶解して生成する次亜塩素酸イオンを減少させることができる。
【0062】
さらに電極22aは、マグネシウムもしくはマグネシウム合金で形成されているため、電極22aが水に浸漬することで、マグネシウムが水と反応して水素ガスを発生する。このように電極還元反応で生成した水素ガスのみでなく、電極マグネシウムないしはマグネシウム合金の水との反応により水の酸化還元電位を低下させることができ、さらに酸化還元電位の低い水を供給することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明にかかる水還元機能付き給湯機は、薬剤補給や交換の必要がなく
簡易な構成で給湯機への組込みを図り、生体酸化還元電位に近く酸化による皮膚へのダメージを低減する、肌にやさしい水を供給することができるので、ガス給湯機や電気温水機の用途にも広く適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 貯湯ユニット
2 貯湯タンク
3 給水配管
4 流水配管
5 沸き上げポンプ
6 ヒートポンプユニット
7 給湯配管
8 圧縮機
9 水熱交換器(水加熱手段)
10 空気熱交換器
11 冷媒配管
12 ヒートポンプサイクル
13 水還元手段
14 ケーシング
15a、15b、22a、22b 電極
16、23 隔膜
17a、24a 流路(陰極室)
17b、24b 流路(陽極室)
18 直流電源(電源)
19 スペーサー(流速変換手段)
20 ガス抜き手段
25 コイル(流速変換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、水加熱手段と、水還元手段を設け、前記水還元手段は、1対の電極と、前記電極間を陽極室と陰極室に分離形成する隔膜と、前記電極間に電圧を印加する電源と、前記陰極室を流れる湯の流速を加速させる流速変換手段と、前記陽極室の出口側に配されたガス抜き手段とを備え、給湯時に、前記貯湯タンクからの湯を前記水還元手段に導入するとともに前記電極間に電圧を印加し、電極反応により酸化還元電位を低下させた湯を出湯させるようにした水還元機能付き給湯機。
【請求項2】
流速変換手段を、流路を形成するスペーサーで形成した請求項1に記載の水還元機能付き給湯機。
【請求項3】
スペーサーは、流路の下流側に向かって流路断面が連続的ないしは断続的に狭くなる構成とした請求項2に記載の水還元機能付き給湯機。
【請求項4】
電極を、マグネシウムもしくはマグネシウム合金で構成した請求項1〜3のいずれか1項に記載の水還元機能付き給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−13360(P2012−13360A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151795(P2010−151795)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】