説明

水酸基含有化合物、硬化性化合物及び放射線硬化性組成物

【課題】光学部材に必要な特性(優れた機械的特性、黄変度の低さ等)を有し、かつ、高い屈折率を備えた硬化物を与え得る放射線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の放射線硬化性組成物は、(a)少なくとも1つの水酸基と、1つのチオール基とを有するモノチオールに由来する構造単位と、(b)少なくとも2つのチオール基を有するポリチオールに由来する構造単位と、(c)上記(a)の構造単位のチオール基と上記(b)の構造単位のチオール基とに反応して、これら2つのチオール基を連結することのできる化合物に由来する構造単位とを含み、かつ、式:A−C−[B−C]−A(式中、A、B、Cは各々、上記(a)、(b)、(c)の構造単位である。)で表される構造を有する水酸基含有化合物を、(メタ)アクリル化してなる硬化性化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の水酸基含有化合物、該水酸基含有化合物を(メタ)アクリル化してなる硬化性化合物、該硬化性化合物を含む放射線硬化性組成物、及び該放射線硬化性組成物の硬化物からなる光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置のバックライトに使用されるプリズムレンズシートや、プロジェクションテレビ等に使用されるフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等の光学レンズは、プレス法、キャスト法等の方法により製造されてきた。しかし、これらの方法では、製造時の加熱及び冷却に長時間を必要とするため、生産性が低いという問題があった。
このような問題点を解決するために、近年、紫外線硬化性樹脂組成物を用いてレンズを製作することが検討されている。具体的には、レンズ形状の付いた金型と透明樹脂基板との間に紫外線硬化性樹脂組成物を流し込んだ後、透明樹脂基板の側から紫外線を照射し、該組成物を硬化させることによって、短時間でレンズを製造することができる。
近年のプロジェクションテレビやビデオプロジェクターの薄型化及び大型化に伴い、光学レンズを形成するための紫外線硬化性樹脂組成物に対して、硬化後に、高い屈折率を有することや、優れた力学的特性(機械的強度、靭性等)を有することや、黄変の程度が少ないこと等が要求されている。
【0003】
ここで、光学レンズを形成するための樹脂組成物として、例えば、特定の構造を有するジオール(a)と芳香族有機ポリイソシアネート(b)と水酸基含有(メタ)アクリレート(c)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、該(A)成分以外のエチレン性不飽和基含有化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含むことを特徴とする樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
また、A成分:特定の一般式で表わされるビス(アクリロキシメチル又はメタクリロキシメチル)トリシクロデカン40〜80重量%、B成分:ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)又はペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)10〜50重量%、C成分:ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート又はジビニルベンゼン10〜40重量%、からなる混合物を重合硬化して得た、屈折率(N20℃)が1.53以上、アッベ数(ν20℃)が40以上である高アッベ数レンズ(特に、眼鏡用レンズ)が提案されている(特許文献2)。
しかし、現在、プロジェクションテレビ等のさらなる薄型化及び大型化に伴って、光学レンズはさらに高い屈折率を有することが求められつつあり、特許文献1、2等の技術では、このような高屈折率化の要求に十分に応えることはできない。
【特許文献1】特開平5−255464号公報
【特許文献2】特開平2−141702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、特定の水酸基含有化合物を(メタ)アクリル化してなる硬化性化合物を用いることにより、光学部材に必要な諸特性(優れた機械的特性、黄変度の低さ等)を有し、かつ、非常に高い屈折率を備えた硬化物を与えることのできる放射線硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1] (a)少なくとも1つの水酸基と、1つのチオール基とを有するモノチオールに由来する構造単位と、(b)少なくとも2つのチオール基を有するポリチオールに由来する構造単位と、(c)上記(a)の構造単位のチオール基と上記(b)の構造単位のチオール基とに反応して、これら2つのチオール基を連結することのできる化合物に由来する構造単位とを含み、かつ、下記式(1)で表される構造を有する水酸基含有化合物。
A−C−[B−C]−A (1)
(式(1)中、Aは上記(a)の構造単位であり、複数存在するAは同一でも異なってもよく、Bは、上記(b)の構造単位であり、複数存在するBは同一でも異なってもよく、Cは、上記(c)の構造単位であり、複数存在するCは同一でも異なってもよい。nは、1以上の整数である。)
[2] 2個以上の水酸基、及び5個以上の硫黄原子を有する含硫黄脂肪族構造を含む上記[1]に記載の水酸基含有化合物。
[3] 上記(a)の構造単位を形成するためのモノチオールが、下記一般式(2)で表されるモノチオールである上記[1]又は[2]に記載の水酸基含有化合物。
【化1】

(式(2)中、Rは、メチレンまたは炭素数2〜5のアルキレンである。)
[4] 上記(b)の構造単位を形成するためのポリチオールが、下記一般式(3)で表されるポリチオールである上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の水酸基含有化合物。
【化2】

(式(3)中、R及びRは、各々独立して、メチレンまたは炭素数2〜5のアルキレンであり、nは1〜5の整数である。Rが2つ以上存在する場合、これらのRは同じでもよいし異なっていてもよい。)
[5] 上記(c)成分が、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ベンズアルデヒド、ジブロモメタン、ジクロロメタン、ブロモクロロメタン、フェニルベンズアルデヒド、及びナフチルアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種である上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の水酸基含有化合物。
[6] 上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の水酸基含有化合物の水酸基の少なくとも一部に、(メタ)アクリロイル基を付加してなる硬化性化合物。
[7] 上記[6]に記載の硬化性化合物を含む放射線硬化性組成物。
[8] 硬化物の屈折率(n25)が1.60以上である上記[7]に記載の放射線硬化性組成物。
[9] 光学部材形成用である上記[7]又は[8]に記載の放射線硬化性組成物。
[10] 上記[9]に記載の放射線硬化性組成物の硬化物からなる光学部材。
【発明の効果】
【0006】
本発明の特定の水酸基含有化合物、及び、該水酸基含有化合物を(メタ)アクリル化してなる硬化性化合物は、いずれも、それ自体が高い屈折率を有する。また、前記硬化性化合物を放射線硬化性組成物の成分として用いることによって、非常に高い屈折率を有する硬化物を形成することができる。
さらに、本発明の硬化性化合物を含む放射線硬化性組成物の硬化物は、機械的特性(曲げ強度、靭性等)が良好であり、黄変度も低いため、液晶表示装置のバックライトに使用されるプリズムレンズシートや、プロジェクションテレビ等に使用されるフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等の光学レンズに好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の硬化性化合物は、特定の水酸基含有化合物を(メタ)アクリル化してなる化合物である。まず、水酸基含有化合物について説明する。
[水酸基含有化合物]
本発明の水酸基含有化合物は、(a)少なくとも1つの水酸基と、1つのチオール基(−SH)とを有するモノチオールに由来する構造単位と、(b)少なくとも2つのチオール基を有するポリチオールに由来する構造単位と、(c)上記(a)の構造単位のチオール基と上記(b)の構造単位のチオール基とに反応して、これら2つのチオール基を連結することのできる化合物に由来する構造単位とを含むものである。
上記(c)の構造単位を形成するための化合物(以下、(c)成分ともいう。)は、該(c)成分を介してチオール基同士を連結することのできる成分である。本発明の水酸基含有化合物は、上記(a)の構造単位を形成するためのモノチオール(以下、(a)成分ともいう。)と、上記(b)の構造単位を形成するためのポリチオール(以下、(b)成分ともいう。)とが、(c)成分を介する反応によって連結されてなる構造を含む。さらに、本発明の水酸基含有化合物は、(b)成分(ポリチオール)同士が(c)成分を介する反応によって連結されてなる構造を含むことができる。
これにより、本発明の水酸基含有化合物は、(a)成分に由来する水酸基と、(a)成分及び(b)成分に由来する含硫黄構造(特に、含硫黄脂肪族構造)とを有することができ、屈折率や黄変度等の諸特性を所望のものとすることができる。
【0008】
具体的には、本発明の水酸基含有化合物は、上記(a)成分に由来する構造単位と、上記(b)成分に由来する構造単位と、上記(c)成分に由来する構造単位とを含み、かつ、下記式(1)で表される構造を有する。
A−C−[B−C]−A (1)
(式中、Aは上記(a)の構造単位であり、複数存在するAは同一でも異なってもよく、Bは、上記(b)の構造単位であり、複数存在するBは同一でも異なってもよく、Cは、上記(c)の構造単位であり、複数存在するCは同一でも異なってもよい。nは、1以上の整数である。)
【0009】
本発明の水酸基含有化合物の材料の1つである(a)成分は、少なくとも1つの水酸基と、1つのチオール基(−SH)とを有するモノチオールである。
チオール基は、主鎖と側鎖のいずれに存在してもよい。また、チオール基は、分子鎖(主鎖、側鎖)の内部と、分子鎖の末端のいずれに存在してもよい。チオール基は、反応性の観点から、主鎖の末端に存在することが好ましい。
(a)成分(モノチオール)中に含まれる水酸基の数は、1〜3個、好ましくは1個である。
水酸基は、主鎖と側鎖のいずれに存在してもよい。また、水酸基は、分子鎖(主鎖、側鎖)の内部と、分子鎖の末端のいずれに存在してもよい。水酸基は、反応性の観点から、主鎖の末端に存在することが好ましい。
(a)成分(モノチオール)としては、脂肪族メルカプタン化合物、芳香族メルカプタン化合物のいずれも用いることができるが、黄変性(着色性)の観点から、好ましくは脂肪族メルカプタン化合物である。
【0010】
(a)成分として用いられるモノチオールとしては、例えば、下記一般式(2)で表されるモノチオールや、メルカプトメチルベンジルアルコール等が挙げられる。
【化3】

(式中、Rは、メチレンまたは炭素数2〜5のアルキレンである。)
【0011】
一般式(2)中、Rは、直鎖状または分岐状の、メチレンまたは炭素数2〜5のアルキレンであり、好ましくはメチレンまたは炭素数2〜5の直鎖状のアルキレンであり、より好ましくはメチレンまたは炭素数2〜3のアルキレンであり、さらに好ましくはメチレンまたはエチレン基である。
一般式(2)で表されるモノチオールとしては、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトメタノール等が挙げられる。
【0012】
(a)成分(モノチオール)としては、反応性の観点から、上記一般式(2)で表されるモノチオールが好ましく、中でも、メルカプトエタノール、メルカプトメタノールがより好ましい。なお、屈折率の観点からはメルカプトメタノールが好ましく、コストの観点からはメルカプトエタノールが好ましい。
【0013】
本発明の水酸基含有化合物の材料として用いられる(b)成分は、少なくとも2つのチオール基を有するポリチオールである。このポリチオールの例としては、2つ以上のチオール基を有し、かつ、直鎖状または分岐状の脂肪族構造を有する化合物が挙げられる。前記脂肪族構造は、反応性の観点から直鎖状であることが好ましい。また、前記脂肪族構造は、チオール基とは別に分子内に硫黄原子(−S−)を含むことができる。
本発明の水酸基含有化合物に含まれる含硫黄脂肪族構造中の硫黄原子(−S−)は、上記(a)成分中のチオール基(−SH)、上記(b)成分中のチオール基(−SH)、あるいは上記(b)成分中の脂肪族構造に含まれる硫黄原子(−S−)に由来するものである。
(b)成分のポリチオールは、分子中に3個以上の硫黄原子を含むことが好ましい。ポリチオールに含まれる硫黄原子が3個以上であると、上記(a)成分のモノチオールと、該ポリチオールとを後述の(c)成分を介して連結することにより、得られる水酸基含有化合物に、5個以上の硫黄原子(−S−)を含む含硫黄脂肪族構造を導入することができ、水酸基含有化合物や硬化性化合物自体の屈折率、及び前記硬化性化合物を含む放射線硬化性組成物からなる硬化物の屈折率を高くすることができる。
【0014】
(b)成分(ポリチオール)の例としては、(i)2個以上のチオール(−SH)を有し、かつ、分子の主鎖または側鎖の末端を除く分子内構造部分に1個以上の硫黄原子(−S−)を含む化合物(例えば、含硫黄脂肪族構造を有するポリチオール)や、(ii)3個以上のチオール(−SH)を有する化合物等が挙げられる。
このようなポリチオールの具体例としては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)〜(6)で表される化合物、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート(TMTG)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(PETG)、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート(TMTP)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)等が挙げられる。
【0015】
【化4】

(一般式(3)中、R及びRは、各々独立して、メチレンまたは炭素数2〜5のアルキレンであり、nは1〜5の整数である。Rが2つ以上存在する場合、これらのRは同じでもよいし異なっていてもよい。)
【0016】
【化5】

【0017】
一般式(3)中、複数のR及びRは、各々独立して、メチレンまたは炭素数2〜3のアルキレンであることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
一般式(3)中、nは、1〜3の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
このような化合物の具体例としては、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン等が挙げられる。
【0018】
(b)成分(ポリチオール)としては、一般式(3)で表される構造を有する化合物が好ましく、中でも、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタンが好ましい。特に好ましくは、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタンが用いられる。
【0019】
本発明の水酸基含有化合物の材料として用いられる(c)成分は、上記(a)の構造単位のチオール基と上記(b)の構造単位のチオール基とに反応して、これら2つのチオール基を連結することのできる化合物である。すなわち、(c)成分は、2つのチオール基を、該(c)成分を介して連結することのできる成分である。
チオール基(−SH)は、(c)成分を介して連結されて、−S−C−S−(Cは、(c)成分に由来する構造単位である。)となる。
(c)成分を用いることにより、上記(a)成分のモノチオールと上記(b)成分のポリチオールとを、さらには、上記(b)成分のポリチオール同士を、該(c)成分を介して連結することができ、水酸基含有化合物中に多数の硫黄原子(−S−)を有する含硫黄脂肪族構造を導入することができる。これにより、水酸基含有化合物や硬化性化合物自体の屈折率を高くすることができ、前記硬化性化合物を放射線硬化性組成物の成分として用いることによって低い黄変度と高い屈折率とを有する硬化物を形成することができる。
【0020】
(c)成分として用いられる化合物の一例としては、分子内にエポキシ基を1つ有し、かつ、ハロゲン基を有するエポキシ化合物が挙げられる。該エポキシ化合物中の1つのエポキシ基は、主鎖あるいは側鎖の末端に存在するものであり、好ましくは主鎖の末端に存在する。このようなエポキシ化合物としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。
(c)成分として用いられる化合物の他の例としては、2つ以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
(c)成分としてエポキシ化合物を用いると、水酸基含有化合物中に、上記(a)成分に由来する水酸基に加えて、該エポキシ化合物中のエポキシ基に由来する、すなわち、エポキシ基が開環してなる水酸基を導入することができる。この場合、水酸基含有化合物を(メタ)アクリル化してなる硬化性化合物の光硬化性をさらに高めることができ、好ましい。
【0021】
また、(c)成分として用いられる化合物の他の例としては、ジブロモメタン、ベンズアルデヒド、ジクロロメタン、ブロモクロロメタン、フェニルベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド等の、エポキシ化合物以外の反応性化合物が挙げられる。中でも、ジブロモメタン、ベンズアルデヒドが、反応性の観点から好ましい。
【0022】
これらのうち、(c)成分は、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ベンズアルデヒド、ジブロモメタン、ジクロロメタン、ブロモクロロメタン、フェニルベンズアルデヒドおよびナフチルアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
(c)成分を用いることにより、水酸基含有化合物や硬化性化合物自体の屈折率をより高くすることができ、さらに、前記硬化性化合物を放射線硬化性組成物に用いることによって、より高い屈折率と、低い黄変度とを有する硬化物を形成することができる。
【0023】
(c)成分としてベンズアルデヒドを用いた場合、本発明の水酸基含有化合物は、例えば、(a)成分(モノチオール)と、(b)成分(ポリチオール)と、(c)成分(ベンズアルデヒド)と、p−トルエンスルホン酸(触媒)と、トルエン(溶媒)とを混合した後、生成する水を除去しながら反応を行い、その後、洗浄と、濾過又は抽出とを行うことにより得られる。
なお、用いられる溶媒としては、トルエンの他に、ベンゼン等が挙げられる。生成する水を除去する方法としては、還流下でかつDean−Stark管を用いる方法が挙げられる。反応時間は、通常1〜6時間、好ましくは1.5〜4.5時間である。また、用いられる触媒としては、p−トルエンスルホン酸の他に、塩酸、塩化リチウム、塩化コバルト、スカンジウムトリフラート等が挙げられる。反応温度は、室温(通常20〜50℃)である。
(c)成分としてエピクロロヒドリンを用いた場合、本発明の水酸基含有化合物は、例えば、反応容器に、(a)成分(モノチオール)と、触媒(例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)と、溶媒(テトラヒドロフラン;以下、THFともいう。)を仕込んだ後、(c)成分(エピクロロヒドリン)をゆっくりと添加して、室温(例えば23℃)で撹拌し、次いで、(b)成分(ポリチオール)を加え、更に、水酸化ナトリウムを加えて、所定の温度(例えば50℃)で撹拌することにより得られる。
水酸基含有化合物を製造する際、各成分は、(a)成分と、(b)成分と、(c)成分とのモル比((a)成分/(b)成分/(c)成分)が2/n/(n+1)となる割合で配合される。ここで、nは1以上であることが好ましく、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜7である。
【0024】
このようにして得られる水酸基含有化合物は、上述のとおり、上記(a)成分(少なくとも1つの水酸基を有するモノチオール)や、上記(c)成分としてのエポキシ化合物に由来する水酸基を有する。
本発明の水酸基含有化合物中に含まれる水酸基の数は、1個以上、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個、さらに好ましくは2〜4個である。これにより、水酸基含有化合物を(メタ)アクリル化してなる硬化性化合物や、該硬化性化合物を用いた放射線硬化性組成物に、高い光硬化性を付与することができる。
【0025】
また、水酸基含有化合物は、上述のように、(a)成分(モノチオール)と(b)成分(ポリチオール)とが、さらには(b)成分(ポリチオール)同士が、(c)成分を介して連結されてなる含硫黄脂肪族構造を有する。含硫黄脂肪族構造は、例えば、下記一般式(7)で表される。下記一般式(7)の含硫黄脂肪族構造は、(b)成分が上記一般式(3)で表されるポリチオールである場合の例である。
【化6】

(一般式(7)中、R及びRは、各々独立して、炭素数1〜5のアルキレンであり、X及びXは、各々独立して、上記(c)成分に由来する基であり、nは1〜5の整数であり、mは1〜10の整数である。Rは、2つ以上存在する場合、これらのRは同じであってもよいし、異なってもよく、Xは、2つ以上存在する場合、これらのXは同じであってもよいし、異なってもよい。)
【0026】
一般式(7)中のR、R、及びnは、上記一般式(3)中と同様である。
一般式(7)中、X及び複数のXは、各々独立して、上記(c)成分に由来する2価の基(すなわち、上記式(1)中のCに対応する基)であり、例えば、(c)成分としてエピクロロヒドリンを用いた場合には、−CH−CH(−OH)−CH−であり、ジブロモメタンを用いた場合には、−CH−であり、ベンズアルデヒドを用いた場合には、−CH(−Ph)−(ここで、Phはフェニル基である。)である。
一般式(7)中、mは1〜10の整数であり、好ましくは1〜7の整数であり、より好ましくは1〜5の整数である。
なお、一般式(7)中、両末端の硫黄原子(−S−)は、(a)成分のモノチオールに由来するものである。一般式(7)中、−S−(R−S)−R−S−の部分は、(b)成分のポリチオール(具体的には、上記一般式(3)で表されるポリチオール)に由来するものである。
本発明の水酸基含有化合物中、含硫黄脂肪族構造は、4個以上、好ましくは5個以上、より好ましくは5〜25個、さらに好ましくは5〜20個の硫黄原子(−S−)を含む。これにより、水酸基含有化合物や硬化性化合物自体の屈折率をより高くすることができ、さらに、前記硬化性化合物を放射線硬化性組成物に用いることによって、高い屈折率と、低い黄変度とを有する硬化物を形成することができる。
【0027】
得られる水酸基含有化合物の分子量は、通常、300〜5000、好ましくは350〜3000である。
水酸基含有化合物の屈折率(n25)は、好ましくは1.600以上である。なお、屈折率(n25)とは、25℃でのナトリウムD線の屈折率である。
【0028】
ここで、得られる水酸基含有化合物の一例を下記式(8)又は式(9)に示す。下記式(8)で表される水酸基含有化合物は、メルカプトエタノール((a)成分)、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン((b)成分)、及びベンズアルデヒド((c)成分)を、2/1/2(モル比)で反応させてなるものであり、下記式(9)で表される水酸基含有化合物は、メルカプトエタノール((a)成分)、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン((b)成分)、及びエピクロロヒドリン((c)成分)を、2/1/2(モル比)で反応させてなるものである。
【0029】
【化7】

【化8】

【0030】
[硬化性化合物]
本発明の硬化性化合物は、上述の水酸基含有化合物中の水酸基の少なくとも一部に、(メタ)アクリロイル基を付加することによって、得ることができる。
具体的な方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
水酸基含有化合物、N,N−ジメチルアニリン、及びテトラヒドロフラン(溶媒)を混合した後、溶液中にアクリル酸クロリド及びテトラヒドロフランをゆっくりと添加し、撹拌する。次いで、酢酸エチルを用いて抽出を行い、酸および塩基で洗浄後、溶剤を除去することにより硬化性化合物が得られる。
アクリル酸クロリドを添加する際、及びその後の撹拌の際の温度は、0〜60℃、好ましくは10〜30℃である。また、撹拌時間は、通常3〜5時間、好ましくは3.5〜4.5時間である。
なお、上述の水酸基含有化合物の製造方法において、水酸基含有化合物の洗浄、濾過又は抽出を行わずに、水酸基含有化合物を含む溶液のまま、(メタ)アクリル化を行うこともできる。この場合、得られた水酸基含有化合物を含む溶液に、上記と同様、N,N−ジメチルアニリン及びテトラヒドロフラン(溶媒)を混合した後、アクリル酸クロリド及びテトラヒドロフランをゆっくりと添加し、撹拌する。そして、同様に、抽出、洗浄、溶剤の除去を行うと、硬化性化合物が得られる。添加、撹拌等の温度や時間の条件は上記と同様である。
この方法によると、水酸基含有化合物の抽出等を行う手間が省けるため、製造効率を向上させることができる。また、直接(メタ)アクリル化まで行うこの方法は、例えば水酸基含有化合物の粘度が高く、溶剤の除去が困難である場合等でも、適用することができ、好ましい。
【0031】
得られる硬化性化合物は、分子中に、(メタ)アクリロイル基を1個以上有する化合物である。硬化性化合物は、分子中に、(メタ)アクリロイル基を2個以上有することが好ましく、より好ましくは2〜6個、さらに好ましくは2〜4個である。これにより、該硬化性化合物を含む放射線硬化性組成物に、良好な光硬化性を付与することができる。
また、硬化性化合物は、対応する水酸基含有化合物中の水酸基の80モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、特に好ましくは99モル%以上に、(メタ)アクリロイル基が付加してなるものである。
また、硬化性化合物は、上述の含硫黄脂肪族構造を有する。これにより、硬化性化合物の屈折率を高くすることができ、さらに、該硬化性化合物を放射線硬化性組成物の成分として用いることにより、低い黄変度と高い屈折率とを有する硬化物を形成することができる。
本発明の硬化性化合物の屈折率(n25)は、好ましくは1.56以上、より好ましくは1.57以上である。
硬化性化合物の分子量は、400〜5000、好ましくは450〜3000である。
【0032】
ここで、得られる硬化性化合物の一例を下記式(10)、又は式(11)に示す。下記式(10)で表される硬化性化合物は、上記式(8)で表される水酸基含有化合物(すなわち、メルカプトエタノール((a)成分)、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン((b)成分)、及びベンズアルデヒド((c)成分)を、2/1/2(モル比)で反応させてなる化合物)を、アクリル化してなるものであり、また、下記式(11)で表される硬化性化合物は、上記式(9)で表される水酸基含有化合物(すなわち、メルカプトエタノール((a)成分)、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン((b)成分)、及びエピクロロヒドリン((c)成分)を、2/1/2(モル比)で反応させてなる化合物)を、アクリル化してなるものである。
【0033】
【化9】

【化10】

【0034】
[放射線硬化性組成物]
本発明の放射線硬化性組成物は、上述の硬化性化合物を含有し、さらに必要に応じて、光重合開始剤、他の添加剤、他の硬化性のモノマー、オリゴマー、又はポリマー等を含むことができる。
光重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生し、重合を開始せしめるものであればいずれでもよく、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
光重合開始剤の市販品としては、例えばIrgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI−1700、−1750、−1850、CG24−61、Darocur 1116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
【0035】
配合される他の添加剤としては、光増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤等が挙げられる。
光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられ、その市販品としては、例えばユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばIrganox1010、1035、1076、1222(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、Antigen P、3C、FR、GA−80(住友化学工業(株)製)等が挙げられ、紫外線吸収剤としては、例えばTinuvin P、234、320、326、327、328、329、213(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、Seesorb102、103、110、501、202、712、704(以上、シプロ化成(株)製)等が挙げられる。
光安定剤としては、例えばTinuvin 292、144、622LD(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、サノールLS770(三共(株)製)、Sumisorb TM−061(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、市販品として、SH6062、6030(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、KBE903、603、403(以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
塗面改良剤としては、例えばジメチルシロキサンポリエーテル等のシリコーン添加剤が挙げられ、市販品としてはDC−57、DC−190(以上、ダウコーニング社製)、SH−28PA、SH−29PA、SH−30PA、SH−190(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、KF351、KF352、KF353、KF354(以上、信越化学工業(株)製)、L−700、L−7002、L−7500、FK−024−90(以上、日本ユニカー(株)製)等が挙げられる。
配合される他の硬化性のモノマー、オリゴマー、及びポリマーとしては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシロキサンポリマー、グリシジルメタアクリレートとそのほかの重合性モノマーとの共重合体と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる反応性ポリマー等が挙げられる。
【0036】
本発明の放射線硬化性組成物中の上記硬化性化合物の配合割合は、組成物の全量を100質量%として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
本発明の放射線硬化性組成物の硬化物の屈折率(n25)は、好ましくは1.59以上であり、より好ましくは1.60以上、さらに好ましくは1.61以上、特に好ましくは1.62以上である。
また、本発明の放射線硬化性組成物の硬化物(200μm厚)について測定したYI値(イエローインデックス;黄色度)は、好ましくは8.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、最も好ましくは2.0以下である。
【0037】
本発明の硬化性化合物を含む放射線硬化性組成物は、高い屈折率を有し、黄変も少なく、機械的強度(曲げ強度等)も良好な硬化物を与えることができるため、プリズムレンズ、フレネルレンズ等の光学部材に好適に用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
撹拌機を備えた反応容器に、メルカプトエタノール11.87g((a)成分)、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン11.85g((b)成分)、ベンズアルデヒド16.13g((c)成分)、p−トルエンスルホン酸0.014g(触媒)、トルエン40.00g(溶媒)を仕込み、還流下でかつDean−Stark管を用いて、生成する水を除去しながら2時間反応させて、水酸基含有化合物を含む溶液を得た。なお、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分は、(a)成分/(b)成分/(c)成分のモル比が、2/1/2となる割合で配合されている。
続いて、得られた水酸基含有化合物を含む溶液に、N,N−ジメチルアニリン20.25gを仕込んだ後、アクリル酸クロリド15.13gとテトラヒドロフラン15.13gの混合溶液を23℃でゆっくりと添加し、液温を23℃程度に制御しながら4時間撹拌した。その後、酢酸エチルを用いて抽出を行い、洗浄、溶剤の留去を行うことによって、硬化性化合物(1)を得た。さらに、硬化性化合物(1)10.0gと、光重合開始剤0.3g(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irgacure184)を配合し、液状組成物(1)を得た。
硬化性化合物(1)の屈折率、液状組成物(1)の硬化物の屈折率及びYI(イエローインデックス)を下記の方法により測定した。なお、硬化物の物性は、液状組成物(1)を、ガラス板上に膜厚が200μmとなるようにアプリケーターバーを用いて塗布し、1.0J/cmの紫外線を窒素下で照射して得た試験片を用いて測定した。
結果を表1に示す。
【0040】
測定方法
[屈折率(n25)]
JIS K7105に従い、(株)アタゴ製アッベ屈折計を用いて、25℃におけるD線(589nm)の屈折率を測定した。
[YI]
ビスフェノールAエチレンオキシド付加ジアクリレート(PATIO)/硬化性化合物(1)/Irgacure184=70/30/3(質量比)とした液状組成物を、ガラス板上に膜厚が200μmとなるようにアプリケーターバーを用いて塗布し、1.0J/cmの紫外線を窒素下で照射して、試験片を得た。
色差計(日本電色工業社製のSZ−Σ80分光色差計)を用いて、前記の試験片のYI(イエローインデックス)を測定した。
【0041】
実施例2
(a)成分(フェニルグリシジルエーテル)、(b)成分(1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン)、及び(c)成分(ベンズアルデヒド)を、(a)成分/(b)成分/(c)成分のモル比が、2/3/4となる割合で配合したこと以外、実施例1と同様に行い、各種物性を測定した。
結果を表1に示す。
実施例3
(a)成分(フェニルグリシジルエーテル)、(b)成分(1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン)、及び(c)成分(ベンズアルデヒド)を、(a)成分/(b)成分/(c)成分のモル比が、2/5/6となる割合で配合したこと以外、実施例1と同様に行い、各種物性を測定した。
結果を表1に示す。
実施例4
撹拌機を備えた反応容器に、メルカプトエタノール((a)成分)10.64g、40%ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(触媒)1.62g、THFを50.81gを仕込み、エピクロロヒドリン12.61g((c)成分)をゆっくりと添加し、室温(23℃)で45分間撹拌した。1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン10.63g((b)成分)、その後水酸化ナトリウム5.72gを加え、50℃で2時間撹拌した。
続いて、N,N−ジメチルアニリン37.70g、THF50.81gを仕込んだ後、アクリル酸クロリド28.80gを23℃でゆっくりと添加した。液温を23℃程度に制御しながら4時間撹拌した。その後、酢酸エチルを用いて抽出を行い、洗浄、溶剤の留去を行うことによって、硬化性化合物(1)を得た。なお、(a)成分/(b)成分/(c)成分のモル比は、2/1/2である。
結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1から、本願発明に属する実施例1〜4では、高い屈折率を有する硬化性化合物が得られており、さらに、硬化性化合物を含む液状組成物によると、高い屈折率を有し、黄変の程度も少ない硬化物を形成し得ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの水酸基と、1つのチオール基とを有するモノチオールに由来する構造単位と、(b)少なくとも2つのチオール基を有するポリチオールに由来する構造単位と、(c)上記(a)の構造単位のチオール基と上記(b)の構造単位のチオール基とに反応して、これら2つのチオール基を連結することのできる化合物に由来する構造単位とを含み、かつ、下記式(1)で表される構造を有する水酸基含有化合物。
A−C−[B−C]−A (1)
(式(1)中、Aは上記(a)の構造単位であり、複数存在するAは同一でも異なってもよく、Bは、上記(b)の構造単位であり、複数存在するBは同一でも異なってもよく、Cは、上記(c)の構造単位であり、複数存在するCは同一でも異なってもよい。nは、1以上の整数である。)
【請求項2】
2個以上の水酸基、及び5個以上の硫黄原子を有する含硫黄脂肪族構造を含む請求項1に記載の水酸基含有化合物。
【請求項3】
上記(a)の構造単位を形成するためのモノチオールが、下記一般式(2)で表されるモノチオールである請求項1又は2に記載の水酸基含有化合物。
【化1】

(式(2)中、Rは、メチレンまたは炭素数2〜5のアルキレンである。)
【請求項4】
上記(b)の構造単位を形成するためのポリチオールが、下記一般式(3)で表されるポリチオールである請求項1〜3に記載の水酸基含有化合物。
【化2】

(式(3)中、R及びRは、各々独立して、メチレンまたは炭素数2〜5のアルキレンであり、nは1〜5の整数である。Rが2つ以上存在する場合、これらのRは同じでもよいし異なっていてもよい。)
【請求項5】
上記(c)成分が、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ベンズアルデヒド、ジブロモメタン、ジクロロメタン、ブロモクロロメタン、フェニルベンズアルデヒド、及びナフチルアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4に記載の水酸基含有化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の水酸基含有化合物の水酸基の少なくとも一部に、(メタ)アクリロイル基を付加してなる硬化性化合物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化性化合物を含む放射線硬化性組成物。
【請求項8】
硬化物の屈折率(n25)が1.60以上である請求項7に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項9】
光学部材形成用である請求項7又は8に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の放射線硬化性組成物の硬化物からなる光学部材。

【公開番号】特開2009−179600(P2009−179600A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20031(P2008−20031)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】