説明

水電解システム及びその運転方法

【課題】簡単且つ経済的に構成するとともに、各種電装部品を良好に保持することを可能にする。
【解決手段】水電解システム10は、純水を電気分解することによって高圧水素を製造する水電解装置12と、筐体22とを備える。筐体22内には、水電解装置12等が収容される収容室96と、前記収容室96から分離され、コントローラ20及び電解電源38が収容されるとともに、外気を取り込むための第1ファン102が設けられる第1電装室100a、100bと、前記収容室96から分離され、リレー92が収容されるとともに、前記第1電装室100aに配管部材112を介して接続される第2電装室110とが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に水素を発生させる水電解装置と、前記水電解装置を収容する収容室を設ける筐体とを備える水電解システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、アノード側電極に燃料ガス(主に水素を含有するガス、例えば、水素ガス)が供給される一方、カソード側電極に酸化剤ガス(主に酸素を含有するガス、例えば、空気)が供給されることにより、直流の電気エネルギを得ている。
【0003】
一般的に、燃料ガスである水素ガスを製造するために、水電解装置が採用されている。この水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜(イオン交換膜)を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、給電体を配設してユニットが構成されている。すなわち、ユニットは、実質的には、上記の燃料電池と同様に構成されている。
【0004】
そこで、複数のユニットが積層された状態で、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素イオン(プロトン)と共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってユニットから排出される。
【0005】
この種の水電解システムとして、例えば、特許文献1に開示された水素製造システムが知られている。この水素製造システムは、図8に示すように、ケーシング1を備え、このケーシング1内は、壁1aによりゾーンAとゾーンBとに分割されている。ゾーンAには、電力供給部2、熱交換器3、ファン4及びブロア5等が収容されるとともに、ゾーンBには、セルスタック6、水素乾燥機7等が収容されている。
【0006】
そこで、ファン4が駆動されることにより、熱交換器3及び電力供給部2が冷却されるとともに、ゾーンA内が正圧に保持されている。さらに、ブロア5が駆動されることにより、ゾーンAからゾーンBには、昇温されたクリーンエアが導入されるとともに、前記ゾーンB内は、外部からの空気の導入を阻止する圧力状態に維持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5980726号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記の水素製造システムでは、ゾーンA内が、例えば、水素ガスの流入を阻止するために、正圧に保持されている。通常、ゾーンA内には、電力供給部2の他、水素ガス雰囲気から遮断する必要がある各種電装部品が収容されている。
【0009】
しかしながら、電装部品には、ノイズの影響を受け易い部品が存在する一方、大きなノイズを発生する部品が存在している。このため、これらの部品を同一のゾーンA内に収容することは、所望の性能を維持するために望ましいものではない。従って、複数のゾーンAを形成するとともに、各ゾーンA毎にブロア5を設置しなければならず、設備が複雑化し、経済的ではないという問題がある。
【0010】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単且つ経済的に構成するとともに、各種電装部品を良好に保持することが可能な水電解システム及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に水素を発生させる水電解装置と、前記水電解装置を収容する収容室を設ける筐体とを備える水電解システムに関するものである。
【0012】
この水電解システムは、筐体内には、収容室から分離され、第1の電装部品が収容されるとともに、外気を取り込むためのファンが設けられる第1電装室と、前記収容室から分離され、第2の電装部品が収容されるとともに、前記第1電装室に配管部材を介して接続される第2電装室とが形成されている。
【0013】
また、配管部材は、送風用ダクト及び配線用ダクトを兼用することが好ましい。
【0014】
さらに、収容室は、負圧に維持される一方、第1電装室及び第2電装室は、陽圧に維持されることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に水素を発生させる水電解装置と、前記水電解装置を収容する収容室、及び前記収容室から分離されて電装部品が収容される電装室を設ける筐体とを備える水電解システムの運転方法に関するものである。
【0016】
この運転方法では、電装室内を陽圧に維持して換気を行う第1の工程と、前記第1の工程が開始された後、収容室内を負圧に維持して換気を行う第2の工程と、前記第2の工程が開始された後、水電解装置の運転を開始する第3の工程とを有している。
【0017】
また、この運転方法では、水電解装置の運転が停止されてシステム待機に移行した状態では、電装室内の換気を継続する一方、収容室内の換気を停止することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1電装室内には、ファンを介して筐体の外部から外気が導入され、前記第1電装室内の第1の電装部品は、冷却されるとともに、例えば、陽圧に保持されている。一方、第2電装室内には、第1電装室から配管部材を介して送風され、前記第2電装室内の第2の電装部品が、例えば、陽圧に保持されている。
【0019】
従って、特性の異なる第1の電装部品と第2の電装部品とは、同一の室内に配置されることがなく、互いに影響を及ぼすことを阻止することができる。しかも、第2電装室には、ファン等の送風手段が不要になる。これにより、陽圧保持のためのファンの数が有効に削減され、簡単且つ経済的に構成するとともに、各種電装部品を良好に保持することが可能になる。
【0020】
また、本発明によれば、先ず、電装室内が陽圧に維持された状態で、収容室内が負圧に維持されて換気が行われ、さらに水電解装置の運転が開始されている。このため、水電解装置から収容室内に水素が漏れても、この水素が電装室内に移動することを確実に阻止することができる。従って、電装室内を高精度に気密状態に構成する必要がなく、構造の簡素化が図られて経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水電解システムの内部構成説明図である。
【図2】前記水電解システムの概略構成説明図である。
【図3】前記水電解システムの一部断面斜視説明図である。
【図4】前記水電解システムの回路説明図である。
【図5】本発明に係る運転方法を説明するタイミングチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る水電解システムの一部断面斜視説明図である。
【図7】前記水電解システムを構成する筐体部の分解斜視説明図である。
【図8】特許文献1に開示された水素製造システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る水電解システム10は、水(純水)を電気分解することによって酸素及び高圧水素(常圧よりも高圧な水素)を製造する水電解装置12と、前記水を前記水電解装置12に循環させる水循環装置14と、前記水電解装置12から排出される前記酸素及び水素(ガス成分)を、前記水循環装置14内の水から分離し、前記水を貯留する気液分離装置16と、前記気液分離装置16に市水から生成された純水を供給する純水製造装置(純水製造装置)18と、コントローラ20とを備え、これらが筐体22内に収容される。
【0023】
水電解装置12は、図1に示すように、複数の単位セル24を積層して構成される。単位セル24の積層方向一端には、ターミナルプレート26a、絶縁プレート28a及びエンドプレート30aが外方に向かって、順次、配設される。単位セル24の積層方向他端には、同様にターミナルプレート26b、絶縁プレート28b及びエンドプレート30bが外方に向かって、順次、配設される。エンドプレート30a、30b間は、一体的に締め付け保持される。
【0024】
ターミナルプレート26a、26bの側部には、端子部34a、34bが外方に突出して設けられる。端子部34a、34bは、配線36a、36bを介して電解電源38に電気的に接続される。陽極(アノード)側である端子部34aは、電解電源38のプラス極に接続される一方、陰極(カソード)側である端子部34bは、前記電解電源38のマイナス極に接続される。
【0025】
単位セル24は、円盤状の電解質膜・電極構造体42と、この電解質膜・電極構造体42を挟持するアノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46とを備える。アノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46は、円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0026】
電解質膜・電極構造体42は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜48と、前記固体高分子電解質膜48の両面に設けられるアノード側給電体50及びカソード側給電体52とを備える。
【0027】
固体高分子電解質膜48の両面には、アノード電極触媒層50a及びカソード電極触媒層52aが形成される。アノード電極触媒層50aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層52aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0028】
アノード側給電体50及びカソード側給電体52は、例えば、球状アトマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。アノード側給電体50及びカソード側給電体52は、研削加工後にエッチング処理される平滑表面部を設けるとともに、空隙率が10%〜50%、より好ましくは、20%〜40%の範囲内に設定される。
【0029】
単位セル24の外周縁部には、積層方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔56と、反応により生成された酸素及び未反応の水(混合流体)を排出するための排出連通孔58と、反応により生成された水素を流すための水素連通孔60とが設けられる。
【0030】
アノード側セパレータ44の電解質膜・電極構造体42に向かう面には、水供給連通孔56に連通する第1流路64が設けられる。この第1流路64は、アノード側給電体50の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。
【0031】
カソード側セパレータ46の電解質膜・電極構造体42に向かう面には、水素排出通路66に連通する第2流路68が形成される。この第2流路68は、カソード側給電体52の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。
【0032】
水循環装置14は、水電解装置12の水供給連通孔56に連通する循環配管72を備え、この循環配管72は、循環ポンプ74及びイオン交換器76を配置して気液分離装置16を構成するタンク部78の底部に接続される。タンク部78の上部には、戻り配管80の一端部が連通するとともに、前記戻り配管80の他端部は、水電解装置12の排出連通孔58に連通する。
【0033】
タンク部78には、純水製造装置18に接続された純水供給配管84と、前記タンク部78で純水から分離された酸素を排出するための酸素排気配管86とが連結される。
【0034】
水電解装置12の水素連通孔60には、高圧水素配管88の一端が接続され、この高圧水素配管88の他端は、図示しない高圧水素供給部(燃料タンク等)に接続される。
【0035】
水電解システム10は、さらに各種継手や配管バルブを含むバルブ類90の他、着火デバイスを含む大電流パワーリレー92等の電装部品や、着火デバイスを含まない電装デバイス94等を備える(図2参照)。
【0036】
図2に示すように、筐体22内には、収容室96が設けられるとともに、前記収容室96には、水電解装置12の他、気液分離装置16、純水製造装置18、イオン交換器76、バルブ類90及び電装デバイス94が収容される。
【0037】
筐体22内には、第1筐体部98を介して収容室96から分離される第1電装室100a、100bが形成される。第1筐体部98の一端部には、外気を取り込むための第1ファン102が設けられるとともに、前記第1筐体部98の他端部には、内気を外部に排出するための排気口104が形成される。
【0038】
第1電装室100a、100bは、壁部106を介して一部が連通しており、前記第1電装室100aには、比較的発熱が少なく、熱に弱く、ノイズに弱い部品、例えば、コントローラ20等(第1の電装部品)が収容される。第1電装室100bには、比較的発熱量が多く、ノイズの少ない部品、例えば、電解電源38(第1電装部品)が収容される。第1ファン102による送風は、第1電装室100aから第1電装室100bに向かっている。
【0039】
筐体22内には、第2筐体部108を介して収容室96から分離される第2電装室110が形成される。第2電装室110には、比較的発熱が少なく、熱に強く、大きなノイズを発生する部品、例えば、リレー92等(第2の電装部品)が収容される。
【0040】
第1筐体部98の第1ファン102側の側部と、第2筐体部108の上部とは、配管部材112を介して接続される(図2及び図3参照)。配管部材112は、第1ファン102により取り込まれた外気を、第1電装室100aから第2電装室110に供給する送風用ダクトとしての機能と、リレー92等に接続されている配線を、コントローラ20に接続するために挿入する配線用ダクトとしての機能とを兼用する。
【0041】
収容室96には、内気を外部に排出するための第2ファン114と、前記第2ファン114の駆動により外部から前記収容室96内に外気を取り込むための吸気口116とが設けられる。第2ファン114は、水電解装置12よりも上方に配置されるとともに、前記第2ファン114の上部近傍には、水素センサ118が配設される。収容室96は、負圧に維持される一方、第1電装室100a、100b及び第2電装室110は、陽圧に維持される。
【0042】
図4に示すように、リレー92は、外部電源(例えば、AC240V)に接続されるとともに、前記リレー92からのAC電源がAC/DCコンバータ120a、120bに送られる。
【0043】
AC/DCコンバータ120aからコントローラ20及び電装デバイス94には、DC電源が供給されるとともに、AC/DCコンバータ120bから電解電源38には、DC電源が供給される。純水製造装置18には、リレー92からAC電源が供給される。
【0044】
コントローラ20では、ユーザインターフェイスであるタッチパネル122との間で信号の入出力が行われる。コントローラ20は、純水製造装置18にオン/オフ信号を送信する一方、電装デバイス94との間で信号の入出力を行う。
【0045】
このように構成される水電解システム10の動作について、本実施形態に係る運転方法との関連で、図5に示すタイミングチャートに沿って、以下に説明する。
【0046】
先ず、水電解システム10が起動されると、第1ファン102及び水素センサ118に電源が投入される。このため、第1電装室100a、100b内に外気が強制的に導入され、前記第1電装室100a、100b内が陽圧に保持されて換気される(第1の工程)。さらに、第2電装室110内には、第1電装室100aから配管部材112を介して送風されている。これにより、リレー92等が収容されている第2電装室110内は、陽圧に保持されて換気される(第1の工程)。
【0047】
第1ファン102に電源が投入された後、所定時間t1が経過すると、第2ファン114に電源が投入される。従って、収容室96内は、内気が外部に排出されるため、負圧に保持されて換気される(第2の工程)。
【0048】
第2ファン114に電源が投入された後、所定時間t2が経過すると、補器デバイス(電装デバイス94、循環ポンプ74、純水製造装置18、電解電源38等)に電源が投入されて、水電解装置12による水素製造作業が開始される(第3の工程)。具体的には、純水製造装置18を介して市水から生成された純水が、気液分離装置16を構成するタンク部78に供給される。
【0049】
一方、水循環装置14では、循環ポンプ74の作用下に、タンク部78内の水が循環配管72を介して水電解装置12の水供給連通孔56に供給される。また、ターミナルプレート26a、26bの端子部34a、34bには、電気的に接続されている電解電源38を介して電圧が付与される。
【0050】
このため、各単位セル24では、水供給連通孔56からアノード側セパレータ44の第1流路64に水が供給され、この水がアノード側給電体50内に沿って移動する。従って、水は、アノード電極触媒層50aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜48を透過してカソード電極触媒層52a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0051】
これにより、カソード側セパレータ46とカソード側給電体52との間に形成される第2流路68に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔56よりも高圧に維持されており、水素連通孔60を流れて水電解装置12の外部に高圧水素配管88を介して取り出し可能となる。
【0052】
一方、第1流路64には、反応により生成した酸素と、未反応の水とが流動しており、これらの混合流体が排出連通孔58に沿って水循環装置14の戻り配管80に排出される。この未反応ガスの水及び酸素は、タンク部78に導入されて気液分離された後、水は、循環ポンプ74を介して循環配管72からイオン交換器76を通って水供給連通孔56に導入される。水から分離された酸素は、酸素排気配管86から外部に排出される。
【0053】
水電解装置12による水素製造作業が終了し、水電解システム10が待機状態に移行すると、第1ファン102による陽圧換気が継続される一方、第2ファン114がオフされる(図5参照)。そして、水電解装置12による水素製造作業が再開される際には、上記と同様に、第2ファン114がオンされてから所定時間t2が経過した後、前記水素製造作業が行われる。
【0054】
この場合、第1の実施形態では、図2に示すように、第1電装室100a、100b内には、第1ファン102を介して筐体22の外部から外気が導入され、前記第1電装室100a、100b内のコントローラ20及び電解電源38が、順次、冷却されている。すなわち、外気は、比較的発熱が少なく、熱に弱いコントローラ20に供給された後、比較的発熱量が多い電解電源38を冷却して排気口104から排出されている。このため、コントローラ20は、電解電源38からの発熱に曝されることがない。
【0055】
また、第1電装室100a、100b内は、外気が強制的に導入されるため、陽圧に保持されている。従って、例えば、第1電装室100a、100b内には、収容室96から水素ガスが進入することを阻止することができる。
【0056】
一方、第2電装室110内には、第1電装室100aから配管部材112を介して送風されている。これにより、リレー92等が収容されている第2電装室110内は、陽圧に保持されており、この第2電装室110内には、例えば、収容室96から水素ガスが進入することを阻止できる。
【0057】
このため、特性の異なる第1の電装部品と第2の電装部品とは、例えば、ノイズに弱いコントローラ20と、大きなノイズを発生するリレー92とは、同一の室内に配置されることがない。従って、コントローラ20とリレー92とは、互いに影響を及ぼすことを阻止することが可能になる。これにより、水電解システム10を良好に運転させることができるという効果が得られる。
【0058】
しかも、第2電装室110には、ファン等の送風手段が不要になっている。このため、陽圧保持のためのファンの数が有効に削減され、水電解システム10全体を簡単且つ経済的に構成するとともに、各種電装部品を良好に保持することが可能になる。
【0059】
さらに、配管部材112は、第1ファン102により取り込まれた外気を、第1電装室100aから第2電装室110に供給する送風用ダクトとしての機能と、リレー92等に接続されている配線をコントローラ20に接続するために挿入する配線用ダクトとしての機能とを兼用している。従って、配管系の簡素化を図るとともに、経済的であるという利点がある。
【0060】
さらにまた、第1の実施形態では、先ず、第1電装室100a、100b内及び第2電装室110内が陽圧に維持された状態で、収容室96内が負圧に維持されて換気が行われ、さらに水電解装置12の運転が開始されている。
【0061】
このため、水電解装置12から収容室96内に水素が漏れても、この水素が第1電装室100a、100b内及び第2電装室110内に移動することを確実に阻止することができる。従って、第1電装室100a、100b内及び第2電装室110内を高精度に気密状態に構成する必要がなく、構造の簡素化が図られて経済的であるという効果が得られる。
【0062】
しかも、水電解装置12の運転が停止されてシステム待機に移行した状態では、第1電装室100a、100b内及び第2電装室110内の換気を継続する一方、収容室96内の換気を停止している。第1電装室100a、100b内及び第2電装室110内が陽圧に維持されているため、収容室96から前記第1電装室100a、100b内及び前記第2電装室110内に水素が導入されることを阻止することができるからである。
【0063】
これにより、システム待機中には、第2ファン114が停止されているため、前記第2ファン114による消費電力及び騒音を良好に抑制することが可能になる。
【0064】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る水電解システム130の一部断面斜視説明図である。なお、第1の実施形態に係る水電解システム10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0065】
水電解システム130は、水電解システム10と同様に、各構成要素が筐体132(水電解システム10の筐体22に相当)内に収容されている。具体的には、二点鎖線で示す筐体132の上部側には、第1筐体部134、第2筐体部136及び純水製造装置18が配設される。第1筐体部134及び第2筐体部136は、縦寸法及び横寸法が厚さ寸法(奥行き寸法)に比べて相当に大きなボックス状を有し、互いにL字状を形成して連結される。図6及び図7に示すように、第1筐体部134には、配管部材112を介して第3筐体部137が接続される。第3筐体部137内の第2電装室110には、リレー92等が収容される。
【0066】
第1筐体部134内の第1電装室100aには、コントローラ20の他、センサアンプ等が内壁面に沿って収容される。第1筐体部134の広面側の壁面には、一対の第1ファン102が装着されるとともに、第2筐体部136に対向する狭面側の壁面には、上下に長尺な開口部138が形成される。
【0067】
第2筐体部136内の第1電装室100bには、電解電源38が収容される。この第2筐体部136の第1筐体部134の狭面側の壁面が対向する壁面には、開口部138に連通する開口部140が上下に長尺に形成される。第1ファン102が駆動されると、第1筐体部134内を冷却及び加圧した空気は、開口部138、140を通って第2筐体部136内に導入され、前記第2筐体部136内を冷却及び加圧して外部に排出される。
【0068】
これにより、第2の実施形態では、水電解システム130全体を簡単且つ経済的に構成するとともに、各種電装部品を良好に保持することできる。しかも、第1電装室100a、100b内及び第2電装室110内を高精度に気密状態に構成する必要がなく、構造の簡素化が図られて経済的である等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0069】
10、130…水電解システム 12…水電解装置
14…水循環装置 16…気液分離装置
18…純水製造装置 20…コントローラ
22、132…筐体 24…単位セル
38…電解電源 42…電解質膜・電極構造体
44…アノード側セパレータ 46…カソード側セパレータ
48…固体高分子電解質膜 50…アノード側給電体
52…カソード側給電体 56…水供給連通孔
58…排出連通孔 60…水素連通孔
64、68…流路 66…水素排出通路
72…循環配管 74…循環ポンプ
76…イオン交換器 78…タンク部
80…戻り配管 84…純水供給配管
86…酸素排気配管 88…高圧水素配管
90…バルブ類 92…リレー
94…電装デバイス 96…収容室
98、108、134、136、137…筐体部
100a、100b、110…電装室 102、114…ファン
104…排気口 112…配管部材
116…吸気口 138、140…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に水素を発生させる水電解装置と、
前記水電解装置を収容する収容室を設ける筐体と、
を備える水電解システムであって、
前記筐体内には、前記収容室から分離され、第1の電装部品が収容されるとともに、外気を取り込むためのファンが設けられる第1電装室と、
前記収容室から分離され、第2の電装部品が収容されるとともに、前記第1電装室に配管部材を介して接続される第2電装室と、
が形成されることを特徴とする水電解システム。
【請求項2】
請求項1記載の水電解システムにおいて、前記配管部材は、送風用ダクト及び配線用ダクトを兼用することを特徴とする水電解システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水電解システムにおいて、前記収容室は、負圧に維持される一方、
前記第1電装室及び前記第2電装室は、陽圧に維持されることを特徴とする水電解システム。
【請求項4】
電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に水素を発生させる水電解装置と、
前記水電解装置を収容する収容室、及び前記収容室から分離されて電装部品が収容される電装室を設ける筐体と、
を備える水電解システムの運転方法であって、
前記電装室内を陽圧に維持して換気を行う第1の工程と、
前記第1の工程が開始された後、前記収容室内を負圧に維持して換気を行う第2の工程と、
前記第2の工程が開始された後、前記水電解装置の運転を開始する第3の工程と、
を有することを特徴とする水電解システムの運転方法。
【請求項5】
請求項4記載の運転方法において、前記水電解装置の運転が停止されてシステム待機に移行した状態では、前記電装室内の換気を継続する一方、前記収容室内の換気を停止することを特徴とする水電解システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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