説明

永久磁石基材割断装置、永久磁石基材割断方法

【課題】小さな荷重で永久磁石基材を割断すること。
【解決手段】
永久磁石基材40を可動側保持部2及び固定側保持部3により固定し、可動側保持部2を可動部回転軸22を中心に回転させることにより永久磁石基材40を割断し割断面を成形する永久磁石基材割断装置1において、可動部回転軸22を割断面と直角方向にオフセットさせ、固定側保持部3側に位置させることによる。それにより、小さな荷重で永久磁石基材を割断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石基材を可動側保持部及び固定側保持部により固定し、前記可動側保持部を可動部回転軸を中心に回転させることにより前記永久磁石基材を割断し割断面を成形する永久磁石基材割断装置、及び前記永久磁石基材割断装置を用いた永久磁石基材割断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として図9に示す永久磁石基材の永久磁石割断装置100が用いられてきた。図9に示す永久磁石割断装置100は、永久磁石基材を割断するための装置である。永久磁石割断装置100は、可動側保持部101と固定側保持部102を有する。可動側保持部101内と固定側保持部102内には、永久磁石基材保持部103が形成されており、永久磁石基材保持部103には焼結部材である永久磁石基材200が固定保持されている。可動側保持部101は可動部回転軸104を中心に矢印Y方向へ回転可動する。それにより、永久磁石基材200に対しては、矢印Z方向に引張力が発生し、可動側保持部101に保持された永久磁石基材200を割断することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、上記した従来の割断方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−137170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には、以下の問題があった。すなわち、引っ張り強度が大きい材料を永久磁石基材200とする場合には、矢印Z方向の引張力だけで割断しようとすると大きな力が必要となる。矢印Z方向の引張力が大きくなると、永久磁石基材200が滑って狙った位置以外で割れる問題、割れ部の形状が悪化する問題、滑りにより永久磁石基材表面に傷つきが発生する問題など永久磁石基材200の割断後の永久磁石の品質が悪化するため問題となる。
また、永久磁石基材200が滑らないようにする保持固定をするため、図9中上方向から掛かる磁石保持力Xを大きくすることも考えられる。しかし、保持固定をするための磁石保持力Xを大きくすると磁石保持力Xにより永久磁石基材200が圧壊してしまうため、磁石保持力Xを大きくすることはできないため問題となる。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は永久磁石基材に対し引張力に加え曲げ力を付与することで小さな荷重で永久磁石基材を割断できる永久磁石基材割断装置、及び永久磁石基材割断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様における永久磁石基材割断装置、及び永久磁石基材割断方法は、以下の構成を有する。
(1)永久磁石基材を可動側保持部及び固定側保持部により固定し、前記可動側保持部を可動部回転軸を中心に回転させることにより前記永久磁石基材を割断し割断面を成形する永久磁石基材割断装置において、前記可動部回転軸を前記割断面と直角方向にオフセットさせ、前記固定側保持部側に位置させること、を特徴とする。
【0008】
(2)(1)に記載する永久磁石基材割断装置を用いた永久磁石基材割断方法であって、前記可動部回転軸を前記割断面と直角方向にオフセットさせ、前記固定側保持部側に位置させること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記永久磁石基材割断装置の作用及び効果について説明する。
(1)永久磁石基材を可動側保持部及び固定側保持部により固定し、可動側保持部を可動部回転軸を中心に回転させることにより永久磁石基材を割断し割断面を成形する永久磁石基材割断装置において、可動部回転軸を割断面と直角方向にオフセットさせ、固定側保持部側に位置させることにより、小さな荷重で永久磁石基材を割断できる。
その理由は、可動部回転軸を割断予定面と直角方向にオフセットさせ、固定側保持部側に位置させることにより、割断予定面に対して図1の矢印Fで示す方向に引張力と曲げ力の合力が発生するためである。図1に示す矢印Fで示す引張力と曲げ力の合力は、図9に示す従来技術に係る矢印Zで示す引張力と比較して可動部移動方向である矢印Yに近く、永久磁石基材に対して下斜め方向に発生する。すなわち、割断予定面に対して矢印Ftで示す引張力のほかに曲げの方向への矢印Fbで示す曲げ力が加わることにより、小さな荷重により割断できるためである。また、小さな荷重で割断可能なことにより、保持固定時のズレによる割断品質の悪化の防止や、ズレ防止を狙った磁石保持力の増大に起因する永久磁石基材の圧壊を防止することができる。
【0010】
(2)上記永久磁石基材割断装置を用いた永久磁石基材割断方法であって、可動部回転軸を前記割断面と直角方向にオフセットさせ、前記固定側保持部側に位置させることにより、小さな荷重で永久磁石基材を割断できる。
その理由は、可動部回転軸を割断予定面と直角方向にオフセットさせ、固定側保持部側に位置させることにより、割断予定面に対して図1の矢印Fで示す方向に引張力と曲げ力の合力が発生するためである。図1に示す矢印Fで示す引張力と曲げ力の合力は、図9に示す従来技術に係る矢印Zで示す引張力と比較して可動部移動方向である矢印Yに近く、永久磁石基材に対して下斜め方向に発生する。すなわち、割断予定面に対して矢印Ftで示す引張力のほかに曲げの方向への矢印Fbで示す曲げ力が加わることにより、小さな荷重により割断できるためである。また、小さな荷重で割断可能なことにより、保持固定時のズレによる割断品質の悪化の防止や、ズレ防止を狙った磁石保持力の増大に起因する永久磁石基材の圧壊を防止することができる。
また、動部回転軸を割断面と直角方向にオフセットさせるそのオフセット量は、永久磁石基材が滑らない必要面圧を有し、かつ、磁石圧壊強度を超えない範囲とすることにより、永久磁石が滑り狙った位置以外で割れる問題及び磁石保持力が大きいことによる永久磁石の圧壊の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の本実施例1に係る永久磁石基材の割断装置の概念断面図である。
【図2】本発明の本実施例1に係る永久磁石基材の割断装置の断面図である。
【図3】本発明の本実施例1に係る引張力の応力分布図である。
【図4】本発明の本実施例1に係る曲げ力の応力分布図である。
【図5】本発明の本実施例1に係る引張力と曲げ力の合力の応力分布図である。
【図6】本発明の本実施例1に係るオフセット量と割断に必要な磁石作用力の関係を示した図である。
【図7】本発明の本実施例1に係るオフセット量と保持部で滑らない必要面圧の関係を示した図である。
【図8】本発明の本実施例2に係る永久磁石基材割断装置の概念図である。
【図9】従来技術に係る永久磁石基材の割断装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る永久磁石基材割断装置及び永久磁石基材割断方法の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(第1実施形態)
<割断装置の全体構成>
図1には、永久磁石基材割断装置1の概念断面図を示す。図2に、永久磁石基材割断装置1の断面図を示す。
図1及び図2においては、本発明の本質部分である永久磁石基材40を割断する部分以外の部分である例えば駆動手段等については省略する。なお、本実施形態において駆動手段等に関しては省略したが、駆動手段等に関しては従来技術と変わらない構成及び作用効果を有する。
【0014】
図1に示す永久磁石基材40は、割断予定面40Aで割断されることにより、割断面41Aを有する永久磁石41となる。本実施形態においては、永久磁石基材40は約3mmの厚みを有し、幅が28mmであり、割断することにより、2つの幅14mmの永久磁石41を成形する。
割断予定面40Aのうち、永久磁石基材40の外周側(固定ネジ11によって固定される側)には、永久磁石基材40に応力が掛かると割断予定面40Aから割断できるように切欠部401Aが形成されている。切欠部401Aは、永久磁石基材40に対してあらかじめレーザ加工等により成形されている(切欠部401Aは、小さな凹部であるため図1中には現れない)。
なお、本実施形態においては永久磁石として記載しているものは、ロータに挿入後強い磁界を与えられて永久磁石となるものである。本実施形態ではロータに挿入せず、強い磁界が与えられていないが永久磁石として記載している。
【0015】
図2に示すように永久磁石基材割断装置1は、永久磁石基材40を割断し、割断された永久磁石41に成形するための装置である。永久磁石基材割断装置1は、可動側保持部2、固定側保持部3等により構成されている。
【0016】
固定側保持部3は、永久磁石基材40を保持固定するためのものである。固定側保持部3は固定された固定部6に固定されている。固定側保持部3は固定部6に固定されていることにより、永久磁石基材40を固定することができる。固定側保持部3には、可動側保持部2に対して割断力を付与するための割断力付与ロッド5が形成されている。
【0017】
可動側保持部2は、第1に永久磁石基材40を保持固定し、第2に可動することで永久磁石基材40を割断するものである。可動側保持部2は可動回転部21が形成されており、可動回転部21の可動部回転軸22を中心に回転する。可動回転部21は、可動側保持部2の下面2Aに突出する形で形成されている。可動回転部21の可動部回転軸22は、永久磁石基材40の割断面となる予定の割断予定面40A(割断面41Aと同じ。明細書中において同じ。)と直角方向にオフセットされ、かつ、固定側保持部3側に位置する。
【0018】
本実施形態における可動回転部21のオフセット量は、永久磁石基材40が滑らない必要面圧を有し、かつ、磁石圧壊強度を超えない範囲により決定する。本実施形態においては、図7に示す保持部で滑らない必要面圧を有し、かつ磁石圧壊強度を超えない範囲により決定する。図7に示す圧壊面圧Tは、永久磁石基材を保持固定するため面圧をかけた場合に圧壊面圧Tを超える値となると、永久磁石基材に圧壊が生じる恐れがある値である。本実施形態においては、圧壊面圧Tは、約940MPaであり、永久磁石基材40においては約940MPaの面圧をかけたとしても圧壊が生じない値である。本実施形態において圧壊面圧Tは、約940MPaであるが、圧壊面圧Tは、磁石材料や磁石材料を圧縮する際の圧縮強度等の条件によって大きく異なる。ただし、圧壊面圧が永久磁石基材を保持固定するため面圧をかけた場合に圧壊しない値であることは、変わりはない。
【0019】
図7に示す実線Sは保持部で滑らない面圧とオフセット量の関係を示したものである。本実施形態においてオフセット量は、磁石圧壊強度を示す圧壊面圧Tの範囲内であり、かつ保持部で滑らない必要面圧を有する約940MPa以下とする。圧壊面圧Tの約940MPa以下であるのは実線SではS1以上のオフセット量となる。すなわち、本実施形態においてはオフセット量を3mm以上とすることにより、永久磁石基材40が滑らない必要面圧を有し、かつ、磁石圧壊強度を超えない範囲とすることができる。
なお、本実施形態においては、オフセット量を3mm以上としたが、オフセット量は永久磁石基材40の厚み等及び永久磁石基材割断装置1の大きさ等により変更される。したがって、オフセット量は、永久磁石基材の厚み等及び割断装置の大きさ等により影響を受けない永久磁石基材が滑らない必要面圧を有し、かつ、磁石圧壊強度を超えない範囲により決定することが好ましい。
【0020】
図2に示すように、固定側保持部3及び可動側保持部2には、永久磁石基材40を固定するための磁石固定部10が形成されている。磁石固定部10は、可動側保持部2が可動することにより分割される。固定側保持部3及び可動側保持部2のうち、磁石固定部10に配置した永久磁石基材40に対して上部から押圧する固定ネジ11A及び11Bが各々形成されている。固定ネジ11Aは可動側保持部2に形成され、固定ネジ11Bは固定側保持部3に固定されている。そのため、磁石固定部10が分割された際に固定ネジ11A及び12Bがそれぞれ可動側保持部2及び固定側保持部3に存在することとなる。
なお、本実施形態においては固定ネジ11としたが、固定できるものであればその他のものを応用することも可能である。
【0021】
<割断装置の作用効果>
第1に、永久磁石基材40を磁石固定部10に配置する。続いて固定ネジ11を用いて永久磁石基材40を保持固定する。本実施形態においては、固定ネジ11を回転させることにより永久磁石基材40に対して図1に示す磁石保持力Wが発生することで、磁石固定部10に固定することができる。
【0022】
第2に、可動側保持部2が可動部回転軸22を中心に図中矢印Y方向(可動部移動方向)へ移動する。可動側保持部2が矢印Y方向へ移動することにより、永久磁石基材40が割断予定面40Aから割断され割断面41Aを有する永久磁石41が成形される。割断予定面40Aのうち、始めに割断されるのは永久磁石基材40の外周に成形される切欠部401Aである。本実施形態においては永久磁石基材割断装置1を用いることにより、小さな荷重で永久磁石基材40を割断することができる。
【0023】
図6に、割断に必要な磁石作用力(KN)及びオフセット量(mm)の関係を示した図を示す。ここで磁石作用力とは、永久磁石基材を割断するために必要とされる力をいう(明細書中において同じ)。実線Rは、割断に必要な磁石作用力(KN)及びオフセット量(mm)の関係を示したものである。例えば、従来技術に係る図9に示す永久磁石割断装置100のように可動部回転軸104がオフセットされていない場合のR0においては割断に必要な磁石作用力は約8KN必要となる。それに対して本実施形態のように可動部回転軸22を3mmオフセットさせた場合のR3においては割断に必要な磁石作用力は約7.5KNである。また、可動部回転軸22を5mmオフセットさせた場合のR5においては割断に必要な磁石作用力は約7KNである。また、可動部回転軸22を8mmオフセットさせた場合のR8においては割断に必要な磁石作用力は約6.5KNである。以上より、可動部回転軸22をオフセットさせることにより永久磁石基材40を割断するために必要な磁石作用力は小さくなるため、小さな荷重により永久磁石基材40を割断するこ
とができる。
なお、本実施形態においては、割断に必要な磁石作用力が約8KN(R0)〜約6.5KN(R8)としたが、割断に必要な磁石作用力は、永久磁石基材40の厚み等により変更される。ただし、オフセットすることにより割断に必要な磁石作用力が小さくなることは変わりがない。
【0024】
小さな荷重で永久磁石基材40を割断することができる理由は、可動部回転軸22を割断予定面40Aと直角方向にオフセットさせ、固定側保持部3側に位置させることにより、割断予定面40Aに対して矢印Fで示す方向に引張力と曲げ力の合力が発生するためである。図1の矢印Fで示す引張力と曲げ力の合力は、図9に示す従来技術に係る矢印Zで示す引張力と比較して可動部移動方向である矢印Yに近く、永久磁石基材40に対して下方斜め方向に発生する。それに対して、図9に示す矢印Zで示す引張力においては、永久磁石基材40に対して横方向に発生する。すなわち、図1に示す矢印Fで示す引張力と曲げ力の合力においては、可動部回転軸22が割断予定面40Aと直角方向にオフセットされ固定側保持部3側に位置することで、割断予定面40Aに対して曲げの方向への力が加わるため矢印Fの方向に力が生じるのである。永久磁石基材40を割断する際に引張力により割断するよりも引張力に曲げ力を加えた合力により割断した方が小さな荷重により割断できる。したがって、本実施形態の永久磁石基材割断装置1を用いることにより小さな荷重で永久磁石基材40を割断することができる。
【0025】
<引張力と曲げ力の合力の説明>
具体的には、可動側保持部2が移動した場合、永久磁石基材40に対して図5の矢印Fa11〜Fa18で示す引張力と曲げ力の合力が発生するため永久磁石基材40を小さな荷重で割断することができる。引張力と曲げ力の合力による磁石作用力について詳細に後述する。
図3に、本実施形態における引張力の応力分布図を示す。図4に、本実施形態における曲げ力の応力分布図を示す。図5に、本実施形態における引張力及び曲げ力が加わった引張力と曲げ力の合力の応力分布図を示す。
【0026】
図3に示すように、矢印Ftで示す引張力である応力Ft11〜Ft18は割断予定面40Aから割断垂直方向に対して均等に発生する。
また、図4に示すように、矢印Fbで示す曲げ力は割断予定面40Aから割断垂直方向に応力Fb11〜Fb13が発生する。応力Fb11の応力が最も大きく応力Fb12、応力Fb13と小さくなる。すなわち応力Fb1は、割断中心点40AP(割断予定面40Aの断面中心)から遠く、かつ可動部回転軸22から遠い方向(永久磁石基材40の外周)へ向かうに従って応力が大きくなる。さらに、矢印Fbで示す曲げ力は割断予定面40Aから反対割断垂直方向に応力Fb21〜Fb23が発生する。応力Fb21の応力が最も大きく応力Fb22、応力Fb13と小さくなる。すなわち応力Fb2は、割断中心点40AP(割断予定面40Aの断面中心)から遠く、かつ可動部回転軸22から遠い方向(永久磁石基材40の外周)へ向かうに従って応力が大きくなる。
【0027】
図5に示すように、図3に示す応力Ft1及び図4に示す応力Fb1、Fb2が加わることにより矢印Fa11〜Fa18で示す引張力と曲げ力の合力の応力分布図となる。すなわち、割断予定面40Aのうち可動部回転軸22に近い部分から、可動部回転軸22から最も遠い部分へと行くほど応力は大きくなる。その理由は、図3における矢印Ftで示す引張力である応力Ft11〜Ft18は、割断予定面40Aから割断垂直方向に対して均等に発生しているのに対して、矢印Fbで示す曲げ力である応力Fb11〜Fb13及び応力Fb21〜Fb23は永久磁石基材40の割断中心点40APに近いほど応力は小さく、永久磁石基材40の外周に近いほど応力が大きくなる。そのため、図5に示す矢印Faで示す引張力と曲げ力の合力では、割断中心点40APから可動部回転軸22に遠い部分では応力Ft11からFt13に対して応力Fb11〜Fb13が加えられ応力が大きくなる。他方、割断中心点40APから可動部回転軸22に近い部分では応力Ft16〜Ft18に対して応力Fb21〜Fb23が加えられ応力は小さくなる。その結果、引張力の応力Ft1〜Ft18及び曲げ力の応力Fb11〜Fb13、Fb21〜Fb23が加えられた引張力と曲げ力の合力の応力Faは、図5に示すように割断予定面40Aのうち可動部回転軸22に近い部分の応力Fa18から、可動部回転軸22から最も遠い部分の応力Fa11へと行くほど応力が大きくなる。
【0028】
割断予定面40Aの上部には切欠部401Aが形成されており、切欠部401Aから割断が開始する。そのため、切欠部401Aが形成された可動部回転軸22から遠い永久磁石基材40の外周部に応力Faが集中し大きな力が掛かれば全体として小さな荷重で永久磁石基材40を割断することができる。本実施形態においては、図6に示すように従来のオフセットをしない場合と比較して小さな荷重であるが、切欠部401Aが形成された可動部回転軸22から遠い永久磁石基材40の外周部に対して図5に示すように大きな引張力と曲げ力の合力が掛かる。そのため、従来技術よりも小さな荷重で永久磁石40を割断し永久磁石41に成形することができる。
【0029】
また、小さな荷重で割断可能なことにより、保持固定時のズレによる分割品質の悪化の防止することができる。例えば、水平方向に働く引張力により永久磁石基材を割断しようとした場合には、永久磁石基材は引き裂かれるため、狙った割断予定面で割断することが困難である。それに対して、垂直方向に働く曲げ力により永久磁石基材を割断する場合には、荷重が下方向へと掛かるため割断予定面で割断することが容易である。よって、保持固定時に永久磁石基材がズレ割断品質の悪化するのを防止することができる。
【0030】
また、小さな荷重で永久磁石基材を割断することができるため、永久磁石基材を保持固定するための磁石保持力Xを低減することができる。そのため、磁石保持力Xの増大に起因する永久磁石基材の圧壊を防止することができる。
【0031】
上述したように、第1実施形態のように永久磁石基材割断装置及び割断方法によれば、以下の作用効果を有する。
永久磁石基材40を可動側保持部2及び固定側保持部3により固定し、可動側保持部2を可動部回転軸22を中心に回転させることにより永久磁石基材40を割断し割断面41Aを成形する永久磁石基材割断装置1において、可動部回転軸22を割断予定面40Aと直角方向にオフセットさせ、固定側保持部3側に位置させることにより、小さな荷重で永久磁石基材40を割断できる。
その理由は、可動部回転軸22を割断予定面40Aと直角方向にオフセットさせ、固定側保持部3側に位置させることにより、割断予定面40Aに対して図1の矢印Fで示す引張力と曲げ力の合力が発生するためである。図1の矢印Fで示す引張力と曲げ力の合力は、図9に示す従来技術に係る矢印Zで示す引張力と比較して可動部移動方向である矢印Yに近く、永久磁石基材40に対して下斜め方向に発生する。すなわち、割断予定面40Aに対して矢印Ftで示す引張力のほかに曲げの方向への矢印Fbで示す曲げ力が加わることにより、小さな荷重により割断できるためである。また、小さな荷重で永久磁石基材40を割断可能なことにより、保持固定時のズレによる割断品質の悪化の防止や、ズレ防止を狙った磁石保持力Xの増大に起因する永久磁石基材40の圧壊を防止することができる。
【0032】
可動部回転軸22を割断予定面40Aと直角方向にオフセットさせるそのオフセット量は、永久磁石基材40が滑らない必要面圧を有し、かつ、磁石圧壊強度を超えない範囲とすることにより、永久磁石基材40が滑り狙った位置以外で割れる問題及び磁石保持力が大きいことによる永久磁石基材40の圧壊の問題を解決することができる。具体的には、永久磁石基材40が滑らないことにより、永久磁石基材40表面への傷つきを防止し品質を保つことができる。また、磁石圧壊強度を超えない範囲とすることにより、永久磁石基材40の圧壊を防止することができる。
【0033】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る磁石基材割断装置70は、第1実施形態に係る永久磁石基材割断装置1と比較して、引張力付与装置71が形成されていること以外異なるところがない。そのため、第2実施形態においては、磁石基材割断装置70のうち引張力付与装置71について詳細に説明することにより、その他の説明を割愛する。
なお、第2実施形態で引張力付与装置71以外の構成、作用効果については説明を割愛するが、その他の部分は第1実施形態と同様の構成、作用効果を有する。
【0034】
図8に、第2実施形態に係る磁石基材割断装置70の概念断面図を示す。
磁石基材割断装置70には、可動側保持部2に引張力を付与するための引張力付与装置71が形成されている。引張力付与装置71は、付勢部材73により可動側保持部2に対して矢印Fk5で示す引張力を付与することができる。
また、可動回転部21には、ガイド29が形成されており、ガイド29には可動側保持部2が摺動可能な構成で取り付けられている。そのため、可動側保持部2のみが矢印Fk5方向の引張力を受けることができる。可動側保持部2は引張力を受けた状態で、可動回転部21により回転方向に回転力を受けることができる。
【0035】
第1実施形態において可動部回転軸22を大きくオフセットした場合には、磁石に加わる曲げ力が大きくなりすぎる恐れがある。曲げ力が大きくなりすぎると、曲げ力の応力が集中する部分において磁石が部分的に破壊される可能性があるため問題となる。
また、曲げ力が大きくなると永久磁石基材を保持するための磁石保持力を増加させる必要があり、増加により永久磁石基材が圧壊してしまうため、磁石保持力Xを大きくすることはできないため問題となる。
【0036】
本実施形態においては、磁石基材割断装置70は、引張力付与装置71を有する。そのため、可動側保持部2に対して、第1実施形態と比較して矢印Fk5で示す引張力を付与することができる。そのため、可動側保持部2に固定された永久磁石基材200に対しても同様に矢印Fk5で示す引張力を付与できる。したがって、矢印Fk5及びFt5で示す引張力を付与することで曲げ力を打ち消し、矢印F5で示す引張力と曲げ力の合力を発生させることができる。本実施形態における矢印F5で示す引張力と曲げ力の合力は、磁石が部分的に破壊されることなく、さらに、磁石保持力の増加をしないで永久磁石基材を割断することができる力となる。
【0037】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で色々な応用が可能である。
例えば、本実施形態においては、オフセット量を3mm以上としたが、オフセット量は永久磁石基材40の厚み等及び永久磁石基材割断装置1の大きさ等により変更される。したがって、オフセット量は、永久磁石基材の厚み等及び割断装置の大きさ等により影響を受けない永久磁石基材が滑らない必要面圧を有し、かつ、磁石圧壊強度を超えない範囲により決定することが好ましい。
【0038】
例えば、本実施形態においては、割断に必要な磁石作用力が約8KN(R0)〜約6.5KN(R8)としたが、割断に必要な磁石作用力は、永久磁石基材40の厚み等により変更される。ただし、オフセットすることにより割断に必要な磁石作用力が小さくなることは変わりがない。
【符号の説明】
【0039】
1 永久磁石基材割断装置
2 可動側保持部
22 可動部回転軸
3 固定側保持部
40 永久磁石基材
40A 割断予定面
41A 割断面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石基材を可動側保持部及び固定側保持部により固定し、前記可動側保持部を可動部回転軸を中心に回転させることにより前記永久磁石基材を割断し割断面を成形する永久磁石基材割断装置において、
前記可動部回転軸を前記割断面と直角方向にオフセットさせ、前記固定側保持部側に位置させること、
を特徴とする永久磁石基材割断装置。
【請求項2】
請求項1に記載する永久磁石基材割断装置を用いた永久磁石基材割断方法であって、
前記可動部回転軸を前記割断面と直角方向にオフセットさせ、前記固定側保持部側に位置させること、
を特徴とする永久磁石基材割断方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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