説明

汚染土壌の浄化処理方法

【課題】本発明が意図するところは、有機塩素化合物で汚染された掘削土壌を、環境基準値以下に処理することができる汚染土壌の浄化処理方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、有機塩素化合物に汚染された掘削土壌1に、零価の鉄粉を含む金属還元剤、水を供給し撹拌混合してスラリー状の混合物15とし、前記混合物15を容器4内で一定期間養生させて有機塩素化合物を無害化処理することを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質に汚染された土壌の浄化技術に関し、特にPCB(ポリ塩化ビフェニル)等の有機塩素化合物に汚染された土壌の浄化処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PCB(ポリ塩化ビフェニル、不揮発性の疎水性有機化合物)等に代表される有機塩素化合物に汚染された土壌が、工場跡地等の地中にあまり分解されずに存在する。
【0003】
また、このPCB等は、土壌浄化のために地中から掘削してドラム缶等の容器に保管されている。
【0004】
特に掘削した汚染土壌が浄化処理されないままの状態で大量に保管されているのが実態で、その浄化処理が急がれている。
【0005】
従来知られている方法としては、例えば、熱分解法、アルカリ触媒化学分解法、溶融固化法、鉄粉法等がある。
【0006】
しかしながら、汚染土壌が安全基準を満たすように浄化され、しかも処理工程数が少ない方法の開発が望まれている。
【0007】
前記各種処理方法のうち代表的な解決手段として下記のものがある。
【0008】
PCB、廃液、廃油などの難分解な有害物質を構成部材またはその一部として含有するものとしては、トランスやコンデンサ等の電気部品がある。
【0009】
この有害物質をドラム缶や箱等の各種容器に収納して、溶融炉に燃料として投入し、高温で溶融処理することによって、前記有害物質を熱分解する処理方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
また、有機ハロゲン系化合物で汚染された土壌を掘削した後、その掘削土壌に鉄粉を混合して地上に小山(パイル)状に積み上げて数日〜数ヶ月間静置する方法がある。
【0011】
また、掘削土壌に鉄粉を混合して地下に埋め戻すことにより、汚染物質を分解し、エタンやエチレン等のハロゲンを含まない炭化水素に変換する方法もある。
【0012】
さらに、周辺土壌に残留する汚染物質による汚染の再発を防止する処理方法もある(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
また、ダイオキシン類汚染固形物を粉砕機で粉砕し、粉砕物の雰囲気を不活性ガスと置換して該粉砕物質中に還元性金属を投入して混合する。
【0014】
その後粉砕物と還元性金属とから得られた粉砕ダイオキシン類汚染混合物を、不活性ガス雰囲気を保った状態のままで、脱ハロゲン化処理反応装置に移して、粉砕物を還元性金属で還元することによって、ダイオキシン類の脱ハロゲン化反応を行なう。(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−154666号公報
【特許文献2】特開2001−577号公報
【特許文献3】特開2003−190932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、熱分解処理であり、高温焼却炉を必要とし、設備が複雑となり、大規模となる。
【0016】
この熱分解処理での有害物質とは、PCB、廃液、廃油などの難分解性の有害物質(以下、PCB等という。)を含有またはPCB等に汚染された装置、部品等の物品、PCB等が混入した汚染土壌、汚染水等と、または収納するドラム缶等の容器である。
【0017】
この有害物質を直接高温焼却炉で高温を維持して燃焼させ、有害物質を熱分解するものであり、高温焼却炉が耐久性を考慮した大規模な設備を必要となり、焼却の為の燃料等のエネルギー使用量が多くなる。
【0018】
また、燃焼による未分解のダイオキシン類の課題もある。
【0019】
次に特許文献2に記載のものは、掘削土壌に鉄粉を混合し、得られた混合物を地上に小山(パイル)状に積み上げてシートを掛けて数日〜数ヶ月間静置するものである。
【0020】
この汚染土壌を掘削するにあたって、汚染場所から掘削した掘削物には、石、ガラ等の大型混入物や粒径が大きく異なる成分が混在している。このため掘削土壌に鉄粉を混合する際に、掘削土壌中に鉄粉を均一に分散させることが困難である。
【0021】
また、掘削土壌に鉄粉を混合した混合物の小山の下部が地上に接触していることから混合物が漏洩する恐れがある。
【0022】
また、混合物で形成された小山が風化等により、くずれて初期の形状を維持することが難しく、シートから混合物が露出しやすい。
【0023】
さらに、鉄粉の空気との接触による酸化防止および有機ハロゲン系化合物の還元分解促進に必要な混合物中の必要とする水量の維持ができない。
【0024】
いわば、混合物の乾燥による水分の蒸発により、鉄粉の酸化速度、PCB等の還元速度のバランスが変化し、一定期間に亘り安定したPCB等の還元分解が困難である。
【0025】
さらに、鉄粉による土壌浄化処理方法の共通的な課題であるが、土壌に付着している疎水性有機塩素化合物、例えばPCB類、ダイオキシン類等は、土壌表面に非常に強く付着している。
【0026】
多量の鉄粉を混合したとしても、実体としては、例えば汚染濃度は比較的短期間で半減するが、その後、浄化速度が鈍くなり浄化処理に時間がかかる。
【0027】
特に掘削した土壌の汚染濃度が高い場合には、完全に浄化処理することが一層困難となる。
【0028】
また多量の鉄粉を必要として経済的ではなく二次汚染の課題も有している。
【0029】
また特許文献3に記載のものは、汚染固形物を粉砕する粉砕機が必要であり、さらに金属ナトリウムの還元性金属を破砕機で粉砕した粉砕物質と混合させ、脱ハロゲン化処理反応をさせる。
【0030】
このとき不活性ガスあるいは還元性雰囲気に保つ装置が必要で、これらによって全体のシステムが複雑となり、結果として運転コストも高くなる課題を有している。
【0031】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、PCB等で汚染された掘削土壌を、確実(ここでいう確実とは、環境基準に適合する基準値以下ということ)に、さらに鉄粉の投入を効果的に投入することで、結果的にランニングコストを低減でき、かつ環境基準に適合する汚染土壌の浄化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、有機塩素化合物に汚染された掘削土壌に零価の鉄粉を含む金属還元剤と水とを供給した後、撹拌混合してスラリー状混合物とし、前記混合物を容器内で一定期間養生させることを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法としたものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の汚染土壌の浄化処理方法によれば、PCB等に代表される有機塩素化合物で汚染された掘削土壌を、確実に、さらに零価の鉄粉を含む金属還元剤を効率よく投入することで経済的にランニングコストを低減でき、かつ環境基準に適合した処理を行うことがきる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
第1の発明は、有機塩素化合物に汚染された掘削土壌に零価の鉄粉を含む金属還元剤と水とを供給した後、撹拌混合してスラリー状混合物とし、前記混合物を容器内で一定期間養生させることを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法としたものである。
【0035】
この方法によって、攪拌混合することで塊状の土壌が解れ、スラリー状混合物となり、また砂利等を包み込んでいた土壌塊が攪拌混合することで離脱し解れて微細化する。
【0036】
さらに土壌の表面に付着している有機塩素化合物を供給した水による洗浄作用および土壌同士の擦り作用によって、供給した水に離脱、溶出させることができる。
【0037】
さらに零価の鉄粉を含む金属還元剤を供給して攪拌混合しスラリー状混合物にすることによって、比表面積のより大きい微細化した土壌粒子間に微粉状の金属還元剤を均一に分散させることができる。
【0038】
また、土壌塊が離脱した砂利等の表面にも金属還元剤が接触し易い状態にすることができる。
【0039】
さらに水に溶出した有機塩素化合物も金属還元剤と直に接触し分解反応を促進することができる。
【0040】
さらに、密閉された容器内で養生させることで安定した分解反応を持続させることができる。
【0041】
さらに必要な零価の鉄粉を含む金属還元剤の量を最小限に抑えるとともに、大型で複雑な処理装置を用いる必要がない。
【0042】
零価の鉄粉を含む金属還元剤の量を最小限(スラリー状土壌の重量の1%〜10%)に抑えることにより、金属還元剤の適切な還元作用を行うことができ、余剰の金属還元剤を投入することを防止でき、後段での容器収納量が適切な量となる。
【0043】
したがってPCB等に代表される有機塩素化合物で汚染された掘削土壌を、確実に、さらに零価の鉄粉を含む金属還元剤の量を最小限に抑えた処理により、鉄粉の酸化反応及びスラリー状混合物の還元反応を効率よくする作用することができる。
【0044】
第2の発明は、第1の発明において、予め掘削土壌に水を供給し撹拌混合してスラリー状土壌とした後、零価の鉄粉を含む金属還元剤を供給し撹拌混合して混合物とすることを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法としたものである。
【0045】
これによって、掘削土壌の微細化および有機塩素化合物を水に溶出させた後に金属還元剤を供給し撹拌混合させることで、金属還元剤を土壌全体により均一にしかも短時間で分散させることができる。
【0046】
なぜなら、掘削土壌に水を供給し撹拌混合してスラリー状土壌とした後、零価の鉄粉を含む金属還元剤を供給し撹拌混合することにより、スラリー状土壌の粒系が練られることで微細になり、水が土粒系の間に浸透した後に零価の鉄粉を含む金属還元剤を供給ことになるため、鉄粉と水との酸化反応で水素イオンが遊動しやすく、かつ、スラリー状土壌に含有するPCB等の有機塩素化合物の塩素と水素イオンが脱塩反応を促進しやすくなる。
【0047】
第3の発明は、第2の発明において、予め水と金属還元剤を混合した後、スラリー状土壌に供給し撹拌混合して混合物とすることを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法としたものである。
【0048】
これによって、金属還元剤の空気との接触による酸化、凝集を防止するとともに、金属還元剤を土壌全体により均一にしかも短時間で分散させることができる。
【0049】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明において、有機塩素化合物の溶出促進剤を混合物に供給することを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法としたものである。
【0050】
これによって、掘削土壌の表面に付着している有機塩素化合物の離脱、溶出を促進させ、金属還元剤による分解効率をより向上させることができる。
【0051】
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明において、養生期間中に、混合物を連続または一定時間ごとに撹拌混合させることを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法としたものである。
【0052】
これによって、混合物中のより粒径の大きい土壌の容器下部への沈降、土壌の団粒化、および金属還元剤の凝集を防止して金属還元剤を土壌全体に均一に分散させるとともに、有機塩素化合物の水中への溶出促進を図って金属還元剤と有機塩素化合物との接触を促進し、金属還元剤を有機塩素化合物の分解に有効に作用させることができる。
【0053】
したがって掘削土壌1の有機塩素化合物を確実に、さらに経済的に処理し無害化することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の一実施例の土壌浄化処理方法を図1、図2を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施例の汚染土壌の浄化処理方法の概念図、図2は図1に対応させた処理ステップを示すフロー図である。以下、図面に基づいて説明する。
【0055】
先ず、図1の汚染土壌の浄化処理方法の概念図により基本的な構成を説明する。
【0056】
図1において、PCB等の有機塩素化合物に汚染された掘削土壌1は、振動篩2a、ベッセル2bを有する選別装置2に搬送される。この選別装置2は、振動篩2aの網目が例えば30mm程度に設定されており、振動篩2a上には土壌中に混入している比較的大サイズの石、ガラ等の大型混入物3が残り分離される。振動篩2aを通過して下に振るい落とされた掘削土壌1はベッセル2b内に収容する。
【0057】
なお、選別装置2は、スクリーンマット面を波動運動させるジャンピングスクリーンや、徐々に網目を細かくした多層スクリーンを用いてもよい。また選別装置2は、振動篩2aを固定し、篩上で掘削土壌1を移動させる手段や土壌に振動を加える手段を用いてもよい。
【0058】
この選別装置2としては、前記構成に限定されるものではなく、既に実用化されている各種の振動篩装置、回転篩装置(トロンメル)等を用いてもよい。
【0059】
また前記選別装置2の網目のサイズは、掘削土壌1の種類や特性、混入物のサイズ等に応じて適宜最適条件に設定すればよい。また掘削土壌1の状態によっては目視による選別であってもよい。
【0060】
さらに大型混入物3を取り除くとともに掘削土壌1の粒度を選別してもよく、これによって後の浄化処理ステップの作業効率、有機塩素化合物の分解効率を向上させることができる。
【0061】
なおこの掘削土壌1の選別処理は、掘削土壌1の状況により採用すればよく、例えば大サイズの石、ガラ等の大型混入物3の混入がなく比較的粒度が一定の粒径であれば省略すればよい。
【0062】
このように、掘削土壌1を分級して容器4に投入する。
【0063】
次に本発明の浄化方法の装置について説明する。
【0064】
石、ガラ等の大型混入物3を取り除いた掘削土壌1を収納する容器4と、前記容器4の蓋体5を有し、前記蓋体5には、撹拌混合手段であるモータ6により回転駆動される撹拌翼7を固定し、さらに容器4内に水を供給する開閉弁8aを有する供給管8を開口させて接続させてある。
【0065】
なお前記容器4と蓋体5は着脱自在に構成され、さらに蓋体5と供給管8、蓋体5とモータ6および撹拌翼7は、各々相互に着脱自在に構成されている。
【0066】
また、零価の鉄粉を含む金属還元剤、水を混合し貯留する貯留容器9を備え、前記貯留容器9には金属還元剤供給口10、水の供給管11、撹拌混合手段であるモータ12により回転駆動される撹拌翼13を有している。
【0067】
さらに前記貯留容器9から混合した金属還元剤と水を容器4に供給する開閉弁14aを有する供給管14を備えている。なお蓋体5と供給管14は相互に着脱自在に構成されている。前記基本的な構成により、掘削土壌1を容器4に収納し、さらに金属還元剤、水を撹拌混合して混合物15とするものである。
【0068】
次に本発明の浄化方法の装置の動作について説明する。
【0069】
有機溶剤(エタノール)または必要性に応じて有機塩素化合物の溶出促進剤である界面活性剤を容器4内に供給する。前記溶出促進剤は、供給管8または11から水とともに供給し、容器4内で掘削土壌1、金属還元剤、水、溶出促進剤の混合物15とする。
【0070】
この混合物15とするため、容器4内のモータ6および撹拌翼7が作動する。
【0071】
これによって、掘削土壌1の表面に付着している有機塩素化合物の離脱、溶出を促進させ、金属還元剤による分解効率をより向上させることができる。
【0072】
前記溶出促進剤としては、水溶性又は水に分散する性質を有するものであれば特に限定されない。界面活性剤としては、非イオン系、陰イオン系、陽イオン系、両性界面活性剤がある。
【0073】
イオン系の界面活性剤では容器4内に存在する水分の水素イオン濃度や零価の鉄粉の影響を受けやすく、非イオン界面活性剤では、これらの影響を受けにくい為、非イオン界面活性剤が特に好ましい。
【0074】
また溶出促進剤として、有機溶剤、例えばアセトン、エタノール等を用いることもできる。溶出促進剤は混合物15に直接供給しても良いが、水に一定濃度で溶解させた後に供給することが混合物15に短時間で均一に分散させるために好ましい。
【0075】
また、容器4としては、例えばステンレス材料または内面を樹脂コーティングしたものを用いることが好ましく、また容器4の内面に装着させた樹脂製の袋体を介して混合物15を収納してもよい。
【0076】
これによって腐食による混合物15の漏洩を防止することができる。容器4は例えば容積が200リットル程度のドラム缶を用いる。
【0077】
この容器4のサイズは一般的に入手しやすく、工業生産性が高い為であり、かつ、搬送等が簡易である。
【0078】
金属還元剤による汚染物質の分解作用の阻害要因である酸素源を断つため、混合物15が外気と接触しないよう密閉することが望ましく、さらには不活性ガスまたは還元性ガスを容器4と蓋体5との上部空間部に充填しておくことが好ましい。
【0079】
容器4内において掘削土壌1に供給する水量は、少なすぎると微細化できずに砂利等を包み込んでいた土壌塊が解れない状態が発生し、また多すぎると全体量を増加させることになり好ましくない。水の供給量は、掘削土壌1の含水状態に応じて調節すればよい。
【0080】
つまり最適な土壌と水の混合割合は、土壌の含水率によって異なるが、例えば含水率60%の土壌に対しては、重量比で1.5倍の水を供給することで、スラリー状土壌を得られることがわかった。
【0081】
また含水率が85%を超える土壌に対しては、重量比で1倍の水を供給することで、スラリー状土壌を得ることができる。
【0082】
さらに含水率が15%以下の土壌に対しては、重量比で3倍の水を供給することでスラリー状土壌を得ることができる。また供給水に用いられる水には、水道水、河川水、地下水等の一般的にいう水を用いればよい。
【0083】
金属還元剤としては、零価の微粒子鉄粉をベースとして用いる。鉄粉は例えば平均粒径70μm程度の微粒子とし、鉄粉の表面積を大きくした形状とすることで有機塩素化合物の分解反応性を向上させることができる。またニッケル合金、カーボンコーティングした鉄粉等を配合して用いてもよく、粒径を含めこれらに限定するものではない。
【0084】
また、掘削土壌1への金属還元剤の供給量は、土壌に対して1〜10重量%程度で、添加量が1重量%より少ないときには分解速度が著しく低下する。10重量%以上の多量の添加量では、酸化反応をしない鉄粉が多くなり経済的に無駄である。
【0085】
なお前記供給量は掘削土壌1の粒度、汚染濃度等により設定する。例えば、粒度が小さい及び/または汚染濃度が高いときは、供給量を増やす。
【0086】
貯留容器9内で金属還元剤と混合する水の量は、金属還元剤の飽和水量以上とし、スラリー状にして流動化させる。これによって金属還元剤の空気との接触による酸化、凝集を防止するとともに、容器4内においてスラリー状土壌との均一な混合がより短時間で得られ、金属還元剤を土壌全体に均一に分散させることができる。
【0087】
また、養生期間中に一定時間ごとに撹拌混合させる場合において、撹拌混合させないときに蓋体5からモータ6、撹拌翼7を取り外し、撹拌混合させるときのみ装着してもよい。これによって複数の容器4の蓋体5にモータ6、撹拌翼7を順次装着して撹拌混合させることができる。
【0088】
これにより、容器4全数に容器4の蓋体5とモータ6と撹拌翼7を備えなくとも、撹拌混合が必要な容器4の数量だけ容器4の蓋体5とモータ6と撹拌翼7を備えればよい。
【0089】
言い換えれば、順次使い回しができる。
【0090】
次に、図1、図2を用いて土壌浄化処理方法の処理ステップを説明する。先ず掘削土壌1を選別装置2によって石、ガラ等の大型混入物を取り除く(S101)。前記大型混入物を取り除いた掘削土壌1を容器4内に収納し(S102)、容器4の上部開口部に蓋体5を装着する。次に開閉弁8aを一定時間開として供給管8から一定量の水を容器5内に供給した後、モータ6に通電し撹拌翼7を回転駆動して掘削土壌1と水を撹拌混合する(S103)。このように大型混入物3を取り除いた掘削土壌1を強制的に湿潤させて混練し、スラリー状土壌とするものである。
【0091】
次に、零価の鉄粉を含む金属還元剤、水を貯留容器9内に供給し、攪拌混合手段であるモータ12により回転駆動される撹拌翼13により撹拌混合する(S104)。さらに前記水と撹拌混合した金属還元剤を、開閉弁14aを一定時間開として一定量を供給管14から容器4内のスラリー状土壌に供給する。
【0092】
この後容器4内で撹拌翼7の回転駆動を一定時間継続して有機塩素化合物に汚染された掘削土壌1、零価の鉄粉を含む金属還元剤、水を撹拌混合してスラリー状の混合物15とするものである(S105)。
【0093】
さらに、スラリー状の混合物15とした後、容器4内で混合物15を一定期間(例えば数ヶ月)養生させる(S106)。養生期間中に、モータ6への通電を制御して容器4内の混合物15を一定時間ごとに撹拌混合させる(S107,S108,S109)。なお一定時間ごととしたが連続して攪拌混合させてもよい。
【0094】
前記養生期間において、容器4内で有機塩素化合物を脱塩素化反応により環境基準値以下に処理するものである。有機塩素化合物は、零価の鉄粉を含む金属還元剤の表面で電子を受け取り(還元され)、塩素を含まない化合物に変化される。
【0095】
塩素化合物の分解終了を確認して、埋め戻しまたはコンクリート等への再利用を図ることができる。
【0096】
前記したように、掘削土壌1に水を供給し撹拌混合してスラリー状土壌にすることによって、塊状の土壌が解れ、また砂利等を包み込んでいた土壌塊が離脱し解れて微細化する。さらに土壌の表面に付着している有機塩素化合物を供給した水による洗浄作用および土壌同士の擦り作用によって、供給した水に離脱、溶出させることができる。
【0097】
さらに、スラリー状土壌に零価の鉄粉を含む金属還元剤を供給し攪拌混合して混合物することによって、表面積を大きく加工した鉄粉を、微細化した土壌粒子間に微粉状の金属還元剤を均一に分散させることができる。
【0098】
さらに土壌塊が離脱した砂利等の表面にも金属還元剤が接触し易い状態にすることができる。また水に溶出した有機塩素化合物も金属還元剤と直に接触し分解反応を促進させることができる。
【0099】
また、掘削土壌1に、金属還元剤、水をほぼ同時に供給し撹拌混合してスラリー状の混合物とする処理ステップにしても前記したような効果が得られるが、掘削土壌1に水を供給し、十分に撹拌混合してスラリー状土壌にして、土壌の微細化、有機塩素化合物を水に溶出させた後、金属還元剤を供給し撹拌混合を継続して混合物とすることよって、より金属還元剤を土壌全体に均一にしかも短時間で分散させることができる。
【0100】
理由としてPCB等の含有率が高い場合、零価の鉄粉での分解処理は促進しにくく、水等に溶出させた後の低濃度の汚染土壌には、この零価の鉄粉での分解処理は極めて高いからである。
【0101】
さらに、必要な零価の鉄粉を含む金属還元剤の量を適量に抑えるとともに、大型で複雑な処理装置を用いる必要がない。したがってPCB等に代表される有機塩素化合物で汚染された掘削土壌1を、環境基準値以下にすることができる。
【0102】
また、予め水と金属還元剤と混合した後、スラリー状土壌に供給し撹拌混合して混合物とすることによって、金属還元剤の空気との接触による酸化、凝集を防止するとともに金属還元剤を土壌全体により均一にしかも短時間で分散させることができる。
【0103】
また、密閉された容器4内で養生させることで、混合物15の漏洩を防止して安定した分解反応を持続させることができる。
【0104】
また、前記した養生期間中に、モータ6への通電を制御して容器4内の混合物15を一定時間ごとに撹拌混合させることが好ましい。
【0105】
これによって、混合物15中のより粒径大きい土壌の容器4下部への沈降、土壌の団粒化を防止しさらに金属還元剤の凝集を防止して、金属還元剤の土壌への均一な分散および有機塩素化合物の水中への溶出促進を図り、金属還元剤と有機塩素化合物との接触を促進し、金属還元剤を有機塩素化合物の分解に有効に作用させることができる。
【0106】
したがって掘削土壌1の有機塩素化合物を環境基準値以下に処理することができる。
【0107】
また、容器4内で掘削土壌1、零価の鉄粉を含む金属還元剤、水を撹拌混合してスラリー状の混合物15とし、さらに同じ容器4内で混合物15を養生させるようにしたもので、処理工程の簡略化を図ることができる。さらに容器4の蓋体5に、撹拌混合手段であるモータ6により回転駆動される撹拌翼7を固定し、さらに容器4内に水を供給する開閉弁8aを有する供給管8を開口させて接続させてある。また前記容器4と蓋体5は着脱自在に構成され、さらに蓋体5と供給管8、蓋体5とモータ6および撹拌翼7は、各々相互に着脱自在に構成されているので構成、操作の簡素化を図ることができる。
【0108】
以上のように、本発明の汚染土壌の浄化処理方法によれば、有機塩素化合物に汚染された掘削土壌に零価の鉄粉を含む金属還元剤と水とを供給した後、撹拌混合して均一なスラリー状混合物とし、前記混合物を容器内で一定期間養生させることで、スラリー状混合物に含有するPCB等の有機塩素化合物が零価の鉄粉を含む金属還元剤の酸化反応により、放出された水素イオンとの脱塩素反応により、PCB等に汚染された掘削土壌を環境基準以下にすることができる
さらに、必要な零価の鉄粉を含む金属還元剤を適量投入することで大型で複雑な処理装置を用いる必要がない。したがってPCB等に代表される有機塩素化合物で汚染された掘削土壌を環境基準以下に処理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
有害物質に汚染された土壌の浄化を必要とする広範囲の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の一実施例の土壌処理システムの概念図
【図2】図1に対応させた処理ステップを示すフロー図
【符号の説明】
【0111】
1 掘削土壌
2 選別装置
2a 振動篩
2b ベッセル
3 石、ガラ(大型混入物)
4 容器
5 蓋体
6 モータ(攪拌手段)
7 攪拌翼(攪拌手段)
8 供給管
8a 開閉弁
9 貯留容器
10 金属還元剤供給口
11 供給管
12 モータ(攪拌手段)
13 攪拌翼(攪拌手段)
14 供給管
14a 開閉弁
15 混合物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機塩素化合物に汚染された掘削土壌に零価の鉄粉を含む金属還元剤と水とを供給した後、撹拌混合してスラリー状混合物とし、前記混合物を容器内で一定期間養生させることを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法。
【請求項2】
前記水の供給量は、掘削土壌の含水状態に応じて調節することを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の浄化処理方法。
【請求項3】
予め前記掘削土壌に水を供給し撹拌混合することでスラリー状土壌とした後、零価の鉄粉を含む金属還元剤を供給して撹拌混合することにより前記スラリー状混合物を生成することを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の浄化処理方法。
【請求項4】
予め前記水と金属還元剤を混合した後、前記スラリー状土壌に供給し撹拌混合することにより前記スラリー状混合物とすることを特徴とする請求項3に記載の汚染土壌の浄化処理方法。
【請求項5】
少なくとも有機塩素化合物の溶出促進剤をスラリー状混合物に供給することを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の浄化処理方法。
【請求項6】
前記スラリー状混合物が乾燥工程を経て、養生期間中に、乾燥した前記スラリー混合物を少なくとも連続または一定時間撹拌混合させることを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の浄化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−209825(P2007−209825A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290956(P2005−290956)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】