説明

汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法

【課題】有機化合物で汚染された土壌や地下水を、過硫酸塩を用いた原位置酸化分解処理により浄化する方法において、析出物による閉塞の問題を引き起こすことなく、pH中性域で、過硫酸塩の反応活性を高め、また、過硫酸塩の活性を長期間維持することにより効率的な浄化を行う。
【解決手段】汚染土壌及び/又は地下水に、過硫酸塩と共に還元剤を添加するか或いは過硫酸塩の添加に引き続いて還元剤を添加するか或いは還元剤の添加に引き続いて過硫酸塩を添加することによって汚染土壌及び/又は地下水を原位置で浄化する。還元剤として非鉄系還元剤を用い、過硫酸塩と還元剤の添加量比を、過硫酸塩:還元剤=1:0.0001〜0.2(モル比)とする。過硫酸塩と共に用いる還元剤として、非鉄系還元剤を用い、その使用量を従来よりも大幅に低減し、制限された少量の還元剤使用量とすることにより、長期に亘り、過硫酸塩の反応活性を高い状態に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物で汚染された土壌や地下水を、過硫酸塩を用いた原位置酸化分解処理により浄化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機化合物で汚染された土壌中の有機化合物を薬剤により分解除去する原位置浄化技術として、過マンガン酸塩を用いる原位置酸化分解技術、フェントン反応を用いる原位置酸化分解技術、過硫酸塩を用いる原位置酸化分解技術(特許文献1〜3)が知られている。
【0003】
しかし、過マンガン酸塩による処理では、マンガンの析出による注入井戸のスクリーンや地層の閉塞等の問題があり、またフェントン法による処理では反応が瞬時に終了するため影響範囲(処理範囲)を広げることができないという問題がある。また、過硫酸塩による処理では、単に土壌中に過硫酸塩を注入しただけでは、自然環境条件下での分解速度が遅いため、高濃度の汚染物質を短期間で浄化することができないという問題点がある。
【0004】
この問題に対して、加温して分解速度を速める方法が知られている(特許文献4)。しかし、実際に土壌の原位置浄化処理を行う場合、土壌の加温操作が煩雑であるという問題がある。
【0005】
また、pHを調整する方法も知られている(特許文献5,6)。しかし、pHを調整する方法では重金属の溶出などの問題がある。
【0006】
更に、過硫酸塩と共に還元剤を併用する方法も知られており、還元剤としては主として鉄系還元剤が用いられている(特許文献7〜12)。
しかし、本発明者の検討により、還元剤を併用する方法では、還元剤を必要量以上添加すると反応活性を急激に高めすぎることにより、高い反応活性を長期間維持できないことが判明した。
【0007】
即ち、過硫酸塩と還元剤を併用するレドックス反応による有機化合物の酸化分解は、ヒドロキシルラジラル(・OH)による酸化分解と考えられ、土壌汚染対策法で第一種特定有害物質に指定されている、いわゆる揮発性有機化合物のみならず、その他の有機化合物も分解可能であり、効率的な浄化法である。
この方法では、反応活性が高ければ高いほど好ましいように考えられるが、特に土壌中では汚染物質との接触効率の関係で、反応活性を一定以上に高めても反応効率は頭打ちになり、逆に反応活性が短期間で低下するため、かえって処理効率は下がってしまい、還元剤をより多く添加しなければならなくなる。
また、鉄粉や第一鉄酸塩などの鉄系還元剤を用いると、反応後、析出物により注入井戸のスクリーンや地層等の閉塞を生じる恐れがある。
【0008】
なお、特許文献12には、汚染土壌に過硫酸塩等の酸化剤を添加して浄化した後、還元剤を添加して重金属の溶出を防止する技術が提案されており、還元剤としてチオ硫酸ナトリウム等が挙げられているが、この特許文献12において、還元剤は、酸化剤による有機化合物の酸化分解能を高めるために添加されるものではなく、酸化剤による浄化処理終了後に、残存する酸化剤を還元除去して残存酸化剤による重金属の溶出を防止するために添加されるものである。従って、還元剤は、浄化処理終了後に残存酸化剤を還元するに必要な量以上添加され、特許文献12の実施例では、地下水を含む被処理土壌に過硫酸ナトリウムを添加した後1週間後に、チオ硫酸ナトリウムを、添加した過硫酸ナトリウム1モルに対して0.5モルの割合で添加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−136961号公報
【特許文献2】特開2002−307049号公報
【特許文献3】特開2004−167426号公報
【特許文献4】特開2003−285043号公報
【特許文献5】特開2004−202357号公報
【特許文献6】特表2008−506511号公報
【特許文献7】特開2006−075469号公報
【特許文献8】特開2006−088108号公報
【特許文献9】特開2006−247483号公報
【特許文献10】特開2006−341195号公報
【特許文献11】特開2004−305792号公報
【特許文献12】特開2004−337777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の問題点を解決し、有機化合物で汚染された土壌や地下水を、過硫酸塩を用いた原位置酸化分解処理により浄化する方法において、析出物による閉塞の問題を引き起こすことなく、pH中性域で、過硫酸塩の反応活性を高め、また、過硫酸塩の活性を長期間維持することにより効率的な浄化を行う汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、過硫酸塩と共に用いる還元剤として、非鉄系還元剤を用い、かつ、この非鉄系還元剤の使用量を従来の還元剤使用量よりも大幅に低減し、制限された少量の還元剤使用量とすることにより、析出物による閉塞の問題を引き起こすことなく、長期に亘り、過硫酸塩の反応活性を高い状態に維持することができることを見出した。
【0012】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0013】
[1] 有機化合物で汚染された土壌及び/又は地下水に、過硫酸塩と共に或いは過硫酸塩の添加に引き続いて還元剤を添加するか或いは還元剤の添加に引き続いて過硫酸塩を添加することによって、該土壌及び/又は地下水を原位置で浄化する方法において、該還元剤が非鉄系還元剤であり、該過硫酸塩と還元剤の添加量比が過硫酸塩:還元剤=1:0.0001〜0.2(モル比)であることを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法。
【0014】
[2] [1]において、浄化処理系のpHが5.5〜9.0であることを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法。
【0015】
[3] [1]又は[2]において、過硫酸塩が過硫酸ナトリウム及び/又は過硫酸カリウムであることを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法。
【0016】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、還元剤が、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩、及びエリソルビン酸塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法。
【0017】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、土壌及び/又は地下水に、更にpH緩衝剤を添加することを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法。
【0018】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、有機化合物が、揮発性有機化合物、油分、1,4−ジオキサン及び塩化ビニルモノマーよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、過硫酸塩と共に少量の非鉄系還元剤を併用することにより、
(1) 過硫酸塩を長期間高い活性状態に維持することができるため、過硫酸塩を広範囲に拡散させた上で浄化に寄与させることができ、また、有機化合物を速やかに分解することができる。
(2) 鉄系以外の還元剤を用いるため、反応後に塩類が析出することはなく、地層等に閉塞が生じない
といった優れた作用効果のもとに、有機化合物で汚染された土壌や地下水を効率的に原位置浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】試験例Iの結果を示すグラフである。
【図2】試験例IIの結果を示すグラフである。
【図3】試験例IIIの結果を示すグラフである。
【図4】試験例IVの結果を示すグラフである。
【図5】試験例IVの結果を示すグラフである。
【図6】試験例Vの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
本発明においては、有機化合物で汚染された土壌及び/又は地下水に過硫酸塩を添加して浄化するに当たり、汚染土壌及び/又は地下水に、過硫酸塩と共に或いは過硫酸塩の添加に引き続いて還元剤を添加するか或いは還元剤の添加に引き続いて過硫酸塩を添加して浄化する。
【0023】
過硫酸塩としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の1種又は2種以上を用いることができ、好ましくは、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムである。
【0024】
還元剤としては、このような過硫酸塩の過硫酸イオン(S2−)を非活性な硫酸イオン(SO2−)等に還元し得る非鉄系還元剤であれば良く、特に制限はないが、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩、エリソルビン酸塩などが挙げられる。これらのうち、重亜硫酸塩、亜硫酸塩は反応活性を必要十分に高くすることができるので好ましい。ただし、過硫酸塩や還元剤を多量に添加しなければならない場合(高濃度汚染、難分解性有機物汚染、浄化対象ではない土壌有機物を多く含む腐植質土壌)は反応後に硫酸イオンの蓄積や、それに伴う硫化水素の発生が懸念されるので、アスコルビン酸、エリソルビン酸を用いることが好ましい。
なお、塩の形態としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
これらの非鉄系還元剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
本発明において、汚染土壌及び/又は地下水への過硫酸塩の添加量は、汚染土壌及び/又は地下水の汚染の程度によっても異なるが、通常の場合、汚染土壌及び/又は地下水に含まれている浄化対象の有機化合物に対してモル比で5〜100倍、特に10〜50倍
であり、汚染土壌及び/又は地下水に対するか硫酸塩の量として0.1〜50kg/ton、特に1〜15kg/tonとすることが好ましい。
【0026】
一方、非鉄系還元剤の添加量は、汚染土壌及び/又は地下水に添加する過硫酸塩に対してモル比で過硫酸塩:還元剤=1:0.0001〜0.2、好ましくは過硫酸塩:還元剤=1:0.0001〜0.1、より好ましくは過硫酸塩:還元剤=1:0.0001〜0.01の範囲とする。この範囲よりも還元剤の添加量が多過ぎると、過硫酸塩の反応活性が急激に高められることにより早期に活性が失われ、反応活性を長期間維持し得ないことにより、良好な浄化効果を得ることができない。還元剤の添加量が少な過ぎると、還元剤を併用することによる過硫酸塩の反応活性向上の効果を十分に得ることができない。
【0027】
非鉄系還元剤は、過硫酸塩と共に汚染土壌及び/又は地下水に添加してもよく、過硫酸塩を添加した後、引き続いて添加してもよい。さらに土壌に還元剤を添加した後に引き続いて過硫酸塩を添加してもよい。なお、ここで「引き続いて添加する」とは、過硫酸塩の添加後、6日以内、特に3日以内に添加することをさす。
本発明では、非鉄系還元剤は、過硫酸塩と共に添加することが、処理操作の簡便性の面で好ましい。
【0028】
このような過硫酸塩と非鉄系還元剤とを併用する汚染土壌及び/又は地下水の浄化処理は、pH5.5〜9.0、特にpH5,5〜6.5の中性〜弱酸性域で行うことが、その処理効果の面で好ましい。従って、本発明においては、このようなpH領域に浄化処理系を調整するために、汚染土壌及び/又は地下水にpH緩衝剤を添加してもよい。
pH緩衝剤としては、炭酸水素ナトリウム等の重炭酸塩、リン酸塩等のリン酸系緩衝剤、クエン酸塩などの1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
本発明において、過硫酸塩、非鉄系還元剤、更に必要に応じて添加されるpH緩衝剤は、水溶液として汚染土壌及び/又は地下水に添加されることが好ましく、例えば、過硫酸塩の100〜50000mg/L程度の水溶液に必要に応じて所定量の非鉄系還元剤及びpH緩衝剤を溶解させた水溶液を用いることができる。また、非鉄系還元剤を過硫酸塩とは別に添加する場合、非鉄系還元剤は1〜10000mg/L程度の水溶液として用いることが好ましい。
【0030】
本発明による浄化処理は、過硫酸塩を適量の非鉄系還元剤により活性化させるものであって、加温は不要であり、10〜40℃、好ましくは15〜25℃の常温で実施することができる。
【0031】
このような本発明の方法により浄化する汚染土壌及び/又は地下水に含まれる有機化合物としては、トリクロロエチレン(TCE)、ジクロロエチレン(DCE)、テトラクロロエチレン(PCE)等の塩素化エチレン類などの揮発性有機化合物や、油分、1,4−ジオキサン、塩化ビニルモノマー(ビニルクロライドなど)などが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
以下に本発明の汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法を模した試験例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0033】
[試験例I]
40mLバイアル瓶に、TCE、過硫酸ナトリウム、pH緩衝剤として炭酸水素ナトリウム、及び還元剤としてエリソルビン酸ナトリウムを以下の濃度となるように純水に添加した水溶液よりなる試験液を調製し、それぞれ25℃の水槽内に保持して所定の時間経過毎にバイアル瓶を開封して試験液中のTCE濃度を測定することにより、TCE濃度の経時変化を調べた。
なお、試験液のpHは、いずれも、試験開始時は8.8で、試験開始から7日後は7.3〜7.4であった。
【0034】
TCE:30mg/L
過硫酸ナトリウム:1g/L
炭酸水素ナトリウム:0.71g/L
エリソルビン酸ナトリウム:
比較例I−1=添加せず(1:0)
実施例I−1=過硫酸ナトリウムに対して0.001モル倍(1:0.001)
実施例I−2=過硫酸ナトリウムに対して0.01モル倍(1:0.01)
実施例I−3=過硫酸ナトリウムに対して0.1モル倍(1:0.1)
【0035】
結果を図1に示す。
なお、図1においては、TCE濃度を自然対数(ln(TCE濃度))で示す。従って、初期TCE濃度はln30≒3.4である。
後掲の図2〜6においても同様である。
【0036】
図1より明らかなように、還元剤であるエリソルビン酸ナトリウムを添加しない比較例I−1に比べて、エリソルビン酸ナトリウムを添加した実施例I−1〜3では、初期のTCE分解速度が増す。ただし、還元剤の添加量が多いと(実施例I−3)、経時によりTCE分解速度が遅くなることが分かる。
【0037】
[試験例II]
40mLバイアル瓶に、TCE、過硫酸ナトリウム、pH緩衝剤として炭酸水素ナトリウム、及び還元剤としてエリソルビン酸ナトリウムを以下の濃度となるように純水に添加した水溶液よりなる試験液を調製し、それぞれ15℃の水槽内に保持して所定の時間経過毎にバイアル瓶を開封して試験液中のTCE濃度を測定することにより、TCE濃度の経時変化を調べた。
なお、試験液のpHは、いずれも、試験開始時は8.8で、試験開始から7日後は5.2〜7.4であった。
【0038】
TCE:30mg/L
過硫酸ナトリウム:
比較例II−1=添加せず
比較例II−2〜4及び実施例II−1〜3=1g/L
炭酸水素ナトリウム:0.71g/L
エリソルビン酸ナトリウム:
比較例II−1=添加せず(0:0)
比較例II−2=添加せず(1:0)
比較例II−3=過硫酸ナトリウムに対して10モル倍(1:10)
比較例II−4=過硫酸ナトリウムに対して1モル倍(1:1)
実施例II−1=過硫酸ナトリウムに対して0.001モル倍(1:0.001)
実施例II−2=過硫酸ナトリウムに対して0.01モル倍(1:0.01)
実施例II−3=過硫酸ナトリウムに対して0.1モル倍(1:0.1)
【0039】
結果を図2に示す。
図2より、還元剤であるエリソルビン酸ナトリウムを大量に添加した比較例II−3は、エリソルビン酸ナトリウムも過硫酸ナトリウムも添加していない比較例II−1と同等でTCEの分解効果は殆ど得られない。エリソルビン酸ナトリウムを過硫酸ナトリウムに対して1モル倍添加した比較例II−4では、初期のTCE分解速度は大きいが、その後のTCE分解が殆ど認められない。
これに対して、過硫酸ナトリウムに対してエリソルビン酸ナトリウムをモル比で0.001〜0.1の範囲で添加した実施例II−1〜3では、初期TCE分解速度の向上と、分解効果の長期持続性が認められる。
【0040】
[試験例III]
40mLバイアル瓶に、TCE、過硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び以下の還元剤を以下の濃度となるように純水に添加した水溶液よりなる試験液を調製し、それぞれ15℃の水槽内に保持して所定の時間経過毎にバイアル瓶を開封して試験液中のTCE濃度を測定することにより、TCE濃度の経時変化を調べた。
なお、試験液のpHは、いずれも、試験開始時は8.5〜9.0で、試験開始から7日後は7.1〜7.5であった。また酸化還元電位はいずれも試験開始時は450〜500mVで、試験開始から7日後は420〜490mVであった。
【0041】
TCE:30mg/L
過硫酸ナトリウム:1g/L
炭酸水素ナトリウム:0.71g/L
還元剤:
比較例III−1=塩化第一鉄を過硫酸ナトリウムに対して0.01モル倍
比較例III−2=塩化第一鉄を過硫酸ナトリウムに対して0.001モル倍
実施例III−1=アスコルビン酸ナトリウムを過硫酸ナトリウムに対して
0.01モル倍
実施例III−2=アスコルビン酸ナトリウムを過硫酸ナトリウムに対して
0.001モル倍
実施例III−3=重亜硫酸ナトリウムを過硫酸ナトリウムに対して
0.01モル倍
実施例III−4=重亜硫酸ナトリウムを過硫酸ナトリウムに対して
0.001モル倍
実施例III−5=亜硫酸ナトリウムを過硫酸ナトリウムに対して
0.01モル倍
実施例III−6=亜硫酸ナトリウムを過硫酸ナトリウムに対して
0.001モル倍
【0042】
結果を図3に示す。
図3より、いずれの還元剤を用いた場合でも、還元剤を過硫酸ナトリウムに対して0.01モル倍又は0.001モル倍添加することにより、TCE分解速度の改善とその持続効果の改善が認められるが、還元剤としては、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムが効果的であることが分かる。
なお、塩化第一鉄は、アルコルビン酸ナトリウムと同程度の効果があるが、塩類の析出の問題がある。
【0043】
[試験例IV]
TCE、過硫酸ナトリウム、pH緩衝剤として炭酸水素ナトリウム、及び還元剤としてエリソルビン酸ナトリウム又は亜硫酸ナトリウムを以下の濃度となるように純水に添加した水溶液よりなる試験液を調製した。この試験液を用いて、160mLガラス瓶に、土壌固形分:試験液=2:1(重量比)となるように試験スラリーを調製し、それぞれ25℃の水槽内に保持して所定の時間経過毎にガラス瓶を開封して試験スラリー中のTCE濃度を測定することにより、TCE濃度の経時変化を調べた。
結果を図4に示す。
なお、試験スラリーのpHは、いずれも、試験開始時は8.5〜9.0で、試験開始から7日後は7.1〜7.5であった。また酸化還元電位はいずれも試験開始時は450〜500mV、試験開始から7日後は420〜490mVであった。
【0044】
TCE:30mg/L
過硫酸ナトリウム:5g/L
炭酸水素ナトリウム:3.55g/L
還元剤:
実施例IV−1=亜硫酸ナトリウムを過硫酸ナトリウムに対して0.1モル倍
実施例IV−2=亜硫酸ナトリウムを過硫酸ナトリウムに対して0.01モル倍
実施例IV−3=亜硫酸ナトリウムを過硫酸ナトリウムに対して
0.001モル倍
実施例IV−4=エリソルビン酸ナトリウムを過硫酸ナトリウムに対して
0.01モル倍
【0045】
また、還元剤を用いないこと以外は上記と同様にして試験液を調製し、固液比を以下の割合(重量比)として同様に試験スラリーを調製し、同様に試験を行った。
結果を図5に示す。
【0046】
比較例IV−1=試験液のみ(土壌固形分:試験液=0:1)
比較例IV−2=土壌固形分:試験液=1:1
比較例IV−3=土壌固形分:試験液=2:1
比較例IV−4=土壌固形分:試験液=3:1
【0047】
図4,5より、過硫酸塩と還元剤の少量の併用は、土壌に対しても十分な効果を有することが分かる。
また、還元剤を用いない比較例IV−1〜4のうち、土壌固形分に対する試験液混合量の多い比較例IV−2では、TCEの分解速度が速いが、試験液混合量を少なくすると、TCEの分解速度は低下する。
【0048】
[試験例V]
40mLバイアル瓶に、TCE、過硫酸ナトリウム、及び還元剤として亜硫酸ナトリウムを以下の濃度となるように添加すると共に、以下のpH緩衝剤を、試験中、以下のpHを維持するように純水に添加した水溶液よりなる試験液を調製し、それぞれ25℃の水槽内に保持して所定の時間経過毎にバイアル瓶を開封して試験液中のTCE濃度を測定することにより、TCE濃度の経時変化を調べた。
【0049】
TCE:30mg/L
過硫酸ナトリウム:5g/L
亜硫酸ナトリウム:過硫酸ナトリウムに対して0.001モル倍
pH緩衝剤:
実施例V−1=リン酸系緩衝剤,pH=6
実施例V−2=リン酸系緩衝剤,pH=8
実施例V−3=リン酸系緩衝剤,pH=9
実施例V−4=炭酸水素ナトリウム,pH=8
なお、リン酸系緩衝剤としてはリン酸二水素カリウム−リン酸水素二ナトリウムを用いた。
【0050】
結果を図6に示す。
図6より、pH6において特に高い効果が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物で汚染された土壌及び/又は地下水に、過硫酸塩と共に還元剤を添加するか或いは過硫酸塩の添加に引き続いて還元剤を添加するか或いは還元剤の添加に引き続いて過硫酸塩を添加することによって、該土壌及び/又は地下水を原位置で浄化する方法において、
該還元剤が非鉄系還元剤であり、該過硫酸塩と還元剤の添加量比が過硫酸塩:還元剤=1:0.0001〜0.2(モル比)であることを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法。
【請求項2】
請求項1において、浄化処理系のpHが5.5〜9.0であることを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、過硫酸塩が過硫酸ナトリウム及び/又は過硫酸カリウムであることを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、還元剤が、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩、及びエリソルビン酸塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、土壌及び/又は地下水に、更にpH緩衝剤を添加することを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、有機化合物が、揮発性有機化合物、油分、1,4−ジオキサン及び塩化ビニルモノマーよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−173089(P2011−173089A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40394(P2010−40394)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】