説明

汚染機器の解体方法

【課題】プラズマ切断時の作業環境の改善を図る。
【解決手段】減圧したグリーンハウス3内で汚染機器1に付着している有害物質を除去した後、前記汚染機器1の内部に通じる配管取付口15に排気装置17を接続し、前記配管取付口15からプラズマ切断時に発生するガス及びスパッタを含む飛散物を排出しながら前記汚染機器1をプラズマ切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCBなどの有害物質に汚染した汚染機器をプラズマ切断によって解体する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全国にPCB処理施設が建設されているが、法的には7年後まで運転される。このPCB処理施設の解体は、その後に予定されている。したがって、今のところ、PCB処理施設の解体工事は、その実績がない。
【0003】
しかし、PCB処理施設を解体する場合、ステンレス製の製缶機器は、ガス切断できず、プラズマ切断となる。このプラズマ切断時にガスが発生する。PCBが付着した機器の場合、プラズマ切断時のガスにPCBガスが混在することが判明している。PCB処理施設の解体時に、PCBガスが混在しているガスを大気中に放出すると、環境汚染の一因になるので、PCBガスに起因する環境汚染を防止する方法が望まれている。
【0004】
ステンレス製の製缶機器を機械的(例えば、フライス盤など)に切断できればよいが、直径が3mもある槽類は、大きすぎて機械に取り付けられない。また、セイバーソーなどは、槽類の板厚が厚い場合は、切断に長時間かかるので、大きな障害になる。
【0005】
また、プラズマ切断時に、フィルタでスパッタの残留PCBを含むダストを捕集すると、ダストが付着したフィルタは、PCB汚染物になる。従来の含侵性材料(繊維製)のフィルタのPCB無害化処理は、難しく、倉庫での「保管状態」にならざるを得ない。これに代わり、非含侵性フィルタでは、認定技術として「洗浄装置」及び「真空加熱処理装置」がある。
【0006】
非含侵性フィルタは、プラスチック、金属材料でできており、上記真空加熱処理装置では、金属製の非含侵性フィルタが、また、上記洗浄装置では、金属製及びプラスチック製の非含侵性フィルタが無害化処理可能である。
【0007】
汚染機器を小切りにする理由も真空加熱処理装置又は洗浄装置で無害化するためである。PCBの付着したフィルタも汚染機器の切断片と一緒に真空加熱処理装置又は洗浄装置で無害化できればコスト削減に寄与することになる。
【0008】
なお、水噴射ノズルから高圧水を噴射して廃棄物焼却炉の水管保護用耐火物を解体する水管保護用耐火物の解体方法については、例えば、特許文献1に提案されている。また、建築・構造物に使用されている断熱材を吸引式回収装置を用いて回収する断熱材回収装置については、例えば、特許文献2に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−74811号公報
【特許文献2】特開2004−321984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、プラズマ切断時の作業環境の改善、特別管理廃棄物の減量、プラズマ切断時に発生するスパッタを回収することによるPCB汚染物の減量を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る汚染機器の解体方法は、減圧したグリーンハウス内で汚染機器に付着している有害物質を除去した後、前記汚染機器の内部に通じる配管取付口に排気装置を接続し、前記配管取付口からプラズマ切断時に発生するガス及びスパッタを含む飛散物を排出しながら前記汚染機器をプラズマ切断することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る汚染機器の解体方法は、前記グリーンハウス及び前記配管取付口に設けた集塵装置によってプラズマ切断時に発生するスパッタを含む飛散物を捕捉することを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る汚染機器の解体方法は、前記グリーンハウス及び前記配管取付口に設けた集塵装置に内蔵したフィルタによってプラズマ切断時に発生するスパッタを含む飛散物を捕捉することを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る汚染機器の解体方法は、前記配管取付口が、汚染機器に予め設けた排気口又は予備ノズルであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、減圧したグリーンハウス内で汚染機器に付着している有害物質を除去した後、前記汚染機器の内部に通じる配管取付口に排気装置を接続し、前記配管取付口からプラズマ切断時に発生するガス及びスパッターを含む飛散物を排出しながら前記汚染機器をプラズマ切断するので、有害物質で汚染された汚染機器をプラズマ切断する時の作業環境の改善を図ることができる。
【0016】
また、汚染機器を小切りにすることにより、浄化装置、或いは、真空加熱処理装置による無害化が可能になり、特別管理廃棄物の減量が可能になる。即ち、回収した大型機器の大部分を有価資源にリサイクルすることが可能になる。
【0017】
また、プラズマ切断時に発生するスパッタを局所吸引することにより、グリーンハウス内の有害物質の拡散を防止することができる。グリーンハウスの構成材、例えば、シート類のPCB汚染を防止できる。このため、二次汚染物の量の削減ができる。また、スパッタを回収することにより、PCB汚染物の減量を更に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る汚染機器の解体方法を実施するための概略構成図である。
【図2】除染後の汚染機器をプラズマ切断する解体作業説明図である。
【図3】真空加熱処理装置による無害化処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
PCBなどの有害物質に汚染した中空状の汚染機器を解体する場合は、汚染機器の内面に付着しているタール(残渣)を除去し、その後、プラズマ切断によって解体する。
【0020】
PCBに汚染した中空状の汚染機器(例えば、製缶機器)1を除染する場合は、図1に示すように、中空状の汚染機器1をグリーンハウス3で覆うと共に、第1送風機(第1ブロワ)7によってグリーンハウス3の内部を所定の圧力(例えば、−2mmAq〜−8mmAq)に減圧する。
【0021】
その際、図1及び図2に示すように、グリーンハウス3の排気口6に第1集塵装置8のダクト9を接続し、第1集塵装置8及び第1送風機7をダクト10によって接続する。グリーンハウス3は、図2に示すように、透明又は半透明の合成樹脂製シート(例えば、ビニールシート)4を鋼鉄製の骨組5の内側に気密状に取り付けた構造になっている。
【0022】
第1集塵装置8は、ケース11内に非含侵性フィルタ12と活性炭吸着層13とを設けた構造であり、活性炭吸着層13の上流側に非含侵性フィルタ12を設けている。非含侵性フィルタ12は、プラスチック、金属材料でできており、真空加熱処理装置では、金属製の非含侵性フィルタが、また、洗浄装置では、金属製及びプラスチック製の非含侵性フィルタが無害化処理可能である。
【0023】
中空状の汚染機器1の清掃は、防護服及び保護具を身につけた作業員がグリーンハウス3の中に入って行うが、中空状の汚染機器1からドレンが流出しても支障がないようにオイルパン14の上で清掃する。
【0024】
中空状の汚染機器1の内面に付着しているタールが固着の場合は、たがね+ハンマー、あるいは、スクレバーで除去する。一方、中空状の汚染機器1の内面に付着しているタールが柔らかい場合は、スコップ、平コテ、あるいは、ワイヤブラシで除去する。除染の仕上げ程度は、ワイヤブラシでスケールが取れなくなれば十分である。
【0025】
中空状の汚染機器1の清掃又は除染が済むと、プラズマ切断によって中空状の汚染機器1を解体する。その際、図1及び図2に示すように、中空状の汚染機器1に予め設けられ、かつ、中空状の汚染機器1の内部に通じている配管取付口(例えば、排気口又は予備ノズル)15に第2集塵装置18のダクト19を接続する。第2集塵装置18と第2送風機(第2局所排気装置)17は、ダクト20によって接続している。なお、第2集塵装置18は、第1集塵装置8と構造が同じであるから詳しい説明を省略する。
【0026】
上記第1及び第2送風機7,17を駆動しながら、プラズマトーチ30を持った作業員が中空状の汚染機器1を所定の大きさ、例えば、約30cm角程度の大きさに小切りする(解体する)。なお、最大切断サイズは、ドラム缶に収納できる大きさである。また、プラズマ切断の速度は、プラズマトーチ30のパワーに左右されるが、例えば、30cm/分程度である。
【0027】
プラズマ切断の際に発生するガス及びスパッターを含む飛散物は、第2送風機17を接続した中空状の汚染機器1の配管接続口15から排出され、スパッタを含む飛散物は、第2集塵装置18の非含侵性フィルタ12に捕捉され、ガス中の有害物質は、第2集塵装置18の活性炭吸着層13に吸着される。
【0028】
上記のように、プラズマ切断の際に発生するガス及びスパッタを含む飛散物を、第2送風機17を接続した中空状の汚染機器1の配管接続口15から排出することにより、解体中の汚染機器1の周辺の空気も矢印aのように中空状の汚染機器1内に吸い込まれる。このため、プラズマ切断の際に発生するガス及びスパッターを含む飛散物の飛散を防止することができる。
【0029】
一方、グリーンハウス3内に飛散したスパッタを含む飛散物は、第1集塵装置8の非含侵性フィルタ12に捕捉され、グリーンハウス3内に飛散したガス中の有害物質は、第1集塵装置8の活性炭吸着層13に吸着される。
【0030】
上記スパッタは、球状の鉄(直径10〜20μm)と、オコシ状の混合物によりできており、オコシ状の混合物にPCBが含まれているので、スパッタを捕捉した非含侵性フィルタ12と、プラズマ切断した汚染機器1の切断片21とを図3の真空加熱分離装置40に収容してPCBを加熱し、気化させる。なお、非含侵性フィルタ12を真空加熱分離装置40で無害化処理する場合は、非含侵性フィルタ12が金属材料でできている場合である。
【0031】
図中、41はオイルシャワー槽、42はオイル循環ポンプであり、真空加熱分離装置40で気化させたPCBを溶媒であるオイルで回収する。
【0032】
なお、本発明は、PCB以外の有害物質に汚染した中空状の汚染機器を解体する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 汚染機器
3 グリーンハウス
15 配管取付口
17 排気装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧したグリーンハウス内で汚染機器に付着している有害物質を除去した後、前記汚染機器の内部に通じる配管取付口に排気装置を接続し、前記配管取付口からプラズマ切断時に発生するガス及びスパッタを含む飛散物を排出しながら前記汚染機器をプラズマ切断することを特徴とする汚染機器の解体方法。
【請求項2】
前記グリーンハウス及び前記配管取付口に設けた集塵装置によってプラズマ切断時に発生するスパッタを含む飛散物を捕捉することを特徴とする請求項1記載の汚染機器の解体方法。
【請求項3】
前記グリーンハウス及び前記配管取付口に設けた集塵装置に内蔵したフィルタによってプラズマ切断時に発生するスパッタを含む飛散物を捕捉することを特徴とする請求項1記載の汚染機器の解体方法。
【請求項4】
前記配管取付口が、汚染機器に予め設けた排気口又は予備ノズルであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の汚染機器の解体方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−11184(P2011−11184A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159644(P2009−159644)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】