説明

汚水処理装置

【課題】 槽内にスカムが発生するのを解消して汚水を浄化させるとともに汚泥詰まりによる汚水処理機能障害が起こるの防ぐための汚水処理装置を提供する。
【解決手段】 下部周壁面1bに多数の流出孔2を有し、上端部1a寄りには原汚水管3を接続した汚水流入口4を設けた内縦筒1と、その内筒1を囲い且つ上端部5aと下端部5bが閉じ、その上端部5a寄りには外に開く汚水流出口6を設けた外縦筒5と、前記内縦筒1に差し込まれ、先端の空気注入口8aが内縦筒1の底部1cに開口した送風機7付の送気管8を設けてユニットUを形成し、該ユニットUを微生物担体11を埋設した汚水処理槽9の隣に設置し、前記ユニットUの内縦筒1の汚水流入口6よりも上部位置から前記汚水処理槽9の汚水排出口39よりも高位置となる前記送水管10へバイパス送水管30を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用水洗便所などから排出される糞尿などの汚水を浄化するための処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、家庭用の水洗便所から排出される糞尿は、都市部では下水管を通じて大規模な下水処理場に送られて一定基準にまで浄化処理されてから河川などに放流されている。
一方、大規模な下水管設備のない過疎地域では、集落ごとに浄化合併槽を設けて処理することが促進され、各地で改良工事が行われていが、長距離の汚水管の敷設と大型化された合併槽の設備には多額の費用を要するものであり、自治体や住民はそのような費用を負担することが困難であるために改良工事はあまり進んでない。
【0003】
他方、過疎地域では、環境汚染物質の対策として、集末処理ではなく汚染源において処理することが理想的とされ、汚水発生源である個別住宅での処理の方法として、浸透桝方式や個別浄化槽方式などが実施されているが、それらの設備の中には、設置スペースが確保できないために設備が不完全なものとなってしまい、その結果、充分な処理が行われないままに汚水が河川への放出されていることも多見される。
また、汚水が充分に処理されたとしても、処理機能を維持するためには汚水槽の水面に発生する比重の軽い油脂分などからなる塊(スカム)の除去処理や沈殿汚泥の引き抜き処理を定期的に行わなければならず、その処理に要する手間や費用の負担も大きいものがある。
特に、これまではスカムからくる悪臭は、消臭剤などで消臭する方法がなされたとしても、発生する量が大きく且つ継続して発生するために容易に防止することができなかった。
また、スカムには蝿などの昆虫の幼虫である蛆虫が発生し、そのままでは不衛生なので殺虫剤で退治するなどの処理をしていた。
【0004】
そこで、本発明者は、先に特許文献1に示す外縦筒の内部に内縦筒を納めた型のスカム解消型汚水処理装置を提案した。
その装置では、悪臭や虫の発生などの原因となるスカムの発生を解消でき、汚水を清浄になるまで浄化することが可能な装置であったが、外縦筒の内部に汚泥が沈殿すると汚水の流れが阻害されて、流れ込む汚水が内縦筒内の底部から外縦筒に流れて行くことができずに内縦筒内の上部に滞留してしまい、最悪な場合では、上部の開口部から汚水が溢れ出てしまうことがあった。
また、流入する汚泥濃度が高く、内縦筒内の上部に曝気したときの泡が発生して溜まってしまうと、空気を外に放出し難くなり、曝気を続けることが困難となる問題があった。
さらに、上部が閉鎖されている外縦筒内の底に汚泥が深く沈殿した場合、汚水の流れが止まってしまうが、その汚泥を取り除くことができなかった。
そのような状態になると、汚水処理機能は低下し、最悪な場合では処理機能が停止してしまうおそれがあった。
【特許文献1】特開2003−275756
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、先に提案した上記スカム解消型汚水処理において、その水面に汚物が浮上して形成蓄積されるスカムの発生を解消し、汚水をさらに浄化して清浄な処理水を得るだけではなく、これまでのスカム解消型汚水処理装置の汚水処理機能に障害をもたらす上記諸問題点を解消することができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本考案の汚水処理装置には、その装置を構成するユニットを単数用いる形態と複数用いる形態とがある。
【0007】
まず、ユニットを単数用いる請求項1に記載の発明は、上端部と底部が開き且つ下部周壁面に多数の流出孔を有し、上端部寄りには原汚水管を接続した汚水流入口を設けた内縦筒と、その内筒を囲い且つ上端部が内縦筒の開口下部の側壁面部位において閉じ、また下端部が擂鉢状に閉じ、その上端部寄りには外に開く汚水流出口を設けた外縦筒とを形成し、前記内縦筒の上端部から底部近くに送風機付の送気管を差し込んで一つのユニットを構成し、さらに、そのユニットの隣に、槽内の中層に微生物担体を埋設するとともに、送風機付の送気管を前記汚水処理槽内の低層に開口部するよう汚水処理槽を設置し、前記外縦筒の汚水流出口よりも低位置に前記汚水処理槽の汚水排出口を設け、前記汚水処理槽内の前記汚水排出口よりも高位置に開口する送水管を前記汚水流出口に接続した汚水処理装置であって、
前記内縦筒の汚水流入口よりも上部位置から前記汚水処理槽の汚水排出口よりも高位置となる前記送水管へバイパス送水管を接続し、前記内縦筒に満杯に溜まった汚水を前記バイパス送水管を介して前記汚水処理槽へ流出できるようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
次に、ユニットを複数用いる請求項2に記載の発明は、前記ユニットを複数用いる装置は、最初のユニットに繋げて後続のユニットを連設したもので、上端部と底部が開き且つ下部周壁面に多数の流出孔を有し、上端部寄りには原汚水管を接続した汚水流入口を設けた内縦筒と、その内縦筒を囲い且つ上端部を内縦筒の開口下部の側壁面部位において閉じ、また下端部が擂鉢状に閉じ、その上端部寄りには外に開く汚水流出口を設けた外縦筒とを形成する。そして、前記内縦筒の上端部から底部近くに送風機付の送気管を差し込んで最初のユニットが構成され、次に、上端部と底部が開き且つ下部周壁面に多数の流出孔を有し、上端部寄りには送水管を接続した汚水流入口を設けた内縦筒と、その内縦筒を囲い且つ上端部が内縦筒の開口下部の側壁面部位において閉じ、また下端部が擂鉢状に閉じ、その上端部寄りには外に開く汚水流出口を設けた外縦筒とを形成し、前記内縦筒の上端部から底部近くに送風機付の送気管を差し込んで一つの後続のユニットが構成され、前記汚水処理槽の近くに最初のユニットの汚水流出口を後続のユニットの汚水流入口に送水管を介して接続して1個又はさらにそのユニットの汚水流出口をそれに続くユニットの汚水流入口にそれぞれ送水管を介して接続して複数個を設置し、前記汚水処理槽内の中層に微生物担体を埋設するとともに、送風機付の送気管を前記汚水処理槽内の低層に開口部するように設け、最後の後続のユニットの前記外縦筒の汚水流出口よりも低位置に前記汚水処理槽の汚水排出口を設け、前記汚水処理槽内の前記汚水排出口よりも高位置に開口する送水管を前記最後のユニットの外縦筒の汚水流出口に接続した汚水処理装置であって、
前記各内縦筒の汚水流入口よりも上部位置から前記汚水処理槽の汚水排出口よりも高位置となる前記送水管へバイパス送水管を接続し、前記各内縦筒に満杯に溜まった汚水を前記バイパス送水管を介して前記汚水処理槽へ流出できるようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、上記構成において、前記各ユニットの外縦筒同士を一つの槽内に連結一体化又は該各ユニットの外縦筒同士と汚水処理槽とを一つの槽内に連結一体化させて構成したものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、上記構成において、前記外縦筒の上部に汚泥抜取り兼点検口を設けたものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、上記構成において、前記汚水処理槽を、流入側の曝気室と微生物担体を納めた流出側の担体室とから成り、該担体室内と原汚水管とを返送管を介して接続し、返送管にポンプを設けて、該担体室内の汚水を原汚水管に送れるようにしたものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、上記構成において、前記汚水処理槽の汚水排出口に送水管を介して水の濾過手段を備えた濾過装置を設け、その濾過装置を通して外部に処理水を排水できるようにしたものである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、上記構成において、外縦筒と内縦筒との間に形成される室内の中層水没域に微生物担体を配したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のようであり、糞尿を含む流入汚水は前記各ユニット内において、送気管から送られる空気による継続攪拌により浮遊物が分散されて水面に集合化できなくなる結果、汚水中の汚泥分のスカム化が防止され、そのスカムから発生する特有の悪臭やうじ虫などの発生が解消されるとともに各ユニット内の擂鉢状の下端部で微生物により汚水が分解処理される。
さらに、汚水処理槽を曝気室と微生物担体を納めた流出側の担体室に形成した形態においては、より汚水が透明になるまで充分に処理が可能となる。
また、該担体室内と原汚水管とを返送管を介して接続すれば、ポンプで該担体室内の汚水を原汚水管に送れるので、増殖した微生物を最初のユニットに入れて汚泥を分解する微生物を有効に活用してさらに浄化を促進することができる。
そして、前記内縦筒の上部に汚水処理槽へ接続させたバイパス送水管を設けることにより、たとえ各ユニットに過剰に汚水が流入したり、また各ユニットの内縦筒や外縦筒の底に汚泥が詰まったりして内縦筒の上部に満杯に溜まった場合には、そのユニットを迂回して流入汚水を前記バイパス送水管を介して汚水処理槽へ直接送り出せるようになる。この結果そのユニットの内縦筒の上部の開口部から汚水が外へ溢れ出るのを防止できる。
【0015】
また、前記外縦筒の上部に汚泥抜取り兼点検口を設けた形態では、そこから槽内を点検したり、汚泥吸上げ管を差し込んで、その汚泥抜取り口点検口から外縦筒内に溜まった汚泥を適宜除去でき、汚泥で阻害されていた汚水の流れを回復して処理機能を正常に戻すことが可能になる。
そしてさらに、前記汚水処理槽から濾過装置に汚水を送ることによって、その前で処理された汚水を濾過装置内の濾過手段でさらに濾過して清浄となった水を外部に排水できるようになる。
また、前記外縦筒と内縦筒との間の中層水没域に微生物担体を配する形態では、その微生物担体で汚水中の有機物が処理され、より汚水を清浄化できるようになる。
さらに複数の各ユニット同士やそれに汚水処理槽とを一体化させた形態では、装置全体をよりコンパクトにでき、狭い敷地への設置が可能に成り、装置に製造コストの削減にもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の汚水処理装置について、その実施の形態を以下詳しく説明する。
本汚水処理装置は、ユニットを単数用いる形態と複数用いる形態とがある。
【0017】
先に、本汚水処理装置を構成するユニットを単数用いる装置の形態について説明する。
この装置のユニットUは、図1及び図2に示すように、上端部1aと底部1cが開き且つ下部周壁面1bに多数の流出孔2を有し、上端部1a寄りには原汚水管3を接続した汚水流入口4を設けた内縦筒1と、その内筒1を囲い且つ上端部5aが内縦筒1の開口下部の側壁面部位において閉じ、また下端部5bが擂鉢状に閉じ、その上端部5a寄りには外に開く汚水流出口6を設けた外縦筒5とで形成される。
したがって、このユニットUにおいて、内縦筒1内には第一室が形成され、内縦筒1の周壁面の外側と外縦筒5内には第二室が形成されることになり、第一室と第二室とは、前記内縦筒1の下端部周面に設けた網目、スリッド群、小孔群などの多数の流出孔2により連通状態となる。
そして、前記内縦筒1内の汚水全体攪拌と酸素の供給を目的として、前記内縦筒1の上端部1aから底部1c近くに差し込まれ、先端の空気注入口8aが内縦筒1の底部1cに開口した送風機7付の送気管8を設ける。
【0018】
また、上記構成のユニットUを汚水処理槽9の隣に設置して、前記汚水処理槽9内の中層に微生物担体11を埋設するとともに、送風機7付の送気管8を前記汚水処理槽9内の低層に開口するように設ける。
この汚水処理槽9へは、原汚水管3から流入した汚水をユニットUで処理してから汚水処理槽9に導かれるのでこの汚水処理槽9へ入る汚泥分は少ない。
この前記汚水処理槽9のへの空気注入は、設置した微生物担体11への酸素補給と、汚水処理槽9内の汚水の表面に浮上してきた固形物を分散し、固形物同士が付着して塊となるのを防止するための汚水上層部に対する攪拌を目的としている。
そして、前記外縦筒5の汚水流出口4よりも低位置に前記汚水処理槽9の汚水排出口39を設け、前記汚水処理槽9内の前記汚水排出口39よりも高位置に開口する送水管10を前記汚水流出口6に接続して、前記ユニットUの汚水流出口6を前記汚水処理槽9の液面Lより上部なるようにする。
【0019】
以上でユニットを単数用いる形態の汚水処理装置が構成され、この汚水処理装置に、前記内縦筒1の汚水流入口6よりも上部位置から前記汚水処理槽9の汚水排出口39よりも高位置となる前記送水管10へバイパス送水管30を接続し、前記内縦筒1に満杯に溜まった汚水を前記バイパス送水管30を介して前記汚水処理槽9へ流出できるようにする。
【0020】
次に、ユニットを複数用いる装置の形態はについて説明する。
この装置のユニットは、図3に示すように、上端部1aと底部1cが開き且つ下部周壁面1bに多数の流出孔2を有し、上端部1a寄りには原汚水管3を接続した汚水流入口4を設けた内縦筒1と、その内縦筒1を囲い且つ上端部5aを内縦筒1の開口下部の側壁面部位において閉じ、また下端部5bが擂鉢状に閉じ、その上端部5a寄りには外に開く汚水流出口6を設けた外縦筒5とで形成される。
そして、前記内縦筒1の上端部1aから底部1c近くに送風機7付の送気管8を差し込んで最初のユニットが構成される。
【0021】
次に、上端部21aと底部21cが開き且つ下部周壁面21bに多数の流出孔22を有し、上端部21a寄りには送水管23を接続した汚水流入口24を設けた内縦筒21と、その内縦筒21を囲い且つ上端部25aが内縦筒21の開口下部の側壁面部位において閉じ、また下端部25bが擂鉢状に閉じ、その上端部25a寄りには外に開く汚水流出口26を設けた外縦筒25とで形成される。
そして、前記内縦筒21の上端部21aから底部21c近くに送風機7付の送気管8を差し込んで一つの後続のユニットNが構成される。
そして前記汚水処理槽9の近くに最初のユニットUの汚水流出口6を後続のユニットNの汚水流入口24に送水管23を介して接続して1個、又はさらにそのユニットNの汚水流出口26をそれに続くユニットNの汚水流入口24にそれぞれ送水管23を介して接続して複数個を設置する。
【0022】
そして、前記汚水処理槽9内の中層に微生物担体11を埋設するとともに、送風機7付の送気管12を前記汚水処理槽9内の低層に開口部12aが至るように設ける。
最後の後続のユニットNの前記外縦筒の汚水流出口26よりも低位置に前記汚水処理槽9の汚水排出口39を設け、前記汚水処理槽9内の前記汚水排出口39よりも高位置に開口する送水管20を前記最後のユニットNの外縦筒25の汚水流出口26に接続し、前記ユニットNの汚水流出口26を前記汚水処理槽9の液面Lより上部なるようにする。
【0023】
以上でユニットを単数用いる形態の汚水処理装置が構成され、この汚水処理装置に、前記各内縦筒1、21の汚水流入口6、26よりも上部位置1a、21aから前記汚水処理槽9の汚水排出口39よりも高位置となる前記送水管23、20へバイパス送水管30、 31を接続し、前記各内縦筒1、21に満杯に溜まった汚水を前記バイパス送水管30、31を介して前記汚水処理槽9へ流出できるようにする。
【0024】
また、前記外縦筒5の上部に汚泥抜取り兼点検口32を設ける。
そして、その汚泥抜取り兼点検口32に汚泥吸上げ管34を外縦筒5、25の底部5bまで差し込むとともにその汚泥を引き抜くためのポンプ33を設けて、汚泥吸上げ管34で汚泥を引き抜けるようにすることができる。
また、この汚泥抜取り兼点検口32は、内部の様子を点検したり、ここから上部に送気管を入れて上層部の攪拌を行うこともできる。
【0025】
さらに、前記汚水処理槽9が、流入側の曝気室37と微生物担体11を納めた流出側の担体室38とから成り、該担体室38内と原汚水管3とを返送管35を介して接続し、返送管35にポンプ36を設けて、該担体室38内の汚水を原汚水管3に送れるようにした形態が可能である。
【0026】
また、前記汚水処理槽9の汚水排出口39に送水管40を介して水の濾過手段42を備えた濾過装置41を設け、その濾過装置41を通して外部に処理水を排水できるようにすることもできる。
【0027】
さらにまた、外縦筒と内縦筒との間の中層水没域に微生物担体を配することのできる。
微生物担体は粒状、網状、板状、紐状など種々提案されており、それらが使用できる。その材質は例えばセラッミク、プラスチック、ガラス、有機繊維等がある。
粒状の微生物担体45は、細長い網袋46に入れ、図4に示すように、外縦筒とに上部の設けた蓋付きの出し入れ口から出し入れできるようにすることができる。
汚水中の有機汚染物質が微生物担体の繁殖する微生物により分解されるので、より処理能力が高められる。
【0028】
さらに、図5に示すように、各ユニットは、外縦筒同士を一つの槽内に連結一体化させつことができ、また各ユニットの外縦筒同士と汚水処理槽とを一つの槽内に連結一体化させることができる。そうすれば装置全体をよりコンパクトにできる。このようにすれば狭い敷地への設置も可能となる。
【0029】
本発明は上記構成であり、その作用を以下説明する。
汚水は内縦筒1内の第一室に流入すると、その室内汚水の低層部へ空気を継続して注入することによって、気泡によりその汚水の全体が常時混濁状態に攪拌される。
通常では、浮遊物が水面に浮き上がり、膜状になった最表面が乾燥し、さらにその下部面に浮遊物が付着して厚い層を形成して塊(スカム)となるが、本発明では気泡による継続攪拌によって浮遊物が内縦筒1内の水面に膜状化できなくなるのでスカム化が起こらなくなる。
【0030】
その内縦筒1内の第一室への新たな汚水の流入によってその室内に水位変動が起こり、この変動で、第一室が増水すると混濁汚水がその内縦筒1の第一室の低部に設けた多数の流出孔2、22を粗目濾しされて通過し、外縦筒5内の第二室内に流れ出る。
そして、僅かであるが流入停止後の内縦筒1内の第一室の汚水減少により、第一室が減水するとすると外縦筒5内の第二室から混濁汚水がその第一室の低部に設けた多数の流出孔2,22を通過して第一室にその量だけ戻ることになる。
このように、内縦筒1内の第一室と外縦筒5内の第二室間に汚水の流れが繰り返される。
【0031】
その第一室での攪拌の影響は、流出孔2,22を介して僅かに受けるが、一内縦筒1の壁面で応仕切られているので、外縦筒5内の第二室には殆ど攪拌はなされない。このため第二室内ではその汚水がやや安静状態となり底部に重量汚泥分が擂鉢状部分に流出孔2,22に向かって沈殿することになる。
【0032】
このとき、外縦筒5内の第二室の低部における擂鉢状部分の状態は、堆積生成される軟質軽量沈殿物層が発生し、流入した汚水はその軟質軽量沈殿物層の下側からその沈殿物層の内部を通過してその上側に流れ出て行く。この際に、汚水の流れ出る圧力で軟質軽量沈殿物層がフアフアと少し浮き上がったり沈んだりしながら、そのままの状態で又はその表層部が噴出する汚水で破裂状態となって浮遊したりしながら上がったり下がったりを繰り返す。
【0033】
そして、その汚水中の混濁物質は軟質軽量沈殿物層内に取り込まれ処理され、そこから流れ出た軟質軽量沈殿物層上の汚水は透明度が高められた汚水となる。
その汚水は、透明度が高まっていてもBOD値はまだ高いので、さらに、その第二室の水位の上昇分が第二室の前記汚水流出口6、26から送水管10、20を介して次ぎの汚水処理槽9に導き入れられる。
【0034】
この汚水処理槽9によって、さらに汚水のBOD値を低減させ排水規定値をクリアーできるまで処理されたら河川などに放水する。
また前記汚水処理槽9内の汚水の中にも多少の固形物の浮遊があり、それが汚水表面に浮上すると固形物同士が付着して膜状化する虞があるので、空気継続注入による気泡Kによる攪拌流によってその汚水上層を常時攪拌して固形物同士を分散化させ、表面スカムになるのを抑える。
また、空気継続注入によって微生物担体11に生息する好気性微生物に酸素が供給されすみやかに汚泥分の分解が促進されることになる。
【0035】
また、各図に示されているように、汚水流入口2、24よりも汚水流出口6、26を低くしたほうが汚水の段階的な流れを作る上からも好ましい。
なお、各図中の一点鎖線は汚水の水位を示すものである。
上記前記汚水処理槽9は、固定型の微生物担体11が設置されている既存の合併浄化槽がそのまま利用することができる。
また、より処理能力を高めるために後続のユニットNをそして処理規模に応じて複数個連設することができる。
【0036】
そして、前記内縦筒1の汚水流入口6よりも上部位置から前記汚水処理槽9の汚水排出口39よりも高位置となる前記送水管10へバイパス送水管30を接続することによって、前記内縦筒1に満杯に溜まった汚水を前記バイパス送水管30を介して前記汚水処理槽9へ流出させることができるようになるので、外縦筒5の内部に汚泥が沈殿しこれにより汚水の流れが阻害されて、流れ込む汚水が内縦筒1内の底部から外縦筒5に流れて行くことができずに内縦筒1内の上部に滞留してまっても、上部の開口部から汚水が溢れ出てしまうのを防止でき、さらに曝気を続けることも可能になる。
【0037】
また、前記外縦筒5の上部に汚泥抜取り兼点検口32を設けることによって、外縦筒5内部の様子を点検でき、汚泥吸上げ管34を外縦筒5、25の底部5bまで差し込むことによって、外縦筒5内の底に汚泥が深く沈殿した汚泥を引き抜き、汚水の流れを正常に回復させ、汚水処理機能を正常に回復維持させることができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、家庭用水洗便所や畜産施設などから排出される糞尿などの汚水を浄化するための汚水処理の分野や、終末処理するための公共下水施設に本装置を組み込みこんで利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】単数ユニットの汚水処理装置の斜視図。
【図2】濾過装置を設けた形態の汚水処理装置の斜視図。
【図3】複数ユニットを用いた形態の汚水処理装置の斜視図。
【図4】微生物担体を用いた形態の汚水処理装置の斜視図。
【図5】一体形の複数連結ユニットの形態を示す汚水処理装置の縦断側面図。
【符号の説明】
【0040】
1 内縦筒
1a 内筒の上端部
1b 内筒の下部周壁面
1c 内筒の底部
2 流出孔
3 原汚水管
4 汚水流入口
5 外縦筒
5a 外筒の上端部
5b 外筒の下端部
6 汚水流出口
7 送風機
8 送気管
8a 送気管の空気注入口
9 汚水処理槽
10 送水管
11 微生物担体
12 送気管
12a 送気管の開口部
20 送水管
21 内筒
21a 上端部
21b 下部周壁面
21c 内筒の底部
22 流出孔
23 送水管
24 汚水流入口
25 外筒
25a 上端部
25b 下端部
26 汚水流出口
27 送風機
28 送気管
28a 送気管の空気注入口
30 バイパス送水管
31 バイパス送水管
32 汚泥抜取り兼点検口
33 ポンプ
34 汚泥吸上げ管
35 返送管
36 ポンプ
37 曝気室
38 担体室
39 排水口
40 送水管
41 濾過装置
42 濾過手段
43 排水管
44 返送口
45 微生物担体
46 網袋
U 最初のユニット
N 後続のユニット





【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部と底部が開き且つ下部周壁面に多数の流出孔を有し、上端部寄りには原汚水管を接続した汚水流入口を設けた内縦筒と、その内縦筒を囲い且つ上端部が内縦筒の開口下部の側壁面部位において閉じ、また下端部が擂鉢状に閉じ、その上端部寄りには外に開く汚水流出口を設けた外縦筒と、前記内縦筒の上端部から底部近くに差し込まれた送風機付の送気管とから成るユニットを汚水処理槽の隣に設置し、前記汚水処理槽内の中層に微生物担体を埋設するとともに、送風機付の送気管を前記汚水処理槽内の低層に開口部するように設け、前記外縦筒の汚水流出口よりも低位置に前記汚水処理槽の汚水排出口を設け、前記汚水処理槽内の前記汚水排出口よりも高位置に開口する送水管を前記汚水流出口に接続した汚水処理装置であって、
前記内縦筒の汚水流入口よりも上部位置から前記汚水処理槽の汚水排出口よりも高位置となる前記送水管へバイパス送水管を接続し、前記内縦筒に満杯に溜まった汚水を前記バイパス送水管を介して前記汚水処理槽へ流出できるようにしたことを特徴とする汚水処理装置。
【請求項2】
上端部と底部が開き且つ下部周壁面に多数の流出孔を有し、上端部寄りには原汚水管を接続した汚水流入口を設けた内縦筒と、その内縦筒を囲い且つ上端部を内縦筒の開口下部の側壁面部位において閉じ、また下端部が擂鉢状に閉じ、その上端部寄りには外に開く汚水流出口を設けた外縦筒と、前記内縦筒の上端部から底部近くに差し込まれた送風機付の送気管とから成る最初のユニットを汚水処理槽の近くに設置し、また、上端部と底部が開き且つ下部周壁面に多数の流出孔を有し、上端部寄りには送水管を接続した汚水流入口を設けた内縦筒と、その内縦筒を囲い且つ上端部が内縦筒の開口下部の側壁面部位において閉じ、また下端部が擂鉢状に閉じ、その上端部寄りには外に開く汚水流出口を設けた外縦筒と、前記内縦筒の上端部から底部近くに差し込まれた送風機付の送気管とから成る後続のユニットを前記汚水処理槽の近くに最初のユニットの汚水流出口を後続のユニットの汚水流入口に送水管を介して接続して1個又はさらにそのユニットの汚水流出口をそれに続くユニットの汚水流入口にそれぞれ送水管を介して接続して複数個を設置し、前記汚水処理槽内の中層に微生物担体を埋設するとともに、送風機付の送気管を前記汚水処理槽内の低層に開口部するように設け、最後の後続のユニットの前記外縦筒の汚水流出口よりも低位置に前記汚水処理槽の汚水排出口を設け、前記汚水処理槽内の前記汚水排出口よりも高位置に開口する送水管を前記最後のユニットの外縦筒の汚水流出口に接続した汚水処理装置であって、
前記各内縦筒の汚水流入口よりも上部位置から前記汚水処理槽の汚水排出口よりも高位置となる前記送水管へバイパス送水管を接続し、前記各内縦筒に満杯に溜まった汚水を前記バイパス送水管を介して前記汚水処理槽へ流出できるようにしたことを特徴とする汚水処理装置。
【請求項3】
各ユニットの外縦筒同士を一つの槽内に連結一体化又は該各ユニットの外縦筒同士と汚水処理槽とを一つの槽内に連結一体化させて成る請求項1又は2に記載の汚水処理装置。
【請求項4】
外縦筒の上部に汚泥抜取り兼点検口を設けて成る請求項1乃至3のうち少なくともいずれか一項に記載の汚水処理装置。
【請求項5】
汚水処理槽が、流入側の曝気室と微生物担体を納めた流出側の担体室とから成り、該担体室内と原汚水管とを返送管を介して接続し、返送管にポンプを設けて、該担体室内の汚水を原汚水管に送れるようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のうち少なくともいずれか一項に記載の汚水処理装置。
【請求項6】
汚水処理槽の汚水排出口に送水管を介して水の濾過手段を備えた濾過装置を設け、その濾過装置を通して処理水を外部に排水できるようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のうち少なくともいずれか一項に記載の汚水処理装置。
【請求項7】
外縦筒と内縦筒との間に形成される室内の中層水没域に微生物担体を配して成る請求項1乃至6のうち少なくともいずれか一項に記載の汚水処理装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−130448(P2006−130448A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324129(P2004−324129)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(500583737)
【Fターム(参考)】