説明

汚泥の処理方法及びその処理設備

【課題】繊維状の有機物を含む汚泥から発生する硫化水素の発散を防止しながら処理できる汚泥の処理方法及びその処理設備を提供する。
【解決手段】下水又は家畜糞尿の処理場11で発生し、繊維状の有機物を含む汚泥から水分の一部を脱水して、該繊維状の有機物が凝集し含水率が40質量%以上75質量%以下の減水汚泥を製造する脱水工程と、前記減水汚泥に生石灰を加えて混合し、該減水汚泥中の水分と該生石灰との反応で消石灰を生成させると共に該消石灰の生成反応で発生する熱で該減水汚泥を加熱しながら、該減水汚泥中の水分の表面張力を解放させて前記繊維状の有機物を分散させ、この分散した有機物が縮んで丸くなった表面を前記消石灰の一部で被覆して粒状物を製造する粒状化工程とを有し、前記粒状化工程で製造された粒状物中の有機物が分解していく過程で発生する硫化水素を、該有機物を被覆している前記消石灰と反応させて硫化カルシウムに変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水又は家畜糞尿の処理場で発生する汚泥の処理方法及びその処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場では、下水処理に伴い多量の汚泥が発生し、その一部は肥料として活用されることがあるが、大部分は、脱水した減水汚泥(脱水ケーキ)を直接又は焼却後に埋立て処分している(例えば、特許文献1参照)。
ここで、減水汚泥は65〜75質量%の水分を含みスポンジ状となって、固形分の約90質量%以上は長さが2〜10mmの食物に由来する繊維状の有機物で、残部は無機物となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−207497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、減水汚泥の本質的な処理(繊維状の有機物の処理)が行われていないために、減水汚泥を放置しておくと、有機物の分解中に発生する硫化水素のため悪臭が発生するという問題がある。そして、発生した硫化水素は空気中の酸素と反応して亜硫酸ガスに変化し、更に水に溶け込み硫酸になるため、汚泥の処理作業は、環境上、衛生上、及び設備保全上において非常に負担の大きい作業となっている。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、繊維状の有機物を含有する汚泥を脱水して形成した減水汚泥から発生する硫化水素の発散を防止しながら処理でき、その有効活用が可能な汚泥の処理方法及びその処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る汚泥の処理方法は、下水又は家畜糞尿の処理場で発生し、食物に由来する繊維状の有機物を含む汚泥から水分の一部を脱水して、該繊維状の有機物が凝集し含水率が40質量%以上75質量%以下の減水汚泥を製造する脱水工程と、
前記減水汚泥に生石灰を加えて混合し、該減水汚泥中の水分と該生石灰との反応で消石灰を生成させると共に該消石灰の生成反応で発生する熱で該減水汚泥を加熱しながら、該減水汚泥中の水分の表面張力を解放させて前記繊維状の有機物を分散させ、この分散した有機物が縮んで丸くなった表面を前記消石灰の一部で被覆して粒状物を製造する粒状化工程とを有し、
前記粒状化工程で製造された前記粒状物中の有機物が分解していく過程で発生する硫化水素を、該有機物を被覆している前記消石灰と反応させて硫化カルシウムに変化させる。
【0007】
第1の発明に係る汚泥の処理方法において、前記減水汚泥の含水率を変化させて、前記粒状物のサイズを調整することが好ましい。
【0008】
第1の発明に係る汚泥の処理方法において、前記粒状化工程で製造された前記粒状物を、更に100℃以上150℃以下の温度で加熱して該粒状物中の水分量を調整する乾燥工程を有することが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る汚泥の処理方法において、前記粒状化工程で製造された前記粒状物を焼成して該粒状物中の有機物を燃焼させて消失させる焼成工程と、
前記焼成工程で得られた焼却灰に水分と生石灰を加えて混合し、該生石灰と該水分との反応で生成した消石灰中に前記焼却灰が分散した第1の混合物を製造する工程と、
前記第1の混合物の製造工程で得られた前記第1の混合物に更に軽焼マグネシアを加えて混合し、該軽焼マグネシアと該第1の混合物中の水分との反応により生成した水酸化マグネシウムを該第1の混合物中に分散させて、該第1の混合物中の消石灰と該水酸化マグネシウムとの反応で水和物を生成させながら徐々に固化する第2の混合物を製造する工程とを有し、
前記第2の混合物が固化する前に、該第2の混合物を成形して該第2の混合物を特定形状に固化させることが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る汚泥の処理設備は、下水又は家畜糞尿の処理場で発生し、食物に由来する繊維状の有機物を含む汚泥から水分の一部を脱水して該繊維状の有機物が凝集し含水率が40質量%以上75質量%以下の範囲の減水汚泥を製造する減水汚泥製造装置と、
前記汚泥の処理に使用する生石灰を貯留する生石灰貯留手段と、
第1の撹拌混合装置とを有し、
前記第1の撹拌混合装置で、前記減水汚泥製造装置からの前記減水汚泥及び前記生石灰貯留手段から供給される生石灰を受け入れて混合し、該減水汚泥中の水分と該生石灰との反応で消石灰を生成させると共に該消石灰の生成反応で発生する熱で該減水汚泥を加熱しながら、該減水汚泥中の水分の表面張力を解放させて前記繊維状の有機物を分散させ、この分散した有機物が縮んで丸くなった表面を前記消石灰の一部で被覆して粒状物を製造する。
【0011】
第2の発明に係る汚泥の処理設備において、更に、前記第1の撹拌混合装置で製造された前記粒状物を100℃以上150℃以下の温度で加熱して減水させる乾燥手段を有していることが好ましい。
【0012】
第2の発明に係る汚泥の処理設備において、更に、前記第1の撹拌混合装置で製造された前記粒状物を800℃以上1200℃以下の温度で焼成して焼却灰を製造する焼成炉と、
前記焼却灰の処理に使用する軽焼マグネシアを貯留する軽焼マグネシア貯留手段と、
前記焼成炉からの前記焼却灰、前記生石灰貯留手段からの生石灰、及び水分を混合して第1の混合物を製造し、該第1の混合物に前記軽焼マグネシア貯留手段から受け入れた軽焼マグネシアを混合して第2の混合物を製造する第2の撹拌混合装置と、
前記第2の撹拌混合装置で製造された前記第2の混合物が固化する前に、該第2の混合物を成形して該第2の混合物を特定形状に固化させる成形手段とを有し、
前記第1の混合物は、前記混合された生石灰と水分との反応で生成した消石灰中に前記焼却灰が分散して製造され、前記第2の混合物は、前記軽焼マグネシアと前記第1の混合物中の水分との反応により生成した水酸化マグネシウムが該第1の混合物中に分散して製造され、しかも、該第2の混合物は、該第1の混合物中の消石灰と該水酸化マグネシウムとの反応で水和物を生成させながら徐々に固化することが好ましい。
【0013】
第2の発明に係る汚泥の処理設備において、前記第2の撹拌混合装置を前記第1の撹拌混合装置で兼用することができる。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明に係る汚泥の処理方法及び第2の発明に係る汚泥の処理設備においては、有機物の周囲が消石灰で被覆されているため、有機物の分解過程で発生する硫化水素(悪臭の主因)の発散が防止されると共に、発生した硫化水素は硫化カルシウムに変化するので、有機物の分解が終了するまでの期間、悪臭の発生を確実に防止できる。また、硫化カルシウムが生成するため粒状物の安定化を図ることができ、しかも、硫化カルシウムは水分の存在下で緩やかに加水分解して硫化水素カルシウム、水酸化カルシウムに変化するので、硫化カルシウムが分解しても悪臭の発生を防止できる。そして、発生する硫化水素の大気中への放散が防止されるため、下水又は家畜糞尿の処理場で発生する汚泥を処理する際に、亜硫酸ガスの発生がなく、硫酸の発生も防止できる。このため、汚泥の処理作業時における環境上、衛生上、及び設備保全上の問題を解消できる。更に、処理中に汚泥は消石灰の生成時に発生する反応熱を用いて加熱されるので汚泥中の病原菌の減菌、寄生虫及び種子類を死滅させることができ、また、処理後の汚泥は粒状物になっているので、処理後の汚泥の取扱いにおいて安全性が確保できると共に、汚泥処理場周辺の生態系に与える影響を低減させることができ、汚泥の取扱いが容易になる。
【0015】
第1の発明に係る汚泥の処理方法において、減水汚泥の含水率を変化させて、粒状物のサイズを調整する場合、最終処分に最適な粒状物を作製することができ、利便性を向上させて最終処分の効率化を図ることができる。
【0016】
第1の発明に係る汚泥の処理方法において、粒状化工程で製造された粒状物を100℃以上150℃以下の温度で加熱して粒状物中の水分量を調整する乾燥工程を有する場合、粒状物の減菌と水分調整を行うことができ、安全性と品質の高い有機肥料として粒状物を利用できる。
【0017】
第1の発明に係る汚泥の処理方法において、粒状化工程で製造された粒状物を焼成して粒状物中の有機物を燃焼させて消失させる焼成工程と、焼成工程で得られた焼却灰に水分と生石灰を加えて混合し、生石灰と水分との反応で生成した消石灰中に焼却灰が分散した第1の混合物を製造する工程と、第1の混合物の製造工程で得られた第1の混合物に更に軽焼マグネシアを加えて混合し、軽焼マグネシアと第1の混合物中の水分との反応により生成した水酸化マグネシウムを第1の混合物中に分散させて、第1の混合物中の消石灰と水酸化マグネシウムとの反応で水和物を生成させながら徐々に固化する第2の混合物を製造する工程とを有し、第2の混合物の固化する前に、第2の混合物を成形して第2の混合物を特定形状に固化させる場合、第2の混合物から、例えば路盤材等の建設資材を製造することができる。
【0018】
第2の発明に係る汚泥の処理設備において、更に、第1の撹拌混合装置で製造された粒状物を100℃以上150℃以下の温度で加熱して減水させる乾燥手段を有している場合、粒状物の減菌と水分調整を行うことができ、安全性と品質の高い有機肥料として粒状物を利用できる。
【0019】
第2の発明に係る汚泥の処理設備において、更に、第1の撹拌混合装置で製造された粒状物を800℃以上1200℃以下の温度で焼成して焼却灰を製造する焼成炉と、焼却灰の処理に使用する軽焼マグネシアを貯留する軽焼マグネシア貯留手段と、焼成炉からの焼却灰、生石灰貯留手段からの生石灰、及び水分を混合して第1の混合物を製造し、第1の混合物に軽焼マグネシア貯留手段から受け入れた軽焼マグネシアを混合して第2の混合物を製造する第2の撹拌混合装置と、第2の撹拌混合装置で製造された第2の混合物が固化する前に、第2の混合物を成形して第2の混合物を特定形状に固化させる成形手段とを有する場合、第2の混合物から、例えば路盤材等の建設資材を製造することができる。
【0020】
第2の発明に係る汚泥の処理設備において、第2の撹拌混合装置を第1の撹拌混合装置で兼用する場合、汚泥の処理設備を構成する機器を少なくでき、汚泥の処理設備をコンパクトかつ安価に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の係る汚泥の処理設備を説明するブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る汚泥の処理方法の説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る汚泥の処理方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る汚泥の処理設備10は、下水又は家畜糞尿の処理場11で発生し、食物に由来する繊維状の有機物を含む汚泥から水分の一部を脱水して繊維状の有機物が凝集し含水率が40質量%以上75質量%以下の範囲の減水汚泥を製造する減水汚泥製造装置12と、汚泥の処理に使用する生石灰を貯留する生石灰貯留手段13と、減水汚泥及び生石灰貯留手段13から供給される生石灰を受け入れて混合する第1の撹拌混合装置14とを有している。以下詳細に説明する。
【0023】
減水汚泥製造装置12は、処理場11から排出される汚泥を輸送する輸送手段の一例であるポンプ15を備えた輸送管16を有している。更に、減水汚泥製造装置12は、輸送管16の先側と連通し、輸送されてきた汚泥を受入れて水分の一部を除去して所定の水分量、例えば、含水率が40質量%以上75質量%以下の範囲の減水汚泥を製造する脱水手段の一例であるフィルタープレス17と、フィルタープレス17で製造された減水汚泥を第1の撹拌混合装置14に搬送する搬送手段の一例であるベルトコンベア18とを有している。
【0024】
これによって、処理場11で発生する汚泥を回収して、フィルタープレス17の例えば加圧力を調整することで所定量の水分を含有する減水汚泥を製造することができ、得られた減水汚泥を次工程に供給することができる。なお、フィルタープレス17の代わりに、遠心力を利用して水分を分離する遠心分離機を使用することもできる。
【0025】
第1の撹拌混合装置14において、ベルトコンベア18から供給される減水汚泥及び生石灰貯留手段13から供給される生石灰を受け入れて混合することにより、生石灰と減水汚泥中の水分とを反応させて消石灰を生成させて、消石灰の生成反応で発生する熱で減水汚泥を加熱しながら、減水汚泥中の水分の塩基度を上昇させて減水汚泥中の水分の表面張力を解放させて繊維状の有機物を分散させ、分散した有機物が縮んで丸くなった表面に消石灰を付着させて、表面が消石灰で被覆された粒状物を製造している。そして、第1の撹拌混合装置14で製造された粒状物は、第1の撹拌混合装置14に備えられた搬送手段の一例であるベルトコンベア20を用いて外部に取出される。
【0026】
ここで、生石灰貯留手段13は、生石灰粉を貯蔵する生石灰貯蔵ホッパー21と、生石灰貯蔵ホッパー21の下部に設けられた排出口に連通し生石灰貯蔵ホッパー21内から一定重量の生石灰粉を排出させる生石灰切出し機22と、生石灰切出し機22の排出口と基側が連通し、先側が第1の撹拌混合装置14と連通する生石灰輸送管23とを有している。
【0027】
また、汚泥の処理設備10は、更に、ベルトコンベア20を介して搬送された粒状物を受入れて100℃以上150℃以下の温度で加熱して減水させる乾燥手段の一例である乾燥機24を有している。ここで、乾燥機24としては、粒状物の含水率を5〜10質量%に調整する機能を有するものを使用することができ、例えば、粒状物を収容し、加熱した空気の気流中に配置して乾燥を行う形式のものが使用できる。
【0028】
汚泥の処理設備10は、更に、第1の撹拌混合装置14で製造された粒状物を800℃以上1200℃以下の温度で焼成して焼却灰を製造する焼成炉25と、焼却灰の処理に使用する軽焼マグネシアを貯留する軽焼マグネシア貯留手段26と、焼成炉25からの焼却灰、生石灰貯留手段13からの生石灰、及び水分を混合して第1の混合物を製造し、第1の混合物に軽焼マグネシア貯留手段26から受け入れた軽焼マグネシアを混合して第2の混合物を製造する第2の撹拌混合装置と、第2の撹拌混合装置で製造された第2の混合物が固化する前に、第2の混合物を成形して第2の混合物を特定形状、例えば、路盤材に固化させる成形手段の一例であるプレス成形機30とを有している。なお、この実施の形態では、第1の撹拌混合装置14が第2の撹拌混合装置を兼用しているので、焼成炉25で製造された焼却灰は、再び第1の撹拌混合装置14に送られて、第1の撹拌混合装置14で焼却灰、生石灰、及び水分が混合され第1の混合物を製造し、更に、第1の撹拌混合装置14で第1の混合物に軽焼マグネシアを混合して第2の混合物を製造することになる。
【0029】
ここで、焼成炉25には、従来から汚泥処理に使用されている焼却炉を使用することができる。また、軽焼マグネシア貯留手段26は、軽焼マグネシア粉を貯蔵する軽焼マグネシア貯蔵ホッパー27と、軽焼マグネシア貯蔵ホッパー27の下部に設けられた排出口に連通し軽焼マグネシア貯蔵ホッパー27内から一定重量の軽焼マグネシア粉を排出させる軽焼マグネシア切出し機28と、軽焼マグネシア切出し機28の排出口と基側が連通し、先側が第1の撹拌混合装置14と連通する軽焼マグネシア輸送管29とを有している。
【0030】
このような構成とすることで、第1の撹拌混合装置14で、始めに焼却灰、生石灰、及び水分を撹拌混合することにより、生石灰と水分との反応で生成した消石灰中に焼却灰が分散した第1の混合物を製造し、次いで、第1の混合物に軽焼マグネシアを撹拌混合することにより、軽焼マグネシアと第1の混合物中の水分との反応により生成した水酸化マグネシウムが第1の混合物中に分散して、第1の混合物中の消石灰と水酸化マグネシウムとの反応で水和物を生成させながら徐々に固化する第2の混合物を製造することができる。そして、第2の混合物が固化する前にプレス成形機30を用いて第2の混合物を路盤材の形状に成形して固化させることができる。なお、プレス成形機30の代わりに、押出し成形機を使用することもできる。
【0031】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る汚泥の処理方法について説明する。
図2に示すように、第1の実施の形態に係る汚泥の処理方法は、下水又は家畜糞尿の処理場11で発生し、食物に由来する繊維状の有機物を含む汚泥から有機肥料を製造する方法であって、汚泥から水分の一部を脱水して、繊維状の該有機物が凝集し含水率が40質量%を超え75質量%以下の減水汚泥を製造する脱水工程と、減水汚泥を第1の撹拌混合装置14に受入れ、更に生石灰貯留手段13から供給された生石灰を加えて混合し、減水汚泥中の水分と生石灰との反応で消石灰を生成させると共に消石灰の生成反応で発生する熱で減水汚泥を加熱しながら、減水汚泥中の水分の表面張力を解放させて繊維状の有機物を減水汚泥に含まれていた水分中に分散させ、分散した有機物が縮んで丸くなった表面を消石灰の一部で被覆して粒状物を製造する粒状化工程と、製造した粒状物を100℃以上150℃以下の温度で加熱して粒状物中の水分量を調整する乾燥工程とを有している。以下、順次説明する。
【0032】
(脱水工程)
繊維状の有機物を含む汚泥をフィルタープレス17を用いて、含水率が40質量%以上75質量%以下の範囲になるように減水すると、繊維状の有機物が水分の表面張力で凝集し、スポンジ状の減水汚泥が得られる。ここで、フィルタープレス17の加圧力を変化させることで、含水率を調整することができ、減水汚泥中の有機物の含有率も調整できる。また、繊維状の有機物の長さは、例えば、2〜10mmである。
【0033】
(粒状化工程)
減水汚泥を第1の撹拌混合装置14に供給し、更に生石灰貯留手段13から供給された生石灰を加えて混合すると、減水汚泥中の水分と生石灰との間に、
CaO+HO→ Ca(OH)
の反応が生じて消石灰(Ca(OH))が生成する。これにより、減水汚泥中の水分の塩基度が上昇して、減水汚泥中の水分の表面張力を解放させて、表面張力で凝集していた繊維状の有機物は凝集状態から解放され、減水汚泥に含まれていた水分は自由水となる。このため、解放された繊維状の有機物は自由水中に分散する。そして、自由水中に分散した繊維状の有機物はそれぞれ縮んで丸くなって(球状化して)丸状物を形成し、この丸状物の表面を消石灰が被覆して粒状物が形成される。なお、加える生石灰の重量は、含水率が75質量%の減水汚泥の重量に対する重量比で表した場合で、0.2〜0.6である。ここで、重量比が0.2未満の場合、生成する消石灰の反応熱が小さいために過剰水分により粘土状になる。また、重量比が0.6を超えると、生成する消石灰の反応熱が過剰になり乾燥して微粉になって好ましくない。
【0034】
減水汚泥の含水率を変化させる場合、自由水中に繊維状の有機物が分散する際の状況が変化する。例えば、減水汚泥の含水率が少ないと、自由水中に分散した繊維状の有機物間の距離は小さくなる。このため、分散した繊維状の有機物が縮んで丸くなる際に、近接する繊維状の有機物同士が絡み会い易く、絡み合った状態の有機物がそれぞれ縮んで丸くなると、形成される丸状物のサイズは大きくなる。そして、サイズの大きくなった丸状物の表面を消石灰が被覆して粒状物が形成されるので、粒状物のサイズも大きくなる。例えば、減水汚泥の含水率を40〜50質量%に調整すると、球換算で2〜20mmの外径を有する粒状物が得られる。
【0035】
また、減水汚泥の含水率が多いと、自由水中に分散した繊維状の有機物間の距離は大きくなる。このため、分散した繊維状の有機物が縮んで丸くなる際に、近接する繊維状の有機物同士が絡み合うことがなく、分散した繊維状の有機物がそれぞれ縮んで丸くなるため、形成される丸状物のサイズは繊維状の有機物の長さに依存し、近接する繊維状の有機物同士が絡み合う場合に比較して、丸状物のサイズは小さくなる。そして、サイズの小さくなった丸状物の表面を消石灰が被覆して粒状物が形成されるので、粒状物のサイズも小さくなる。例えば、減水汚泥の含水率を50質量%を超え75質量%以下に調整すると、球換算で1〜6mmの外径を有する粒状物が得られる。
【0036】
ここで、減水汚泥中の水分と生石灰から消石灰が生成する反応は、発熱反応であるため、減水汚泥の温度は、例えば100℃程度まで上昇し、減水汚泥中の病原菌の減菌を行うことができる。また、減水汚泥中に含まれる寄生虫や種子類を死滅させることができる。これによって、減水汚泥の安全性を確保することができると共に、汚泥の処理場周辺の生態系に与える影響を無くして、減水汚泥の取扱いが容易になる。
【0037】
また、繊維状の有機物が丸くなって形成される丸状物の表面が消石灰により被覆されているため、有機物の分解過程で発生する硫化水素(悪臭の主因)の発散を防止でき、汚泥の処理時に悪臭が発生するのを防止できる。また、処理後に汚泥は粒状物になっているので、取り扱いが容易になり、処理作業の効率化が図れる。更に、汚泥の処理場で発生しないため、汚泥処理場で亜硫酸ガスの発生がなく、硫酸の発生も防止できる。このため、汚泥の処理作業時における環境上、衛生上、及び設備保全上の問題を解消できると共に、処理作業が容易になる。
【0038】
そして、粒状物中の有機物の分解過程で発生する硫化水素と、有機物を被覆している消石灰との間では、
S+Ca(OH) → CaS+2H
の反応が生じて硫化カルシウム(CaS)が生成される。生成した硫化カルシウムは、常温の大気中では安定に存在するので粒状物は安定化する。また、有機物の分解過程で発生した硫化水素は、硫化カルシウムの生成に使用されて消費されるため、有機物の分解が終了するまでの期間、悪臭の発生を確実に防止できる。なお、生成した硫化カルシウムは水分が存在すると、緩やかに加水分解して硫化水素カルシウム、水酸化カルシウムに変化するので、硫化カルシウムが分解しても悪臭の発生を防止できる。
【0039】
(乾燥工程)
第1の撹拌混合装置14で製造された粒状物をベルトコンベア20を介して外部に取出し、図示しない容器に充填し、粒状物が充填された容器を乾燥機24内に装入して、100℃以上150℃以下の温度で加熱して、粒状物の含水率が5〜10質量%になるように減水処理を行う。これによって、粒状物を減菌して粒状物の安全性を高めると共に、水分の調整を行うことができ、粒状物を安全性が高く、利便性に優れた有機肥料として提供できる。なお、粒状物を有機肥料として使用する場合、減水汚泥の含水率を調整して、粒状物のサイズを、例えば、球換算で1〜6mmとする。
【0040】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る汚泥の処理方法について説明する。
図3に示すように、第2の実施の形態に係る汚泥の処理方法は、下水又は家畜糞尿の処理場11で発生し、食物に由来する繊維状の有機物を含む汚泥から路盤材を製造する方法であって、汚泥から水分の一部を脱水して、繊維状の該有機物が凝集し含水率が40質量%以上75質量%以下の減水汚泥を製造する脱水工程と、減水汚泥を第1の撹拌混合装置14に受入れ、更に生石灰貯留手段13から供給された生石灰を加えて混合し、減水汚泥中の水分と生石灰との反応で消石灰を生成させると共に消石灰の生成反応で発生する熱で減水汚泥を加熱しながら、減水汚泥中の水分の表面張力を解放させて繊維状の有機物を分散させ、分散した有機物が縮んで丸くなった表面を生成した消石灰の一部で被覆して粒状物を製造する粒状化工程とを有している。
【0041】
更に、第2の実施の形態に係る汚泥の処理方法は、粒状化工程で製造された粒状物を焼成炉25で800℃以上1200℃以下の温度で焼成する焼成工程と、焼成工程で得られた焼却灰に水分と生石灰を加えて混合し、生石灰と水分との反応で生成した消石灰中に焼却灰が分散した第1の混合物を製造する工程と、第1混合物の製造工程で得られた第1の混合物に更に軽焼マグネシアを加えて混合し、軽焼マグネシアと第1の混合物中の水分との反応により生成した水酸化マグネシウムを第1の混合物中に分散させて、第1の混合物中の消石灰と水酸化マグネシウムとの反応で水和物を生成させながら徐々に固化する第2の混合物を製造する工程と、第2の混合物が固化する前に、第2の混合物を路盤材の形状に成形して固化させる成形工程とを有している。
【0042】
ここで、脱水工程と粒状化工程は、第1の実施の形態に係る汚泥の処理方法と同様の方法で行うことができるので、説明は省略し、焼成工程、第1の混合物を製造する工程、第2の混合物を製造する工程、成形工程について説明する。
(焼成工程)
粒状物を焼成炉25で焼成すると、有機物は燃焼により消失し、繊維状の有機物に付着していた無機物に由来する焼却灰が得られる。なお、焼却灰中には、有機物を被覆していた消石灰が変化した生石灰が含まれている。
【0043】
(第1の混合物を製造する工程)
焼成炉25から供給された焼却灰、水分、及び生石灰貯留手段13からの生石灰を第1の撹拌混合装置14で混合すると、焼却灰中に含まれる生石灰及び加えた生石灰がそれぞれ水分と反応して消石灰を生成し、焼却灰が生成した消石灰中に分散した第1の混合物が生成される。ここで、焼却灰と混合する生石灰の重量は、焼却灰の重量に対する生石灰の重量の重量比で表した場合、例えば、0.1〜0.3である。なお、焼却灰を均一に消石灰中に分散させるには、焼却灰に対して加える生石灰の量は重量比で少なくとも0.1とする必要がある。また、焼却灰に対して加える生石灰の量が、重量比で0.3を超えると、消石灰中に分散している焼却灰の距離が拡大するだけで、焼却灰を均一に消石灰中に分散させる効果は変化せず、生石灰の使用コストが上昇するので好ましくない。
【0044】
(第2の混合物を製造する工程)
第1の撹拌混合装置14において、生成した第1の混合物に軽焼マグネシア貯留手段26からの軽焼マグネシアを混合すると、第1の混合物中では、第1の混合物中の水分と軽焼マグネシアとの間に、
MgO+HO→ Mg(OH)
の反応が生じて水酸化マグネシウム(Mg(OH))が生成する。そして、生成した水酸化マグネシウムは第1の混合物中に均一に分散する。第1の混合物中に分散した水酸化マグネシウムは、第1の混合物中の消石灰との間で、
Ca(OH)+ Mg(OH)→ CaMg(OH)
の反応が生じて四水酸化カルシウムマグネシウムの水和物が生成しながら徐々に固化していく第2の混合物が製造される。なお、第1の混合物に加える軽焼マグネシアの重量は、生石灰の重量に対する軽焼マグネシアの重量の重量比で表した場合、例えば、1〜3である。ここで、第2の混合物を固化させるには、生石灰に対する軽焼マグネシアの使用量は重量比で少なくとも1とする必要がある。また、軽焼マグネシアを重量比で3を超えて加えても、第2の混合物を固化させる作用に大きな増加はなく、軽焼マグネシアの使用増加に伴う製造コストが増加するので好ましくない。
【0045】
(成形工程)
消石灰と水酸化マグネシウムとの間で四水酸化カルシウムマグネシウムの水和物が生成する反応は緩やかに進行するので、第1の撹拌混合装置14で製造された第2の混合物が固化する前に、第2の混合物をプレス成形機30を用いて一定のサイズ(例えば、サイズが10〜30mm)の路盤材に成形する。そして、得られた路盤材を静置して、路盤材を形成している第2の混合物中で四水酸化カルシウムマグネシウムの水和物の生成を進行させて路盤材を固化させる。
【0046】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、汚泥の処理設備を、減水汚泥製造装置、生石灰貯留手段、第1の撹拌混合装置、及び乾燥機で構成して、有機肥料の製造装置として使用することも、減水汚泥製造装置、生石灰貯留手段、第1の撹拌混合装置、焼成炉、軽焼マグネシア貯留手段、及びプレス成形機で構成して、路盤材の製造装置として使用することもできる。また、第1、第2の撹拌混合装置を別々に設けてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10:汚泥の処理設備、11:処理場、12:減水汚泥製造装置、13:生石灰貯留手段、14:第1の撹拌混合装置、15:ポンプ、16:輸送管、17:フィルタープレス、18:ベルトコンベア、20:ベルトコンベア、21:生石灰貯蔵ホッパー、22:生石灰切出し機、23:生石灰輸送管、24:乾燥機、25:焼成炉、26:軽焼マグネシア貯留手段、27:軽焼マグネシア貯蔵ホッパー、28:軽焼マグネシア切出し機、29:軽焼マグネシア輸送管、30:プレス成形機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水又は家畜糞尿の処理場で発生し、食物に由来する繊維状の有機物を含む汚泥から水分の一部を脱水して、該繊維状の有機物が凝集し含水率が40質量%以上75質量%以下の減水汚泥を製造する脱水工程と、
前記減水汚泥に生石灰を加えて混合し、該減水汚泥中の水分と該生石灰との反応で消石灰を生成させると共に該消石灰の生成反応で発生する熱で該減水汚泥を加熱しながら、該減水汚泥中の水分の表面張力を解放させて前記繊維状の有機物を分散させ、この分散した有機物が縮んで丸くなった表面を前記消石灰の一部で被覆して粒状物を製造する粒状化工程とを有し、
前記粒状化工程で製造された前記粒状物中の有機物が分解していく過程で発生する硫化水素を、該有機物を被覆している前記消石灰と反応させて硫化カルシウムに変化させることを特徴とする汚泥の処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の汚泥の処理方法において、前記減水汚泥の含水率を変化させて、前記粒状物のサイズを調整することを特徴とする汚泥の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の汚泥の処理方法において、前記粒状化工程で製造された前記粒状物を、更に100℃以上150℃以下の温度で加熱して該粒状物中の水分量を調整する乾燥工程を有することを特徴とする汚泥の処理方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の汚泥の処理方法において、前記粒状化工程で製造された前記粒状物を焼成して該粒状物中の有機物を燃焼させて消失させる焼成工程と、
前記焼成工程で得られた焼却灰に水分と生石灰を加えて混合し、該生石灰と該水分との反応で生成した消石灰中に前記焼却灰が分散した第1の混合物を製造する工程と、
前記第1の混合物の製造工程で得られた前記第1の混合物に更に軽焼マグネシアを加えて混合し、該軽焼マグネシアと該第1の混合物中の水分との反応により生成した水酸化マグネシウムを該第1の混合物中に分散させて、該第1の混合物中の消石灰と該水酸化マグネシウムとの反応で水和物を生成させながら徐々に固化する第2の混合物を製造する工程とを有し、
前記第2の混合物が固化する前に、該第2の混合物を成形して該第2の混合物を特定形状に固化させることを特徴とする汚泥の処理方法。
【請求項5】
下水又は家畜糞尿の処理場で発生し、食物に由来する繊維状の有機物を含む汚泥から水分の一部を脱水して該繊維状の有機物が凝集し含水率が40質量%以上75質量%以下の範囲の減水汚泥を製造する減水汚泥製造装置と、
前記汚泥の処理に使用する生石灰を貯留する生石灰貯留手段と、
第1の撹拌混合装置とを有し、
前記第1の撹拌混合装置で、前記減水汚泥製造装置からの前記減水汚泥及び前記生石灰貯留手段から供給される生石灰を受け入れて混合し、該減水汚泥中の水分と該生石灰との反応で消石灰を生成させると共に該消石灰の生成反応で発生する熱で該減水汚泥を加熱しながら、該減水汚泥中の水分の表面張力を解放させて前記繊維状の有機物を分散させ、この分散した有機物が縮んで丸くなった表面を前記消石灰の一部で被覆して粒状物を製造することを特徴とする汚泥の処理設備。
【請求項6】
請求項5記載の汚泥の処理設備において、更に、前記第1の撹拌混合装置で製造された前記粒状物を100℃以上150℃以下の温度で加熱して減水させる乾燥手段を有していることを特徴とする汚泥の処理設備。
【請求項7】
請求項5記載の汚泥の処理設備において、更に、前記第1の撹拌混合装置で製造された前記粒状物を800℃以上1200℃以下の温度で焼成して焼却灰を製造する焼成炉と、
前記焼却灰の処理に使用する軽焼マグネシアを貯留する軽焼マグネシア貯留手段と、
前記焼成炉からの前記焼却灰、前記生石灰貯留手段からの生石灰、及び水分を混合して第1の混合物を製造し、該第1の混合物に前記軽焼マグネシア貯留手段から受け入れた軽焼マグネシアを混合して第2の混合物を製造する第2の撹拌混合装置と、
前記第2の撹拌混合装置で製造された前記第2の混合物が固化する前に、該第2の混合物を成形して該第2の混合物を特定形状に固化させる成形手段とを有し、
前記第1の混合物は、前記混合された生石灰と水分との反応で生成した消石灰中に前記焼却灰が分散して製造され、前記第2の混合物は、前記軽焼マグネシアと前記第1の混合物中の水分との反応により生成した水酸化マグネシウムが該第1の混合物中に分散して製造され、しかも、該第2の混合物は、該第1の混合物中の消石灰と該水酸化マグネシウムとの反応で水和物を生成させながら徐々に固化することを特徴とする汚泥の処理設備。
【請求項8】
請求項7記載の汚泥の処理設備において、前記第2の撹拌混合装置を前記第1の撹拌混合装置で兼用することを特徴とする汚泥の処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−31119(P2011−31119A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176727(P2009−176727)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(595018628)
【Fターム(参考)】