説明

汚泥の処理方法

【課題】活性汚泥処理により発生した余剰汚泥を汚泥処理系において効率的に減量化処理することにより、水処理に悪影響が生じるのを防ぎながら、余剰汚泥を最小限の量に削減することができる汚泥の処理方法を提供すること。
【解決手段】有機性汚水の活性汚泥処理に伴って発生した余剰汚泥を好気性消化により減量化する汚泥の処理方法において、好気性消化槽10を余剰汚泥の流れ方向で複数の段に分割し、最上流の第1段消化槽10aに余剰汚泥D及び生物活性促進剤Fを投入し、第1段消化槽10a内を25〜40℃に保ちながら好気性消化処理を行うとともに、最下流の最終段消化槽10bの汚泥の一部を電解処理槽12に導いて電気分解処理を行った後、第1段消化槽10aに返送するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水等の有機性の汚水を活性汚泥により生物学的に分解処理する汚泥の処理方法に関し、特に、有機物の分解処理によって発生する汚泥量を最小限にすることができる汚泥の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場等に流入する汚水を処理するために、活性汚泥の曝気槽に汚水を流入し、これを曝気、攪拌して生物処理を行う活性汚泥法が用いられている。
水処理工程で発生する余剰汚泥は、通常、濃縮や脱水を行った後、埋立処分されているが、処分地が次第になくなりつつあることから、余剰汚泥に対し、オゾン等を添加して汚泥微生物を殺菌及び可溶化し、系内で生物分解することにより、汚泥発生量を減量化する方法が試みられており、特に、電気分解を用いる方法は、処理コストが安価な方法として注目されている。
【0003】
しかし、これらの汚泥減量化方法では、処理した汚泥を水処理系の曝気槽に返送して曝気槽の活性汚泥により生物分解するため、水処理系の負荷が増大して、曝気能力が不足したり、処理水質が悪化するなどの問題があった。
【0004】
一方、余剰汚泥を汚泥処理系で減量化するため、従来の濃縮・脱水処理の前段に嫌気性消化や好気性消化を付加する方法も採用されているが、嫌気性・好気性とも消化槽で減量化できる割合は40〜60%程度であり、必ずしも十分な性能とはいえず、近年はあまり採用されないという状況になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の汚泥の処理方法が有する問題点に鑑み、活性汚泥処理により発生した余剰汚泥を汚泥処理系において効率的に減量化処理することにより、水処理に悪影響が生じるのを防ぎながら、余剰汚泥を最小限の量に削減することができる汚泥の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の汚泥の処理方法は、有機性汚水の活性汚泥処理に伴って発生した余剰汚泥を好気性消化により減量化する汚泥の処理方法において、好気性消化槽を余剰汚泥の流れ方向で複数の段に分割し、最上流の第1段消化槽に余剰汚泥及び生物活性促進剤を投入し、該第1段消化槽内を25〜40℃に保ちながら好気性消化処理を行うとともに、最下流の最終段消化槽の汚泥の一部を電解処理槽に導いて電気分解処理を行った後、前記第1段消化槽に返送することを特徴とする。
【0007】
この場合において、生物活性促進剤として、水処理施設に流入する有機性汚水の一部、又は別途培養した微生物溶液を投入することができる。
【0008】
また、電解処理して返送する汚泥固形物量を、第1段消化槽に投入される汚泥固形物量の2〜5倍量とすることができる。
【0009】
また、最終段消化槽の汚泥を遠心分離機等の固液分離装置を用いて濃縮分離し、分離水を水処理施設に送水するとともに、濃縮した汚泥の全量又は一部を好気性消化槽に返送することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の汚泥の処理方法によれば、好気性消化と電解処理を合理的に組合せ、電解処理により殺菌及び一部が可溶化し易分解化した汚泥を対象に、生物活性促進剤を添加して第1段消化槽内を25〜40℃に保ちながら好気性消化を行うことから、効率的かつ安定した好気性消化を行うことができ、場外に排出する汚泥固形物量を従来の濃縮・脱水処理の場合の1/3以下に削減することができる。
【0011】
この場合、生物活性促進剤として、水処理施設に流入する有機性汚水の一部、又は別途培養した微生物溶液を投入することにより、好気性消化槽における消化効率を高めることができる。
【0012】
また、電解処理した汚泥は、汚泥微生物が殺菌、可溶化されて生物分解し易い状態になっており、生きている汚泥微生物により徐々に分解されていくが、電解処理汚泥を栄養源として減量化量の2〜5割の汚泥微生物が増殖するため、投入した余剰汚泥量よりも多めに電解処理しなければ、十分な減量化効果が得られない。
そこで、電解処理して返送する汚泥固形物量を、第1段消化槽に投入される汚泥固形物量の2〜5倍量とすることにより、余剰汚泥を効率的に処理し、減量化効果を向上させることができる。
【0013】
また、最終段消化槽の汚泥を遠心分離機等の固液分離装置を用いて濃縮分離し、分離水を水処理施設に送水するとともに、濃縮した汚泥の全量又は一部を好気性消化槽に返送することにより、高濃度に保たれた消化槽汚泥を対象に電解処理を行うことができ、電気代や電解質添加に要するランニングコストを安価にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の汚泥の処理方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に、本発明における汚泥の処理方法の一実施例を示す。
下水処理場のような汚水処理施設に流入した汚水Aは、汚水中のゴミや砂を前処理設備1で処理した後、曝気槽2において、汚水中の有機物が活性汚泥により生物的に二酸化炭素と水に分解処理される。
さらに、処理後の汚泥混合液は沈殿槽3に導かれて固液分離され、上澄水が処理水Bとして排出される。
沈殿した汚泥の大半は、返送汚泥Cとして返送汚泥ポンプ4により曝気槽に戻されるが、生物処理に伴って汚泥微生物が増殖して余剰分の汚泥が発生する。
この余剰汚泥Dを汚泥処理系の汚泥移送ポンプ5により濃縮設備6へと導く。濃縮設備6は、重力式の濃縮槽を用いるのが安価で好ましいが、遠心濃縮機などの機械濃縮設備を用いることも可能である。
【0016】
濃縮された余剰汚泥Dは、濃縮汚泥Eとして、濃縮汚泥ポンプ7により好気性消化槽10へと移送される。
好気性消化槽10は、濃縮汚泥Eの流れ方向で3段に分割されており、各段の水槽からはオーバーフローして後段の水槽に流出するように堰が設けられるとともに、それぞれの水槽の底部には必要な酸素を供給するための散気管が設けられている。
なお、好気性消化槽10を分割する段数は3段に限定されるものではなく、2段以上であれば適用可能であるが、3〜5段に分割するのが適切である。
【0017】
ここで、最終段消化槽10bの汚泥Gを第1段消化槽10aに返送する過程には、電解処理を行うために汚泥返送ポンプ11と電解処理槽12とが設けられている。
また、電解処理槽12において電解処理を効率的に行うために、塩化ナトリウムや塩化カリウム等の電解質を溶解した電解質貯留タンク13と注入ポンプ(図示省略)とが設けられ、所定量の電解質水溶液を電解処理槽12に注入できるよう構成されている。
【0018】
さらに、好気性消化槽10全体の汚泥微生物を高濃度に保つとともに、好気性消化槽10への投入汚泥量と当量の消化汚泥を引抜いて好気性消化槽10の水位の安定化を図るため、送泥ポンプ14及び固液分離するための遠心濃縮機15が設けられている。
遠心濃縮機15の分離水Iに対しては、水処理施設の曝気槽2に送水する配管を設け、濃縮した遠心濃縮汚泥Hに対しては、第1段消化槽10aに返送する配管と系外に排出するための配管に分岐されている。
なお、電解処理槽12の構造や構成は特に限定されるものではないが、注入した電解質が汚泥中に分散するような攪拌混合ゾーンを設けたり、電解処理時に発生する発泡状のスカムが電極に固着しないような構造、あるいは発泡スカムを脱泡処理するような装置を設けることが好ましい。
【0019】
一方、電解処理した返送汚泥の分解効果を高めるため、生物活性促進剤貯留タンク8と注入ポンプ9を設ける。
生物活性促進剤としては、水処理施設に流入する有機性汚水の一部を配管で導いて用いることが可能である。
また、バチルス等の菌体を別途培養して定期的にこの微生物溶液を生物活性促進剤貯留タンク8に補充しながら使用することも可能である。
【0020】
次に、本実施例の作用について説明する。
好気性消化槽10の最終段消化槽10bから汚泥返送ポンプ11によって引抜かれた汚泥は、電解処理槽12へと送泥される。
電解処理槽12では、電解質貯留タンク13より所定量の電解質水溶液が汚泥に注入・混合され、直流電流を流すことにより電解処理が行われる。
すなわち、直流電流を流すことにより注入した電解質の塩素イオンが次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンに転換されるため、これらの酸化力によって汚泥微生物が殺菌され、また一部が可溶化する。
電解処理の条件としては、電解質の注入量が汚泥に対し0.3〜1%、電極にはチタン基板に白金及びイリジウムをコーティングした金属電極を使用し、電流密度5〜40mA/cmで、汚泥固形物1g当りの通電量を0.05〜0.3A・hrとして処理するのが望ましい。
なお、電解処理時に微量の酸を注入し、pH=5前後の弱酸性領域で電解を行えば、次亜塩素酸イオンよりも酸化力の大きい次亜塩素酸のみを生成させることができるため、より効率的に電解処理を行うことができる。
【0021】
電解処理した汚泥は、第1段消化槽10aに返送されるが、殺菌又は一部が可溶化した汚泥微生物が第1段消化槽10aから最終段消化槽10bへ移動する間に、効率的に生物分解させるには、活性の高い微生物を高濃度に保持する必要がある。
すなわち、濃縮汚泥ポンプ7により第1段消化槽10aに投入された濃縮汚泥Eには、多量の生きた微生物が含まれるが、必ずしも活性の高い汚泥ではない。
このため、汚泥微生物にとって易分解な有機物を含む有機性汚水、又は活性の高い微生物を含む培養液を生物活性促進剤貯留タンク8に貯留しておき、濃縮汚泥の投入に合せてこの生物活性促進剤Fを少量添加する。
それとともに、好気性消化槽10全体を25〜40℃に保つことにより、この温度領域で最も高い生物活性を有する微生物の活性を飛躍的に高めることができる。
【0022】
また、電解処理した汚泥は、汚泥微生物が殺菌、可溶化されて生物分解し易い状態になっており、生きている汚泥微生物により徐々に分解されていくが、電解処理汚泥を栄養源として減量化量の2〜5割の汚泥微生物が増殖するため、投入した濃縮汚泥Eの量よりも多めに電解処理しなければ、十分な減量化効果が得られないことから、固形物重量として投入汚泥の2〜5倍量の汚泥Gを電解処理する。
【0023】
一方、このような減量化処理を行っても、通常は汚泥量をゼロにすることはできないため、最終段消化槽10bから汚泥Gを遠心濃縮機15に導いて固液分離を行い、分離水を水処理施設に送水することで好気性消化槽10の水位の安定化を図り、濃縮した汚泥の適量、例えば、好気性消化槽10に投入する濃縮汚泥Eの固形物量の2割程度、固形物を系外に排出する。
好気性消化槽10内の汚泥濃度を考慮しながら、適切な量の汚泥を電解処理し、適量の遠心濃縮汚泥Hを系外に排出することで、好気性消化槽10を安定化させることが可能となる。
なお、遠心濃縮汚泥Hを排出することに代えて、好気性消化槽10の汚泥を直接汚泥ポンプ14で排出することも可能である。この場合は、減量化後の少量の汚泥を排出するだけでは、好気性消化槽10の水位が次第に上昇することになるため、遠心濃縮機15を用いて汚泥Gの固液分離を行い、分離水は水処理施設に送水し、濃縮汚泥は全量好気性消化槽10に戻し、水位が所定の水位になるまで遠心濃縮機15を運転する必要がある。
【0024】
以上により、本実施例の汚泥の処理方法は、好気性消化と電解処理を合理的に組合せ、電解処理により殺菌及び一部が可溶化し易分解化した汚泥を対象に、生物活性促進剤を添加して槽内を25〜40℃に保ちながら好気性消化を行うため、効率的かつ安定した好気性消化を行うことができ、場外に排出する汚泥固形物量を従来の濃縮・脱水処理の場合の1/3以下に削減することができる。
また、遠心分離機等の固液分離装置で固液分離を行い、濃縮した汚泥の全量又は一部を好気性消化槽に返送することで、高濃度に保たれた消化槽汚泥を対象に電解処理を行うため、電気代や電解質添加に要するランニングコストを安価にできるという効果を有する。
【0025】
以上、本発明の汚泥の処理方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の汚泥の処理方法は、好気性消化と電解処理を合理的に組合せ、活性汚泥処理により発生した余剰汚泥を汚泥処理系において効率的に減量化処理することにより、水処理に悪影響が生じるのを防ぎながら、余剰汚泥を最小限の量に削減するという特性を有していることから、生活系の汚水を活性汚泥で処理する下水処理場の他に、工場等で発生する有機性排水を活性汚泥で処理する排水処理施設にも好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の汚泥の処理方法の一実施例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0028】
1 前処理設備
2 曝気槽
3 沈殿槽
4 返送汚泥ポンプ
5 汚泥移送ポンプ
6 濃縮設備
7 濃縮汚泥ポンプ
8 生物活性促進剤貯留タンク
9 注入ポンプ
10 好気性消化槽
10a 第1段消化槽
10b 最終段消化槽
11 汚泥返送ポンプ
12 電解処理槽
13 電解質貯留タンク
14 送泥ポンプ
15 遠心濃縮機
A 汚水
B 処理水
C 返送汚泥
D 余剰汚泥
E 濃縮汚泥
F 生物活性促進剤
G 消化汚泥
H 遠心濃縮汚泥
I 分離水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性汚水の活性汚泥処理に伴って発生した余剰汚泥を好気性消化により減量化する汚泥の処理方法において、好気性消化槽を余剰汚泥の流れ方向で複数の段に分割し、最上流の第1段消化槽に余剰汚泥及び生物活性促進剤を投入し、該第1段消化槽内を25〜40℃に保ちながら好気性消化処理を行うとともに、最下流の最終段消化槽の汚泥の一部を電解処理槽に導いて電気分解処理を行った後、前記第1段消化槽に返送することを特徴とする汚泥の処理方法。
【請求項2】
生物活性促進剤として、水処理施設に流入する有機性汚水の一部、又は別途培養した微生物溶液を投入することを特徴とする請求項1記載の汚泥の処理方法。
【請求項3】
電解処理して返送する汚泥固形物量を、第1段消化槽に投入される汚泥固形物量の2〜5倍量とすることを特徴とする請求項1又は2記載の汚泥の処理方法。
【請求項4】
最終段消化槽の汚泥を遠心分離機等の固液分離装置を用いて濃縮分離し、分離水を水処理施設に送水するとともに、濃縮した汚泥の全量又は一部を好気性消化槽に返送することを特徴とする請求項1、2又は3記載の汚泥の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−296172(P2008−296172A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147029(P2007−147029)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】