説明

汚泥凝集混和装置

【課題】 汚泥中の繊維質の撹拌器への絡み付きが防止され、保守作業も容易な汚泥凝集混和装置を提供する。
【解決手段】 槽体2内に供給される汚泥と凝集剤とを撹拌器10により混合撹拌して凝集汚泥排出口5から流出させる汚泥凝集混和装置1において、撹拌器10が、槽体2内の流体の液面より上側に離間した位置から上方に延びる回転軸11の下部に、複数本の撹拌棒12を放射状に且つ下向きに傾斜させて取付けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、汚泥と凝集剤(凝集助剤を添加する場合も含む)を混合撹拌して凝集汚泥を生成する汚泥凝集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚泥と凝集剤とを混合撹拌して凝集汚泥を生成する凝集混和装置としては、槽体内に縦設された回転軸にパドル式の撹拌羽根(撹拌翼)を取付けた撹拌器をそなえたもの(たとえば特許文献1および2参照。)や、上記回転軸にプロペラ式(スクリュー式ともいう)の撹拌羽根を取付けた撹拌器をそなえたもの(たとえば特許文献2参照。)などがある。
【特許文献1】特開昭62−197110号公報
【特許文献2】特開2000−317214号公報
【0003】
ところが上記特許文献1および2記載の汚泥凝集混和装置を下水汚泥の凝集混和装置として用いると、汚泥中に多く含まれる毛髪などの繊維質が、パドル式あるいはプロペラ式の撹拌羽根に絡み付くとともに、汚泥中に浸漬状態で回転する回転軸にも同様に上記繊維質が絡み付き、これらの絡み付いた繊維質が塊状に生長して撹拌作用を低下させ、またこれらの絡み付いた繊維質を人手により頻繁に除去する必要があり、保守にも手間がかかるという問題点を有するものであった。
【0004】
そこで上記の繊維質の絡み付きを防止するものとして、図3に示すように、槽体32内に縦設した回転軸33に、回転軸33のほぼ全長にわたって延びる小巾の平板状の撹拌羽根34を4枚、放射状に取付けた長尺羽根板式の撹拌器35を、モータを原動機とする駆動装置36により回転駆動するようにした汚泥凝集混和装置31が採用された例もある。なお図中、汚泥や凝集剤の供給口および凝集汚泥の排出口等の図示は、省略してある。
【0005】
しかし上記の汚泥凝集混和装置31は、撹拌羽根34および回転軸33への繊維質の絡み付きは低減化されるが、この絡み付き防止のために小巾平板で構成した撹拌羽根34は、撹拌能力を確保するために図示のように槽体32の底部に至る長尺の撹拌羽根34とする必要があり、回転軸33は上部のみでの片持支持は困難となり、回転軸33の下端部を槽体32内で回転支持する下部軸受37を設ける必要がある。このためこの下部軸受37の定期点検時などには、槽体32内の汚泥全量の排出作業や槽体32内での点検作業が必要で、保守作業が極めて煩雑であるという問題点を有するものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は上記従来の問題点を解決しようとするもので、汚泥中の繊維質の撹拌器への絡み付きが防止され、保守作業も容易な汚泥凝集混和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の汚泥凝集混和装置は、槽体内に供給される汚泥と凝集剤とを撹拌器により混合撹拌して凝集汚泥排出口から流出させる汚泥凝集混和装置において、前記撹拌器が、前記槽体内の流体の液面より上側に離間した位置から上方に延びる回転軸の下部に、複数本の撹拌棒を放射状に且つ下向きに傾斜させて取付けてなることを特徴とする。
【0008】
このように構成すると、撹拌器を回転駆動して汚泥と凝集剤を混合撹拌中において、槽体内の流体の液面より上方位置にある回転軸部には、汚泥中の繊維質が絡み付くことはなく、また上記繊維質が回転中の撹拌棒に引掛かっても、撹拌棒は放射状に且つ下方へ傾斜しているので、その繊維質は遠心力により撹拌棒に沿って斜め下方へ駆動されて撹拌棒先端部から離脱し、繊維質が撹拌棒に絡み付き塊状に粗大化することがない。そしてこの繊維質の絡み付きの防止により、撹拌器の清掃作業は長期にわたっておこなう必要がなくなり、また槽体内の底部には、回転軸支持用の下部軸受も不要なのでその煩雑な点検作業も不要となり、保守作業が極めて容易となる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したようにこの発明によれば、汚泥中の繊維質の撹拌器への絡み付きが防止され、保守作業も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図1〜図2に示す一例により、この発明の実施の形態を説明する。図中、1は下水汚泥の凝集混和用の汚泥凝集混和装置で、2は汚泥と凝集剤(凝集助剤を添加する場合も含む)を受入れる槽体であり、その蓋板2a部には汚泥供給口3と、凝集剤供給口4が設けられ、また側壁の上部には凝集汚泥排出口5が設けてある。
【0011】
10は、槽体2の中心部に設けられ槽体2内の汚泥と凝集剤とを混合撹拌する撹拌器で、槽体2内の汚泥,凝集剤,水等の混合物である流体6の液面7より上側に離間した位置から上方に延びる回転軸11の下部太径部11aに、3本の丸鋼製の撹拌棒12を図2に示すように放射状に、且つ下向きに傾斜させて、溶接により固着取付けしてなる。なおこの例における撹拌棒12の(水平面に対する)傾斜角度は60度としてある。
【0012】
そして回転軸11は、蓋板2aに設けたシール部21を貫通して軸受22により回転自在に支持され、その上端部は、モータ23と減速機24とからなる駆動装置25の出力軸25aに接続されている。
【0013】
上記構成の汚泥凝集混和装置1においては、汚泥を汚泥供給口3から、凝集剤を凝集剤供給口4から、それぞれ槽体2内に供給し、撹拌器10を駆動装置25により回転駆動して汚泥と凝集剤を混合撹拌し、これによって生成された凝集汚泥は凝集汚泥排出口5を越流する形で流出し、後続の脱水処理装置等へ供給され、槽体2内の流体6の液面7はほぼ一定レベルに維持される。
【0014】
この混合撹拌中、鉛直軸線のまわりに回転駆動される撹拌器10は、その回転軸11は液面7より上方位置にあるので、汚泥中の繊維質が回転軸11に絡み付くことは全くなく、また上記繊維質が回転中の撹拌棒12に引掛かって絡み付こうとすると、撹拌棒12は放射状に且つ下方へ傾斜しているので、回転による遠心力により繊維質は撹拌棒12に沿って斜め下方へ駆動されて撹拌棒12の先端部から離脱し、繊維質が撹拌棒12に絡み付いて塊状に生長し撹拌能力を低下させたり必要回転駆動力の過大化を招いたりすることがなく、長時間にわたり安定した混合撹拌をおこなうことができる。
【0015】
そしてこのように繊維質の絡み付きが防止されるので、繊維質除去のための撹拌器10の清掃作業は、長期にわたっておこなう必要がなく、また前記した図3に示す従来の汚泥凝集混和装置31におけるような槽体内底部の下部軸受37も不要なので、この下部軸受37部の煩雑な点検作業も一切必要とせず、保守作業は極めて容易となる。
【0016】
また、撹拌棒12の本数や傾斜角度および槽体2の内法寸法に応じた撹拌棒長さの選定、回転駆動速度の選定などにより、汚泥供給口3から供給される汚泥の質や量に対応した適切な汚泥の凝集混和処理能力を得ることができるのである。
【0017】
この発明は上記の例に限定されるものではなく、たとえば撹拌棒12の材質や断面形状や回転軸11への取付方法,前述した(撹拌棒の)本数や傾斜角度、回転軸11の形状や回転支持構造、駆動装置25の形式など、各部の具体的構成は、上記以外のものとしてもよい。また撹拌棒12は、上記の例の直棒状の撹拌棒の他、湾曲棒状の撹拌棒としてもよい。
【0018】
またこの発明は、下水汚泥の他、し尿汚泥、上水汚泥、産業排水汚泥などの汚泥の凝集混和装置にも適用できるものであり、また槽体内の流体中に、混合撹拌促進部材として流体に近い比重の多数個の球体を混入した汚泥の凝集混和装置にも適用できるものである。
【0019】
さらにこの発明は、汚泥を混合撹拌して生成した凝集汚泥を脱水処理工程へ供給する汚泥凝集混和装置の他、汚泥性状に応じてたとえば汚泥と無機凝集剤とを混合撹拌して一次凝集汚泥とし、これに両性高分子凝集剤を添加して混合撹拌して二次凝集汚泥(造粒汚泥)とする場合の、一次および二次凝集混和装置のいずれにも適用できるものである。そしてこの一次および二次凝集混和装置の両槽体が隣接している場合や、汚泥凝集混和装置の槽体が後続の沈殿槽と隣接している場合などは、両槽の隔壁部等に形成した越流堰を、凝集汚泥排出口として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態の一例を示す汚泥凝集混和装置の縦断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】従来の汚泥凝集混和装置の一例を示す略示縦断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1…汚泥凝集混和装置、2…槽体、3…汚泥供給口、4…凝集剤供給口、5…凝集汚泥排出口、6…流体、7…液面、10…撹拌器、11…回転軸、12…撹拌棒、22…軸受、25…駆動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体内に供給される汚泥と凝集剤とを撹拌器により混合撹拌して凝集汚泥排出口から流出させる汚泥凝集混和装置において、
前記撹拌器が、前記槽体内の流体の液面より上側に離間した位置から上方に延びる回転軸の下部に、複数本の撹拌棒を放射状に且つ下向きに傾斜させて取付けてなることを特徴とする汚泥凝集混和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−22873(P2009−22873A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188053(P2007−188053)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(500529676)名古屋市 (8)
【Fターム(参考)】