説明

汚泥処理方法及び処理システム

【課題】 この発明は、汚泥水を一度に固形物と蒸気に分離することを目的としたものである。
【解決手段】 この発明は、処理炉中の汚泥水にゼットガスバーナーからゼットガス炎を吹きつけて、瞬時に超高温加熱し、水分及び低融点物質を気化させ、前記蒸発気体は、集塵機で気体と固体を分離し、分離気体は、分離膜を介して水素ガスと、未透過ガスとに分離し、未透過ガスを処理してクリーン気体を外界へ放出し、前記集塵機で分離した固体を集め、前記処理炉に残った未昇華金属その他の固形物を回収することを特徴とした汚泥処理方法により目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生活廃水汚泥その他有害物を含んだ汚泥を処理することを目的とした汚泥処理方法及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的に採用されている汚泥処理は、汚泥を乾燥させ、含水率を下げた後、焼却している。
【0003】
また、ダイオキシンで汚染された地盤の表層に対して、原位置で熱分解処理する技術が提案されている。
【0004】
更に、廃棄物焼却炉にブラウンガスを導入して、廃棄物を高温燃焼する技術も開示されている。
【特許文献1】特開2004−243157号
【特許文献2】特開2000−39123号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来採用されている技術は、汚泥を乾燥させ然る後、焼却するので、処理工程が二段階となり、処理設備及びランニングコストが厖大となる問題点があった。
【0006】
また引用文献1、2の発明は、共に水分含有量の少ない土壌については有効に機能する可能性があるが、例えば、水分90%以上というような汚泥については、そのまま採用することはできない問題点があった。
【0007】
更に、特許文献1においては、ブラウンガスバーナーの使用が記載されているが、水分の多い汚泥に使用した場合の処理技術が記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、処理炉に収容した汚泥に、ゼットガスバーナーから、ゼットガス炎を吹きつけることにより、水分及び低融点物質を瞬時に気化することができるので、汚泥を連続的に処理することができる。
【0009】
またゼットガス炎は、閉空間で発生するので、その熱量は全部有効に利用され、効率がきわめて良好である。前記ゼットガスは、水素ガスと酸素ガスの混合気体であるから、外部から酸素の給送がなくとも、自分の持っている酸素で十分目的を達成することができる。
【0010】
またセラミックスなどの耐熱触媒を使用する場合には、水分の一部がゼットガスに変えられる。例えば、2000℃〜3000℃のセラミックス触媒に水を衝突させると、水は水蒸気になると共に、水蒸気の一部は水素ガスと酸素ガスに変化するが、この場合にも水素ガスと酸素ガスの割合は、燃焼に必要な割合を保っているので、過不足なく完全燃焼することになる。
【0011】
即ち方法の発明は、処理炉中の汚泥水にゼットガスバーナーからゼットガス炎を吹きつけて、瞬時に超高温加熱し、水分及び低融点物質を気化させ、前記蒸発気体は、集塵機で気体と固体を分離し、分離気体は、分離膜を介して水素ガスと、未透過ガスとに分離し、未透過ガスを処理してクリーン気体を外界へ放出し、前記集塵機で分離した固体を集め、前記処理炉に残った未昇華金属その他の固形物を回収することを特徴とした汚泥処理方法であり、ゼットガスは、水を電気分解して生成した水素ガスと酸素ガスをそのまま混合して混合ガスとするものであり、分離膜は水素ガス透過膜であって、分離器内を二分するように張設してあり、透過膜の一側に排気を導き、他側に水素ガスの出口を設けたものである。
【0012】
次にシステムの発明は、汚泥水にゼットガス炎を吹きつけて焼却処理する処理手段と、処理手段により生じた排気の集塵手段と、その気体の処理をする分離手段と、ガス処理器及び固形物処理手段とを組み合せたことを特徴とする汚泥処理システムであり、処理手段は、処理炉にゼットガスバーナーと、汚泥給送手段と、排気手段とを組み合せたものであり、分離手段は、槽内に分離膜を張設し、分離膜の一側に排気を供給し、他側に水素ガスの出口を設けたものであり、集塵手段は、サイクロンとしたものである。
【0013】
更に、処理手段は、処理炉の下部に耐熱性触媒ロストルを設置し、該耐熱触媒ロストルの下面部へゼットガスバーナーからゼットガス炎を吹きつけ、前記処理炉の上部から前記ロストルの上面に向けて、加圧汚泥の噴射手段を設けたものであり、加圧汚泥の噴射手段は、ポンプ移送としたものである。
【0014】
前記発明におけるゼットガスは、水を電気分解して生成した水素ガスと酸素ガスを、そのまま混合したガスであって、ブラウンガスの特性と近似している。
【0015】
そこでゼットガスバーナーでゼットガスを汚泥に吹きつけると、火炎は瞬時に2000℃〜4000℃に昇温するので、水は勿論のこと、低融点物質は悉くガス化(昇華)し、重金属その他の未昇華物が残留するので、夫々分離処理し、有用物として再使用する。そこで排気中の固形物を分離し、ついで水素ガスを分離した後、残余のガスを処理して外界へ放出すれば、全処理を終了する。
【0016】
この発明で使用するゼットガス炎を汚泥水に照射すると、超高温(1000℃〜4000℃)となり、総ての物を溶解するけれども、他物に移るおそれはない。またゼットガス自体が酸素を保有しているので、空気のない場所でも燃焼を継続する。更にゼットガスは表1のような特性を持っている。
【表1】

【0017】
前記のように、ゼットガスは、化石燃料又は化石ガスに比し特性を有するので、目的物を目的温度に加熱し、しかも公害物を出さないので、汚泥処理などに最適である。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、水を電気分解して生成したゼットガスを使用して汚泥を加熱蒸発させるので、加熱熱量はクリーンであって有害ガスの生成されるおそれはない効果がある。
【0019】
また排気中に有毒ガスが含まれているとしても、分離後処理するので、外界へ有害ガスが放出されるおそれがないなどの効果がある。
【0020】
またこの発明によれば、汚泥が完全に処理され、廃棄物は0に近くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明は、処理炉中へ汚泥を供給し、汚泥の上部から、ゼットガス炎を吹きつけて、重金属などの比重の大きい物質以外は昇華させるので、容易に分離することができる。ついで固気分離し(例えばサイクロン使用)、ついで水素を分離した後、残余のガスを処理すれば、クリーン気体となるので、汚泥処理に関し、外界を汚染するおそれはない。また重金属などは分類して再使用することができる。
【0022】
前記におけるゼットガスは、クリーンガスであるから、全体としてクリーンに処理されることになり、従来問題視されていたような環境破壊のおそれは皆無である。
【実施例1】
【0023】
この発明の実施例を図1について説明すると、処理炉へ汚泥水(例えば水分90%以上の砂の混合した汚泥水)に給送すると共に、処理炉へ設置した複数のゼットガスバーナーからゼットガスに点火すると共に吹きつける。
【0024】
この場合に汚泥は、瞬時に2500℃位に昇温し、水及び低温気化物(例えば2000℃以下で昇華する物)は悉く気化し、吸引器に吸引されて、集塵機に送られる。この集塵機は例えばサイクロンであって、気体と固形物を自動的に分離するものである。
【0025】
前記のようにして、固気を分離したならば、分離膜によって水素を分離し、残余の排気は、ガス処理筒で処理し、無害化気体のみを外界へ放出する。
【0026】
気体と分離した固形物は、例えば昇華しなかった金属類又はセラミックスその他の無機物であるが、金属類は夫々分別して再使用し、その他の無機物(例えば砂、石、その他のセラミックス類)は溶解後、水砕又は風砕により小粒化(例えば1mm〜5mm)し、建材などの骨材又はブロックの材料に使用する。
【実施例2】
【0027】
この発明のシステムの実施例を図2、3に基づいて説明すると、処理炉1へ、ゼットガスバーナー2、2と、汚泥水給送パイプ3及び吸引器4を連結する。前記吸引器4の吐出側を、集塵機5の入力側に接続し、集塵機5の吐出側を、膜分離器6の入力側に接続する。この膜分離器6は、分離膜7により水素のみを分離するのである。前記分離器6の排気をガス処理筒8で処理し、煙突9から矢示16のように外界へ放出する。
【0028】
またゼットガスは、ゼットガス発生器10へ送電及び給水し、水を電気分解してゼットガスを発生させる。図中11は分配器であって、ゼットガスを矢示17のように必要な場所へ送る。
【0029】
次に図3の実施例は、処理炉1の他の構造を示すものである。
【0030】
図3の処理炉1aの中央部に、セラミック製のロストル12を設置し、ロストル12の下部にゼットガスバーナー2、2を設置して、ロストル12を加熱する。
【0031】
前記ロストル12の上方の側壁へ、汚泥水の送水筒13端を固定してある。
【0032】
前記において、送水筒13から矢示14のように汚泥水を処理炉1a内のロストル上へ送水すると共に、ゼットガスバーナー2、2を点火して、ロストル12の下面を加熱すると、ロストル12の下面は、例えば2000℃に加熱される。
【0033】
そこで、水及び低融点物は、昇華して、矢示15のように上昇し、図2のように吸引器4に吸引される。一方昇華しない固形物18(例えば金属など)となってロストル12の下に溜まる。
【0034】
前記において、セラミック製のロストル12は、触媒作用があって、汚水の分解時に水素ガスと酸素ガスを生成するので、排気処理で水素ガスを分離することができる。
【実施例3】
【0035】
この発明で用いるゼットガス生成の為の水の電気分解を図4について説明すると、電解槽20内に、多数の電極板21、21を縦に並列設置して、各電極板21、21は導板22、22aにより夫々プラス極、マイナス極を形成している。前記電解槽20の下部には、送水パイプ23の一端が連結され、送水パイプ23の他端は、電解水槽24に連結してある。
【0036】
また電解槽20の上部は、排水パイプ25の基端が連結され、排水パイプ25の他端は、前記電解水槽24の上部の分離匣26に連結されている。前記電解水槽24の上部は、混合ガスの排出パイプ27に連結されている。そこで各電極板21、21に通電すると共に、送水パイプ23のポンプ28を始動すると、電気分解されて生成した水素ガスと酸素ガスと水を、排水パイプ25から矢示29のように取り出し、分離匣26で分離して、排出パイプ27から分配器11に送り(図2)、分配器11から必要個所に分配する。前記ゼットガスの発生器10は一例であって、他の構造を採用することもできる。要は、水素ガスと酸素ガスを混合したゼットガスを生成すれば利用することができる。図中30は電解水槽24への送水パイプ、31は水位計測室、32は水位計、33は電磁バルブ、34は給排気パイプ、35は連通孔、36は電磁石、37はスペーサー、41はスペーサー37の取付ピンである。
【0037】
前記実施例において、各電極21、21及び電磁石36に通電すると共に、ポンプ28を始動すると、電解水は、矢示38、39、40のように、電解水槽24から電解槽20に流入かつ上昇流動しつつ、電気分解され、多数の水素ガス及び酸素ガスを含んだ混合水として、排水パイプ25から矢示29のように流動して分離匣26に入り、気液分離される。
【0038】
前記において、水素ガスと酸素ガスは分解されるとすぐに流動水と共に上昇するので、電極面は常時清掃された状態となっており、分解効率が良好である。
【0039】
また前記電磁石に通電すると、通過する水は磁化水となり、一層分離を良好にすることができる。更に電解槽内へ超音波発振器(洗浄用と同程度)を設置すれば、振動により分解効率を良好にすると共に、電極面の気泡を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施例のブロック図。
【図2】同じく模式図。
【図3】同じく処理炉の一例を示す拡大断面図。
【図4】(a)同じくゼットガス発生器の実施例の概略図、(b)同じく電極の一例を示す拡大斜視図。
【符号の説明】
【0041】
1 処理炉
2 ゼットガスバーナー
3 汚泥水給送パイプ
4 吸引器
5 集塵機
6 膜分離器
7 分離膜
8 処理筒
9 煙突
10 ゼットガス発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理炉中の汚泥水にゼットガスバーナーからゼットガス炎を吹きつけて、瞬時に超高温加熱し、水分及び低融点物質を気化させ、前記蒸発気体は、集塵機で気体と固体を分離し、分離気体は、分離膜を介して水素ガスと、未透過ガスとに分離し、未透過ガスを処理してクリーン気体を外界へ放出し、前記集塵機で分離した固体を集め、前記処理炉に残った未昇華金属その他の固形物を回収することを特徴とした汚泥処理方法。
【請求項2】
ゼットガスは、水を電気分解して生成した水素ガスと酸素ガスをそのまま混合して混合ガスとすることを特徴とした請求項1記載の汚泥処理方法。
【請求項3】
分離膜は水素ガス透過膜であって、分離器内を二分するように張設してあり、透過膜の一側に排気を導き、他側に水素ガスの出口を設けたことを特徴とする請求項1記載の汚泥処理方法。
【請求項4】
汚泥水にゼットガス炎を吹きつけて焼却処理する処理手段と、処理手段により生じた排気の集塵手段と、その気体の処理をする分離手段と、ガス処理器及び固形物処理手段とを組み合せたことを特徴とする汚泥処理システム。
【請求項5】
処理手段は、処理炉にゼットガスバーナーと、汚泥給送手段と、排気手段とを組み合せたことを特徴とする請求項4記載の汚泥処理システム。
【請求項6】
分離手段は、槽内に分離膜を張設し、分離膜の一側に排気を供給し、他側に水素ガスの出口を設けたことを特徴とする請求項4記載の汚泥処理システム。
【請求項7】
集塵手段は、サイクロンとしたことを特徴とした請求項4記載の汚泥処理システム。
【請求項8】
処理手段は、処理炉の下部に耐熱性触媒ロストルを設置し、該耐熱触媒ロストルの下面部へゼットガスバーナーからゼットガス炎を吹きつけ、前記処理炉の上部から前記ロストルの上面に向けて、加圧汚泥の噴射手段を設けたことを特徴とした請求項4記載の汚泥処理システム。
【請求項9】
加圧汚泥の噴射手段は、ポンプ移送としたことを特徴とする請求項8記載の汚泥処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−167634(P2006−167634A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364937(P2004−364937)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(305022129)株式会社ジパングエナジー (13)
【Fターム(参考)】