説明

汚泥処理装置及び汚泥処理方法

【課題】省エネルギー性や低コスト性に優れ、連続式である汚泥処理装置及び汚泥処理方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の汚泥処理装置は、減圧下で汚泥を脱離液、濃縮汚泥及びガスに分離する汚泥分離槽を主として備え、脱離液貯留槽、濃縮汚泥貯留槽、汚泥供給管、脱離液排出管、濃縮汚泥排出管、ガス排出管を備えつつ、上記ガス排出管の途中に配設され、動作流体をガス排出方向に噴出するエジェクターを備え、上記汚泥分離槽が、これから排出する脱離液及び濃縮汚泥の自然流下圧力と脱離液貯留槽及び濃縮汚泥貯留槽の液面に作用する大気圧とがそれぞれ釣り合う高さよりも高く設置されている汚泥処理装置である。このような汚泥処理装置は、脱離液供給管、脱離液還流管等ををさらに備え、動作流体が脱離液であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い汚泥処理能力を発揮しつつ、省エネルギー性及び低コスト性に優れ、さらに連続式である汚泥処理装置及び汚泥処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場や家庭等から排出される汚泥等を処理する技術が多く提供されている。このような汚泥処理技術としては、例えば、生物処理装置で発生した有機性汚泥に酸素含有気体を吹き込んで好気性雰囲気とし、温度45〜100℃の高温条件で好熱性微生物の生物学的作用により有機性汚泥を可溶化処理する汚泥処理槽を設けた汚泥処理装置及びこれを用いた汚泥処理方法が提供されている(特開2004−41902号公報参照)。かかる汚泥処理装置及び汚泥処理方法においては、生物処理装置の混合液を接触させる熱量汲み上げ側と、汚泥処理槽内の可溶化液を接触させる熱量放出側とを備え、生物処理装置の混合液の熱量で汚泥処理槽内の可溶化液を加熱するヒートポンプ装置を設けたことを特徴とするものである。
【0003】
しかしながら、上記従来の汚泥処理装置及び汚泥処理方法は、装置の構成が極めて複雑であり、操作や調整が困難であるという不都合を有する。また、この汚泥処理装置及び汚泥処理方法は、ヒートポンプ装置を別途備えるものであることから、汚泥処理に大量のエネルギーが必要となり、特に連続して処理を行う場合には、省エネルギー化や低コスト化の要請に反するという不都合を有する。
【0004】
つまり、高い汚泥処理能力を発揮しつつ、省エネルギー性や低コスト性に優れ、さらに連続運転が可能である汚泥処理装置及び汚泥処理方法は、未だ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−41902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これらの不都合に鑑みてなされたものであり、省エネルギー性や低コスト性に優れ、さらに連続式である汚泥処理装置及び汚泥処理方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
汚泥を貯留する汚泥貯留槽と、
減圧下で上記汚泥を脱離液、濃縮汚泥及びガスに分離する汚泥分離槽と、
上記汚泥分離槽で分離した脱離液を貯留する脱離液貯留槽と、
上記汚泥分離槽で分離した濃縮汚泥を貯留する濃縮汚泥貯留槽と、
上記汚泥貯留槽及び汚泥分離槽間に連通し、汚泥貯留槽の汚泥を汚泥分離槽に供給する汚泥供給管と、
上記汚泥分離槽から脱離液貯留槽に垂下し、汚泥分離槽で分離した脱離液を自然流下で脱離液貯留槽に排出する脱離液排出管と、
上記汚泥分離槽及び濃縮汚泥貯留槽間に連通し、汚泥分離槽で分離した濃縮汚泥を自然流下で濃縮汚泥貯留槽に排出する濃縮汚泥排出管と、
上記汚泥分離槽から延出し、汚泥分離槽で分離したガスを排出するガス排出管と、
上記ガス排出管の途中に配設され、動作流体をガス排出方向に噴出するエジェクターと
を備え、
上記汚泥分離槽が、これから排出する脱離液及び濃縮汚泥の自然流下圧力と脱離液貯留槽及び濃縮汚泥貯留槽の液面に作用する大気圧とがそれぞれ釣り合う高さよりも高く設置されている汚泥処理装置である。
【0008】
当該汚泥処理装置において、エジェクターを稼働させることで、汚泥分離槽内のガスが排出され、汚泥分離槽内が減圧状態となる。この減圧状態の汚泥分離槽内に汚泥を供給させることで、汚泥分離槽内の汚泥を発泡・分離させ、脱離液、濃縮汚泥及びガスに分離することができる。さらに、この脱離液及び濃縮汚泥は自然流下により排出され、ガスはエジェクターにより排出される。つまり、当該汚泥処理装置は、単純な構成により、低コストかつ低エネルギーで汚泥を分離・処理することができる。
【0009】
当該汚泥処理装置は、
上記脱離液貯留槽及びエジェクター間に連通し、脱離液貯留槽の脱離液をエジェクターに供給する脱離液供給管と、
上記脱離液貯留槽の脱離液を脱離液供給管を介してエジェクターに圧出するポンプと、
上記エジェクターを通過した脱離液を脱離液貯留槽に還流させる脱離液還流管と
をさらに備えるとよい。
【0010】
このように、エジェクターの動作流体として、ガス溶存度が比較的低い脱離液貯留槽の脱離液を使用することで、エジェクターにおけるキャビテーションの発生を確実に防止又は低減することができる。また、かかる脱離液を再利用してエジェクターを稼働させることで、エジェクターの稼働効率を維持しつつ、低コスト化、リサイクル化を推進することができる。
【0011】
減圧下における上記汚泥分離槽内の圧力は、−90kPa以上−50kPa以下であるとよい。この汚泥分離槽内の圧力を上記範囲とすることで、汚泥を脱離液、濃縮汚泥及びガスに確実かつ効率的に分離でき、さらに、脱離液中の溶存ガス量を減少させてエジェクターにおけるキャビテーションの発生を効果的に防止又は低減しつつ、ガス排出管からのガス排出効率を高めることができる。
【0012】
当該汚泥処理装置は、汚泥凝集剤を貯留する凝集剤タンクと、この凝集剤タンクから延出し、上記汚泥供給管と連結する凝集剤供給管とをさらに備えるとよい。このように、当該汚泥処理装置に凝集剤を用いることで、汚泥の凝集性を高め、脱水ケーキの含水率を低減することができ、汚泥処理の効率性が向上する。
【0013】
また、上記課題を解決するための別の発明は、
汚泥を汚泥分離槽に供給する汚泥供給工程と、
この汚泥分離槽において、減圧下で汚泥を脱離液、濃縮汚泥及びガスに分離する汚泥分離工程と、
汚泥分離槽で分離した脱離液を自然流下で排出する脱離液排出工程と、
汚泥分離槽で分離した濃縮汚泥を自然流下で排出する濃縮汚泥排出工程と、
汚泥分離槽から延出するガス排出管にエジェクターを配設し、このエジェクターで脱離液をガス排出方向に噴出し、汚泥分離槽で分離したガスを排出するガス排出工程と
を有する汚泥処理方法である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の汚泥処理装置及び汚泥処理方法は、エジェクターにより汚泥分離槽を減圧状態にでき、この減圧状態の汚泥分離槽内に汚泥を供給させることで、汚泥分離槽内の汚泥を発泡・分離させ、脱離液、濃縮汚泥及びガスに分離することができると共に、脱離液及び濃縮汚泥を自然流下により排出し、ガスをエジェクターにより排出することから、真空ポンプやヒートポンプ等の複雑で高エネルギーの動力を用いることなく、単純な構成により低コストかつ低エネルギーで汚泥を分離・処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る汚泥処理装置を示す模式的概略図である。
【図2】図1の汚泥処理装置と異なる形態に係る汚泥処理装置を示す模式的概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
【0017】
(汚泥処理装置1)
図1の汚泥処理装置1は、汚泥貯留槽2、汚泥分離槽3、脱離液貯留槽4、濃縮汚泥貯留槽5、汚泥供給管6、汚泥供給管の開閉弁7、汚泥供給ポンプ8、脱離液排出管9、脱離液排出管の開閉弁10、濃縮汚泥排出管11、濃縮汚泥排出管の開閉弁12、ガス排出管13、ガス排出管の開閉弁14、エジェクター15、脱離液供給管16、脱離液供給ポンプ17、脱離液還流管18、気液分離装置19を主として備える。
【0018】
汚泥貯留槽2は、工場や家庭等から排出される汚泥を貯留し、この貯留した汚泥を汚泥分離槽3に供給するためのものである。この汚泥貯留槽2は、貯留した汚泥を汚泥分離槽3に供給するための汚泥供給管6を備える。
【0019】
汚泥分離槽3は、汚泥貯留槽2から汚泥供給管6を介して供給される汚泥を脱離液P、濃縮汚泥Q及びガスRに分離するためのものである。この汚泥分離槽3は、上述の汚泥供給管6を備えると共に、脱離液排出管9、濃縮汚泥排出管11、ガス排出管13をさらに備える。
【0020】
この汚泥分離槽3は、後述するエジェクター15を稼働させることで、槽内を減圧することができる。かかる汚泥分離槽3内に汚泥を供給し、エジェクター15を稼働させて槽内を減圧すると、槽内の汚泥が発泡・分離し、脱離液P、濃縮汚泥Q及びガスRに分離することができる。
【0021】
汚泥分離槽3の形状としては、特に限定されないが、上部は筒状で下部はコーン状に狭まる円錐形に形成されているとよい。このように、汚泥分離槽3の下部が円錐形に形成されていることで、減圧下における汚泥分離槽3の脱離液Pを自然流下により排出することが容易となる。
【0022】
脱離液貯留槽4は、汚泥分離槽3で分離した脱離液Pを貯留するためのものである。この脱離液貯留槽4は、貯留した脱離液Pを外部に排出する脱離液排出口(図示せず)を主として備える。
【0023】
濃縮汚泥貯留槽5は、汚泥分離槽3において分離した濃縮汚泥Qを貯留するためのものである。この濃縮汚泥貯留槽は、貯留した濃縮汚泥Qを外部に排出する濃縮汚泥排出口(図示せず)を主として備える。
【0024】
汚泥供給管6は、汚泥貯留槽2及び汚泥分離槽3間に連通し、汚泥貯留槽2の汚泥を汚泥分離槽3に供給するためのものである。この汚泥供給管6は、汚泥の供給量や汚泥分離槽3の減圧を調整するための開閉弁7、汚泥貯留槽2に貯留した汚泥を汚泥分離槽3に送出するための汚泥供給ポンプ8を主として備える。つまり、この汚泥貯留槽2に貯留した汚泥は、汚泥供給ポンプ8の稼働により汚泥供給管6を介して汚泥分離槽3に供給され、開閉弁7の稼働により供給量等が調整される。
【0025】
脱離液排出管9は、汚泥分離槽3から脱離液貯留槽4に垂下し、汚泥分離槽3で分離した脱離液Pを自然流下で脱離液貯留槽4に排出するためのものである。具体的には、この脱離液排出管9は、減圧下の汚泥分離槽3において脱離液Pが多く存在する部分、即ち汚泥分離槽3の下方から垂下しており、脱離液Pを自然流下により脱離液貯留槽4に排出することができる。かかる脱離液排出管9の下端の開口部は、脱離液貯留槽4の脱離液Pの液面下に位置するよう配置されており、この開口部から外気が入り込むことによる汚泥分離槽3の減圧効果の低減を防ぐことができる。また、この脱離液排出管9は、脱離液Pの供給量や汚泥分離槽3の減圧を調整するための開閉弁10を主として備える。
【0026】
濃縮汚泥排出管11は、上記汚泥分離槽3及び濃縮汚泥貯留槽5間に連通し、汚泥分離槽3で分離した濃縮汚泥を自然流下で濃縮汚泥貯留槽に排出するためのものである。具体的には、この濃縮汚泥排出管11は、減圧下の汚泥分離槽3において濃縮汚泥Qが多く存在する部分から下方に延出しており、濃縮汚泥Qを自然流下により濃縮汚泥貯留槽に排出することができる。かかる濃縮汚泥排出管11の下端の開口部は、上述の脱離液排出管9の場合と同様に、濃縮汚泥貯留槽の濃縮汚泥Qの液面下に位置するよう配置されており、この開口部から外気が入り込むことによる汚泥分離槽3の減圧効果の低減を防ぐことができる。また、この濃縮汚泥排出管11は、濃縮汚泥Qの供給量や上述の汚泥分離槽3の減圧を調整するための開閉弁12を主として備える。
【0027】
ガス排出管13は、汚泥分離槽3から延出し、汚泥分離槽3で分離したガスRを排出するためのものである。具体的には、このガス排出管13は、減圧下の汚泥分離槽3においてガスRが多く存在する部分、即ち汚泥分離槽3の上方から延出している。かかるガス排出管13は、ガスRの排出量や上述の汚泥分離槽3の減圧を調整するための開閉弁14を主として備える。
【0028】
エジェクター15は、ガス排出管13の途中に配設され、動作流体をガス排出方向に噴出するためのものである。この動作流体としては、特に限定されないが、エジェクター15においては、脱離液貯留槽4の脱離液Pを使用するとよい。この脱離液Pはガス溶存度が低いことから、動作流体として脱離液Pを使用することで、エジェクター15におけるキャビテーションの発生を確実に防止又は低減することができる。かかるエジェクター15は、ガス排出管13の途中に配設されると共に、脱離液供給管16及び後述の気液分離装置19と一体的に連結される。このエジェクター15が脱離液Pをガス排出方向に噴出することで、減圧下の汚泥分離槽3で発生したガスRを効率的かつ確実に排出させることができる。
【0029】
このエジェクター15について詳説すると、エジェクター15は、モーター等でポンプを回転させるような機械的運動によらずに圧縮空気から真空を発生させる装置であり、主としてノズル及びディフューザー(図示せず)から構成される。このノズルとディフューザーは、いずれも略円筒状の部材であり、適当な距離を置いて対向している。このノズル及びディフューザーを脱離液Pが一体的かつ高速に通過することで、ノズルとディフューザーとの間に真空を発生させることができる。なお、かかるノズルやディフューザーの寸法、形状、配置等については、要求される到達真空圧や吸い込み流量等に応じて自在に調整することができる。
【0030】
脱離液供給管16は、脱離液貯留槽4及びエジェクター15間に連通し、脱離液貯留槽4の脱離液Pをエジェクター15に供給するためのものである。かかる脱離液供給管16は、脱離液貯留槽4の脱離液Pを脱離液供給管16を介してエジェクター15に圧出する脱離液供給ポンプ17を主として備える。
【0031】
脱離液還流管18は、エジェクター15を通過した脱離液Pを脱離液貯留槽4に還流させるためのものである。この脱離液還流管18は、主として気液分離装置19を備える。この気液分離装置19は、ガス排出管13からエジェクター15に排出されるガスRと、脱離液供給管16からエジェクター15に噴出される脱離液Pとを分離し、ガスRを外部に排出し、脱離液Pを脱離液貯留槽4に送出するための装置である。かかる脱離液還流管18の下端の開口部は、脱離液貯留槽4の脱離液Pの液面下に位置するよう配置されており、この開口部から脱離液Pが自然流下することによるガス溶存度の上昇を確実に防ぐことができる。
【0032】
上述した汚泥処理装置1の各構成要素の中でも、汚泥分離槽3は、これから排出する脱離液P及び濃縮汚泥Qの自然流下圧力と脱離液貯留槽4及び濃縮汚泥貯留槽5の液面に作用する大気圧とがそれぞれ釣り合う高さよりも高く設置されている。このように、脱離液P及び濃縮汚泥Qの自然流下圧力と脱離液貯留槽4及び濃縮汚泥貯留槽5の液面に作用する大気圧とがそれぞれ釣り合う高さよりも高く設置されていることで、汚泥分離槽3内の脱離液P及び濃縮汚泥Qが自然流下して排出される。その結果、別途真空ポンプ等を用いることなく、低コスト性や省エネルギー性を実現することができる。
【0033】
この汚泥分離槽3の設置について、汚泥分離槽3の高さとしては、脱離液貯留槽4又は濃縮汚泥貯留槽5の液面を基準として、5m以上に設定することが好ましく、10m以上に設定することがより好ましい。このように、汚泥分離槽3の高さを設定することで、脱離液排出管9又は濃縮汚泥排出管11の内部における圧力損失を効果的に低減することができる。
【0034】
(汚泥処理装置1の操作手順)
次に、汚泥処理装置1の操作手順について詳説する。
【0035】
例えば、脱離液貯留槽4を水で満たした後に、脱離液供給ポンプ17を稼働させ、脱離液貯留槽4内の水をエジェクター15のガス排出方向に比較的高速度で噴出させる。すると、エジェクター15内に真空状態が発生し、このエジェクター15内の真空に汚泥分離槽3内の空気が引き込まれ、排出されることで、汚泥分離槽3内は減圧状態となる。かかるエジェクター15の真空状態が継続している限り、汚泥分離槽3内の減圧状態も継続する。この場合において、汚泥供給管の開閉弁7、脱離液排出管の開閉弁10、濃縮汚泥排出管の開閉弁12の開閉は問わず、ガス排出管の開閉弁14は開放する必要がある。
【0036】
汚泥分離槽3が減圧状態を維持している場合において、汚泥供給管の開閉弁7を開け、汚泥供給ポンプ8により汚泥貯留槽2から減圧状態の汚泥分離槽3に汚泥を供給する。この場合において、脱離液排出管の開閉弁10、濃縮汚泥排出管の開閉弁12の開閉は問わず、ガス排出管の開閉弁14は開放する必要がある。
【0037】
この減圧下における汚泥分離槽3内の圧力としては、−90kPa以上−50kPa以下が好ましく、−80kPa以上−60kPa以下がより好ましい。この汚泥分離槽3内の圧力を上記範囲とすることで、汚泥を脱離液P、濃縮汚泥Q及びガスRに確実かつ効率的に分離することができる。また、この汚泥分離槽3内の圧力が上記範囲であると、脱離液P中の溶存ガス量を減少させることができ、その結果、汚泥処理装置1は、エジェクター15におけるキャビテーションの発生を効果的に防止又は低減しつつ、ガス排出管13からのガス排出効率を高めることができる。この汚泥分離槽3内の圧力が−50kPaを超えると、汚泥分離槽3内における汚泥分離効果が著しく低下するため好ましくない。また、汚泥分離槽3内の圧力が−90kPa未満であると、汚泥分離槽3を脱離液貯留槽4及び濃縮汚泥貯留槽の液面の位置よりも少なくとも10m以上の高さに設置しなければならず、その結果、設備が大きくなり、動力的なコストもかかるため好ましくない。
【0038】
このように、減圧状態の汚泥分離槽3内に汚泥が供給されると、汚泥に含まれる二酸化炭素やメタン等の溶存ガスが発泡し、この気泡が汚泥中の固体分に付着して浮上させる。その結果、減圧状態の汚泥分離槽3は、汚泥を脱離液P、濃縮汚泥Q及びガスRに分離することができる。
【0039】
上記減圧状態で分離された脱離液Pは、脱離液排出管の開閉弁10を開放することで脱離液貯留槽4に排出される。なお、脱離液Pは自然流下により脱離液貯留槽4に排出される。
【0040】
脱離液貯留槽4に貯留される脱離液Pの汚泥濃度(MLSS)としては、50mg/l以上200mg/l以下が好ましく、100mg/l以上150mg/l以下がより好ましい。この脱離液Pの汚泥濃度を上記範囲とすることで、脱離液P中の溶存ガス量を効果的に低減することができ、その結果、エジェクター15におけるキャビテーション抑制効果及びガス排出効率をより一層向上させることができる。この脱離液Pの汚泥濃度が200mg/lを超えると、汚泥に含まれる微生物の生物学的代謝により発生するガスRの量が増加し、脱離液P中の溶存ガスの量が過度に増加するため好ましくない。また、この脱離液Pの汚泥濃度が50mg/l未満であると、汚泥分離槽3内をより一層減圧する必要が生じ、その結果、設備が大きくなり、動力的なコストもかかるため好ましくない。
【0041】
上記減圧状態で分離された濃縮汚泥Qは、濃縮汚泥排出管の開閉弁12を開放することで濃縮汚泥貯留槽に排出される。なお、上述の脱離液Pの場合と同様に、濃縮汚泥Qは自然流下により濃縮汚泥貯留槽に排出される。
【0042】
上記減圧状態で分離されたガスRは、ガス排出管の開閉弁14を開放し、エジェクター15を稼働させること排出される。このエジェクター15は、脱離液供給ポンプ17を用いて、脱離液貯留槽4に溜まった脱離液Rをガス排出方向に比較的高速度で噴出させることで、エジェクター内に真空状態を発生させ、かかるエジェクター内の真空にガスRが引き込まれることにより、ガスRが排出される。
【0043】
かかる一連の手順の後は、減圧状態の汚泥分離槽3内に汚泥を供給し続け減圧発泡させて分離し、分離した脱離液P、濃縮汚泥Q及びガスRをそれぞれ排出する操作が繰り返される。つまり、汚泥処理装置1によれば、汚泥分離槽3内を常時減圧状態に保持することができ、省エネルギー性や低コスト性を発揮しつつ、さらに連続式である汚泥処理を容易に実現することができる。
【0044】
(汚泥処理装置20)
図2の汚泥処理装置20は、汚泥貯留槽2、汚泥分離槽3、脱離液貯留槽4、濃縮汚泥貯留槽5、汚泥供給管6、汚泥供給管の開閉弁7、汚泥供給ポンプ8、脱離液排出管9、脱離液排出管の開閉弁10、濃縮汚泥排出管11、濃縮汚泥排出管の開閉弁12、ガス排出管13、ガス排出管の開閉弁14、エジェクター15、脱離液供給管16、脱離液供給ポンプ17、脱離液還流管18、気液分離装置19、凝集剤タンク21、凝集剤供給管22、凝集剤供給管の開閉弁23、凝集剤供給ポンプ24を主として備える。なお、この汚泥貯留槽2、汚泥分離槽3、脱離液貯留槽4、濃縮汚泥貯留槽5、汚泥供給管6、汚泥供給管の開閉弁7、汚泥供給ポンプ8、脱離液排出管9、脱離液排出管の開閉弁10、濃縮汚泥排出管11、濃縮汚泥排出管の開閉弁12、ガス排出管13、ガス排出管の開閉弁14、エジェクター15、脱離液供給管16、脱離液供給ポンプ17、脱離液還流管18、気液分離装置19、脱離液P、濃縮汚泥Q及びガスRは、図1の汚泥処理装置1の場合と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0045】
凝集剤タンク21は、汚泥を凝集するための凝集剤を貯留するものである。このように汚泥処理装置20に凝集剤を用いることで、汚泥の凝集性を高め、脱水ケーキの含水率を低減することができ、汚泥処理の効率性が向上する。なお、かかる凝集剤は、汚泥の脱水作用をも有することから、凝集剤タンク21等は、汚泥脱水機の前処理装置(汚泥のフロックを形成させるための凝集混和反応装置)としても利用することができる。
【0046】
上記凝集剤の種類としては、特に限定されず、例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第2鉄、塩化第2鉄、硫酸バンドなどの無機凝集剤;アクリルアミド共重合体、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル4級化物などのカチオン系高分子凝集剤;ポリアクリルアミド部分加水分解物、アニオン性モノマーの共重合体、アニオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体などのアニオン系高分子凝集剤;アクリルアミド、メタクリルアミド、メタアクリロニトリル、酢酸ビニルなどのノニオン系高分子凝集剤等が挙げられる。中でも、入手が容易で良好な汚泥凝集効果を発揮するポリ塩化アルミニウムを使用することが好ましい。なお、かかる凝集剤は、1種単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0047】
凝集剤供給管22は、凝集剤タンク21から延出し、汚泥供給管6と連結するものである。具体的には、この凝集剤供給管22は、凝集剤タンク21及び汚泥供給管6間に連通し、凝集剤タンク21の凝集剤を汚泥供給管6を介して汚泥分離槽3に供給するためのものである。この凝集剤供給管22は、凝集剤の供給量等を調整するための開閉弁23、凝集剤タンク21の凝集剤を汚泥分離槽3に送出するための凝集剤供給ポンプ24を主として備える。つまり、凝集剤タンク21に貯留した凝集剤は、凝集剤供給ポンプ24の稼働により汚泥供給管6を介して汚泥分離槽3に供給され、開閉弁23の稼働により供給量等が調整される。
【0048】
凝集剤供給管22の汚泥供給管6に対する連結の位置は、特に限定されないが、汚泥供給管6と汚泥分離槽3との連結部分付近において汚泥供給管6に連結されることが好ましい。このように、凝集剤供給管22が汚泥供給管6と汚泥分離槽3との連結部分付近において汚泥供給管6に連結されることで、凝集剤は、汚泥が汚泥分離槽3内に供給される直前で添加されることとなり、その結果、上述の凝集剤の効果をより一層確実に発揮させることができる。
【0049】
(汚泥処理装置20の操作手順)
次に、汚泥処理装置20の操作手順について詳説する。なお、凝集剤タンク21、凝集剤供給管22、凝集剤供給管の開閉弁23及び凝集剤供給ポンプ24以外の構成要素に係る操作手順については、汚泥処理装置1の場合と同様であるため、説明を省略する。
【0050】
上述の汚泥処理装置1の場合と同様に、減圧状態の汚泥分離槽3に汚泥貯留槽2の汚泥が供給される際に、凝集剤タンク21の凝集剤が凝集剤供給ポンプ24により凝集剤供給管22及び汚泥供給管6を介して汚泥分離槽3内に供給される。この汚泥及び凝集剤は、減圧状態の汚泥分離槽3内に急激に吸引され急速攪拌された後、汚泥中の溶存ガスの減圧発泡作用により緩速攪拌される。その結果、かかる汚泥及び凝集剤が効率的に混合して凝集混和されることで、汚泥の凝集フロックを大きくかつ強固にすることができ、汚泥処理の効率性が著しく向上する。
【0051】
(汚泥処理方法)
図3の汚泥処理方法は、汚泥を汚泥分離槽に供給する汚泥供給工程(STP1)、汚泥分離槽において、減圧下で汚泥を脱離液、濃縮汚泥及びガスに分離する汚泥分離工程(STP2)、汚泥分離槽で分離した脱離液を自然流下で排出する脱離液排出工程(STP3)、汚泥分離槽で分離した濃縮汚泥を自然流下で排出する濃縮汚泥排出工程(STP4)、汚泥分離槽から延出するガス排出管にエジェクターを配設し、このエジェクターで脱離液をガス排出方向に噴出し、汚泥分離槽で分離したガスを排出するガス排出工程(STP5)を主として備える。
【0052】
汚泥供給工程は、汚泥分離槽に汚泥を供給する工程である。汚泥分離工程は、減圧状態の汚泥分離槽内において、汚泥を脱離液、濃縮汚泥及びガスに分離する工程である。脱離液排出工程及び濃縮汚泥排出工程は、汚泥分離槽で分離した脱離液及び濃縮汚泥を、それぞれ自然流下により排出する工程である。ガス排出工程は、エジェクターにより上記脱離液をガス排出方向に噴出させることでエジェクター内に真空状態を生じさせ、汚泥分離槽で分離したガスを外部に排出する工程である。当該汚泥処理装置において、エジェクターを稼働させることで、汚泥分離槽内のガスが排出され、汚泥分離槽内が減圧状態となる。この減圧状態の汚泥分離槽内に汚泥を供給させることで、汚泥分離槽内の汚泥を発泡・分離させ、脱離液、濃縮汚泥及びガスに分離することができる。さらに、この脱離液及び濃縮汚泥は自然流下により排出され、ガスはエジェクターにより排出される。つまり、当該汚泥処理方法は、このような工程を備えることで、汚泥処理における省エネルギー性及び低コスト性を実現でき、さらに連続式の汚泥処理を効果的に実現できるものである。
【0053】
なお、本発明の汚泥処理装置及び汚泥処理方法は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の汚泥処理装置は、汚泥、脱離液、濃縮汚泥、ガス等の流量を計測する流量測定機構、この流速計で計測されたデータに基づき流量を調節する流量調節機構、この調節計のデータに基づき開閉弁の開閉度合いを変化させて流量を調節する開閉弁調節機構等をさらに備えることができる。このような機構を備えることで、本発明の汚泥処理装置は、オートメーションによる連続運転が可能となる。
【0054】
また、本発明の汚泥処理装置は、汚泥及び/又は凝集剤をポンプにより供給することなく、例えば汚泥貯留槽及び/又は凝集剤タンクを汚泥分離槽よりも高い位置に配置し、この汚泥や凝集剤の自然流下によっても供給することができる。
【0055】
また、本発明の汚泥処理装置は、さらに脱水機を濃縮汚泥貯留槽に連結配置することができる。かかる脱水機により、濃縮汚泥の固形化をより一層確実なものとすることができる。この脱水機の種類としては、特に限定されず、たとえばベルトプレス脱水機、スクリュープレス脱水機、フィルタープレス脱水機等が挙げられる。
【0056】
また、本発明の汚泥処理装置及び汚泥処理方法は、特に、下水処理場などの水処理装置で発生する水処理汚泥、特に水処理の結果発生する活性汚泥の処理に用いることが好ましい。また、例えば食品工場における含油排水処理のための加圧浮上工程や石油工場におけるエマルジョン化した含油排水処理工程等についても効果的に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明の汚泥処理装置及び汚泥処理方法は、低コスト性や省エネルギー性を実現しつつ、連続式であるため、汚泥を大量かつ効率的に処理することができ、広く好適に使用され得る。
【符号の説明】
【0058】
1 汚泥処理装置
2 汚泥貯留槽
3 汚泥分離槽
4 脱離液貯留槽
5 濃縮汚泥貯留槽
6 汚泥供給管
7 汚泥供給管の開閉弁
8 汚泥供給ポンプ
9 脱離液排出管
10 脱離液排出管の開閉弁
11 濃縮汚泥排出管
12 濃縮汚泥排出管の開閉弁
13 ガス排出管
14 ガス排出管の開閉弁
15 エジェクター
16 脱離液供給管
17 脱離液供給ポンプ
18 脱離液還流管
19 気液分離装置
20 汚泥処理装置
21 凝集剤タンク
22 凝集剤供給管
23 凝集剤供給管の開閉弁
24 凝集剤供給ポンプ
P 脱離液
Q 濃縮汚泥
R ガス
STP1 汚泥供給工程
STP2 汚泥分離工程
STP3 脱離液排出工程
STP4 濃縮汚泥排出工程
STP5 ガス排出工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を貯留する汚泥貯留槽と、
減圧下で上記汚泥を脱離液、濃縮汚泥及びガスに分離する汚泥分離槽と、
上記汚泥分離槽で分離した脱離液を貯留する脱離液貯留槽と、
上記汚泥分離槽で分離した濃縮汚泥を貯留する濃縮汚泥貯留槽と、
上記汚泥貯留槽及び汚泥分離槽間に連通し、汚泥貯留槽の汚泥を汚泥分離槽に供給する汚泥供給管と、
上記汚泥分離槽から脱離液貯留槽に垂下し、汚泥分離槽で分離した脱離液を自然流下で脱離液貯留槽に排出する脱離液排出管と、
上記汚泥分離槽及び濃縮汚泥貯留槽間に連通し、汚泥分離槽で分離した濃縮汚泥を自然流下で濃縮汚泥貯留槽に排出する濃縮汚泥排出管と、
上記汚泥分離槽から延出し、汚泥分離槽で分離したガスを排出するガス排出管と、
上記ガス排出管の途中に配設され、動作流体をガス排出方向に噴出するエジェクターと
を備え、
上記汚泥分離槽が、これから排出する脱離液及び濃縮汚泥の自然流下圧力と脱離液貯留槽及び濃縮汚泥貯留槽の液面に作用する大気圧とがそれぞれ釣り合う高さよりも高く設置されている汚泥処理装置。
【請求項2】
上記脱離液貯留槽及びエジェクター間に連通し、脱離液貯留槽の脱離液をエジェクターに供給する脱離液供給管と、
上記脱離液貯留槽の脱離液を脱離液供給管を介してエジェクターに圧出するポンプと、
上記エジェクターを通過した脱離液を脱離液貯留槽に還流させる脱離液還流管と
をさらに備える請求項1に記載の汚泥処理装置。
【請求項3】
減圧下における上記汚泥分離槽内の圧力が、−90kPa以上−50kPa以下である請求項1又は請求項2に記載の汚泥処理装置。
【請求項4】
汚泥凝集剤を貯留する凝集剤タンクと、
この凝集剤タンクから延出し、上記汚泥供給管と連結する凝集剤供給管と
をさらに備える請求項1、請求項2又は請求項3に記載の汚泥処理装置。
【請求項5】
汚泥を汚泥分離槽に供給する汚泥供給工程と、
この汚泥分離槽において、減圧下で汚泥を脱離液、濃縮汚泥及びガスに分離する汚泥分離工程と、
汚泥分離槽で分離した脱離液を自然流下で排出する脱離液排出工程と、
汚泥分離槽で分離した濃縮汚泥を自然流下で排出する濃縮汚泥排出工程と、
汚泥分離槽から延出するガス排出管にエジェクターを配設し、このエジェクターで脱離液をガス排出方向に噴出し、汚泥分離槽で分離したガスを排出するガス排出工程と
を有する汚泥処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−92868(P2011−92868A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249803(P2009−249803)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(708001244)株式会社テクノプラン (5)
【出願人】(500005712)熱研産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】