説明

汚濁物捕捉用構造体及び汚濁物捕捉設備

【課題】堰き止められた廃水の水面付近で浮上している汚濁物を、下部室へと流しやすくする汚濁物捕捉用構造体を提供する。
【解決手段】処理槽4を上部室5と下部室6とに上下区画する区画床7と、区画床7上の一部である第1領域11に流入した廃水を堰き止めると共に当該廃水を当該区画床7上にある第2領域12へと越流可能とする堰部8と、第1領域11に設けられ、かつ、堰部8によって堰き止められた廃水を下部室6へ流す入口部9と、第2領域12に設けられ、かつ、下部室6内の廃水を当該第2領域12へ流す出口部10とを備えている。入口部9は、廃水を渦流として下部室6へと導く導水管9aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水に含まれている汚濁物の含有率を低下させるために処理槽に設置される汚濁物捕捉用構造体、及びこの装置と処理槽とを備えた汚濁物捕捉設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車が走行する道路の路面には、土砂、粉塵、自動車から排出され空気中を浮遊していた粒子状物質、さらには、自動車から流れ出したオイルや燃料のような油分等が堆積していることがある。このような路面の堆積物は、降雨時に、雨水に混ざって汚濁物となり路面から側溝へと流れ、その後、河川や、道路の周囲にある田畑へ流出することから、河川や田畑の水質汚染を引き起こす原因の一つとなっている。
【0003】
そこで、このような汚濁物を含んだ雨水が河川等へと流れ出る前に、雨水から汚濁物を分離し、汚濁物の含有率を低減させて雨水を下流側へと流すことが提案されている。そこで、この機能を備えた設備として、例えば、特許文献1に記載のものがある。
特許文献1に記載の設備は、地中に設置された処理槽内を上部室と下部室とに上下区画する区画床を備えており、この区画床に、上部室に流入した雨水を堰き止める堰部と、堰き止められた雨水を下部室へ流す入口管と、下部室内に溜まった雨水を上部室に流す出口管とが設けられている。
【0004】
この設備によれば、汚濁物を含む雨水が上部室から入口管を通って下部室へ流れると、下部室ではその流速が遅くなることから、汚濁物の内の、例えば粒子状物質は沈殿物となって下部室に堆積し、また、汚濁物の内の油分は下部室で浮上物となり、沈殿物及び浮上物は下部室で捕捉される。これにより汚濁物の含有率が低下した雨水を、区画床に設けられた出口管を通じて上部室へと流し、そして、処理槽からその下流の河川等へと流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5849181号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の設備によれば、汚濁物を含む雨水が上部室に流入すると、入口管を通って下部室へ流れ落ちることができるが、堰部によって堰き止められた雨水の水面付近で浮いている汚濁物については、水面付近を漂うだけであり、入口管内に引き込むことができない場合がある。特に堰き止められた雨水の水深が大きいと、浮いている汚濁物は入口管に引き込まれにくい。
【0007】
そこで、本発明は、堰き止められた廃水の水面付近で浮上している汚濁物を、下部室へと流しやすくする汚濁物捕捉用構造体、及びこの装置を備えた汚濁物捕捉設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、廃水に含まれている汚濁物の含有率を低下させるために処理槽に設置される汚濁物捕捉用構造体であって、前記処理槽を、廃水が流入する上部室と、廃水に含まれている汚濁物を捕捉する下部室とに上下区画する区画床と、前記区画床上の一部である第1領域に流入した廃水を堰き止めると共に当該廃水を当該区画床上にある前記第1領域外の第2領域へと越流可能とする堰部と、前記第1領域に設けられ、かつ、前記堰部によって堰き止められた廃水を前記下部室へ流す入口部と、前記第2領域に設けられ、かつ、前記下部室内の廃水を当該第2領域へ流す出口部とを備え、前記入口部は、前記廃水を渦流として前記下部室へと導く導水管を有していることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、廃水を下部室へ流す入口部が有している導水管は、廃水を渦流(渦巻きによる流れ)として下部室へと導くので、堰部によって堰き止められた廃水の水面付近で浮上する汚濁物を、廃水の渦流に巻き込ませて下部室へと流しやすくする。
【0010】
また、前記入口部は、前記第1領域の底部から上に突出し、上端部から前記廃水を取り入れる円筒部を有しているのが好ましい。
この場合、区画床上の第1領域に流入した廃水は、円筒部の外周に沿って周方向に流れることができ、そして、当該円筒部の上端部から廃水を取り入れることができ、入口部において渦流が発生しやすくなる。
【0011】
また、前記導水管の長さは変更可能であるのが好ましく、この場合、導水管の下端側にある開口の高さ位置を変更することができる。なお、導水管の長さの変更を、別の長さを有する導水管に取り替えることにより行ってもよく、導水管自身が伸縮する構成とすることにより行ってもよい。
【0012】
また、前記堰部には、越流する廃水と共に流れようとする異物を受け止めるフィルターが設けられているのが好ましく、この場合、堰部から越流する廃水と共に流れようとする異物をフィルターで受け止め、異物が下流側へと流れてしまうのを防ぐことができる。
【0013】
また、汚濁物捕捉用構造体は、前記下部室に設けられ、廃水を通過させるスリットが形成された堰板を備えているのが好ましい。
この場合、下部室に流れた廃水は当該下部室内を流れるが、堰板によって流速を低下させることができ、汚濁物を沈殿物として又は浮上物として下部室で捕捉しやすくなる。
【0014】
また、前記出口部から流れ出た廃水及び前記堰部から越流した廃水を、前記処理槽の側壁に形成された流出口を通じて当該処理槽外へと流出させるために、前記第2領域は、当該廃水を一時的に受け入れる領域であって前記側壁に沿った外周輪郭形状を有しており、前記外周輪郭形状は、前記側壁の全内周の内の半周以上に及ぶ長さを有した形状であるのが好ましい。
この場合、処理槽の側壁に形成された、廃水を流入させる流入口と、廃水を処理槽外へ流出させる流出口とが、直線上に配置されていなくても、汚濁物捕捉用構造体を改造することなく適用することができる。つまり、前記第1領域は前記流入口と周方向で共通する位置に設けられており、前記流出口が、前記流入口に対して、例えば平面的に80°折れ曲がった方向に向けて形成されていても、第2領域で受け入れた廃水を、当該流出口を通じて外部へ流すことが可能となる。
なお、第2領域の外周輪郭形状の長さの上限は、第1領域の大きさによって制限される。具体的に説明すると、第1領域は廃水を受け入れる広さが必要であり、例えば、区画床上の第1領域の外周輪郭形状は平面的に60°の範囲が必要である場合、第2領域の外周輪郭形状の上限は300°となる。
【0015】
また、本発明は、汚濁物が含まれている廃水が流入する上部室とその下方の下部室とに区画床によって上下区画された処理槽の、当該区画床に取り付けられ、前記廃水に含まれている汚濁物の含有率を低下させるために用いられる汚濁物捕捉用構造体であって、前記区画床上の一部である第1領域に流入する廃水を堰き止めると共に当該廃水を当該区画床上にある前記第1領域外の第2領域へと越流可能とする堰部と、前記堰部によって堰き止められた廃水を前記下部室へ流す入口部と、前記下部室内の廃水を前記第2領域へ流す出口部とを備え、前記堰部と前記入口部とは一体として構成され、前記入口部及び前記出口部それぞれは、前記区画床に上下貫通して形成されている複数の貫通孔それぞれを挿通して取り付けられる管部材を有し、前記入口部の前記管部材は、前記廃水を渦流として前記下部室へと導く導水管であることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、廃水を下部室へ流す入口部が有している管部材は、廃水を渦流として下部室へと導く導水管であるので、堰部によって堰き止められた廃水の水面付近で浮上する汚濁物を、廃水の渦流に巻き込ませて下部室へと流しやすくする。
さらに、堰部と、入口部とは一体として構成されており、また、処理槽が有している区画床に形成された貫通孔に、入口部及び出口部の管部材を挿通して取り付ければ、汚濁物捕捉用構造体を完成させることができる。つまり、区画床が既設となっている処理槽にも、汚濁物捕捉用構造体を設けることが可能となる。
【0017】
また、本発明の汚濁物捕捉設備は、槽本体、汚濁物が含まれている廃水を前記槽本体に流入させる流入口、及び廃水を前記槽本体外へ流出させる流出口を有する処理槽と、前記汚濁物の含有率を低下させるために前記槽本体内に設置されて用いられる前記汚濁物捕捉用構造体とを備えていることを特徴とする。
前記汚濁物捕捉用構造体と同様に、本発明の汚濁物捕捉設備によれば、堰部によって堰き止められた廃水の水面付近で浮上する汚濁物を、廃水の渦流に巻き込ませて下部室へと流しやすくする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、堰部によって堰き止められた廃水の水面付近で浮上する汚濁物を、廃水の渦流に巻き込ませて下部室へと流しやすくする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】汚濁物捕捉設備の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】処理槽及び汚濁物捕捉用構造体を上から見た断面図である。
【図3】処理槽及び汚濁物捕捉用構造体を側方から見た断面図である。
【図4】第2実施形態の汚濁物捕捉用構造体及び処理槽を示している説明図である。
【図5】第3実施形態の汚濁物捕捉用構造体及び処理槽を側方から見た断面図である。
【図6】図2に示している汚濁物捕捉用構造体のB−B矢視の断面図である。
【図7】点検窓の説明図である。
【図8】入口部の説明図である。
【図9】(a)は、汚濁物捕捉用構造体及び処理槽を側面から見た断面図であり、(b)は、上から見た断面図である。
【図10】汚濁物捕捉用構造体の変形例を示している平面図である。
【図11】汚濁物捕捉用構造体の変形例を示している斜視図である。
【図12】第4実施形態の汚濁物捕捉用構造体及び処理槽の一部を側方から見た断面図である。
【図13】汚濁物捕捉設備の説明図である。
【図14】汚濁物捕捉設備の説明図である。
【図15】汚濁物捕捉設備の説明図である。
【図16】処理槽及び汚濁物捕捉用構造体を側方から見た断面図であり、取り付け部の変更例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[1 汚濁物捕捉設備及び処理槽について]
[1.1 汚濁物捕捉設備]
図1は、汚濁物捕捉設備の実施の一形態を示す斜視図であり、一部を断面で示している。この汚濁物捕捉設備は、廃水に含まれている汚濁物の含有率を低下させて廃水を下流側へ流すための設備であり、例えば地中に設置されている処理槽4と、前記汚濁物を捕捉するために処理槽4内に設置されている汚濁物捕捉用構造体1とを有している。なお、本実施形態では、処理槽4は地中に設置されたマンホールからなる。
【0021】
前記廃水は、例えば、降雨時に道路から側溝へと流れた雨水であり、この雨水が処理槽4に流入する。この雨水には汚濁物が含まれており、当該汚濁物には、道路に堆積していた土砂、粉塵、自動車から排出され空気中を浮遊していた粒子状物質、さらには、事故等により自動車から流れ出したオイルや燃料のような油分等がある。このような汚濁物が混ざった雨水は道路の側溝から、その下流側にあって道路の側部等の地中に設置されている処理槽4へ到達する。
【0022】
[1.2 処理槽4]
処理槽4(マンホール)の上壁4aに、路面に開口する開口部4cが設けられており、通常、マンホール蓋4dによって閉じられている。処理槽4は、汚濁物が含まれている廃水を流入させる流入口41、流入した廃水の汚濁物の含有率を低下させる槽本体42、及び廃水を槽本体42外へ流出させる流出口43を有している。流入口41及び流出口43は処理槽4の側壁4bに設けられており、上流側にある前記側溝(図示せず)から延びている流入管44が流入口41に繋がっており、流出口43には流出管45が繋がっている。
【0023】
槽本体42は、汚濁物捕捉用構造体1が有している区画床7によって、廃水が槽本体42内へ流入する及び廃水を槽本体42外へ流出させる上部室5と、この上部室5の下方に形成されている下部室6とに上下区画されている。後に説明するが、下部室6では、汚濁物捕捉用構造体1との共同により、汚濁物が捕捉される。槽本体42は内部に空間を有する円柱形状であり、上部室5ではその下部側に廃水が存在し上部側は空間を成すが、下部室6では廃水が満水状態となる。
【0024】
[1.3 汚濁物捕捉設備の他の実施例]
前記のように、汚濁物捕捉設備は、単一の処理槽4と、この処理槽4に設置された汚濁物捕捉用構造体1とからなる構成であってもよいが、複数の処理槽4からなる処理槽群と、これら処理槽4それぞれに設置された汚濁物捕捉用構造体1とからなる構成であってもよい。すなわち、図13に示しているように、流入口41、槽本体42、及び流出口43をそれぞれ有した上流側の処理槽4U及び下流側の処理槽4Dを備えており、処理槽4U,4Dが、廃水の上下流方向に間隔をあけて直列に設けられている。そして、処理槽4U,4Dそれぞれに汚濁物捕捉用構造体1が設けられている。図13では、汚濁物捕捉用構造体1を簡略化して記載している。そして、上流側の処理槽4Uの流出口43と、下流側の処理槽4Dの流入口41とを繋げる上連結管49が設けられている。
【0025】
また、処理槽4U,4Dそれぞれの下部室6では、廃水に含まれている汚濁物が捕捉されるが、本実施例では、上流側の処理槽4Uの下部室6と、下流側の処理槽4Dの下部室6とが、下連結管50によって繋がっている。このため、上流側の処理槽4Uの下部室6で汚濁物を捕捉しきれなかった廃水が、下連結管50によって下流側の処理槽4Dの下部室6に流れ、当該処理槽4Dの下部室6で汚濁物を捕捉することが可能となる。
また、この図13の実施例では、処理槽4U,4Dを新設する場合の他に、処理槽4U,4Dを既設のものとすることができる。
【0026】
処理槽4U,4D及び汚濁物捕捉用構造体1を新設する場合、上流側の処理槽4Uの流出口43と下流側の処理槽4Dの流入口41とを、上連結管49によって繋げ、これら処理槽4U,4Dそれぞれに汚濁物捕捉用構造体1を設置することにより汚濁物捕捉設備を構成することができる。このため、新設の際に、処理槽4U,4Dのレイアウトを自在に設定することができ、効率良く土地を利用することが可能となる。
また、既設の処理槽4U,4Dを用いる場合、上流側となる既設の処理槽4Uの流出口43と、下流側となる既設の処理槽4Dの流入口41とを上連結管49によって繋げ、これら処理槽4U,4Dそれぞれに汚濁物捕捉用構造体1を設置することで、汚濁物捕捉設備が構成される。このように、既設の処理槽4U,4Dを用いることで、土地を効率良く利用して汚濁物捕捉設備を得ることができる。
【0027】
処理槽を新設する場合及び既設の処理槽を用いる場合の双方において、汚濁物の捕捉が処理槽4U,4Dで行われるが、これら処理槽4U,4Dが直列に設けられているため、汚濁物の取りこぼしを減らし、汚濁物の捕捉処理能力を高めることができる。
なお、処理槽4U,4Dそれぞれに設置される汚濁物捕捉用構造体1は同じものである。以下、処理槽に設置される汚濁物捕捉用構造体1について説明する。
【0028】
[2 汚濁物捕捉用構造体1について]
[2.1 第1実施形態]
図2は処理槽4及び汚濁物捕捉用構造体1を上から見た断面図である。図1と図2において、汚濁物捕捉用構造体1は、廃水に含まれている汚濁物を槽本体42内(下部室6)で捕捉し、廃水を槽本体42外へ流出させるために用いられるものであり、槽本体42内の中間高さ位置に設置される。汚濁物捕捉用構造体1は、前記区画床7と、この区画床7上の一部である第1領域11に流入した廃水を当該第1領域11に堰き止める堰部8と、この堰部8によって堰き止められた廃水を下部室6へ流す入口部9と、下部室6内に溜まった廃水を区画床7上にある第1領域11外の第2領域12へ流す出口部10とを備えている。
本実施形態の入口部9及び出口部10それぞれは、管部材(後述の導水管)9a及び管部材10aを有しており、これら管部材9a,10a及び堰部8は区画床7に一体となって設けられている。
【0029】
また、汚濁物捕捉用構造体1は、下部室6と上部室5とを通気する中空管19を備えている。中空管19の下端は区画床7に取り付けられており、上方に向かって延び、その上端は堰部8の上端よりも高く設定されている。この中空管19は、上部室5の廃水が下部室6へ流れる際に、下部室6の空気を上部室5へと通気するエア抜きのためのものである。
【0030】
区画床7は、槽本体42の内周面の全周と共通する外周輪郭形状を有し槽本体42を上下に区画する部分となる本体部13と、本体部13の外周端縁から下方に延びて側壁4bに嵌った状態となる筒部14とを有している。筒部14と本体部13とは一体として構成されている。また、汚濁物捕捉用構造体1は、区画床7を槽本体42に取り付けている取り付け部15を備えている。この取り付け部15は、区画床7を全体として槽本体42から取り外し可能である。なお、取り付け部15の構成については後に説明する。
【0031】
前記堰部8は、区画床7の一部によって構成されており、流入口41側から徐々に高くなる隆起部として構成されている。堰部8は、前記第1領域11に流入した廃水を堰き止めると共に、当該廃水を第1領域11外の第2領域へと越流可能とする。流入した廃水は堰部8によって溜められるが、廃水の流入量が増えその水位が頂部8tを越えることで廃水は当該頂部8tを越流する。堰部8によって廃水が堰き止められる領域が第1領域11であり、この第1領域11以外の領域が第2領域12である。第2領域12は、第1領域11よりも低い位置にある。また、第2領域12の床面は水平面とされており、第2領域12の床面は、流出口43の下端とほぼ同じ高さに設定されている。
区画床7の内の、堰部8の上流側(流入口41側)の裾部中央には、水平状の面を有する底部7aが形成されており、この底部7aに前記管部材9aが取り付けられている。この底部7aは区画床7の一部である。
【0032】
図3は、側方から見た断面図である。入口部9の管部材9aは、区画床7の第1領域11に取り付けられている。管部材9aの上端は上部室5に開口しており、下端は区画床7の本体部13の下面13aよりも下に位置しており、下部室6で開口している。なお、上端は上方に向かって開口しているが、下端は槽本体42の周方向(水平方向)に向かって開口している。これにより、堰部8によって堰き止められた廃水は、管部材9aを通って下部室6へ流れ落ち、管部材9aの下端から水平方向に放出され、廃水は下部室6内で周方向のゆっくりとした循環流となる。
【0033】
特に、入口部9の管部材9aは、廃水を渦流として下部室6へと導くために、断面が円形である導水管からなる。このような導水管によれば、堰部8によって堰き止められている廃水を、渦流として下部室6へと導くことから、堰部8によって堰き止められた廃水の水面付近で浮上する汚濁物(特に油分)を、廃水の渦流に巻き込ませて下部室6へと流しやすくする。
【0034】
下部室6は流入部41及び管部材9aに比べて断面が大きいため、下部室6内に放出された廃水の流速は、流入部41及び管部材9aを通過する廃水の流速よりもはるかに遅い。このため、廃水に含まれていた汚濁物の内の、例えば粒子状物質は沈殿物となって満水状態にある下部室6に堆積し、また、汚濁物の内の油分は満水状態にある下部室6で浮上物となる。このため、沈殿物及び浮上物は下部室6で捕捉される。
【0035】
前記出口部10の管部材10aは、区画床7の第2領域12に取り付けられており、上端は上方に向かって開口し、下端は下方に向かって開口している。図3において、管部材10aの上端は、第2領域12と同じ高さで開口しており、下端は、区画床7の本体部13の下面13aよりも下に位置し、下部室6で開口している。
また、通常時では、堰部8によって第1領域11で堰き止められている廃水の水位は、第2領域12にある廃水の水位よりも高くなる。このため、上部室5の廃水は管部材9aを通って下部室6へと自然に流れ、下部室6の廃水は管部材10aを通って上部室5の第2領域へと自然に流れ出ることができる。
【0036】
さらに、第1領域11において、区画壁7上の底部7aから堰部8の頂部8tまでの高さによって、廃水が越流する際の水深が決定されるが、当該高さは、例えば、150mm程度に設定される。この場合、底部7aと第2領域12の床面の高さとの差は、75mm程度である。また、後に説明するが、別の汚濁物捕捉用構造体1(図11参照)では、底部7aから堰部8の頂部8tまでの高さは、200mm程度に設定されており、底部7aと第2領域12の床面の高さとの差は、25mm程度である。
なお、堰部8の高さ、及び底部7aと第2領域12の床面との高さの差は、任意に設定することができるが、第1領域11と第2領域12との廃水の水頭差に影響を与え、処理槽4内での廃水の流速に影響を与える。このため、これら値は、下部室6において、汚濁物が沈殿したり浮上したりできる程度にゆっくりとした廃水の流れとなるように、設定される。
【0037】
図1と図3とにおいて、区画床7を槽本体42に取り付けるための前記取り付け部15について説明する。取り付け部15は、区画床7の本体部13の外周端縁から上方に延びて槽本体42の側壁4bの内周面に嵌る形状を有する鍔部16と、この鍔部16に取り付けられ当該鍔部16を側壁4bに固定する固定部材としてのボルト17とを有している。なお、鍔部16と本体部13とは一体として構成されている。本実施形態の鍔部16は、側壁4bの内周面の全周に沿った形状を有する筒形状である。
図3の拡大図において、側壁4bには、ねじ穴を有するアンカー部材18が埋設されており、鍔部16には貫通孔16aが形成されており、ボルト17が貫通孔16aを挿通してアンカー部材18にねじ止め固定される。なお、ボルト17、アンカー部材18及び貫通孔16aは、周方向で複数箇所に設けられている。
【0038】
この取り付け部15によれば、区画床7を全体として槽本体42に固定することができ、しかも、ボルト17を取り外すことで、区画床7を全体として槽本体42から取り外すことができる。さらに、このボルト17は、区画床7の本体部13の上面から上側に設けられているため、作業者は、上部室5側から区画床7(汚濁物捕捉用構造体1)を取り外す作業が容易となる。
【0039】
また、区画床7の上面側の中央部に把手が設けられており、本実施形態では、この把手は前記中空管19からなる。つまり、区画床7(汚濁物捕捉用構造体1)を取り外す際、作業者は、この中空管19を掴むことができ、取り外しの作業が容易となる。
区画床7、この区画床7と一体である堰部8、管部材9a,10a、中空管19、筒部14、及び鍔部16は、金属製とすることもできるが、軽量化を図るため、本実施形態では樹脂製であり、特にFRPとするのが好ましい。
【0040】
以上のような汚濁物捕捉設備によれば、廃水に含まれていた汚濁物を下部室6で捕捉し汚濁物の含有率を低下させ、処理槽4外へと流出させることができる。
そして、堰部8、入口部9の管部材9a、及び出口部10の管部材10a等が区画床7に設けられていることから、汚濁物捕捉用構造体1を一体物として取り扱うことができる。そして、鍔部16及びボルト17を備えた取り付け部15によって、この区画床7を全体として槽本体42から取り外すことができるので、汚濁物捕捉用構造体1を丸ごと槽本体42から取り除くことができる。
【0041】
このため、例えば、下部室6に溜まった汚濁物を除去する清掃を行うために、廃水が抜き出されかつ汚濁物捕捉用構造体1が取り除かれた処理槽4の底部(下部室6に相当する空間)へ、作業者が侵入することが可能となる。
このようなことから、作業者が侵入するための専用の通路(マンホール)を、区画床7に設ける必要がないため、処理槽4が小規模なものであっても、汚濁物捕捉用構造体1を適用することができる。例えば、内径が1200ミリや900ミリ程度である処理槽4に、汚濁物捕捉用構造体1を設置することが可能となる。また、処理槽4は、新設のマンホールであってもよいが、既設のマンホールとすることもできる。
【0042】
図16は、処理槽4及び汚濁物捕捉用構造体1を側方から見た断面図であり、取り付け部15の変更例を示している。図16では、取り付け部15の形態が図3と異なるが、その他は、図3と同じである。つまり、図16の取り付け部15は、処理槽4の側壁4bに固定され区画床7を載せた状態として下から支持する固定部材117を有している。
図16の実施形態では、固定部材117は、直交する一片117aと他片117bとを有した断面L字形の部材であり、一片117aが側壁4bにボルト(アンカー)118によって固定されている。そして、他片117bが側壁4bから処理槽4の中央側へと突出した状態となる。なお、固定部材117は、処理槽4に複数カ所について同じ高さで設置されている。
【0043】
この場合、固定部材117の一片117aを処理槽4の側壁4bに固定し、この固定部材117の他片117bの上に区画床7の筒部14を載せることで、汚濁物捕捉用構造体1を処理槽4に取り付けることができる。また、固定部材117による区画床7の支持は、区画床7が他片117bの上に載った状態のみで実現されているため、区画床7を上に持ち上げることで全体として処理槽4から取り外すことが可能となる。また、この場合、区画床7を処理槽4に設置する前に、固定部材117の設置高さを設定することで、区画床7の設置高さの調整を行うことができるので、施工性を高めることができる。
【0044】
[2.2 第2実施形態]
図4は、第2実施形態の汚濁物捕捉用構造体1及び処理槽4の一部を示している説明図であり、(a)は上から見た断面図であり、(b)は側方から見た断面図である。この第2実施形態と前記第1実施形態とでは、処理槽4の構成は同じであり、また、汚濁物捕捉用構造体1において、区画床7、堰部8、入口部9、出口部10、及び中空管19それぞれについて、各機能を発揮するための基本構成は同じである。
【0045】
また、この第2実施形態及び前記第1実施形態(図3)では、入口部9は分解可能な構成である。つまり、図3と図4(b)とに示しているように、入口部9の管部材9aは、区画床7の本体部13に固定されている第1部材9a−1、第1部材9a−1の上部に取り付けられ廃水の取り入れ口となる円筒部21を有する第2部材9a−2、及び第1部材9a−1の下部に取り付けられ廃水の放出口を有している第3部材9a−3からなる。第2部材9a−2及び第3部材9a−3を、第1部材9a−1に嵌め込むことで、管部材9aは組み立てられており、また、第2部材9a−2及び第3部材9a−3は、第1部材9a−1から取り外し可能である。
【0046】
そして、第1実施形態の汚濁物捕捉用構造体1と異なる点は、区画床7の内の、堰部8、入口部9、及び出口部10の少なくとも一つを含んだ一部分を、当該区画床7の内の残りの部分に対して折り曲げることで開閉させるヒンジ部20を備えている点である。
図4の第2実施形態の汚濁物捕捉用構造体1では、ヒンジ部20によって、区画床7の内の入口部9(第1部材9a−1)を含んだ一部分A1(図4でクロスハッチが付されている部分)が、当該一部分A1以外の残りの部分A2に対して折り曲がる構成である。
この一部分A1の面積(縦寸法及び横寸法)は、作業者の通過を妨げない程度の大きさである。この一部分A1がヒンジ部20によって上に跳ね上げられ開状態となることにより形成された開口から、作業者は、上部室5から下部室6へと侵入することができる。
なお、この一部分A1を上に折り曲げて開いた状態とするために、管部材9aの第2部材9a−2及び第3部材9a−3を、第1部材9a−1から取り外しておく。
【0047】
[2.3 第3実施形態]
図5は、第3実施形態の汚濁物捕捉用構造体1及び処理槽4の一部を側方から見た断面図である。この第3実施形態と前記各実施形態とでは、処理槽4の構成は同じであり、また、汚濁物捕捉用構造体1において、区画床7、堰部8、入口部9、出口部10、及び中空管19それぞれについて、各機能を発揮するための基本構成は同じである。
この第3実施形態は、第2実施形態の変形例であり、第2実施形態の汚濁物捕捉用構造体1と異なる点は、区画床7の内のヒンジ部20によって開閉される部分である。この第3実施形態では、ヒンジ部20によって、区画床7の内の堰部8(堰部8の一部)を含んだ一部分A11が、当該区画床7の内の残りの部分A12に対して折り曲がることで開閉する。
【0048】
このように堰部8の一部が開閉することから、当該堰部8及び出口部10の構成が、前記各実施形態と異なる。すなわち、堰部8の内の、ヒンジ部20によって開閉する前記一部は、平板部材8aからなり、また、出口部10(管部材10a)の断面積は、作業者の通過を妨げない程度に大きい。そして、前記平板部材8aの下方に出口部10の一部が存在している。この構成により、堰部8を小さく(低く)することなく、かつ、下部室6の清掃の際には、平板部材8aを跳ね上げることで、作業者が出口部10を通過することができる。
【0049】
以上の第2実施形態及び第3実施形態によれば、ヒンジ部20は、区画床7の一部分(A1又はA11)を、残りの部分(A2又はA12)に対して折り曲げることで開くことができる。このため、下部室6に溜まった汚濁物を除去する清掃を行うために、前記一部分(A1又はA11)を開いて形成した開口を通じて、廃水が抜き出された処理槽4の底部へ、作業者が侵入することが可能となる。したがって、作業者が侵入するための専用の通路(マンホール)を区画床7に設ける必要がなく、処理槽4が小規模なものであっても汚濁物捕捉用構造体1を適用することができる。
【0050】
[3 汚濁物捕捉用構造体1のその他の機能部について]
前記各実施形態の汚濁物捕捉用構造体1が備えることのできるその他の機能部について説明する。なお、以下の各機能部は、前記各実施形態それぞれに適用可能である。
[3.1 点検窓22について]
図6は、図2に示している汚濁物捕捉用構造体1のB−B矢視の断面図である。この汚濁物捕捉用構造体1は、上部室5から下部室6内を視覚により作業者に確認させるための点検窓22を備えている。点検窓22は区画床7の一部に設けられており、本実施形態では、区画床7の本体部13の内、第1領域11にある床部7bに設けられている。床部7bは、入口部9(前記底部7a)の両側に形成されている部分であり、水平状となっている。
【0051】
図7は点検窓22の説明図であり、(a)は側方から見た断面図であり、(b)は平面図である。点検窓22は、可視光を透過させる材質からなる窓本体部材22aを有しており、窓本体部22aは、例えば透明無色のガラス製である。窓本体部材22aの内周面及び外周面は、下に尖った円錐形状であり、床部7bに形成された貫通孔7cに取り付けられている。
窓本体部22aには目盛り23が付されている。目盛り23は高さ方向についての寸法を示したものであり、床部7bの下面7b−bからの深さを示している。前記のとおり、下部室6では廃水が満水状態にあり、廃水に含まれていた汚濁物の内の油分は、下部室6で浮上して浮上物Fとなる。そこで、この浮上物Fの量(捕捉した量)を窓本体部材22a及び目盛り23によって、作業者は上部室5側から確認することができ、処理槽2の清掃の要否の確認作業が容易となる。
【0052】
[3.2 入口部9の円筒部21について]
前記のとおり、入口部9の管部材9a(図1参照)は、廃水を渦流として下部室6へと導く導水管からなるが、さらに、渦流を発生しやすくするために、図8に示しているように、入口部9は、第1領域11の底部7aから上に突出し、上端部から廃水を取り入れる円筒部21を有している。本実施形態では、円筒部21は、管部材9aの第2部材9a−2に設けられている。
第1領域11の入口部8及びその周辺部では、堰部8及び両側の床部7bが、底部7aよりも高くなっており、ほぼすり鉢形状となっており、その中央に円筒部21が設けられている。このため、流入口41から流入した廃水は、堰部8によって堰き止められると共に、円筒部21の外周に沿って誘導され周方向に流れることができ、そして、円筒部21の上端部から廃水を取り入れることができ、入口部9において渦流が発生しやすくなる。この結果、堰部8によって堰き止められた廃水の水面付近で浮上する汚濁物(特に油分)を、廃水の渦流に巻き込ませて下部室6へと流しやすくなる。
また、廃水の取り入れ口となる円筒部21の上端の開口は、入口部9(管部材9a)中で最も面積が小さく設定されており、オリフィスを構成している。
【0053】
[3.3 入口部9の(導水管)について]
図3で説明したように、管部材9aは分解可能な構成である。つまり、円筒部21を有する第2部材9a−2及び放出口を有している第3部材9a−3は、第1部材9a−1から取り外し可能である。このため、第3部材9a−3を、異なる長さのものに取り替えることができ、この結果、管部材9a(導水管)の全長を変更することができる。
なお、第3部材9a−3の取り替えを容易とするために、この第3部材9a−3は、上方へ延び上部室5で露出している把手24を有している。作業者はこの把手24を引き上げることで簡単に第3部材9a−3を取り外すことができ、また、この把手24を用いて、第3部材9a−3を簡単に取り付けることができる。
【0054】
このように、管部材9aの全長を変更することで、下部室6の深さや、廃水の流入量に応じて、当該管部材9aの放出口の高さ位置を変更することができる。また、この全長を長くすることで、廃水の流速を制御することもできる(例えば平均化することができる)。なお、管部材9aの全長の変更は、前記のとおり第3部材9a−3を取り替えることにより行ってもよいが、管部材9aを例えば蛇腹構造として伸縮する構成とすることにより行ってもよい。
【0055】
[3.4 堰部8のフィルター25について]
図6に示しているように、堰部8には、越流する廃水と共に流れようとする異物を受け止めるフィルター25が設けられている。フィルター25は、網部材(スクリーン)からなり、その下部が堰部8に取り付けられており、フィルター25の上端は堰部8の頂部よりも高く設定され、さらには、フィルター25の上端は、堰部8を越流する廃水の高さよりも高くなるように設定されている。
例えばペットボトル等の大型の浮遊物は、堰部8によって堰き止められた廃水の水面付近を浮いたままであり、入口部9から下部室6内へは流入しない場合があり、槽本体42で回収できないが、このフィルター25によれば、このような浮遊物を槽本体42で回収することが可能となる。
【0056】
また、図示しないが、フィルター25の一部を下流側(第2領域12側)へ膨らませた形状としてもよく、この場合、膨らませた領域に異物を溜めることができ、異物の回収が容易となる。なお、廃水が堰部8を越流する場合は、廃水の処理槽4への流入量が想定されている値よりも多くなった非常時であり、それ以外の通常時では流入した廃水はすべて堰部8に堰き止められ、下部室6、出口部10、及び第2領域12を経てから外部へ排出される。
【0057】
[3.5 下部室6の堰板26について]
図9(a)は、汚濁物捕捉用構造体1及び処理槽4を側面から見た断面図であり、図9(b)は、上から見た断面図である。この汚濁物捕捉用構造体1は、下部室6に設置した堰板26を備えている。堰板26は、廃水を通過させる複数のスリット26aが形成された板部材からなり、スリット26aそれぞれは、縦長の細い長孔からなる。
また、堰板26は、下部室6の内径とほぼ同一の幅寸法を有し、管部材9aの下端にある排出口及び管部材10aの下端にある吸入口よりも上に位置する高さを有し、下部室6をほぼ入口部9側と出口部10側とに区画している。なお、図9(a)において、底壁4e上に堆積している堆積物Sは、廃水に含まれており沈殿した汚濁物である。
【0058】
上部室5から下部室6へと流れた廃水は、下部室6内を周方向に循環して流れようとするが、スリット26aを通過した廃水の流速は、より一層遅くなる。このように、廃水の流速を遅くすることで、前記堆積物Sが撹拌されるのを防ぎ、かつ、下部室6で浮遊している汚濁物を、沈殿物として底壁4e上に堆積させやすくなり、また、浮上物Fとして下部室6で捕捉しやすくしている。また、堰板26の上端は、区画床7の本体部13の下面よりも低く設定されている。これにより、浮上物Fの捕捉許容量を減らすことがなく、また、浮上物Fの捕捉の邪魔とならない。
【0059】
[3.6 上部室5の第2領域12について]
図2に示している堰板8の頂部8tは直線状であり、この頂部8tから廃水は越流する。堰部8を越流した廃水は、第2領域12へ落下し、その後、流出口43を通じて槽本体42外へ排出される。このために、第2領域12は、出口部10から流れ出た廃水及び堰部8から越流した廃水を、槽本体42の側壁4bに形成された流出口43を通じて槽本体42外へと流出させるために、当該廃水を一時的に受け入れる領域であって前記側壁4bに沿った外周輪郭形状を有している。
図2では、槽本体42の中心Cを基準とした第2領域12の平面的な広がりを示す角度θ(第2領域12の範囲)は、おおよそ90°である。この実施形態では、流入口41の軸線41cと流出口43の軸線43cとが中心Cを通る一直線上に配置されているため、第2領域12の廃水は、流出口43へ流れることができる。
【0060】
なお、流入口41の軸線41cに対して流出口43の軸線43cが、図示しないが30°程度、折れ曲がっていても、この実施形態により対応可能である。
しかし、流入口41の軸線41cに対して流出口43の軸線43cが、90°程度、折れ曲がっている場合、前記各実施形態の汚濁物捕捉用構造体1では対応できない。そこで、図10に示している汚濁物捕捉用構造体1によれば、この場合であっても対応可能である。
【0061】
図10は、汚濁物捕捉用構造体1の変形例を示している平面図である。この汚濁物捕捉用構造体1は、前記各実施形態と、区画床7、堰部8、入口部9、出口部10、及び中空管19それぞれについて、各機能を発揮するための基本構成は同じである。しかし、この実施形態では、第2領域12の外周輪郭形状は、側壁4bの全内周の内の半周以上に及ぶ長さを有している形状である。つまり、第2領域12は、第1領域11以外の範囲として、区画床7の外周部に沿って、区画床7上で180°以上(θ≦180°)の範囲を有している。本実施形態では、θ=300°の範囲を有しており、図10においてクロスハッチで示している領域が第2領域12であり、その他の領域が第1領域11である。
【0062】
この汚濁物捕捉用構造体1によれば、流入口41と流出口43とが直線上に配置されていなくても、つまり、図10に示しているように、流入口41と流出口43との向かう方向が90°折れ曲がっていても、汚濁物捕捉用構造体1を改造することなく適用することができる。
図10の汚濁物捕捉用構造体1では、堰部8(頂部8t)を平面視、180°に広がった半円形とすることで、越流長(頂部8t)が短くなるのを防いでいる。さらに、図2に比べて床部7bが狭くなっており、床部7bの両側には、堰部8の頂部8t以上の高さの壁27が設けられている。
【0063】
また、図11は、汚濁物捕捉用構造体1の変形例を示している斜視図である。この汚濁物捕捉用構造体1は、図10の形態と比較して、区画壁7の大きさ、堰部8の形状、出口部9の直径、及び中空管19の配置が異なるが、区画床7、堰部8、入口部9、出口部10、及び中空管19それぞれについて、各機能を発揮するための基本構成は同じである。また、図11の汚濁物捕捉用構造体1は、図1のものよりも大型の処理槽4に好適である。
【0064】
[4 汚濁物処理設備1の他の実施形態(第4実施形態)]
図12は、第4実施形態の汚濁物捕捉用構造体1及び処理槽4の一部を側方から見た断面図である。前記各実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、処理槽4に区画床7を新設するものであるが、図12の汚濁物捕捉用構造体1は、区画床46が既設となっている処理槽4に設けるためのものである。つまり、処理槽4が、上部室5と下部室6とに区画する区画床46を備えており、本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、汚濁物を下部室6で捕捉して廃水を処理槽4外へ流出させるために、前記既設の区画床46に取り付けられるものである。
【0065】
この汚濁物捕捉用構造体1は、堰部8、入口部9、及び出口部10を備えている。堰部8、入口部9、及び出口部10それぞれについて、各機能を発揮するための基本構成は、前記各実施形態と同じである。つまり、堰部8は、流入口41から区画床46上の一部である第1領域11に流入する廃水を堰き止めると共に、当該廃水を当該区画床46上にある前記第1領域外の第2領域12へと越流可能とする。入口部9の管部材9aは、堰部8によって堰き止められた廃水を下部室6へ流すものであり、また、出口部10の管部材10aは、下部室6内に溜まった廃水を上部室5側の第2領域12へ流すものである。入口部9の管部材9aは、堰部8によって堰き止められている廃水を、渦流として下部室6へと導く導水管として機能する。
【0066】
本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1と前記各実施形態とで異なる点は、前記各実施形態では、堰部8と入口部9と出口部10とが一体であるのに対し、本実施形態では、堰部8と入口部9とは一体として構成されているが、堰部8と出口部10とが別体となっている点である。
そして、本実施形態では、前記のとおり区画床46が既設のものであるため、当該区画床46に上下貫通する貫通孔47,48を形成し、一方の貫通孔47に入口部9の管部材9aを挿通させると共に、この管部材9aと一体である堰部8を当該区画床46上に載せた状態とする。また、他方の貫通孔48に出口部10の管部材10aを挿通させる。これにより、堰部8、入口部9、及び出口部10を、区画床46に取り付けた状態とすることができる。
【0067】
また、図示していないが、区画床46に貫通孔を更に設け、下部室6と上部室5とを通気する中空管19(図11参照)を設けてもよい。
さらに、本実施形態においても、前記機能部として、区画床46に更に形成した貫通孔に前記点検窓22(図7参照)を設けてもよく、また、管部材9aの全長を変更させるための構成(図3参照)、堰部8のフィルター25(図6参照)、入口部9の円筒部21(図8参照)、及び下部室6の堰板26(図9参照)を、備えていてもよい。
【0068】
このように、図12に示している実施形態によれば、入口部9の管部材9aと堰部8とは一体として構成されており、また、処理槽4が有している区画床46に形成された貫通孔47,48に、入口部9及び出口部10の管部材9a,10aを挿通して取り付ければ、汚濁物捕捉用構造体1を完成させることができる。つまり、区画床46が既設となっている処理槽4にも、汚濁物捕捉用構造体1を設けることが可能となる。なお、この実施形態においても、堰部8、入口部9、及び出口部10は樹脂製とするのが好ましい。
【0069】
さらに、本実施形態によれば、堰部8及び入口部9と、出口部10とが別体であるため、処理槽4の規模、区画床46の広さに影響されないで汚濁物捕捉用構造体1を設けることができる。つまり、既設の区画床46、槽本体42に形成された流入口41及び流出口43の位置に合わせて、貫通孔47,48の位置を決定して、当該貫通孔47,48を区画床46に形成すればよい。また、仮に、二カ所(複数カ所)の流入口41を処理槽4が備えている場合であっても、管部材9aを取り付ける貫通孔47を、流入口41に合わせて二カ所(複数カ所)区画床46に形成すればよく、このように、流入口41の数に合わせた汚濁物捕捉用構造体1を得ることが可能となる。
【0070】
[5 処理槽4について]
前記各実施形態の処理槽4(図1参照)の上壁4a、側壁4b、及び底壁4eを、コンクリート製とすることができるが、その他の材質であってもよい。例えば、特に、処理槽4を新設する場合、樹脂製とすることができ、図14(a)に示しているように、周方向及び軸方向それぞれに関して複数に分割された側壁用の分割シェル51によって、処理槽4の側壁4bを構成してもよい。また、処理槽4の底壁4eも樹脂製である底用の分割シェル52によって構成することができる。
図14(a)の実施形態では、側壁4bは周方向に二分割されており、その二分割された分割シェル51は、図14(b)に示すとおり半円形状を有している。そして、図14(a)の実施形態では、底壁4eとして一つの皿形状の分割シェル52が設けられ、その上にある側壁4bは、軸方向(高さ方向)に7分割されている。
【0071】
このように、樹脂製の分割シェル51,52によって処理槽4が構成される場合、当該分割シェル51,52は軽量となるため、処理槽4を新設する作業が容易となる。また、強度を確保するために、分割シェル51,52をFRPとするのが好ましい。また、図14(b)に示す分割シェル51を採用することで、処理槽4の高さを自在に変更することが可能となる。
【0072】
また、汚濁物の捕捉能力を高める(捕捉許容量を増やす)ためには、下部室6の容積を大きくするのが好ましい。このために、図13に示したように、複数の処理槽4U,4Dの下部室6同士を、下連結管50で繋いでも良いが、図15に示しているように、上部室5よりも下部室6を水平方向に拡大させた処理槽4としてもよい。この場合、下部室6の清掃等のメンテナンスとして作業者が下部室6内へ侵入するために、この処理槽4では、上部室5と隣接して設けられた専用のマンホール53が設置されている。つまり、下部室6を構成する処理槽下部54から、上部室5を構成する処理槽上部55及びマンホール管53を立設させた処理槽4とすればよい。
【0073】
また、本発明は、図例の形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、図1では、処理槽4の流入口41が側壁4bに形成されている形態について説明したが、流入口41は、上壁4aに形成されていてもよい。この場合、廃水は第1領域11上に落下する形態となる。
また、前記各実施形態では、処理槽4を地中に設置する場合として説明したが、処理槽4を地上に設置してもよい。特に地上に設置する場合、処理槽4を樹脂製とするのが好ましい(図14参照)。
また、中空管19(図1参照)を有することで、検査用の棒部材(図示せず)を、この中間管19を通過させることで、下部室6での沈殿物の堆積量を測る作業が可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1:汚濁捕捉装置、 4:処理槽、 5:上部室、 6:下部室、 7:区画床、 8:堰部、 9:入口部、 9a:管部材(導水管)、 10:出口部、 10a:管部材、 11:第1領域、 12:第2領域、 21:円筒部、 25:フィルター、 26:堰板、 26a:スリット、 41:流入口、 42:槽本体、 43:流出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水に含まれている汚濁物の含有率を低下させるために処理槽に設置される汚濁物捕捉用構造体であって、
前記処理槽を、廃水が流入する上部室と、廃水に含まれている汚濁物を捕捉する下部室とに上下区画する区画床と、
前記区画床上の一部である第1領域に流入した廃水を堰き止めると共に当該廃水を当該区画床上にある前記第1領域外の第2領域へと越流可能とする堰部と、
前記第1領域に設けられ、かつ、前記堰部によって堰き止められた廃水を前記下部室へ流す入口部と、
前記第2領域に設けられ、かつ、前記下部室内の廃水を当該第2領域へ流す出口部と、
を備え、
前記入口部は、前記廃水を渦流として前記下部室へと導く導水管を有していることを特徴とする汚濁物捕捉用構造体。
【請求項2】
前記入口部は、前記第1領域の底部から上に突出し、上端部から前記廃水を取り入れる円筒部を有している請求項1に記載の汚濁物捕捉用構造体。
【請求項3】
前記導水管の長さは変更可能である請求項1又は2に記載の汚濁物捕捉用構造体。
【請求項4】
前記堰部には、越流する廃水と共に流れようとする異物を受け止めるフィルターが設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の汚濁物捕捉用構造体。
【請求項5】
前記下部室に設けられ、廃水を通過させるスリットが形成された堰板を備えている請求項1から4のいずれか一項に記載の汚濁物捕捉用構造体。
【請求項6】
前記出口部から流れ出た廃水及び前記堰部から越流した廃水を、前記処理槽の側壁に形成された流出口を通じて当該処理槽外へと流出させるために、前記第2領域は、当該廃水を一時的に受け入れる領域であって前記側壁に沿った外周輪郭形状を有しており、
前記外周輪郭形状は、前記側壁の全内周の内の半周以上に及ぶ長さを有した形状である請求項1から5のいずれか一項に記載の汚濁物捕捉用構造体。
【請求項7】
汚濁物が含まれている廃水が流入する上部室とその下方の下部室とに区画床によって上下区画された処理槽の、当該区画床に取り付けられ、前記廃水に含まれている汚濁物の含有率を低下させるために用いられる汚濁物捕捉用構造体であって、
前記区画床上の一部である第1領域に流入する廃水を堰き止めると共に当該廃水を当該区画床上にある前記第1領域外の第2領域へと越流可能とする堰部と、
前記堰部によって堰き止められた廃水を前記下部室へ流す入口部と、
前記下部室内の廃水を前記第2領域へ流す出口部と、
を備え、
前記堰部と前記入口部とは一体として構成され、
前記入口部及び前記出口部それぞれは、前記区画床に上下貫通して形成されている複数の貫通孔それぞれを挿通して取り付けられる管部材を有し、
前記入口部の前記管部材は、前記廃水を渦流として前記下部室へと導く導水管であることを特徴とする汚濁物捕捉用構造体。
【請求項8】
槽本体、汚濁物が含まれている廃水を前記槽本体に流入させる流入口、及び廃水を前記槽本体外へ流出させる流出口を有する処理槽と、
前記汚濁物の含有率を低下させるために前記槽本体内に設置されて用いられる汚濁物捕捉用構造体と、を備え、
前記汚濁物捕捉用構造体が請求項1から7のいずれか一項に記載の汚濁物捕捉用構造体であることを特徴とする汚濁物捕捉設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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