説明

汚濁防止用蓋付バケット

【課題】 この発明は工事がより簡単で、低コストで、確実に濁水発生を阻止出来る汚濁防止用蓋付バケットを開発・提供する事にある。
【解決手段】 ヒンジを介してリフトアームに枢着されたバケットであって、該バケットの開口部を覆う汚濁防止用蓋を設けるにあたり、バケットの開口部の縁部には、土砂流出防止用のパッキン等の軟質部材を設け、前記蓋は、該軟質部材を介して前記バケットと重合し、且つ、蓋は、バケットが土砂を掬った際、山積み状態を崩さないよう上部方向に膨出した逆椀状に形成すると共に、該蓋一端には、バケットのヒンジと、ほぼ同軸に開閉用ヒンジ部を設け、該蓋部の他端には、ワイヤーロープ等の保持部材の一端と係止し、該保持部材の他端は、バケットに蓋が重合した際に、保持部材が緊締するよう設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、海洋河川等の浚渫工事に使用する油圧ショベルの汚濁防止用蓋付バケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から海洋河川の浚渫工事は浚渫船を使用したグラブバケットによる浚渫と、ショベルバケットを使用した浚渫等が有り、どちらを使用するかは工事の規模や予算やその時の状況等によって選択されるが、特に前者のグラブバケットの場合は、製作、設備に多大な費用が掛かり、又、潮流や潮位の変化によって汚濁流出防止用カーテンが大きく移動し、発生する濁りが漏れる事が多く、これらを解消する為に設備が大きくなる。
【0003】
又、最近の浚渫工事は油圧ショベルを使用する事が増えてきている。通常、油圧ショベルで浚渫する場合は、図5に示すように汚濁流出防止枠(カーテン)を設置する。しかしながら、海流には潮位の変化に伴う潮流が発生し、それが浚渫時に発生した濁水を周囲に拡散させる事になる。又、汚濁防止枠にはカーテン長を調整し地盤との隙間を少なくするものもあるが、濁水を完全に止める事は不可能である。又、油圧ショベルの場合はバケットで土砂を掬う為、掬いあげる際に土砂が流出して濁水を発生し、環境衛生上の悪影響を与えると共に、海底が見えなく成る事で作業効率的にも非効率的であり、改善が求められている。
【0004】
従って、上記の問題を解決するべく、より簡単で、低コストで、確実に濁水発生を阻止可能な汚濁防止用蓋付バケットを早期開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
これまでに出願されている浚渫工事用バケットに関連した特許文献を参考の為、紹介する(特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】特開2005−330793
【特許文献2】特開2006−097344
【特許文献3】特開2008−231687
【特許文献4】特開2008−255691
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、上記課題を解決する為に、この発明は浚渫工事がより簡単で、低コストで、確実に濁水発生を阻止出来る汚濁防止用蓋付バケットを開発・提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決する為の手段として、ヒンジを介してリフトアームに枢着されたバケットであって、該バケットの開口部を覆う汚濁防止用蓋を設けるにあたり、バケットの開口部の縁部には、土砂流出防止用のパッキン等の軟質部材を設け、前記蓋は、該軟質部材を介して前記バケットと重合し、且つ、蓋は、バケットが土砂を掬った際、山積み状態を崩さないよう上部方向に膨出した逆椀状に形成すると共に、該蓋一端には、バケットのヒンジと、ほぼ同軸に開閉用ヒンジ部を設け、該蓋部の他端には、ワイヤーロープ等の保持部材の一端と係止し、該保持部材の他端は、バケットに蓋が重合した際に、保持部材が緊締するよう設けたものである。
【0008】
蓋の開閉用ヒンジ部は、左右2箇所に設け、これに伴い、ワイヤーロープ等の保持部材も2本設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の効果として、ヒンジを介してリフトアームに枢着されたバケットであって、該バケットの開口部を覆う汚濁防止用蓋を設けるにあたり、バケットの開口部の縁部には、土砂流出防止用のパッキン等の軟質部材を設け、前記蓋は、該軟質部材を介して前記バケットと重合し、且つ、蓋は、バケットが土砂を掬った際、山積み状態を崩さないよう上部方向に膨出した逆椀状に形成すると共に、該蓋一端には、バケットのヒンジと、ほぼ同軸に開閉用ヒンジ部を設け、該蓋部の他端には、ワイヤーロープ等の保持部材の一端と係止し、該保持部材の他端は、バケットに蓋が重合した際に、保持部材が緊締するよう設けた事で、従来の汚濁防止枠(カーテン)設置による浚渫工事の周囲への汚濁発生が極めて減少され、環境に対して優しい施工が可能と成り、且つ、取り扱いや構造が簡単で現地でも対策工事が出来る為、コスト的にも安価で安全で確実に汚濁を防止出来る。又、バケットに蓋を設ける事で、掬い上げた土砂が流出しなくなり、掘削作業や運搬作業の効率アップや環境汚染の軽減にも繋がる等、極めて有益なる効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施例を示し、左側面図である。
【図2】この発明の一実施例を示し、正面図である。
【図3】この発明の一実施例を示し、浚渫作業手順の概要図である。
【図4】この発明の使用例を示し、左側面図である。
【図5】この発明の従来例を示し、左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態として、海洋河川等の浚渫工事に使用する油圧ショベル用バケットにおいて、ヒンジを介してリフトアーム(LA)に枢着されたバケット(BA)であって、該バケットの開口部を覆う汚濁防止用蓋(1)を設けるにあたり、バケットの開口部の縁部には、土砂流出防止用のパッキン等の軟質部材(1c)を設け、前記蓋(1)は、該軟質部材(1c)を介して前記バケット(BA)と重合し、且つ、蓋(1)は、バケット(BA)が土砂を掬った際、山積み状態を崩さないよう上部方向に膨出した逆椀状に形成すると共に、該蓋(1)一端には、バケット(BA)のヒンジと、ほぼ同軸に開閉用ヒンジ部(1a)を設け、該蓋(1)部の他端には、ワイヤーロープ等の保持部材(3)の一端と係止し、該保持部材(3)の他端は、バケット(BA)に蓋(1)が重合した際に、保持部材(3)が緊締するよう設けたことを特徴とする汚濁防止用蓋付バケットから構成される。
【実施例1】
【0012】
そこで、この発明の一実施例を図1〜図2に基づいて詳述すると、図1は油圧ショベルのバケット部及びバケットリフトアーム部に汚濁防止用蓋(1)と保持部材(3)(3)を係止して設けた状態を示す左側面図で、図2は同じく正面図である。
【0013】
そして、汚濁防止用蓋(1)の平面形状はバケット(BA)の開口部に適合したほぼ矩形状に形成され、且つ、縦断面形状は横側面図でも解る様に逆お椀形状に形成されている為、土砂(G)を山盛り掬った状態で蓋(1)を閉めても土砂(G)を溢さずに蓋(1)が出来る様に工夫されている。又、バケットの開口部全周には蓋(1)を閉めた際に砂利が毀れないようにする為、ゴム製パッキン等の流出防止用軟質部材(1c)を設け、且つ、蓋(1)の上部後方左右に保持部材(3)(3)を係止する為の係止穴部(1b)(1b)をそれぞれ設け、且つ、バケットリフトアームの上部に保持部材(3)(3)を係止する為の係止具(2)を設けて、蓋(1)の上部後方左右に設けた係止穴部(1b)(1b)とバケットリフトアーム(LA)の上部に設けた係止具(2)の係止用穴(2a)(2a)間にワイヤーロープとシャックルを組み合わせた保持部材(3)(3)を係止して設け、(1)蓋の固定角度を一定に保持し、砂利を掬いあげる際には、常時蓋が密閉状態に成る様に調整する。又、この保持部材(1b)(1b)は長さを任意に調整可能に設けている為、作業時の掘削姿勢やその時の状況に応じて保持部材(3)(3)の長さをそれぞれ調整して、固定角度を変更する事が出来る。又、上記保持部材(3)は左右2箇所に限定するものではなく、例えば強度を考慮したワイヤーロープとシャックルを組み合わせた保持部材(3)を中央部に1本設けて使用する事も可能である。
【0014】
又、前記バケット(BA)及び蓋(1)の表面には付着した泥を素早く肌離れさせる為に、下地にポリペンコ等の高分子樹脂を張り付け、更にその上にクリーンキープ等の高分子樹脂を塗布して塩水による錆び対策を施している。
【0015】
次に、油圧ショベルのバケット(BA)による浚渫作業手順について概要を説明すると、図3に示す様に最初は油圧ショベルのメインブーム(MB)とバケットリフトアーム(LA)をそれぞれのメインブームリフトシリンダー(CY1)とバケットアームリフトシリンダー(CY2)を作動させて調整しながら目的の場所に移動させ、バケット用リフトシリンダーとバケットアームリフトシリンダーを同時に調整しながら作動させてバケットとバケットアームを手前に引きながら海底の土砂(G)を掬い、完全に蓋が密閉されたら、メインブーム(MB)を持ち上げ、後方に旋回させて浚渫船に設置された保管場所へ移送される。この作業を繰り返しながら浚渫作業が行われる。
【実施例2】
【0016】
その他の実施例として、実施例1以外に浚渫船上から浚渫船上に積まれた土砂(G)を油圧ショベルで掬って移送する作業も行われるが、その場合も従来型ではショベルのバケット容量の約2割〜3割程度の土砂(G)が毀れてロスが多く非効率的であったが、本発明のバケットを使用すれば、ほぼ100%の作業効率で浚渫作業が行える為、土砂(G)の流出による汚濁(G')を防止し、非常に経済的で環境に悪影響を及ぼす事もない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明の汚濁防止用蓋付バケットは、工事がより簡単で、低コストで、確実に濁水発生を阻止出来る為、多くの海洋河川浚渫工事に携わる関係市場に寄与する点で産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0018】
1 汚濁防止用蓋
1a 開閉用ヒンジ部
1b 保持部材係止用穴
1c パッキン等の流出防止用軟質部材
2 係止具
2a 保持部材係止用穴
3 保持部材
BA バケット
CY1 メインブームリフトシリンダー
CY2 バケットアームリフトシリンダー
CY3 バケットリフトシリンダー
FE 汚濁流出防止用壁
LA バケットリフトアーム
MB メインブーム
G 土砂
G' 濁水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋河川等の浚渫工事に使用する油圧ショベル用バケットにおいて、ヒンジを介してリフトアーム(LA)に枢着されたバケット(BA)であって、該バケットの開口部を覆う汚濁防止用蓋(1)を設けるにあたり、バケットの開口部の縁部には、土砂流出防止用のパッキン等の軟質部材(1c)を設け、前記蓋(1)は、該軟質部材(1c)を介して前記バケット(BA)と重合し、且つ、蓋(1)は、バケット(BA)が土砂を掬った際、山積み状態を崩さないよう上部方向に膨出した逆椀状に形成すると共に、該蓋(1)一端には、バケット(BA)のヒンジと、ほぼ同軸に開閉用ヒンジ部(1a)を設け、該蓋(1)部の他端には、ワイヤーロープ等の保持部材(3)の一端と係止し、該保持部材(3)の他端は、バケット(BA)に蓋(1)が重合した際に、保持部材(3)が緊締するよう設けたことを特徴とする汚濁防止用蓋付バケット。
【請求項2】
蓋(1)の開閉用ヒンジ部(1a)は、左右2箇所に設け、これに伴い、ワイヤーロープ等の保持部材(3)も2本設けたことを特徴とする請求項1記載の汚濁防止用蓋付バケット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−265621(P2010−265621A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116307(P2009−116307)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【特許番号】特許第4432066号(P4432066)
【特許公報発行日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(391051119)洋伸建設株式会社 (8)
【Fターム(参考)】