説明

沈下防止杭

【課題】 部品点数の増加を招くことなく沈下防止を図ることができる沈下防止杭を、また、硬い岩等の障害物があった場合でも沈下防止を阻害されることがない沈下防止杭を提供する。
【解決手段】 一端側から他端側に向かって複数のスリット111が形成され、スリット111間が舌片部112となったパイプ状の杭本体110と、この杭本体110の一端側に離脱可能に取り付けられた先鋭部120とを備えており、前記先鋭部120は先端が尖った本体部121と、この本体部121の後端側であり、前記杭本体110の一端側が嵌まり込む嵌合部122とが一体に形成されており、先鋭部120が杭本体110の一端側から離脱すると、杭本体110の一端側に形成された舌片部112が外側に向かって拡径するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事用足場等に用いられる沈下防止杭に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場で用いられる足場は、一般に単管と称されるスチール製のパイプをジョイント等で組み合わせることで構築される。
この足場の基礎は、先端に円錐状の尖端部を取り付けた単管を地面に打ち込んで構成すくことがある(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、単に単管を地面に打ち込んだだけでは、使用中の荷重のため、単管がさらに地面に沈下してしまい、足場全体が歪んでしまうおそれがある。
かかるおそれを防止するために、単管の沈下を防止するために、地面に打ち込んだ単管の先端側横側から張り出し部材を張り出すようにした杭が創案されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平07−300854
【特許文献2】特開2005−009295
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の杭は、地面に打ち込まれる杭本体とは別体の張り出し部材を杭本体の先端内側に予め挿入しておき、杭本体を地面に打ち込んだ後に杭本体に押し込んだ押圧棒によって張り出し部材を杭本体から外側に突出させるようにしている。
すなわち、杭本体と張り出し部材とは別体であり、部品点数の増加という問題を有している。
また、張り出し部材が突出する部分に硬い岩等の障害物があった場合、その障害物に阻害されて張り出し部材の突出が阻止され、沈下防止という目的が果たされない場合もある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、部品点数の増加を招くことなく沈下防止を図ることができる沈下防止杭を、また、硬い岩等の障害物があった場合でも沈下防止を阻害されることがない沈下防止杭を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る沈下防止杭は、一端側から他端側に向かって複数のスリットが形成され、スリット間が舌片部となったパイプ状の杭本体と、この杭本体の一端側に離脱可能に取り付けられた先鋭部とを備えており、前記先鋭部は先端が尖った本体部と、この本体部の後端側であり、前記杭本体の一端側が嵌まり込む嵌合部とが一体に形成されており、先鋭部が杭本体の一端側から離脱すると、杭本体の一端側に形成された舌片部が外側に向かって拡径するようになっている。
【0008】
前記舌片部には、他の部分より脆弱な脆弱部、例えば、孔が形成されている。
【0009】
前記先鋭部の本体部は、円錐形状である。
【0010】
前記舌片部の先端は、尖っている。
【0011】
前記スリットの長さは、杭本体が地面に打ち込まれる寸法より短く設定されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る沈下防止杭は、一端側から他端側に向かって複数のスリットが形成され、スリット間が舌片部となったパイプ状の杭本体と、この杭本体の一端側に離脱可能に取り付けられた先鋭部とを備えており、前記先鋭部は先端が尖った本体部と、この本体部の後端側であり、前記杭本体の一端側が嵌まり込む嵌合部とが一体に形成されており、先鋭部が杭本体の一端側から離脱すると、杭本体の一端側に形成された舌片部が外側に向かって拡径するようになっているので、地面に打ち込んだ後に、先端の先鋭部を離脱させ、さらに本体部を地面に打ち込むと、舌片部が自然と拡径する。このため、従来のこの種の沈下防止杭のように別部品を用いることなく、沈下を防止することが可能となっている。
【0013】
また、杭本体が打ち込まれる先に硬い岩等の障害物があったとしても、舌片部には、他の部分より脆弱な脆弱部、例えば、孔が形成されているので、その部分から舌片部が自然と変形する。このため、硬い岩等の障害物に阻まれて杭本体の打ち込みが阻止されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る沈下防止杭の概略的斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る沈下防止杭を構成する杭本体の概略的斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る沈下防止杭の使用方法を説明する概略的説明図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る沈下防止杭を構成する杭本体の概略的斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る沈下防止杭での杭本体の舌片部の変形を示す概略的説明図である。
【図6】本発明のその他の実施の形態に係る沈下防止杭を構成する杭本体の概略的斜視図である。
【図7】本発明のさらにその他の実施の形態に係る沈下防止杭を構成する杭本体の概略的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る沈下防止杭100は、一端側から他端側に向かって複数のスリット111が形成され、スリット111間が舌片部112となったパイプ状の杭本体110と、この杭本体110の一端側に離脱可能に取り付けられた先鋭部120とを備えており、前記先鋭部120は先端が尖った本体部121と、この本体部121の後端側であり、前記杭本体110の一端側が嵌まり込む嵌合部122とが一体に形成されており、先鋭部120が杭本体110の一端側から離脱すると、杭本体110の一端側に形成された舌片部112が外側に向かって拡径するようになっている。
【0016】
まず、前記杭本体110は、丸パイプ状であり、その一端側には他端側に向かった6個のスリット111が形成されている。このスリット111は、杭本体110が地面に打ち込まれる寸法より短く設定されている。すなわち、杭本体110が地面に打ち込まれると、スリット111は完全に地面中に入り込んでしまうことになる。
なお、このスリット111は、60度間隔で形成されたている。
【0017】
前記杭本体110は、スチール製であり、スリット111を形成することで、スリット111とスリット111との間の舌片部112は応力により外側に向かって自然と拡径するようになっている(図2参照)。
【0018】
一方、前記先鋭部120は、杭本体110と同様にスチール製であり、底面の直径が前記杭本体110の直径とほぼ同等の略円錐形状の本体部121と、この本体部121の後端側から突出する円筒状の嵌合部122とが一体に形成されたものである。前記本体部121は、沈下防止杭100を地面に打ち込む際の先端となる部分である。
【0019】
前記嵌合部122は、内側に向かって絞った杭本体110の6個の舌片部112が嵌め込まれる。すなわち、嵌合部122に6個の舌片部112を嵌め込むことで杭本体110に先鋭部120が取り付けられることになるのである。
なお、杭本体100の一端側である舌片部112は、単に嵌合部122に嵌め込まれるだけであって、溶接その他の一体化手段によって一体化されているわけではない。すなわち、先鋭部120は、杭本体110に対して離脱可能に取り付けられているのである。
【0020】
この舌片部112の先端は図2等に示すように尖っている。このため、先鋭部120が杭本体110から離脱した後に、さらなる杭本体110の打ち込みがスムーズにいくようになっている。
【0021】
次に、上述したような構成の沈下防止杭100の使用手順について図3を参照しつつ説明する。
杭本体110の一端側に先鋭部120を取り付けた状態で、先鋭部120から地面Gに打ち込む(図3(A)参照)。
杭本体110を目的の深さの手前、例えば、50cm程度手前まで打ち込んだ時点で打ち込みを一旦停止する(図3(B)参照)。
なお、この時点で舌片部112はすべて地面G下に位置することが望ましい。すなわち、舌片部112の一部でも地面G上に位置すると、後述する先鋭部200の離脱後の杭本体110の打ち込みにより,舌片部112によって地面Gの表面の表面が掘り起こされることがあるためである。
スリット111の長さが、杭本体110が地面Gに打ち込まれる寸法より短く設定されているので、舌片部112がすべて地面G下に位置することができるのである。
【0022】
図3(C)に示すように、この状態で杭本体110の他端側から離脱棒200を挿入する。この離脱棒200は、杭本体110より長く設定されたスチール製の棒体である。
離脱棒200の先端を先鋭部120の本体部121の内側にまで挿入した状態で、靴本体110の他端側から突出している離脱棒200の後端をハンマー等で打ち込む。
この離脱棒200の打ち込みにより、先鋭部120は杭本体110の一端側から離脱する。さらに、離脱棒200を打ち込んで先鋭部120を杭本体110の一端側から遠ざける。
先鋭部120が杭本体110の一端側から離脱しているため、地面Gの中でも杭本体110の一端側の舌片部112は外側に向かって拡径している。
なお、図3(C)の状態では、舌片部112は地面G中にあるため、図3(C)に示すほど拡径しているわけではないが、説明の都合上、舌片112はより拡径して描写されている。
【0023】
先鋭部120が杭本体110から離脱した状態で、離脱棒200を杭本体110から抜き取り、さらに杭本体110を目的の深さまで地面Gに打ち込む。
このさらなる杭本体110の打ち込みにより、杭本体110は前記舌片部112をさらに外側に拡径させながら、地面Gに打ち込まれることになる(図3(D)参照)。
【0024】
このような杭本体110を基礎として足場を築いた場合、地表面側から見た場合、舌片部112が放射状に拡径した状態で杭本体110が地面Gに打ち込まれているので、杭本体110に荷重がかかっても杭本体110がさらに沈下することはない。
【0025】
次に、図4を参照しつつ本発明の他の実施の形態に係る沈下防止杭を構成する本体部110Aについて説明する。
この本体部110Aが上述した沈下防止杭100の本体部110と相違する点は、舌片部112Aに脆弱部が設けられている点である。
この脆弱部とは、舌片部112Aの他の部分より脆弱に形成されている部分である。例えば、図4に示すように、舌片部112Aの一部に孔113Aを開設することで脆弱部とすることができる。
【0026】
かかる脆弱部は、以下のような場合にその効果を発揮する。
すなわち、図5(A)に示すように、地面に打ち込まれた沈下防止杭100の先端部120Aが硬い岩等の障害物Rに接触してしまったなど、それ以上の打ち込みが困難になった場合でも、舌片部112Aが脆弱部である孔113Aが開設された部分から外側に向かった変形し、杭本体110Aの先端側があたかも提灯のように変形するので、沈下防止を図ることができるのである。
【0027】
また、図5(B)に示すように、杭本体110Aから先鋭部120Aが離脱した後に杭本体110Aをさらに地面に打ち込んでいるとき、舌片部112Aの先端側に硬い岩等の強固な障害物Rがあった場合、そのままではその時点で杭本体110Aの打ち込みが不可能になってしまう。
しかし、舌片部112Aに脆弱部としての孔113Aがあると、図5に示すように、その脆弱部である孔113Aの部分から舌片部112Aが変形するため、変形した舌片部112Aが障害物Rを避けるようになるので、杭本体110Aのさらなる打ち込みが可能になる。
【0028】
なお、脆弱部としては、図4に示すように舌片部112Aに孔113Aを開設するタイプの他に、図6に示すように舌片部112Aに幅方向に沿った凹溝114Aを形成するタイプがある。なお、前記凹溝114Aは、舌片部112Aの表側だけでなく、裏側に形成することも、表裏両面に形成することも可能である。
また、脆弱部として開設される孔113Aは丸孔だけでなく、どのような孔であってもよいし、1つの舌片部112Aに2個以上開設してもよいことはいうまでもない。
もちろん、凹溝114Aのように溝からなる脆弱部も1つの2個以上形成してもよい。
【0029】
さらに、上述した実施の形態では、舌片部112(112A)の先端は尖っているとしたが、図7に示すように尖っていない舌片部112Bでもよいことはもちろんである。
【0030】
また、上述した実施の形態では、先鋭部120は円錐形の本体部121を有するものとしたが、この本体部121は角錐型でも、円柱を斜めに切断した形状であってもよい。つまりは、地面に打ち込まれ易いように尖って形成されていることが重要なのである。
【符号の説明】
【0031】
100 沈下防止杭
110 本体部
111 スリット
112 舌片部
120 先鋭部
121 本体部
122 嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側から他端側に向かって複数のスリットが形成され、スリット間が舌片部となったパイプ状の杭本体と、この杭本体の一端側に離脱可能に取り付けられた先鋭部とを具備しており、前記先鋭部は先端が尖った本体部と、この本体部の後端側であり、前記杭本体の一端側が嵌まり込む嵌合部とが一体に形成されており、先鋭部が杭本体の一端側から離脱すると、杭本体の一端側に形成された舌片部が外側に向かって拡径することを特徴とする沈下防止杭。
【請求項2】
前記舌片部には、他の部分より脆弱な脆弱部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の沈下防止杭。
【請求項3】
前記脆弱部は、孔であることを特徴とする請求項2記載の沈下防止杭。
【請求項4】
前記先鋭部の本体部は、円錐形状であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の沈下防止杭。
【請求項5】
前記舌片部の先端は、尖っていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の沈下防止杭。
【請求項6】
前記スリットの長さは、杭本体が地面に打ち込まれる寸法より短く設定されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の沈下防止杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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