説明

河川の上流部及び中流部における護岸の方法。

【課題】
コンクリート護岸などにより石や岩を流下させてしまった岸辺に、石や岩を中心とする土砂を堆積させて、自然の護岸を回復させる。岸辺に自然の状態を取り戻すことにより、川の流れを自然状態に戻し、治水施策上においても自然環境においても良好な河川の状態を取り戻します。
【解決手段】
河川の岸辺に近接して、コンクリート、鉄鋼、木材等による杭を埋設して石や岩を堰止めます。杭を適度の間隔をおいて埋設することにより、石や岩を中心とした土砂が堰き止められて新たな岸辺が形成されます。堰止められたこれらの土砂は護岸の一部として機能して、護岸を水流より保護します。これにより水流も変化して水の流れも自然の状態に戻すことが出来ます。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
河川の上流部及び中流部の護岸の方法についての発明です。
【背景技術】
【0002】
河川においては様々な治水施策が行われています。河川の上流部や中流部においては多くのコンクリート護岸が設置されてきました。これらは、岸辺を守り、水流を制御し、溢れ出る水を防ぐ等の重要な役割を果たしています。しかしながら、これらのコンクリート護岸には、月日の経過と共に護岸前面や周囲の石や岩を下流に押し流してしまう欠点があります。
【0003】
石や岩が流下した後に、護岸の底を水流がえぐり、護岸自体を破壊してしまうこともあります。それを防ぐために、護岸前面の川底にブロック状のコンクリート塊が設置されていることも多く見られます。しかし、この場合でもコンクリート塊の周囲の石や岩は、時間の経過と共に下流に押し流されてしまいます。
【0004】
コンクリート護岸の岸辺から石や岩が押し流されてしまうと、岸辺以外の石や岩も次第に流下することが多くなり、川の様相は平板化します。
上流では、石や岩があることによって堰止められていた土砂の流下が早まり、それまでに比べて急な増水が多くなります。中流では、岸辺に石や岩があることによって促進されていた砂や砂利などの土砂の流下が滞ります。何れの場合でも、より下流における治水を困難なものにしています。
また、自然状態に比べて石や岩が減ってしまいますから、自然環境の多様性を失い、魚類をはじめとする様々な生物の生息環境も破壊されます。
【0005】
従来の治水施策では、河川における石や岩の持つ役割や機能について評価される事は多くありませんでした。コンクリート護岸などが石や岩を下流に押し流すことも問題とされる事はありませんでした。石や岩が失われると河川が持つ本来の機能が低下することも考慮される事はありませんでした。
しかし、よりよい治水施策を考えると、河川に存在する石や岩の果たしている機能や役割についても詳細に把握して対応する必要があります。
【0006】
考案された護岸方法においては、石や岩の重要性について着目したものもありますが、充分なものとは言えません。(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−172935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
河川の治水を考える上でも、自然環境の破壊を防ぐ意味でも、不必要に石や岩を下流に流すことのない、自然の状態を保つことの出来る護岸方法の開発が必要です。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この状況を改善するために、河川において自然に見られる作用を利用した、効果的な方法を考案しました。
【0010】
人工の護岸ではない、石や岩のある自然状態の河川を観察すると、それらの岸辺には多くの石や岩を見ることが出来ます。場所によっては多くの石や岩が上下左右に重なり合っている所を見る事も出来ます。
【0011】
自然状態の岸辺に見られる様々な石や岩は、水流と石や岩が作り出した自然の護岸と言えます。これらの自然護岸は石や岩が自然に組み合わさっているために、砂や土などの岸辺に比べてはるかに強固です。石や岩は自然状態のまま岸辺にあることによって護岸の役割を果たしています。
【0012】
自然状態の岸辺には様々な大きさの石や岩が集まっていますが、その中でも大きな石や岩は特に重要な役割を果たしています。大きくて重量があるために水流によって移動することが少ないのです。したがって、大きな石や岩は水流に影響を与え、小さな石や岩やその他の土砂の移動にも影響を与えています。岸辺にある土砂の中でも、大きな石や岩ほど大きな機能を持っています。つまり、大きな石や岩ほど護岸として多くの役割を果たしています。
【0013】
本発明は、河川にある石や岩と水による自然の作用を活用します。
コンクリート、鉄鋼、木材等による杭を岸辺に埋設します。単独の場合は岸辺に近く、複数の場合は岸辺から河川の中央に向かって、或いは岸辺から斜め上流や斜め下流に向かって間隔をおいて埋設します。
大きめの石や岩がそれによって止まる場合に最も大きな効果を上げることが出来ますから、杭は、付近にある中で大きめの石や岩がその場にとどまる事の出来る程度の間隔をあけて、なおかつそれらの圧力に耐える事の出来るように埋設します。これにより、小さな石や岩が最初に止まることもなく、上流から移動して来る大きめの石や岩が堰止められます。
【0014】
上流より移動して来る石や岩だけでなく、元々あった石や岩を、杭を埋設することによりその場にとどめる事でも同じ効果を得る事が出来ます。
また、杭の埋設と共に石や岩をその場に設置する場合でも同じ効果を得ることが出来ます。さらには、石や岩の代わりにそれらに擬した人工の構造物を設置する場合でも同じ効果を得ることが期待出来ます。
【0015】
大きな石や岩が杭によって止まるようになると、次には、それらより小さな石や岩もその場に止まるようになります。さらに、場所によっては、より小さな土砂も止まるようになります。
【0016】
これにより、埋設した杭を中心にした土砂の堆積が岸辺に形成されます。この土砂の堆積は、杭と大きな石や岩をその中心としていますから、水流に対して抵抗力があります。また、岸辺に隣接していますから、そのまま護岸の一部として機能することになります。したがって、岸辺にある元の護岸を水流から保護します。
【0017】
岸辺に石や岩を中心にした土砂の堆積が出来ると、水の流れはその影響を受けて流れを変化させます。流れが変化すると、流れの緩急が生じて、新たな石や岩が流れの中にも堆積するようになります。やがて、岸辺が高く中央部が低い、河川形状の本来の姿に戻って行きます。
【発明の効果】
【0018】
本発明の方法はコンクリート護岸の岸辺であっても石や岩を止めることが出来ます。また、護岸のない場所やコンクリート以外の護岸においても、護岸を形成することが容易になります。
【0019】
本発明の方法は、設置する場所によりその設定を変更することが可能ですから、石や岩の大きさが違い、それぞれに条件の異なる河川の上流、中流、或いは大きな河川や小さな河川など、何れの場所においても最適な効果をもたらす事が出来ます。
【0020】
本発明の方法により護岸を形成させることは、岸辺に石や岩を止めて護岸の役目を果たすだけでなく、河川を自然状態に回復させることにつながります。岸辺や流れの中に石や岩が多くある状態を作りだして、石や岩が自然状態で持っている機能を復活させ、水も土砂も自然に流れていく状態に変えていくことが出来ます。したがって、より下流の治水に有益な効果をもたらします。また、生物の生息環境も取り戻す事も出来ます。
【0021】
本発明の方法は、自然状態における石と岩と水の作用を利用したものですから、外見上も違和感のない自然の状態の護岸を再現することが出来ます。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の杭を単独で埋設した場合の実施例の平面図です。
【図2】複数の杭を埋設した場合の実施例の平面図です。
【図3】予め石や岩を設置して複数の杭を埋設した場合の実施例の平面図です。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施例として、図1を説明します。
周囲の石や岩が流下した護岸3に近接してコンクリート製の杭1を埋設します。水流4によって上流より流下して来た石や岩2が杭1によりその場に止まります。最初は大きな石や岩が、次にはそれより小さな石や岩がその場に止まります。これにより護岸3に近い水流4が弱められて、護岸3に強い水流が当たる事が無くなります。
【0024】
本発明の実施例として、図2を説明します。
周囲の石や岩が流下した護岸3に近接した場所より、河川の中央やや上流に向かってコンクリート製の杭1を3本埋設します。水流4によって上流より流下して来た石や岩2が複数の杭1によりその場に止まります。埋設する杭1においてはそれぞれの間に間隔がありますから、最初は大きな石や岩が、次にはそれより小さな石や岩がその場に止まります。これにより、護岸3に隣接した杭1を中心として石や岩2が堆積します。水流4はこの堆積による抵抗を受けてその流れを河川の中心部方向に変更します。
【0025】
図3においては予め大きな石や岩を設置して、その周囲に複数の杭1を埋設します。これによる効果は図2の場合と同じです。
【符号の説明】
【0026】
1 本発明の方法により埋設する杭
2 流下して来た、或いは予め設置した石や岩
3 護岸又は岸
4 水流の方向



【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸辺から川の中央に向かって、或いは斜め上流又は斜め下流方向に向かって、単独又は複数の杭を適度な間隔をおいて埋設して、石や岩を、或いは石や岩に擬した構造物をその場にとどめることにより、新たな岸辺を形成し、それらを護岸の構成部分として機能させることを特徴とする護岸の方法。































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−196129(P2011−196129A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65438(P2010−65438)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(309036737)
【Fターム(参考)】