説明

沸騰床水素化転化法のための、残油水素化転化触媒の予備硫化および予備調整

残油炭化水素の少なくとも一部を水素化処理生成物と水素化分解生成物の少なくとも1つに転化するために、水素および残油炭化水素を、予備調整され少なくとも一部硫化された水素化転化触媒と接触させる工程を含む水素化転化法を開示する。触媒の予備硫化および予備調整は、間欠的にまたは連続的に、金属酸化物を含む水素化転化触媒を予備反応器に供給する工程と、水素と、硫黄含有化合物を含む残油炭化水素とを予備反応器に供給する工程と、水素化転化触媒を水素および硫黄含有化合物と予備反応器内で、i)金属酸化物の少なくとも一部の金属硫化物への転化と、ii)触媒の予備調整が同時に行われる温度および圧力条件で接触させる工程と、硫黄含有率が低減した残油炭化水素を予備反応器から回収する工程と、予備調整され少なくとも一部硫化された水素化転化触媒を予備反応器から沸騰床水素化転化反応器に輸送する工程を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する実施形態は、概して水素化転化(hydroconversion)法に関する。他の態様では、本明細書に開示される実施形態は、水素化転化法に使用される水素化転化触媒の予備硫化と予備調整の同時処理に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化処理および水素化分解を含む水素化転化反応を使用して、炭化水素供給原料の水素含有率を増加させること、様々なへテロ原子汚染物質を除去すること、および/または比較的長鎖の炭化水素分子を比較的短鎖の炭化水素分子に転化することによって、炭化水素供給原料を改善することができる。通常、水素化転化触媒は、水素と炭化水素供給原料の間の1以上の水素化転化反応を触媒する。
【0003】
反応速度、炭化水素の転化率、および望ましくない副生成物の生成を含む水素化転化反応の性能の大部分は、水素化転化触媒の活性および選択性に依存する。例えば、新品の触媒は、高い反応速度と高い炭化水素転化率を示すことができる。しかしながら、炭素の堆積、細孔開口部の目詰まり、間隙の細孔容積の損失を含む様々なコーキング機構によって、経時的に水素化転化触媒の活性が低下することがある。
【0004】
新品の水素化転化触媒は、高温、高圧および高濃度の硫黄を含有する炭化水素供給原料を含む、高過酷度の環境に曝されたときに、とりわけ過度のコーキングが起こり易い。例えば、調整されていない/予備硫化されていない新品の水素化転化触媒は、水素化転化反応器内に存在する高過酷度の環境で硫化されると、その活性の半分以上を失うことがある。このような条件では、硫化されていない触媒は熱衝撃を受ける。新品の水素化転化触媒のこのような早すぎる非活性化により、炭化水素の転化率が低くなり、より頻繁に触媒を交換、および/または触媒を再生する必要が起こり得る。従って、水素化転化触媒に対する熱衝撃の影響を軽減するために、予備硫化および/または予備調整を含む様々な前処理方法が使用される。
【0005】
触媒の予備硫化の利点は、一般的に、従来技術において周知である。例えば、減圧軽油等の高沸騰点油、炭化水素溶媒を使用して触媒に元素状硫黄の導入を助けることが、米国特許第4,943,547号明細書に開示されている。米国特許第4,530,917号明細書は、有機ポリスルフィドで水素化処理触媒を予備硫化する方法を開示している。
【0006】
米国特許第4,177,136号明細書は、触媒を元素状硫黄で処理する、触媒の予備硫化方法を開示している。その後、水素を還元剤として使用して、その場で(in−situ)元素状硫黄を硫化水素に転化する。米国特許第4,089,930号明細書は、水素の存在下にて、元素状硫黄で触媒を予備処理することを開示している。米国特許第6,291,391号明細書は、硫化水素含有ガスを使用して予備硫化した後、液体炭化水素調整油で触媒を予備調整する方法を開示している。
【0007】
米国特許第4,443,330号明細書は、石炭液化油のアップグレーディング工程で使用するときの、触媒の活性を維持する方法を開示している。添加硫黄含有液体を反応器に加えて、反応器内の硫黄レベルを安定化し、維持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水素化転化触媒を予備硫化するための前述の方法の夫々は、添加される有害なおよび/または有毒な硫黄含有化合物、その硫黄含有化合物または元素状硫黄、触媒の予備硫化中に使用される追加の炭化水素および/または溶媒、他の成分または化学物質を貯蔵、供給および/または分離するための設備、の使用の1つ以上を必要する。それにより、水素化転化法に関連する経費および運転費用を増加させる。
【0009】
従って、水素化転化触媒について、効率的で適応性のある前処理方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、本明細書に開示される実施形態は、水素化転化法に関する。その方法は、水素と硫黄含有炭化水素を含む残油炭化水素とを、沸騰床水素化転化反応器に供給する工程と、残油炭化水素の少なくとも一部を水素化処理生成物と水素化分解生成物の少なくとも1つに転化するために、水素と残油炭化水素とを、予備調整されているとともに少なくとも一部硫化された水素化転化触媒に接触させる工程と、間欠的にまたは連続的に、金属酸化物を含む水素化転化触媒を、予備反応器に供給する工程と、水素と硫黄含有化合物を含む残油炭化水素とを、予備反応器に供給する工程と、i)金属酸化物の少なくとも一部の金属硫化物への転化とii)触媒の予備調整とが同時に行われる温度および圧力条件で、予備反応器内において、水素化転化触媒を、水素と硫黄含有化合物とに接触させる工程と、硫黄含有率が低減した残油炭化水素を予備反応器から回収する工程と、予備調整されているとともに少なくとも一部硫化された水素化転化触媒を、予備反応器から沸騰床水素化転化反応器に移送する工程を含む。
【0011】
他の態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1は、水素化転化触媒の予備硫化と予備調整の同時処理を含む、本明細書に開示される実施形態による水素化転化法の簡略化されたプロセスのフローダイアグラムである。
【0013】
図2は、水素化転化触媒の予備硫化と予備調整の同時処理を含む、本明細書に開示される実施形態による水素化転化法の簡略化されたプロセスのフローダイアグラムである。
【0014】
図3は、水素化転化触媒の予備硫化と予備調整の同時処理を含む、本明細書に開示される実施形態による水素化転化法の簡略化されたプロセスのフローダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一態様では、本明細書に開示される実施形態は、概して水素化転化法に関する。他の態様では、本明細書に開示される実施形態は、水素化転化法に使用される水素化転化触媒の予備硫化と予備調整の同時処理に関する。
【0016】
本明細書に開示される水素化転化法は、残油炭化水素供給原料を高温高圧の条件で水素と水素化転化触媒の存在下で反応させ、供給原料を汚染物質(硫黄および/または窒素等)のレベルが低減した比較的低分子量の生成物に転化するのに使用され得る。水素化転化法には、例えば、水素添加反応、脱硫、脱窒素、クラッキング、転化、金属,コンラドソンカーボン,アスファルテンの除去等が含まれ得る。
【0017】
本明細書に開示される実施形態に有用な残油炭化水素供給原料は、水素化転化法に適用されるときに、供給原料中に少なくとも多少の硫黄含有化合物が存在する。必要に応じて、追加の硫黄含有化合物を添加してもよいが、このような化合物の添加は、本明細書に開示される実施形態には必要ではない。本明細書に開示される実施形態に有用な残油炭化水素供給原料は、少なくとも多少の硫黄含有化合物を含む、様々な精製装置からの供給流,他の炭化水素流を含んでいてもよい。例えば、残油炭化水素供給原料としては、常圧残油または減圧残油、脱瀝油、脱瀝ピッチ、水素化分解常圧塔または真空塔の塔底液、直留減圧軽油、水素化分解減圧軽油、流動接触分解(FCC)スラリー油、沸騰床法からの減圧軽油、および他の類似の炭化水素流、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。これらの夫々は、直留、プロセス由来、水素化分解、部分脱硫、および/または低金属流であってもよい。
【0018】
前述の残油炭化水素供給原料の他に、少なくとも多少の硫黄含有化合物を含む水素化転化反応器流出物(即ち、プロセス由来)も、本明細書に開示される実施形態による水素化転化触媒の予備硫化と予備調整の同時処理に使用することができる。これらもまた、本明細書に開示される実施形態の残油炭化水素供給原料と考慮される。水素化転化触媒の予備硫化と予備調整の同時処理に硫黄含有化合物を含む残油炭化水素を使用することは、触媒が指定されている特定種類の水素化転化反応により適合し得ており、従って、残油炭化水素の転化率の向上やコーキング速度の低下を含む触媒活性を向上し得る。
【0019】
水素化転化触媒は、本明細書では、炭化水素供給原料の水素化処理または水素化分解に使用され得る触媒として定義される。水素化処理触媒としては、例えば、炭化水素供給原料の水素添加反応を触媒して、その水素含有率を増加させることおよび/またはへテロ原子汚染物質を除去することに使用され得る任意の触媒組成物を挙げることができる。水素化分解触媒としては、例えば、大きいまたは複雑な炭化水素分子への水素の付加反応、ならびにその分子の分解反応を触媒して、より小さく、より低分子量の分子を得ることに使用され得る任意の触媒組成物を挙げることができる。
【0020】
本明細書に開示される実施形態における水素化転化法に使用される水素化転化触媒組成物は、当業者に周知である。その幾つかは、とりわけ、W.R.Grace&Co.、Criterion Catalysts&Technologies、およびAkzo Nobelから市販されている。適した水素化転化触媒は、元素周期表の第4〜12族から選択される1つ以上の元素を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される実施形態における水素化転化触媒は、シリカ、アルミナ、チタニア、またはこれらの組み合わせなどの多孔質基材上に担持されていないまたは担持された、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデン、およびこれらの組み合わせの1つ以上を含んでいてもよいし、それからなるものでもよいし、または実質的にそれからなるものでもよい。製造業者から供給されるとき、または再生プロセスから得られるときに、水素化転化触媒は、例えば、金属酸化物の形態であってもよい。
【0021】
水素化転化反応器内で使用する前に、このような水素化転化触媒を、下記に詳述するように、本明細書に開示される実施形態に従って予備硫化および予備調整してもよい。予備硫化および予備調整により、金属酸化物の少なくとも一部は、不活性な硫化物の形態に転化される。そして、触媒の早急な非活性化が起こり難くなること、および炭素堆積物が低減することにより触媒の活性を保ち得る。さもなければ、高温の水素化転化反応器運転条件の間に炭素堆積物が生じ得る。
【0022】
触媒の予備調整により、例えば、水素化転化触媒粒子上に比較的低レベルの炭素コーク堆積物が生じ得る。この比較的低レベルの炭素コーク堆積物層は、断熱効果を提供することによって触媒を熱衝撃から保護し、触媒の更なるコーキングを一層防止する、または著しく低減することができる。さもなければ、水素化転化反応器内で、典型的な水素化転化反応条件において、更なるコーキングが起こり得る。
【0023】
幾つかの実施形態では、触媒の予備硫化により、30モル%以上の金属酸化物が金属硫化物に転化され、他の実施形態では40モル%以上、他の実施形態では50モル%以上、他の実施形態では60モル%以上、他の実施形態では70モル%以上、さらに他の実施形態では80モル%以上の金属酸化物が金属硫化物に転化され得る。金属酸化物を金属硫化物に転化するのに必要な硫黄の量は、所望の硫化度、触媒の金属含有率、および当業者に既知であり得るような他の要因に依存し得る。
【0024】
本明細書に開示される実施形態における水素化転化法では、水素と残油炭化水素は、流動床または沸騰床水素化転化反応器などの反応器に供給されてもよい。残油炭化水素の少なくとも一部を水素化処理生成物と水素化分解生成物の少なくとも1つに転化するために、後述のように、水素と残油炭化水素とを、水素化転化反応器内で予備調整されているとともに少なくとも一部硫化された水素化転化触媒の存在下で接触させてもよい。水素化転化プロセス中、水素化転化触媒は、例えば、金属および炭素の堆積が原因で、使用できなくなることがある。使用済み触媒は、連続的にまたは間欠的に沸騰床水素化転化反応器から取り出され、予備硫化および予備調整された新品のまたは再生された触媒と連続的にまたは間欠的に交換されてもよい。このようにして、水素化転化反応器に新品のまたは再生された触媒を直接導入することを回避してもよい。
【0025】
本明細書に開示される実施形態における水素化転化触媒の予備硫化および予備調整は、水素化転化反応器に流体接続された予備反応器内で行われてもよい。水素化転化触媒の予備硫化と予備調整は、同時に、連続的に、半連続的に、またはバッチ式に行い、前述したように、金属酸化物の少なくとも一部を不活性な硫化物の形態に転化し、触媒活性を保ってもよい。
【0026】
予備硫化および予備調整された水素化転化触媒は、その後、予備反応器から水素化転化反応器に、連続的にまたは間欠的に、水素化転化反応器のプロセスの中断を引き起こすことなく輸送されてもよい。例えば、本明細書に開示される実施形態に従って調製された、予備硫化および予備調整された水素化転化触媒が沸騰床水素化転化反応器に間欠的にまたは連続的に、水素化転化反応を中断することなく供給され得るように、水素化転化反応器の運転を妨げることなく、予備反応器、その供給ラインおよび流出ライン、ならびに補助設備を切り離してもよい。
【0027】
本明細書に開示される実施形態に従って、予備反応器内で新品のまたは再生された水素化転化触媒を残油炭化水素供給原料と接触させることにより、予備硫化と予備調整を同時に行ってもよい。例えば、触媒を炭化水素供給原料に暴露させ、触媒上への過剰な炭素/金属の堆積を抑制し、触媒を少なくとも一部硫化するために、新品のまたは再生された水素化転化触媒は、硫黄含有残油炭化水素供給原料に水素化転化反応器内で使用されるよりも低い運転過酷度で接触させてもよい。水素化転化法に関連するまたは水素化転化法に由来する炭化水素液体を使用することにより、通常、従来技術の方法で必要とされるような外部供給原料または特殊な流体を使用する場合よりも、良好に触媒を予備調整することができる。
【0028】
水素化転化触媒は、予備硫化および予備調整された後、残油の水素化処理反応と水素化分解反応の少なくとも1つを触媒するために、水素化転化反応器に輸送されてもよい。幾つかの実施形態では、不活性ガスまたは炭化水素などの移送媒体を使用して、触媒を移送してもよい。幾つかの実施形態では、残油炭化水素を、触媒の予備硫化および予備調整、予備反応器から水素化転化反応器への触媒の移送の両方に使用してもよい。これによって、そのようにしなければ起こり得る、水素化転化反応器内での変動(swings)または不具合(upsets)を著しく低減し得る。
【0029】
予備反応器の運転条件は、とりわけ、使用する残油炭化水素供給原料、水素化転化触媒、具体的な水素化転化法、および所望する予備硫化および予備調整の程度などの要因によって変わり得る。前述したように、予備反応器の条件は、水素化転化反応器の条件より過酷でなくてもよい。幾つかの実施形態では、予備反応器内の温度は約230℃〜約450℃の範囲であってもよく、他の実施形態では約260℃〜約430℃、さらに他の実施形態では約300℃〜約400℃の範囲であってもよい。予備反応器内の圧力は、幾つかの実施形態では約1バール〜約200バールの絶対圧力の範囲であってもよく、他の実施形態では約2バール〜約150バールの絶対圧力の範囲であってもよく、さらに他の実施形態では約2バール〜約80バールの絶対圧力の範囲であってもよい。
【0030】
ここで図1を参照すると、水素化転化触媒の予備硫化と予備調整の同時処理を含む、本明細書に開示される実施形態における水素化転化法の簡略化されたプロセスのフローダイアグラムが示されている。本明細書に開示される実施形態の説明を容易にするため、ポンプ、バルブ、熱交換器、および他の設備は示されていない。水素および残油炭化水素は、残油炭化水素の水素化処理または水素化分解のために、それぞれフローライン10および12を介して水素化転化反応器14に供給されてもよい。水素化転化反応器14は、流動床、沸騰床、または、使用済み触媒の抜き出しと予備調整および予備硫化された水素化転化触媒の導入とを可能にする類似のタイプの反応器であってもよい。水素化転化反応器14では、水素と残油炭化水素とを、床16内で予備調整されているとともに少なくとも一部が硫化された水素化転化触媒の存在下にて接触させて、残油炭化水素の少なくとも一部を水素化処理生成物と水素化分解生成物の少なくとも1つに転化させてもよく、それをフローライン20を介して回収してもよい。
【0031】
水素化転化プロセスの運転中、水素化転化触媒は、例えば、金属および炭素の堆積のため、使用できなくなってしまうことがある。使用済み触媒は、連続的にまたは間欠的に、水素化転化反応器14からフローライン18を介して取り出されてもよい。そして、使用済み触媒は、連続的にまたは間欠的に、予備硫化および予備調整された新品のまたは再生された触媒と交換されてもよい。このようにして、新品のまたは再生された触媒を水素化転化反応器14に直接導入することを回避してもよい。
【0032】
水素化転化触媒の予備硫化および予備調整は、水素化転化反応器14内の水素化転化触媒の補充の必要に応じて、予備反応器22内で行われてもよい。新品のまたは再生された水素化転化触媒は、フローライン24を介して予備反応器22の床23に供給されてもよい。そして、新品のまたは再生された水素化転化触媒は、連続的に、半連続的に、またはバッチ式に供給されてもよい。水素と、残油炭化水素の後流(slipstream)は、それぞれフローライン26および28を介して、予備反応器22に供給されてもよい。予備反応器22に供給される水素は、純粋なものであっても、または、水素化転化反応器の下流で回収されたり石油化学施設で見られ得るような様々な供給源からの水素リッチなリサイクルガスなどの、様々なガスで希釈されたものであってもよい。
【0033】
過酷な水素化転化反応器14の運転条件で残油炭化水素と接触させるために、水素化転化触媒を、予備反応器22内で、触媒中の金属酸化物の少なくとも一部を金属硫化物に転化するとともに触媒を予備調整するのに十分な温度および圧力条件で接触させてもよい。フローライン30を介して、予備反応器からの流出物を回収してもよい。その流出物は、フローライン28を介して供給された残油炭化水素と比較して、硫黄含有率が低減している。
【0034】
予備硫化および予備調整された水素化転化触媒は、連続的にまたは間欠的に、予備反応器22から抜き出され、フローライン32を介して水素化転化反応器14に移送されてもよい。移送を行うために、流量弁の適切な操作を行ってもよいし、フローライン34を介して不活性ガスまたは残油炭化水素などの移送流体を供給して予備硫化および予備調整された触媒を流動化または懸濁させ、出口36を介して予備反応器22から触媒を移送してもよい。
【0035】
ここで図2を参照すると、水素化転化触媒の予備硫化と予備調整の同時処理を含む、本明細書に開示される実施形態における水素化転化法の簡略化されたプロセスダイアグラムが示されており、同じ番号は同じ部分を示している。この実施形態では、予備反応器22からの流出物は、未反応の水素および/または水素と一緒に供給されたガスを残油炭化水素から分離するために、フローライン30を介して分離器40に供給される。分離器40としては、膜分離器、フラッシュ室、蒸留塔等を含む、液体とガスの分離に有用な任意のタイプの分離器を挙げることができる。
【0036】
図示されているように、ガスは、フローライン42を介して分離器40から回収されてもよい。必要または要望に応じて、分離器40から回収される残油炭化水素は、水素化転化反応器14内でさらに処理するために、フローライン44を介して供給されてもよい。
【0037】
ここで図3を参照すると、水素化転化触媒の予備硫化と予備調整の同時処理を含む、本明細書に開示される実施形態における水素化転化法の簡略化されたプロセスダイアグラムが示されており、同じ番号は同じ部分を示している。この実施形態では、水素化転化反応器14からの流出物の一部は、水素化転化触媒を予備調整および予備硫化するために、フローライン50を介して供給される。この実施形態では、水素化転化反応器14からの流出物は、予備硫化のための硫黄含有化合物を少なくとも幾らか含有する。
【0038】
前述のように、本明細書に開示される実施形態は、水素化転化触媒の予備硫化と予備調整の同時処理を提供する。利点として、本明細書に開示される実施形態は、以下の1つ以上を提供し得る。
【0039】
本明細書に開示される実施形態による水素化転化触媒の予備調整および予備硫化によって、水素化転化反応器に未処理の状態で供給される場合に熱衝撃により通常起こる炭素の堆積が減少するので、触媒活性および触媒のサイクル時間が増加し得る。活性とサイクル時間の増加により、再生を必要とする頻度が減少するので、触媒の寿命も増加し得る。本明細書に開示される実施形態による触媒の予備調整は、水素化転化反応器内でより過酷な条件で接触させるものと類似または同一の炭化水素供給原料を予備硫化および予備調整に使用するので、従来技術の方法と比較して効率を高くし得る。
【0040】
本明細書に開示される方法は、硫黄化合物を添加せず、従来技術の方法と比較して原料費および設備部品数が少ないので、必要な経費および運転費用を少なくし得る。硫黄含有化合物を添加しないので、プロセスの安全性がさらに向上し得る。通常、従来技術の方法では必要とされる硫黄含有化合物の添加を必要としないので、本明細書に開示される実施形態による方法は、利点として、追加の貯蔵タンク、移送配管およびポンプ、添加される硫黄含有化合物を使用することにより必要とされる他の設備を不要にし得る。さらに、一般に硫黄含有化合物の添加に伴う有毒で有害な臭気が回避され得る。
【0041】
本明細書に開示される方法により、前述のように、触媒を予備硫化および予備調整することによって水素化転化反応器の性能が向上し得る。本明細書に開示される実施形態では、予備硫化および予備調整された触媒を水素化転化反応器に連続的にまたは間欠的に移送することができ、水素化転化反応器の運転を実質的に中断しない。当該技術分野で開示された他の様々な移送媒体とは対照的に、触媒移送に残油炭化水素を使用することにより、さらに、水素化転化反応器の運転の不具合を抑制したりなくすことができる。
【0042】
本開示は限られた数の実施形態を記載しているが、本開示の利点を享受する当業者には、本開示の範囲から逸脱しない他の実施形態が考案され得ることが分かるであろう。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と、硫黄含有炭化水素を含む残油炭化水素とを沸騰床水素化転化反応器に供給する工程と、
前記残油炭化水素の少なくとも一部を水素化処理生成物と水素化分解生成物の少なくとも1つに転化するために、前記水素と前記残油炭化水素を、予備調整され少なくとも一部硫化された水素化転化触媒と接触させる工程と、
間欠的にまたは連続的に、
金属酸化物を含む水素化転化触媒を予備反応器に供給する工程と、
水素と、硫黄含有化合物を含む残油炭化水素とを前記予備反応器に供給する工程と、
前記水素化転化触媒を、
i)前記金属酸化物の少なくとも一部の金属硫化物への転化と、
ii)触媒の予備調整と、が同時に行われる温度と圧力条件で、前記予備反応器内において前記水素と前記硫黄含有化合物に接触させる工程と、
硫黄含有率が低減した残油炭化水素を前記予備反応器から回収する工程と、
前記予備調整がされているとともに少なくとも一部が硫化された水素化転化触媒を、前記予備反応器から前記沸騰床水素化転化反応器に輸送する工程と、
を含む水素化転化法。
【請求項2】
前記予備反応器に供給される前記水素化転化触媒が、新品の水素化転化触媒と再生された水素化転化触媒の少なくとも1つを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硫黄含有率が低減した残油炭化水素を、前記沸騰床水素化転化反応器に供給する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記硫黄含有率が低減した残油炭化水素を前記沸騰床水素化転化反応器に供給する前に、前記水素とともに前記予備反応器に供給されたガスと未反応の水素の少なくとも1つを含む蒸気留分を回収するように、前記予備反応器から回収した前記硫黄含有率が低減した残油炭化水素を分離する工程をさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記残油炭化水素が、常圧残油または減圧残油、脱瀝油、脱瀝ピッチ、水素化分解常圧塔または真空塔の塔底液、直留減圧軽油、水素化分解減圧軽油、流動接触分解スラリー油、沸騰床法からの減圧軽油、水素化処理生成物と水素化分解生成物の少なくとも1つ、のうちの少なくとも1つを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記金属酸化物が、元素周期表の第4〜12族から選択される少なくとも1つの元素を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属酸化物が、Co、Ni、W、およびMoの少なくとも1つを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記予備反応器内の温度および圧力条件が、約230℃〜約450℃の範囲の温度と、約1バール〜約200バールの絶対圧力の範囲の圧力を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記輸送する工程が、
前記予備調整されているとともに少なくとも一部硫化された水素化転化触媒を、輸送媒体で流動化させる工程と、
流動化された触媒と輸送媒体とを、前記沸騰床水素化転化反応器に輸送する工程と、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記輸送媒体が、前記残油炭化水素を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記予備反応器が、沸騰床反応器と固定床反応器の少なくとも1つを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記水素化転化触媒を前記水素および前記硫黄含有化合物に接触させる工程が、前記金属酸化物の少なくとも30%を金属硫化物に転化する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記水素化転化触媒を前記水素および前記硫黄含有化合物と接触させる工程が、前記金属酸化物の少なくとも50%を金属硫化物に転化する工程を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
使用済み水素化転化触媒を、前記沸騰床水素化転化反応器から、連続的にまたは間欠的に抜き出す工程をさらに含む請求項1に記載の方法。


【公表番号】特表2013−500353(P2013−500353A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521666(P2012−521666)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/041272
【国際公開番号】WO2011/011200
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(509307439)ルムス テクノロジー インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】