沸騰水型原子炉およびその運転方法
【課題】炉心流量を変化させ或いは燃料棒に可燃性毒物を混入する手法とは別異なる手法をもって、燃焼初期の余剰反応度増大を制御でき且つ燃焼初期にプルトニウムを生成・蓄積して燃焼後期にプルトニウムを効率的に燃焼できる沸騰水型原子炉等を提供すること。
【解決手段】本発明では、燃料集合体の外殻を成して複数の燃料棒を格納する燃料チャンネルボックスの内側と外側に冷却材の流路が形成され、燃料チャンネルボックスの内側を流れるインチャンネル流の沸騰による蒸気をタービン駆動力とする沸騰水型原子炉において、冷却材のうち燃料チャンネルボックスの外側を流れるアウトチャンネル流Fo(図2、図6参照)の流量を、原子炉運転サイクル中に増減可能なアウトチャンネル流量制御機構50を備えるようにした。
【解決手段】本発明では、燃料集合体の外殻を成して複数の燃料棒を格納する燃料チャンネルボックスの内側と外側に冷却材の流路が形成され、燃料チャンネルボックスの内側を流れるインチャンネル流の沸騰による蒸気をタービン駆動力とする沸騰水型原子炉において、冷却材のうち燃料チャンネルボックスの外側を流れるアウトチャンネル流Fo(図2、図6参照)の流量を、原子炉運転サイクル中に増減可能なアウトチャンネル流量制御機構50を備えるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核燃料の高燃焼度化を目指した沸騰水型原子炉およびその運転方法に係り、特に、冷却材のボイド率制御によって高燃焼度化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原子力発電の経済性向上や使用済核燃料低減を目的とした核燃料の高燃焼度化の開発が進められている。高燃焼度化にあっては、核燃料物質をより多く炉心に装荷することが有効な策となり、そのために燃焼初期の余剰反応度は高燃焼度化に伴い必然的に大きくなる。また、燃料の初期装荷量の増大に伴い、たとえば、燃料の濃縮度に依存する軸方向出力ピーキング係数ならびに燃料ごとの燃焼度相違に起因する径方向出力ピーキング係数も一層増大し、その結果、最大線出力密度や最小限界出力比に関わる熱的余裕の一層の減少をもたらす。ために、燃焼初期における余剰反応度の増大抑制および熱的余裕の減少抑制を図ることが重要となる。
【0003】
さらに、高燃焼度化にあっては、核分裂生成物を効果的に低減するという目的下、燃焼初期に高ボイド率運転にて中性子スペクトルを硬化させてプルトニウムを生成・蓄積すると共に燃焼後期に低ボイド率運転にて中性子スペクトルを軟化させて生成・蓄積したプルトニウムを効率的に燃焼させることも重要である。
【0004】
従来、燃焼初期に炉心流量を下限値まで減少させることにより平均ボイド率を上昇させ、燃焼後期に炉心流量を上限値まで増加させることにより平均ボイド率を降下させて反応度制御を行うといった流量スペクトルシフト運転が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図17は流量スペクトルシフト運転による燃焼度変化と中性子の無限増倍率変化の相関図である。図17は、沸騰水型原子炉(BWR)に用いられる代表的な燃料集合体を対象とし、燃料集合体内の冷却水流路におけるボイド率を一定(40%)にして燃焼させた定常流量運転を破線で示し、燃焼初期に高ボイド率(50%)で運転して途中で低ボイド率(30%)に切り替えた流量スペクトルシフト運転を実線で示したものである。流量スペクトルシフト運転にあっては、燃焼初期に低い無限増倍率が得られ燃焼後期に高い無限増倍率が得られる。つまり、燃焼初期に中性子スぺクトルを硬化させ燃焼後期に中性子スぺクトルを軟化させることが可能になる。ゆえに、この流量スペクトルシフト運転によれば、燃焼初期の余剰反応度を抑制すること、ならびに、燃焼初期にプルトニウムを生成・蓄積すると共に燃焼後期にプルトニウムを効率的に燃焼することが可能なように思われる。
【特許文献1】特開平7−128489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で説明される流量スペクトルシフト運転において、定格流量の70%〜115%に渡る流量変化幅を設定した場合でも、平均ボイド率は最大値47%、最小値34%であり、図17の50%〜30%に示される流量変化幅の達成は容易でない。たとえば、定格流量の70%に対応する出口ボイド率は80%以上になると予想され、少なくとも燃焼初期においては炉心の熱的余裕との関係で平均ボイド率の上限値は制限を受けることとなる。すなわち、余剰反応度の抑制は、現実的には難しい。
【0007】
なお、反応度制御の他の手法として、ガドリニアなどの可燃性毒物を一部の燃料棒に混入するものが知られているが、可燃性毒物は核分裂により発生した中性子を吸収し、反応度経済上好ましくない。また、燃料製造コストが増大するという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、炉心流量を変化させ或いは燃料棒に可燃性毒物を混入する手法とは別異なる手法をもって、燃焼初期の余剰反応度増大を制御でき且つ燃焼初期にプルトニウムを生成・蓄積して燃焼後期にプルトニウムを効率的に燃焼できる沸騰水型原子炉および沸騰水型原子炉の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明に係る沸騰水型原子炉では、燃料集合体の外殻を成して複数の燃料棒を格納する燃料チャンネルボックスの内側と外側に冷却材の流路が形成され、燃料チャンネルボックスの内側を流れるインチャンネル流の沸騰による蒸気をタービン駆動力とする沸騰水型原子炉において、前記冷却材のうち燃料チャンネルボックスの外側を流れるアウトチャンネル流の流量を、原子炉運転サイクル中に増減可能なアウトチャンネル流量制御機構を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る沸騰水型原子炉の運転方法では、燃料集合体の外殻を成して複数の燃料棒を格納する燃料チャンネルボックスの内側と外側に冷却材の流路が形成され、燃料チャンネルボックスの内側を流れるインチャンネル流の沸騰による蒸気をタービン駆動力とする沸騰水型原子炉の運転方法において、前記冷却材のうち燃料チャンネルボックスの外側を流れるアウトチャンネル流の流路を拡大縮小することによりこのアウトチャンネル流のボイド率を制御して、炉心全体としてのボイド率を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、炉心流量を変化させ或いは燃料棒に可燃性毒物を混入する手法とは別異なる手法をもって、燃焼初期の余剰反応度増大を制御でき且つ燃焼初期にプルトニウムを生成・蓄積して燃焼後期にプルトニウムを効率的に燃焼できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る沸騰水型原子炉および沸騰水型原子炉の運転方法の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は本発明に係る沸騰水型原子炉の第1実施形態を示す基本構成図であり、この沸騰水型原子炉の炉心の平面図である。図2は本実施形態の沸騰水型原子炉に装荷される燃料集合体の縦断面図である。図3は図2に示す燃料集合体のA−A断面図である。
【0014】
沸騰水型原子炉1の炉心10は、図1に示すように、燃料集合体20、制御棒30および局所出力領域モニタ60などから構成される。燃料集合体20は、図2および図3に示すように、ウラン235を主要燃料核種とする燃料棒21および非沸騰水を通水し燃料集合体20内部の出力分布を調節するウォータロッド22などをスペーサ26で束ねて構成される燃料バンドルを有する。この燃料集合体20は、燃料チャンネルボックス23内に燃料バンドルを格納し、上部タイプレート24および下部タイプレート25で支持される。燃料集合体20の燃料チャンネルボックス23の内側は、燃料集合体の下部タイプレート25に設けられた冷却材入口251から流入するインチャンネル流Fiにより冷却され、このインチャンネル流の沸騰による蒸気はタービン駆動力として利用される。一方、燃料チャンネルボックス23の外側(以下、アウトチャンネル)は、非沸騰水たるアウトチャンネル流Foが流れる。
【0015】
図4は燃料集合体20を支持する燃料支持金具40の構造を示す斜視図である。図5は燃料支持金具40に設けられるアウトチャンネル流量制御機構の配置図(透視図)である。
【0016】
燃料集合体20は、その下部タイプレート25(図2参照)が燃料支持金具40の開口41に嵌め込まれて炉心10に装架される。この燃料支持金具40の中央部には制御棒挿入口42が設けられており、4体1組の燃料集合体20間に配置される制御棒30は、制御棒挿入口42から挿入され、反応度制御に際して上下方向に駆動制御される。なお、燃料集合体20内部に案内されインチャンネル流Fi(図2参照)となる冷却材は、燃料支持金具40に設けられたオリフィス43から流入する。沸騰水型原子炉1にあっては、図5に示すように、燃料支持金具40の制御棒挿入口42を塞ぐように設けられたアウトチャンネル流量制御機構50を備える。
【0017】
図6はアウトチャンネル流量制御機構50の構造見取り図である。
【0018】
アウトチャンネル流量制御機構50は、アウトチャンネルを流れるアウトチャンネル流Foの流量を原子炉運転サイクル中に増減可能になるよう構成され、図6に示すように、制御棒側の流路閉塞構造51と、燃料支持金具側の流路閉塞構造52と、を有する。
【0019】
制御棒側の流路閉塞構造51は、制御棒30の形状設定により実現されており、制御棒30の上端よりに設けられてアウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出した膨出部分である。
【0020】
燃料支持金具側の流路閉塞構造52は、制御棒30の上下移動に際し、制御棒側の流路閉塞構造51と協働してアウトチャンネル流Foの流路特定箇所を拡大縮小する。この燃料支持金具側の流路閉塞構造52は、全体的にアウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出した構造体であり、当接部材としての丸棒521と、弾力性を有する可撓性部材(522、523)と、を有して構成される。
【0021】
燃料支持金具側の流路閉塞構造52において、丸棒521は、制御棒側の流路閉塞構造51と圧接可能な位置に設けられ且つ断面円状に形状設定される。丸棒521のサイズは、アウトチャンネル流の流路を完全閉塞する観点から、制御棒挿入口42の開口幅W(図4参照)と同程度であることが好ましい。
【0022】
燃料支持金具側の流路閉塞構造52において、可撓性部材(522、523)は、第一可撓性部材522と、第二可撓性部材523と、により構成される。第一可撓性部材522は、丸棒521を支持すると共に丸棒521から伝達される制御棒30の押力により撓む板バネにより構成される。また、第二可撓性部材523は、丸棒521表面のうち制御棒30との接触点を露呈させつつ覆い、丸棒521から伝達される制御棒30の押力により撓む板バネにより構成される。
【0023】
次に、本発明に至る経緯ならびに沸騰水型原子炉1の作用を説明する。
【0024】
沸騰水型原子炉1の核設計においては、アウトチャンネル流Fo(図2、図6参照)のボイド率はゼロが仮定されており、燃料チャンネルボックス23内部の一様なボイド率を用いた中性子計算モデルが用いられている。しかしながら、アウトチャンネルを流れるアウトチャンネル流Foは、少なからず無限増倍率に影響を及ぼす。さらに、アウトチャンネルの冷却材流路面積に対するインチャンネルの冷却材流路面積の比は0.5或いはそれ以上であり、アウトチャンンルはインチャンネルよりも冷却材流路断面積が大きくなるように設計されているのが一般的である。したがって、アウトチャンネルを流れるアウトチャンネル流Foのボイド率制御を通じ、炉心の反応度制御を行うことは十分可能である。
【0025】
また、アウトチャンネル流Foは、式(1)に示すアウトチャンネル流Foのエンタルピーhoutch.が飽和エンタルピーhsatを越えれば沸騰する。したがって、アウトチャンネルの発熱量Qoutch.を増加させ或いは流量Woutch.を減少させて、アウトチャンネル流Foのエンタルピーhoutch.が飽和エンタルピーを超えるようにすれば、アウトチャンネル流Foのボイド率制御が可能となる。一方、発熱量Qoutch.を減少させ或いは流量Woutch.を増加させれば、アウトチャンネル流Foを液単相に戻すことができる。
【数1】
【0026】
沸騰水型原子炉1は、上述した知見に基づき為されたもので、アウトチャンネル流量制御機構50を備え、アウトチャンネルを流れるアウトチャンネル流Foのボイド率制御を可能にしたものである。アウトチャンネル流Foのボイド率制御を通じて炉心平均のボイド率制御が行なわれるため、従来問題となっていた炉心の熱的余裕低下から受ける燃料チャンネルボックス23内部のボイド率上限値制限は解消する。たとえば、燃料チャンネルボックス23内部の平均ボイド率が40%であってもアウトチャンネルの平均ボイド率を20%まで高めることで、燃料チャンネルボックス23内部の平均ボイド率50%相当以上の運転が可能となる。
【0027】
以下、沸騰水型原子炉1におけるアウトチャンネル流Foの流量制御を具体的に説明する。図7〜図9は沸騰水型原子炉1の作用説明図である。
【0028】
従来の沸騰水型原子炉では、原子炉運転サイクル中のアウトチャンネル流量を不変とした運転が行われている。これに対し、第1実施形態の沸騰水型原子炉1では、アウトチャンネル流量制御機構50によって、たとえば、図7の実線で示すように燃料の燃焼初期にアウトチャンネル流量が定格の30%或いはそれ以下となるように運転し、燃焼後期ないし末期にアウトチャンネル流量を定格値(100%)に戻して運転することができる。このアウトチャンネル流量の定格値→30%という流量降下制御は、図8に示すように、制御棒30の駆動制御によってアウトチャンネル流量制御機構50における制御棒側の流路閉塞構造51と燃料支持金具側の流路閉塞構造52が互いに接近或いは接触し、アウトチャンネル流Foの流路が閉塞されることにより行われる。一方、アウトチャンネル流量の30%→定格値という流量上昇制御は、流路閉塞構造51および流慮閉塞構造52の接触が解除され、アウトチャンネル流Foの流路が開放されることにより行われる。
【0029】
ここで、燃料支持金具側の流路閉塞構造52において、丸棒521が可撓性部材(522、523)を介して設けられる。このため、図8に示すように、制御棒30の押力に対抗する可撓性部材(522、523)の押力Fにより丸棒521と制御棒側の流路閉塞構造51とが密着し、アウトチャンネル流Foの流路閉塞性が良好に維持される。
【0030】
図9は第1実施形態に関わる沸騰水型原子炉1と従来の沸騰水型原子炉の炉心特性の比較図であり、(A)は燃焼度と無限増倍率の相関に関する比較図、(B)は燃焼度と径方向出力ピーキング係数の相関に関する比較図である。なお、図9は実証試験の結果である。
【0031】
燃焼初期にアウトチャンネル流量を定格の30%とし、燃焼後期(約22GWd/t時点)にてアウトチャンネル流量を定格値に戻すアウトチャンネル流量制御運転によると、図9(A)に示すように、燃焼初期に従来の沸騰水型原子炉と比較して低い無限増倍率を得ることができ、燃焼後期に従来の沸騰水型原子炉と比較して高い無限増倍率を得ることができる。つまり、従来の沸騰水型原子炉に比べ、燃焼初期に中性子スペクトルが硬化し、燃焼後期に中性子スベクトルが軟化する。さらに、このアウトチャンネル流量制御運転によると、図9(B)に示すように燃焼初期の径方向出力ピーキング係数が従来の沸騰水型原子炉の運転方法に比べて低い値となり、最大線出力密度や最小限界出力比に関わる熱的余裕の減少も抑制される。
【0032】
次に、沸騰水型原子炉1の効果を説明する。
【0033】
沸騰水型原子炉1にあっては、
(1) 冷却材のうちアウトチャンネルを流れるアウトチャンネル流Fo(図2、図6参照)の流量を、原子炉運転サイクル中に増減可能なアウトチャンネル流量制御機構50を備える。すなわち、アウトチャンネルを流れるアウトチャンネル流Foのボイド率制御を通じて炉心平均ボイド率を制御する構成を備える。このため、従来問題となっていた炉心の熱的余裕低下から受ける燃料チャンネルボックス23内部の平均ボイド率の上限値制限を解消でき、燃焼初期における中性子スペクトルの硬化ならびに燃焼後期における中性子スベクトルの軟化を容易に実現できる。その結果、燃焼初期の余剰反応度増大を制御でき且つ燃焼初期にプルトニウムを生成・蓄積して燃焼後期にプルトニウムを効率的に燃焼できる。
【0034】
(2) アウトチャンネル流量制御機構50は、燃料集合体20の下端を支持する燃料支持金具40に設けられてアウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出した燃料支持金具側の流路閉塞構造52と、炉心10下部からアウトチャンネル流Foの流路に挿入される制御棒30に設けられてアウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出した制御棒側の流路閉塞構造51と、を有する。そして、制御棒30の上下移動に伴い、各流路閉塞構造が互いに接近することによりアウトチャンネル流Foの流路を閉塞し、各流路閉塞構造の接触が解除されることによりアウトチャンネル流Foの流路を開放するように構成される。すなわち、既存の原子炉構造体である制御棒30を利用して(1)の効果を得ることができ、原子炉構造の簡素化が図られる。
【0035】
(3) 燃料支持金具側の流路閉塞構造52は、アウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出して制御棒30の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造51と圧接可能に設けられる当接部材としての丸棒521と、この丸棒521と燃料支持金具40との間に介設され、丸棒521を支持すると共に丸棒521により伝達される制御棒30の押力により撓む可撓性部材(522、523)と、を有する。そして、制御棒側の流路閉塞構造51と丸棒521が互いに圧接可能に構成される。したがって、アウトチャンネル流Foの流路を高い密閉性で閉塞でき、(1)の効果をより実効的なものにできる。
【0036】
[第2実施形態]
図10は本発明に係る沸騰水型原子炉の第2実施形態を示す図であり、第2実施形態の要部を示したものである。本実施形態は、第1実施形態の沸騰水型原子炉1におけるアウトチャンネル流量制御機構50のうち燃料支持金具側の流路閉塞構造52の構成を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は、同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は、符号末尾に「A」を付して説明する。
【0037】
本実施形態の燃料支持金具側の流路閉塞構造52Aは、図10に示すように、アウトチャンネル流案内通路524Aと、アウトチャンネル流貯留体525Aと、を備える。
【0038】
アウトチャンネル流案内通路524Aは、燃料支持金具40の内側に設けられており、アウトチャンネル流Foが流れるように構成される。このアウトチャンネル流案内通路524Aは、燃料支持金具40の構造壁内部を掘削して形成し、或いは、燃料支持金具40の内側空間を利用して設けることがきる。
【0039】
アウトチャンネル流貯留体525Aは、アウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出し、制御棒30の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造51と接触可能に設けられる。そして、アウトチャンネル流案内通路524Aに導かれたアウトチャンネル流を貯留すると共にアウトチャンネル流の貯留量に応じて容積が可変に構成される。
【0040】
次に、沸騰水型原子炉1Aの作用を説明する。
【0041】
図11は沸騰水型原子炉1Aの作用説明図である。沸騰水型原子炉1Aのアウトチャンネル流量制御機構50Aによると、制御棒側の流路閉塞構造51と燃料支持金具側の流路閉塞構造52Aが互いに接近し或いは接触してアウトチャンネル流Foの流路が閉塞されたとき、アウトチャンネル流Foがアウトチャンネル流案内通路524に選択的に流れる。このため、図11に示すように、アウトチャンネル流貯留体525の内圧が上昇して容積が増大する。アウトチャンネル流貯留体525の容積が増大すると、このアウトチャンネル流貯留体525はアウトチャンネル流Foの流路を閉塞する方向に一層拡大しようとし、制御棒側の流路閉塞構造51との相互の圧接力が増大する。
【0042】
次に、沸騰水型原子炉1Aの効果を説明する。
【0043】
沸騰水型原子炉1Aにあっては、第1実施形態の(1)および(2)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0044】
(4) 燃料支持金具側の流路閉塞構造52Aは、燃料支持金具40の内側に設けられてアウトチャンネル流Foが流れるアウトチャンネル流案内通路524Aと、アウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出して制御棒30の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造51と接触可能に設けられ、アウトチャンネル流案内通路524Aに導かれたアウトチャンネル流を貯留すると共にアウトチャンネル流の貯留量に応じて容積可変なアウトチャンネル流貯留体525Aと、を有する。このため、圧接力の増大作用によりアウトチャンネル流Foの流路を高い密閉性にて閉塞でき、第1実施形態の(1)の効果をより実効的なものにできる。
【0045】
[第3実施形態]
図12は本発明に係る沸騰水型原子炉の第3実施形態を示す図であり、第3実施形態の要部を示したものである。本実施形態は、第1実施形態の沸騰水型原子炉1におけるアウトチャンネル流量制御機構50の構成を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は、同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は、符号末尾に「B」を付して説明する。
【0046】
本実施形態のアウトチャンネル流量制御機構50Bは、図12に示すように、制御棒側の流路閉塞構造51Bと、燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bと、を備える。
【0047】
制御棒側の流路閉塞構造51Bは、制御棒30の一部に設けられる磁気部材により構成される。この磁気部材は、磁化した制御棒30として或いは制御棒30に磁石を取り付けることにより実現される。
【0048】
燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bは、制御棒30の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造51B(磁気部材)が接近した際、その流路閉塞構造51Bに吸着する磁気駆動部材により構成される。この磁気駆動部材は、燃料支持金具40の一部を掘削し、その内部にスライド移動可能に磁石を設けることにより実現される。
【0049】
次に、沸騰水型原子炉1Bの作用を説明する。
【0050】
図13は沸騰水型原子炉1Bの作用説明図である。図13に示すように、制御棒30が上下方向に移動することにより、制御棒側の流路閉塞構造51Bが燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bの位置に接近したとき、燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bは制御棒側の流路閉塞構造51Bに磁気吸着し、アウトチャンネル流Foの流路が閉塞される。そして、制御棒30が再び上下移動することにより、燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bと制御棒側の流路閉塞構造51Bの磁気吸着が解除され、アウトチャンネル流Foの流路が開放される。この流路の開放は、たとえば、燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bに制御棒側の流路閉塞構造51Bと反対の方向に引っ張り力が作用するコイルバネなどを設けることにより実現される。よって、構造の疲労や破壊による機能喪失が生じにくい高い信頼性を有する機構によってアウトチャンネル流Foの流路制御が行われる。
【0051】
次に、沸騰水型原子炉1Bの効果を説明する。
【0052】
沸騰水型原子炉1Bにあっては、第1実施形態の(1)および(2)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0053】
(5) 制御棒側の流路閉塞構造51Bは、制御棒30の一部に設けられる磁気部材を有し、燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bは、制御棒30の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造51Bたる磁気部材が接近した際にその磁気部材に吸着する磁気駆動部材を有する。したがって、アウトチャンネル流Foの流路を高い密閉性および信頼性で閉塞でき、(1)の効果をより実効的なものにできる。
【0054】
[第4実施形態]
図14および図15は本発明に係る沸騰水型原子炉の第4実施形態を示す図であり、第4実施形態の要部を示したものである。本実施形態は、第1実施形態の沸騰水型原子炉1におけるアウトチャンネル流量制御機構50の構成を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は、同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は、符号末尾に「C」を付して説明する。
【0055】
本実施形態のアウトチャンネル流量制御機構50Cは、図14に示すように、下部タイプレート25に流路閉塞構造52Cを備える。なお、図15は図14のP部拡大図である。そして、この下部タイプレート側の流路閉塞構造52Cは、下部タイプレート25に設けられた連通路531Cと、連通路栓部材532Cと、を有する。
【0056】
連通路531Cは、下部タイプレート25のうち冷却材入口251よりも上方に設けられ、リークホール252とは異なる。
【0057】
連通路栓部材532Cは、連通路531Cに挿通される軸部533Cと、軸部533Cのうち下部タイプレート25内側に位置する末端部に設けられた栓部534Cと、軸部533Cのうちアウトチャンネル流Foの流路に突き出した末端部に設けられた当接部535Cと、当接部535Cに制御棒側の流路閉塞構造51が接触したときに当接部535Cに抗力が作用するように設けられるコイルバネ536Cと、により構成される。
【0058】
次に、沸騰水型原子炉1Cの作用を説明する。
【0059】
図16は沸騰水型原子炉1Cの作用説明図である。図16に示すように、アウトチャンネル流量制御機構50Cにあっては、制御棒30が上下方向に移動することにより、制御棒側の流路閉塞構造51が下部タイプレート側の流路閉塞構造52Cの当接部535Cに接触してアウトチャンネル流Foの流路が閉塞される。このとき、当接部535Cはコイルバネ536Cの抗力を受けて制御棒側の流路閉塞構造51を押すため、制御棒側の流路閉塞構造51および下部タイプレート側の流路閉塞構造52Cの相互圧接力が増大する。
【0060】
加えて、アウトチャンネル流量制御機構50Cにあっては、制御棒30が上下方向に移動してアウトチャンネル流Foの流路が閉塞されると同時に、栓部534Cがスライド移動して下部タイプレート25内部とアウトチャンネル流Foの流路とが連通する。このため、下部タイプレート25の冷却材入口251から流入した冷却材の一部がアウトチャンネル流Foの流路に排出される。すなわち、アウトチャンネルにおけるアウトチャンネル流Foの流量制限によりアウトチャンネル流Foのボイド率が増加すると同時に、燃料チャンネルボックス23内部のインチャンネル流Fiの流量が制限されてインチャンネル流Fiのボイド率も増加する。
【0061】
次に、沸騰水型原子炉1Cの効果を説明する。
【0062】
沸騰水型原子炉1Cにあっては、第1実施形態の(1)および(2)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0063】
(6) 燃料集合体20の下部タイプレート25に設けられて下部タイプレート25の内側と外側を連通する連通路531Cと、この連通路531Cに挿通され、制御棒30の押力により連通路531Cを開放するように変位し且つ制御棒30の押力が作用しないときは連通路531Cを閉塞状態で維持する連通路栓部材532Cとを有する下部タイプレート側の流路閉塞構造52Cと、備える。このため、アウトチャンネル流Foの流路を高い密閉性で閉塞すると共にインチャンネル流Fiの流量制限も同時に可能となり、(1)の効果をより実効的なものにできる。
【0064】
以上、本発明に係る沸騰水型原子炉を第1実施形態〜第4実施形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り設計の変更や追加等は許容される。
【0065】
本実施形態では、アウトチャンネル流量制御の具体的手段として、制御棒ならびに燃料支持金具あるいは下部タイプレートに設けられた流路閉塞構造を用いる例を示したが、この流路閉塞構造は、たとえば燃料チャンネルボックスなどのアウトチャンネル流Foの流路に沿った構造体であれば、設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る沸騰水型原子炉の第1実施形態を示す基本構成図であり、この沸騰水型原子炉の炉心の平面図。
【図2】第1実施形態の沸騰水型原子炉に装荷される燃料集合体の縦断面図。
【図3】図2に示す燃料集合体のA−A断面図。
【図4】第1実施形態の沸騰水型原子炉における燃料支持金具の構造を示す斜視図。
【図5】第1実施形態の沸騰水型原子炉における燃料支持金具に設けられるアウトチャンネル流量制御機構の配置図(透視図)。
【図6】第1実施形態の沸騰水型原子炉におけるアウトチャンネル流量制御機構の構造見取り図。
【図7】第1実施形態に関わるアウトチャンネル流量の変更態様を示す図(作用説明図)。
【図8】第1実施形態の沸騰水型原子炉におけるアウトチャンネル流量制御機構の動作を示す図(作用説明図)。
【図9】第1実施形態に関わる沸騰水型原子炉と従来の沸騰水型原子炉の炉心特性の比較図であり、(A)は燃焼度と無限増倍率の相関に関する比較図、(B)は燃焼度と径方向出力ピーキング係数の相関に関する比較図(作用説明図)。
【図10】本発明に係る沸騰水型原子炉の第2実施形態を示す図(要部図)。
【図11】第2実施形態の沸騰水型原子炉におけるアウトチャンネル流量制御機構の動作を示す図(作用説明図)。
【図12】本発明に係る沸騰水型原子炉の第3実施形態を示す図(要部図)。
【図13】第3実施形態に関わるアウトチャンネル流量制御機構の動作を示す図(作用説明図)。
【図14】本発明に係る沸騰水型原子炉の第4実施形態を示す図(要部図)。
【図15】本発明に係る沸騰水型原子炉の第4実施形態を示す図(要部図)。
【図16】第4実施形態の沸騰水型原子炉におけるアウトチャンネル流量制御機構の動作を示す図(作用説明図)。
【図17】流量スペクトルシフト運転による燃焼度変化と中性子の無限増倍率変化の相関図。
【符号の説明】
【0067】
1、1A、1B,1C…沸騰水型原子炉, 10…炉心, 20…燃料集合体, 21…燃料棒, 22…ウォータロッド, 23…燃料チャンネルボックス, 24…下部タイプレート25…下部タイプレート, 251…冷却材入口, 252…リークホール, 26…スペーサ, 30…局所出力領域モニタ, 40…燃料支持金具, 41…制御棒挿入口, 42…オリフィス, 50、50A、50B、50C…アウトチャンネル流量制御機構, 51、51B…制御棒側の流路閉塞構造,52B…燃料支持金具側の流路閉塞構造, 521…丸棒(当接部材), 522…第一可撓性部材(可撓性部材), 523…第二可撓性部材(可撓性部材), 524A…アウトチャンネル流案内通路, 525A…アウトチャンネル流貯留体, 526B…磁気駆動部材, 53C…下部プレート側の流路閉塞構造, 531C…連通路, 532C…連通路栓部材, 533C…軸部, 534C…栓部, 535C…当接部, 536C…コイルバネ, Fi…インチャンネル流, Fo…アウトチャンネル流.
【技術分野】
【0001】
本発明は、核燃料の高燃焼度化を目指した沸騰水型原子炉およびその運転方法に係り、特に、冷却材のボイド率制御によって高燃焼度化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原子力発電の経済性向上や使用済核燃料低減を目的とした核燃料の高燃焼度化の開発が進められている。高燃焼度化にあっては、核燃料物質をより多く炉心に装荷することが有効な策となり、そのために燃焼初期の余剰反応度は高燃焼度化に伴い必然的に大きくなる。また、燃料の初期装荷量の増大に伴い、たとえば、燃料の濃縮度に依存する軸方向出力ピーキング係数ならびに燃料ごとの燃焼度相違に起因する径方向出力ピーキング係数も一層増大し、その結果、最大線出力密度や最小限界出力比に関わる熱的余裕の一層の減少をもたらす。ために、燃焼初期における余剰反応度の増大抑制および熱的余裕の減少抑制を図ることが重要となる。
【0003】
さらに、高燃焼度化にあっては、核分裂生成物を効果的に低減するという目的下、燃焼初期に高ボイド率運転にて中性子スペクトルを硬化させてプルトニウムを生成・蓄積すると共に燃焼後期に低ボイド率運転にて中性子スペクトルを軟化させて生成・蓄積したプルトニウムを効率的に燃焼させることも重要である。
【0004】
従来、燃焼初期に炉心流量を下限値まで減少させることにより平均ボイド率を上昇させ、燃焼後期に炉心流量を上限値まで増加させることにより平均ボイド率を降下させて反応度制御を行うといった流量スペクトルシフト運転が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図17は流量スペクトルシフト運転による燃焼度変化と中性子の無限増倍率変化の相関図である。図17は、沸騰水型原子炉(BWR)に用いられる代表的な燃料集合体を対象とし、燃料集合体内の冷却水流路におけるボイド率を一定(40%)にして燃焼させた定常流量運転を破線で示し、燃焼初期に高ボイド率(50%)で運転して途中で低ボイド率(30%)に切り替えた流量スペクトルシフト運転を実線で示したものである。流量スペクトルシフト運転にあっては、燃焼初期に低い無限増倍率が得られ燃焼後期に高い無限増倍率が得られる。つまり、燃焼初期に中性子スぺクトルを硬化させ燃焼後期に中性子スぺクトルを軟化させることが可能になる。ゆえに、この流量スペクトルシフト運転によれば、燃焼初期の余剰反応度を抑制すること、ならびに、燃焼初期にプルトニウムを生成・蓄積すると共に燃焼後期にプルトニウムを効率的に燃焼することが可能なように思われる。
【特許文献1】特開平7−128489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で説明される流量スペクトルシフト運転において、定格流量の70%〜115%に渡る流量変化幅を設定した場合でも、平均ボイド率は最大値47%、最小値34%であり、図17の50%〜30%に示される流量変化幅の達成は容易でない。たとえば、定格流量の70%に対応する出口ボイド率は80%以上になると予想され、少なくとも燃焼初期においては炉心の熱的余裕との関係で平均ボイド率の上限値は制限を受けることとなる。すなわち、余剰反応度の抑制は、現実的には難しい。
【0007】
なお、反応度制御の他の手法として、ガドリニアなどの可燃性毒物を一部の燃料棒に混入するものが知られているが、可燃性毒物は核分裂により発生した中性子を吸収し、反応度経済上好ましくない。また、燃料製造コストが増大するという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、炉心流量を変化させ或いは燃料棒に可燃性毒物を混入する手法とは別異なる手法をもって、燃焼初期の余剰反応度増大を制御でき且つ燃焼初期にプルトニウムを生成・蓄積して燃焼後期にプルトニウムを効率的に燃焼できる沸騰水型原子炉および沸騰水型原子炉の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明に係る沸騰水型原子炉では、燃料集合体の外殻を成して複数の燃料棒を格納する燃料チャンネルボックスの内側と外側に冷却材の流路が形成され、燃料チャンネルボックスの内側を流れるインチャンネル流の沸騰による蒸気をタービン駆動力とする沸騰水型原子炉において、前記冷却材のうち燃料チャンネルボックスの外側を流れるアウトチャンネル流の流量を、原子炉運転サイクル中に増減可能なアウトチャンネル流量制御機構を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る沸騰水型原子炉の運転方法では、燃料集合体の外殻を成して複数の燃料棒を格納する燃料チャンネルボックスの内側と外側に冷却材の流路が形成され、燃料チャンネルボックスの内側を流れるインチャンネル流の沸騰による蒸気をタービン駆動力とする沸騰水型原子炉の運転方法において、前記冷却材のうち燃料チャンネルボックスの外側を流れるアウトチャンネル流の流路を拡大縮小することによりこのアウトチャンネル流のボイド率を制御して、炉心全体としてのボイド率を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、炉心流量を変化させ或いは燃料棒に可燃性毒物を混入する手法とは別異なる手法をもって、燃焼初期の余剰反応度増大を制御でき且つ燃焼初期にプルトニウムを生成・蓄積して燃焼後期にプルトニウムを効率的に燃焼できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る沸騰水型原子炉および沸騰水型原子炉の運転方法の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は本発明に係る沸騰水型原子炉の第1実施形態を示す基本構成図であり、この沸騰水型原子炉の炉心の平面図である。図2は本実施形態の沸騰水型原子炉に装荷される燃料集合体の縦断面図である。図3は図2に示す燃料集合体のA−A断面図である。
【0014】
沸騰水型原子炉1の炉心10は、図1に示すように、燃料集合体20、制御棒30および局所出力領域モニタ60などから構成される。燃料集合体20は、図2および図3に示すように、ウラン235を主要燃料核種とする燃料棒21および非沸騰水を通水し燃料集合体20内部の出力分布を調節するウォータロッド22などをスペーサ26で束ねて構成される燃料バンドルを有する。この燃料集合体20は、燃料チャンネルボックス23内に燃料バンドルを格納し、上部タイプレート24および下部タイプレート25で支持される。燃料集合体20の燃料チャンネルボックス23の内側は、燃料集合体の下部タイプレート25に設けられた冷却材入口251から流入するインチャンネル流Fiにより冷却され、このインチャンネル流の沸騰による蒸気はタービン駆動力として利用される。一方、燃料チャンネルボックス23の外側(以下、アウトチャンネル)は、非沸騰水たるアウトチャンネル流Foが流れる。
【0015】
図4は燃料集合体20を支持する燃料支持金具40の構造を示す斜視図である。図5は燃料支持金具40に設けられるアウトチャンネル流量制御機構の配置図(透視図)である。
【0016】
燃料集合体20は、その下部タイプレート25(図2参照)が燃料支持金具40の開口41に嵌め込まれて炉心10に装架される。この燃料支持金具40の中央部には制御棒挿入口42が設けられており、4体1組の燃料集合体20間に配置される制御棒30は、制御棒挿入口42から挿入され、反応度制御に際して上下方向に駆動制御される。なお、燃料集合体20内部に案内されインチャンネル流Fi(図2参照)となる冷却材は、燃料支持金具40に設けられたオリフィス43から流入する。沸騰水型原子炉1にあっては、図5に示すように、燃料支持金具40の制御棒挿入口42を塞ぐように設けられたアウトチャンネル流量制御機構50を備える。
【0017】
図6はアウトチャンネル流量制御機構50の構造見取り図である。
【0018】
アウトチャンネル流量制御機構50は、アウトチャンネルを流れるアウトチャンネル流Foの流量を原子炉運転サイクル中に増減可能になるよう構成され、図6に示すように、制御棒側の流路閉塞構造51と、燃料支持金具側の流路閉塞構造52と、を有する。
【0019】
制御棒側の流路閉塞構造51は、制御棒30の形状設定により実現されており、制御棒30の上端よりに設けられてアウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出した膨出部分である。
【0020】
燃料支持金具側の流路閉塞構造52は、制御棒30の上下移動に際し、制御棒側の流路閉塞構造51と協働してアウトチャンネル流Foの流路特定箇所を拡大縮小する。この燃料支持金具側の流路閉塞構造52は、全体的にアウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出した構造体であり、当接部材としての丸棒521と、弾力性を有する可撓性部材(522、523)と、を有して構成される。
【0021】
燃料支持金具側の流路閉塞構造52において、丸棒521は、制御棒側の流路閉塞構造51と圧接可能な位置に設けられ且つ断面円状に形状設定される。丸棒521のサイズは、アウトチャンネル流の流路を完全閉塞する観点から、制御棒挿入口42の開口幅W(図4参照)と同程度であることが好ましい。
【0022】
燃料支持金具側の流路閉塞構造52において、可撓性部材(522、523)は、第一可撓性部材522と、第二可撓性部材523と、により構成される。第一可撓性部材522は、丸棒521を支持すると共に丸棒521から伝達される制御棒30の押力により撓む板バネにより構成される。また、第二可撓性部材523は、丸棒521表面のうち制御棒30との接触点を露呈させつつ覆い、丸棒521から伝達される制御棒30の押力により撓む板バネにより構成される。
【0023】
次に、本発明に至る経緯ならびに沸騰水型原子炉1の作用を説明する。
【0024】
沸騰水型原子炉1の核設計においては、アウトチャンネル流Fo(図2、図6参照)のボイド率はゼロが仮定されており、燃料チャンネルボックス23内部の一様なボイド率を用いた中性子計算モデルが用いられている。しかしながら、アウトチャンネルを流れるアウトチャンネル流Foは、少なからず無限増倍率に影響を及ぼす。さらに、アウトチャンネルの冷却材流路面積に対するインチャンネルの冷却材流路面積の比は0.5或いはそれ以上であり、アウトチャンンルはインチャンネルよりも冷却材流路断面積が大きくなるように設計されているのが一般的である。したがって、アウトチャンネルを流れるアウトチャンネル流Foのボイド率制御を通じ、炉心の反応度制御を行うことは十分可能である。
【0025】
また、アウトチャンネル流Foは、式(1)に示すアウトチャンネル流Foのエンタルピーhoutch.が飽和エンタルピーhsatを越えれば沸騰する。したがって、アウトチャンネルの発熱量Qoutch.を増加させ或いは流量Woutch.を減少させて、アウトチャンネル流Foのエンタルピーhoutch.が飽和エンタルピーを超えるようにすれば、アウトチャンネル流Foのボイド率制御が可能となる。一方、発熱量Qoutch.を減少させ或いは流量Woutch.を増加させれば、アウトチャンネル流Foを液単相に戻すことができる。
【数1】
【0026】
沸騰水型原子炉1は、上述した知見に基づき為されたもので、アウトチャンネル流量制御機構50を備え、アウトチャンネルを流れるアウトチャンネル流Foのボイド率制御を可能にしたものである。アウトチャンネル流Foのボイド率制御を通じて炉心平均のボイド率制御が行なわれるため、従来問題となっていた炉心の熱的余裕低下から受ける燃料チャンネルボックス23内部のボイド率上限値制限は解消する。たとえば、燃料チャンネルボックス23内部の平均ボイド率が40%であってもアウトチャンネルの平均ボイド率を20%まで高めることで、燃料チャンネルボックス23内部の平均ボイド率50%相当以上の運転が可能となる。
【0027】
以下、沸騰水型原子炉1におけるアウトチャンネル流Foの流量制御を具体的に説明する。図7〜図9は沸騰水型原子炉1の作用説明図である。
【0028】
従来の沸騰水型原子炉では、原子炉運転サイクル中のアウトチャンネル流量を不変とした運転が行われている。これに対し、第1実施形態の沸騰水型原子炉1では、アウトチャンネル流量制御機構50によって、たとえば、図7の実線で示すように燃料の燃焼初期にアウトチャンネル流量が定格の30%或いはそれ以下となるように運転し、燃焼後期ないし末期にアウトチャンネル流量を定格値(100%)に戻して運転することができる。このアウトチャンネル流量の定格値→30%という流量降下制御は、図8に示すように、制御棒30の駆動制御によってアウトチャンネル流量制御機構50における制御棒側の流路閉塞構造51と燃料支持金具側の流路閉塞構造52が互いに接近或いは接触し、アウトチャンネル流Foの流路が閉塞されることにより行われる。一方、アウトチャンネル流量の30%→定格値という流量上昇制御は、流路閉塞構造51および流慮閉塞構造52の接触が解除され、アウトチャンネル流Foの流路が開放されることにより行われる。
【0029】
ここで、燃料支持金具側の流路閉塞構造52において、丸棒521が可撓性部材(522、523)を介して設けられる。このため、図8に示すように、制御棒30の押力に対抗する可撓性部材(522、523)の押力Fにより丸棒521と制御棒側の流路閉塞構造51とが密着し、アウトチャンネル流Foの流路閉塞性が良好に維持される。
【0030】
図9は第1実施形態に関わる沸騰水型原子炉1と従来の沸騰水型原子炉の炉心特性の比較図であり、(A)は燃焼度と無限増倍率の相関に関する比較図、(B)は燃焼度と径方向出力ピーキング係数の相関に関する比較図である。なお、図9は実証試験の結果である。
【0031】
燃焼初期にアウトチャンネル流量を定格の30%とし、燃焼後期(約22GWd/t時点)にてアウトチャンネル流量を定格値に戻すアウトチャンネル流量制御運転によると、図9(A)に示すように、燃焼初期に従来の沸騰水型原子炉と比較して低い無限増倍率を得ることができ、燃焼後期に従来の沸騰水型原子炉と比較して高い無限増倍率を得ることができる。つまり、従来の沸騰水型原子炉に比べ、燃焼初期に中性子スペクトルが硬化し、燃焼後期に中性子スベクトルが軟化する。さらに、このアウトチャンネル流量制御運転によると、図9(B)に示すように燃焼初期の径方向出力ピーキング係数が従来の沸騰水型原子炉の運転方法に比べて低い値となり、最大線出力密度や最小限界出力比に関わる熱的余裕の減少も抑制される。
【0032】
次に、沸騰水型原子炉1の効果を説明する。
【0033】
沸騰水型原子炉1にあっては、
(1) 冷却材のうちアウトチャンネルを流れるアウトチャンネル流Fo(図2、図6参照)の流量を、原子炉運転サイクル中に増減可能なアウトチャンネル流量制御機構50を備える。すなわち、アウトチャンネルを流れるアウトチャンネル流Foのボイド率制御を通じて炉心平均ボイド率を制御する構成を備える。このため、従来問題となっていた炉心の熱的余裕低下から受ける燃料チャンネルボックス23内部の平均ボイド率の上限値制限を解消でき、燃焼初期における中性子スペクトルの硬化ならびに燃焼後期における中性子スベクトルの軟化を容易に実現できる。その結果、燃焼初期の余剰反応度増大を制御でき且つ燃焼初期にプルトニウムを生成・蓄積して燃焼後期にプルトニウムを効率的に燃焼できる。
【0034】
(2) アウトチャンネル流量制御機構50は、燃料集合体20の下端を支持する燃料支持金具40に設けられてアウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出した燃料支持金具側の流路閉塞構造52と、炉心10下部からアウトチャンネル流Foの流路に挿入される制御棒30に設けられてアウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出した制御棒側の流路閉塞構造51と、を有する。そして、制御棒30の上下移動に伴い、各流路閉塞構造が互いに接近することによりアウトチャンネル流Foの流路を閉塞し、各流路閉塞構造の接触が解除されることによりアウトチャンネル流Foの流路を開放するように構成される。すなわち、既存の原子炉構造体である制御棒30を利用して(1)の効果を得ることができ、原子炉構造の簡素化が図られる。
【0035】
(3) 燃料支持金具側の流路閉塞構造52は、アウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出して制御棒30の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造51と圧接可能に設けられる当接部材としての丸棒521と、この丸棒521と燃料支持金具40との間に介設され、丸棒521を支持すると共に丸棒521により伝達される制御棒30の押力により撓む可撓性部材(522、523)と、を有する。そして、制御棒側の流路閉塞構造51と丸棒521が互いに圧接可能に構成される。したがって、アウトチャンネル流Foの流路を高い密閉性で閉塞でき、(1)の効果をより実効的なものにできる。
【0036】
[第2実施形態]
図10は本発明に係る沸騰水型原子炉の第2実施形態を示す図であり、第2実施形態の要部を示したものである。本実施形態は、第1実施形態の沸騰水型原子炉1におけるアウトチャンネル流量制御機構50のうち燃料支持金具側の流路閉塞構造52の構成を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は、同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は、符号末尾に「A」を付して説明する。
【0037】
本実施形態の燃料支持金具側の流路閉塞構造52Aは、図10に示すように、アウトチャンネル流案内通路524Aと、アウトチャンネル流貯留体525Aと、を備える。
【0038】
アウトチャンネル流案内通路524Aは、燃料支持金具40の内側に設けられており、アウトチャンネル流Foが流れるように構成される。このアウトチャンネル流案内通路524Aは、燃料支持金具40の構造壁内部を掘削して形成し、或いは、燃料支持金具40の内側空間を利用して設けることがきる。
【0039】
アウトチャンネル流貯留体525Aは、アウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出し、制御棒30の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造51と接触可能に設けられる。そして、アウトチャンネル流案内通路524Aに導かれたアウトチャンネル流を貯留すると共にアウトチャンネル流の貯留量に応じて容積が可変に構成される。
【0040】
次に、沸騰水型原子炉1Aの作用を説明する。
【0041】
図11は沸騰水型原子炉1Aの作用説明図である。沸騰水型原子炉1Aのアウトチャンネル流量制御機構50Aによると、制御棒側の流路閉塞構造51と燃料支持金具側の流路閉塞構造52Aが互いに接近し或いは接触してアウトチャンネル流Foの流路が閉塞されたとき、アウトチャンネル流Foがアウトチャンネル流案内通路524に選択的に流れる。このため、図11に示すように、アウトチャンネル流貯留体525の内圧が上昇して容積が増大する。アウトチャンネル流貯留体525の容積が増大すると、このアウトチャンネル流貯留体525はアウトチャンネル流Foの流路を閉塞する方向に一層拡大しようとし、制御棒側の流路閉塞構造51との相互の圧接力が増大する。
【0042】
次に、沸騰水型原子炉1Aの効果を説明する。
【0043】
沸騰水型原子炉1Aにあっては、第1実施形態の(1)および(2)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0044】
(4) 燃料支持金具側の流路閉塞構造52Aは、燃料支持金具40の内側に設けられてアウトチャンネル流Foが流れるアウトチャンネル流案内通路524Aと、アウトチャンネル流Foの流路を縮小するように張り出して制御棒30の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造51と接触可能に設けられ、アウトチャンネル流案内通路524Aに導かれたアウトチャンネル流を貯留すると共にアウトチャンネル流の貯留量に応じて容積可変なアウトチャンネル流貯留体525Aと、を有する。このため、圧接力の増大作用によりアウトチャンネル流Foの流路を高い密閉性にて閉塞でき、第1実施形態の(1)の効果をより実効的なものにできる。
【0045】
[第3実施形態]
図12は本発明に係る沸騰水型原子炉の第3実施形態を示す図であり、第3実施形態の要部を示したものである。本実施形態は、第1実施形態の沸騰水型原子炉1におけるアウトチャンネル流量制御機構50の構成を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は、同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は、符号末尾に「B」を付して説明する。
【0046】
本実施形態のアウトチャンネル流量制御機構50Bは、図12に示すように、制御棒側の流路閉塞構造51Bと、燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bと、を備える。
【0047】
制御棒側の流路閉塞構造51Bは、制御棒30の一部に設けられる磁気部材により構成される。この磁気部材は、磁化した制御棒30として或いは制御棒30に磁石を取り付けることにより実現される。
【0048】
燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bは、制御棒30の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造51B(磁気部材)が接近した際、その流路閉塞構造51Bに吸着する磁気駆動部材により構成される。この磁気駆動部材は、燃料支持金具40の一部を掘削し、その内部にスライド移動可能に磁石を設けることにより実現される。
【0049】
次に、沸騰水型原子炉1Bの作用を説明する。
【0050】
図13は沸騰水型原子炉1Bの作用説明図である。図13に示すように、制御棒30が上下方向に移動することにより、制御棒側の流路閉塞構造51Bが燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bの位置に接近したとき、燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bは制御棒側の流路閉塞構造51Bに磁気吸着し、アウトチャンネル流Foの流路が閉塞される。そして、制御棒30が再び上下移動することにより、燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bと制御棒側の流路閉塞構造51Bの磁気吸着が解除され、アウトチャンネル流Foの流路が開放される。この流路の開放は、たとえば、燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bに制御棒側の流路閉塞構造51Bと反対の方向に引っ張り力が作用するコイルバネなどを設けることにより実現される。よって、構造の疲労や破壊による機能喪失が生じにくい高い信頼性を有する機構によってアウトチャンネル流Foの流路制御が行われる。
【0051】
次に、沸騰水型原子炉1Bの効果を説明する。
【0052】
沸騰水型原子炉1Bにあっては、第1実施形態の(1)および(2)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0053】
(5) 制御棒側の流路閉塞構造51Bは、制御棒30の一部に設けられる磁気部材を有し、燃料支持金具側の流路閉塞構造52Bは、制御棒30の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造51Bたる磁気部材が接近した際にその磁気部材に吸着する磁気駆動部材を有する。したがって、アウトチャンネル流Foの流路を高い密閉性および信頼性で閉塞でき、(1)の効果をより実効的なものにできる。
【0054】
[第4実施形態]
図14および図15は本発明に係る沸騰水型原子炉の第4実施形態を示す図であり、第4実施形態の要部を示したものである。本実施形態は、第1実施形態の沸騰水型原子炉1におけるアウトチャンネル流量制御機構50の構成を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は、同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は、符号末尾に「C」を付して説明する。
【0055】
本実施形態のアウトチャンネル流量制御機構50Cは、図14に示すように、下部タイプレート25に流路閉塞構造52Cを備える。なお、図15は図14のP部拡大図である。そして、この下部タイプレート側の流路閉塞構造52Cは、下部タイプレート25に設けられた連通路531Cと、連通路栓部材532Cと、を有する。
【0056】
連通路531Cは、下部タイプレート25のうち冷却材入口251よりも上方に設けられ、リークホール252とは異なる。
【0057】
連通路栓部材532Cは、連通路531Cに挿通される軸部533Cと、軸部533Cのうち下部タイプレート25内側に位置する末端部に設けられた栓部534Cと、軸部533Cのうちアウトチャンネル流Foの流路に突き出した末端部に設けられた当接部535Cと、当接部535Cに制御棒側の流路閉塞構造51が接触したときに当接部535Cに抗力が作用するように設けられるコイルバネ536Cと、により構成される。
【0058】
次に、沸騰水型原子炉1Cの作用を説明する。
【0059】
図16は沸騰水型原子炉1Cの作用説明図である。図16に示すように、アウトチャンネル流量制御機構50Cにあっては、制御棒30が上下方向に移動することにより、制御棒側の流路閉塞構造51が下部タイプレート側の流路閉塞構造52Cの当接部535Cに接触してアウトチャンネル流Foの流路が閉塞される。このとき、当接部535Cはコイルバネ536Cの抗力を受けて制御棒側の流路閉塞構造51を押すため、制御棒側の流路閉塞構造51および下部タイプレート側の流路閉塞構造52Cの相互圧接力が増大する。
【0060】
加えて、アウトチャンネル流量制御機構50Cにあっては、制御棒30が上下方向に移動してアウトチャンネル流Foの流路が閉塞されると同時に、栓部534Cがスライド移動して下部タイプレート25内部とアウトチャンネル流Foの流路とが連通する。このため、下部タイプレート25の冷却材入口251から流入した冷却材の一部がアウトチャンネル流Foの流路に排出される。すなわち、アウトチャンネルにおけるアウトチャンネル流Foの流量制限によりアウトチャンネル流Foのボイド率が増加すると同時に、燃料チャンネルボックス23内部のインチャンネル流Fiの流量が制限されてインチャンネル流Fiのボイド率も増加する。
【0061】
次に、沸騰水型原子炉1Cの効果を説明する。
【0062】
沸騰水型原子炉1Cにあっては、第1実施形態の(1)および(2)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0063】
(6) 燃料集合体20の下部タイプレート25に設けられて下部タイプレート25の内側と外側を連通する連通路531Cと、この連通路531Cに挿通され、制御棒30の押力により連通路531Cを開放するように変位し且つ制御棒30の押力が作用しないときは連通路531Cを閉塞状態で維持する連通路栓部材532Cとを有する下部タイプレート側の流路閉塞構造52Cと、備える。このため、アウトチャンネル流Foの流路を高い密閉性で閉塞すると共にインチャンネル流Fiの流量制限も同時に可能となり、(1)の効果をより実効的なものにできる。
【0064】
以上、本発明に係る沸騰水型原子炉を第1実施形態〜第4実施形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り設計の変更や追加等は許容される。
【0065】
本実施形態では、アウトチャンネル流量制御の具体的手段として、制御棒ならびに燃料支持金具あるいは下部タイプレートに設けられた流路閉塞構造を用いる例を示したが、この流路閉塞構造は、たとえば燃料チャンネルボックスなどのアウトチャンネル流Foの流路に沿った構造体であれば、設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る沸騰水型原子炉の第1実施形態を示す基本構成図であり、この沸騰水型原子炉の炉心の平面図。
【図2】第1実施形態の沸騰水型原子炉に装荷される燃料集合体の縦断面図。
【図3】図2に示す燃料集合体のA−A断面図。
【図4】第1実施形態の沸騰水型原子炉における燃料支持金具の構造を示す斜視図。
【図5】第1実施形態の沸騰水型原子炉における燃料支持金具に設けられるアウトチャンネル流量制御機構の配置図(透視図)。
【図6】第1実施形態の沸騰水型原子炉におけるアウトチャンネル流量制御機構の構造見取り図。
【図7】第1実施形態に関わるアウトチャンネル流量の変更態様を示す図(作用説明図)。
【図8】第1実施形態の沸騰水型原子炉におけるアウトチャンネル流量制御機構の動作を示す図(作用説明図)。
【図9】第1実施形態に関わる沸騰水型原子炉と従来の沸騰水型原子炉の炉心特性の比較図であり、(A)は燃焼度と無限増倍率の相関に関する比較図、(B)は燃焼度と径方向出力ピーキング係数の相関に関する比較図(作用説明図)。
【図10】本発明に係る沸騰水型原子炉の第2実施形態を示す図(要部図)。
【図11】第2実施形態の沸騰水型原子炉におけるアウトチャンネル流量制御機構の動作を示す図(作用説明図)。
【図12】本発明に係る沸騰水型原子炉の第3実施形態を示す図(要部図)。
【図13】第3実施形態に関わるアウトチャンネル流量制御機構の動作を示す図(作用説明図)。
【図14】本発明に係る沸騰水型原子炉の第4実施形態を示す図(要部図)。
【図15】本発明に係る沸騰水型原子炉の第4実施形態を示す図(要部図)。
【図16】第4実施形態の沸騰水型原子炉におけるアウトチャンネル流量制御機構の動作を示す図(作用説明図)。
【図17】流量スペクトルシフト運転による燃焼度変化と中性子の無限増倍率変化の相関図。
【符号の説明】
【0067】
1、1A、1B,1C…沸騰水型原子炉, 10…炉心, 20…燃料集合体, 21…燃料棒, 22…ウォータロッド, 23…燃料チャンネルボックス, 24…下部タイプレート25…下部タイプレート, 251…冷却材入口, 252…リークホール, 26…スペーサ, 30…局所出力領域モニタ, 40…燃料支持金具, 41…制御棒挿入口, 42…オリフィス, 50、50A、50B、50C…アウトチャンネル流量制御機構, 51、51B…制御棒側の流路閉塞構造,52B…燃料支持金具側の流路閉塞構造, 521…丸棒(当接部材), 522…第一可撓性部材(可撓性部材), 523…第二可撓性部材(可撓性部材), 524A…アウトチャンネル流案内通路, 525A…アウトチャンネル流貯留体, 526B…磁気駆動部材, 53C…下部プレート側の流路閉塞構造, 531C…連通路, 532C…連通路栓部材, 533C…軸部, 534C…栓部, 535C…当接部, 536C…コイルバネ, Fi…インチャンネル流, Fo…アウトチャンネル流.
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料集合体の外殻を成して複数の燃料棒を格納する燃料チャンネルボックスの内側と外側に冷却材の流路が形成され、燃料チャンネルボックスの内側を流れるインチャンネル流の沸騰による蒸気をタービン駆動力とする沸騰水型原子炉において、
前記冷却材のうち燃料チャンネルボックスの外側を流れるアウトチャンネル流の流量を、原子炉運転サイクル中に増減可能なアウトチャンネル流量制御機構を備えることを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項2】
前記アウトチャンネル流量制御機構は、炉心下部からアウトチャンネル流の流路に挿入される制御棒の上下移動に伴い、そのアウトチャンネル流の流路を拡大縮小するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項3】
前記アウトチャンネル流量制御機構は、
炉心下部からアウトチャンネル流の流路に挿入される制御棒に設けられてアウトチャンネル流の流路を縮小するように張り出した制御棒側の流路閉塞構造と、燃料集合体の下端を支持する燃料支持金具に設けられてアウトチャンネル流の流路を縮小するように張り出した燃料支持金具側の流路閉塞構造と、を有し、
前記制御棒の上下移動に伴い、各流路閉塞構造が互いに接触することによりアウトチャンネル流の流路を閉塞し、各流路閉塞構造の接触が解除されることによりアウトチャンネル流の流路を開放することを特徴とする請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項4】
前記燃料支持金具側の流路閉塞構造は、前記アウトチャンネル流の流路を縮小するように張り出して制御棒の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造と接触可能に設けられる当接部材と、前記当接部材と燃料支持金具との間に介設され、その当接部材を支持すると共に当接部材により伝達される制御棒の押力により撓む可撓性部材と、を有し、
前記制御棒側の流路閉塞構造と当接部材が互いに圧接可能に構成されることを特徴とする請求項3に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項5】
前記燃料支持金具側の流路閉塞構造は、燃料支持金具の内側に設けられてアウトチャンネル流が流れるアウトチャンネル流案内通路と、アウトチャンネル流の流路を縮小するように張り出して制御棒の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造と接触可能に設けられ且つアウトチャンネル流案内通路に導かれたアウトチャンネル流を貯留すると共にアウトチャンネル流の貯留量に応じて容積可変なアウトチャンネル流貯留体と、を有し、
前記制御棒側の流路閉塞構造と燃料支持金具側の流路閉塞構造が互いに接近し或いは接触してアウトチャンネル流の流路を閉塞したとき、アウトチャンネル流がアウトチャンネル流案内通路に選択的に流れてアウトチャンネル流貯留体の容積が増大し且つこのアウトチャンネル流貯留体の容積の増大に応じて制御棒側の流路閉塞構造とアウトチャンネル流貯留体の相互の圧接力が増大するように構成されることを特徴とする請求項3に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項6】
前記燃料支持金具側の流路閉塞構造は、前記制御棒の一部に設けられる磁気部材を有し、前記燃料支持金具側の流路閉塞構造は、前記制御棒の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造に設けられる磁気部材が接近した際、その磁気部材に吸着する磁気駆動部材を有し、
前記磁気部材と磁気駆動部材が互いに磁気吸着することにより前記アウトチャンネル流の流路が閉塞されるように構成されることを特徴とする請求項3に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項7】
前記アウトチャンネル流量制御機構は、
炉心下部からアウトチャンネル流の流路に挿入される制御棒に設けられてアウトチャンネル流の流路を縮小するように張り出した制御棒側の流路閉塞構造と、
燃料集合体の下部タイプレートに設けられて下部タイプレートの内側と外側を連通する連通路と、この連通路に挿通され、制御棒の押力により連通路を開放するように変位し且つ制御棒の押力が作用しないときは連通路を閉塞状態で維持する連通路栓部材とを有する下部タイプレート側の流路閉塞構造と、を有し、
前記制御棒の上下移動に伴い、各流路閉塞構造が互いに接触することによりアウトチャンネル流の流路を閉塞し、各流路閉塞構造の接触が解除されることによりアウトチャンネル流の流路を開放することを特徴とする請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項8】
前記燃料集合体の下部タイプレートと燃料チャンネルボックスが一体的に構成されることを特徴とする請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項9】
燃料集合体の外殻を成して複数の燃料棒を格納する燃料チャンネルボックスの内側と外側に冷却材の流路が形成され、燃料チャンネルボックスの内側を流れるインチャンネル流の沸騰による蒸気をタービン駆動力とする沸騰水型原子炉の運転方法において、
前記冷却材のうち燃料チャンネルボックスの外側を流れるアウトチャンネル流の流路を拡大縮小することによりこのアウトチャンネル流のボイド率を制御して、炉心全体としてのボイド率を制御することを特徴とする沸騰水型原子炉の運転方法。
【請求項10】
前記アウトチャンネル流の流路の拡大縮小は、制御棒の駆動制御を利用して行うことを特徴とする請求項9に記載の沸騰水型原子炉の運転方法。
【請求項1】
燃料集合体の外殻を成して複数の燃料棒を格納する燃料チャンネルボックスの内側と外側に冷却材の流路が形成され、燃料チャンネルボックスの内側を流れるインチャンネル流の沸騰による蒸気をタービン駆動力とする沸騰水型原子炉において、
前記冷却材のうち燃料チャンネルボックスの外側を流れるアウトチャンネル流の流量を、原子炉運転サイクル中に増減可能なアウトチャンネル流量制御機構を備えることを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項2】
前記アウトチャンネル流量制御機構は、炉心下部からアウトチャンネル流の流路に挿入される制御棒の上下移動に伴い、そのアウトチャンネル流の流路を拡大縮小するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項3】
前記アウトチャンネル流量制御機構は、
炉心下部からアウトチャンネル流の流路に挿入される制御棒に設けられてアウトチャンネル流の流路を縮小するように張り出した制御棒側の流路閉塞構造と、燃料集合体の下端を支持する燃料支持金具に設けられてアウトチャンネル流の流路を縮小するように張り出した燃料支持金具側の流路閉塞構造と、を有し、
前記制御棒の上下移動に伴い、各流路閉塞構造が互いに接触することによりアウトチャンネル流の流路を閉塞し、各流路閉塞構造の接触が解除されることによりアウトチャンネル流の流路を開放することを特徴とする請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項4】
前記燃料支持金具側の流路閉塞構造は、前記アウトチャンネル流の流路を縮小するように張り出して制御棒の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造と接触可能に設けられる当接部材と、前記当接部材と燃料支持金具との間に介設され、その当接部材を支持すると共に当接部材により伝達される制御棒の押力により撓む可撓性部材と、を有し、
前記制御棒側の流路閉塞構造と当接部材が互いに圧接可能に構成されることを特徴とする請求項3に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項5】
前記燃料支持金具側の流路閉塞構造は、燃料支持金具の内側に設けられてアウトチャンネル流が流れるアウトチャンネル流案内通路と、アウトチャンネル流の流路を縮小するように張り出して制御棒の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造と接触可能に設けられ且つアウトチャンネル流案内通路に導かれたアウトチャンネル流を貯留すると共にアウトチャンネル流の貯留量に応じて容積可変なアウトチャンネル流貯留体と、を有し、
前記制御棒側の流路閉塞構造と燃料支持金具側の流路閉塞構造が互いに接近し或いは接触してアウトチャンネル流の流路を閉塞したとき、アウトチャンネル流がアウトチャンネル流案内通路に選択的に流れてアウトチャンネル流貯留体の容積が増大し且つこのアウトチャンネル流貯留体の容積の増大に応じて制御棒側の流路閉塞構造とアウトチャンネル流貯留体の相互の圧接力が増大するように構成されることを特徴とする請求項3に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項6】
前記燃料支持金具側の流路閉塞構造は、前記制御棒の一部に設けられる磁気部材を有し、前記燃料支持金具側の流路閉塞構造は、前記制御棒の上下移動に伴い制御棒側の流路閉塞構造に設けられる磁気部材が接近した際、その磁気部材に吸着する磁気駆動部材を有し、
前記磁気部材と磁気駆動部材が互いに磁気吸着することにより前記アウトチャンネル流の流路が閉塞されるように構成されることを特徴とする請求項3に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項7】
前記アウトチャンネル流量制御機構は、
炉心下部からアウトチャンネル流の流路に挿入される制御棒に設けられてアウトチャンネル流の流路を縮小するように張り出した制御棒側の流路閉塞構造と、
燃料集合体の下部タイプレートに設けられて下部タイプレートの内側と外側を連通する連通路と、この連通路に挿通され、制御棒の押力により連通路を開放するように変位し且つ制御棒の押力が作用しないときは連通路を閉塞状態で維持する連通路栓部材とを有する下部タイプレート側の流路閉塞構造と、を有し、
前記制御棒の上下移動に伴い、各流路閉塞構造が互いに接触することによりアウトチャンネル流の流路を閉塞し、各流路閉塞構造の接触が解除されることによりアウトチャンネル流の流路を開放することを特徴とする請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項8】
前記燃料集合体の下部タイプレートと燃料チャンネルボックスが一体的に構成されることを特徴とする請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項9】
燃料集合体の外殻を成して複数の燃料棒を格納する燃料チャンネルボックスの内側と外側に冷却材の流路が形成され、燃料チャンネルボックスの内側を流れるインチャンネル流の沸騰による蒸気をタービン駆動力とする沸騰水型原子炉の運転方法において、
前記冷却材のうち燃料チャンネルボックスの外側を流れるアウトチャンネル流の流路を拡大縮小することによりこのアウトチャンネル流のボイド率を制御して、炉心全体としてのボイド率を制御することを特徴とする沸騰水型原子炉の運転方法。
【請求項10】
前記アウトチャンネル流の流路の拡大縮小は、制御棒の駆動制御を利用して行うことを特徴とする請求項9に記載の沸騰水型原子炉の運転方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−38564(P2010−38564A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198448(P2008−198448)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
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