説明

沸騰水型原子炉の炉心性能計算方法および装置

【課題】スペクトルシフトロッド(SSR)を有する燃料集合体が装荷された炉心の炉心特性の制御精度を向上させる炉心性能計算方法および装置を提供する。
【解決手段】SSRを有する複数の燃料集合体が原子炉の炉心に装荷され、炉心の反応度はSSRの冷却材上昇流路内に形成される液面の位置を変えることによって制御される。燃料集合体毎の冷却水流量配分計算が行われ、燃料集合体内のボイド率分布計算及びSSR内の水位計算を含む熱水力計算処理が実行され、SSR内の水位は、中性子検出器により計測した炉心軸方向出力分布と核熱水力計算による出力分布差から補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉心性能計算装置に係り、特に炉心流量の変化により内部の水位が変化するスペクトルシフトロッドを有する燃料集合体を装荷した沸騰水型原子炉に適用するのに好適な炉心性能計算方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、沸騰水型原子炉において、炉心内の出力分布や反応度等の炉心特性を監視し、制御棒位置及び炉心流量を変化させたときの炉心特性の変化を予測して原子炉を安全に制御するために炉心性能計算装置が設けられている。炉心性能計算装置は、熱水力計算により原子炉炉心の核定数を算出し、次いで中性子輸送計算または中性子拡散計算等の核計算により炉心内の3次元中性子束分布を求め、炉心特性を算出する。
【0003】
この計算に当たっては炉心を3次元の複数領域に分割し、各領域における物質組成を反映した核定数を算出する。核定数は中性子による核反応に関係し原子炉の運転に伴って変化する。そこで、同じ燃料集合体が無限に配列される無限格子体系を仮定して詳細な集合体計算を行い、燃料集合体の中性子分布の算出および核燃料物質の組成の追跡を行って、各燃焼時点での燃料集合体の特性を求めている。計算方法は1種類の燃料集合体に対して、減速材密度の異なる数ケースの集合体計算を行い、燃料集合体平均の核反応断面積及び中性子無限増倍率を含む集合体核定数を算出し、燃焼度、減速材密度、燃焼平均減速材密度などの値により整理する。
【0004】
実際の炉心では、炉心内の位置によって減速材密度及び燃焼度の値が異なる。このため、例えば特許文献1に記載されているように、炉心全体にわたる中性子分布及び炉心全体の反応度を求める炉心計算では、集合体計算の結果を別に得られた燃焼度、減速材密度、燃焼平均減速材密度などの値で内外挿して、炉内各領域での状態に応じた集合体核定数を計算する。
【0005】
一方、核燃料物質の有効利用を図る観点から、特許文献2に示されているようなスペクトルシフトロッド(以下SSRという)を有する燃料集合体が提案されている。SSRは逆U字状の管からなり、炉心流量の変化に伴ってSSR内部に形成される水蒸気領域と水領域の境界(以下SSR内の水位という)が変化する水ロッドである。このSSRを備えた燃料集合体は、炉心流量の変更により炉心内の減速材密度を広範囲に制御でき、ウラン238からプルトニウム239への転換の促進及び燃焼末期での反応度向上等が可能となり、核燃料物質の有効利用を図ることができる。SSR内の水位は炉心流量の変化に伴って変化するので、炉心性能計算を精度良く行うためには、SSR内の水位を考慮して炉心計算を行うことが重要となる。
【0006】
特許文献3に記載された炉心性能計算装置は、SSRを有する燃料集合体が装荷された原子炉において、炉心流量に応じて変化するSSR内の水位を考慮して炉心内の各領域での核定数を求めることによって、炉心内の出力分布及び反応度等の炉心特性を精度良く算出している。
【0007】
【特許文献1】特開平4−320996号公報
【特許文献2】特開昭63−73187号公報
【特許文献3】特開平7−92289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献3に記載された炉心性能計算方法は、炉心に供給される冷却水が下部タイプレートを通過する際の圧力損失ΔPLTPがSSR内の全圧力損失と等しく、SSR入口および出口での圧損が小さいと仮定して、水の密度ρ、重力加速度gを用いてSSR内の水位Zを(1)式から算出し、SSR内の水の有無に基づいて核定数を算出している。
Z=ΔPLTPg ……(1)
この水位算出方法は、簡便で炉心性能計算に重要な高速演算の観点で優れている。しかし、各燃料集合体に供給される冷却水流量や、下部タイプレートでの圧力損失などが、実際の冷却水流量や下部タイプレート圧力損失などと異なる場合、算出したSSR内の水位と実際のSSR内の水位には差が生じ、炉心性能計算に誤差が生じる可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、SSRを有する燃料集合体が装荷された沸騰水型原子炉において、炉心特性の計算精度をさらに向上する炉心性能計算方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、炉心に装荷された複数の燃料集合体と、前記燃料集合体に設けられるとともに炉心の冷却水流量に応じて内部水位が変化するスペクトルシフトロッドと、前記炉心内に軸方向移動可能に設けられた中性子検出器とを有する沸騰水型原子炉について、核熱水力結合計算により炉内出力分布を含む炉心特性を計算する沸騰水型原子炉の炉心性能計算方法において、実際の炉心内の中性子束分布に基づき算出された炉心軸方向出力分布と前記核熱水力結合計算により求められた軸方向出力分布を比較して、前記スペクトルシフトロッド内の実際の水位と炉心性能計算時に設定した水位の差の生じている燃料集合体を特定し、前記実際のスペクトルシフトロッド内の水位に合わせる様に、すでに設定したスペクトルシフトロッド内の水位を再計算し補正することを特徴とする。
【0011】
また、沸騰水型原子炉の炉心性能計算方法において、前記核熱水力結合計算は、前記燃料集合体の各チャンネルごとに冷却水流量を配分し、燃料集合体内のボイド率分布計算とスペクトルシフトロッド内の水位計算に基づき炉心の核定数および中性子分布を計算し、炉内出力分布を含む炉心特性を計算するステップを有することを特徴とする。
【0012】
また、沸騰水型原子炉の炉心性能計算方法において、前記冷却水流量の差によって生じる実際のスペクトルシフトロッド内の水位と炉心性能計算時に設定したスペクトルシフトロッド内の水位の差が生じている燃料集合体を特定し、前記実際のスペクトルシフトロッド内の水位に合わせる様に、すでに設定したスペクトルシフトロッド内の水位を再計算し補正することを特徴とする。
【0013】
また、沸騰水型原子炉の炉心性能計算方法において、燃料集合体の核特性の差に起因するスペクトルシフトロッド内の水位変化に対する反応度の差に基づいて、実際のスペクトルシフトロッド内の水位と炉心性能計算時に設定したスペクトルシフトロッド内の水位の差が生じている燃料集合体を特定し、前記実際のスペクトルシフトロッド内の水位に合わせる様に、すでに設定したスペクトルシフトロッド内の水位を再計算し補正することを特徴とする。
【0014】
また、沸騰水型原子炉の炉心性能計算方法において、前記スペクトルシフトロッド内の水位再計算の際に、あらかじめ算出され保存された燃料集合体の冷却水流量に対応するスペクトルシフトロッド内のボイド率に関するテーブル情報を使用することを特徴とする。
【0015】
さらに、炉心に装荷された複数の燃料集合体と、前記燃料集合体に設けられるとともに炉心の冷却水流量に応じて内部水位が変化するスペクトルシフトロッドと、前記炉心内に軸方向移動可能に設けられた中性子検出器とを有し、核熱水力結合計算により炉内出力分布を含む炉心特性を計算する沸騰水型原子炉の炉心性能計算装置において、実際の炉心内の中性子束分布に基づき炉心軸方向出力分布を算出する手段と、前記核熱水力結合計算により炉心軸方向出力分布を算出する手段と、前記両炉心軸方向出力分布を比較して、前記スペクトルシフトロッド内の実際の水位と炉心性能計算時に設定した水位の差の生じている燃料集合体を特定する比較手段と、前記実際のスペクトルシフトロッド内の水位に合わせる様に、すでに設定したスペクトルシフトロッド内の水位を再計算し補正する手段を有することを特徴とする。さらに、沸騰水型原子炉における炉心性能計算装置において、再計算により求められたスペクトルシフトロッドの水位を表示する表示装置を有することを特徴とする。
【0016】
加えて、沸騰水型原子炉における上記炉心性能計算装置を有する原子炉プラントであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、SSRを有する燃料集合体が装荷された沸騰水型原子炉において、炉心特性の計算精度をさらに向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施例を以下に図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
(BWRプラントの概略)
沸騰水型原子炉(BWR)プラントに適用される本発明の好適な一実施例である実施例1の炉心性能計算装置を、図1〜図8を用いて以下に説明する。
【0020】
図2に示すように、BWRプラント制御系において、炉心性能計算装置30はデータ処理計算機31及び記憶装置33などと信号伝送線36を介してネットワークを構成しており、それらとの間で情報の交換を行っている。データの入出力及び制御プログラムの入力等を実施するプロセス入出力装置32がデータ処理計算機31に接続される。信号伝送線36は、BWRプラントの中央運転制御室内の中央制御盤37に設けられた表示装置(CRT)38及び表示計器39に接続され、さらに、プリンタ35及びオペレータコンソール34に接続される。図2において、データ処理計算機31は圧力計測値に基づいて炉心流量を算出し、中性子束計測値に基づいて原子炉出力を算出する。算出された炉心流量及び原子炉出力は記憶装置33に記憶される。炉心性能計算装置30は、記憶装置33に記憶された炉心流量等の運転状態データを用いて核定数を算出し、炉心性能計算を実行する。炉心性能計算装置30で得られた計算結果、及びデータ処理計算機31で算出された情報は、表示装置38、表示計器39及びプリンタ35に出力されて表示され及びプリントされる。
【0021】
次にBWRプラントの概略構成を説明する。図3に示すように、BWRプラントの原子炉1は内部に燃料集合体を装荷した炉心3を有する原子炉圧力容器(以下、RPVという)2を備えている。インターナルポンプ22がRPV2の底部に設置される。インターナルポンプ22のインペラ23は、RPV2と炉心3の間に形成される環状流路であるダウンカマー25内に配置される。インペラ23の上流側と下流側の差圧を計測する差圧計24がRPV2に設置される。炉心3内に挿入される複数の制御棒20が、RPV2内に配置される。制御棒20は、RPV2の底部に設置された制御棒駆動機構21に連結される。制御棒駆動機構21は、制御棒20を炉心3から引き抜く操作、及び制御棒20を炉心3に挿入する操作を実行する。さらに、固定式の複数の中性子検出器(局所出力レンジモニタ)29が炉心3内に配置されている。
【0022】
原子炉の運転中、炉心3に供給された冷却水は燃料集合体内に流入し、燃料棒相互間に形成された冷却水流路を上昇する。冷却水は冷却水流路を上昇する間に、燃料棒内の核燃料物質の核分裂によって生じる熱によって加熱され一部が蒸気になる。この蒸気は、RPV2内で炉心3の上方に配置された気水分離器(図示せず)及び蒸気乾燥器(図示せず)によって水分が除去され、主蒸気配管26によってRPV2からタービン(図示せず)に供給される。タービンから排出された蒸気は復水器(図示せず)で水に凝縮され、給水として給水配管27を通ってRPV2に供給される。気水分離器で分離された冷却水は、RPV2内に供給される給水と混合され、ダウンカマー25内を下降し、インターナルポンプ22により昇圧されて再び炉心3に供給される。
【0023】
差圧計24で計測されたインペラ23の上流側と下流側の圧力計測値、及び移動式の中性子検出器(TIP)で計測された中性子束計測値及び制御棒駆動機構21から出力された制御棒位置情報は、プロセス入出力装置32を介してデータ処理計算機31に入力される。
【0024】
図4において、燃料集合体4は複数の燃料棒5、上部タイプレート6、下部タイプレート7、複数の燃料スペーサ8、複数のSSR9及びチャンネルボックス19を有する。
【0025】
核燃料物質を内部に充填した各燃料棒5は、下端部が下部タイプレート7に保持され、上端部が上部タイプレート6に保持される。2本のSSR9も、同じく下端部が下部タイプレート7に保持され、上端部が上部タイプレート6に保持される。複数の燃料スペーサ8は、燃料集合体4の軸方向に所定の間隔を置いて配置され、燃料棒5の相互間及び燃料棒5とSSR9の間に冷却水流路を形成するように、燃料棒5及びSSR9を保持している。燃料スペーサ8によって束ねられた燃料棒5の束は、上部タイプレート6に取り付けられたチャンネルボックス19によって取り囲まれている。
【0026】
図5に示す燃料集合体4の横断面図において、複数の燃料棒5は正方格子状に9行9列に配置される。10はSSR9の上昇管であり14は冷却材上昇通路である。11は下降管であり15は冷却材下降通路である。
(SSRの動作)
図6の模式図において、SSR9は逆U字状をした管であり上昇管10及び下降管11を有する。上昇管10内には冷却材上昇通路14が形成され、下降管11内には冷却材下降通路15が形成される。冷却材上昇通路14と冷却材下降通路15は、SSR9の上端部で連絡されている。上昇管10の下端に形成される入口開口12は、下部タイプレート7内の、燃料保持部28より下方の領域に連絡される。下降管11の下端は、燃料保持部28より上方でSSR9の上端よりも下方に位置しており、好ましくは、燃料保持部28の上面付近に位置させるとよい。出口開口13が下降管11の下端に形成される。2本のSSR9は図4に示すように燃料集合体4の中央部に隣接して配置される。各SSR9の上昇管10の横断面積は、4本の燃料棒5が配置可能な領域を占有している。下降管11の横断面積は上昇管10の横断面積よりも小さくなっている。燃料棒5下部は燃料保持部28上に保持されている。
【0027】
次にSSR9内の冷却水について詳細に説明する。燃料集合体の下部タイプレート7内に流入した一部の冷却水は、入口開口12を通って冷却材上昇通路14内に流入する。冷却材上昇通路14内の冷却水は、SSR9の周囲に保持された各燃料棒からの中性子及びγ線の照射によって加熱され、一部が蒸発する。この蒸気は、冷却材上昇通路14内を上昇し、冷却材下降通路15を通って出口開口13から放出されて燃料棒相互間の冷却水流路を上昇する。
【0028】
炉心流量が最大炉心流量よりも少なく、かつ原子炉出力が定格出力付近の状態では、冷却材上昇通路14内への冷却水の供給流量と冷却材上昇通路14内での蒸気の発生量がバランスし、冷却材上昇通路14内に液面16が形成される。Zは冷却材上昇通路下部から液面16までの冷却材の水位を示すSSR内水位である。液面16より下方は水領域17であり液面16より上方は蒸気領域18である。次にインターナルポンプ22により炉心流量を増加させると、冷却材上昇通路14内の液面16は上昇し、炉心流量が最大炉心流量に達したとき、冷却材上昇通路14及び冷却材下降通路15内は全て水領域17になる。
【0029】
SSR9内の冷却材上昇通路14内に液面16が形成されたとき、SSR9内の圧力損失ΔPSSRは(1)式で算出できる。
【0030】
ΔPSSR=ΔPIN+ΔP+ΔPOUT ……(1)
ここで、ΔPINはSSR9の入口開口12での局所圧力損失、ΔPはSSR9内の冷却水の静水頭、ΔPOUTはSSR9の出口開口13での局所圧力損失である。
【0031】
SSR9内に液面16が形成されたとき、SSR9に流入する冷却水とSSR9から流出する蒸気(または蒸気及び冷却水)の流速は小さく、ΔPIN及びΔPOUTはΔPと比較して無視できるほど小さくなる。
【0032】
一方、下部タイプレート7の燃料保持部28には下方領域から上方領域に冷却水を供給する多数の開口7aが形成され、冷却水の流れに対して抵抗体となっている。原子炉1を運転すると、下部タイプレート7内に流入した冷却水の大部分は開口7aを通って燃料棒5相互間に形成された冷却水通路内に導入される。開口7aにおける下部タイプレート圧力損失をΔPLTPとしたとき、過渡変化時を除いた原子炉1の通常運転時においては、SSR9の圧力損失ΔPSSRとΔPLTPは釣り合っている。また、上述したようにΔPINとΔPOUTはΔPと比較して小さいので省略でき、近似的に(2)式が成立する。
【0033】
ΔPLTP=ΔP ……(2)
ここで、下部タイプレート7に供給する冷却水の流量、すなわち、炉心流量を変化させると、前述した燃料保持部28より上流と下流領域との間の差圧であるΔPLTPが変化する。ΔPLTPは炉心流量のほぼ2乗に比例するので、例えば、炉心流量を定格流量の80%から120%に変化させると、下部タイプレート圧力損失ΔPLTPは80%流量時の約2.3倍になる。SSR9内の静水頭ΔPも同様に約2.3倍になり、SSR9内の液面16が大きく上昇する。
【0034】
SSR9内の液面16が上昇した場合には、冷却材上昇通路14内の蒸気領域18の一部が水領域17になる。新たに水領域17になった領域では、中性子減速機能を有する冷却水の減速材密度が増加するので熱中性子が多くなり炉心反応度が増加する。逆に、SSR9内の液面16が下降した場合には、冷却材上昇通路14内の水領域17の一部が蒸気領域18になる。新たに蒸気領域18になった領域では、減速材密度の減少によって熱中性子が少なくなり炉心反応度が減少する。
【0035】
以上に述べたように、制御棒反応度制御に比べ、SSRによる反応度制御は無駄に吸収させる中性子が少ないため、燃料経済性の観点で利点がある。その一方で、SSRを用いて原子炉の運転管理を行うためには、SSR内の減速材密度を考慮して炉心管理を実施する必要がある。あるいは、流路断面積に対する気相の体積割合で、蒸気単相のとき1、水単相のとき0となる指標であるボイド率を用いて、SSR内のボイド率を考慮して炉心管理を実施する必要がある。
(炉心性能計算方法)
図1のフローチャートを用いて、炉心性能計算装置30で実行される炉心性能計算方法の詳細を以下に説明する。図1に示すステップ51〜63の処理が炉心性能計算装置30において行われる。
【0036】
実施例1では、まず、核定数計算を行う対象の炉心全体を、燃料集合体の境界に沿って燃料有効長を対象に軸方向において例えば約15cm立方の複数のノードに分割する。各ノード内は均質とみなし、核定数を計算する。次に中性子拡散計算によって炉心3内の中性子分布及び中性子実効増倍率を求める。これに基づき、さらに炉心3内の熱出力分布及び反応度等の炉心特性を算出する。
【0037】
沸騰水型原子炉では、炉心3の出力分布によって減速材密度の分布(ボイド率分布)が変化するので、炉心性能計算装置30は、中性子拡散計算処理と熱水力計算処理を反復して行う核熱水力結合計算によって、互いに整合性が取れた出力分布及びボイド率分布を求める。
(初期設定:ステップ51、52)
ステップ51で炉心性能計算装置30に運転状態データが入力される。次いでステップ52で運転状態データを基に炉心3の軸方向出力分布等の初期設定を行う。運転状態データは、燃焼度、SSR9の外側で燃料集合体4内の減速材密度、SSR9内の減速材密度、制御棒挿入状態の情報及び炉心流量、炉心入口温度などを含んでいる。制御棒挿入状態の情報(制御棒位置情報)及び炉心流量はデータ処理計算機31で求められた情報である。
【0038】
燃焼度は、単位ウラン重量あたりの累積出力を示す指標で、炉心性能計算装置30で計算したノードの出力を時間積分することで得られる。燃焼度は、前の運転サイクル終了時点で炉心性能計算装置30が計算して記憶装置33に記憶した値を引き継ぎ、現在の運転サイクル中に更新していく。
【0039】
SSR9の外側で燃料集合体4内の減速材密度は、熱水力計算においてSSR9の外側の燃料集合体4内ノードのボイド率を求めた後、運転圧力における水と蒸気の密度を使って計算する。ノードの燃焼平均減速材密度は、炉心にはじめて装荷されてから現在に至るまでに、燃料集合体4内ノードに生じた減速材密度(SSR9の外側とSSR9内の減速材密度を各流路面積で重み付けして平均化したもの)の時間平均値である。燃焼平均減速材密度も炉心性能計算装置30で計算し、記憶装置33に記憶した値を引き継ぎ、現在の運転サイクル中に更新していく。
(熱水力計算処理:ステップ53〜55)
次にステップ53で、燃料集合体4チャンネル毎の冷却水流量配分計算が行われ、ステップ54で燃料集合体4内のボイド率分布計算を行い、ステップ55でSSR内の水位計算を含む熱水力計算処理が実行される。
【0040】
ステップ53の流量配分計算では、データ処理計算機31で求められた全炉心流量、及び炉心3内の燃料集合体4の出力分布情報を用いて、各燃料集合体4の圧力損失が等しくなるように燃料集合体4毎に、供給される冷却水流量を求める。燃料集合体4の圧力損失の計算は以下のように行う。各燃料集合体の冷却水流量配分を仮定し、ステップ52で設定した出力分布や炉心入口温度を用いてノード毎の発生蒸気量を計算し、蒸気流量率(水と蒸気をあわせた全質量流量に対する蒸気質量流量の割合)の軸方向分布を計算する。ノードの圧力損失は、冷却水流量と蒸気流量率から算出でき、各ノードの圧力損失を軸方向に積分することで燃料集合体毎の全圧力損失が計算できる。最初に仮定した冷却水流量配分では各燃料集合体の全圧力損失は集合体毎に異なる値をとるが、これが一致するように各燃料集合体の冷却水流量配分を再調整し、圧力損失計算を繰り返す。最終的に全各燃料集合体の全圧力損失が一致したときに、流量配分計算53が終了する。
【0041】
ステップ54のボイド率分布計算では、SSR9の外側で燃料集合体4内のボイド率分布計算を行う。ステップ52で設定された出力分布や冷却水の炉心入口での温度(炉心入口温度)とステップ53で計算した各燃料集合体の冷却水流量を用いてノードの蒸気流量率を計算する。蒸気重量率と蒸気体積率であるボイド率の関係を予め実験等で求めておき、蒸気重量率の軸方向分布からボイド率α(減速材密度ρ)の軸方向分布を計算する。
【0042】
ステップ55のSSR9内の水位計算では、式(1)を用いてSSR内の水位Zを計算する。まず、ステップ53で得られた下部タイプレート7に供給される冷却水の流量Wから、下部タイプレート圧力損失ΔPLTPを算出する。
【0043】
ΔPLTP=KLTP・W/(ρ) ……(6)
ここで、KLTP・は下部タイプレート圧力損失係数、Aは下部タイプレート部の流路面積である。式(6)を式(1)に代入することにより、SSR内の水位Zを下部タイプレート7に供給される冷却水の流量Wから求める以下の式(7)が得られる。下部タイプレート圧力損失係数KLTPおよび下部タイプレート部の流路面積Aは予め実験などにより求め記憶装置33に記憶しておく。
Z=(KLTP・W)/((ρgA) ……(7)
水密度ρが一定の条件では、SSR内の水位Zが下部タイプレート7に供給される冷却水の流量Wの二乗に比例することから、式(7)を修正して以下の式(8)を用いることもできる。
Z=β(ρ)・W ……(8)
ここで、β(ρ)は水密度ρのときのSSR内の水位Zと下部タイプレート7に供給される冷却水の流量Wの間の相関係数である。β(ρ)は予め実験等で求め、水密度ρに対するテーブルとして記憶装置33に記憶しておく。
【0044】
式(7)あるいは式(8)によりSSR内の水位Zを求めた後、SSR内の水位と、軸方向各ノードの位置関係を求め、各ノードのSSR内のボイド率αを求める。まず、ノードの上端がSSR内の水位Zよりも上部にあり、かつ、ノードの下端がSSR内の水位Zよりも下部にあるノード(以下、水位のあるノードと呼ぶ)を決定する。各ノードの上端および下端位置は、ノード分割時に求めて記憶装置33に記憶しておく。水位のあるノードよりも下部にあるノードでは、SSR内は全て水になっているためボイド率αは0%とする。また、水位のあるノードよりも上部にあるノードでは、SSR内は全て水蒸気になっているためボイド率αは100%とする。SSR水位のあるノードのボイド率αについては、水位とノードの上端位置Uおよび下端位置Lを用いて、以下の式(9)により平均して求める。
【0045】
α=(U−Z)/(U−L)×100 ……(9)
ステップ54および55において、各ノードのSSR9の外側で燃料集合体4内のボイド率αおよびSSR9内のボイド率αをそれぞれ求めた後、以下の式(10)および式(11)を用いて、SSR9の外側で燃料集合体4内の減速材密度ρおよびSSR9内の減速材密度ρを算出する。
【0046】
ρ=αρ+(1-α)ρ ……(10)
ρ=αρ+(1-α)ρ ……(11)
ここでρは蒸気密度、ρは水密度である。
(核定数計算:ステップ56)
次に、中性子拡散計算処理における核計算と上記の熱水力計算を結合するため、各ノードにおける核定数が求められる。すなわち、ステップ56の核定数算出処理において、各ノードのSSR9の外側で燃料集合体4内の減速材密度ρおよびSSR9内の減速材密度
ρ、および制御棒挿入状態などに基づいて、ノード平均の核定数を求める。
【0047】
本実施例で用いるノード平均の核定数としては、拡散係数、マクロ吸収断面積、マクロ散乱断面積及びマクロ核分裂断面積などがある。これらの核定数は、燃焼度、減速材密度ρ及びρ、制御棒挿入状態情報及び炉心流量などを用いて、燃料集合体単体に対する集合体計算により、幾つかの代表的な状態での値を予め算出しておく。減速材密度ρ及びρとしては(4)式及び(5)式によって算出された各値が用いられる。
【0048】
算出された各核定数は、算出に用いられた燃焼度、減速材密度ρ及びρ、制御棒挿入状態及び炉心流量など(以下第2状態量という)と関連付けられて、それぞれ核定数テーブル情報として記憶装置33に記憶されている。
【0049】
ステップ56においては、中性子拡散計算の対象である1つの燃料集合体4に対して算出された燃焼度、減速材密度ρ及びρ、制御棒挿入状態及び炉心流量など(以下第1状態量という)を用いて、記憶装置33から各ノードでの平均核定数を検索する。もし、第1状態量の各値とマッチングする第2状態量が記憶装置33に存在しない場合には、第1状態量の各値に最も近い第2状態量及び対応する各核定数を記憶装置33から検索し、第1状態量の各値を用いて、検索された第2状態量及び各核定数を内挿(または外挿)することによって、ノードに対する各平均核定数を求める。他の燃料集合体に対しても、同様にして各平均核定数がそれぞれ求められる。
(中性子拡散計算:ステップ57、58)
次にステップ56で求めた核定数を用いて、ステップ57で中性子拡散計算が行われ、炉心の軸方向出力分布及び反応度等の炉心特性(炉心特性に関する情報)が算出される。そして、ステップ58で、前ステップで求められた軸方向出力分布をステップ52で初期設定した軸方向出力分布と比較し、その差が許容範囲内にあるか否かの収束判定を行う。
【0050】
収束判定の差が許容範囲よりも大きい場合には、ステップ58の判定は「No」となり、出力分布を調整してステップ53〜58の各処理が再度実行される。すなわち、熱水力計算処理(ステップ53,54及び55)、核定数算出処理(ステップ56)及び中性子拡散計算処理(ステップ57)が、ステップ58の判定が「Yes」になるまで繰り返し実行される。この繰り返し計算におけるボイド率分布計算(ステップ54)では、ステップ57で得られた軸方向出力分布を用いてボイド率分布を計算する。また、繰り返し計算を行った場合におけるステップ58の収束判定では、前回のステップ57の計算で得られた軸方向出力分布と今回のステップ57の計算で得られた軸方向出力分布との差を比較する。なお、ステップ57で求める軸方向出力分布等は、中性子拡散計算の替りに中性子輸送計算を用いて算出してもよい。
(軸方向出力分布:ステップ59、60)
ステップ58の判定が「Yes」、すなわち前述の差が許容範囲内であるとき、ステップ59の比較処理が実行される。
【0051】
図7に示すようにステップ59の処理は、炉心3内に挿入される移動式の中性子束検出器(TIP)40で計測された炉心3の軸方向中性子束分布により得られた炉心3の軸方向出力分布を用いる。BWRでは、TIP40は常時炉心3内の中性子束分布を計測している訳ではなく、運転員がオペレータコンソール34から入力した挿入指令に基づいて炉心3に挿入され、炉心3の軸方向の中性子束分布を計測する。TIP40は、炉心3の中性子束分布を計測する以外の期間では、原子炉1の外に引き抜かれている。TIP40から出力された炉心3の軸方向における多数の位置での各中性子束計測値は、プロセス入出力装置32を介してデータ処理計算機31に入力される。データ処理計算機31は、それらの中性子束計測値に基づいて、炉心3の軸方向の出力分布を求める。データ処理計算機31で求められた炉心3の軸方向の出力分布(以下、TIP計測値と呼ぶ)が、性能計算装置30に入力される。この入力されたTIP計測値と、核熱水力結合計算により求められた軸方向の出力分布を比較し、差分を算出する。
【0052】
ステップ60では、ステップ59で算出した、TIP計測値と核熱水力結合計算により求められた軸方向の出力分布との差分が許容範囲内であるかを判定する。前記差分が許容範囲外である場合、SSR内の水位補正(ステップ61)を実施する。
【0053】
炉心性能計算においては、TIP計測値と核熱水力結合計算により評価した出力分布に違いがあるときに、TIP計測値に核熱水力結合計算を合わせるような補正を実施して評価精度を向上する。ここで、TIP40は図7(a)で示すように、4体の燃料集合体に囲まれるように配置されるため、TIP計測値は、TIP40を取り囲む4体の燃料集合体の平均の出力分布となる。もし、TIP40を取り囲む4体の燃料集合体のうち、いずれか一体でも、ステップ55において算出したSSR内の水位と実際のSSR内水位に差があった場合には、この水位の差を原因として、TIP計測値と核熱水力結合計算により評価した出力分布に差が生じる。従って、精度良く出力分布の補正を実施するためには、SSR内の水位の差が生じた燃料集合体を特定して、SSR内水位を補正する必要がある。
(SSR内水位補正:ステップ61)
本発明では、SSR内の水位が燃料集合体に供給される冷却水流量によって異なり、燃料集合体に供給される冷却水流量は燃料集合体の出力によって異なる点に着目した。すなわち、冷却水の各燃料集合体への流量配分において、燃料集合体の出力が高く、その燃料集合体内での蒸気流量率が高くなると、圧力損失が増加するため、その燃料集合体への冷却水流量が相対的に減少する。従って、出力の高い燃料集合体のSSR内水位は相対的に低くなる。通常、一部の燃料集合体の出力のみが極端に高くなったりしないように、出力が相対的に高い燃料同士、あるいは出力が相対的に低い燃料同士が縦横に隣接しないように炉心の燃料装荷パターンを設定する。従って、通常の炉心では、互いに出力の異なる燃料が隣接することが多い。
【0054】
図7(b)は、図7(a)に示すTIP29を取り囲む4体の燃料集合体A,B,C,DのSSR内水位を模式的に示したものである。それぞれの燃料集合体の出力は、B>D>A>Cであり、SSR内水位はC>A>D>Bとなっている。図7(c)は、燃料集合体AおよびCにおいて、図7(b)の実線で示す実際のSSR水位と、点線で示す核熱水力結合計算でのSSR内水位のように差があった場合の、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力分布の差を示している。
【0055】
実際のSSR内水位よりも上部にあり、核熱水力結合計算においては算出したSSR内水位よりも下部になっているノード、すなわち、図7(b)の燃料集合体AおよびCにおいて実線と点線で囲まれた領域を含むノードでは、TIP計測値よりも核熱水力結合計算による出力が局所的に高くなることが分かった。また、燃料集合体AおよびCのSSR内水位の違いにより、それぞれの実際のSSR内水位との差に起因する、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力の差が、軸方向位置の違いとして識別できることが分かった。従って、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力の差が生じる軸方向位置から、実際のSSR内水位と核熱水力結合計算でのSSR内水位に差が生じているのが、燃料集合体AおよびCであることが特定できる。
【0056】
なお、図7(b)および図7(c)では、燃料集合体AおよびCにおいて、実際のSSR内水位よりも核熱水力結合計算におけるSSR内水位が高い場合の例を示したが、実際のSSR内水位よりも核熱水力結合計算におけるSSR内水位が低い場合は、TIP計測値よりも核熱水力結合計算による出力が局所的に低くなるので、同様に実際のSSR水位と核熱水力結合計算でのSSR内水位に差が生じている燃料集合体を特定できる。
【0057】
ステップ61において、以上の原理を用いてSSR内の水位を補正する手順を図8のフローチャートを用いて詳細に説明する。まず、ステップ61aでTIP計測値と核熱水力結合計算による出力の差が局所的に大きいノードYを同定する。ここで、出力の差が局所的に大きいノードとは、例えば、核熱水力結合計算における1ノードの軸方向高さを基準として、出力が1%以上異なる軸方向領域において1〜2のノードで、そのノードの上、および下のノードでは出力の差が1%未満であるようなノードである。
【0058】
次にステップ61bで、TIP29を取り囲む4体の燃料集合体のうち、ステップ55で求めたSSR内水位Zが、ステップ61aで同定したノードYに近い燃料集合体を選択する。具体的には、TIP計測値におけるノードYの出力よりも、核熱水力結合計算によるノードYの出力が大きい場合は、例えば、SSR内水位Zが、ノードYの上端よりも上にあり、かつノードYの上端に最も近い燃料集合体を選択する。逆に、TIP計測値におけるノードYの出力よりも、核熱水力結合計算によるノードYの出力が小さい場合は、例えばSSR内水位Zが、ノードYの下端よりも下にあり、かつノードYの下端に最も近い燃料集合体を選択する。
【0059】
次にステップ61cで、選択した燃料集合体のSSR内水位Zを補正する。具体的には、TIP計測値におけるノードYの出力よりも、核熱水力結合計算によるノードYの出力が大きい場合は、選択した燃料集合体のSSR内水位Zが低くなるように、式(7)の下部タイプレート圧力損失係数KLTPあるいは、式(8)の相関係数β(ρ)をΔKあるいはΔβだけ小さくする。逆に、TIP計測値におけるノードYの出力よりも、核熱水力結合計算によるノードYの出力が小さい場合は、選択した燃料集合体のSSR内水位Zが高くなるように、式(7)の下部タイプレート圧力損失係数KLTPあるいは、式(8)の相関係数β(ρ)をΔKあるいはΔβだけ大きくする。なお、ΔKあるいはΔβは、例えば同じ冷却水流量に対するSSR内水位がノードの高さの1/2だけ変化するような値を予め求めておき、記憶装置33に記憶しておく。補正した下部タイプレート圧力損失係数KLTP’あるいは相関係数β(ρ)’は記憶装置33に記憶しておく。
【0060】
ステップ61dでは、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力の差が局所的に大きくなるノード、すなわち、実際のSSRの水位と核熱水力結合計算におけるSSR内水位との差に起因してTIP計測値と核熱水力結合計算による出力の差が生じていると見なせるノードを、TIP計測値が得られている全燃料集合体について同定し、その出力差の原因となっている燃料集合体のSSR内水位を補正したか判定する。
【0061】
ステップ61dにおいて「Yes」となった時点で、ステップ55に戻る。ステップ55では、ステップ61で補正した下部タイプレート圧力損失係数KLTP’あるいは相関係数β(ρ)’を用いてSSR内水位を求める。そして、補正前と同様に、出力分布が収束するまで、核熱水力結合計算を繰り返す。ステップ58の収束判定で「Yes」となると、再び、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力分布を比較して差分を求め(ステップ59)、その差分が許容範囲内であるかを判定する(ステップ60)。
【0062】
前記差分が許容範囲外である場合、再び、SSR内の水位補正(ステップ61)を実施する。ただし、下部タイプレート圧力損失係数KLTPあるいは相関係数β(ρ)の補正量ΔK’あるいはΔβ’は、前回の補正量ΔKあるいはΔβよりも小さくし、例えばそれぞれ前回の補正量ΔKあるいはΔβに0.8をかけた値とする。SSR内の水位補正を行った後、再び核熱水力結合計算を行う。この繰り返し計算を、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力分布の差が許容範囲内となり、ステップ60において「Yes」となるまで繰り返し実行する。
(炉心の安全性評価:ステップ62,63)
ステップ60において「Yes」となると、ステップ62で炉心の安全性評価を実施する。ステップ62では、算出された上記の炉心特性を対象に、炉心3の安全性を示す指標(例えば、最小限界出力比及び最大線出力密度等)を算出する。ステップ62における最小限界出力比等の計算は、運転員がオペレータコンソール34から炉心性能計算装置1に計算指令を入力することによっても行われる。ステップ62の処理が終了した後、ステップ63で炉心の出力分布及び反応度等の炉心特性の情報、及び算出された炉心の安全性を示す各指標が炉心性能計算装置30から表示装置38及び表示計器39に出力される。各炉心特性の情報は表示装置38等に表示される。SSR9内の水位も、同様に、表示装置38等に出力される。また、各炉心特性の情報、SSR9内の水位、および炉心の安全性を示す各指標は記憶装置33に記憶される。運転員は、表示された出力分布及び反応度等の炉心特性を考慮して、炉心3内への制御棒20の挿入・引抜位置の設定等の、原子炉の運転計画を立案する。
【0063】
ところで、前述したステップ61のステップ61aにおいて、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力分布の差の大きいノードの同定を行う際、局所的に差が大きいことを実際のSSR内水位と核熱水力結合計算におけるSSR内水位との間に差が生じていると判断する条件とした。しかしながら、例えば、予期せぬ要因により万が一SSRの上昇管と下降管の連絡部から水蒸気が流れ出た場合には、SSR内は全て水となり、核熱水力結合計算におけるSSR内水位よりも上にあるノード全てについて、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力との間に差が生じることになる。
【0064】
従って、ステップ61aにおいて、例えば、核熱水力結合計算におけるSSR内水位よりも上にあるノード全てについて、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力との間に1%以上の差がある場合には、その燃料集合体のSSR内に水位が形成されなくなったと判断し、その情報を表示装置38あるいは表示計器39に表示させることもできる。これによって、運転員は、その燃料集合体のSSR内に水位が形成されなくなったことを考慮しながら、炉心3内への制御棒20の挿入・引抜位置の設定等の、原子炉の運転計画を立案することができ、運転管理の利便性が向上する。
【実施例2】
【0065】
実施例1では、燃料集合体の出力変化に応じ燃料集合体へ供給される冷却水流量が変化しSSR内水位が変わるため、TIP計測値と核熱水力結合計算の出力分布が局所的に異なる軸方向位置から、実際のSSR内水位と熱水力結合計算でのSSR内水位との間に差が生じている燃料集合体を特定する方法を示した。
【0066】
実施例2では、燃料集合体間でSSR内水位がほぼ同じ場合でも、実際のSSR内水位と熱水力結合計算でのSSR内水位との間に差が生じている燃料集合体を特定する方法を示す。
【0067】
図9(a)は、SSR内が水蒸気から水に変わった場合の反応度変化の燃焼度依存性を示したものである。図9(a)で示す、燃料集合体Aと燃料集合体Bは、炉内滞在運転サイクル数が異なるため燃焼度が異なり、このため、SSR内が水蒸気から水に変わった場合の反応度変化も異なる。燃焼度はA<Bであり、反応度変化もA<Bである。図9(b)は、図9(a)で示す燃料集合体AおよびBのそれぞれで、実際の水位よりも核熱水力結合計算におけるSSR内水位の方が高かった場合の、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力の違いを示している。図9(b)に示すように、SSR内が水蒸気から水に変わった場合の反応度変化が小さい燃料集合体Aの方が、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力の違いも小さいことが分かった。
【0068】
以上の原理に基づいて、SSR内の水位を補正する手順を説明する。まず、一回目の核熱水力結合計算は、第一の実施例と同様に図1に示す手順51〜58で実施する。そして、ステップ59でTIP計測値と核熱水力結合計算による出力の差を求め、ステップ60でその差が許容範囲か調べる。もしステップ60で「No」となった場合、本実施例では、図1のステップ61の代わりに、図10に示すステップ161を実施する。
(ボイド率補正:ステップ161)
図10において、ステップ161aでは、ステップ61aと同様に、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力の差が局所的に大きいノードYを同定する。
【0069】
次に、ステップ161bでは、ステップ61bと同様に、SSR内水位がステップ161aで同定したノードYに近い燃料集合体を選択する。ステップ61bと異なるのは、SSR内水位ZがノードYに近い燃料集合体を複数選択する点である。具体的には、TIP計測値におけるノードYの出力よりも、核熱水力結合計算によるノードYの出力が大きい場合は、例えば、SSR内水位Zが、ノードYの上端よりも上にあり、かつノードYの上端に最も近いものから二つ燃料集合体を選択する。逆に、TIP計測値におけるノードYの出力よりも、核熱水力結合計算によるノードYの出力が小さい場合は、例えばSSR内水位Zが、ノードYの下端よりも下にあり、かつノードYの下端に最も近いものから二つ燃料集合体を選択する。
【0070】
ステップ161cでは、ステップ161bで選択した二つの燃料集合体(燃料集合体Aおよび燃料集合体Bとする)それぞれについて、ステップ61cと同様に、式(7)の下部タイプレート圧力損失係数KLTPあるいは、式(8)の相関係数β(ρ)をΔKあるいはΔβだけ大きく、あるいは小さくする。
【0071】
燃料集合体Aの下部タイプレート圧力損失係数KLTPあるいは相関係数β(ρ)を補正したものを補正パターンAとする。また燃料集合体Bの下部タイプレート圧力損失係数KLTPあるいは相関係数β(ρ)を補正したものを補正パターンBとする。
【0072】
補正パターンAおよびBそれぞれについて、補正した下部タイプレート圧力損失係数KLTP’あるいは相関係数β(ρ)’を記憶装置33に記憶しておく。
(核熱水力計算:ステップ162)
ステップ161cの後、補正パターンAおよびBについて、それぞれ核熱水力結合計算53〜58を実施する(ステップ162)。それぞれの補正パターンでの核熱水力結合計算が収束した後、すなわち、ステップ58で「Yes」となったら、TIP計測値とそれぞれの補正パターンでの核熱水力結合計算による出力分布を比較する。
(補正パターン選択:ステップ163)
このとき、図9(a)に示すように、燃料集合体AおよびBの燃焼度が異なることで、SSR内が水蒸気から水に変わった場合の反応度変化が異なり、このため核熱水力結合計算による出力分布の形状も異なる場合は、実際のSSR内水位に近づくように補正したパターンの方が、TIP計測値との差が小さくなる。従って、TIP計測値との差が小さい方の補正パターンを選択する(ステップ163)。
【0073】
ステップ163で選択した補正パターンでの核熱水力結合計算による出力分布とTIP計測値を比較し(ステップ59)、その差が許容範囲内かチェックする(ステップ60)。ステップ60において「No」となった場合は、再びステップ161に戻ってSSR内水位の補正を実施し、パターン毎に核熱水力結合計算を繰り返す。このとき、第一の実施例と同様に、下部タイプレート圧力損失係数KLTPあるいは相関係数β(ρ)の補正量ΔK’あるいはΔβ’は、前回の補正量ΔKあるいはΔβよりも小さくし、例えばそれぞれ前回の補正量ΔKあるいはΔβに0.8をかけた値とする。ステップ60において「Yes」となった場合は、炉心の安全性評価(ステップ62)を実施し、以下第一の実施例と同様に表示装置38及び表示計器39へ炉心特性の情報などを出力する。
【0074】
実施例2では、補正パターン毎に核熱水力結合計算を実施するため、実施例1よりも計算時間が長くなるが、TIP29を取り囲む4体の燃料集合体でSSR内水位が同程度のものがあっても、実際のSSR内水位と核熱水力結合計算におけるSSR内水位に差がある燃料集合体を特定できるため、炉心特性の計算精度をより向上できる利点がある。
【0075】
なお、実施例2では、補正パターンとして2体の燃料集合体を選択した例を示したが、2体より多くすることも可能である。
(実施例1と2の組み合わせ)
また、実施例2と実施例1を組み合わせることも可能である。具体的には、ステップ161aで、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力の差が局所的に大きくなっているノードを複数同定し(例えばノードY1、Y2とする)、ステップ161bで同定されたそれぞれのノードにSSR内水位が近い燃料集合体を複数選択する。例えば、ノードY1にSSR内水位が近い燃料集合体がA、C、ノードY2にSSR内水位が近い燃料集合体がB、Dとする。このとき、ステップ161cにおける補正パターンは、
補正パターン(1):
ノードY1では燃料集合体Aを補正しノードY2では燃料集合体Bを補正
補正パターン(2):
ノードY1では燃料集合体Aを補正しノードY2では燃料集合体Dを補正
補正パターン(3):
ノードY1では燃料集合体Bを補正しノードY2では燃料集合体Cを補正
補正パターン(4):
ノードY1では燃料集合体Bを補正しノードY2では燃料集合体Dを補正
のように、4パターンとなる。ステップ162では、これら4パターンについてそれぞれ核熱水力結合計算を実施し、ステップ163で、それぞれの出力分布の中でもっともTIP計測値との差が小さい補正パターンを選択することで、本発明の目的を達成できる。
【0076】
また、上記の補正パターンの作成において、例えばノードY1では燃料集合体A、B、Cを選択し、ノードY2は燃料集合体Dのみにするなども可能である。
【実施例3】
【0077】
実施例1,2では、SSR内での水蒸気の発生量を少ないとして、SSR内水位の下はボイド率0%、水位の上はボイド率100%として計算した。しかし、実際には、水蒸気の発生により、SSR内では軸方向にボイド率分布が形成されるため、炉心特性の計算精度をさらに向上させるためには、SSR内のボイド率分布を考慮するのが望ましい。
(ボイド率テーブル情報)
以上を考慮して、本実施例では、ステップ55において、式(7)あるいは式(8)を用いてSSR内水位を算出し、SSR内水位から各ノードにおけるSSR内ボイド率を算出する代わりに、図11に示すような燃料集合体の冷却水流量に対応したSSR内ボイド率αのテーブル情報を用いる。
【0078】
図11(a)は燃料集合体の冷却水流量がWのとき、図11(b)は燃料集合体の冷却水流量がWよりも多いWのときのテーブル情報である。この場合、例えば図11(a)の41aで示されたノード番号以下の各ノードにおいては、SSR内は全て水になっており、図11(a)の42aで示されたノード番号以上の各ノードにおいては、SSR内は全て水蒸気になっていることを示す。また、ノード番号41aと42aの間の各ノードにおいては、SSR内は水と水蒸気が混ざった状態となっている。図11(b)についても同様である。また、燃料集合体の冷却水流量がWよりも多いWのとき、SSR内水位が高くなるため、41a<41bおよび42a<42bとなっている。
【0079】
このようなテーブル情報は、幾つかの代表的な燃料集合体の冷却水流量(以下、便宜的に、第2冷却水流量という)に対して、3次元詳細熱水力計算または実験で得られた情報を基に予め作成され、記憶装置33に記憶されている。本実施例におけるステップ55においては、ステップ53で計算された燃料集合体の冷却水流量を用いて(以下、便宜的に、第1冷却水流量という)を用いて、記憶装置33から、SSR内ボイド率αテーブル情報を検索する。もし、第1冷却水流量とマッチングする第2冷却水流量が記憶装置33に存在しない場合には、第1冷却水流量に近い第2冷却水流量及び対応するSSR内ボイド率αテーブル情報を記憶装置33から検索し、第1冷却水流量を用いて、検索された第2冷却水流量及びSSR内ボイド率αテーブル情報を内挿(または外挿)することによって、ノード毎のSSR内ボイド率αを求める。
【0080】
これらのテーブル情報を利用することにより、任意の軸方向位置でのSSR9内のボイド率αを燃料集合体の冷却水流量を基に求めることができる。
【0081】
ところで、例えば図11(a)に示すボイド率αテーブル情報では、ノード番号41aから42aまでボイド率αは線形に変化するように近似されている。しかしながら、その変化を、例えば2次関数状に変化するように近似してもよいし、ノード番号41aと42aの間で勾配が変化するように近似してもよい。また、必ずしも、燃料集合体入口の冷却水流量が小さいときにボイド率αが1.0に、その冷却水流量が非常に大きいときにボイド率αが0にならなくてもよい。
【0082】
なお、テーブル情報としては、SSR9内のボイド率αの替りに、(5)式で算出されたSSR9内の減速材密度ρを直接用いてもよい。具体的には、図11に示すテーブル情報を、ノード番号とSSR9内の減速材密度ρの関係に置き換える。SSR9内に存在する冷却水量情報の与え方として、SSR9内のボイド率αを用いるよりも、SSR9内の減速材密度ρを用いたほうが、原子炉圧力が変化した場合における誤差が小さくなる。
(ボイド率テーブル情報の補正)
実施例3における、SSR内水位の補正方法を以下に説明する。TIP計測値と核熱水力結合計算による出力の差が局所的に大きいノードYを同定する手順、および、SSR内水位が同定したノードYに近い燃料集合体を選択する手順は実施例1および実施例2と同じである。実施例1および実施例2では、下部タイプレート圧力損失係数KLTPあるいは相関係数β(ρ)を補正することによりSSR内水位を補正したが、実施例3ではSSR9内のボイド率αのテーブル情報を補正する点が異なっている。
【0083】
具体的には、TIP計測値におけるノードYの出力よりも、核熱水力結合計算によるノードYの出力が大きい場合は、例えば、SSR9内のボイド率αのテーブル情報を、図11(a)における41aおよび図11(b)における41bをノード番号の小さい方にΔZLだけずらすように補正する。逆に、TIP計測値におけるノードYの出力よりも、核熱水力結合計算によるノードYの出力が小さい場合は、例えば、SSR9内のボイド率αのテーブル情報を、図11(a)における41aおよび図11(b)における41bをノード番号の大きい方にΔZLだけずらすように補正する。
【0084】
テーブル情報の補正量ΔZLは、ある冷却水流量において例えばノードの軸方向高さの1/2とした場合は、他の冷却水流量において、SSR内の静水頭が冷却水流量の二乗に比例して変化する関係を保持するように、冷却水流量毎に予め計算などにより求めておき、記憶装置33に記憶させておく。また、図11(a)における41aおよび図11(b)における41bをΔZLだけ補正した場合の、図11(a)における42aおよび図11(b)における42bの補正量ΔZUも、予め計算などにより求めておき、冷却水流量毎に補正量ΔZLと1対1に対応させて記憶装置33に記憶させておく。
【0085】
SSR内水位を補正した後は、実施例1と同様に核熱水力結合計算を実施するか、実施例2と同様に補正パターン毎に核熱水力結合計算を実施し、TIP計測値との出力差が最も小さくなる補正パターンを選択する。そして、TIP計測値と核熱水力結合計算による出力の差が許容範囲か判定し、許容範囲外であれば再びSSR内水位を補正する。このとき、補正量ΔZLは前回よりも絶対値を小さくする。
【0086】
以上をTIP計測値と核熱水力結合計算による出力の差が許容範囲となるまで繰り返し、許容範囲となった場合は、ステップ62の炉心の安全性評価を実施し、以下実施例1および実施例2と同様に表示装置38及び表示計器39へ炉心特性の情報などを出力する。
【0087】
以上のように、SSR内のボイド率分布を考慮してSSR内ボイド率の算出にテーブル情報を用いた場合でも、実際のSSR内水位と核熱水力結合計算におけるSSR内水位に差がある燃料集合体を特定し、SSR内水位を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の好適な一実施例であるBWRプラントに適用される実施例1の炉心性能計算装置で実行される炉心性能計算の処理手順を示すフローチャートである。
【図2】図1の処理手順が実行される実施例1の炉心性能計算装置が組み込まれた運転制御システムの構成図である。
【図3】実施例1の炉心性能計算装置が適用されるBWRプラントの構成図である。
【図4】図3に示す炉心に装荷される、SSRを有する燃料集合体の縦断面図である。
【図5】図4に示す燃料集合体の横断面図である。
【図6】図4に示す燃料集合体に用いられるSSRの模式図である。
【図7】燃料集合体のSR内水位と軸方向出力分布の関係を示す説明図である。
【図8】本発明の実施例であるBWRプラントに適用される実施例1の炉心性能計算装置で実行される炉心性能計算の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】燃料集合体の燃焼度とSSR内が水蒸気から水に変化した場合の燃焼度変化、および軸方向出力分布の関係を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施例であるBWRプラントに適用される実施例2の炉心性能計算装置で実行される炉心性能計算の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】軸方向ノードに対するSSR内のボイド率のテーブル情報の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0089】
1…原子炉、3…炉心、4…燃料集合体、9…スペクトルシフトロッド(SSR)、30…炉心性能計算装置、31…データ処理計算機、32…プロセス入出力装置、33…大容量記憶装置、38…表示装置、40…中性子検出器(TIP)、Z…SSR水位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心に装荷された複数の燃料集合体と、前記燃料集合体に設けられるとともに炉心の冷却水流量に応じて内部水位が変化するスペクトルシフトロッドと、前記炉心内に軸方向移動可能に設けられた中性子検出器とを有する沸騰水型原子炉について、核熱水力結合計算により炉内出力分布を含む炉心特性を計算する沸騰水型原子炉の炉心性能計算方法において、
実際の炉心内の中性子束分布に基づき算出された炉心軸方向出力分布と前記核熱水力結合計算により求められた炉心軸方向出力分布を比較して、前記スペクトルシフトロッド内の実際の水位と炉心性能計算時に設定した水位に差が生じている燃料集合体を特定し、前記実際のスペクトルシフトロッド内の水位に合わせる様に、すでに設定したスペクトルシフトロッド内の水位を再計算し補正することを特徴とする沸騰水型原子炉における炉心性能計算方法。
【請求項2】
請求項1に記載された沸騰水型原子炉の炉心性能計算方法において、
前記核熱水力結合計算は、前記燃料集合体の各チャンネルごとに冷却水流量を配分し、燃料集合体内のボイド率分布計算とスペクトルシフトロッド内の水位計算に基づき炉心の核定数および中性子分布を計算し、炉内出力分布を含む炉心特性を計算するステップを有することを特徴とする沸騰水型原子炉における炉心性能計算方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された沸騰水型原子炉の炉心性能計算方法において、
前記冷却水流量の差によって生じる実際のスペクトルシフトロッド内の水位と炉心性能計算時に設定したスペクトルシフトロッド内の水位に差が生じている燃料集合体を特定し、前記実際のスペクトルシフトロッド内の水位に合わせる様に、すでに設定したスペクトルシフトロッド内の水位を再計算し補正することを特徴とする沸騰水型原子炉における炉心性能計算方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された沸騰水型原子炉の炉心性能計算方法において、
燃料集合体の核特性の差に起因するスペクトルシフトロッド内の水位変化に対する反応度の差に基づいて、実際のスペクトルシフトロッド内の水位と炉心性能計算時に設定したスペクトルシフトロッド内の水位に差が生じている燃料集合体を特定し、前記実際のスペクトルシフトロッド内の水位に合わせる様に、すでに設定したスペクトルシフトロッド内の水位を再計算し補正することを特徴とする沸騰水型原子炉における炉心性能計算方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載された沸騰水型原子炉の炉心性能計算方法において、
前記スペクトルシフトロッド内の水位再計算の際に、あらかじめ算出され保存された燃料集合体の冷却水流量に対応するスペクトルシフトロッド内のボイド率に関するテーブル情報を使用することを特徴とする沸騰水型原子炉における炉心性能計算方法。
【請求項6】
炉心に装荷された複数の燃料集合体と、前記燃料集合体に設けられるとともに炉心の冷却水流量に応じて内部水位が変化するスペクトルシフトロッドと、前記炉心内に軸方向移動可能に設けられた中性子検出器とを有し、核熱水力結合計算により炉内出力分布を含む炉心特性を計算する沸騰水型原子炉の炉心性能計算装置において、
実際の炉心内の中性子束分布に基づき炉心軸方向出力分布を算出する手段と、前記核熱水力結合計算により炉心軸方向出力分布を算出する手段と、前記両炉心軸方向出力分布を比較して、前記スペクトルシフトロッド内の実際の水位と炉心性能計算時に設定した水位に差が生じている燃料集合体を特定する比較手段と、前記実際のスペクトルシフトロッド内の水位に合わせる様に、すでに設定したスペクトルシフトロッド内の水位を再計算し補正する手段を有することを特徴とする沸騰水型原子炉における炉心性能計算装置。
【請求項7】
請求項6に記載された沸騰水型原子炉における炉心性能計算装置において、
再計算により求められたスペクトルシフトロッドの水位を表示する表示装置を有することを特徴とする沸騰水型原子炉における炉心性能計算装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載された沸騰水型原子炉における炉心性能計算装置を有する原子炉プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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