説明

沸騰用伝熱管及び沸騰用伝熱管の製造方法

【課題】転造加工性を確保しつつ耐海水性に優れた沸騰用伝熱管を提供する。
【解決手段】この沸騰用伝熱管1は、管内に熱源となる海水を流し、管外に浸漬された冷媒を沸騰させる沸騰用伝熱管であって、内部に海水が流れるチタン製又はステンレス製の内管10と、内管10の外周面に設けられ、内管10よりヤング率の小さい金属製の外管20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰用伝熱管及びその製造方法に関し、特に、海水を熱源とする蒸発器に利用される沸騰用伝熱管及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍機用冷媒蒸発器の高性能化及び小型化を実現するために、伝熱管外表面に突起や溝を施した沸騰用伝熱管が種々提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1には、図13に示されるように、管の外表面に管周方向に延在する空洞部201及び管軸方向に延在する空洞部202が配設され、その空洞部201及び202が、各々間隙部203及び204を介して外部と連通している核沸騰型伝熱管200が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、図14に示されるように、管本体301と、この管本体301の外周面下に設けられた管軸方向に交差して延びる空洞302と、この空洞302に沿って設けられ、当該空洞302の内部空間と外部とを連絡する複数の開口部303と、管本体301から外側に突出して設けられたフィン304とを有する沸騰用伝熱管300が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、図15に示されるように、隣接する第1のフィン401及び第2のフィン402と、管本体403とにより管周方向に延在する空洞404を形成し、第1のフィン401の先端部と第2のフィン402の先端部との間に管周方向に交互に配置される流入口405及び排出口406を形成し、流入口405から冷媒を流入させ、排出口406から沸騰した冷媒の気泡を排出する沸騰用伝熱管400が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭64−2878号公報
【特許文献2】特開平6−323778号公報
【特許文献3】特開2005−121238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1〜3のように、沸騰用伝熱管では、伝熱管外表面に突起や溝など複雑な加工を施すために、銅管やアルミ管などの転造加工性の良い材料が選定されている(特許文献2の段落0018及び表1参照)。一方で、管内に熱源となる海水を流す場合には、耐海水性に優れたチタン管が採用されることがある。ところが、チタン管は、弾性強度が大きく沸騰用伝熱管としての転造加工を施すのが難しい。また、加工が可能になったとしてもシームレス管かつ肉厚が大きくなり大幅なコストアップとなる。
【0008】
そこで、この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、転造加工性を確保しつつ耐海水性に優れた沸騰用伝熱管及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の沸騰用伝熱管は、管内に熱源となる海水を流し、管外に浸漬された冷媒を沸騰させる沸騰用伝熱管において、内部に海水が流れるチタン製又はステンレス製の内管と、内管の外周面に設けられ、内管よりヤング率の小さい金属製の外管とを有する。
【0010】
上記構成によれば、耐海水性に優れたチタン製またはステンレス製の内管を用いると共に、転造加工性に優れた外管を用いることにより、転造加工性を確保しつつ耐海水性に優れた沸騰用伝熱管を得ることができる。
【0011】
また、本発明の沸騰用伝熱管の製造方法は、管内に熱源となる海水を流し、管外に浸漬された冷媒を沸騰させる沸騰用伝熱管の製造方法において、内部に海水が流れるチタン製又はステンレス製の内管の外周面には、内管よりヤング率の小さい金属製の外管が設けられ、外管に突起部を形成する転造加工では、当該加工前の外管の肉厚(t)と、フィン高さ(h)との比率(h/t)を0.6以上1.0以下にする。
【0012】
このように構成すれば、耐海水性に優れたチタン製またはステンレス製の内管を用いると共に、転造加工性に優れた外管を用いることにより、転造加工性を確保しつつ耐海水性に優れた沸騰用伝熱管を得ることができる。
また、この製造方法では、外管と内管との密着性を良好にすることができる。
【0013】
また、上記製造方法において、好ましくは、内管と外管との2重構造を形成する抽伸工程では、絞り嵌め治具のダイスアプローチ角度が2°より大きく且つ50°より小さい。このように構成すれば、外管と内管との密着性をより良好にすることができる。
【0014】
また、上記製造方法において、好ましくは、内管を外管の内部に挿入する前に、外管を予熱しておく。
【0015】
また、上記製造方法において、好ましくは、内管と外管との間に接着層を設ける。これにより、内管と外管との密着性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明による沸騰用伝熱管及びその製造方法では、転造加工性を確保しつつ耐海水性に優れた沸騰用伝熱管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る沸騰用伝熱管の(a)断面拡大写真、(b)平面拡大写真である。
【図2】図1に示した沸騰用伝熱管の断面模式図である。
【図3】突起部の理想的な形状を示した断面模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る沸騰用伝熱管の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】絞り嵌め治具であるダイスの断面図である。
【図6】転造加工における(a)フィン加工工程、(b)フィン刻み工程、(c)フィン潰し工程における管外表面の断面拡大写真である。
【図7】転造加工における(a)フィン加工工程、(b)フィン刻み工程、(c)フィン潰し工程における管外表面の平面拡大写真である。
【図8】外管の肉厚(t)とフィン高さ(h)とを示した外管の模式図である。
【図9】密着性試験で用いた治具を示した断面模式図である。
【図10】内管への影響度評価基準を説明するための図である。
【図11】沸騰試験結果を示したグラフである。
【図12】沸騰試験での沸騰の様子を示した写真である。
【図13】特許文献1に開示された沸騰用伝熱管の外表面を示した拡大斜視図である。
【図14】特許文献2に開示された沸騰用伝熱管の外表面を示した拡大斜視図である。
【図15】特許文献3に開示された沸騰用伝熱管の外表面を示した(a)拡大斜視図、(b)拡大平面図、(c)拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明に係る沸騰用伝熱管及びその製造方法について説明する。
【0019】
沸騰用伝熱管1は、ターボ冷凍機やスクリュー冷凍機などの大型冷凍機の液冷媒中に浸漬された状態で当該液冷媒を加熱沸騰させるための伝熱管であって、管内に流れる海水を熱源とする。沸騰用伝熱管1では、図1に示すように、効率的に熱交換が行なわれるように、伝熱管外表面に複数の突起部21が形成されている。本実施形態の沸騰用伝熱管1は、図2に示すように、2重構造であって、チタン製またはステンレス製の内管10と、内管10よりヤング率の小さい金属製の外管20とを有している。
【0020】
内管10は、管内に海水を流すため、耐海水性に優れたチタン製またはステンレス製で構成されている。この内管10は、外径が約21mm(図2参照)である。
【0021】
外管20は、その外表面に突起部21を形成するために転造加工を施すので、転造加工性に優れた銅製、アルミニウム製などの内管10よりヤング率が小さい(100Gpa以下の)金属で構成されている。この外管20は、外径が約25mm(図2参照)である。本実施形態の外管20の外表面には、図1(b)に示すように、複数の突起部21が略格子状に配列されている。この突起部21は、理想的には、図3に示すように、根元から先端に向かって断面積が大きくなるように形成されている。また、突起部21の先端面22(フィンつぶし面)は、略正方形となっている。
【0022】
突起部21間に形成される溝部23は、核沸騰(発泡点を核にして気泡が発生していく沸騰)を形成する構造を有しており、微細な空洞である空洞部24と、その空洞部24と外部とを連通させる開口部25とから構成される。空洞部24に侵入した冷媒は、周囲の突起部21の壁面から熱が伝達されて沸騰する。この冷媒の沸騰により発生した気泡は、開口部25を介して離脱する。この溝部23(空洞部24及び開口部25)の形状は、理想的には、図3に示すように、下記式(1)を満たす。
θ>π/2−φ・・・(1)
ただし、θを「2φの角度をもつ扇形の接線と斜面24aとの角度」とする。
【0023】
次に、図4を参照して、本実施形態の沸騰用伝熱管1の製造方法について説明する。
【0024】
まず、内管10及び外管20を所定の長さに切断し(ステップS1)、外管20の内部に内管10を挿入する(ステップS2)。この際、内管10と外管20とはルーズ状態になっている。なお、本実施形態では、挿入工程(ステップS2)において、外管20を予熱(約200℃で、抽伸において焼き付きを生じない程度)しておいても良い。そして、口付け加工を行なう(ステップS3)。口付け加工は、内管10及び外管20の先端部を縮径し、後工程の合わせ抽伸工程の際、当該先端部をダイス(絞り嵌め治具)30のダイス孔31に挿入できるようにするために行うものである。次に、本実施形態では、合わせ抽伸を行なう(ステップS4)。この合わせ抽伸とは、ルーズ状態の外管20と内管10とを、ダイス30(図5参照)により絞り嵌めにして、密着構造に仕上げる工程である。なお、ダイス30のアプローチ角度αは、2°<α<50°が好ましい。なお、ダイス30のダイス孔31の内径Dは、内管10及び外管20からなる密着構造の2重管の外径に相当する大きさに設定する。その後、ストレッチャー矯正を行ない(ステップS5)、当該2重管を所定の長さに切断する(ステップS6)。
【0025】
そして、本実施形態では、外管20の外表面に転造加工(トップクロス加工)を行なう(ステップS7)。この転造加工工程では、外管20の外表面に、上記した突起部21及び溝部23を転造加工により形成するものであって、具体的には、(1)フィン加工工程、(2)フィン刻み工程、(3)フィン潰し工程を、この順番に行う。(1)フィン加工工程では、図6(a)及び7(a)に示すように、管周方向に沿うフィン21Aを外管20の外表面に形成する。(2)フィン刻み工程では、図6(b)及び図7(b)に示すように、上記した(1)フィン加工工程で形成されたフィン21Aを所定間隔で刻み、微細な凸部21Bを形成する。なお、この工程における刻み位置は、千鳥状に配置される。(3)フィン潰し工程では、図6(c)及び図7(c)に示すように、上記した(2)フィン刻み工程で形成された凸部21Bの先端を潰し、先端面(フィンつぶし面)22が略正方形の突起部21を形成する。本実施形態では、外管20の肉厚(t)と、フィン高さ(h)との比率(h/t)が、0.6〜1.0であることが好ましい。なお、上記した「外管の肉厚(t)」とは、図8に示すように、フィン加工前の素管20Aの肉厚であって、「フィン高さ(h)」とは、(1)フィン加工工程後(かつ、フィン刻み前)のフィン21Aの高さである。最後に、ストレッチャー矯正を行なって(ステップS8)、沸騰用伝熱管1が完成する。
【実施例】
【0026】
(トップクロス形状の評価試験)
本試験では、突起部の先端面(以下、適宜、トップクロス形状とする)の形状が良好か否かを評価した。なお、評価基準として、突起部の間に設けられる溝部(空洞部、開口部)が健全に確保されているか否かを目視観察により評価した。この評価試験では、外管の肉厚(t)とフィンの高さ(h)との比率(h/t)毎(実施例1〜4、比較例1)に、トップクロス形状を観察した。その結果を以下の表1に示す。なお、いずれの評価試験においても、ダイスのアプローチ角度αは、45°とした。
【0027】
【表1】

【0028】
試験No.1(実施例1)では、外管の肉厚(t)を1.5mmとし、フィンの高さ(h)を0.9mmとして、比率(h/t)を0.6とした。この実施例1では、トップクロス形状がほぼ良好であり、外管と内管との密着性が良好であることが確認できた。
【0029】
試験No.2(実施例2)では、外管の肉厚(t)を1.5mmとし、フィンの高さ(h)を1.0mmとして、比率(h/t)を0.7とした。この実施例2では、トップクロス形状が良好であり、外管と内管との密着性が良好であることが確認できた。
【0030】
試験No.3(実施例3)では、外管の肉厚(t)を1.0mmとし、フィンの高さ(h)を0.9mmとして、比率(h/t)を0.9とした。この実施例3では、トップクロス形状が良好であり、外管と内管との密着性がほぼ良好であることが確認できた。
【0031】
試験No.4(実施例4)では、外管の肉厚(t)を1.0mmとし、フィンの高さ(h)を1.0mmとして、比率(h/t)を1.0とした。この実施例4では、トップクロス形状が良好であり、外管と内管との密着性がほぼ良好であることが確認できた。
【0032】
試験No.5(比較例1)では、外管の肉厚(t)を1.0mmとし、フィンの高さ(h)を1.2mmとして、比率(h/t)を1.2とした。この比較例1では、トップクロス形状が不良であり、外管と内管との密着性が不良であることが確認できた。
【0033】
上記した合わせ抽伸(ステップS4参照)というのは、外管を収縮させて、内管と接合させているため、内管を締めるように内部応力が働いている。一方、転造加工というのは、外管の外側を持ち上げてフィンを立ち上げているので、外管を大きくするような力の作用となり、抽伸で得られた内部応力が開放される。このとき、フィンを高く転造加工するということは、その分、外管の肉厚全体まで加工することとなり、内部応力の開放が大きくなり、密着性が低下する。そのため、比較例1では、外管と内管との密着性が不良になったと考えられる。
【0034】
(外管と内管との密着性に関する評価試験)
本試験では、ダイス(図5参照)により抽伸した沸騰用伝熱管(ダイスのアプローチ角αが異なる実施例5〜8、比較例2及び3)の外管と内管との2重構造の密着性が良好か否かを評価した。なお、当該評価試験では、図9に示す装置により、密着性の評価を行なった(表1に示した密着性評価においても同様)。具体的には、抽伸した伝熱管を一定の長さに切断し、治具Aで外管の下端を支持し、治具Bで内管の上端を押し下げた。内管が押し出され始めたときの荷重Pを測定し、その荷重Pの値の大きさに応じて、密着性を評価した(荷重Pの値が大きいほど密着性が高いことを意味する)。具体的には、全ての評価試験結果のうち、最も高い密着性のグループを◎、その次を○、最も低い密着性のグループを×とし、外管と内管との密着性を相対的に評価した(表1に示した密着性評価においても同様)。絶対値での評価基準がないためである。その結果を以下の表2に示す。この評価試験では、抽伸による内管への影響についても評価した。具体的には、図10に示すように、抽伸前の伝熱管の長さをLとし、抽伸後の伝熱管の長さをL1として、伝熱管の伸び率(L1/L)を測定した。表2において、◎:外管の伸び率が0.7%以下の場合、○:外管の伸び率が3%以下の場合、×:抽伸できなかったため評価できず、とした。
【0035】
【表2】

【0036】
試験No.6(比較例2)では、ダイスのアプローチ角度を0°にした。この比較例2では、抽伸不可であり、外管と内管との密着性が不良であることが確認できた。
【0037】
試験No.7及び8(実施例5及び6)では、ダイスのアプローチ角度を3°にした。この実施例5及び6では、内管への影響がなく、外管と内管との密着性がほぼ良好であることが確認できた。この場合、管表面近くだけが加工されるため、内管への影響が小さくなる。しかし、内部応力は表面に集中するため、転造加工時に開放されやすくなる。『内管と外管との密着性』より『内管への影響』を考慮すれば、ダイスのアプローチ角度が3°であるのが好ましい。
【0038】
試験No.9及び10(実施例7及び8)では、ダイスのアプローチ角度を45°にした。この比較例2では、内管への影響がなく、外管と内管との密着性がほぼ良好であることが確認できた。この場合、管内部まで加工が入るため、内管が多少影響を受ける。一方、外管全体が加工されるため、内部応力が大きく、肉厚全体まで入るため、密着性は向上する。『内管への影響』より『内管と外管との密着性』を優先する場合は、ダイスのアプローチ角度が45°であるのが好ましい。
【0039】
試験No.11(比較例3)では、ダイスのアプローチ角度を60°にした。この場合、内管が完全に加工されてしまい、反対に内部応力がたまらない。この比較例3では、抽伸不可であり、外管と内管との密着性が不良であることが確認できた。
【0040】
抽伸において、アプローチ角が小さいと、管の肉厚表面だけが加工される。一方、アプローチ角が大きいと、管の肉厚内部まで加工が入り込む。つまり、アプローチ角が小さいと、管表面だけが加工されることになり、締める方向の内部応力も必然的に小さく且つ肉厚表面に集中することになる。これに対して、アプローチ角が大きいと、管表面だけでなく管内部まで加工されることになり、締める方向の内部応力が大きく且つ肉厚全体に広がる。従って、内管に影響を及ぼさず、且つ、内部応力を大きくする角度(2°<α<50°)に設定する必要がある。
【0041】
(沸騰試験)
本試験では、フィンの無いAl−Ti裸管(比較例)と本実施形態に係るAl−Tiトップクロス管(実施例)とについて、沸騰試験を行なった。この沸騰試験は、水を用いた試験であって、壁面過熱度と熱流速との相関関係、及び、熱流速と管外熱伝達係数との相関関係を調査した。壁面過熱度−熱流速のグラフ(図11(a)参照)から分かるように、裸管に比べて沸騰用伝熱管の方が小さい温度落差で伝熱されていることが分かった。同熱流速で比較するとAl−Tiトップクロス管(実施例)の過熱度は、Al−Ti裸管(比較例)に対して1/3程度であった。15〜100kW/mでは、過熱度は、ほとんど変化しない。つまり、1℃〜2℃の過熱度をもたせてやれば、飛躍的に熱流速を増加させることが可能である。
【0042】
また、熱流速と管外熱伝達係数との相関関係(図11(b)参照)から分かるように、Al−Ti裸管(比較例)の方がAl−Tiトップクロス管(実施例)より管外熱伝熱係数が大きいことが分かった。Al−Tiトップクロス管(実施例)の管外熱伝達係数は、Al−Ti裸管(比較例)の3〜4倍となっている。ただし、同様の実験を行なっている実験データを見ると、裸管の性能が本実験では2倍程度良くなっている。温度の計測方法の違い、管の表面粗さなどが原因と考えられる。
なお、沸騰用伝熱管のフィンの高さによって、伝熱性能上の差異があることも確認できた。
【0043】
図12(a)及び(b)の写真に示すように、実施例に係る沸騰用伝熱管では、比較例に係る裸管に比べて、気泡の発生箇所が多く、核沸騰になっていることが確認できた。また、比較例に係る裸管では、沸騰箇所が大まかとなっている。沸騰核の発生箇所の差が伝熱性能差に表れている。
【0044】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及び実施例に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態及び実施例の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
例えば、上記実施形態では、内管と外管との間に何も介在しないように2重構造にしたが、本発明はこれに限らず、内管と外管との間に接着層を入れて、内管と外管との密着性を向上させても良い。なお、この接着層としては、金属粉体が混入した樹脂等が好ましい。
【0046】
また、上記実施例では、チタン製の内管を用いる例について説明したが、本発明はこれに限らず、耐海水性の金属であれば、チタンだけでなくステンレス等が適用可能である。また、外管として、アルミニウムを用いたが、転造加工性に優れた材料として、内管よりヤング率が小さい材料であれば、アルミニウムに限らず、銅など適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明を利用すれば、転造加工性を確保しつつ耐海水性に優れた沸騰用伝熱管及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 沸騰用伝熱管
10 内管
20 外管
21 突起部
22 先端面(フィンつぶし面)
23 溝部
24 空洞部
25 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内に熱源となる海水を流し、管外に浸漬された冷媒を沸騰させる沸騰用伝熱管において、
内部に海水が流れるチタン製又はステンレス製の内管と、
前記内管の外周面に設けられ、前記内管よりヤング率の小さい金属製の外管とを有することを特徴とする、沸騰用伝熱管。
【請求項2】
管内に熱源となる海水を流し、管外に浸漬された冷媒を沸騰させる沸騰用伝熱管の製造方法において、
内部に海水が流れるチタン製又はステンレス製の内管の外周面には、前記内管よりヤング率の小さい金属製の外管が設けられ、
前記外管に突起部を形成する転造加工では、当該加工前の外管の肉厚(t)と、フィン高さ(h)との比率(h/t)を0.6以上1.0以下にすることを特徴とする、沸騰用伝熱管の製造方法。
【請求項3】
前記内管と前記外管との2重構造を形成する抽伸工程では、絞り嵌め治具のダイスアプローチ角度が2°より大きく且つ50°より小さいことを特徴とする、請求項2に記載の沸騰用伝熱管の製造方法。
【請求項4】
前記内管を前記外管の内部に挿入する前に、前記外管を予熱しておくことを特徴とする、請求項2又は3に記載の沸騰用伝熱管の製造方法。
【請求項5】
前記内管と前記外管との間に接着層を設けることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の沸騰用伝熱管の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−2374(P2012−2374A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135084(P2010−135084)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(591081055)神鋼メタルプロダクツ株式会社 (17)