説明

油中水型乳化油脂組成物

【課題】安定した良好な発酵バター様の呈味を有する油中水型乳化油脂組成物を提供すること。
【解決手段】下記Aのアミノ酸と下記Bのアミノ酸とを、モル比で、下記Aのアミノ酸:下記Bのアミノ酸=1:1〜1:7で含有し、且つ、水相のpHが2〜6であることを特徴とする油中水型乳化油脂組成物。
A:遊離アミノ酸の形態であるスレオニン、アラニン、グリシン、セリンのうちの1種又は2種以上。
B:遊離アミノ酸の形態であるリジン及び/又はプロリン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた発酵バター様の呈味を有する油中水型乳化油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、牛乳、練乳、ホエー蛋白濃縮物、あるいはバターなどの乳や乳製品を含有する油中水型乳化油脂組成物は、保存性が良好で、良好な乳風味を有し、さらに該油中水型乳化油脂組成物を使用したベーカリー食品も良好な乳風味を有することから、製菓・製パン業界では広く使用されている。
【0003】
さらに最近では、日本人の嗜好の変化から、乳製品の発酵物を含有する油中水型乳化油脂組成物も多く見られるようになってきた。
なかでも発酵バターを含有する油中水型乳化油脂組成物は、焼菓子類やパン類に特有の風味を付与することが可能な点で多く使用されるようになってきている。しかし、この発酵バターは、酸味が強すぎる点などから日本人の嗜好に合ったものとは言えず、また、乳の産地や、収穫時期、飼料、さらに乳酸発酵時のスターターや発酵条件による品質のばらつきが大きく、風味が一定しないものであった。さらに、その発酵バターを使用した油中水型乳化油脂組成物では、殺菌の際、あるいはベーカリー食品に使用した際の、焦げつきや揮発性成分の蒸散などの風味劣化、さらには、イースト含有ベーカリー食品に使用した際には発酵を促進したり、逆に抑制するなど、発酵の不安定化の問題もあった。
【0004】
そこで、発酵バターを使用せずに発酵バター様の呈味を付与する方法がまず考えられ、例えば、発酵バターミルクを乳固形分として0.3〜0.5重量%含有するマーガリン(例えば特許文献1参照)、油脂にpH4.5〜5.5の発酵乳を配合してなるマーガリン(例えば特許文献2参照)、あるいは、親油性乳化剤を添加した油相と、発酵乳と有機酸を水相とを混合、乳化した後、急冷捏和した油脂加工食品(例えば特許文献3参照)などが提案されてきた。
しかし、これらのマーガリンや油脂加工食品は、油中水型のバターを乳酸発酵させる代わりに水中油型の乳やクリーム等を乳酸発酵させることで製造の容易化を図るものであるため、独特の発酵バター風味を有するものではなく、また、風味を強める為に発酵バターミルクや発酵乳を油脂組成物中に多く添加すると、マーガリンが軟化し、十分な可塑性が得られないため、製菓・製パン・調理用油脂として、練り込み用途、折り込み用途、サンド・フィリング用途、スプレッド用途に優れた物性を付与させることが困難であった。
【0005】
また、発酵バター含有乳化油脂組成物における発酵バター風味を改良する方法については、例えば、発酵バターを特定量含有し、水相のpHを一定範囲に調整した油中水型乳化油脂組成物(例えば特許文献4参照)が提案されている。
しかし、この方法では、発酵バターの風味の酸味のみが強調されるため、ベーカリー食品の種類によっては良好なコク味が得られないという点で問題があった。
【0006】
ところで、一般的に、乳製品を含有する油脂組成物においてその乳風味を増強する方法として、アミノ酸を添加する方法が各種提案されている。これは、アミノ酸がそれぞれ、甘味系、苦味系、酸味系、などの特定の呈味を示すためである。
【0007】
これらアミノ酸を使用して乳風味を改善した発明として、アラニン及びアルギニンを含有する風味改良剤を使用する方法(例えば特許文献5参照)、特定アミノ酸と酸を使用する方法(例えば特許文献6参照)、特定のアミノ酸とカルボニル化合物を配合する方法(例えば特許文献7参照)、苦味や異味のアミノ酸を2種以上組み合わせる方法(例えば特許文献8参照)等が提案されている。
しかし、これらの方法は飲食品が元来有している乳風味を増強したり、雑味を除去したりする方法に関する発明であり、発酵バター風味に関する記載はなく、また、乳製品のコク味を増強する発明でもなかった。
【0008】
このように、油中水型乳化油脂組成物において、発酵バターを使用せずとも良好な発酵バター様の呈味を簡単に得ることができ、また、発酵バターを含有する油中水型乳化油脂組成物においては簡単な方法でその発酵バター風味を改良し、安定的にコク味を増強する方法が求められていた。
【0009】
【特許文献1】特開昭61−166356号公報
【特許文献2】特開昭59−102356号公報
【特許文献3】特公昭49−1856号公報
【特許文献4】特開平11−276069号公報
【特許文献5】特開2001−258501号公報
【特許文献6】特開平10−327751号公報
【特許文献7】特開昭54−62339号公報
【特許文献8】特開2003−235512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、安定した良好な発酵バター様の呈味を有する油中水型乳化油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、遊離アミノ酸のうちでもスレオニン、アラニン、グリシン、セリンなどの甘みが呈味主体であるアミノ酸と、リジン、プロリンなどの甘味と苦味を併せ持つアミノ酸とを特定比で含有する油中水型乳化油脂組成物は、低pH条件下では、発酵バター類似の風味を呈することを見出した。さらに、該油中水型乳化油脂組成物が発酵バターを含有するものであると、発酵バター風味を安定化しつつそのコク味を増強する効果を有することを知見した。
【0012】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記Aのアミノ酸と下記Bのアミノ酸とを、モル比で、下記Aのアミノ酸:下記Bのアミノ酸=1:1〜1:7で含有し、且つ、水相のpHが2〜6であることを特徴とする油中水型乳化油脂組成物を提供するものである。
A:遊離アミノ酸の形態であるスレオニン、アラニン、グリシン、セリンのうちの1種又は2種以上。
B:遊離アミノ酸の形態であるリジン及び/又はプロリン。
【0013】
また、本発明は、上記油中水型乳化油脂組成物を使用したことを特徴とするベーカリー食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、良好な発酵バター様の呈味を有する。特に該油中水型乳化油脂組成物が発酵バターを含有するものであると、該発酵バターの風味を安定化しつつ、そのコク味を増強することができる。
また、本発明の油中水型乳化油脂組成物を使用した、本発明のベーカリー食品は良好なコクのある発酵バター風味を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の油中水型乳化油脂組成物について詳述する。
【0016】
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、下記Aのアミノ酸と下記Bのアミノ酸とを、モル比で、下記Aのアミノ酸:下記Bのアミノ酸=1:1〜1:7、好ましくは1:1〜1:3.5となる比で含有する。
A:遊離アミノ酸の形態であるスレオニン、アラニン、グリシン、セリンのうちの1種又は2種以上。
B:遊離アミノ酸の形態であるリジン及び/又はプロリン。
【0017】
ここで、上記モル比が1:1よりも小であると、甘味が強く感じられるようになり、モル比が1:7を超えると、苦味が強く感じられるようになり、共に良好な発酵バター様の呈味が得られない。
【0018】
尚、「アミノ酸が遊離状態である」(遊離アミノ酸の形態である)とは、遊離アミノ酸、又は、塩酸塩や、ナトリウム塩、カルシウム塩などの塩の形態の状態を指し、ペプチドや、蛋白質を構成するなどの2個以上のアミノ酸結合体は含まない。これらの形態である場合は本発明の効果は得られない。
【0019】
また、本発明の油中水型乳化油脂組成物の「遊離アミノ酸」とは、油中水型乳化油脂組成物中に遊離型として存在するアミノ酸全てを指し、遊離型アミノ酸として直接添加されたものをはじめ、副原料中に含まれる遊離アミノ酸や、下記発酵バター中に含まれる遊離アミノ酸についても含まれるものとする。
【0020】
本発明の油中水型乳化油脂組成物においては、上記Aのアミノ酸の合計量(遊離アミノ酸の形態であるスレオニン、アラニン、グリシン、セリンの合計量)に占める、各アミノ酸の含有比率は特に限定されず、これら4種のアミノ酸のうちの1種又は2種以上を適宜選択使用することができるが、4種のアミノ酸の中でもスレオニンとアラニンの合計量が、モル分率(上記Aのアミノ酸に占めるスレオニンとアラニンの合計量のモル分率)で、好ましくは55%以上、より好ましくは60%〜80%であると、コク味のある発酵バター様の呈味を付与することができる点で特に好ましい。
【0021】
また、本発明の油中水型乳化油脂組成物においては、上記Bのアミノ酸の合計量(遊離アミノ酸の形態であるリジン及びプロリンの合計量)に占める、各アミノ酸の含有比率は、特に限定されず、これらの1種又は2種を適宜選択使用することができるが、プロリンの含有量が、モル分率(上記Bのアミノ酸に占めるプロリンの含有量のモル分率)で、好ましくは70%未満、より好ましくは30〜60%であると、本発明の油中水型乳化油脂組成物を使用したベーカリー食品に、コク味のある発酵バター様の呈味を付与することができる点で特に好ましい。
【0022】
また、本発明の油中水型乳化油脂組成物における、上記Aのアミノ酸と上記Bのアミノ酸とを合計した含有量、即ち、油中水型乳化油脂組成物100質量部中における、遊離アミノ酸の形態であるスレオニン、アラニン、グリシン、セリン、リジン、プロリンの合計含有量は、好ましくは0.001〜3質量部、より好ましくは0.01〜2質量部、さらに好ましくは0.03〜1質量部である。上記Aのアミノ酸と上記Bのアミノ酸との合計含有量が0.001質量部未満では、得られる油中水型乳化油脂組成物に発酵バター様の呈味が感じられず、また、該含有量が3質量部を超えると、発酵バターとは異質の呈味が感じられるようになり、共に良好な発酵バター様の呈味が得られない。
【0023】
また、本発明の油中水型乳化油脂組成物においては、上記6種(スレオニン、アラニン、グリシン、セリン、リジン、プロリン)以外の遊離アミノ酸を含有させることができる。但し、良好な発酵バター様の呈味を有する油中水型乳化油脂組成物を得るためには、油中水型乳化油脂組成物中に含まれる全遊離アミノ酸に占める上記6種以外の遊離アミノ酸の合計量を、好ましくは90%未満、より好ましくは0〜70%とする。油中水型乳化油脂組成物中の全遊離アミノ酸含量中、上記6種以外の遊離アミノ酸の合計量が90%以上であると、雑味が多く、良好なコク味を有する油中水型乳化油脂組成物が得られないおそれがある。
【0024】
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、水相と油相とからなり、油中水型に乳化していることを特徴とする。ここで、上記遊離アミノ酸(上記Aのアミノ酸、上記Bのアミノ酸)は、水相に含有されるものであっても、油相中に分散するものであってもよいが、呈味発現性が良好であることから、水相中に含有されるものであることが好ましい。
【0025】
本発明の油中水型乳化油脂組成物における水相のpHは、2〜6、好ましくは2〜5である。水相のpHが2未満であると、酸味が強く感じられるようになり、水相のpHが6を超えると、甘味が強く感じられるようになり、共に良好な発酵バター様の呈味が得られない。尚、本発明の油中水型乳化油脂組成物の水相は、pHの異なる2種以上の水相からなるものであってもよいが、その場合、全水相を合一させた際のpHが2〜6であることを要す。
【0026】
上記水相のpH調整に使用する酸性成分としては、乳酸、クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸から選ばれた1種又は2種以上を使用することが、良好な発酵バター様の呈味が得られる点で好ましく、より好ましくは、乳酸、クエン酸、アジピン酸の単独又は2種以上の組み合わせが好ましい。尚、水相のpHの調整に酢酸を用いると、良好な発酵バター様の呈味が得られにくい。
【0027】
本発明の油中水型乳化油脂組成物における水相の割合は、好ましくは2〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
【0028】
また、本発明の油中水型乳化油脂組成物の油相に使用することのできる油脂としては特に限定されず、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂を使用することができる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0029】
本発明の油中水型乳化油脂組成物における油相の割合は、好ましくは50〜98質量%、より好ましくは70〜95質量%である。
【0030】
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、発酵バターを含有せずとも、良好な発酵バター様の呈味を呈するものであるが、該油中水型乳化油脂組成物が発酵バターを含有するものであると、良好な発酵バター風味に加え、深いコク味を付与することができる点、さらには、その深いコク味が、使用する発酵バターの品質にかかわらず安定して得ることができる点で好ましい。
【0031】
本発明の油中水型乳化油脂組成物に発酵バターを含有させる場合、その含有量は、好ましくは10質量%〜80質量%、より好ましくは10質量%〜30質量%である。
【0032】
本発明の油中水型乳化油脂組成物に含有させることができるその他の成分としては、例えば、乳化剤、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酸味料、牛乳・れん乳・脱脂粉乳・ホエーパウダー・バター・クリーム・ナチュラルチーズ・プロセスチーズ等の乳や乳製品、カゼイン等の乳蛋白、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0033】
本発明の油中水型乳化油脂組成物において、その他の成分の使用量は、それらの成分の使用目的等に応じて適宜選択することができ、特に制限されるものではないが、好ましくは、乳化油脂組成物中合計で50質量%以下とする。
【0034】
上記乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄等の合成乳化剤でない乳化剤を用いることができる。
【0035】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記増粘安定剤の含有量は、特に制限はないが、本発明の油中水型乳化油脂組成物中、好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜5質量%である。また本発明の油中水型乳化油脂組成物において、上記増粘安定剤が必要でなければ、増粘安定剤を用いなくてもよい。
【0036】
以下に、本発明の油中水型乳化油脂組成物の好ましい製造方法を説明する。
先ず、油相と、pHが2〜6である水相とを準備する。そして、遊離アミノ酸の形態であるスレオニン、グリシン、アラニン、セリンの合計量と、遊離アミノ酸の形態であるリジンとプロリンの合計量とのモル比が1:1〜1:7となるように、遊離アミノ酸を水相及び/又は油相に溶解又は分散させる。そして、この油相と水相を乳化する。乳化後、必要により均質化処理を行なう。こうして得られた乳化物は、次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法はタンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
【0037】
次に、殺菌した若しくは殺菌しなかった乳化物を冷却可塑化する。本発明において、冷却条件は好ましくは−0.5℃/分以上、さらに好ましくは−5℃/分以上である。この際、徐冷却より急速冷却の方が好ましい。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンビネーター、パーフェクター等の油脂組成物製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
【0038】
尚、発酵バターを配合する場合は、乳化前に水相及び/又は油相に、溶解又は分散させてもよいし、また、乳化液に分散してもよいし、さらには、冷却可塑化後の油中水型乳化油脂組成物と混合してもよい。なお、発酵バターは元々水相を10〜30質量%含有する油中水型の組成物であり、その水相は一般にpH2〜6であるため、発酵バターを配合する場合には、上記水相を使用せずに製造することも可能である。
【0039】
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、練り込み用、折り込み用、フィリング用、サンド用、トッピング用、スプレッド用、スプレー用、コーティング用、フライ用、クリーム用等、製菓・製パン分野、調理分野、惣菜分野において広く使用することが可能であるが、加熱することで、より良好なコク味を呈するため、特に、製菓・製パン分野の、練り込み用・折り込み用などのベーカリー食品用として特に好ましく使用することができる。
【0040】
尚、ベーカリー食品における上記油中水型乳化油脂組成物の好ましい使用量は、製菓練り込み用、または製菓折り込み用である場合は、ベーカリー生地において穀粉100質量部あたり、好ましくは30〜150質量部、より好ましくは50〜110質量部であり、製パン練り込み用、または製パン折り込み用である場合は、ベーカリー生地において穀粉100質量部あたり、好ましくは5〜150質量部、より好ましくは20〜120質量部、さらに好ましくは30〜100質量部である。
【0041】
以下に、本発明のベーカリー食品について述べる。
本発明のベーカリー食品は、上記油中水型乳化油脂組成物を使用して得られる、小麦粉、米粉、ライ麦粉などの穀粉類を主体としたベーカリー生地を焼成して得られる食品のことであり、食パン、菓子パン、デニッシュ、パイ、シュー、ドーナツ、バターケーキ、スポンジケーキ、クッキー、ハードビスケット、ワッフル、スコーン等の良好な発酵バター風味を有するベーカリー食品である。得られたベーカリー食品は、さらにトーストや電子レンジ加熱などの再加熱操作を行なっても、また冷凍保存しても、良好な発酵バター風味を呈する。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
<油中水型乳化油脂組成物の製造>
〔実施例1〕
スレオニン、アラニン、グリシン、セリン(以上、上記Aのアミノ酸)、及びリジン、プロリン(以上、上記Bのアミノ酸)を、(スレオニン:アラニン:グリシン:セリン:リジン:プロリン)=1:1:1:1:4:4のモル比で混合したアミノ酸混合物0.15g、及び食塩1gを、0.02%クエン酸水溶液10gに溶解した水相と、パームステアリン、パームオレインのエステル交換油、大豆液状油を25:50:35の重量比で混合した配合油87.84g、ステアリン酸モノグリセリド0.5g及びレシチン0.5gを混合溶解した油相とを、定法に従い予備乳化し、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化後、5℃で1週間調温し、油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0044】
〔実施例2〕
実施例1におけるアミノ酸混合物において、(スレオニン:アラニン:グリシン:セリン:リジン:プロリン)=3:3:1:1:8:8のモル比に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0045】
〔実施例3〕
実施例1におけるアミノ酸混合物において、(スレオニン:アラニン:グリシン:セリン:リジン:プロリン)=3:3:1:1:4:12のモル比に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0046】
〔実施例4〕
実施例1におけるアミノ酸混合物において、(スレオニン:アラニン:グリシン:セリン:リジン:プロリン)=1:1:1:1:2:6のモル比に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0047】
〔実施例5〕
実施例1におけるアミノ酸混合物において、(スレオニン:アラニン:グリシン:セリン:リジン:プロリン)=3:3:1:1:20:20のモル比に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0048】
〔実施例6〕
実施例2におけるアミノ酸混合物の添加量を1.5g、配合油を86.49gに変更した以外は実施例2と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0049】
〔実施例7〕
実施例2におけるアミノ酸混合物の添加量を0.015g、配合油を87.975gに変更した以外は実施例2と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0050】
〔比較例1〕
実施例1におけるアミノ酸混合物を無添加とし、配合油を87.99gに変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0051】
〔比較例2〕
実施例1におけるアミノ酸混合物において、(スレオニン:アラニン:グリシン:セリン:リジン:プロリン)=54:54:27:27:12:12のモル比に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0052】
〔比較例3〕
実施例1におけるアミノ酸混合物において、(スレオニン:アラニン:グリシン:セリン:リジン:プロリン)=3:3:1:1:36:36のモル比に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0053】
〔比較例4〕
実施例1における0.02%クエン酸水溶液10gを水道水10gに変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0054】
以上のようにして得られた各油中水型乳化油脂組成物の、上記Aのアミノ酸と上記Bのアミノ酸のモル比、油中水型乳化油脂組成物100g中の上記Aのアミノ酸と上記Bのアミノ酸をと合わせた含有量、水相のpH、上記Aのアミノ酸に占めるスレオニンとアラニンの合計量のモル分率、上記Bのアミノ酸に占めるプロリンの含有量のモル分率を、それぞれ下記表1に記載した。
【0055】
【表1】

【0056】
<油中水型乳化油脂組成物の評価1>
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた油中水型乳化油脂組成物を、下記評価基準に従って発酵バター様呈味を4段階、及び、コク味を4段階で評価し、結果を下記表2に示した。
【0057】
(評価基準1:発酵バター様呈味)
◎:良好な発酵バター様呈味を感じる。
○:発酵バター様呈味を感じる。
△:発酵バター様呈味が弱い。
×:発酵バター様呈味が全く感じられない。
【0058】
(評価基準2:コク味)
◎:良好なコク味を感じる。
○:コク味を感じる。
△:コク味が弱い。
×:コク味が感じられない。
【0059】
【表2】

【0060】
表2から分かるように、実施例1〜7の本発明の乳化油脂組成物は良好な発酵バター風味、コク味を有していることがわかる。
これに対し、遊離アミノ酸を含まない比較例1の油中水型乳化油脂組成物や、水相のpHが本発明の範囲外である比較例4の油中水型乳化油脂組成物は、発酵バター様呈味がまったくなく、特に比較例1の油中水型乳化油脂組成物はコク味も感じられないものであった。遊離アミノ酸を含有するものの、その比率(A:Bのモル比)が本発明の範囲外である比較例2、3の油中水型乳化油脂組成物は発酵バターの風味が弱いものであった。
【0061】
〔実施例8〕
(スレオニン:アラニン:グリシン:セリン:リジン:プロリン)=3:3:1:1:8:8のモル比で混合したアミノ酸混合物0.15g、及び食塩1gを0.02%クエン酸水溶液4.9gに溶解した水相と、パームステアリン:パームオレインのエステル交換油:大豆液状油を25:50:35の重量比で混合した配合油62.94g、ステアリン酸モノグリセリド0.5g及びレシチン0.5g、無塩バター30g(水分含量17質量%)を混合溶解した油相とを、定法に従い予備乳化し、急冷可塑化して、実施例1の油中水型乳化油脂組成物を得た。
尚、無塩バター中の6種の遊離アミノ酸(スレオニン、アラニン、グリシン、セリン、リジン、プロリン)、及び、これら6種以外のその他の遊離アミノ酸の含量(μmol/油脂組成物100g)、無塩バター100g中の上記Aのアミノ酸と上記Bのアミノ酸とを合わせた含有量(g/油脂組成物100g)については、下記の方法で試料調製をおこない、HPLCで測定し、その結果を下記表3に記載した。
【0062】
〔実施例9〕
実施例8で使用した無塩バターに代えて、発酵バターAを使用した以外は、実施例8と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
尚、発酵バターA中の6種の遊離アミノ酸(スレオニン、アラニン、グリシン、セリン、リジン、プロリン)、及び、これら6種以外のその他の遊離アミノ酸の含量(μmol/油脂組成物100g)、無塩バター100g中の上記Aのアミノ酸と上記Bのアミノ酸とを合わせた含有量(g/油脂組成物100g)については、下記の方法で試料調製をおこない、HPLCで測定し、その結果を下記表3に記載した。
【0063】
〔実施例10〕
実施例8で使用した無塩バターに代えて、発酵バターBを使用した以外は、実施例8と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
尚、発酵バターB中の6種の遊離アミノ酸(スレオニン、アラニン、グリシン、セリン、リジン、プロリン)、及び、これら6種以外のその他の遊離アミノ酸の含量(μmol/油脂組成物100g)、無塩バター100g中の上記Aのアミノ酸と上記Bのアミノ酸とを合わせた含有量(g/油脂組成物100g)については、下記の方法で試料調製をおこない、HPLCで測定し、その結果を下記表3に記載した。
【0064】
〔実施例11〕
実施例8におけるアミノ酸混合物の添加量を0.015g、配合油を63.075gに変更した以外は実施例8と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0065】
〔実施例12〕
実施例9におけるアミノ酸混合物の添加量を0.015g、配合油を63.075gに変更した以外は実施例9と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0066】
〔実施例13〕
実施例10におけるアミノ酸混合物の添加量を0.015g、配合油を63.075gに変更した以外は実施例10と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0067】
〔比較例5〕
実施例8におけるアミノ酸混合物を無添加とし、配合油を63.09gに変更した以外は実施例8と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0068】
〔比較例6〕
実施例9におけるアミノ酸混合物を無添加とし、配合油を63.09gに変更した以外は実施例9と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0069】
〔比較例7〕
実施例10におけるアミノ酸混合物を無添加とし、配合油を63.09gに変更した以外は実施例10と同様の配合・製法で油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0070】
以上のようにして得られた各油中水型乳化油脂組成物の、上記Aのアミノ酸と上記Bのアミノ酸のモル比、水相のpH、上記Aのアミノ酸に占めるスレオニンとアラニンの合計量のモル分率、上記Bのアミノ酸に占めるプロリンの含有量のモル分率、油中水型乳化油脂組成物100g中の上記Aのアミノ酸と上記Bのアミノ酸とを合わせた含有量、油中水型乳化油脂組成物中の総遊離アミノ酸に占める上記6種以外のその他の遊離アミノ酸の割合を、それぞれ下記表4に記載した。
【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
<遊離アミノ酸含量測定用試料調製方法>
1.試料約10gを100ml容三角フラスコに採取。
2.エタノール80mlを添加する。
3.冷却管を付け、80℃水浴上で20分還流抽出した。
4.上記1〜3を3回繰り返し、全ての抽出液を集め、75%エタノールで100ml定容とし、試料溶液とした。
5.試料溶液の一部をナスフラスコに採取し、50℃以下で減圧乾固した。
6.pH2.2の緩衝液に溶解し、ろ紙で濾過後、さらに0.45μmのミクロフィルターで濾過した。
7.濾液1mlに対し10%トリクロロ酢酸6mlを添加、よく混合した。
8.3000rpm 15分間遠心分離し、上澄み液をロータリーエバポレ−ターで減圧乾固した。
9.イオン交換水でトリクロロ酢酸を洗浄した。
10.pH2.2の緩衝液に溶解し、0.45μmのミクロフィルターで濾過した。
11.濾液100μlに、エタノール:水:トリエチルアミン=2:2:1の混合液20μlを加え、蒸発乾固させた。
12.エタノール:水:トリエチルアミン:フェニルイソチオシアネート=7:1:1:1の混合液50μlを加え、室温で20分間反応させた。
13.減圧乾燥で過量の試料を除去し、pH6.5の酢酸アンモニウム緩衝液:アセトニトリル=95:5の混合液に溶解し、HPLCの試料溶液とした。
【0074】
<油中水型乳化油脂組成物の評価2>
実施例8〜13及び比較例5〜7で得られた油中水型乳化油脂組成物を、下記評価基準に従って発酵バター様呈味を4段階、発酵バターの香りを4段階、及び、コク味を4段階で評価し、結果を下記表5に示した。
【0075】
(評価基準1:発酵バター様の呈味)
◎:優れた発酵バター風味を感じる。
○:良好な発酵バター風味を感じる。
△:発酵バター風味が弱い。
×:発酵バター風味が全く感じられない。
【0076】
(評価基準2:発酵バターの香り)
◎:優れた発酵バターの香りを感じる。
○:良好な発酵バターの香りを感じる。
△:発酵バターの香りが弱い。
×:発酵バターの香りが全く感じられない。
【0077】
(評価基準3:コク味)
◎:良好なコク味を感じる。
○:コク味を感じる。
△:コク味が弱い。
×:コク味が感じられない。

【0078】
【表5】

【0079】
表5から分かるように、実施例8〜13の本発明の油中水型乳化油脂組成物は良好な発酵バター風味(発酵バター様呈味と発酵バターの香り)と、良好なコク味を有していることがわかる。
これに対し、遊離アミノ酸の比率(A:Bのモル比)は本発明の範囲内であるが、発酵バターを含有せず、水相のpHが本発明の範囲外である比較例5の油中水型乳化油脂組成物は、発酵バター様呈味がまったくなく、コク味も弱いものであった。
また、発酵バターを含有するが、遊離アミノ酸の比率(A:Bのモル比)が本発明の範囲外である比較例6、7の油中水型乳化油脂組成物は、発酵バター風味(発酵バター様呈味と発酵バターの香り)は良好であるが、コク味が弱いものであった。
【0080】
<ベーカリー試験>
上記実施例1〜13及び比較例1〜7で得られた油中水型乳化油脂組成物は、更に、下記のベーカリー試験I(クッキー製造試験)に供した。尚、実施例1〜13及び比較例1
〜7で得られた油中水型乳化油脂組成物の一部については、5℃で1週間調温後、厚さ10mm、長さ300mm、幅200mmのシート状に成形し、下記のベーカリー試験II(パイ製造試験)に供した。
【0081】
<ベーカリー試験I>
実施例1〜13及び比較例1〜7で得られた油中水型乳化油脂組成物を用いて、下記に示す配合及び製法によりクッキー(ガレット)を製造し、得られたクッキーについて、下記評価基準に従って発酵バター風味を6段階、及び、コク味を4段階で評価し、結果を下記表6に示した。
【0082】
<配合>
薄力粉 100 質量部
食塩 1 質量部
粉糖 60 質量部
卵黄 10 質量部
ベーキングパウダー 1 質量部
油中水型乳化油脂組成物 100 質量部
【0083】
<製法>
油中水型乳化油脂組成物と粉糖を竪型ミキサーにて低速2分及び中速3分高速3分ミキシングした後、卵黄と食塩を添加してさらに低速2分中速2分混合した。ここに、予め混合して篩っておいた薄力粉とバーキングパウダーを添加、低速2分中速1分混合し、クッキー生地を得た。このクッキー生地を5℃の冷蔵庫内で生地を一晩リタードした。この生地を厚さ10mmに圧延後、打ちぬき成型(直径40mm×厚さ10mm)し、フォークで表面に筋をつけた後、焼成した。
【0084】
(評価基準1:発酵バター風味)
◎+:優れた発酵バターの風味を強く感じる。
◎:優れた発酵バターの風味を感じる。
○+:良好な発酵バターの風味を強く感じる。
○:良好な発酵バターの風味を感じる。
△:発酵バターの風味が弱い。
×:発酵バターの風味が全く感じられない。
【0085】
(評価基準2:コク味)
◎:良好なコク味を感じる。
○:コク味を感じる。
△:ややコク味が弱い。
×:コク味が感じられない。
【0086】
<ベーカリー試験II>
実施例1〜13及び比較例1〜7で得られたシート状の油中水型乳化油脂組成物(ロールイン用油脂組成物)を用いて、下記に示す配合及び製法により焼成品(パイ)を製造し、得られたパイについて、下記評価基準に従って発酵バター風味を6段階、及び、コク味を4段階で評価し、結果を下記表6に示した。
【0087】
<配合>
強力粉 70 質量部
薄力粉 30 質量部
食塩 1.3質量部
砂糖 2 質量部
脱脂粉乳 3 質量部
練り込み油脂(マーガリン) 5 質量部
水 54 質量部
ロールイン用油脂組成物 80 質量部
【0088】
<製法>
ロールイン用油脂組成物以外の原料を竪型ミキサーにて低速2分及び中速3分ミキシングした後、5℃の冷蔵庫内で生地を一晩リタードした。この生地にロールイン用油脂組成物をのせ、定法によりロールイン(4つ折4回)、成型(縦100mm×横100mm×厚さ3mm)し、ピケローラーでピケをうった後、焼成した。
【0089】
(評価基準1:発酵バター風味)
◎+:優れた発酵バターの風味を強く感じる。
◎:優れた発酵バターの風味を感じる。
○+:良好な発酵バターの風味を強く感じる。
○:良好な発酵バターの風味を感じる。
△:発酵バターの風味が弱い。
×:発酵バターの風味が全く感じられない。
【0090】
(評価基準2:コク味)
◎:良好なコク味を感じる。
○:コク味を感じる。
△:ややコク味が弱い。
×:コク味が感じられない。
【0091】
【表6】

【0092】
表6から分かるように、実施例1〜13の本発明の油中水型乳化油脂組成物を用いてクッキーやパイなどのベーカリー食品を製造した場合、発酵バター風味、コク味とも良好であり、特に発酵バターを配合した実施例9、10、12、13の組成物は、その配合した発酵バターの種類に係わらず、良好な発酵バター風味と深いコク味を有し、またその風味も揃ったものとなった。
これに対し、遊離アミノ酸を含まない比較例1の油中水型乳化油脂組成物や、水相のpHが本発明の範囲外である比較例4の油中水型乳化油脂組成物を用いて得られたベーカリー製品は、発酵バターの風味はまったくなく、コク味も感じられないものであった。
また、遊離アミノ酸の比率(A:Bのモル比)が本発明の範囲外である比較例2、3の油中水型乳化油脂組成物を用いて得られたベーカリー製品は、発酵バターの風味が弱いものであった。
また、発酵バターを含有するが、遊離アミノ酸の比率(A:Bのモル比)が本発明の範囲外である比較例6、7の油中水型乳化油脂組成物を用いて得られたベーカリー製品は、使用する発酵バターによりその風味が揃ったものとならず、また、コク味が弱いものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記Aのアミノ酸と下記Bのアミノ酸とを、モル比で、下記Aのアミノ酸:下記Bのアミノ酸=1:1〜1:7で含有し、且つ、水相のpHが2〜6であることを特徴とする油中水型乳化油脂組成物。
A:遊離アミノ酸の形態であるスレオニン、アラニン、グリシン、セリンのうちの1種又は2種以上。
B:遊離アミノ酸の形態であるリジン及び/又はプロリン。
【請求項2】
上記油中水型乳化油脂組成物100質量部中における、上記Aのアミノ酸と上記Bのアミノ酸との合計含有量が、0.001〜3質量部であることを特徴とする請求項1記載の油中水型乳化油脂組成物
【請求項3】
発酵バターを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の油中水型乳化油脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3記載のいずれかの油中水型乳化油脂組成物を使用したことを特徴とするベーカリー食品。

【公開番号】特開2007−143432(P2007−143432A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339599(P2005−339599)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】